(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20240122BHJP
E04B 1/61 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E04G21/12 105A
E04B1/61 502J
E04B1/61 502K
E04G21/12 105E
(21)【出願番号】P 2020000655
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大季
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-124101(JP,U)
【文献】特開平11-044007(JP,A)
【文献】特開2002-220924(JP,A)
【文献】特表2019-537521(JP,A)
【文献】特開2015-186851(JP,A)
【文献】特開2018-199939(JP,A)
【文献】特開平11-293766(JP,A)
【文献】特開2008-008120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/02-21/22
E04B1/38-1/61
E04C5/18
B33Y10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレキャストコンクリート部材をそれぞれ設置位置に据え付け、前記複数のプレキャストコンクリート部材を接合する接合部が形成される接合部形成領域に、前記複数のプレキャストコンクリート部材それぞれの鉄筋を配置するプレキャストコンクリート部材据え付け工程と、
前記接合部を形成して前記複数のプレキャストコンクリート部材を接合するプレキャストコンクリート部材接合工程と、を有し、
前記プレキャストコンクリート部材接合工程では、前記接合部形成領域に
3Dプリンターからなる第1付加製造装置の第1ノズルで水硬性混合物を積層造形
し、
前記接合部形成領域に、前記接合部を補強するための補強部材を設置する補強部材設置工程を有し、
前記補強部材は、直線状の鉄筋であり、
補強部材設置工程では、前記接合部形成領域に3Dプリンターからなる第2付加製造装置の第2ノズルで補強材料を積層造形して、前記接合部形成領域に前記補強部材を製作することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合方法。
【請求項2】
複数のプレキャストコンクリート部材をそれぞれ設置位置に据え付け、前記複数のプレキャストコンクリート部材を接合する接合部が形成される接合部形成領域に、前記複数のプレキャストコンクリート部材それぞれの鉄筋を配置するプレキャストコンクリート部材据え付け工程と、
前記接合部を形成して前記複数のプレキャストコンクリート部材を接合するプレキャストコンクリート部材接合工程と、を有し、
前記プレキャストコンクリート部材接合工程では、前記接合部形成領域に
3Dプリンターからなる第1付加製造装置の第1ノズルで水硬性混合物を積層造形
し、
前記複数のプレキャストコンクリート部材の前記鉄筋同士を接合する鉄筋接合工程を有し、
前記鉄筋接合工程では、3Dプリンターからなる第3付加製造装置の第3ノズルで鉄筋接合材料を積層造形して前記鉄筋同士を直接接合することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場における生産性向上を図るために、柱や梁、床版などをプレキャストコンクリート部材として工場で製作し、現場に運搬して組立て接合している(例えば、特許文献1参照)。このように、プレキャストコンクリート部材を用いることで、工期短縮を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プレキャストコンクリート部材どうしの接合工程は、接合されるプレキャストコンクリート部材の鉄筋を接合する工程、接合部の配筋を行う工程、接合部の型枠を設置する工程、接合部のコンクリートを打設する工程など多くの工程を行う必要があり、労力および工期がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、労力を軽減できるとともに工期を短縮できるプレキャストコンクリート部材の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の接合方法は、複数のプレキャストコンクリート部材をそれぞれ設置位置に据え付け、前記複数のプレキャストコンクリート部材を接合する接合部が形成される接合部形成領域に、前記複数のプレキャストコンクリート部材それぞれの鉄筋を配置するプレキャストコンクリート部材据え付け工程と、前記接合部を形成して前記複数のプレキャストコンクリート部材を接合するプレキャストコンクリート部材接合工程と、を有し、前記プレキャストコンクリート部材接合工程では、前記接合部形成領域に第1付加製造装置の第1ノズルで水硬性混合物を積層造形することを特徴とする。
【0007】
本発明では、接合部形成領域に水硬性混合物を積層造形することにより、接合部形成領域に積層造形された水硬性混合物に複数のプレキャストコンクリート部材の鉄筋が埋設されて、水硬性混合物が硬化することで複数のプレキャストコンクリート部材が接合される。
水硬性混合物が第1付加製造装置の第1ノズルで積層造形されることにより、自動的に接合部を形成できて生産性が向上するため、労力を軽減できるとともに工期を短縮できる。
【0008】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の接合方法では、前記接合部形成領域に、前記接合部を補強するための補強部材を設置する補強部材設置工程を有していてもよい。
このような構成とすることにより、接合部の強度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の接合方法では、補強部材設置工程では、前記接合部形成領域に第2付加製造装置の第2ノズルで補強材料を積層造形して、前記接合部形成領域に前記補強部材を製作してもよい。
このような構成とすることにより、補強部材の製作と設置を自動的に行うことができて生産性が向上するため、労力を軽減できるとともに工期を短縮できる。
【0010】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の接合方法では、前記複数のプレキャストコンクリート部材の前記鉄筋を接合する鉄筋接合工程を有していてもよい。
このような構成とすることにより、複数のプレキャストコンクリート部材を確実に接合することができる。
【0011】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の接合方法では、前記鉄筋接合工程では、第3付加製造装置の第3ノズルで鉄筋接合材料を積層造形して前記鉄筋同士を直接接合してもよい。
このような構成とすることにより、鉄筋の接合を自動的に行うことができて生産性が向上するため、労力を軽減できるとともに工期を短縮できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、労力を軽減できるとともに工期を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合部の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合方法のプレキャストコンクリート部材接合工程を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合方法のプレキャストコンクリート部材接合工程を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態の変形例によるプレキャストコンクリート部材の接合方法のプレキャストコンクリート部材接合工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合方法について
図1および
図2に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合部1は、それぞれ床版を構築するプレキャストコンクリート製の第1プレキャストコンクリート部材2(以下、第1プレキャスト部材2とする)と、第2プレキャストコンクリート部材3(以下、第2プレキャスト部材3とする)とを接合している。
図1では、接合部1、第1プレキャスト部材2および第2プレキャスト部材3を含む床版の一部を示している。
第1プレキャスト部材2および第2プレキャスト部材3は、工場などで製作され、建設現場に搬入されて所定の位置に設置される。接合部1は、建設現場において構築され、第1プレキャスト部材2と第2プレキャスト部材3とを接合している。
図1では、接合部1の内部を示すために、接合部1の接合コンクリート部4と第2プレキャスト部材3の第2コンクリート部31を省略している。
【0015】
第1プレキャスト部材2と第2プレキャスト部材3とは、接合部1を介して水平方向に並んで配置されている。
接合部1を介して第1プレキャスト部材2と第2プレキャスト部材3とが並ぶ水平方向を第1水平方向(図のX方向)とし、第1水平方向に直交する水平方向を第2水平方向(図のY方向)とする。第1水平方向のうち、第2プレキャスト部材3に対する第1プレキャスト部材2が設けられている側を一方側とし、第1プレキャスト部材2に対する第2プレキャスト部材3が設けられている側を他方側とする。
【0016】
第1プレキャスト部材2は、鉄筋コンクリート造である。第1プレキャスト部材2のコンクリート部分を第1コンクリート部21とする。
第1プレキャスト部材2は、複数の第1鉄筋22を有している。複数の第1鉄筋22は、第1コンクリート部21に埋設される部分と、第1コンクリート部21における第1水平方向の他方側(接合部1側)の端面21a(第1接合端面21aとする)から第1水平方向の他方側に突出する第1鉄筋突出部23と、を有している。
複数の第1鉄筋22は、第2水平方向に間隔をあけて配置されている。複数の第1鉄筋22それぞれの第1鉄筋突出部23も第2水平方向に間隔をあけて配置されている。
【0017】
第1鉄筋突出部23は、U字形状に曲がっている。第1鉄筋突出部23は、U字形の円弧状に湾曲する湾曲部分231が先端側(第1水平方向の他方側)に位置し、湾曲部分231に接続されて平行で直線状に延びる2つの直線部分232,232が基端側(第1水平方向の一方側)に位置している。第1鉄筋突出部23は、2つの直線部分232,232が上下方向に間隔をあけるように配置されている。
【0018】
第2プレキャスト部材3は、鉄筋コンクリート造である。第2プレキャスト部材3のコンクリート部分を第2コンクリート部31とする。
第2プレキャスト部材3は、複数の第2鉄筋32を有している。複数の第2鉄筋32は、第2コンクリート部31に埋設される部分と、第2コンクリート部31における第1水平方向の一方側(接合部1側)の端面31a(第2接合端面31aとする)から第1水平方向の一方側に突出する第2鉄筋突出部33と、を有している。
複数の第2鉄筋32は、第2水平方向に間隔をあけて配置されている。複数の第2鉄筋32それぞれの第2鉄筋突出部33も第2水平方向に間隔をあけて配置されている。
【0019】
第2鉄筋突出部33は、U字形状に曲がっている。第2鉄筋突出部33は、U字形の円弧状に湾曲する湾曲部分331が先端側(第1水平方向の一方側)に位置し、湾曲部分331に接続されて平行で直線状に延びる2つの直線部分332,332が基端側(第1水平方向の他方側)に位置している。第2鉄筋突出部33は、2つの直線部分332,332が上下方向に間隔をあけるように配置されている。
【0020】
第1プレキャスト部材2と第2プレキャスト部材3とは、第1コンクリート部21の第1接合端面21aと第2コンクリート部31の第2接合端面31aとが第1水平方向に間隔をあけて対面するように配置されている。接合部1は、第1接合端面21aと第2接合端面31aとの間に設けられている。
【0021】
第1鉄筋突出部23および第2鉄筋突出部33は、接合部1の内部に配置されている。本実施形態では、第1鉄筋突出部23と第2鉄筋突出部33とは、それぞれ同じ数が設けられている。第1鉄筋突出部23と第2鉄筋突出部33とは、第2水平方向に重なる位置に設けられている。第1鉄筋突出部23の湾曲部分231が第2鉄筋突出部33の湾曲部分331よりも第1水平方向の他方側(第2プレキャスト部材3)に位置している。第1鉄筋突出部23の直線部分232,232と、第2鉄筋突出部33の直線部分332,332とが、第2水平方向に重なって配置されている。
【0022】
本実施形態では、接触または近接して設けられた1つの第1鉄筋突出部23と1つの第2鉄筋突出部33との鉄筋の組が、第2水平方向に間隔をあけて複数配置されている。第1鉄筋突出部23および第2鉄筋突出部33それぞれの直線部分232,332が接触または近接して設けられている。なお、直線部分232,332のうちの先端側(湾曲部分231,331と接続されている側)どうしが接触または近接して設けられている。
第1鉄筋突出部23の先端側の部分と第2鉄筋突出部33の先端側の部分とは、第2水平方向から見て第1水平方向に延びる長円を囲むように配置されている。
【0023】
接合部1は、鉄筋コンクリート造である。接合部1のコンクリート部分を接合コンクリート部4とする。接合部1の接合コンクリート部4には、第1鉄筋突出部23および第2鉄筋突出部33が埋設されているとともに、補強鉄筋6(補強部材)が埋設されている。補強鉄筋6は、接合部1を補強するために設けられている。
【0024】
補強鉄筋6は、直線状の鉄筋で、第2水平方向に延び、接合部1の第2水平方向の両端部分を除いた領域全体にわたるよう配置されている。補強鉄筋6は、第1鉄筋突出部23の先端側の部分と、第2鉄筋突出部33の先端側の部分とに囲まれている領域1aを貫通するように複数設けられている。本実施形態では、補強鉄筋6は、上記の領域1aの上部側に第1水平方向に間隔をあけて3本、下部側に第1水平方向に間隔をあけて3本の計6本が設けられている。
これらの複数の補強鉄筋6は、第1鉄筋突出部23および第2鉄筋突出部33の少なくとも1つと結束されている。
【0025】
次に、第1実施形態の第1プレキャスト部材2と第2プレキャスト部材3との接合方法(プレキャストコンクリート部材の接合方法)を説明する。
第1プレキャスト部材2と第2プレキャスト部材3とをそれぞれが設置される設置位置に据え付けるプレキャストコンクリート部材据え付け工程を行う。
プレキャストコンクリート部材据え付け工程では、接合部1が形成される接合部形成領域11に第1鉄筋突出部23および第2鉄筋突出部33が配置されるように第1プレキャスト部材2および第2プレキャスト部材3を据え付ける。
【0026】
接合部1を形成して第1プレキャスト部材2と第2プレキャスト部材3とを接合するプレキャストコンクリート部材接合工程を行う。
プレキャストコンクリート部材接合工程では、まず、接合部1の配筋を行い(接合部配筋工程)、接合部1の型枠13(
図2参照)を設置し(型枠設置工程)、型枠13に接合コンクリート部4となる水硬性混合物12を積層造形する(水硬性混合物積層造形工程)。
接合部配筋工程では、接合部形成領域11に補強鉄筋6を配筋する補強鉄筋配筋工程(補強部材設置工程)を行う。補強鉄筋6を第1鉄筋突出部23および第2鉄筋突出部33の少なくとも1つと結束する。
【0027】
本実施形態の補強鉄筋配筋工程(補強部材設置工程)では、接合部形成領域11に既に製作された補強鉄筋6を設置する。なお、補強鉄筋配筋工程(補強部材設置工程)では、第2付加製造装置(不図示)で積層造形することで補強鉄筋6を製作してもよい。例えば、接合部形成領域11に第2付加製造装置の第2ノズル(不図示)から補強材料を噴射して積層造形して補強鉄筋6を製作してもよい。補強鉄筋6を製作するための補強材料は、例えば、金属などである。
型枠設置工程では、接合部形成領域11に沿って接合部1の型枠13を設置する。
【0028】
図2に示すように、水硬性混合物積層造形工程では、第1付加製造装置71(例えば、3Dプリンター)の第1ノズル711で型枠13内に水硬性混合物12を噴射して積層造形する。
水硬性混合物12は、例えばコンクリート流動物などで、種々のセメント系材料(例えば、セメントペースト、モルタル、コンクリート等)、ジオポリマー組成物等を含んでいる。
【0029】
第1ノズル711は、例えば遠隔操作による移動や自動走行が可能なロボットアームやガントリークレーンなど(不図示)に装着されている。
図2では、第1付加製造装置71の第1ノズル711のみが示されている。
なお、第1付加製造装置71の構成は、特に限定されない。また、第1付加製造装置71およびロボットアーム(またはガントリークレーンなど)の少なくとも一方が遠隔操作による移動や自動走行が可能であってもよく、第1付加製造装置71およびロボットアーム(またはガントリークレーンなど)の双方が遠隔操作による移動や自動走行が可能であってもよい。
【0030】
型枠13内に積層造形された水硬性混合物12を硬化させ、水硬性混合物12を第1鉄筋突出部23、第2鉄筋突出部33および補強鉄筋6と定着させる。
水硬性混合物12が硬化したら型枠13を外す。
このようにして接合部1が構築され、第1プレキャスト部材2と第2プレキャスト部材3とが接合される。
【0031】
次に、上記の第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合方法の作用・効果について説明する。
第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合方法では、接合部形成領域11に水硬性混合物12を積層造形することにより、接合部形成領域11に積層造形された水硬性混合物12に第1プレキャスト部材2の第1鉄筋突出部23および第2プレキャスト部材3の第2鉄筋突出部33が埋設されて、水硬性混合物12が硬化することで第1プレキャスト部材2と第2プレキャスト部材3とが接合される。
水硬性混合物12が第1付加製造装置71の第1ノズル711で積層造形されることにより、自動的に接合部1を形成できて生産性が向上するため、労力を軽減できるとともに工期を短縮できる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
図3に示すように、第2実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合部1Bは、
図1に示す第1実施形態の接合部1に設けられていた補強鉄筋6が設けられておらず、第1プレキャスト部材2Bの第1鉄筋22Bと第2プレキャスト部材3Bの第2鉄筋32Bとが鉄筋接合部9によって接合されている。
【0033】
第2実施形態では、第1プレキャスト部材2Bの第1鉄筋22Bは、第1水平方向に直線状に延び、第1水平方向の他方側の部分が第1コンクリート部21の第1接合端面21aから第1水平方向の他方側に突出している。第2実施形態においても、第1鉄筋22Bにおける第1接合端面21aから突出する部分を第1鉄筋突出部23Bとする。第2実施形態の第1鉄筋突出部23Bは、直線状に延びている。
第2プレキャスト部材3Bの第2鉄筋32Bは、第1水平方向に直線状に延び、第1水平方向の一方側の部分が第2コンクリート部31の第2接合端面31aから第1水平方向の一方側に突出している。第2実施形態においても、第2鉄筋32Bにおける第2接合端面31aから突出する部分を第2鉄筋突出部33Bとする。第2実施形態の第2鉄筋突出部33Bは、直線状に延びている。
【0034】
第1鉄筋突出部23Bと、第2鉄筋突出部33Bとは、第1水平方向に重なるように同軸に配置されている。第1鉄筋突出部23Bと、第2鉄筋突出部33Bとは第1水平方向に間隔をあけて配置されていて、第1鉄筋突出部23Bと第2鉄筋突出部33Bとの間の鉄筋接合部9によって接合されている。
【0035】
第2実施形態の第1プレキャスト部材2Bと第2プレキャスト部材3Bの接合方法(プレキャストコンクリート部材の接合方法)では、プレキャストコンクリート部材接合工程において、水硬性混合物積層造形工程の前に第1鉄筋22Bと第2鉄筋32Bとを接合する鉄筋接合工程を行う。
【0036】
鉄筋接合工程は、接合部形成領域11の第1鉄筋突出部23Bと第2鉄筋突出部33Bとの間に第3付加製造装置73(例えば、3Dプリンター)の第3ノズル731から第1鉄筋突出部23Bと第2鉄筋突出部33Bとを接合するための鉄筋接合部9の鉄筋接合材料15を噴射して積層造形し、第1鉄筋突出部23Bと第2鉄筋突出部33Bとの間に鉄筋接合部9を製作し、第1鉄筋突出部23Bと第2鉄筋突出部33Bとを接合する。鉄筋接合材料15は、例えば、金属などである。
第3付加製造装置73の第3ノズル731についても、例えば遠隔操作による移動や自動走行が可能なロボットアームやガントリークレーンなど(不図示)に装着されている。図3では、第3付加製造装置73の第3ノズル731のみが示されている。なお、第3付加製造装置73の構成は、特に限定されない。また、第3付加製造装置73およびロボットアーム(またはガントリークレーンなど)の少なくとも一方が遠隔操作による移動や自動走行が可能であってもよく、第3付加製造装置73およびロボットアーム(またはガントリークレーンなど)の双方が遠隔操作による移動や自動走行が可能であってもよい。
【0037】
接合部形成領域11に水硬性混合物12を噴射して積層造形する水硬性混合物積層造形工程では、第1鉄筋突出部23Bおよび第2鉄筋突出部33Bに加え、鉄筋接合部9も水硬性混合物12に埋設する。
水硬性混合物積層造形工程は、鉄筋接合部9が全て形成される前に、鉄筋接合部9が形成された部分(第3付加製造装置73の第3ノズル731から噴射された鉄筋接合材料15が所定の強度となった部分)から順次行うようにしてもよい。すなわち、鉄筋接合工程と水硬性混合物積層造形工程とが同時に行われてもよい。
【0038】
上記の第2実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合方法では、第1プレキャスト部材2Bの第1鉄筋22Bと第2プレキャスト部材3Bの第2鉄筋32Bとを接合する鉄筋接合工程を有することにより、第1プレキャスト部材2Bと第2プレキャスト部材3Bとを確実に接合することができる。
【0039】
上記の第2実施形態によるプレキャストコンクリート部材の接合方法では、鉄筋接合工程では、第3付加製造装置73の第3ノズル731から鉄筋接合材料15を噴射して積層造形し、第1鉄筋22Bと第2鉄筋32Bとを接合していることにより、第1鉄筋22Bと第2鉄筋32Bとの接合を自動的に行うことができて生産性が向上するため、労力を軽減できるとともに工期を短縮できる。
【0040】
以上、本発明による第1プレキャスト部材2,2Bと第2プレキャスト部材3,3Bの接合方法(プレキャストコンクリート部材の接合方法)の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、第1プレキャスト部材2,2Bおよび第2プレキャスト部材3,3Bは、床版を構築する部材であるが、床版に限定されず、柱、梁、壁、ボックスカルバートなどを構築する部材であってもよい。また、第1プレキャスト部材2,2Bおよび第2プレキャスト部材3,3Bの一方が柱の部材で他方が梁の部材で接合部1が柱梁接合部であってもよい。
【0041】
上記の実施形態では、プレキャストコンクリート部材接合工程において、型枠13を設置して型枠13の内部に水硬性混合物12を噴射して積層造形し、接合部1,1Bを構築している。これに対し、型枠13を設置せずに、接合部形成領域11に網状の定着部材を設置し、この定着部材に水硬性混合物12を吹き付けて積層させて接合部1,1Bを構築するようにしてもよい。
このような場合は、予め製作した定着部材を接合部形成領域11に設置してもよいし、現場において接合部形成領域11に付加製造装置で定着部材の材料(たとえば、金属やFRPなど)を噴射して積層造形し、定着部材を形成してもよい。
【0042】
上記の実施形態では、水硬性混合物12を第1ノズル711から噴射して積層造形することで接合部1,1Bを構築しているが、第1ノズル711から噴射せずに出された水硬性混合物12を積層造形することで接合部1,1Bを構築するようにしてもよい。例えば、流動性のあるモルタル材料を接合部形成領域11に流し込むようにして接合部1,1Bを構築してもよい。
【0043】
上記の第1実施形態では、接合部形成領域11に接合部1を補強する補強部材として補強鉄筋6を設置しているが、接合部形成領域11に補強鉄筋6に代わる補強部材を設置してもよい。また、接合部形成領域11に補強鉄筋6と、補強鉄筋6以外の補強部材を設置してもよい。補強鉄筋6以外の補強部材も第2付加製造装置の第2ノズルから補強材料を積層造形して製作してもよい。例えば、樹脂製の補強部材が設置される場合には、補強部材を第2付加製造装置の第2ノズルから補強材料となる樹脂材料を積層造形して製作してもよい。
【0044】
上記の第2実施形態では、鉄筋接合工程では、第3付加製造装置73の第3ノズル731から鉄筋接合材料15を噴射して積層造形し、第1鉄筋突出部23Bと第2鉄筋突出部33Bとを接合しているが、付加製造装置を使用せずに従来のように、重ね継手、ガス圧接継手、機械式継手、溶接式継手などで接合してもよい。
【0045】
上記の第1実施形態では、接合部1に補強部材として補強鉄筋6を設置し、第2実施形態では、接合部1Bの第1鉄筋突出部23Bと第2鉄筋突出部33Bとを接合している。これに対し、接合部1に補強部材を設置するとともに、接合部1の第1鉄筋突出部23と第2鉄筋突出部33とを接合してもよい。
【0046】
例えば、
図4に示す接合部1Cのように、第1プレキャスト部材2から接合部1Cに突出するU字形状の第1鉄筋突出部23と、第2プレキャスト部材3から接合部1Cに突出するU字形状の第2鉄筋突出部33とが第2水平方向に重なって配置され、第1鉄筋突出部23と第2鉄筋突出部33とが接合されるとともに、補強鉄筋6が設置されてもよい。このような場合も、第1鉄筋突出部23Cと第2鉄筋突出部33Cとを第3付加製造装置73(例えば、3Dプリンター)の第3ノズル731から鉄筋接合材料15を噴射して積層造形して、第1鉄筋突出部23Cと第2鉄筋突出部33Cとを接合してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1,1B,1C 接合部
2,2B 第1プレキャスト部材(プレキャストコンクリート部材)
3,3B 第2プレキャスト部材(プレキャストコンクリート部材)
6 補強鉄筋(補強部材)
9 鉄筋接合部
11 接合部形成領域
12 水硬性混合物
15 鉄筋接合材料
22,22B 第1鉄筋
23,23B,23C 第1鉄筋突出部
32,32B 第2鉄筋
33,33B,33C 第2鉄筋突出部
71 第1付加製造装置
73 第3付加製造装置
711 第1ノズル
731 第3ノズル