(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】固定治具および固定方法
(51)【国際特許分類】
E04G 7/08 20060101AFI20240122BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E04G7/08 A
F16B7/04 301G
(21)【出願番号】P 2019219566
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 正道
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-159921(JP,U)
【文献】登録実用新案第3039570(JP,U)
【文献】実開昭50-140821(JP,U)
【文献】実公昭04-003943(JP,Y1)
【文献】実開昭49-024872(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/08
F16B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接配置された複数の固定対象物を互いに固定するための固定治具であって、
鉤爪状に形成された鉤爪部を両端に有するU字状の治具本体を2つ備え、この2つの治具本体は複数の固定対象物の周囲に沿って環状をなすように配置されるとともに、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けて用いられ
、一方の治具本体のU字状の底部近傍に設けられたボルト孔と、このボルト孔に螺合し、固定対象物を押圧するためのボルトを有することを特徴とする固定治具。
【請求項2】
複数の固定対象物が、平行に配置された2本の単管パイプであることを特徴とする請求項
1に記載の固定治具。
【請求項3】
近接配置された複数の固定対象物を互いに固定するための固定方法であって、
鉤爪状に形成された鉤爪部を両端に有するU字状の治具本体を2つ使用して、この2つの治具本体を複数の固定対象物の周囲に沿って環状をなすように配置するとともに、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けて固定
し、一方の治具本体は、U字状の底部近傍に設けられたボルト孔と、このボルト孔に螺合し、固定対象物を押圧するためのボルトを有しており、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けた後、ボルトを回して固定対象物を押圧することを特徴とする固定方法。
【請求項4】
複数の固定対象物が、平行に配置された2本の単管パイプであることを特徴とする請求項
3に記載の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定治具および固定方法に関し、特に建設現場などにおいて単管パイプ等を連結固定するのに好適な固定治具および固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設工事において単管パイプどうしを連結固定する治具として、自在クランプが使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
図4は、従来の自在クランプを用いた単管パイプの固定例である。この図に示すように、自在クランプ1は、固定片2と保持片3との間に単管パイプPを保持する保持部4を有したクランプ本体5を2つ回転自在に連結したものである。この自在クランプ1で、平行配置された2本の単管パイプPを連結固定する場合は、各単管パイプPの外周に沿って各クランプ本体5の保持部4を装着した後、各固定片2の一端に設けたボルト6を保持片3の挟持部7に挟持させて、ナット8をボルト6に螺着する。これにより、2本の単管パイプPを連結固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来の自在クランプ1を用いた固定方法では、クランプ本体5の肉厚が大きいため、単管パイプPの外側に大きく孕み出してしまうという問題がある。また、ボルト6の端部が外側に飛び出した状態になるので、通行人がこれに接触すると怪我をするおそれがある。これを防ぐには、この部分の養生が必要になるので、手間が掛かるという問題がある。このため、養生の必要がない簡易な固定技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、養生の必要がない簡易な固定治具および固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る固定治具は、近接配置された複数の固定対象物を互いに固定するための固定治具であって、鉤爪状に形成された鉤爪部を両端に有するU字状の治具本体を2つ備え、この2つの治具本体は複数の固定対象物の周囲に沿って環状をなすように配置されるとともに、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けて用いられることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る他の固定治具は、上述した発明において、一方の治具本体のU字状の底部近傍に設けられたボルト孔と、このボルト孔に螺合し、固定対象物を押圧するためのボルトを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の固定治具は、上述した発明において、複数の固定対象物が、平行に配置された2本の単管パイプであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る固定方法は、近接配置された複数の固定対象物を互いに固定するための固定方法であって、鉤爪状に形成された鉤爪部を両端に有するU字状の治具本体を2つ使用して、この2つの治具本体を複数の固定対象物の周囲に沿って環状をなすように配置するとともに、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けて固定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の固定方法は、上述した発明において、一方の治具本体は、U字状の底部近傍に設けられたボルト孔と、このボルト孔に螺合し、固定対象物を押圧するためのボルトを有しており、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けた後、ボルトを回して固定対象物を押圧することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の固定方法は、上述した発明において、複数の固定対象物が、平行に配置された2本の単管パイプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る固定治具によれば、近接配置された複数の固定対象物を互いに固定するための固定治具であって、鉤爪状に形成された鉤爪部を両端に有するU字状の治具本体を2つ備え、この2つの治具本体は複数の固定対象物の周囲に沿って環状をなすように配置されるとともに、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けて用いられるので、従来の自在クランプのようにボルトが外側に飛び出さないので、養生をする必要がない。したがって、養生の必要がない簡易な固定治具を提供することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の固定治具によれば、一方の治具本体のU字状の底部近傍に設けられたボルト孔と、このボルト孔に螺合し、固定対象物を押圧するためのボルトを有するので、ボルトを回すことで固定対象物を押圧して強固に固定することができる。また、固定によってボルトが外側に飛び出す事態を防ぐことができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の固定治具によれば、複数の固定対象物が、平行に配置された2本の単管パイプであるので、建設現場などで使用される単管パイプを簡易かつ安全に固定することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る固定方法によれば、近接配置された複数の固定対象物を互いに固定するための固定方法であって、鉤爪状に形成された鉤爪部を両端に有するU字状の治具本体を2つ使用して、この2つの治具本体を複数の固定対象物の周囲に沿って環状をなすように配置するとともに、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けて固定するので、従来の自在クランプのようにボルトが外側に飛び出さないので、養生をする必要がない。したがって、養生の必要がない簡易な固定方法を提供することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の固定方法によれば、一方の治具本体は、U字状の底部近傍に設けられたボルト孔と、このボルト孔に螺合し、固定対象物を押圧するためのボルトを有しており、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けた後、ボルトを回して固定対象物を押圧するので、強固に固定することができる。また、固定によってボルトが外側に飛び出す事態を防ぐことができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の固定方法によれば、複数の固定対象物が、平行に配置された2本の単管パイプであるので、建設現場などで使用される単管パイプを簡易かつ安全に固定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明に係る固定治具の実施の形態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る固定方法の実施の形態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、従来の自在クランプによる固定例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る固定治具および固定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
[固定治具]
まず、本発明に係る固定治具の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る固定治具10は、平行に近接配置された2本の単管パイプP(固定対象物)を互いに固定するためのものである。
【0021】
この固定治具10は、U字状の治具本体12A、12Bを備える。治具本体12A、12Bは、それぞれ略帯状の薄肉の板体がU字状に湾曲した保持部14と、保持部14のU字状の両端に形成された鉤爪部16とを有する。保持部14は単管パイプPを保持するためのものである。治具本体12A、12Bは、2本の単管パイプPの周囲に沿って長環状をなすように配置されるとともに、治具本体12Aの鉤爪部16と、治具本体12Bの鉤爪部16どうしを互いに引っ掛けて用いられる。治具本体12A、12Bは、例えば鋼材などの剛性の高い金属材料で構成することができる。
【0022】
図2に示すように、保持部14の高さ方向中央部分には、剛性を高めるための凹部18がU字方向に沿って形成されている。保持部14のU字状の両端には、U字の外側に向けて折り曲げられた折り曲げ片20が設けられている。折り曲げ片20の折り曲げ線の高さは、先端側に行くに従って低くなる。鉤爪部16は、基部22と、爪部24とからなる。基部22は、折り曲げ片20の先端に接続するとともに、保持部14の高さ方向に向いた面からなる舌状のものである。爪部24は、基部22の先端から基部22の上に重なる側に鉤爪状に屈曲したものである。
【0023】
図1および
図2に示すように、治具本体12Aの保持部14のU字状の底部近傍には、ねじ溝を有するボルト孔26が貫通配置され、ボルト孔26にはボルト28が螺合している。ボルト28は、治具本体12Aの外側に位置する六角形状の頭部28Aと、ボルト孔26に螺合するねじ山を有する軸部28Bからなり、頭部28Aを回すと軸部28Bが保持部14に対して進退する。頭部28Aを回して軸部28Bを治具本体12Aの内側に向けて進出させると、この軸部28Bは、保持部14に対向配置された単管パイプPの外面を押圧する。2本の単管パイプPが互いに接近する向きに押圧されるので、これらを強固に固定することができる。ボルト28の軸部28Bは治具本体12Aの内側に位置するため、通行の邪魔にならない。また、ボルト28の頭部28Aは治具本体12Aの外側に位置するが、突出長は一般に小さいため通行の邪魔にならない。なお、
図1の例では、治具本体12Bにも同様にボルト孔26を設けているが、治具本体12B側のボルト孔26Aはなくてもよい。
【0024】
上記構成の動作および作用について説明する。
平行に近接配置した2本の単管パイプPの外側周囲に、治具本体12A、12Bを長環状に配置するとともに、治具本体12Aの鉤爪部16と、治具本体12Bの鉤爪部16どうしを互いに引っ掛ける。ここで、ボルト28の頭部28Aが外側に出る治具本体12Aを通行の邪魔にならない側に配置し、ボルト28を設けない治具本体12Bを通路側に配置することが望ましい。
【0025】
続いて、より強固に固定するために、治具本体12Aのボルト28の頭部28Aを回し、軸部28Bを治具本体12Aの内側に向けて進出させ、軸部28Bで単管パイプPの外面を押圧する。ボルト28を締め付けることによって、2本の単管パイプPを互いに強固に固定することができる。
【0026】
本実施の形態の固定治具10によれば、ボルト28の端部(軸部28B)が治具本体12Aの内側に位置するので、従来の自在クランプのように外側に飛び出さない。通行の邪魔にならないため、端部の養生をする必要がない。また、治具本体12A、12Bの保持部14は薄肉の板体で構成され、従来の自在クランプのように肉厚が大きくないので、単管パイプPの外側に大きく孕み出すことがない。このため、通行の邪魔にならない。したがって、養生の必要がない簡易な固定治具10を提供することができる。また、この固定治具10を用いることで、建設現場などで使用される単管パイプを簡易かつ安全に固定することができる。
【0027】
上記の実施の形態においては、治具本体12Aにのみボルト28を設けて、単管パイプPを押圧する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではない。治具本体12A、12Bの双方のボルト孔26にボルト28を設けて双方より単管パイプPを押圧する構成としてもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
[固定方法]
次に、本発明に係る固定方法の実施の形態について説明する。
図3に示すように、本実施の形態に係る固定方法は、上記の固定治具10を用いて、平行に近接配置された2本の単管パイプPを互いに固定するものである。
図3の例では、単管パイプPの間にスペーサーSを配置するとともに、スペーサーSをテープTで一方の単管パイプPに固定しているが、単管パイプP間に隙間がなければスペーサーS等は省略してもよい。
【0029】
まず、一方の単管パイプPの外側にスペーサーSを配置してテープTで固定する。続いて、他方の単管パイプPをスペーサーSに当接配置する。次に、これらの外側周囲に、治具本体12A、12Bを長環状に配置するとともに、治具本体12Aの鉤爪部16と、治具本体12Bの鉤爪部16どうしを互いに引っ掛ける。ここで、ボルト28の頭部28Aが外側に出る治具本体12Aを通行の邪魔にならない側に配置し、ボルト28を設けない治具本体12Bを通路側に配置することが望ましい。
【0030】
次に、より強固に固定するために、治具本体12Aのボルト28の頭部28Aを回し、軸部28Bを治具本体12Aの内側に向けて進出させ、軸部28Bで単管パイプPの外面のテープTを押圧する。ボルト28を締め付けることによって、2本の単管パイプPを互いに強固に固定することができる。
【0031】
本実施の形態の固定方法によれば、ボルト28の端部(軸部28B)が治具本体12Aの内側に位置するので、従来の自在クランプのように外側に飛び出さない。通行の邪魔にならないため、端部の養生をする必要がない。また、治具本体12A、12Bの保持部14は薄肉の板体で構成され、従来の自在クランプのように肉厚が大きくないので、単管パイプPの外側に大きく孕み出すことがない。このため、通行の邪魔にならない。したがって、養生の必要がない簡易な固定方法を提供することができる。これにより、建設現場などで使用される単管パイプを簡易かつ安全に固定することができる。
【0032】
以上説明したように、本発明に係る固定治具によれば、近接配置された複数の固定対象物を互いに固定するための固定治具であって、鉤爪状に形成された鉤爪部を両端に有するU字状の治具本体を2つ備え、この2つの治具本体は複数の固定対象物の周囲に沿って環状をなすように配置されるとともに、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けて用いられるので、従来の自在クランプのようにボルトが外側に飛び出さないので、養生をする必要がない。したがって、養生の必要がない簡易な固定治具を提供することができる。
【0033】
また、本発明に係る他の固定治具によれば、一方の治具本体のU字状の底部近傍に設けられたボルト孔と、このボルト孔に螺合し、固定対象物を押圧するためのボルトを有するので、ボルトを回すことで固定対象物を押圧して強固に固定することができる。また、固定によってボルトが外側に飛び出す事態を防ぐことができる。
【0034】
また、本発明に係る他の固定治具によれば、複数の固定対象物が、平行に配置された2本の単管パイプであるので、建設現場などで使用される単管パイプを簡易かつ安全に固定することができる。
【0035】
また、本発明に係る固定方法によれば、近接配置された複数の固定対象物を互いに固定するための固定方法であって、鉤爪状に形成された鉤爪部を両端に有するU字状の治具本体を2つ使用して、この2つの治具本体を複数の固定対象物の周囲に沿って環状をなすように配置するとともに、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けて固定するので、従来の自在クランプのようにボルトが外側に飛び出さないので、養生をする必要がない。したがって、養生の必要がない簡易な固定方法を提供することができる。
【0036】
また、本発明に係る他の固定方法によれば、一方の治具本体は、U字状の底部近傍に設けられたボルト孔と、このボルト孔に螺合し、固定対象物を押圧するためのボルトを有しており、一方の治具本体の鉤爪部と、他方の治具本体の鉤爪部どうしを互いに引っ掛けた後、ボルトを回して固定対象物を押圧するので、強固に固定することができる。また、固定によってボルトが外側に飛び出す事態を防ぐことができる。
【0037】
また、本発明に係る他の固定方法によれば、複数の固定対象物が、平行に配置された2本の単管パイプであるので、建設現場などで使用される単管パイプを簡易かつ安全に固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る固定治具および固定方法は、建設現場などにおいて単管パイプ等を連結固定するのに有用であり、特に、単管パイプ等を簡易かつ安全に固定するのに適している。
【符号の説明】
【0039】
10 固定治具
12,12A,12B 治具本体
14 保持部
16 鉤爪部
18 凹部
20 折り曲げ片
22 基部
24 爪部
26 ボルト孔
28 ボルト
28A 頭部
28B 軸部
P 単管パイプ(固定対象物)