(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】動的なばねモデルを使用したカテーテル表現
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20240122BHJP
A61B 5/296 20210101ALI20240122BHJP
A61B 5/363 20210101ALI20240122BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B5/296
A61B5/363
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019229076
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-17
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/009905(WO,A1)
【文献】特開2010-131385(JP,A)
【文献】特表2010-506600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06
A61B 5/25
A61B 5/287
A61B 5/296
A61B 5/343
A61B 5/363
A61B 18/12
A61B 34/20
A61M 25/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の臓器の空洞内のプローブについて測定された経時変化する境界条件値を受信するように構成されたインターフェースと、
プロセッサであって、
前記プローブの時間依存性の形状を、
前記プローブの複数の部分を第1のばねとして表現することと、
前記複数の部分に作用する外力を第2のばねとして表現することと、
前記第1のばね及び前記第2のばねについて、前記経時変化する境界条件値を満たすように、一連の結合運動方程式を解くことと、
によって計算することと、
前記形状をユーザに提示することと、
を行うように構成された、プロセッサと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記空洞の少なくとも一部の解剖学的マップ上に前記形状をオーバーレイすることにより、前記形状を前記ユーザに提示するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記インターフェースが、位置指示信号及び接触力指示信号のうちの少なくとも1つを受信することにより前記境界条件値を受信するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記一連の結合運動方程式を、
前記プローブを複数の部分に分割することと、
各部分について、それぞれの一次運動方程式を提供することと、
得られた一連の結合一次運動方程式を解くことと、
によって解くように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記臓器が
心臓である、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、少なくとも部分的に柔軟な侵襲性医療機器に関し、詳細には心臓プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルなどの侵襲的な医療用プローブの形状のモデリングが、特許文献で提案されている。例えば、米国特許出願公開第2008/0243063号は、ステンレス鋼ワイヤ又はプルワイヤなどの張力又は偏向要素を含むガイドカテーテルを記載している。サーボモータなどのアクチュエータが、制御装置に動作可能に結合されている。制御装置は、ガイド器具にかかる力を考慮する力学モデルを含む制御モデルの実行に基づいて、サーボモータの作動を制御するように構成されている。制御モデルは運動学モデルと力学モデルとの両方を利用することも可能であり、そのような場合の実施形態は、概念的なマニピュレータ又はカテーテルの基礎となる一連の直列ばねを含むばねモデルに類似させて表現することが可能である。制御装置は、アクチュエータが偏向部材を動かすとガイドカテーテルが曲がるように、力学モデルを含む制御モデルに基づいてアクチュエータの作動を制御するように構成されている。
【0003】
別の一例として、米国特許第8671817号は、作動された様々なプルワイヤを有するカテーテル用の編組装置を記載している。編組機は、積層された複数の絞りプレートを有する絞りアセンブリを含むチューブにワイヤを編組するためのものである。絞りプレートのそれぞれは、中央開口部、中央開口部から半径方向外向きに配置されたワイヤオリフィス及び弓形チャネルを含む。編組機は、中央開口部を通ってチューブを前進させ、それぞれのワイヤオリフィスを通ってワイヤを前進させるように構成されたフィーダアセンブリを含む。編組機は、更に、複数のフィラメントを、これらが絞りアセンブリを通って送出されるのに伴ってチューブ及び複数のワイヤの周りに編組することによって、編組されたチューブアセンブリを作製するように構成された編組アセンブリを備えている。次に、カテーテルの直列ばねモデルを使用して、所望のモーメントを生成する遠位プルワイヤ距離を計算する。
【0004】
米国特許8478379号は、被験者の身体の内部でプローブの全長に沿って設けられた複数の点の、それぞれの見かけの座標を示す入力を受け取ることと、体内のプローブによってとられ得る形状に関する費用関数を計算するために、プローブの既知の機械的性質のモデルを、見かけの座標に適用することと、を含むプローブ可視化方法を記載している。形状は、その費用関数に反応して選ばれ、プローブの長さに沿った点の訂正された座標が形状に基づいて生成される。次に、訂正された座標を使用してプローブの描写が表示される。
【0005】
米国特許第7850456号は、特に教育及び/又は実演の目的で腹腔鏡処置をシミュレートするための装置システム及び方法を記載している。システムは、1つ以上の手術される仮想臓器を備えている。臓器は複数の要素を含み、各要素は、隣接する複数の要素と、隣接する複数の要素を、当該要素の1つに加えられた力がそれぞれの隣接要素を介して伝播し、当該臓器全体にわたって分散反応をもたらすように当該臓器全体にわたって接続する複数の張力接続部と、を有する。更に、ユーザによる操作のための物理的操作装置、及び当該物理的操作装置を追跡し、当該物理的操作装置の動きを当該仮想臓器に加えられる力に変換するための追跡装置も存在する。このシステムは、臓器の移動、切断、縫合、凝固、並びにその他の手術及び手術関連の動作をシミュレートすることができる。
【0006】
米国特許第9636483号は、入力装置、制御コンピュータ、及び操縦可能なカテーテルのプルワイヤを変位させるための少なくとも1つのモータを有する機器駆動部を備える、カテーテルの関節運動用に構成されたロボット手術システムを記載しており、制御コンピュータは、ユーザの入力装置操作に基づいて、カテーテルのプルワイヤの所望のモータトルク又は張力を決定するように構成されている。この実施形態は更に、入力装置が所望のカテーテル位置を制御コンピュータに伝達するように操作され、モータトルク命令が機器駆動部に出力される、操縦可能なカテーテルの関節動作のためのロボット手術方法を企図している。ロボットシステムは、トルクセンサを更に備えてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で説明する本発明の一実施形態は、患者の臓器の空洞内のプローブについて測定された経時変化する境界条件値を受信することを含む方法を提供する。プローブの時間依存性の形状は、(a)プローブの複数の部分を第1のばねとして表現することと、(b)これらの部分に作用する外力を第2のばねとして表現することと、(c)第1のばね及び第2のばねの動きについて、経時変化する境界条件値を満たすように、一連の結合運動方程式を解くことによって計算される。形状がユーザに提示される。
【0008】
いくつかの実施形態では、形状をユーザに提示することが、空洞の少なくとも一部の解剖学的マップ上に形状をオーバーレイさせて提示することを含む。
【0009】
一実施形態では、境界条件値は、プローブ上の複数の点の測定された位置を含む。別の実施形態では、境界条件値は、プローブに沿って所定の間隔でプローブに加えられる外力を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、一連の結合運動方程式を解くことは、(i)プローブを複数の部分に分割することと、(ii)各部分について、それぞれの一次運動方程式を提供することと、(iii)得られた一連の結合一次運動方程式を解くことと、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、臓器は心臓である。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、インターフェースとプロセッサとを含むシステムが更に提供される。インターフェースは、患者の臓器の空洞内のプローブについて測定された経時変化する境界条件値を受信するように構成されている。プロセッサは、プローブの時間依存性の形状を、(a)プローブの複数の部分を第1のばねとして表現することと、(b)これらの部分に作用する外力を第2のばねとして表現することと、(c)第1のばね及び第2のばねの動きについて、経時変化する境界条件値を満たすように、一連の結合運動方程式を解くことと、によって計算するよう構成されている。プロセッサは更に、形状をユーザに提示するように構成されている。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルベースの位置追跡システムの概略描画図である。
【
図2A】本発明の複数の実施形態による、自由形状から逸脱したカテーテルの遠位端の概略側面図である。
【
図2B】本発明の複数の実施形態による、自由形状から逸脱したカテーテルの遠位端の概略側面図である。
【
図3A】本発明の複数の実施形態による、
図2Aの遠位端のばねモデルに適用される境界条件の概略側面図である。
【
図3B】本発明の複数の実施形態による、
図2Bの遠位端のばねモデルに適用される境界条件の概略側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、
図2A及び
図2Bの遠位端のうちの1つの形状を計算するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
以下に説明する本発明の実施形態は、プローブの機械的特性のモデリングに基づいて、心臓内部の心臓カテーテルなどの臓器の空洞内部の侵襲性プローブを視覚化する。開示された技術は、医療処置及び拍動する心臓の動きにより時間の経過とともに変化するプローブの形状を視覚化し、ユーザに提示する。粘性(即ち減衰)効果を含む変化する形状を計算するために、本開示の方法は、プロセッサが時間に応じて変化する境界条件を使用して解く、計算効率の高い一次の動質量ばねモデル(以降「DMSモデル」と称する)を適用する。
【0016】
本開示のプローブのDMSモデルは、プローブを結合された弾性部分(即ち第1のばね)の「鎖」として表す、以下に説明する一連の一次動的結合微分運動方程式を含む。そのような鎖は、例えば、典型的には常に遠位端の何らかの動きがある、動いている心臓の内部に位置するプローブの弾性遠位端の変化する湾曲形状を忠実に描写することができる。
【0017】
遠位端に加えられる外力がベクトルばね定数を有する外部弾性要素(即ち第2のばね)によって記述できることが、DMSモデルを導出するための基本的な前提である。数学的には、この前提により、以下で説明するように、(ニュートンの方程式などの)一連の二次結合微分方程式が、本開示の単純化されたモデルへと縮小される。
【0018】
プロセッサは、DMSモデルを使用して結合方程式を解くことにより、遠位端を形成している全ての部分の形状を任意の時点で特定するように遠位端の形状を判定することが可能である。
【0019】
プローブの遠位端が臓器の静的領域内にある場合、結合された弾性部分の動きは最終的に最小エネルギー状態(即ち、全ての力の均衡後に動きが減衰する機械的平衡状態)へと収束する。
【0020】
いくつかの実施形態では、DMSモデルは、遠位端上に配置された位置センサによって測定された位置のベクトルを境界条件として使用する。別の実施形態では、DMSモデルは、遠位端上に配置された接触力センサによって測定された力のベクトルを境界条件として使用する。一般には、DMSモデルは、例えば測定された加速度、測定された力の組み合わせ、少なくとも1つの測定された位置などの、動的モデルを解くために使用可能ないかなる測定量の組を利用してもよい。
【0021】
境界条件に外力が含まれる場合には、DMSモデルが、遠位端に沿った所定の間隔で(即ち接触力センサが外力を測定する位置で)遠位端に作用するばねとして、力をモデル化してもよい。形状の基準位置を提供するために、プローブの少なくとも1つの測定位置も使用される。遠位端に作用する外力は、例えば、遠位端を囲む脈動する腔又は心腔によって加えられる。血液中の遠位端の動きなどからの粘性は、遠位端の動きを減衰させる働きをする。心臓の動きにより、外力及び内力は通常、時間依存性の境界条件により反映されるように変化する。
【0022】
DMSモデルが時間の経過とともに実行されるのに伴い、モデル化されたばねがプローブの対応する部分に対して作用し、その結果、これらの部分が動き弛緩する。これらの種類の方程式を解くための計算は、プローブの総エネルギーを最小化する形状を導出するなどの他の手法を使用して計算を実行するよりも遥かに容易である。
【0023】
典型的には、プロセッサは、プロセッサが上記で概説したプロセッサ関連の工程及び機能の各々を実行することを可能にする特定のアルゴリズムを含むソフトウェア内にプログラムされている。
【0024】
計算の面でより容易に実現可能であることにより、患者の体内のプローブの形状をリアルタイムにモデル化するための本開示の技術は、本開示の方法を利用可能な他の侵襲的デバイスと同様に、診断カテーテルベースのシステムをより広範に展開させることが可能である。
【0025】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルベースの位置追跡システム10の概略描画図である。システム10は、心臓26の心腔などの患者28の臓器の空洞内に挿入されるカテーテルなどの柔軟なプローブ22の位置判定に使用される。典型的には、プローブ22は、心臓26の電位のマッピング又は心臓組織のアブレーションの実行などの診断又は治療処置に使用される。心臓26内の挿入
図25に示されるプローブ22の遠位端30は、1つ以上の検知電極50を含む。以下に説明するように、これらの電極は、ワイヤ(図示せず)によってプローブ22を介してコンソール18内のドライバ回路20に接続されている。電気的インターフェース回路24は、例えばコンソール18がプローブ22と相互作用して、検知電極50から位置指示信号を受信することを可能にする。
【0026】
コンソール18内の電気的インターフェース回路24は、ケーブル30を介して、典型的には接着性皮膚パッチ32、34及び36を含む身体表面電極にワイヤで接続されている。パッチ32、34及び36は、遠位端32の近くの身体表面上の任意の便利な位置に配置されていてよい。例えば、心臓に使用する場合には、パッチ32、34及び36は、典型的には患者28の胸部付近に配置される。医師27は、一群の入力装置29を介してコンソール18の動作を制御する。
【0027】
いくつかの実施形態では、コンソール18内のプロセッサ41は、プローブ22とパッチ32、34及び36との間で測定されたインピーダンスに基づいて(即ち検知電極50によって生成された位置指示信号に基づいて)、心臓26内部の検知電極50の位置座標を判定する。プロセッサ41は、電極50のリアルタイムに導出された位置を本開示の動質量ばねモデルのリアルタイム境界条件として使用して、拍動している心臓26内部の遠位端30の変化する(即ち時間依存性の)形状を判定する。
【0028】
一実施形態では、コンソール18は、磁気感知サブシステムを更に備える。患者28は、ユニット45によって駆動される磁場発生器コイル42を含むパッドによって生成された磁場内に置かれる。コイル42によって生成される磁場は、挿入
図25に示すように、磁気センサ60内で位置信号を生成し、この位置信号は更に、対応する電気入力としてプロセッサ41に供給され、プロセッサ41は、以下で説明するように、遠位端30の基準位置を計算するために磁気位置信号を使用する。
【0029】
磁気追跡方法及びシステムが、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、PCT国際公開第1996/005768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455A1号、同第2003/0120150A1号及び同第2004/0068178A1号に記載されており、これらの開示内容は全て参照により本願に組み込まれている。加えて又は代わりに、任意のその他の適切な技術を使用することができる。
【0030】
コンソール18は、心臓26内の遠位端30の位置を示すディスプレイ38を駆動する。プローブ22は、心臓のマップ40の生成に使用してもよい。遠位端30の位置は、マップ40又は心臓の別の画像と重ね合わせることができる。
【0031】
典型的には、プロセッサ41は、本明細書に記載されている機能を実行するためにソフトウェア内にプログラムされた汎用コンピュータである。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的に若しくは追加的に、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形媒体上に提供及び/又は記憶されてもよい。詳細には、プロセッサ41は、以下に説明するように、本開示の工程をプロセッサ41が実行することを可能にする、
図4を含む本明細書に開示の専用アルゴリズムを実行する。
【0032】
別の一実施形態では、(
図2Bに示す)接触力センサは、遠位端30に作用する力を感知するように電極50に追加的又は代替的に使用され、プロセッサ41はこの力を本開示の動質量ばねモデルを解くためのリアルタイムの境界条件として使用して、拍動している心臓26内の遠位端30の形状の変化を判定する。一実施形態では、遠位端30の位置を特定するために単一の位置センサを利用可能である。接触力センサ間及び接触センサと位置センサとの間の既知の距離は、プロセッサ41が遠位端30の時間依存性の形状及び位置を決定するのに十分である。
【0033】
動的なばねモデルを使用したカテーテル表現
図2A及び
図2Bは、本発明の実施形態による、自由形状から逸脱したカテーテルの遠位端の概略側面図である。
【0034】
図2Aは、心臓26内のカテーテルの遠位端30Aの実際の湾曲の表現を示し、遠位端30Aは、この実施形態では位置センサとして機能する、「電極50」として上記で総称される電極52、54、56及び58を含む。
【0035】
図2Bは、心臓26内のカテーテルの遠位端30Bの実際の湾曲の表現を示し、遠位端30Bは、(i)磁気位置センサ60、並びに(ii)接触力センサ62、64、66及び68を含む。接触力センサは、遠位端30に沿って既知の長さ65だけ互いに離間している。位置センサ60と接触力62とは、遠位端30に沿って長さ63だけ離間している。矢印69は、遠位端30に加えられて遠位端を湾曲させる外力を示している。一実施形態では、接触力指示信号が、センサ62、64、66及び68によって感知される。
【0036】
その開示内容が参照により本願に組み込まれている米国特許出願公開第2007/0100332号及び同第2009/0093806号には、カテーテル内に埋め込まれた力センサを使用してカテーテルの遠位端と体腔内の組織との間の接触力を検知する方法が記載されている。加えて又は代わりに、任意のその他の適切な技術を使用することができる。
【0037】
図2の図は一例として挙げたものである。例えば、遠位端30に沿って配置された複数の磁気位置センサを含む他の構成も可能である。
【0038】
図3A及び
図3Bは、本発明の複数の実施形態による、それぞれ
図2A及び
図2Bの遠位端のばねモデルに適用される境界条件の概略側面図である。
【0039】
図3A及び
図3Bに見られるように、開示されたDMSモデルは、遠位端30を弾性部分70a、70b及び70cに分割しているが、一般には、遠位端をN個の弾性部分70によってモデル化することが可能である。各部分70は、ベクトルばね定数k及び減衰係数γを有するばねとして(例えば、相互に直交する3つの空間方向に沿って)モデル化されている。
【0040】
したがって、遠位端30の動的に変形可能な特性は、複数の結合された弾性部分からなる「鎖」全体のマトリックス表現を使用してモデル化することが可能である。各弾性部分の動きを表す結合二次の方程式は、以下の通りである。
方程式1
【0041】
【数1】
式中、mはi番目の部分の質量であり、r
0iはi番目の部分の静止位置であり、k
Tはkのベクトル転置である。ε
ijは、隣接する部分がi番目の部分に加える弾性力をモデル化した、隣接する部分{i,j}、i,j=1,2,...N間の弾性結合係数であり、ここでε
ijは、
方程式2
【0042】
【数2】
で表され、式中、l
0は静止位置での交差距離である。弾性力は、相互に隣接する部分の湾曲及び/又は伸張/収縮に抵抗する。二次の質量ばねモデルを使用してカテーテルに加えられる力のモデル化は、例えば、Tuanらにより、「A hybrid contact model for cannulation simulation of ERCP」,Studies in health technology and informatics,196,April,2014,304~306ページで提案されている。
【0043】
本開示の技術は、例えば脈動している腔77から遠位端30に加えられる外力が、ベクトルばね定数kを有する外部弾性要素100a、100b及び100cとして説明できることを前提としている。一般に、遠位端は、N個の弾性部分100によってモデル化することが可能であり、したがって、遠位端30の動きは、
方程式3
【0044】
【0045】
方程式1と方程式3とを組み合わせることにより、本開示のDMSモデルである一次の結合方程式:
方程式4
【0046】
【0047】
図3Aは、遠位端30AのDMS計算された幾何学的モデルを示している。マトリックス方程式に必要な境界条件は、コンソール18によって受信された信号に基づいて測定された、検知電極52、54、56及び58の対応する位置ベクトルP52、P54、P56及びP58として提供される。
【0048】
図3Bは、遠位端30BのDMS計算された幾何学的モデルを示している。マトリックス方程式に必要な境界条件は、コンソール18によって受信された信号に基づいて測定された、接触力センサ62、64、66及び68の対応する力ベクトルF62、F64、F66及びF68として提供される。次いで、位置センサ60によって提供される基準位置60Pに対する遠位端30Bの形状が計算される。
【0049】
図4は、本発明の一実施形態による
図2A及び
図2Bの遠位端のうちの1つの形状を計算するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートであり、境界条件受信工程80で、プロセッサ41が遠位端30の形状の計算に使用される新たに測定された境界条件値をリアルタイムで受信することから開始するプロセスを進行させる。遠位端30は拍動する心臓26の内側に位置するため、上述のように、新しい値はカテーテル形状の「スナップショット」を反映している。新しい値は、位置、力又はこれらの組み合わせであり得る。次に、プロセッサ41は、形状モデリング工程82で、受信した境界条件を使用して本開示のDMSモデルを解き、心臓26内部の遠位端30の瞬間形状を取得する。最後に、プロセッサ41は、カテーテル形状提示工程84で、例えば医師27に対し、ディスプレイ40を介して、例えば心臓26の少なくとも一部の解剖学的マップ上にオーバーレイさせて提示された形状を更新する。その後、プロセッサは新たな一連の境界条件を受信可能となり、プロセスは工程80に戻る。
【0050】
図4に例示するアルゴリズムは、単に概念を明確化する目的のために選ばれたものである。本発明はまた、本明細書の開示ではフローチャートの簡略化のために意図的に省略されている、例えばある画像をシリーズから除外させる推定タイプの不整脈パターンを提示するなどのアルゴリズムの更なる工程も含む。
【0051】
本明細書に記載の実施形態は主に心臓プローブに関するものであるが、本明細書に記載の方法及びシステムは、患者の臓器の空洞内に挿入される他の医療機器にも使用できる。
【0052】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていない、それらの変形形態及び修正形態を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0053】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
患者の臓器の空洞内のプローブについて測定された経時変化する境界条件値を受信することと、
前記プローブの時間依存性の形状を、
前記プローブの複数の部分を第1のばねとして表現することと、
前記複数の部分に作用する外力を第2のばねとして表現することと、
前記第1のばね及び前記第2のばねについて、前記経時変化する境界条件値を満たすように、一連の結合運動方程式を解くことと、
によって計算することと、
前記形状をユーザに提示することと、
を含む、方法。
(2) 前記形状を前記ユーザに提示することが、前記空洞の少なくとも一部の解剖学的マップ上に前記形状をオーバーレイさせて提示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記境界条件値が、前記プローブ上の複数の点の測定された位置を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記境界条件値が、前記プローブに沿って所定の間隔で前記プローブに加えられる外力を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記一連の結合運動方程式を解くことが、
前記プローブを複数の部分に分割することと、
各部分について、それぞれの一次運動方程式を提供することと、
得られた一連の結合一次運動方程式を解くことと、
を含む、実施態様1に記載の方法。
【0054】
(6) 前記臓器が前記心臓である、実施態様1に記載の方法。
(7) システムであって、
患者の臓器の空洞内のプローブについて測定された経時変化する境界条件値を受信するように構成されたインターフェースと、
プロセッサであって、
前記プローブの時間依存性の形状を、
前記プローブの複数の部分を第1のばねとして表現することと、
前記複数の部分に作用する外力を第2のばねとして表現することと、
前記第1のばね及び前記第2のばねについて、前記経時変化する境界条件値を満たすように、一連の結合運動方程式を解くことと、
によって計算することと、
前記形状をユーザに提示することと、
を行うように構成された、プロセッサと、
を備える、システム。
(8) 前記プロセッサが、前記空洞の少なくとも一部の解剖学的マップ上に前記形状をオーバーレイすることにより、前記形状を前記ユーザに提示するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記インターフェースが、位置指示信号及び接触力指示信号のうちの少なくとも1つを受信することにより前記境界条件値を受信するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサが、前記一連の結合運動方程式を、
前記プローブを複数の部分に分割することと、
各部分について、それぞれの一次運動方程式を提供することと、
得られた一連の結合一次運動方程式を解くことと、
によって解くように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
【0055】
(11) 前記臓器が前記心臓である、実施態様7に記載のシステム。