(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】交換式ジュエリー連結システム及びその留め具
(51)【国際特許分類】
A44C 5/20 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
A44C5/20 E
A44C5/20 D
(21)【出願番号】P 2019532225
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(86)【国際出願番号】 IL2017050946
(87)【国際公開番号】W WO2018042419
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-26
(32)【優先日】2016-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】519069512
【氏名又は名称】マンゴー ツリー ジュエリー エルティーディー
(73)【特許権者】
【識別番号】519069523
【氏名又は名称】アビブ,ダビド
(73)【特許権者】
【識別番号】519069534
【氏名又は名称】ドゥカット,ヘレン
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】アビブ,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】ドゥカット,ヘレン
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】長馬 望
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-60635(JP,A)
【文献】特開2007-222082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の部分的リング状セグメントと、前記部分的リング状セグメントからその端部まで延びる第1の腕部及び第2の腕部とを含むピンと、
アンロック状態からロック状態になるように前記ピンに力を加えるために前記第1の腕部の少なくとも一部及び前記第2の腕部の少なくとも一部をカバーする位置までスライド可能なスリーブと
を備える留め具と、
前記ピンの前記第1の腕部の前記端部に溶接により恒久的に取り付けられるチェーンと、
を備え、
前記第1の腕部の前記端部と前記第2の腕部の前記端部とは、前記ロック状態よりも前記アンロック状態において互いに離れており、
前記第1の腕部の少なくとも一部及び前記第2の腕部の少なくとも一部は、前記留め具の前記ロック状態において前記スリーブの内面に支持されるように適合されており、
少なくとも前記留め具の前記アンロック状態における前記スリーブは、前記チェーンの全長にわたってスライド可能であり、
前記スリーブは、前記留め具の前記ロック状態において、前記チェーンが溶接により取り付けられた前記第1の腕部の前記端部と前記第2の腕部の前記端部とを覆い隠すような軸方向長さを有し
、
前記スリーブの内面は所定の内径を有する円筒状であり、
前記スリーブの表面には開口、アパーチャ、又はスリットが形成されていない、
ジュエリーシステム。
【請求項2】
少なくとも互いに押し合わされた際の前記第1の腕部及び前記第2の腕部は概して互いに横に並んで延びる、請求項1に記載のジュエリーシステム。
【請求項3】
前記第1の腕部及び前記第2の腕部の一方は、前記第1の腕部及び前記第2の腕部が互いに押し合わされた際に、前記第1の腕部及び前記第2の腕部の他方の前記端部を超えて延びる、請求項2に記載のジュエリーシステム。
【請求項4】
前記部分的リング状セグメントは、前記第1の腕部と前記第2の腕部とが互いに離れる方向に曲がるのを補助するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のジュエリーシステム。
【請求項5】
前記部分的リング状セグメントは、装飾品、チャーム、ペンダント、及びチェーンを含む1以上のジュエリー構成要素を保持するように構成され、
前記部分的リング状セグメントは、前記スリーブに入らないサイズを有している、
請求項1から4のいずれか一項に記載のジュエリーシステム。
【請求項6】
ジュエリーシステムを操作する方法であって、
共通の部分的リング状セグメントと、前記部分的リング状セグメントからその端部まで延びる第1の腕部及び第2の腕部とを含
むピンと、内面が所定の内径を有する円筒状であり、表面に開口、アパーチャ、又はスリットが形成されていないスリーブとを備える留め具を用意し、
前記ピンの前記第1の腕部の前記端部にチェーンを溶接により恒久的に取り付け、
前記留め具がアンロック状態にあるときに、前記第1の腕部の少なくとも一部と前記第2の腕部の少なくとも一部とを互いに押し合わせ、
前記第1の腕部の少なくとも一部及び前記第2の腕部の少なくとも一部をカバーするように前記スリーブを前記チェーンに沿ってスライドさせ、
前記第1の腕部の少なくとも一部と前記第2の腕部の少なくとも一部が互いに離れる方向に曲がって前記スリーブの内面を押しつけるように前記第1の腕部及び前記第2の腕部を開放することにより前記留め具を前記腕部から前記スリーブの前記内面に作用す
る力によってのみ定義されるロック状態にし、
前記留め具の前記アンロック状態において、前記スリーブを前記チェーン上でスライドさせ、
前記留め具の前記ロック状態において、前記第1の腕部の前記端部と前記第2の腕部の前記端部とを前記スリーブにより覆い隠す、
方法。
【請求項7】
少なくとも互いに押し合わされた際の前記第1の腕部及び前記第2の腕部は概して互いに横に並んで延びるように構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の腕部及び前記第2の腕部の一方は、前記第1の腕部及び前記第2の腕部が互いに押し合わされた際に、前記第1の腕部及び前記第2の腕部の他方の前記端部を超えて延びる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記スリーブは、前記第1の腕部の前記少なくとも一部及び前記第2の腕部の前記少なくとも一部を互いに押し合わせる前に、前記第1の腕部及び前記第2の腕部の前記一方の前記端部のみをカバーする中間位置にスライドさせる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記押し合わせた後に、前記留め具がロック状態となるように前記留め具の前記第1の腕部及び前記第2の腕部の前記他方の前記端部を前記スリーブで覆い隠すように前記スリーブをスライドさせる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、ネックレス/ブレスレット/アンクレット/指輪/イヤリング及び他のジュエリー関連品のための交換式ジュエリー連結留め具(又は交換式ジュエリーコネクタ(IJC))に関するものである。特に、このジュエリー留め具(IJC)によって、装飾具/チャーム/ペンダント/チェーンのようなジュエリー構成要素や他のジュエリー部品が簡単に交換(例えば接続/分離)できるようになり、これによって、簡単にデザインでき、適合させることができる交換式ジュエリーを提供することができ、ほぼ同様の部品を用いて多くのジュエリーデザインを実現できる可能性が生まれる。
【発明の背景】
【0002】
通常、ジュエリー品は、特定のイベントや雰囲気、服装などに対して修正したり仕立てたりすることができない恒久的なデザインを有している。これにより、多種多様なジュエリーを所有しなければならず、これはコストが高くなるとともに非現実的なものとなり得る。これらのジュエリーは、通常、「ロブスタークロー」(
図1A)、「バネリング」(
図1B)のような様々な種類の公知の留め具、
図1Cに示されるような様々な種類のネジ留め具、及び
図1D~
図1Fに示されるような螺合させる必要のある異なる種類のフックを含んでいる。
【0003】
モジュール式のジュエリーもあり、これは多様なジュエリー要素及び装飾品により調整することができる。例えば、米国特許公開公報第2008/0250616号は、数多くの方法で着用することができる、複数の要素を含むジュエリーシステムを開示している。しかしながら、上記ジュエリーは、複雑で組み立てるのに時間がかかることのある様々なネジ留め具及び/又はバネ留め具を含んでいる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の少なくともある実施形態の目的は、ペンダント、装飾品、チャーム、チェーン及び/又は他のジュエリー要素を変えたり、付けたりするために簡単に使用でき、同一の部品を用いつつ新しいデザインの可能性を生み出したり、さらに/あるいはジュエリーを簡単に調整したりすることができるジュエリー連結システム及びその留め具を提供することである。
【0005】
本発明の少なくともある実施形態の他の目的は、ペンダント又は装飾品を交換する際に開放状態であってもチェーンから分離される要素がないので、留め具の要素を紛失してしまうことを防止できるようにデザインされたジュエリー留め具を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的及び利点は、説明とともに明らかになるであろう。
【0007】
少なくともある実施形態における本発明は、ジュエリーを交換可能にすることができる留め具に関するものである。この留め具は、a)2つの腕部を有するピンを備え、上記ピンは、上記腕部が一緒に囲まれるように上記腕部の間の距離を縮めるために上記腕部が互いに押し付け合うように適合され、圧力が開放されると上記腕部の間の距離が増加するように構成され、b)チェーンに装着され、上記チェーンに沿って移動できるように適合されるスリーブを備え、上記スリーブは、圧縮状態で上記腕部を保持するように上記ピンの上記腕部を囲むのに好適な内径を有し、これにより、上記留め具を閉じ、少なくとも1つのジュエリー要素をしっかりと保持することが可能となる。
【0008】
本発明の実施形態によれば、上記ピンの1つの腕部が上記チェーンの一端部に接続される。上記チェーンは、上記腕部を溶接又は取付可能なブレスレット/アンクレット/指輪/イヤリングなどのジュエリーに関連する物の一部であってもよい。例えば、上記腕部が溶接により恒久的に接続されていてもよい。
【0009】
本発明の実施形態によれば、上記ピンの1つの腕部は未接続のままであり、この結果、ネックレス/ブレスレット/イヤリングのような1以上の装飾品/チャーム/ペンダント/異なるジュエリーを上記未接続の腕部に通したり、さらに/あるいは装着したりすることができる。
【0010】
他の態様においては、本発明は、交換式ジュエリー連結システムに関するものであり、この交換式ジュエリー連結システムは、a)1以上の留め具を備え、それぞれの留め具は、i)2つの腕部を有するピンであって、上記腕部が一緒に囲まれるように上記腕部の間の距離を縮めるために上記腕部が互いに押し付け合うように適合され、その結果、圧力が開放されると上記腕部の間の距離が増加するようなピンと、ii)上記チェーンに沿って移動できるようにチェーンに装着されるように適合されるスリーブであって、それぞれのスリーブは、圧縮状態で上記腕部を保持するように上記ピンの上記腕部を囲むのに好適な内径を有し、これにより、上記留め具を閉じ、少なくとも1つのジュエリー要素をしっかりと保持することが可能となるスリーブとを含み、上記交換式ジュエリー連結システムは、b)それぞれのピンの1つの端部に接続されるチェーンを有する。
【0011】
本発明の実施形態によれば、上記ジュエリーシステムは、上記1以上の留め具のそれぞれにより固定されるように適合される1以上のジュエリー要素又は他のジュエリーをさらに備える。
【0012】
他の態様においては、本発明は、ジュエリーを交換可能にするリング状の留め具に関するものであり、この留め具は、a)開放されたリング状の形態のピンであって、上記ピンの一端が上記ピンの他端に面するピンと、b)上記ピンの一端にスライド可能に取り付けられるスリーブとを備え、上記スリーブを上記ピンの他端に向かってスライドさせることにより、上記リング状の留め具がロックされ、反対の方向にスライドさせることにより、上記リング状の留め具のロックが解除される。
【0013】
本発明のさらなる態様の例を以下に挙げる。
【0014】
1.ジュエリーを交換可能にするための連結機構としての役割を有する留め具であって、
a.2つの腕部を有するピンを備え、上記ピンは、上記腕部が一緒に囲まれるように上記腕部の間の距離を縮めるために上記腕部が互いに押し付け合うように適合され、圧力が開放されると上記腕部の間の距離が増加するように構成され、
b.チェーンに装着され、上記チェーンに沿って移動できるように適合されるスリーブを備え、上記スリーブは、圧縮状態で上記腕部を保持するように上記ピンの上記腕部を囲むのに好適な内径を有し、これにより、上記留め具を閉じ、少なくとも1つのジュエリー要素をしっかりと保持することが可能となり、
上記圧縮状態は、上記スリーブの内面と、上記スリーブと上記腕部との間の間隔を増やして開放状態に戻そうとする上記腕部との間に生じる張力及び/又は摩擦力により維持され、
上記留め具は、上記スリーブを上記チェーンに沿って移動させるための上記摩擦力の閾値を超える十分な外力が上記スリーブに作用する単一動作による開放機構により開放される、
留め具。
【0015】
2.上記ピンの1つの腕部は、上記チェーンの一端に接続される、態様1による留め具。
【0016】
3.上記チェーンは、上記ピンの上記腕部が溶接される又は取り付けられるブレスレット、アンクレット、指輪、又はイヤリングのようなジュエリー関連品の一部である、態様1による留め具。
【0017】
4.上記ピンの1つの腕部は未接続のままであり、この結果、1以上の装飾品又は異なるジュエリーを上記未接続の腕部に通すことができる、態様2による留め具。
【0018】
5.交換式ジュエリー連結システムであって、
a)連結機構としての役割を有する1以上の留め具を備え、それぞれの留め具は、i)2つの腕部を有するピンであって、上記腕部が一緒に囲まれるように上記腕部の間の距離を縮めるために上記腕部が互いに押し付け合うように適合され、その結果、圧力が開放されると上記腕部の間の距離が増加するようなピンと、ii)上記チェーンに沿って移動できるようにチェーンに装着されるように適合されるスリーブであって、それぞれのスリーブは、圧縮状態で上記腕部を保持するように上記ピンの上記腕部を囲むのに好適な内径を有し、これにより、上記留め具を閉じ、少なくとも1つのジュエリー要素をしっかりと保持することが可能となるスリーブとを含み、上記圧縮状態は、上記スリーブの内面と、上記スリーブと上記腕部との間の間隔を増やして開放状態に戻そうとする上記腕部との間に生じる張力及び/又は摩擦力により維持され、上記留め具は、上記スリーブを上記チェーンに沿って移動させるための上記摩擦力の閾値を超える十分な外力が上記スリーブに作用する単一動作による開放機構により開放され、
b)それぞれのピンの1つの腕部に接続されるチェーンを備える、
交換式ジュエリー連結システム。
【0019】
6.上記1以上の留め具のそれぞれにより固定されるように適合される1以上のジュエリー要素又は他のジュエリーをさらに備える、態様5によるジュエリーシステム。
【0020】
7.上記チェーンは、上記ピンの上記腕部が溶接される又は取り付けられるブレスレット、アンクレット、指輪、又はイヤリングのようなジュエリー関連品の一部である、態様5によるジュエリーシステム。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1A~
図1Fは、従来技術による異なるタイプの留め具を模式的に示すものである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態によるスリーブ及びピンを含む留め具を模式的に示すものである。
【
図3A】
図3Aは、開放状態における
図2の留め具のピンを模式的に示すものである。
【
図3B】
図3Bは、圧縮状態における
図2の留め具のピンを模式的に示すものである。
【
図4】
図4は、
図2の留め具のスリーブを模式的に示すものである。
【
図5A】
図5Aは、開状態におけるジュエリーシステムの一部としての
図2の留め具を模式的に示すものである。
【
図5B】
図5Bは、閉状態におけるジュエリーシステムの一部としての
図2の留め具を模式的に示すものである。
【
図6】
図6は、1つよりも多くの留め具を含むジュエリーシステムを模式的に示すものである。
【
図7】
図7Aから
図7Dは、本発明の一態様による留め具の実施形態を模式的に示すものである。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、本発明のさらに他の実施形態による留め具を模式的に示すものである。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、それぞれアンロック状態及びロック状態における本発明の一実施形態による留め具を模式的に示すものである。
【
図10】
図10Aから
図10Fは、本発明の少なくともある実施形態による、1つよりも多くの留め具を含むジュエリーシステムのさらなる例を模式的に示すものである。
【発明の詳細な説明】
【0022】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を参照する。本発明の例が添付図面に図示されている。実施可能である場合には、図面において類似又は同様の参照番号が使用されることがあり、類似又は同様の機能を示すことがある。図は、例示のためだけに本発明の実施形態を表すものである。当業者であれば、本明細書で述べられた本発明の原理から逸脱することなく、本明細書に示されている構造及び方法の別の実施形態を用いることができることは以下の説明から簡単に理解できるであろう。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態による留め具10を模式的に示すものである。この留め具10は、2つの主たる要素を有するものとして規定され得る。1つ目の要素はスリーブ11であり、2つ目の要素はピン12である。
【0024】
図3A及び
図3Bに最も良く示されているように、ピン12は、2つの脚部又は腕部13及び14を有しており、(例えば、
図2に示されるように)対応するスリーブ又は包囲フープ11により腕部を囲むことができるように(
図3Bに示されるように)腕部13,14の間の距離を縮めるために腕部13,14が互いに押し付け合うように構成され得る。圧力が解放されると、(
図3Aに示されるように)ピン12の弾性特性により腕部13,14間の距離が増加する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、ピン12の1つの腕部(例えば腕部14)は、例えば溶接や他の接続手段によってチェーンに恒久的に接続されていてもよく、例えばペンダント18を腕部13に通し、さらに/あるいは腕部13上に装着できるようにピン12の腕部14がチェーン17の一端に接続されている
図5Aに模式的に示されているように、他の腕部(例えば腕部13)は、ペンダント(又は他のジュエリー要素)をその腕部に通し、さらに/あるいは腕部上に装着できるように自由なままとされてもよい(すなわち、
図5Aにおいて示されている未取付自由端7となる)。
【0026】
留め具10の一実施形態を示している
図8A及び
図8Bに注目すると、この留め具10は、チェーン17の1つの腕部(ここでは腕部14)に取り付けられる(おそらく恒久的に取り付けられる)ように構成され得るピン12を含んでいる。この例では、腕部14の一端に最初に取り付けられる接続部材19によってそのような取付が簡単になり得るが、部材19は、次に腕部14又は13に取り付けられるように構成され得るチェーン17の端部(この選択肢は示されていない)に等しく接続され得る。
【0027】
図8Aにおいて、チェーン17は、最初は留め具10に対して取り付けられていない状態として示されており、
図8Bにおいて、チェーン17の端部が部材19の内部に位置しているように見えており、腕部14をチェーン17に取り付けるために、その後、この部材19を例えばクリンピングにより操作してもよい。図示されているように、チェーン17は、例えば留め具10に取り付けられる前に、スリーブ11に通されてもよく、この結果、取付後にスリーブを留め具の2つの腕部に嵌合させるようにしてもよい。
【0028】
本発明の一態様においては、その2本脚のピンとスライド可能なスリーブの組み合わせによる留め具の実施形態は、ジュエリーシステムにおいて比較的低いプロファイルの美的外観を利点のあるものとしつつ、有用性を高めることができる。
【0029】
そのように有用性を高めることは、ピンの腕部の一方(例えば、
図5においては腕部14)をチェーンへの取付を可能にするように構成するとともに、スリーブを潰された腕部の周囲に置いたときにスリーブを適切な位置に保持するのを補助するためにも当該腕部を用いることによって実現され得る。スリーブの内面に対して外側に曲がるように構成された腕部(チェーンに取り付けられた腕部を含む)によってスリーブを適切な位置に保持することが容易になる。
【0030】
他の例では、2つの腕部の間に位置し、これらの腕部に接続されるピンの円弧形状の頭部15が、腕部を互いに離れる方向に付勢するために必要とされる一方向の弾性を高めるように構成されるとともに、チェーン、留め具、ペンダント(又はこれに類するもの)のような他のジュエリー部材に取り付けるための好適な半ループ状の構造としても機能する。
【0031】
さらなる例においては、スリーブは、ピンの2本脚(又は腕)の機構の上に組み合わされた際にピンの2本脚(又は腕)の機構を隠すように構成され(例えば
図9及び以下の各説明を参照)、このスリーブはジュエリー部品又は部材に実質的に似ており、(そして通常外部から見えたままになる主に機能的な留め具のような部品では必ずしもない(
図1Aから
図1F参照))留め具の実施形態に対する美的外観が高められる。
【0032】
好ましくはスリーブの表面にその内部を明らかにし得るような開口、アパーチャ、スリット(又はこれに類するもの)を形成しないことにより、その内部の2本脚の機構を隠すのを補助することができる。
【0033】
それぞれアンロック状態(
図9A)及びロック状態(
図9B)にある留め具10の一実施形態を示している
図9A 及び
図9Bに注目する。まず、
図9Bに示されるロック状態に目を向けると、本発明の考えられる態様が腕部(脚部)の少なくとも一方において具体化されており、腕部13が他の腕部(この例は腕部14)よりも短く構成されている。図示された例では、長い方の腕部14がチェーン17に取り付けられているように見えるが、チェーン17が短い方の腕部(この例では腕部13)に取り付けられていてもよいことに留意されたい。
【0034】
場合によっては、長い方の腕部にチェーンを接続することにより、(チェーンが短い方の腕部に接続されていたとすると)チェーンと他方の腕部とがスリーブ内に位置した際に互いに衝突/干渉し、このためにスリーブの直径を増加する必要が生じる可能性を低減することができる。このような可能性は、留め具の低いプロファイルの美的外観を阻害することがある。
【0035】
腕部の延出長さが異なることにより、両方の腕部が互いに相対的に押し付けられた留め具における視認性及び測定可能性が向上し、例えば両方の腕部がスリーブ11により比較的近くに保持される留め具のロック状態のように、結果的に腕部が留め具の円弧状頭部15から並んで実質的に延びることとなる。この例では、腕部13が、頭部15から端部133に延びているように示され、腕部14が、頭部15から端部133を越えた位置にある端部144に延びているように示されており、これにより、腕部14が腕部13の端部133を越えて突出している。
【0036】
本発明の一態様においては、(例えばその軸方向の一端で頭部15に対して押し込んだ際に)スリーブ11は、好ましくは少なくともある留め具の実施形態のロック状態において腕部を覆い隠すようなサイズの軸方向延出長さLを有するような大きさであってもよい。
図9Bにおいては、スリーブ11の軸方向のサイズLは、この留め具の例においては、異なる軸方向延出長さを有する2つの腕部を隠すように示されているが、軸方向延出長さが略等しい腕部を有する実施形態においても、このように腕部を隠すことが好ましい。
【0037】
このように留め具のロック状態において腕部を隠すことによって、ジュエリー部品又は部材(通常外部から見えたままになる主に機能的な留め具のような部品では必ずしもない(
図1Aから
図1F参照))に似
た美的外観が
留め具に提供される。
【0038】
図9Aに目を向けて、少なくともある留め具の実施形態をロック状態になるように促すと考えられる方法に関する本発明の態様について述べる。そのような方法の考えられる最初のステップにおいては、留め具の長い方の腕部(この例では腕部14)が、その端部144に隣接する部分がスリーブ11内に位置する位置まで(好ましくは手で)動かされる。
【0039】
この位置になると、(留め具の使用者により手で保持された)スリーブ11を、他方の腕部(この例では腕部13)を腕部14に向かって動かすために他方の腕部を押し付けることができる支持基部として用いることができる。両方の腕部が(例えば概して互いに並んで延びるように)互いに隣接した位置に保持されると、留め具のピン12をスリーブ11に簡単に滑り込ませることができ、さらに/あるいは、
図9Bに示されるロック状態に至るまでスリーブ11を腕部上で簡単に移動させることができる。
【0040】
当業者が理解できるように、ピン12は、2つの腕部を有していれば任意の形状又はサイズを有することができる。
【0041】
図4に最も良く示されているように、スリーブ11は、概してビーズのような形状であってもよく、おそらく自由にチェーン17に沿って摺動可能に移動できるようにジュエリーのチェーン17(例えば、
図5参照)上に装着されるように適合されていてもよい。さらに、スリーブ11は、ピン12の腕部13,14を囲むのに適した内径を有しており、腕部13,14とスリーブ11の内面16との間に張力及び力が発生するので腕部13,14を押し付けた状態に維持する。
【0042】
留め具10を係止するために、ピン12の腕部13,14を互いに押し付け合って、腕部13,14上にスリーブ11を装着するだけでもよい。腕部13,14は
図3Aに示される初期状態又は開放状態に戻るために腕部13,14の間の間隔を増加させようとするので、腕部13,14によってスリーブ11に力が生じる。ピン12の腕部13,14にスリーブ11が装着されて圧縮状態となると、スリーブ11の内面16と面16を外側に押すように維持される腕部13,14との間に生じる張力及び/又は摩擦力により、スリーブ11は、実質的にピン12に嵌合した状態に維持される。
【0043】
留め具を含むジュエリーシステムを普通に使用している間は、スリーブ11は、腕部との係合が外れるように作用する相当な力に曝されることはなく、したがって、腕部によってスリーブ11に作用する半径方向外側に向かう力によって、スリーブ11はこの留め具の「ロック」位置に安全に留まる。
【0044】
留め具10を外すために、チェーン17に沿ってスリーブ11を移動又はスライドさせ、これによって、おそらく単一動作による開放機構においてスリーブ11をピン12から簡単に外すために、例えば腕部との相互支持作用を介してスリーブ11に作用する摩擦力の閾値を超える十分な外力をスリーブ11に作用させてもよい。
【0045】
ピンの腕部13,14上にスリーブ11を装着すると、
図5Bに模式的に示されるように、ピン12に通され、さらに/あるいはピン12に装着されるペンダント18を閉じて保持するロック構成としてスリーブ11を用いることができる。
【0046】
当業者が理解できるように、スリーブ11は、ピンの腕部を一緒に囲むのに適切な内径を有していれば、任意のサイズ、形状又は構成を有することができる。
【0047】
留め具10は、留め具を最小サイズに維持し、デザインの系統に視覚的な干渉を生じることなくジュエリーの美観と元のデザインを維持しつつ、ジュエリーを相互に交換可能にする、素早い動作による簡単な連結機構としての役割を有することに留意すべきである。
【0048】
また、少なくとも本発明のある実施形態における交換式ジュエリー連結システムは、普通のジュエリー留め具として利用できるだけでなく、新しいジュエリー又はジュエリーの組み合わせを生み出すためにも簡単に利用できることに留意すべきである。したがって、交換式ジュエリー連結システムは、デザインに関する無限の可能性を生み出すものである。
【0049】
例えば、チェーン上のペンダントを異なるペンダントに簡単に交換でき、ブレスレット/アンクレット/指輪/イヤリングなどに対しても簡単に再利用できる。他の例においては、ネックレスを簡単に他のネックレスに接続して、装飾品のついた又は装飾品のない長いチェーンを作ることができる。さらに他の例では、ネックレスをブレスレットに接続して、より長いチェーンを作ったり、ブレスレットの周囲に長いラップを作ったりすることができる。さらに他の例では、イヤリング部品をチェーンに接続して、イヤリング部品が装飾品としての役割を有する「T」チェーンを作ることができる。
【0050】
次に、新しいジュエリーを簡単に作る種々の交換式ジュエリー連結システムを構成するために留め具10の実施形態をどのように利用し得るのかについての例を示している
図10Aから
図10Fに注目する。
【0051】
図10Aにおいては、考えられる種々のジュエリーの組み合わせを構成するために、4つのペンダント180と両端に本発明の留め具10の実施形態を含むチェーン17とをどのように利用し得るのかについての例が示されている。この例における4つのペンダント180は、1対のイヤリング181と、滴状のネックレスペンダント182と、ハート形のブレスレットペンダント183とを含んでいる。
【0052】
ペンダント180及び留め具10を有するチェーン17は、例えば誰かが所有しているものであってもよく、以下の考えられる例においては、種々のジュエリーの組み合わせを構成するために、留め具10によって容易になる相互交換可能性をどのように利用し得るのかについて説明する。
【0053】
この例におけるチェーン17は、ネックレスとして着用するのに好適なものであってもよく、首に着用した場合に(首は図示されていない)、留め具10をネックレスの上方位置に配置する、すなわち首の後ろで首の前面側に向けてもよく(図の左上方を参照)、あるいは、ネックレスの下方位置に配置してもよい(図の右上方を参照)。
【0054】
図示されたように、ペンダント180を(図の左側において見られるように)チェーン17に通してもよく、あるいは、いわゆるスプリット状のネックレスを構成するために留め具に連結してもよい(すなわち、2つの留め具の間に装着してもよい)。加えて、(図の中央下方に示されているように)いくつかのペンダントを選択してチェーンに通してもよい。
【0055】
図10Bは、様々な新しいジュエリーを構成するために、いくつかのペンダントと両端に2つの留め具を有するチェーンとをどのように利用し得るかに関する同種のモジュール性を図示するものである。ここで、留め具の一方(この例では上側の留め具)をチェーン上に留めた後、1以上のペンダントをネックレスに固定するために(上側のお留め具から下方にぶら下がるチェーンセグメントの端部に位置する)下側の留め具を用いることにより、チェーン(図の左上方を参照)をネクタイ状ネックレスとして配置してもよい。
【0056】
図の右上方において、選んだ任意のペンダントを留め具に連結して(すなわち2つの留め具の間に装着して)チェーンを非対称に配置することも考えられる。この図の下方には、美的エクステンションとしてネックレスの下部に装着される短いチェーン(おそらくスプリットブレスレットの一部)の例が示されている。この例では、チェーンの他端に装着された留め具に連結されたペンダントの開口に通されたチェーンによってネクタイ状の外観となり得る。
【0057】
図10C及び
図10Dは、ペンダントを2つの対向する留め具の間に配置し(これらに装着し)つつ、スプリットブレスレットの2つの部品をどのようにネックレスのチェーンに装着するのかについてのさらなる例を示している。
図10E及び
図10Fは、様々なジュエリーの組み合わせを構成するために、ペンダント付きのスプリット状のブレスレットのチェーンとともにイヤリングをどのように利用し得るのか(
図10E)、及び/又は、様々なジュエリーの組み合わせを構成するために、リング状のエクステンションチェーンとブレスレットチェーンとを有するチェーンをどのように利用し得るのか(
図10F)を示している。
【0058】
したがって、上記の例は、これまでに顧客に利用可能となっているジュエリーから新しいジュエリー又はジュエリーシステムを構成する際にモジュール性を提供するために、本発明の留め具の実施形態をどのように利用し得るのかを示している。
【0059】
ここで、
図7Aから
図7Dを参照すると、本発明の一態様によれば、開放されたリング状の形態を有するピン120を含むように留め具100の実施形態を構成してもよい。この実施形態におけるピン120は、端部131,141のそれぞれに2つの腕部130,140と、ピン120の腕部の一方(この例では腕部130)上にスライド可能に位置するスリーブ110とを有している。スリーブ110をピン120の他方の腕部140(又は端部141)に向かってスライドさせることにより、
図7Bに示されるように留め具100をロックすることができ、スリーブ110を反対方向にスライドさせることにより、
図7Aに示されるように留め具100のロックを解除することができる。
【0060】
図7Bに印された平面「A」は、スリーブ110が腕部の端部131,141に装着された際に、腕部130,140を有するピン120が概して置かれる平面を表している。
図7A及び
図7Bに印された方向「B」は、平面「A」内に略位置する方向に沿って見た、留め具100のスリーブの図を表している。
【0061】
この結果、方向「B」に沿って見た図は、スリーブ110及びそれぞれの腕部の端部131,141に隣接する部分に向けられた図を示している。
図7Cは、留め具100がアンロック状態にあるときの
図7Aにおいて見られるような図を示しており、
図7Dは、留め具100がロック状態にあるときの
図7Bにおいて見られるような図を示している。
【0062】
図7Cで分かるように、アンロック状態にある留め具100の腕部130,140は、一方がその端部131,141に隣接する他方に対して整列されないように構成される。略螺旋状のルートHに沿って延びるように構成されたピン120によって、腕部の端部が整列されないように付勢するバネに似た性質をピン120に与えることが考えられる
【0063】
図示されているように、ピン120の形状は、その端部131,141が整列されないように位置決めするように構成されており、腕部の端部上にスライドするように力を加えたとしても腕部の一方の上に位置しているスリーブ110は、スリーブ110が腕部から脱落することを防止する(ひいてはスリーブ110がピン120から脱落することを防止する)他方の腕部の対向する端部(この例では端部141)に合致するように配置される。
【0064】
少なくともある実施形態においては、(
図7A及び
図7Cに示されるような)端部131,141が整列されない構成は、端部131,141に隣接する螺旋ルートHの線分間の距離dと腕部の幅(おそらく直径)D2及び/又はスリーブの幅(おそらく直径)D1とによって定義され得る。そして、概してdがおよそD1及び/又はおよそD2よりも小さいという関係を満たすように構成される。
【0065】
図7B及び
図7Dに示されるロック状態になるように留め具100に力を加えるために、腕部の端部が互いに対向するように略整列されるように(少なくとも瞬間的に)腕部の端部に(好ましくは手により)力が加えられる。この結果、その後に、腕部の両端部131,141をカバーするためにスライドするようにスリーブ110に力を加えることができる。この状態では、腕部を離すと、(
図7Dに示されるように)スリーブ110の内面に合致するまで腕部は整列されていない状態(
図7Cで最も良く分かる)に戻るように構成される。
【0066】
この状態では、スリーブの内面に対するそれぞれの腕部の付勢の反作用により、スリーブをこの状態に維持するように向けられる力Fが作用する。スリーブ110を
図7Cに示される位置に向けて戻すようにスライドすることにより、留め具がアンロック状態となる
図7Cに示される位置に腕部が完全に戻ることが可能となる。
【0067】
上記のすべての説明及び例は、図解のためになされたものであり、本発明をいかなる方法においても限定することを意図しているものではない。本発明の範囲を逸脱することのない多くの異なる機構をいずれも用いることができる。