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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240122BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G03G21/00 398
G03G21/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020004842
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021110913
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 祥太朗
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-089399(JP,A)
【文献】特開2012-252405(JP,A)
【文献】特開昭60-248942(JP,A)
【文献】特開2008-096967(JP,A)
【文献】特開2006-072236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
13/34
15/00
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧から直流電圧を生成し負荷に供給する電源装置を備え、記録材に画像形成を行う画像形成装置であって、
前記画像形成装置は、記録材の画像形成を制御する第1の制御手段を備え、
前記電源装置は、
交流電源から入力される前記交流電圧から前記直流電圧を生成する電圧生成部を制御する第2の制御手段と、
入力される前記交流電圧に応じて前記交流電圧のゼロクロスタイミングを検知し、ゼロクロス検知信号を出力するゼロクロス検知手段と、
前記ゼロクロス検知手段から出力される前記ゼロクロス検知信号を前記第1の制御手段に伝達する伝達手段と、
を有し、
前記第2の制御手段は、前記電圧生成部の一次側の情報を前記ゼロクロス検知信号に重畳させて、前記第1の制御手段に伝達し、前記一次側の情報を対応する信号に変換し、前記ゼロクロス検知信号の周期よりも短い周期で、前記ゼロクロス検知信号に重畳させ、
前記第1の制御手段は、前記画像形成装置の状態を、記録材への画像形成が可能なスタンバイモードと、画像形成を行わない省電力モードとを切替え可能であり、
前記第2の制御手段は、前記一次側の情報を前記スタンバイモードのときに出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記伝達手段は、一次側に発光ダイオード、二次側にフォトトランジスタを有するフォトカプラであり、
前記電源装置は、前記発光ダイオードを導通状態又は非導通状態に設定する第1のスイッチング素子を有し、
前記第2の制御手段は、前記第1のスイッチング素子を制御して、前記スタンバイモードのときには前記発光ダイオードを導通状態に設定し、前記省電力モードのときには前記発光ダイオードを非導通状態に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ゼロクロス検知手段は、前記発光ダイオードと並列に接続され、前記交流電圧に応じてオン状態又はオフ状態に設定される第2のスイッチング素子を有し、
前記第2のスイッチング素子は、前記交流電圧が前記第2のスイッチング素子の閾値電圧よりも低い場合にはオフ状態に設定され、前記交流電圧が前記第2のスイッチング素子の閾値電圧以上の場合にはオン状態に設定され、
前記発光ダイオードは、前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合には導通状態となり、前記第2のスイッチング素子がオン状態の場合には非導通状態となることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の制御手段は、前記一次側の情報が変換された前記信号に応じて、前記第1のスイッチング素子をオン状態又はオフ状態に設定することにより、前記信号を前記ゼロクロス検知信号に重畳することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電源装置は、前記交流電圧を整流し、平滑する整流平滑手段を有し、
前記第2の制御手段は、前記整流平滑手段から出力される直流電圧が正常範囲内にない場合には、電圧異常に対応する信号を前記ゼロクロス検知信号に重畳させて出力することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
交流電源から入力される交流電圧から直流電圧を生成する電圧生成部を有する電源ユニットであって、前記直流電圧を負荷に供給する電源ユニットと、
記録材の画像形成を制御する第1の制御手段と、
を備え、
前記第1の制御手段が前記負荷を駆動することにより記録材に画像形成を行う画像形成装置であって、
前記電源ユニットは、
入力される前記交流電圧に応じて前記交流電圧のゼロクロスタイミングを検知し、ゼロクロス検知信号を出力する第2の制御手段と、
前記第2の制御手段から出力される前記ゼロクロス検知信号を前記第1の制御手段に伝達する伝達手段と、
を備え、
前記第2の制御手段は、前記電圧生成部の一次側の情報に関する信号を前記ゼロクロス検知信号に重畳させて、前記ゼロクロス検知信号と前記一次側の情報に関する信号を前記伝達手段に出力し、前記第1の制御手段に伝達することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記第2の制御手段は、前記ゼロクロス検知信号の前記ゼロクロスタイミングと重ならないタイミングで、前記一次側の情報に関する信号を前記ゼロクロス検知信号に重畳させて出力することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電源ユニットは、前記交流電圧を整流し、平滑する整流平滑手段を有し、
前記第2の制御手段は、前記整流平滑手段から出力される直流電圧が正常範囲内にない場合には、電圧異常に対応する信号を前記一次側の情報に関する信号として前記ゼロクロス検知信号に重畳させて出力することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記電源ユニットは、前記電圧生成部の温度を検知する温度検知手段を有し、
前記第2の制御手段は、前記温度検知手段より取得した前記温度が正常範囲内にない場合には、温度異常に対応する信号を前記一次側の情報に関する信号として前記ゼロクロス検知信号に重畳させて出力することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記伝達手段は、一次側に発光ダイオード、二次側にフォトトランジスタを有するフォトカプラであることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記一次側の情報は、前記交流電源から入力される交流電圧の値、及び電源周波数であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリ、プリンタ等の電子写真プロセスを用いた画像形成装置は、記録材上に転写された未定着トナー画像を、ヒータ等で記録材上に熱定着させる加熱定着装置を備えている。そして、加熱定着装置は、ハロゲンヒータを熱源とする加熱ローラ式や、セラミックヒータを熱源とするフィルム加熱式を用いたものが、一般的に知られている。加熱定着装置を備える画像形成装置では、商用交流電源からの入力電圧がゼロとなるタイミング(以下、ゼロクロスタイミングという)を検知して、ゼロクロスタイミングに同期させて、商用交流電源からヒータ等への電力供給を制御している。また、画像形成装置は、商用交流電源から入力される交流電圧から所定の直流電圧を生成する電源装置を備えている。電源装置は、交流電圧が入力される一次側の回路で検知したゼロクロスタイミングを二次側に伝達し、二次側に設けられたコントローラがヒータ等に供給する電力を制御する方式が採用されている。
【0003】
近年は、ユーザビリティの向上や省エネルギー化等への要求が高まっており、ユーザへの的確な情報提示や、ヒータ等への無駄な電力投入を防ぐために供給電力の正確な制御等が求められている。そのため、電源装置では、ゼロクロスタイミング情報だけでなく、ヒータ等の電力制御に必要な情報を、二次側のコントローラに伝達することが必要となっている。例えば特許文献1には、一次側の電力供給状態をゼロクロス検知信号によって二次側に伝達し、正常状態か否かを判断する実施例が記載されている。具体的には、特許文献1では、ゼロクロス検知信号の電圧値を電力供給状態に応じて変化させることにより商用交流電源からの電力供給が正常な状態か否かを二次側に伝達している。そして、二次側では、ゼロクロス検知信号の電圧値に基づいて、電力供給が正常な状態かどうかを判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5712186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ヒータ等への供給電力をより正確に制御するためには、電源装置は、ゼロクロスタイミング情報だけでなく、一次側で得られる情報を二次側のコントローラに伝達することが必要になる。また、二次側のコントローラは、電源装置から受信した情報を、ヒータ等への電力供給制御に活用することが益々必要になってきている。更に、電源装置の一次側で発生した異常、例えば商用交流電源から入力される交流電圧の瞬断や電圧異常、電源装置内の素子の故障や異常等が発生した場合には、二次側コントローラは異常検知情報を適切にユーザへ報知する必要がある。そしてこれらにより、ユーザビリティの向上を図ることが求められている。
【0006】
このように、電源装置の一次側から二次側に伝達するべき情報が増加する一方、一次側の情報を二次側に伝達するためには、例えばフォトカプラや絶縁トランスといった、一次-二次間を絶縁する部品が必要となる。情報量の増加による部品の増加、更にこれら部品を制御するための周辺回路まで考慮すると、コストアップや電源装置の大型化といった課題が生じる。
【0007】
また、上述した特許文献1に示された構成では、一次側から二次側へ伝達できる情報量に制約があり、一次側から二次側に伝達する情報量を更に増やすためには、一次-二次間を絶縁する部品を更に増やす必要がある。そのため、更なるコストアップや電源装置の大型化を招いてしまうことになる。
【0008】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、簡易な構成で、一次側の情報を二次側に伝達することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明では、以下の構成を備える。
【0010】
(1)交流電圧から直流電圧を生成し負荷に供給する電源装置を備え、記録材に画像形成を行う画像形成装置であって、前記画像形成装置は、記録材の画像形成を制御する第1の制御手段を備え、前記電源装置は、交流電源から入力される前記交流電圧から前記直流電圧を生成する電圧生成部を制御する第2の制御手段と、入力される前記交流電圧に応じて前記交流電圧のゼロクロスタイミングを検知し、ゼロクロス検知信号を出力するゼロクロス検知手段と、前記ゼロクロス検知手段から出力される前記ゼロクロス検知信号を前記第1の制御手段に伝達する伝達手段と、を有し、前記第2の制御手段は、前記電圧生成部の一次側の情報を前記ゼロクロス検知信号に重畳させて、前記第1の制御手段に伝達し、前記一次側の情報を対応する信号に変換し、前記ゼロクロス検知信号の周期よりも短い周期で、前記ゼロクロス検知信号に重畳させ、前記第1の制御手段は、前記画像形成装置の状態を、記録材への画像形成が可能なスタンバイモードと、画像形成を行わない省電力モードとを切替え可能であり、前記第2の制御手段は、前記一次側の情報を前記スタンバイモードのときに出力することを特徴とする画像形成装置。
(2)交流電源から入力される交流電圧から直流電圧を生成する電圧生成部を有する電源ユニットであって、前記直流電圧を負荷に供給する電源ユニットと、記録材の画像形成を制御する第1の制御手段と、を備え、前記第1の制御手段が前記負荷を駆動することにより記録材に画像形成を行う画像形成装置であって、前記電源ユニットは、入力される前記交流電圧に応じて前記交流電圧のゼロクロスタイミングを検知し、ゼロクロス検知信号を出力する第2の制御手段と、前記第2の制御手段から出力される前記ゼロクロス検知信号を前記第1の制御手段に伝達する伝達手段と、を備え、前記第2の制御手段は、前記電圧生成部の一次側の情報に関する信号を前記ゼロクロス検知信号に重畳させて、前記ゼロクロス検知信号と前記一次側の情報に関する信号を前記伝達手段に出力し、前記第1の制御手段に伝達することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成で、一次側の情報を二次側に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1、2の画像形成装置の構成を示す概略断面図
図2】実施例1の電源ユニットの回路構成を示す回路図
図3】実施例1の電源ユニットの各部の波形を示すグラフ
図4】実施例1の電源ユニットの制御シーケンスを示すフローチャート
図5】実施例2の電源ユニットの回路構成を示す回路図
図6】実施例2の電源ユニットの各部の波形を示すグラフ
図7】実施例2の電源ユニットの制御シーケンスを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
[画像形成装置の構成]
図1は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。なお、本実施例では、画像形成装置の一例としてレーザビームプリンタの構成について説明するが、複写機やファクシミリ、複合機等の画像形成装置であっても構わない。
【0015】
図1に示すレーザビームプリンタ101(以下、プリンタ101という)は、記録媒体である記録材Sを収納する給紙カセット104を有している。また、プリンタ101は、給紙カセット104から記録材Sを給送する給送ローラ141、搬送ローラ対142、そして搬送路下流側には、記録材Sの先端を検出するトップセンサ143、記録材Sを転写ローラ145に搬送するレジストローラ対144を有する。そして、プリンタ101は、レジストローラ対144の搬送路の下流側に、レーザスキャナ106から照射されるレーザ光に応じて、記録材S上にトナー像を形成するカートリッジユニット105を有する。カートリッジユニット105は、公知の電子写真プロセスに必要な像担持体である感光ドラム148、帯電ローラ147、現像ローラ146を有している。帯電ローラ147は、感光ドラム148の表面を一様な電位に帯電する。帯電ローラ147により一様な電位に帯電された感光ドラム148の表面には、レーザスキャナ106から画像情報に基づいて照射されるレーザ光に応じて、静電潜像が形成される。感光ドラム148上に形成された静電潜像は、現像ローラ146によりトナーが付着され、トナー像が形成される。そして、感光ドラム148上に形成されたトナー像は、転写ローラ145により、給紙カセット104から搬送された記録材S上に転写される。
【0016】
そして、プリンタ101は、転写ローラ145の搬送路下流側に、記録材S上に転写されたトナー像を記録材Sに熱定着するための加熱定着器103を有している。加熱定着器103は、定着フィルム149、定着フィルム149に当接し、記録材S上のトナー像を記録材S上に加圧する加圧ローラ150、定着フィルム149内部に配置され、記録材S上のトナーを溶融するヒータ102を有している。更に、加熱定着器103は、ヒータ102近傍に配置され、ヒータ102の温度を検出する温度検出手段であるサーミスタ109を有している。そして、プリンタ101は、加熱定着器103の搬送路下流側に排紙ローラ対151を有し、トナー像が熱定着された記録材Sを排出する。
【0017】
エンジンコントローラ123(第1の制御手段)は、プリンタ101の制御部であり、モータやクラッチ等の駆動ユニット(不図示)を制御して各ローラを駆動させ、記録材Sの搬送を制御する。更に、エンジンコントローラ123は、レーザスキャナ106、カートリッジユニット105、加熱定着器103等を制御して、記録材Sへの画像形成制御を行う。また、コントローラ131は、汎用の外部インターフェース134(例えばUSB端子等)を介して、パーソナルコンピュータ等の外部装置132と接続されている。コントローラ131は、外部インターフェース134を介して、外部装置132から印刷情報(印刷枚数や各種設定等)及び印刷用データ(画像情報)を含んだ印刷指令を受信する。すると、コントローラ131は、印刷用データを実際に画像形成が可能な画像データに展開し、その後、コントローラ131から、画像形成が可能な画像データをレーザスキャナ106へ送信する。また、コントローラ131は、外部装置132から印刷指令を受信すると、エンジンインターフェース133を介して、エンジンコントローラ123に画像形成指示を送信する。そして、エンジンコントローラ123は、上述した画像形成動作を開始する。
【0018】
電源ユニット120は、内部に電圧生成部121を有し、商用交流電源から入力される交流電圧から直流電圧3.3V、24Vを生成し、プリンタ101内の各装置(負荷)に供給する。直流電圧3.3Vは、エンジンコントローラ123やコントローラ131、レーザスキャナ106のレーザ発光部(不図示)、トップセンサ143等を含む制御系の回路に供給される。一方、直流電圧24Vは、上述した駆動ユニット、カートリッジユニット105に高電圧を供給する高圧電源、レーザスキャナ106のレーザ光を偏向する回転多面鏡を駆動する駆動部(不図示)等に供給される。また、電源ユニット120は、ゼロクロスタイミング情報等を含んだゼロクロス検知信号(詳細は後述する)をエンジンコントローラ123に出力する。エンジンコントローラ123は、電源ユニット120からのゼロクロス検知信号のゼロクロスタイミング情報や他の情報に基づいて、ヒータスイッチング手段(不図示)を制御し、商用交流電源201からの交流電圧をヒータ102に供給する。また、この時エンジンコントローラ123は、ヒータ102が所定の温度となるように、ゼロクロスタイミングに同期して所望の位相角、又は波数のデューティー比となるようにヒータスイッチング手段を適宜制御する。
【0019】
[電源ユニットの構成]
図2は、図1に示した電源ユニット120の回路構成を示す回路図である。また、図3は、図2に示す電源ユニット120における各部の電圧波形やゼロクロス検知信号の波形を示すグラフである。図3(a)は、商用交流電源201から入力される交流電圧Vacの電圧波形を示している。なお、交流電圧Vacのピーク電圧は、例えば100Vの交流電圧の場合には、√2倍の約141ボルトとなる。図3(b)は、図2中に矢印で示した電圧Veの電圧波形(詳細は後述する)を示している。図3(c)は、後述するZdt端子から出力されるdata信号の波形を示している。図3(d)は、電源ユニット120からエンジンコントローラ123に出力されるゼロクロス検知信号の波形を示している。なお、図3の横軸は時間を示している。
【0020】
図2において、商用交流電源201は、交流電圧Vac(図3(a))をホットライン(図2ではHotと表示)及びニュートラルライン(図2ではNeutralと表示)の2ラインに出力し、電源ユニット120に供給する。商用交流電源201から入力された交流電圧Vacは、整流平滑手段であるブリッジダイオード203で整流され、コンデンサ204によって平滑化される。平滑化された電圧は、DCLを基準とした電圧Vdcとなる。電圧Vdc(DCH/DCLライン)は、二次側に直流電圧3.3V及び24Vを出力する電圧生成部121に入力される。電圧生成部121は、一次側にCPU122(第2の制御手段)を有している。CPU122は、ROM(不図示)及びRAM(不図示)を有している。CPU122は、RAMを作業領域に用いて、ROMに格納された各種制御プログラムに基づいて、入力電圧Vdcから直流電圧3.3V及び24Vを生成し、プリンタ101の各ユニットに出力するように電源ユニット120の制御を行う。また、CPU122は、時間計測を行うためのタイマを有している。更に、電圧生成部121では、後述するゼロクロス検知回路216を動作させるための電源電圧として、DCLを基準とした比較的低電圧の一定電圧である電圧Vccが生成される。そして、電圧Vccは電圧生成部121内だけでなく、一次側のその他の制御回路にも供給される。
【0021】
後述するゼロクロス検知回路216は、トランジスタ215(第1のスイッチング素子)を介して電圧Vccが供給される。トランジスタ215は、エミッタ端子が電圧Vccに接続されると共に、コレクタ端子がゼロクロス検知回路216に接続されている。そして、トランジスタ215のベース端子は、抵抗214を介して電圧Vccにプルアップされると共に、抵抗213を介してトランジスタ212のコレクタ端子にも接続されている。トランジスタ212は、エミッタ端子がDCLラインに接続され、ベース端子は抵抗209を介してCPU122のZdt端子に接続されている。Zdt端子は、CPU122の出力端子である。CPU122がZdt端子の出力をハイ(High)レベルに設定すると、トランジスタ212がオンする。これによりトランジスタ215がオンし、その結果、トランジスタ215を介して、電圧Vccがゼロクロス検知回路216に供給される。一方、CPU122がZdt端子の出力をロー(Low)レベルに設定すると、トランジスタ212がオフする。これにより、トランジスタ215がオフし、その結果、ゼロクロス検知回路216への電圧Vccの供給が停止される。このように、トランジスタ215は、ゼロクロス検知回路216への電圧供給、供給停止を行う。また、CPU122は、Zdt端子の出力をハイレベル又はローレベルに設定することにより、後述するゼロクロス検知信号をハイレベル又はローレベルに切り替えることも可能である(詳細は後述する)。
【0022】
プリンタ101のエンジンコントローラ123は、プリンタ101の運用状態を、記録材Sへの画像形成が可能なスタンバイモードと、画像形成を行わないスリープ状態に設定して消費電力を削減する省電力モードと、に切替えが可能である。エンジンコントローラ123とCPU122との間には信号線(不図示)が設けられ、エンジンコントローラ123はCPU122にプリンタ101の運用状態(スタンバイモード、省電力モード)を通知する。エンジンコントローラ123が、CPU122に、プリンタ101の運用状態の省電力モードへの切替えを通知すると、CPU122はZdt端子の出力をローレベルに設定して、トランジスタ212及びトランジスタ215をオフする。これにより、ゼロクロス検知回路216への電圧Vccの供給が停止され、ゼロクロス検知回路216における電力消費を抑制することができる。ここでCPU122は、ゼロクロス検知回路216への電圧Vccの供給を停止すると共に、24Vの出力を停止し、電力消費を更に抑えることが可能な構成としても良い。
【0023】
(ゼロクロス検知回路)
ゼロクロス検知回路216は、電圧Vccが供給されているときには、交流電圧Vacがほぼゼロボルトとなるゼロクロスタイミングで、二次側のゼロクロス検知信号をハイレベルからローレベル、又はローレベルからハイレベルに切り替える。ゼロクロス検知信号は二次側のエンジンコントローラ123に出力され、エンジンコントローラ123はゼロクロスタイミングを検知することができる。
【0024】
図2に示すゼロクロス検知回路216では、抵抗220、221は、ニュートラルラインとDCLラインとの間に直列に接続されており、DCLラインの電圧を基準としてニュートラルラインから入力される電圧を分圧している。また、コンデンサ222は抵抗221と並列に接続され、一端は抵抗220と抵抗221との接続点と接続され、他端はDCLラインと接続されている。トランジスタ219(第2のスイッチング素子)のベース端子は、抵抗220と抵抗221との接続点、及びコンデンサ222の一端と接続されている。トランジスタ219のコレクタ端子、及び伝達手段であるフォトカプラ218の一次側LED(発光ダイオード)のアノード端子は、抵抗217を介して、トランジスタ215のコレクタ端子と接続されている。一方、トランジスタ219のエミッタ端子、及びフォトカプラ218の一次側LEDのカソード端子は、DCLラインと接続されている。フォトカプラ218の二次側フォトトランジスタは、コレクタ端子が抵抗223を介して電圧3.3Vでプルアップ接続されており、エミッタ端子は、接地されている。なお、フォトカプラ218の二次側フォトトランジスタのコレクタ端子は、エンジンコントローラ123と接続され、コレクタ端子の電圧はゼロクロス検知信号として出力される。
【0025】
抵抗220、221により分圧された電圧Veは、コンデンサ222によって不要なノイズが除去された後、トランジスタ219のベース端子に入力され、電圧Veに応じて、トランジスタ219がオン、又はオフされる。電圧Veがトランジスタ219の閾値電圧以上の場合にはトランジスタ219がオンし、ベース端子に入力される電圧Veは、トランジスタ219のベース-エミッタ間電圧(閾値電圧)によりクランプされる。そのため、図3(b)に示すように、トランジスタ219のベース-エミッタ間電圧によりクランプされた電圧波形となる。
【0026】
トランジスタ215がオンすると、トランジスタ215を介してゼロクロス検知回路216に電圧Vccが供給される。電圧Vccが供給されているときに、電圧Veがトランジスタ219の閾値電圧を超えるとトランジスタ219はオンする。これにより、フォトカプラ218の一次側LEDは非導通状態となって消灯し、二次側フォトトランジスタもオフする。その結果、ゼロクロス検知信号は、抵抗223を介して電圧3.3Vでプルアップされた状態であるハイレベルとなる(図3(d))。一方、電圧Vccが供給されているときに、トランジスタ219のベース端子に入力される電圧Veがトランジスタ219の閾値電圧を下回ると、トランジスタ219はオフする。これにより、フォトカプラ218の一次側LEDは導通状態となって点灯し、二次側フォトトランジスタもオンする。その結果、ゼロクロス検知信号はローレベルとなる(図3(d))。このように、ゼロクロス検知信号は、交流電圧Vacのゼロクロスタイミングでハイレベルからローレベル、又はローレベルからハイレベルへの切替えを繰り返す信号となる(図3(d))。
【0027】
(data信号)
また、トランジスタ215がオン状態で、トランジスタ219がオフ状態の期間、すなわちフォトカプラ218の一次側LEDが導通状態で点灯している期間(このとき、ゼロクロス検知信号はローレベル)に、トランジスタ215をオフする。すると、トランジスタ215を介して供給されていた電圧Vccの供給が停止されるため、フォトカプラ218の一次側LEDが非導通状態となって消灯し、その結果、ゼロクロス検知信号はハイレベルとなる。このように、トランジスタ219がオフ状態の期間に、CPU122がZdt端子の出力をハイレベル又はローレベルに設定することにより(図3(c))、二次側のゼロクロス検知信号をハイレベル又はローレベルに変化させることができる。すなわち、CPU122は、Zdt端子から出力するデータ(data信号)をゼロクロス検知信号に重畳させて、エンジンコントローラ123へ情報を伝達することができる(図3(d))。
【0028】
ところで、上述したCPU122がゼロクロス検知信号にdata信号を重畳させて、エンジンコントローラ123へ伝達することが可能になるのは、トランジスタ219がオフ状態の期間である(図3(c)、図3(d))。トランジスタ219がオフ状態のとき、CPU122はZdt端子の出力をハイレベル又はローレベルに切り替えることによって、フォトカプラ218の一次側LEDを点灯(導通状態)又は消灯(非導通状態)させる。これにより、エンジンコントローラ123に出力される二次側のゼロクロス検知信号をローレベル又はハイレベルに変化させることができる。すなわち、トランジスタ219がオフ状態のときにのみ、CPU122は二次側のエンジンコントローラ123に出力されるゼロクロス検知信号にdata信号を重畳させることができる。
【0029】
しかしながら、図2に示すように、CPU122は交流電圧Vacの状態を検知するための回路を有していない。そのため、CPU122は、トランジスタ219のオン・オフ状態を検知していないので、本実施例では、一次側の交流電圧Vacの情報を示すdata信号を逐次出力する構成としている。その結果、エンジンコントローラ123は、トランジスタ219がオフ状態で、ゼロクロス検知信号がローレベルとなっている期間にdata信号が出力された場合のみ、交流電圧Vacの情報を重畳させることができる。例えば、CPU122がZdt端子からdata信号を出力するタイミングがゼロクロスタイミングをまたぐタイミングの場合には、data信号に含まれるデータの一部が欠けてしまうことになる。また、トランジスタ219がオン状態の場合には、ゼロクロス検知信号はハイレベルであり、data信号が重畳されない状態となる(図3(c)、(d))。
【0030】
このように、一回のゼロクロス検知周期では、data信号を正しく重畳することができない場合があるため、本実施例では、data信号を出力するサイクル(周期)を、商用交流電源201の電源周波数に比して充分に早くしている。これにより、data信号を出力するサイクル(周期)が、ゼロクロス検知信号がローレベルの期間(すなわち、トランジスタ219がオフ状態の期間)に終了するようになり、なるべくデータ欠けが生じないようになっている。
【0031】
本実施例では、電圧生成部121は、内部に電圧検知回路(不図示)を有している。CPU122は、電圧検知回路で電圧生成部121に入力される電圧Vdcを検知することにより、商用交流電源201の交流電圧Vacの電圧値を逐次算出している。そして、CPU122は、算出した交流電圧Vacの電圧値データを、Zdt端子からdata信号として逐次出力している(図3(c))。
【0032】
一方、エンジンコントローラ123は、商用交流電源201の交流電圧Vacの電圧値データを保持するためのメモリを内部に有している。そして、エンジンコントローラ123は、ゼロクロス検知信号に重畳されたdata信号に含まれる交流電圧Vacの情報を正常に受信する毎に、メモリ内の交流電圧Vacの電圧値データを更新する。また、エンジンコントローラ123は、上述したデータ欠けや、ノイズ等による突発的な信号変化によりdata信号が正常に受信できない場合は、メモリに保持された直近の交流電圧Vacの電圧値データを制御に使用する。そして、エンジンコントローラ123は、メモリ内部に保持する一次側の交流電圧Vacの情報に基づいて、加熱定着器103のヒータ102への投入電力の制御を行う。
【0033】
以上、ゼロクロス検知信号がローレベルの期間にのみ、data信号のエンジンコントローラ123への伝達が可能となる構成について説明した。本実施例では、ゼロクロス検知信号がローレベルの期間のみ、data信号の伝達が可能だが、例えば、ゼロクロス検知信号がハイレベルの期間にのみ、data信号の伝達が可能となるような回路構成にしてもよい。更に、ゼロクロス検知信号のハイレベル、ローレベルに関係なく、エンジンコントローラ123へdata信号の伝達が可能となる回路構成にしてもよい。
【0034】
本実施例では、CPU122がトランジスタ219のオン・オフ状態を検知しない構成について説明した。例えば、CPU122がトランジスタ219のオン・オフ状態を検知可能な回路構成にして、トランジスタ219がオフ状態の期間のみ、CPU122がZdt端子からdata信号を出力するようにしてもよい。これにより、上述したdata信号をゼロクロス検知信号に重畳した際のデータ欠けの発生を回避することができる。
【0035】
また、CPU122が二次側エンジンコントローラ123へ伝達する情報は、上述した交流電圧Vacの電圧情報に限ったものではない。例えば商用交流電源201の電源周波数や、商用交流電源201の一時的な停電(瞬断)や電圧低下といった電源電圧の異常、その他電圧生成部121の動作状態や異常、故障の発生有無といった一次側の情報でもよい。
【0036】
本実施例では、電圧生成部121を制御するCPU122がZdt端子の制御を行っているが、一次側にある制御回路(CPU)であれば、電圧生成を制御するCPU122に限定する必要はない。例えば、上述したCPU122の他に加熱定着器103の制御を行うCPUを一次側に設けている構成では、加熱定着器103の制御を行うCPUがゼロクロス検知信号を制御するようにしてもよい。
【0037】
また、本実施例では、一次側から二次側へ信号を伝達する手段として、フォトカプラ218を使用しているが、フォトカプラに限定されるものではなく、例えば絶縁トランスのような、一次と二次との間を絶縁し、信号伝達可能な素子であればよい。更に、本実施例では、一次側の制御手段としてCPU122を用いた例について説明したが、制御手段はCPUに限定されるものではなく、例えばDSPのようなデジタル処理を行う制御素子でもよい。
【0038】
[電源ユニットの制御シーケンス]
図4は、電源ユニット120のゼロクロス検知信号にdata信号を重畳させる制御シーケンスを示すフローチャートである。図4に示す処理は、プリンタ101の電源がオンされ、電源ユニット120のCPU122が起動されると、CPU122により実行される。なお、上述したように、CPU122は、エンジンコントローラ123より、プリンタ101の運用状態(スタンバイモード、省電力モード)についての情報を随時、伝達されるものとする。また、プリンタ101が省電力モードの場合には、消費電力を削減するため、ゼロクロス検知回路216への電圧Vccの供給が遮断される。そのため、省電力モード時には、CPU122は、電圧Vdcの異常検知を行わないものとする。
【0039】
ステップ(以下、Sとする)101では、CPU122は、ゼロクロス検知回路216が動作しないように、ゼロクロス検知回路216への電圧Vccの供給を停止するために、Zdt端子の出力をローレベルに設定する。S102では、CPU122は、エンジンコントローラ123より取得したプリンタ101の運用状態が省電力モードかどうか判断する。CPU122は、プリンタ101の運用状態が省電力モードであると判断した場合には処理をS103に進め、プリンタ101の運用状態が省電力モードではない(スタンバイモードである)と判断した場合には処理をS104に進める。S103では、CPU122は、ゼロクロス検知回路216が動作しないように、Zdt端子の出力をローレベルに設定し、処理をS102に戻す。
【0040】
S104では、CPU122は、ゼロクロス検知回路216が動作するように、ゼロクロス検知回路216への電圧Vccの供給を行うために、Zdt端子の出力をハイレベルに設定する。S105では、CPU122は、コンデンサ204の電圧である電圧Vdcを取得する。S106では、CPU122は、取得した電圧Vdcの値が正常範囲内の電圧値かどうか(電圧Vdcが正常範囲?)判断する。CPU122は、電圧Vdcの値が正常範囲内の電圧値と判断した場合は処理をS107に進め、電圧Vdcの値が正常範囲内の電圧値ではないと判断した場合は処理をS110に進める。
【0041】
S107では、CPU122は、S105で取得した電圧Vdcに基づいて、商用交流電源201の交流電圧Vacの電圧値を算出する。上述したように、電圧Vdcは、交流電圧Vacのピーク電圧(例えば交流電圧が100Vの場合のピーク電圧は、√2倍の約141Vとなる)となるため、電圧Vacは、例えば電圧Vdcを√2で除することにより算出することができる。S108では、CPU122は、S107において算出した電圧Vacの値を対応するdata信号に変換し、変換したdata信号に応じて、Zdt端子の出力をハイレベル又はローレベルに適宜切り替えて、data信号を出力する。data信号を出力し終えると、S109では、CPU122は、ゼロクロス検知回路216が動作するように、Zdt端子の出力をハイレベルに設定し、処理をS102に戻す。
【0042】
S110では、CPU122は、電圧Vdcの異常をエンジンコントローラ123に伝達するために、電圧Vdcの異常に対応するdata信号をZdt端子より出力し、処理を終了する。これにより、電圧Vdcの異常を示すdata信号がゼロクロス検知信号に重畳され、出力される。エンジンコントローラ123は、data信号を受信することにより、CPU122から一次側の電圧Vdcの電圧異常が報知されると、印刷動作中の場合には画像形成動作を中止する。そして、エンジンコントローラ123は、パネル等の表示装置(不図示)に商用交流電源201の異常が発生したことを表示し、ユーザへの報知を行う。
【0043】
以上説明したように、本実施例によれば、簡易な構成で、一次側の情報を二次側に伝達することができる。
【実施例2】
【0044】
実施例1では、ゼロクロス検知回路が出力するゼロクロス検知信号に、CPU122が検知した交流電圧Vacの電圧値を示すdata信号を重畳させて、二次側のエンジンコントローラ123へ情報伝達する実施例について説明した。実施例2では、一次側のCPUがゼロクロスタイミングを検知し、ゼロクロスタイミング及び交流電圧Vacの情報を含むゼロクロス検知信号を出力する実施例について説明する。なお、画像形成装置であるプリンタ101の構成及び画像形成動作は、実施例1と同様であるため、同じ構成には同じ符号を用いることにより、ここでの説明は省略する。
【0045】
[電源ユニット構成]
図5は、本実施例の電源ユニット520の回路構成を示す回路図である。また、図6は、図5に示す電源ユニット520における各部の電圧波形やゼロクロス検知信号の波形を示すグラフである。図6(a)は、商用交流電源201から入力される交流電圧Vacの電圧波形を示している。図6(b)は、DCLを基準としたニュートラルラインの電圧を抵抗220,221で分圧した電圧Ve’の電圧波形を示している。図6(c)は、CPU522内部で生成されるゼロクロスタイミング信号を示している。図6(d)は、CPU522内部で生成されるdata信号の波形を示している。図6(e)は、電源ユニット520からエンジンコントローラ123に出力されるゼロクロス検知信号の波形を示している。なお、図6中の横軸は時間を示し、T1、T2、T3、T4、T5は、交流電圧Vacの電圧値が0Vになるゼロクロスタイミングを示している。
【0046】
図5に示す回路構成は、実施例1の図2に示す回路構成と比べて、次の点が異なっている。すなわち、図5では、抵抗220,221により分圧された電圧Ve’が電圧生成部521のCPU522に入力されている点、及びゼロクロス検知信号を出力するフォトカプラ518の制御をCPU522が行っている点が、実施例1とは異なる。更に、CPU522がTh端子に接続された温度検知素子501の温度を監視している点(詳細は後述する)も、実施例1とは異なる。
【0047】
図5において、電圧生成部521は一次側にCPU522を有し、CPU522は、入力電圧Vdcに基づいて、直流電圧3.3V、及び24Vを生成し、プリンタ101の各ユニットに出力するように、電源ユニット520の制御を行う。また、電圧生成部521では、フォトカプラ518を動作させるための電源電圧として、DCLラインを基準として比較的低電圧の電圧Vccが生成される。そして、電圧Vccは電圧生成部521内だけでなく、一次側のその他の制御回路にも供給される。
【0048】
図5において、抵抗220、221は、実施例1の図2と同様に、ニュートラルラインとDCLラインとの間に直列に接続されており、DCLラインの電圧を基準としてニュートラルラインから入力される電圧を分圧している。抵抗220、221により分圧された電圧Ve´は、コンデンサ222によって不要なノイズが除去された後、CPU522のアナログ-デジタル変換入力ポートであるA/D端子に入力される。このときのCPU522のA/D端子に入力される電圧Ve´は、図6(b)に示す電圧波形となる。CPU522は、図6のT1、T2、T3、T4、T5で示される、A/D端子から入力された電圧Ve´が0Vになるタイミング、すなわち交流電圧Vacのゼロクロスタイミングを検知する。そして、CPU522は、ゼロクロスタイミングでハイレベルからローレベル、又はローレベルからハイレベルに切り替わる信号、すなわちゼロクロスタイミング信号を、CPU522内部で生成する(図6(c))。
【0049】
図5において、CPU522のZdt端子は、抵抗509を介してトランジスタ519のベース端子に接続されている。トランジスタ519は、コレクタ端子がフォトカプラ518の一次側LEDのカソード端子に接続され、エミッタ端子がDCLラインに接続されている。一方、フォトカプラ518の一次側LEDのアノード端子は、抵抗517を介して電圧Vccにプルアップ接続されている。フォトカプラ518の二次側フォトトランジスタのコレクタ端子は、抵抗223を介して電圧3.3Vにプルアップ接続され、エミッタ端子は接地されている。
【0050】
CPU522がZdt端子の出力をハイレベルに設定すると、トランジスタ519はオン状態となり、フォトカプラ518の一次側LEDは導通状態となって点灯し、フォトカプラ518の二次側フォトトランジスタもオン状態となる。その結果、エンジンコントローラ123に出力される信号、すなわちゼロクロス検知信号はローレベルとなる。一方、CPU522がZdt端子の出力をローレベルに設定すると、トランジスタ519はオフ状態となり、フォトカプラ518の一次側LEDは非導通状態となって消灯し、フォトカプラ518の二次側フォトトランジスタもオフ状態となる。その結果、エンジンコントローラ123に出力されるゼロクロス検知信号はハイレベルとなる。このように、CPU522がZdt端子からの出力をハイレベル、又はローレベルに設定することにより、フォトカプラ518を介して、二次側エンジンコントローラ123へローレベル、又はハイレベルのゼロクロス検知信号が出力される。
【0051】
本実施例では、実施例1と同様に、電圧生成部521は、内部に電圧検知回路(不図示)を有している。CPU522は、電圧検知回路で電圧生成部521に入力される電圧Vdcを検知することにより、商用交流電源201の交流電圧Vacを逐次算出している。更に、本実施例では、CPU522は、A/D端子から入力される電圧が0ボルトになるタイミングを検知し、0ボルトになる周期を算出することにより、交流電圧Vacの電源周波数も算出している。そして、CPU522は、算出した交流電圧Vacの電圧値と電源周波数データを含むdata信号を、ゼロクロスタイミング(図6(c))から所定時間である時間tが経過した後、CPU522内部で生成する(図6(d))。そして、CPU522は、ゼロクロスタイミング(図6(c))にdata信号(図6(d))を重畳させて、Zdt端子よりゼロクロス検知信号として出力する(図6(e))。このように、data信号の出力タイミングを、ゼロクロスタイミングに対して同期させることにより、エンジンコントローラ123は、ゼロクロス検知信号に重畳されて出力されるdata信号を受信するタイミングを予め知ることができる。そのため、エンジンコントローラ123は、data信号の受信時にノイズ等により突発的な波形変化の影響を受けても、正常なdata信号の受信がしやすくなる。なお、上述したdata信号の出力タイミングをゼロクロスタイミングと同期させる方法でなく、例えば、実施例1と同様に、data信号の出力タイミングを、ゼロクロスタイミングとは無関係なタイミングで出力するようにしてもよい。
【0052】
また、図5において、CPU522のTh端子には温度検知素子501が接続されている。温度検知素子501は、電圧生成部521内に配置された発熱素子(例えばトランスやFET(電界効果トランジスタ)のような動作時に温度が上昇する素子)の温度を検知する。CPU522は、温度検知素子501により検知された温度に基づいて、電圧生成部521内部の素子温度が正常な範囲内にあるかどうか判断する。CPU522は、何らかの異常により温度検知素子501が検知した温度が正常範囲を超えた場合には、温度異常と判断する。そして、CPU522は、Zdt端子からゼロクロスタイミングで出力するゼロクロスタイミング信号(図6(c))に、温度異常を通知するdata信号(図6(d))を重畳させて、エンジンコントローラ123に通知する。エンジンコントローラ123は、CPU522からのゼロクロス検知信号に重畳されたdata信号により、一次側の発熱素子の異常発熱が報知されると、画像形成動作を停止する。そして、エンジンコントローラ123は、パネル等の表示装置(不図示)に、電源ユニット520の電圧生成部521に異常が発生したことを表示し、ユーザへの報知を行う。
【0053】
なお、CPU522が二次側に情報を伝達するタイミングは適宜変えてもよい。例えば、CPU522は、画像形成動作に直接関係のないデータは、画像形成が行われていないスタンバイモード中にエンジンコントローラ123へ伝達するようにしてもよい。また、例えば、CPU522は、画像形成動作に関係する交流電圧Vacに関する情報は、画像形成時を含む常時、エンジンコントローラ123へ伝達するようにしてもよい。
【0054】
[電源ユニットの制御シーケンス]
図7は、電源ユニット520のゼロクロス検知信号にdata信号を重畳させる制御シーケンスを示すフローチャートである。図7に示す処理は、プリンタ101の電源がオンされ、電源ユニット520のCPU522が起動されると、CPU522により実行される。なお、上述したように、CPU522は、エンジンコントローラ123より、プリンタ101の運用状態(スタンバイモード、省電力モード)についての情報を随時、伝達されるものとする。また、実施例1では、プリンタ101が省電力モードの場合には、消費電力を削減するため、ゼロクロス検知回路216への電圧Vccの供給が遮断される。そのため、省電力モード時には、CPU122は、電圧Vdcの異常の検知を行っていなかった。一方、本実施例では、CPU522は、ゼロクロスタイミングに応じて、ゼロクロス検知信号を出力する。そのため、CPU522は、ゼロクロス検知信号が出力されない省電力モード時においても、電圧Vdcの異常検知を行い、異常検知時には、エンジンコントローラ123に異常報知を行うものとする。
【0055】
S201では、CPU522は、ゼロクロス検知信号を出力しないように、Zdt端子の出力をローレベルに設定する。S202では、CPU522は、コンデンサ204の電圧である電圧Vdcを取得する。S203では、CPU522は、取得した電圧Vdcの値が正常範囲内の電圧値かどうか(電圧Vdcは正常範囲?)判断する。CPU522は、電圧Vdcの値が正常範囲内の電圧値と判断した場合は処理をS204に進め、電圧Vdcの値が正常範囲内の電圧値ではないと判断した場合は処理をS216に進める。
【0056】
S204では、CPU522は、S202で取得した電圧Vdcに基づいて、商用交流電源201の交流電圧Vacの電圧値を算出すると共に交流電圧Vacの周波数を算出する。前述したように、電圧Vdcは、交流電圧Vacのピーク電圧(例えば交流電圧が100Vの場合のピーク電圧は、√2倍の約141Vとなる)となるため、電圧Vacは、電圧Vdcを√2で除することにより算出することができる。また、CPU522は、A/Dポートから入力される電圧Ve’の電圧値に基づいて、商用交流電源201から入力される交流電圧Vacの電源周波数を算出する。ここでは、CPU522は、A/Dポートから入力される電圧Ve’の電圧が0VとなるタイミングをRAMに記憶しておき、0Vとなるタイミングから次に0Vとなるタイミングに基づいて求められる周期に基づいて、電源周波数を算出する。そしてS205で交流電圧Vacの電源周波数が正常範囲にあるかどうか(周波数は正常範囲?)判断する。CPU522は、交流電圧Vacの電源周波数が正常範囲内と判断した場合は処理をS206に進め、交流電圧Vacの電源周波数が正常範囲内ではないと判断した場合は処理をS216に進める。
【0057】
S206では、CPU522は、Th端子に接続された温度検知素子501より温度情報を取得する。S207では、CPU522は、取得した温度情報に基づいて、電圧生成部521内部の素子温度が正常な範囲にあるかどうか(Th温度は正常?)判断する。CPU522は、取得した温度情報の温度が正常な範囲にあると判断した場合には処理をS208に進め、取得した温度情報の温度が正常な範囲にない(異常である)と判断した場合には処理をS216に進める。
【0058】
S208では、CPU522は、エンジンコントローラ123より取得したプリンタ101の運用状態が省電力モードかどうか判断する。CPU522は、プリンタ101の運用状態が省電力モードであると判断した場合には処理をS209に進め、プリンタ101の運用状態が省電力モードではない(スタンバイモード又はプリントモードである)と判断した場合には処理をS210に進める。S209では、CPU522は、ゼロクロス検知信号を出力しないように、Zdt端子の出力をローレベルに設定し、処理をS202に戻す。S210では、CPU522は、A/Dポートから入力される電圧Ve’の電圧値に基づいて、ゼロクロスタイミングかどうか判断する。CPU522は、電圧Ve’の電圧が0Vの場合にはゼロクロスタイミングであると判断して処理をS211に進め、電圧Ve’の電圧が0Vではない場合にはゼロクロスタイミングではないと判断して、処理をS202に戻す。
【0059】
S211では、CPU522は、Zdt端子の電圧レベルを反転させる。具体的には、CPU522は、Zdt端子より、直前に出力していたゼロクロス検知信号がハイレベルの場合にはローレベルのゼロクロス検知信号を出力する。一方、CPU522は、Zdt端子より、直前に出力していたゼロクロス検知信号がローレベルの場合にはハイレベルのゼロクロス検知信号を出力する。S212では、CPU522は、data信号を出力するタイミング(時間t)を検知するため、タイマをリセットしスタートさせる。
【0060】
S213では、CPU522はタイマを参照して、時間tが経過したかどうかを判断する。CPU522はタイマを参照して、時間tが経過したと判断した場合には処理をS214に進め、時間tが経過していないと判断した場合には処理をS202に戻す。S214では、CPU522は、タイマをリセットしストップさせる。S215では、CPU522は、電圧Vacの電圧値情報及び電源周波数情報を含むdata信号を作成し、エンジンコントローラ123に報知するため、Zdt端子より出力してゼロクロス検知信号と重畳させ、処理をS202に戻す。なお、エンジンコントローラ123は、ゼロクロス検知信号に重畳されたdata信号を受信すると、内部メモリに保持する交流電圧Vacの電圧値データ及び周波数データを更新する。
【0061】
S216では、CPU522は、Zdt端子より電源ユニット520の異常を通知するdata信号を出力し、エンジンコントローラ123に異常を報知する。詳細には、CPU522は、S203において電圧Vdcの電圧異常が検知された場合には電圧Vdcの電圧異常に対応したdata信号をZdt端子より出力し、処理を終了する。CPU522は、S205において交流電圧Vacの電源周波数に異常が検知された場合、電源周波数異常に対応したdata信号をZdt端子より出力し、処理を終了する。また、CPU522は、S207において温度検知素子501により温度異常が検知された場合には、温度異常に対応したdata信号をZdt端子より出力し、処理を終了する。一方、エンジンコントローラ123は、CPU522から一次側の電圧Vdcの電圧異常や温度異常が報知されると、印刷動作中の場合には画像形成動作を中止する。そして、CPU522は、パネル等の表示装置(不図示)に商用交流電源201の異常等が発生したことを表示し、ユーザへの報知を行う。
【0062】
上述したように、本実施例では、簡易な回路を設けて、ゼロクロス検知信号だけでなく、一次側のCPU122が保有する情報(電圧Vac情報や周波数情報、異常発熱情報)をゼロクロス検知信号に重畳させている。これにより、電源ユニットの一次側から二次側のエンジンコントローラ123に、電源ユニット520が保有する情報を伝達することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施例によれば、簡易な構成で、一次側の情報を二次側に伝達することができる。
【符号の説明】
【0064】
120 電源ユニット
121 電圧生成部
122 CPU
123 エンジンコントローラ
216 ゼロクロス検知回路
218 フォトカプラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7