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特許7423315天板、天板付什器、天板製造方法及び天板付什器製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】天板、天板付什器、天板製造方法及び天板付什器製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47B 13/08 20060101AFI20240122BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A47B13/08 A
B32B15/08 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020001706
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021108832
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 昌秀
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-202511(JP,A)
【文献】特開平08-112878(JP,A)
【文献】登録実用新案第3102348(JP,U)
【文献】特開2000-279234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/08
A47B 13/00
A47B 96/20
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が作業面とされた天板であって、
金属製の天板基体と、前記天板基体の少なくとも上面に被覆された天板被覆層とを有し、
前記天板被覆層は、
外部から視認可能であると共に全体が有色である有色塗料層と、
前記有色塗料層と前記天板基体との間に配置されると共に前記有色塗料層と異なる塗料によって形成された機能塗料層と
を有し
前記機能塗料層は、光を透過可能な透明層であり、
前記有色塗料層は、前記機能塗料層の全体を覆う
ことを特徴とする天板。
【請求項2】
前記機能塗料層は、前記有色塗料層よりも熱伝導率が低い温感調整層であることを特徴とする請求項1記載の天板。
【請求項3】
上面が作業面とされた天板と、前記天板を支持する支持構造体とを備える天板付什器であって、
前記天板として請求項1または2記載の天板を備えることを特徴とする天板付什器。
【請求項4】
上面が作業面とされた天板を製造する天板製造方法であって、
金属製の天板基体の少なくとも上面に塗料を積層して塗布して、外部から視認可能であると共に全体が有色である有色塗料層と、前記有色塗料層と前記天板基体との間に配置されると共に前記有色塗料層と異なる塗料によって形成された機能塗料層とを備える天板被覆層を形成する天板被覆層形成工程を有し、
前記機能塗料層として、光を透過可能な透明層を形成し、
前記有色塗料層を、前記機能塗料層の全体を覆って形成する
ことを特徴とする天板製造方法。
【請求項5】
前記機能塗料層として、前記有色塗料層よりも熱伝導率が低い温感調整層を形成することを特徴とする請求項記載の天板製造方法。
【請求項6】
上面が作業面とされた天板を形成する天板形成工程と、前記天板を支持する支持構造体を形成する支持構造体形成工程と、前記天板と前記支持構造体とを組み付ける組立工程とを有する天板付什器製造方法であって、
前記天板形成工程として、請求項4または5記載の天板製造方法を用いることを特徴とする天板付什器製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板、天板付什器、天板製造方法及び天板付什器製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスや公共施設等の執務空間内においては、執務者の執務効率を向上させるために一般的に什器が設置されている。こうした什器としては、例えば特許文献1に開示されているように、脚体等に支持された天板を有する天板付什器が広く用いられている。例えば、このような天板付什器に設置された天板は、強度を確保するための板金と、板金を覆うように配置されたメラミン化粧板とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6019145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては、薄型や軽量化のために、メラミン化粧板を設置せずに、板金に対して直接塗装を行う天板が提案されている。このように板金に対して直接塗装を行うことによって、所望の色調の天板を形成することができる。一方で、板金に対して中間層を介さずに塗膜が直接形成されていることから、天板に対して様々な機能を持たせることが難しい。このような機能を天板に対して付与するために、添加剤を塗料に入れてしまうと、塗料の色調に変化を及ぼす場合があり、このような場合には天板の色調が変化してしまう。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、天板の色調の変化を防止しつつ天板の塗料層に対して色調整と異なる機能を付与可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、上面が作業面とされた天板であって、金属製の天板基体と、上記天板基体の少なくとも上面に被覆された天板被覆層とを有し、上記天板被覆層が、上記天板の外部から視認可能な有色塗料層と、上記有色塗料層と上記天板基体との間に配置されると共に上記有色塗料層と異なる塗料によって形成された機能塗料層とを有するという構成を採用する。
【0008】
このような第1の発明によれば、天板被覆層が、外部から視認可能な有色塗料層と、有色塗料層と天板基体との間に配置された機能塗料層とを有している。このため、色の調整と異なる機能については機能塗料層に担わせ、有色塗料層に対して色の調整と異なる機能のための成分を添加する必要がなくなる。したがって、本発明によれば、天板の色調の変化を防止しつつ天板の塗料層に対して色調整と異なる機能を付与することが可能となる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記機能塗料層が、上記有色塗料層よりも熱伝導率が低い温感調整層であるという構成を採用する。
【0010】
このような第2の発明によれば、天板に触れた手等と天板基体との間の熱伝達を抑制することができる。作業時には執務者は必然的に天板に触れることとなるが、本発明によれば、執務者等が天板基体の冷たさや熱さを感じることを抑制し、天板付什器の天板に執務者等が触れた場合の不快感を低減することができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記機能塗料層が、光を透過可能な透明層であるという構成を採用する。
【0012】
このような第3の発明によれば、機能塗料層が透明層とされている。このため、有色塗料層の厚さ寸法が小さい場合であっても、有色塗料層を介して機能塗料層の色調が外部の者に視認されることが防止される。したがって、本発明によれば、機能塗料層が天板の色調に影響を与えることを防止することができる。
【0013】
第4の発明は、上面が作業面とされた天板と、上記天板を支持する支持構造体とを備える天板付什器であって、上記天板として上記第1~第3いずれの発明である天板を備えるという構成を採用する。
【0014】
このような第4の発明によれば、上記天板が、金属製の天板基体と、上記天板基体の少なくとも上面に被覆された天板被覆層とを有し、上記天板被覆層が、上記天板の外部から視認可能な有色塗料層と、上記有色塗料層と上記天板基体との間に配置されると共に上記有色塗料層と異なる塗料によって形成された機能塗料層とを有する。このため、天板の色調の変化を防止しつつ天板の塗料層に対して色調整と異なる機能を付与することが可能となる。
【0015】
第5の発明は、上面が作業面とされた天板を製造する天板製造方法であって、金属製の天板基体の少なくとも上面に塗料を積層して塗布して、上記天板の外部から視認可能な有色塗料層と、上記有色塗料層と上記天板基体との間に配置されると共に上記有色塗料層と異なる塗料によって形成された機能塗料層とを備える天板被覆層を形成する天板被覆層形成工程を有するという構成を採用する。
【0016】
このような第5の発明によれば、天板被覆層が、外部から視認可能な有色塗料層と、有色塗料層と天板基体との間に配置された機能塗料層とを有した天板を製造することができる。このため、色の調整と異なる機能については機能塗料層に担わせ、有色塗料層に対して色の調整と異なる機能のための成分を添加する必要がなくなる。したがって、本発明によれば、天板の色調の変化を防止しつつ天板の塗料層に対して色調整と異なる機能を付与することが可能となる。
【0017】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記機能塗料層として、上記有色塗料層よりも熱伝導率が低い温感調整層を形成するという構成を採用する。
【0018】
このような第6の発明によれば、機能塗料層として温感調整層を有する天板を製造することができる。このため、執務者等が天板基体の冷たさや熱さを感じることを抑制し、天板付什器の天板に執務者等が触れた場合の不快感を低減することができる。
【0019】
第7の発明は、上記第5または第6の発明において、上記機能塗料層として、光を透過可能な透明層を形成するという構成を採用する。
【0020】
このような第7の発明によれば、機能塗料層として光を透過可能な透明層を有する天板を製造することができる。このため、有色塗料層の厚さ寸法が小さい場合であっても、有色塗料層を介して機能塗料層の色調が外部の者に視認されることが防止され、機能塗料層が天板の色調に影響を与えることを防止することができる。
【0021】
第8の発明は、上面が作業面とされた天板を形成する天板形成工程と、上記天板を支持する支持構造体を形成する支持構造体形成工程と、上記天板と上記支持構造体とを組み付ける組立工程とを有する天板付什器製造方法であって、上記天板形成工程として、上記第5~第7いずれかの発明である天板製造方法を用いるという構成を採用する。
【0022】
このような第8の発明によれば、天板被覆層が、外部から視認可能な有色塗料層と、有色塗料層と天板基体との間に配置された機能塗料層とを有した天板を有する天板付什器を製造することができる。このため、天板の色調の変化を防止しつつ天板の塗料層に対して色調整と異なる機能を付与することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、天板被覆層が、外部から視認可能な有色塗料層と、有色塗料層と天板基体との間に配置された機能塗料層とを有するため、天板の色調の変化を防止しつつ天板の塗料層に対して色調整と異なる機能を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態における天板及びデスクを備えるデスクユニットの概略構成を示す斜視図である。
図2】デスクユニットが備える天板及びデスクの概略構成を示す斜視図である。
図3】デスクユニットが備える天板及びデスクの概略構成を示す分解斜視図である。
図4】デスクが備える枠状フレームの模式的な断面図である。
図5】デスクが備える天板の模式的な断面図である。
図6】デスクが備える枠状フレームの形成工程を示す模式的な断面図である。
図7】デスクが備える天板の形成工程を示す模式的な断面図である。
図8】デスクが備える脚体と天板との組立工程を示す模式的な斜視図である。
図9】本発明の一実施形態における天板の変形例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る天板、天板付什器、天板製造方法及び天板付什器製造方法の一実施形態について説明する。
【0026】
図1は、デスクユニット1の概略構成を示す斜視図である。デスクユニット1は、オフィスや公共施設等の執務空間に設置され、執務者に対して電子機器等を効率的に扱う作業スペースを提供するための什器であり、図1に示すように、デスク2(天板付什器)と、ワゴン3と、クランプ装置4と、照明装置5と、卓上タップ6とを備えている。なお、デスクユニット1は、ワゴン3を備える構成を必須とするものではなく、ワゴン3を備えない構成とすることも可能である。また、デスクユニット1に対して、他のオプション部材等を備えるようにしても良い。
【0027】
以下の説明においては、デスクユニット1で執務を行う執務者から見てデスクユニット1の手前側を前、奥側を後、左手側を左、右手側を右と称する。すなわち、図1に示すように、デスク2の後述する一対の脚体10が離間して配列される方向を左右方向、左右方向と直交する水平方向を前後方向とする。また、重力方向(デスク2が載置される床面の法線に沿う方向)を上下方向とする。
【0028】
図2は、デスク2の斜視図である。また、図3は、デスク2の一部を分解した分解斜視図である。デスク2は、執務者が使用する電子機器等を載置可能とする作業面を提供する什器であり、図2及び図3に示すように、一対の脚体10(支持構造体)と、天板11と、幕板12と、配線ダクト13と、カバー部14と、縦配線ダクト15とを備えている。
【0029】
各々の脚体10は、4本の直線状のフレームが四角の枠状に連結されてなる枠状フレーム10aと、枠状フレーム10aの下端に接続されたアジャスタ10bを備えている。これらの脚体10は、床面にアジャスタ10bを当接させ、天板11を下方から支持する。
これらの一対の脚体10は、図2に示すように、枠状フレーム10a同士を対向させた状態で、左右方向に離間して配置されている。すなわち、本実施形態においては、左右方向が一対の脚体10の離間方向とされている。なお、脚体10は、例えば枠状フレーム10aの開口部を塞ぐパネルを備える構成や、枠状フレーム10aに換えてパネル状フレームを備える構成を採用することも可能である。
【0030】
図4は、枠状フレーム10aの模式的な断面図である。この図に示すように、枠状フレーム10aは、フレーム基体10a1と、フレーム塗膜10a2とを有している。フレーム基体10a1は、スチールやステンレス鋼等によって形成された金属製とされており、枠状フレーム10aの強度を確保するための部位である。
【0031】
フレーム塗膜10a2は、フレーム基体10a1の表面に被覆された塗膜であり、本実施形態においてはフレーム基体10a1の表面の全域に設けられている。このフレーム塗膜10a2のフレーム基体10a1と反対側に位置する表面は、枠状フレーム10aの表面10a3を形成している。なお、フレーム塗膜10a2は、必ずしもフレーム基体10a1の表面の全域を覆っている必要はなく、フレーム基体10a1の一部を露出するようにパターニングされていても良い。
【0032】
また、本実施形態においてフレーム塗膜10a2は、枠状フレーム10aの外部から視認可能な有色塗料層のみによって形成されている。つまり、本実施形態においてフレーム塗膜10a2は、枠状フレーム10aの色調を決定するための有色塗料層のみを備えている。このようなフレーム塗膜10a2は、フレーム基体10a1の表面に塗布された有色塗料が乾燥されることによって形成されている。
【0033】
このように有色塗料層の単層とされたフレーム塗膜10a2は、フレーム基体10a1の表面に直接的に接触された状態で形成されている。つまり、枠状フレーム10aにおいては、有色塗料層とフレーム基体10a1との間に他の塗料層が介挿されていない。なお、フレーム塗膜10a2は、必ずしも単層にて形成される構造に限定されるものではない。例えば、フレーム塗膜10a2は、有色塗料層が複数積層された複数層構造としたり、有色塗料層の表面に保護用のクリア塗料層が積層された複数層構造としたりすることも可能である。
【0034】
天板11は、上下方向に表裏面を向けた板状の部材であり、本実施形態においては左右方向を長手方向とし、前後方向を短手方向とする平面視矩形状とされている。この天板11は、左縁下面と右縁下面との各々に脚体10が不図示の締結具等で固定されており、これらの脚体10によって下方から支持されている。このような天板11の上面11aは、執務者が電子機器等を載置する作業面を形成している。なお、天板11の前後方向の長さ寸法は、脚体10の前後方向の長さ寸法と略同一とされている。
【0035】
図5は、天板11の模式的な断面図である。この図に示すように、天板11は、天板基体11bと、天板塗膜11c(天板被覆層)とを有している。天板基体11bは、スチールやステンレス鋼等によって形成された金属製とされており、天板11の強度を確保するための部位である。
【0036】
天板塗膜11cは、天板基体11bの少なくとも上面11b1に被覆された塗膜である。この天板塗膜11cの天板基体11bと反対側に位置する表面は、天板11の上面11a(作業面)を形成している。この天板塗膜11cは、図5に示すように、温感調整層11c1(機能塗料層)と、有色塗料層11c2とが積層されて形成された多層構造の塗膜である。
【0037】
温感調整層11c1は、有色塗料層11c2を形成する塗料と比較して熱伝達率が低い塗料によって形成されており、有色塗料層11c2よりも熱伝達率が低い塗料層とされている。また、本実施形態において温感調整層11c1は、光を透過可能な透明層とされている。
【0038】
このような温感調整層11c1は、例えば、外殻がシリカから形成されると共に内部に空間を有する中空粒子を含む透明な塗料によって形成することができる。また、中空粒子、中空繊維及び多孔質粒子の少なくとも一種を含む塗料によって温感調整層11c1を形成することも可能である。また、ポリ-γ-グルタミン酸架橋体、樹脂及び溶剤を含む塗料によって温感調整層11c1を形成することも可能である。絹フィブロイン超微粉末を含む塗料によって温感調整層11c1を形成することも可能である。また、海綿成分を含む塗料によって温感調整層11c1を形成することも可能である。また、ビニル樹脂及びウレタン樹脂のうち少なくとも一方からなる樹脂を含む塗料によって温感調整層11c1を形成することも可能である。また、吸湿発熱性微粒子を含む塗料によって温感調整層11c1を形成することも可能である。なお、温感調整層11c1は、中空粒子を含む構成に限られず、例えば、ボイドが多数形成された塗料層によって形成されていても良い。
【0039】
有色塗料層11c2は、温感調整層11c1を天板基体11bと反対側から覆うと共に天板11の外部から視認可能とされた塗料層であり、天板11の色調を決定する。この有色塗料層11c2の天板基体11bと反対側に位置する表面は、天板11の上面11aを形成している。このような有色塗料層11c2は、温感調整層11c1の表面に塗布された有色塗料が乾燥されることによって形成されている。
【0040】
温感調整層11c1と有色塗料層11c2との厚さ寸法は略同一とされている。また、温感調整層11c1及び有色塗料層11c2の各々の厚さ寸法は、フレーム塗膜10a2と略同一とされている。つまり、本実施形態においては、天板塗膜11cが単層のフレーム塗膜10a2よりも一層多い二層構造とされており、天板塗膜11cの厚さ寸法がフレーム塗膜10a2の厚さ寸法の倍程度とされている。つまり、本実施形態においては、天板11の作業面が金属製の天板基体11bから遠ざけられており、天板11に触れた手等と天板基体11bとの間の熱伝達が抑制される。
【0041】
このように、本実施形態においては、天板塗膜11cが、温感調整層11c1と有色塗料層11c2とが積層された構造とされており、フレーム塗膜10a2よりも塗料層の積層数が多い。このような天板塗膜11cは、必ずしも塗料層が2層である必要はなく、塗料層が3層以上とされた構成を採用することも可能である。だだし、天板塗膜11cにおける塗料層の積層数をより多くする場合であっても、天板塗膜11cを形成する塗料層の積層数は、フレーム塗膜10a2を形成する塗料層の積層数よりも多くする。
【0042】
図1図3に示すように、幕板12は、一方の脚体10の後端部と、他方の脚体10の後端部とを接続する板状の部材である。この幕板12は、不図示の締結具によって各々の脚体10と固定されている。この幕板12は、脚体10の枠状フレーム10aに直接固定される幕板縦フレーム12aと、幕板縦フレーム12aに支持された幕板パネル12bとを有している。幕板縦フレーム12aは、幕板12の左右端に各々配置されており、不図示の締結具によって枠状フレーム10aに固定されている。幕板パネル12bは、左右端部の各々が幕板縦フレーム12aに固定されたパネル体であり、表裏面を前後方向に向けて配置されている。この幕板パネル12bの上端縁及び下端縁は、前方に向けて折り返されている。また、天板11と幕板12との間に隙間Sが設けられている。この隙間Sによって、天板11の後方側から配線ダクト13の配線収容領域Rに配線ケーブル等を出し入れすることができる。
【0043】
配線ダクト13は、天板11の下方に配置されており、左右方向に延伸する配線収容領域Rを有している。図3に示すように配線ダクト13は、底板13aと、後方立設片13bと、前方立設片13cとを有している。底板13aは、配線ダクト13の底部を形成しており、配線等の収容物が載置可能な載置面を上方に向けた板状とされている。この底板13aは、左右方向に長い長板状とされており、例えば図3に示すように、幕板12の一方の幕板縦フレーム12aから他方の幕板縦フレーム12aに至る長さ寸法とされている。
【0044】
後方立設片13bは、底板13aの後方側端部から上方に向けて立設されている。また、後方立設片13bの上端縁には、幕板12に係止可能な爪部が形成されている。この爪部は、後方側から前方に向けて水平に突出するように設けられており、左右方向にて後方立設片13bの全域に設けられている。この爪部が幕板パネル12bに係止されることで、幕板12に対して配線ダクト13が支持される。このような後方立設片13bは、幕板12の幕板パネル12bに対して面接触あるいは近接して対向配置されている。前方立設片13cは、底板13aの前方側端部から上方に向けて立設されている。この前方立設片13cの上下方向寸法は、後方立設片13bの上下方向寸法よりも小さい。つまり、前方立設片13cは、後方立設片13bよりも低く形成されている。
【0045】
このような配線ダクト13は、例えば硬質樹脂によって形成されており、底板13aと後方立設片13bと前方立設片13cによって囲まれた配線収容領域Rを形成している。
このような配線収容領域Rは、上方に向けて開放されており、上方から配線等を出し入れ可能とされている。また、配線ダクト13は、左右方向の端部が開放されている。このため、配線ダクト13の左右方向の端部を介して配線ダクト13の外部から配線収容領域Rに対して配線等を挿通することが可能とされている。
【0046】
カバー部14は、配線ダクト13に対して着脱可能とされ、配線ダクト13に装着された装着姿勢にて配線ダクト13の配線収容領域Rを前方側から覆う部材である。カバー部14の左右方向の幅寸法は、例えば幕板12の一方の幕板縦フレーム12aから他方の幕板縦フレーム12aまでの離間寸法よりも短い。本実施形態においては、カバー部14の左右方向の幅寸法が幕板12の一方の幕板縦フレーム12aから他方の幕板縦フレーム12aまでの離間寸法の半分とされており、一方の幕板縦フレーム12aから他方の幕板縦フレーム12aまでに2つのカバー部14が装着可能とされている。つまり、複数(本実施形態においては2つ)のカバー部14によって、配線ダクト13の配線収容領域Rの全体を覆う構成とされている。各々のカバー部14は、可撓性を有しており、例えば軟質樹脂によって形成されている。
【0047】
図2及び図3に示すように、縦配線ダクト15は、2つの脚体10のうち、左側の脚体10に固定されている。具体的には、左側の脚体10の枠状フレーム10aを形成する4つの直線状のフレームのうち、後方に配置された縦フレームの前側面に当接された状態で固定されている。この縦配線ダクト15は、デスク2の外部から配線ダクト13に配線ケーブルを案内するための部材であり、配線等を収容する内部空間を有する本体ダクト15aと、本体ダクト15aを枠状フレーム10aに固定する固定具15bと、本体ダクト15aに着脱可能とされた着脱ダクト15cとを備えている。
【0048】
このようなデスク2に対しては、例えば図1に示すように、床面から引き出された電源タップDが取り付けられている。電源タップDは、コンセントの差込口が設けられたタップ本体部D1と、タップ本体部D1に接続された配線ケーブルD2とを備えている。このような電源タップDのタップ本体部D1が配線ダクト13の配線収容領域Rに載置され、タップ本体部D1に接続された配線ケーブルD2が配線ダクト13及び縦配線ダクト15を介して例えば床面まで到達される。
【0049】
図1に戻り、ワゴン3は、デスクユニット1を用いる執務者の手荷物等を収容可能とする什器であり、2つの脚体10の間であって天板11の下方に収容可能とされている。このワゴン3は、下面には不図示のキャスタが設けられており、容易に前後方向に移動可能とされている。
【0050】
クランプ装置4は、照明装置5や卓上タップ6を支持するための取付具である。本実施形態においては、クランプ装置4は、天板11の後縁部を上下方向から挟持することで、天板11に対して固定されている。なお、本実施形態のデスクユニット1が照明装置5及び卓上タップ6を備えていることから、クランプ装置4は2つ設けられている。一方のクランプ装置4には照明装置5が接続され、他方のクランプ装置4には卓上タップ6が接続されている。
【0051】
このような本実施形態のデスクユニット1のデスク2が備える天板11は、上面11aが作業面とされおり、金属製の天板基体11bと、天板基体11bの少なくとも上面に被覆された天板塗膜11cとを有している。また、天板11は、天板塗膜11cが、天板11の外部から視認可能な有色塗料層11c2と、有色塗料層11c2と天板基体11bとの間に配置されると共に有色塗料層11c2と異なる塗料によって形成された機能塗料層(温感調整層11c1)とを有している。
【0052】
このような天板11によれば、天板塗膜11cが、外部から視認可能な有色塗料層11c2と、有色塗料層11c2と天板基体11bとの間に配置された機能塗料層(温感調整層11c1)とを有している。このため、色の調整と異なる機能については機能塗料層に担わせ、有色塗料層11c2に対して色の調整と異なる機能のための成分を添加する必要がなくなる。したがって、天板11によれば、色調の変化を防止しつつ天板塗膜11cに対して色調整と異なる機能を付与することが可能となる。ただし、有色塗料層11c2が透光性を有するような場合には、機能塗料層に色の調整の機能の一部を担わせるようにしても良い。
【0053】
また、天板11では、機能塗料層として、有色塗料層11c2よりも熱伝導率が低い温感調整層11c1を備えている。このため、天板11に触れた手等と天板基体11bとの間の熱伝達を抑制することができる。作業時には執務者は必然的に天板11に触れることとなるが、天板11によれば、執務者等が天板基体11bの冷たさや熱さを感じることを抑制し、天板11に執務者等が触れた場合の不快感を低減することができる。
【0054】
また、天板11では、機能塗料層(温感調整層11c1)が、光を透過可能な透明層とされている。このため、有色塗料層11c2の厚さ寸法が小さい場合であっても、有色塗料層11c2を介して機能塗料層(温感調整層11c1)の色調が外部の者に視認されることが防止される。したがって、天板11によれば、機能塗料層(温感調整層11c1)が天板11の色調に影響を与えることを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態においてデスク2は、上面が作業面とされた天板11と、天板11を支持する脚体10とを備えている。このようなデスク2によれば、天板11を備えているため、上述のように天板11の色調の変化を防止しつつ天板11の塗料層に対して色調整と異なる機能を付与することが可能となる。
【0056】
このようなデスク2を製造する場合(天板付什器製造方法)には、脚体10、天板11と、幕板12と、配線ダクト13と、カバー部14とを別に形成し、その後に組み付ける。つまり、デスク2の製造方法では、天板11を形成する天板形成工程と、脚体10を形成する脚体形成工程(支持構造体形成工程)と、天板11と脚体10とを組み付ける組立工程とを有している。なお、天板形成工程では、上面11aが作業面とされた天板11を形成する。また、脚体形成工程では、天板11を支持する脚体10を形成する。
【0057】
図6は、天板形成工程の一部を示す模式図である。図6(a)に示すように、天板形成工程では、予め定められた形状とされた天板基体11bを形成する。ここでは、板金を加工することで天板基体11bを形成する。
【0058】
続いて、天板形成工程では、図6(b)に示すように、天板基体11bの上面11b1上に温感調整層11c1を形成する温感調整層形成工程を行う。ここでは、温感調整層11c1の形成材料となる塗料(有色塗料層11c2の形成材料と異なる塗料)を天板基体11bの上面11b1上に塗布し、その後に塗料を乾燥させることによって温感調整層11c1を形成する。つまり、温感調整層形成工程では、天板塗膜11cを形成する他の塗料層(本実施形態では有色塗料層11c2)よりも熱伝導率が低い温感調整層11c1を形成する。
【0059】
続いて、天板形成工程では、図6(c)に示すように、温感調整層11c1を天板基体11bと反対側から覆うように有色塗料層11c2を形成する有色塗料層形成工程を行う。ここでは、有色塗料層11c2の形成材料となる塗料を温感調整層11c1に積層させるように塗布し、その後に塗料を乾燥させることによって有色塗料層11c2を形成する。つまり、有色塗料層形成工程では、温感調整層11c1を天板基体11bと反対側から覆うと共に天板11の外部から視認可能な有色塗料層11c2を形成する。
【0060】
これらの温感調整層形成工程及び有色塗料層形成工程によって、塗料層が複数積層されてなる天板塗膜11cが形成される。つまり、デスク2の製造方法では、塗料を二回重ね塗りすることによって天板塗膜11cが形成される。これらの温感調整層形成工程及び有色塗料層形成工程は、金属製の天板基体11bの少なくとも上面11b1に塗料を積層して塗布して、有色塗料層11c2と温感調整層11c1とを有する天板塗膜11cを形成する天板被覆層形成工程を構成している。
【0061】
図7は、脚体形成工程の一部を示す模式図であり、脚体10の枠状フレーム10aを形成する工程を示している。図7(a)に示すように、脚体形成工程では、予め定められた形状とされたフレーム基体10a1を、板金を加工することで形成する。なお、フレーム基体10a1は、ここで枠状に組み立てる必要はなく、フレーム基体10a1を4つの棒状のフレームに分けた状態で形成する。
【0062】
続いて、脚体形成工程では、図7(b)に示すように、フレーム基体10a1の表面にフレーム塗膜10a2を形成するフレーム塗膜形成工程を行う。ここでは、フレーム塗膜10a2の形成材料となる塗料をフレーム基体10a1の表面に塗布し、その後に塗料を乾燥させることによってフレーム塗膜10a2を形成する。つまり、フレーム塗膜形成工程では、フレーム基体10a1の表面に接触すると共に脚体10の外部から視認可能なフレーム塗膜10a2を形成する。その後、分解形成されたフレーム基体10a1を組み立て、アジャスタ10bを取り付けることで脚体10が形成される。なお、アジャスタ10bの取付けは、脚体10と天板11とを組み付けた後に行っても良い。
【0063】
図8は、組立工程の一部を模式的に示す斜視図である。組立工程では、上述の脚体形成工程で形成された脚体10と、上述の天板形成工程で形成された天板11とを、不図示の締結具等を用いて組み付ける。なお、組立工程では、脚体10及び天板11の他、幕板12、配線ダクト13、カバー部14及び縦配線ダクト15の組み付けを行っても良い。このような組立工程によってデスク2が完成する。
【0064】
本実施形態の天板形成工程は、金属製の天板基体11bの少なくとも上面に塗料を積層して塗布して、天板11の外部から視認可能な有色塗料層11c2と、有色塗料層11c2と天板基体11bとの間に配置されると共に有色塗料層11c2と異なる塗料によって形成された機能塗料層とを備える天板塗膜11cを形成する天板塗膜形成工程を有している。
【0065】
このような天板形成工程によれば、天板塗膜11cが、外部から視認可能な有色塗料層11c2と、有色塗料層11c2と天板基体11bとの間に配置された機能塗料層とを有した天板11を製造することができる。このため、色の調整と異なる機能については機能塗料層に担わせ、有色塗料層11c2に対して色の調整と異なる機能のための成分を添加する必要がなくなる。したがって、このような天板形成工程によれば、天板11の色調の変化を防止しつつ天板11の塗料層に対して色調整と異なる機能を付与することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態における天板形成工程では、機能塗料層として、有色塗料層11c2よりも熱伝導率が低い温感調整層11c1を形成する。このため、温感調整層11c1を備える天板11を形成することができ、執務者等が天板基体11bの冷たさや熱さを感じることを抑制し、デスク2の天板11に執務者等が触れた場合の不快感を低減することができる。
【0067】
また、本実施形態における天板形成工程では、機能塗料層として、光を透過可能な透明層からなる温感調整層11c1を形成する。このため、有色塗料層11c2の厚さ寸法が小さい場合であっても、有色塗料層11c2を介して機能塗料層(温感調整層11c1)の色調が外部の者に視認されることが防止され、機能塗料層(温感調整層11c1)が天板11の色調に影響を与えることを防止することができる。
【0068】
また、上述のようなデスク2の製造方法は、上面11aが作業面とされた天板11を形成する天板形成工程と、天板11を支持する脚体10を形成する脚体形成工程と、天板11と脚体10とを組み付ける組立工程とを有している。このため、天板11の色調の変化を防止しつつ天板11の塗料層に対して色調整と異なる機能を付与したデスク2を製造することができる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態においては、天板塗膜11cが、温感調整層11c1と有色塗料層11c2とが積層された構造とされた構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。図9は、天板塗膜11cの変形例を示す模式的な断面図である。例えば、図9(a)に示すように、温感調整層11c1に換えて、天板11に対してクッション性を機能として付与するクッション層11c3(機能塗料層)を備える構成を採用することも可能である。このようなクッション層11c3は、例えば弾性係数が有色塗料層11c2よりも小さい層であり、塗料を塗布することで形成する。また、図9(b)に示すように、温感調整層11c1に換えて、天板11の硬度を向上させるため機能を付与する硬質層11c4を備える構成を採用することも可能である。このような硬質層11c4(機能塗料層)は、例えば弾性係数が有色塗料層11c2よりも大きい層であり、塗料を塗布することで形成する。
【0071】
これらの図9(a)及び図9(b)に示すような構成であっても、天板塗膜11cをフレーム塗膜10a2よりも厚くすることができ、天板11の作業面から天板基体11bまでの距離寸法をフレーム塗膜10a2の表面からフレーム基体10a1までの距離寸法よりも大きくすることができる。したがって、図9(a)及び図9(b)に示すような構成であっても、執務者等が天板基体11bの冷たさや熱さを感じることを抑制し、デスク2の天板11に執務者等が触れた場合の不快感を低減することができる。
【0072】
また、上記実施形態においては、天板11を支持する支持構造体が脚体10である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、袖机等を支持構造体として天板11を支持する構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1……デスクユニット、2……デスク(天板付什器)、3……ワゴン、4……クランプ装置、5……照明装置、6……卓上タップ、10……脚体(支持構造体)、10a……枠状フレーム、10a1……フレーム基体、10a2……フレーム塗膜、10a3……表面、10b……アジャスタ、11……天板、11a……上面、11b……天板基体、11b1……上面、11c……天板塗膜(天板被覆層)、11c1……温感調整層(機能塗料層)、11c2……有色塗料層、11c3……クッション層(機能塗料層)、11c4……硬質層(機能塗料層)、12……幕板、13……配線ダクト、14……カバー部、15……縦配線ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9