(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
B41J2/175 151
B41J2/175 113
B41J2/175 133
(21)【出願番号】P 2020006648
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 能之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 広志
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-195908(JP,A)
【文献】特開2015-150718(JP,A)
【文献】特開2013-226726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からインクを補充可能な少なくとも一つのインクタンクと、前記インクタンクから供給されたインクを吐出する液体吐出ヘッドと、前記インクタンクおよび前記液体吐出ヘッドを内部に含む筐体と、を有する液体吐出装置であって、
前記インクタンクのうちの少なくとも一つ以上が、前記筐体を構成する複数の面のうちの少なくとも一部の面における筐体壁に固定され、かつ、
前記インクタンクを構成する複数の面のうち、前記筐体壁に固定されている面は、当該インクタンクにおいて最も面積が大きい面、または、前記最も面積が大きな面に対向した面であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体吐出装置は、複数のインクタンクを有し、
全てのインクタンクが前記筐体壁に固定されている、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記筐体壁は、前記液体吐出装置の内側に暴露される内壁と、前記液体吐出装置の外側に暴露される外壁と、を含み、前記インクタンクは、前記内壁に固定されている、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記筐体壁は、前記液体吐出装置の内側に暴露される内壁と、前記液体吐出装置の外側に暴露される外壁と、を含み、前記インクタンクは、前記内壁と前記外壁との間で固定されている、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記筐体を構成する面のうちの少なくとも一部の面に可動式の壁を含み、
前記インクタンクが固定される前記筐体壁は、前記可動式の壁の面を除いた少なくともいずれかの面における壁である、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記インクタンクの少なくとも一つは、前記筐体の側面における角部のいずれかに配置され、かつ、前記角部を構成する二つの面のそれぞれの筐体壁に跨って固定されている、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出装置は、複数のインクタンクを有し、
前記筐体の側面を構成する複数の面のうち、前記液体吐出ヘッドによって印刷される印刷媒体が排出される面を除いた面のそれぞれの筐体壁に、前記複数のインクタンクのいずれかが固定されている、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記液体吐出装置は、複数のインクタンクを有し、
前記複数のインクタンクの全てが、前記筐体を構成する複数の面のうち、任意の一つ面における筐体壁に固定されている、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記インクタンクが固定される筐体壁の面は、前記筐体の上面である、請求項
8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記インクタンクが固定される筐体壁の面は、前記筐体の側面である、請求項
8に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記インクタンクの少なくとも一つの形状は、一方向に延伸された長手形状を有する二つのインクタンクを、互いに平行ではない向きで合体させた形状を含むことを特徴とする請求項
10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記複数のインクタンクは、インク注入口を有するチューブと連通し、前記インク注入口は、前記筐体の一部分に集約されている、請求項
7乃至
11のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記複数のインクタンクは、外部からのインクを、チューブを介さずに前記インクタンクの内部に補充可能なインク注入口をそれぞれ有し、前記インク注入口は、前記筐体の一部分に集約されている、請求項
7乃至
11のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記インクタンクの重力方向の最下部は、前記液体吐出ヘッドの吐出面よりも高い位置に位置する、請求項1乃至
13のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記インクタンクは、前記液体吐出ヘッドに向かってインクが排出されるインク排出穴を有し、
前記インクタンクの幅は、インク排出穴に近づくにつれて狭くなることを特徴とする請求項1乃至
13のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記インクタンクは、インク供給穴を有し、
前記インクタンクが固定される筐体壁には、前記固定されるインクタンクの前記インク供給穴に対向する位置に、外部のインクを補充するインク注入口が形成されている、請求項1乃至
15のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
外部からインクを補充可能な少なくとも一つのインクタンクと、前記インクタンクから供給されたインクを吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを内部に含む筐体と、を有する液体吐出装置であって、
前記インクタンクのうちの少なくとも一つ以上を、前記筐体を構成する複数の面のうちの少なくとも一部の面における筐体壁に装着するためのタンク装着部を有し、
前記タンク装着部は、前記筐体壁に固定されて
おり、
前記筐体壁に固定されている前記タンク装着部は、前記インクタンクが装着されない状態においては、前記筐体の外部と内部とを連通し、前記インクタンクが装着されている状態においては、前記筐体の外部と内部とを連通しないことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項18】
前記タンク装着部は、装着する前記インクタンクと前記筐体壁とを合わせた厚みが最も薄くなるように前記筐体壁に固定されている、請求項
17に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
外部からインクを補充可能な少なくとも一つのインクタンクと、前記インクタンクから供給されたインクを吐出する液体吐出ヘッドと、前記インクタンクおよび前記液体吐出ヘッドを内部に含む筐体と、を有する液体吐出装置であって、
前記インクタンクは、前記筐体を構成する複数の面のうちの少なくとも一部の面における筐体壁と一体の部材で形成され、
前記筐体壁は、前記液体吐出装置の内側に暴露される内壁と、前記液体吐出装置の外側に暴露される外壁と、を含み、前記インクタンクは、前記内壁と前記外壁との間に配置されており、
前記インクタンクを構成する複数の面のうち、前記インクタンクにおける前記筐体壁の前記内壁または前記外壁と一体の部材に形成されている面は、当該インクタンクにおいて最も面積が大きい面であることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを液滴化して紙面に噴射することで画像を形成するインクジェットプリンタが広く用いられている。インクジェットプリンタでは、インクが保管されている容器(インクタンクという)から、水頭差またはポンプ圧力を利用することにより、インクが液体吐出ヘッドまで供給される。
【0003】
特許文献1には、インクを外部から補充可能にするプリンタが開示されている。特許文献1に開示のプリンタでは、筐体前面のカバーを開けるとインクタンクが並べられている。これらのインクタンク上部にあるインク注入口に、外部からインクボトルのインク供給口を挿入して、インクがインクタンクに補充される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなインク補充可能なプリンタは、インク補充可能ではないプリンタ(例えばインクタンクごと交換するようなプリンタ)と比較して、インクタンクの容量が大きくなる傾向がある。このため、プリンタ本体も大型化してしまう。
【0006】
本開示は、インク補充可能なプリンタを小型化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、外部からインクを補充可能な少なくとも一つのインクタンクと、前記インクタンクから供給されたインクを吐出する液体吐出ヘッドと、前記インクタンクおよび前記液体吐出ヘッドを内部に含む筐体と、を有する液体吐出装置であって、前記インクタンクのうちの少なくとも一つ以上が、前記筐体を構成する複数の面のうちの少なくとも一部の面における筐体壁に固定され、かつ、前記インクタンクを構成する複数の面のうち、前記筐体壁に固定されている面は、当該インクタンクにおいて最も面積が大きい面、または、前記最も面積が大きな面に対向した面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、インク補充可能なプリンタを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】筐体壁とインクタンクとの詳細を示す図である。
【
図7】インクタンクと筐体壁とインク注入口との関係を示す図である。
【
図11】筐体の複数の面の内壁に、複数のインクタンクを配置する例を示す図である。
【
図14】取り外し可能なインクタンクを説明する図である。
【
図15】取り外し可能なインクタンクを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。尚、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状などは、あくまで例示である。
【0011】
<<第1実施形態>>
本実施形態の液体吐出装置(印刷装置)を説明する前に、比較例として、本実施形態に拠らない液体吐出装置を先に説明する。その後に、本実施形態の液体吐出装置を説明する。尚、本明細書において、構成の参照符号の末尾にアルファベットを付している場合には、それぞれの構成を個別に参照しているものとし、共通している事項については、符号の末尾を省略する場合がある。
【0012】
図1は、比較例の液体吐出装置1を説明する斜視図である。液体吐出装置1は、液体であるインクを吐出する装置である。液体吐出装置1は、外部からインクを補充可能である。液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド101と、液体吐出ヘッド101が搭載されたキャリッジ102と、インクタンク106(液体タンク)と、筐体105と、を備えている。筐体105は、液体吐出装置1の最も外側に位置し、液体吐出装置1の内部は、箱形状の壁(筐体105)で覆われている。
【0013】
インクタンク106は、液体吐出装置1の左前付近に設けられている。尚、本明細書において、左右方向および前後方向は、各図に示す方向であるものとする。液体吐出装置1は、インクタンク補充用の不図示のカバーを備えている。インクタンク106には、インク注入口136が備えられている。ユーザは、補充用のカバーを空けてインクタンク106のインク注入口136にインクボトルを差し込んでインクを補充することができる。
【0014】
キャリッジ102は、筐体105内部を左右に動くことが可能であり、キャリッジ102よりも重力方向の下方に配置された印刷媒体(紙)に対して、インクを吐出しながら左右にスキャンすることで画像を形成する。紙を送りながらキャリッジ102のスキャンとインク吐出を繰り返すことで紙面上に画像が記録される。キャリッジ102には、一時的にインクを貯蔵するサブインクタンク116が設置されている。インクタンク106からサブインクタンク116に液体が供給される。
【0015】
筐体105上面には、給紙トレー104が設けられている。ユーザが、給紙トレー104を開けて、紙をセットすることで紙が供給される。紙は、キャリッジ102の下に送られて印刷が行われる。その後、筐体105前面に設けられた排紙トレー103に紙が送られることで、画像が形成された紙が排出される。
【0016】
キャリッジ102とインクタンク106とは、不図示のインクチューブなどで連結され、インクタンク106からキャリッジ102へインクが供給される。インクチューブは、十分な長さを有しており、キャリッジ102が左右にスキャンしても、インクチューブとの連結部およびインクチューブ自身が破損しないように設計される。
【0017】
図2は、本実施形態における液体吐出装置100の例を示す斜視図である。
図1に示す液体吐出装置1と
図2に示す液体吐出装置100とは、筐体105とインクタンク106との構成を除いて、ほぼ同じ構成となっている。
【0018】
図3は、
図2の液体吐出装置100の平面方向の断面図であり、主に左側の筐体105部分を抜粋した図である。以下、
図2および
図3を参照して、本実施形態における筐体105とインクタンク106とを説明する。
【0019】
筐体105は、一枚の壁、または、複数のほぼ平行に配置された壁が、連続して箱型に形成されている箱形状の壁によって構成されている。筐体105を構成する壁のうちで最も内側の壁面(以下、筐体内壁面132という)よりも内側には、広い内部空間109が形成されている。その内部空間109の中に、少なくとも液体吐出ヘッド101とインクタンク106とが設置されている。液体吐出ヘッド101およびインクタンク106は、筐体105が覆っている内部空間109に暴露されている。
【0020】
また筐体105のうち最も外側の面(以下、筐体外壁面131という)は、液体吐出装置100の外側に暴露されている。インクタンク106は、液体吐出装置100の筐体105を構成する複数の面のうちの一部の面における壁(筐体壁107)に固定されて配置されている。インクタンク106の短手方向は、筐体壁107の肉厚方向に配置されることが好ましい。筐体105内部の内部空間109の有効スペースを広く確保できるためである。つまり、筐体105の厚みとインクタンク106との厚みが最も薄くなるように、インクタンク106を配置するとよい。
【0021】
インクタンク106の短手方向が筐体壁107の肉厚方向に配置される場合、インクタンク106の各面のうち筐体壁107に固定される面は、インクタンク106の面積が最も大きな面、または、面積が最も大きな面と対向した面のいずれかとなる。
【0022】
インクタンク106のうち面積が最も大きな面、または、この面と対向した面を筐体壁107に固定することで、それら以外の面の面積を、相対的に小さくすることができる。一般的に筐体壁107は、比較例で用いられているような
図1に示すインクタンク106の任意の面よりも大きな面積を有する。従って、インクタンク106のうち、面積が最も大きな面、または、この面と対向した面以外の面積を小さくしても、インクタンク106の容量を十分に確保することができる。
【0023】
このように、インクタンク106のうち面積が最も大きな面、または、この面と対向した面を筐体壁107に固定すると、筐体壁107に沿ってインクタンク106の長手方向がほぼ平行に配置されることになる。この結果、筐体105の内部空間109に出っ張るインクタンク106の体積を減らすことが可能になり、筐体105内部の有効スペースを確保することができる。このため、インクタンク106の必要体積を確保しつつ、液体吐出装置100を小型化することができる。
【0024】
尚、
図2に示す例では、インクタンク106の形状が直方体の例を示したが、これに限られない。例えば、楕円柱または長円柱などのように、長手方向を有する任意図形の柱体であってもよい。また、この長手方向が、筐体壁107に沿って配置されていればよい。
【0025】
図2に示す例では、使用量が相対的に多いインクタンク(Black)106Kが、最も大きな容量を有している。また、インクタンク(Yellow)106Yが最も小さな容量を有している。インクタンク(Black)106Kは、インクタンク(Yellow)106Yと共に筐体105左側の筐体壁107に固定されている。また、インクタンク(Magenta)106Mおよびインクタンク(Cyan)106Cは、筐体105後側の筐体壁107に固定されている。
【0026】
各インクタンクからは、可撓性を有するインクチューブ(不図示)を介してキャリッジ102までインクが供給される。キャリッジ102が動いて連結部が破損したり、インクチューブが破損したりしてインク漏れを起こさないことが求められる。そのため、インクチューブは、シーリング性が高い構造を有し、且つ、十分に長く設計されている。
【0027】
図2に示すように、キャリッジ102には一時的にインクを貯蔵するサブインクタンク116が設置されていてもよい。サブインクタンク116を設けることで、液体吐出ヘッド101内部のインクに加わる圧力を制御しやすくなる。尚、サブインクタンク116を設けない構成としてもよい。
【0028】
インクタンク106は、筐体105を構成する筐体壁107のいずれに設置してもよい。例えば、筐体105の左右、上下、または、前後の筐体壁107に設置することができる。
【0029】
図4は、インクタンク106を全て筐体105の左側面の筐体壁107に集めた構成を示す図である。尚、ここでは全てのインクタンク106を筐体壁107に固定する例を説明するが、全てのインクタンク106を筐体壁107に固定しなくてもよい。例えば、使用量が相対的に多く大容量化が望まれるインクタンク(Black)106Kのみを、筐体壁107に固定してもよい。
【0030】
図5は、筐体壁107とインクタンク106との詳細構造を説明する図である。
図5は、
図4の液体吐出装置100のインクタンク106と筐体壁107との水平面方向の断面図を示す。一つの形態として、
図5(a)に示すように、筐体壁107の筐体内壁面132にインクタンク106を固定する構造が例として挙げられる。インクタンク106は、筐体105の内部空間109に暴露されている。また、筐体外壁面131は、液体吐出装置100の外側に暴露されている。
【0031】
本例のインクタンク106は、筐体壁107と平行方向に長く伸びており、筐体壁107の肉厚方向が薄くなるようなアスペクト比を持っている。このようなインクタンク106は、インクタンク106が倒れやすく、位置を安定化することが難しい。そこで、本実施形態では、筐体壁107にインクタンク106を固定する。これにより、インクタンク106の位置が安定化し、インクタンク106が動くことによるインクチューブとのジョイント部からのインク漏れの発生などを抑制することができる。
図5(a)では、筐体壁107は一層構造の例を示しているが、複層構造であってもよい。
【0032】
筐体内壁面132とインクタンク106との固定方法は、インクタンク106の部材の一部または筐体内壁面132の一部に固定治具を固定できるジョイント部を設けて、ネジ、かしめ、または、リベットなどの固定治具により固定することができる。また、インクタンク106を、ブラケットと筐体壁107との間に挟んで締めることにより、インクタンク106を固定してもよい。接着剤またはテープを用いてインクタンク106を固定してもよい。その他、インクタンク106と筐体内壁面132とに凹凸またはかみ合わせなどの篏合構造を設けて篏合させることで、インクタンク106を固定してもよい。
【0033】
筐体105の材料は、低コストで成型加工性が良いものが好ましい。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、またはポリカーボネートなどが筐体105の材料として挙げられる。インクタンク106の材料として、耐インク性、および、インクを視認するための透明性があるものが好ましく、ポリプロピレン、ポリカーボネート、エポキシ、またはアクリルなどが挙げられる。
【0034】
図5(b)は、筐体壁107とインクタンク106との他の構造例を示す図である。
図5(b)に示すように、筐体内壁面132と筐体外壁面131との間にインクタンク106を挟んで設置してもよい。この場合、筐体壁107の形状に沿って壁内部にインクタンクを設置できるので、
図5(a)よりも液体吐出装置100の小型化が可能になる。
【0035】
図5(c)は、筐体壁107とインクタンク106との他の構造例を示す図である。
図5(c)に示すように、インクタンク106の部材と、筐体壁107の部材とを共通化できれば、さらなる小型化、軽量化、及びコスト削減が可能になる。
【0036】
このように、筐体壁107とインクタンク106との構造としては、各種の例が挙げられる。
図5(b)、(c)は、インクタンク106を筐体壁107の部材の中に貯蔵する例である。小型化の観点では、
図5(b)、(c)の例の方が、
図5(a)の例よりも有利である。一方で、部材加工、例えば成型加工などの加工容易性、および、組み付けの容易性の観点では、
図5(a)の例の方が、
図5(b)、(c)の例よりも有利である。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、インクを補充可能な液体吐出装置を小型化することが可能となる。また、一態様によれば、インクタンクの部材を削減して軽量化および低コスト化が可能になる。
【0038】
尚、本実施形態では、4つのインクタンク106を筐体壁107に配置する例を説明したが、少なくとも1つ以上のインクタンク106が筐体壁107に配置されていればよい。5つ以上のインクタンク106が筐体壁107に配置されていてもよい。
【0039】
<<第2実施形態>>
本実施形態では、筐体105のうちの任意の一面の筐体壁107に、全てのインクタンク106を集約して配置する例の詳細を説明する。本実施形態では、
図4で説明したように、全てのインクタンク106を、筐体105の左側面に集めた場合を例に挙げて説明する。
【0040】
図6は、本実施形態の筐体壁107とインクタンク106との詳細を示す図である。
図6は、筐体105の内部からインクタンク106が配置されている筐体壁107を見た図である。
【0041】
例えば
図6(a)に示すように、全てのインクタンク106を筐体105の任意の一面に集めて配置する。これにより、インクタンク106から液体吐出ヘッド101に向かってインクを排出する穴であるインク排出穴134を、各インクタンク106の近傍に集約しやすくなる。このため、各インクタンク106のインク排出穴134に連結されるインクチューブを集約することができる。この結果、インクチューブが筐体105の内部空間109を動く範囲を狭くすることが可能となり、液体吐出装置100をより小型化することができる。
【0042】
他のメリットとして、筐体105の任意の一面のみをインクタンク付きの筐体壁107に変更すればよいので、既存プリンタとの部品共通化が容易となり、コストを削減することができる。また、インクタンク106にインクを補充する口であるインク注入口136(後述する
図7参照)を、各インクタンク106の近傍に集約しやすくなる。
【0043】
次に、インクタンク106から液体吐出ヘッド101へのインク供給性の観点から、好適なインクタンクの構造を説明する。前述したように、
図6(a)では、全てのインクタンク106を、筐体105の左側面の筐体壁107に集約させている。インクタンク106Kには、Blackインク121が充填されている。インクタンク106Yには、Yellowインク122が充填されている。インクタンク106Mには、Magentaインク123が充填されている。インクタンク106Cには、Cyanインク124が充填されている。
【0044】
水頭差によりインクを供給する場合、
図6(a)に示すように、少なくともインクタンク106内のインク上面(破線Aで示す)が液体吐出ヘッド101の吐出面の高さ(破線Bで示す)よりも高くないと、インクが液体吐出ヘッド101側へ供給されにくい。さらに、インクタンク106を空になるまで使用するためには、
図6(b)に示すようにインクタンク106の最下部の高さ、及び、インク排出穴134の高さ(破線Cで示す)が、液体吐出ヘッド101の高さよりも上方になるように構成することが好ましい。
【0045】
また、インクタンク106内のインクの排出性を上げるには、
図6(c)に示すように、インク排出穴134に近づくにつれてインクタンク106の幅を狭くするなどで、インク排出穴134に向かう傾斜をつくることが好適である。これにより、インク排出穴134にインクが集まりやすくなる。さらに
図6(d)に示すようにインク排出穴134同士を近傍に集めると、インクチューブを集約しやすくなり、小型化の観点で好適である。
【0046】
図7は、インクタンク106と筐体壁107とインク注入口136との関係を示す図である。補充するインクが充填されているインクボトルを差し込むインク注入口136は、インクタンク106ごとに設けられる。このインク注入口136は、ユーザアクセス性の観点から、液体吐出装置の一部分(例えば前面)に集約することが好適である。例えば
図7(a)に示すように、インクボトルを注入するインク注入治具137を液体吐出装置100の前方に設置し、インク注入治具137とインクタンク106のインク供給穴135とをインクチューブ138などの可撓性配管によって連通させてもよい。
【0047】
図7(b)は、インク注入治具137のー例の斜視図を示す。インク注入治具137の上面には、Black、Yellow、Magenta、Cyan用のインク注入口136が集約して配列されている。ユーザは、インクが詰まったインクボトルの開口部をインク注入口136に差し込み、インクを注入することができる。
【0048】
図7(c)は、このようなインク注入治具137およびインクチューブ138を使用しない例を示す図である。即ち、インクタンク106の形状を所定の形状にすることで、インク注入治具137およびインクチューブ138を用いずに、インク注入口136を液体吐出装置100の前方に集めることができる。
図7(c)に示すように、水頭差を維持する観点から、インクタンク106の最下部の高さ、及び、インク排出穴134の高さ(破線Cで示す)は、液体吐出ヘッド101の高さ(破線Bで示す)よりも重力方向において高くすることが好ましい。このため、筐体壁107の上部領域をインクタンク106とすることが好ましい。その上で、全てのインクタンク106のインク注入口136を液体吐出装置100の前方に配置するために、インクタンク106は所定の形状を有するものとしている。即ち、
図7(c)に示すように、インクタンク106は、一方向に延伸された長手形状を有している。インクタンク106は、略L字型であり、少なくとも一部のインクタンク106は、逆向きの略L字型となっている。より詳細には、インクタンク106Kとインクタンク106Cとは、いずれも略L字型となっており、互いに平行ではない向きを向いている。インクタンク106Yおよびインクタンク106Mは、インクタンク106Kとインクタンク106Cとを合体させた形状を含んでいる。尚、ここでは形状のみに着目しており、サイズについては言及しない。このように、インクタンク106の少なくとも一つは、一方向に延伸された長手形状を有する二つのインクタンクを、互いに平行ではない向きで各々の端部を連結したような形状を含むことが好ましい。これにより、
図7(c)に示すように、インクタンク106が配置される筐体壁107を効率的に利用することができる。即ち、各インクタンク106を任意の筐体壁107に集約し、インクチューブ138などの可撓性配管を用いずにインク注入口136を液体吐出装置100の前方に集約し、かつ、各インクタンク106の容量の差を所定範囲に維持することができる。尚、一つのインクタンク106Yまたは106Mの形状を形成する二つのインクタンク106Kおよび106Cの形状が連結する(交わる)角度は、90°でもよく、90°以上、または90°以下でもよい。
【0049】
図8は、インクタンク106を筐体105の壁に設置する他の例を示す斜視図である。
図8の液体吐出装置100は、印刷機能のみを有する装置である。インクタンク106と液体吐出ヘッド101との間の水頭差をさらに安定化するためには、
図8に示すように全てのインクタンク106を液体吐出装置の筐体105の上面の筐体壁107に集めることが好ましい。この場合、インクタンク106は、液体吐出ヘッド101の上方に配置され、インク残量に関わらず水頭差は一定である。
【0050】
また、
図8のインクタンク106の例に示すように、インク排出穴134の高さが最も低くなるようにインクタンク106の底面を傾斜させることが好ましい。インクの排出性を向上させるためである。
【0051】
尚、インクタンク106を筐体105の上面に集める構成は、
図8のような印刷機能のみを有する液体吐出装置のみには限定されず、スキャナユニットを有する複合機として機能する液体吐出装置に適用することもできる。例えば、筐体105上面にスキャナユニットを有する液体吐出装置の場合、スキャナユニット下のフレームを筐体壁として用いてインクタンク106を配置すればよい。
【0052】
本実施形態では、インクタンク106から液体吐出ヘッド101にインクを供給する手段として水頭差を使用する例を挙げてきたが、ポンプなどの手段を使用してもよい。ポンプなどを用いる場合には、インクを供給しやすくなるので、本実施形態で説明した水頭差による制約を緩和することもできる。
【0053】
図9は、インク注入口136を筐体外壁面131に設ける例を示す斜視図である。インク注入口136を筐体外壁面131に直接設けることで、インク注入口136へのアクセス性を向上させることができる。本実施形態では、筐体外壁面131にインク注入口136が形成されている。また、このインク注入口136が形成されている筐体外壁面131のすぐ裏にインクタンク106が配置される。インクタンク106には、インク供給穴が形成されており、対向する位置のインク供給穴とインク注入口136とが連通するように構成されている。これにより、外部からインクタンク106に直接インクを補充することができる。
図9(a)では、筐体105の側面にインク注入口136を設ける例を示しており、
図9(b)では、筐体105の上面にインク注入口136を設ける例を示している。筐体外壁面131にインク注入口136を設けることで、インク注入口136およびインク注入治具137を筐体105内に設置するスペースが削減されるので、装置をさらに小型化することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態では、インクタンク106を筐体105の所定の面の筐体壁107に集約することで、装置の小型化を図ることができる。また、インクタンク106を所定の面に集約することで、インクタンク106と液体吐出ヘッド101との間を連結するインクチューブを集約しやすくなり、さらに小型化を図ることができる。さらには、インクタンク106にインクを注入するインク注入口136を、筐体105内部の空間を阻害することなく所定の位置に集約することができるので、ユーザによるアクセス性を向上させることもできる。
【0055】
尚、本実施形態において、インクタンク106は、第1実施形態の
図5で説明したように、筐体内壁面132と筐体外壁面131との間に設置されてもよいし、筐体壁107と一体となっていてもよい。
【0056】
<<第3実施形態>>
本実施形態では、インクタンク106が固定される筐体壁107が、固定されて動かない壁である例の詳細を説明する。インクタンク106が固定される筐体壁107が、例えば可動式のカバーのような壁である場合、壁の可動に応じてインクタンク106も可動する。すると壁の可動に応じて、インク供給穴135およびインク排出穴134とインクチューブとの連結部が引っ張られて破損し、インク漏れなどが発生する虞がある。インクタンク106が、固定されて動かない筐体壁107に固定されることにより、インク漏れなどが発生することを抑制することができる。
【0057】
第1実施形態で説明した
図2は、インクタンク106が、固定されて動かない筐体壁107に固定されている一例である。
図2を再度参照して説明する。筐体105の前面は、排紙トレー103(紙排出口108)が設けられている面である。
図2の例において、固定されて動かない筐体壁107は、筐体105の左右側面と筐体105の後面である。このため、
図2では、筐体105の左側面と後面にインクタンク106を設置している。
【0058】
このように、固定されて動かない筐体壁107にインクタンク106を設置することで、インクタンク106を、筐体105を補強する部材として活用することも可能である。筐体強度が向上することで筐体105の肉厚を減らすことができる。あるいは筐体105を補強するために用いられていた補強部材を無くすことも可能である。この結果、液体吐出装置100の軽量化およびコスト削減が可能になる。
【0059】
図10は、インクタンク106によって筐体105を補強する例を説明する斜視図である。筐体105を補強するためには、筐体105において可動する壁を除く他の壁にインクタンク106を設置することが好ましい。具体的には、
図10(a)に示すように筐体105の左右側面と後面とにインクタンク106を設置することが好適である。また、
図10(b)のように筐体105の左右側面のみにインクタンク106を設けてもよい。筐体105における対向する二つの面(本例では左右側面)を補強すると、筐体105を支える上で効果的となる。
【0060】
また、
図10(c)に示すように、インクタンク106を筐体105の側面角部全てに設置してもよい。筐体角部は応力集中を起こしやすく、強度が弱くなる傾向があるからである。筐体105の側面各部に設置する場合、インクタンク106の形状は、
図10(c)に示すように、二つの筐体面を跨ぐような形状にすると強度向上の点で好適である。その他、直方体形状、楕円柱、または長円柱形状など、長手方向を有する任意図形の柱体を角部に設置してもよい。またこれらの柱体が角部で交わるような形状でもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態では、固定されて動かない筐体壁107にインクタンク106を固定することで、液体吐出装置100の小型化を図るとともに、インク漏れを抑制することができる。さらには、インクタンク106を、筐体105を補強する部材として活用することもできる。
【0062】
<<変形例>>
次に、各種の変形例を、図面を参照して説明する。
【0063】
図11は、筐体105における複数の面の内壁に、複数のインクタンクを配置する例を示す図である。第1実施形態で説明した例のように、
図11(a)、(b)では、筐体105における複数の面の内壁に、独立した複数のインクタンクを配置している。具体的には、筐体105の内壁に8つのインクタンク106を配置した例を示している。また、
図11(a)、(b)では、筐体105の右側(紙面では左側)の筐体壁107には、複数のインクタンク106が重ねて配されている。このように、他のインクタンク106よりも厚みを半分にした2つのインクタンク106を重ねることで、筐体内部のスペースを消費せずに多色化が可能となる。また、
図11の例では、排紙トレー103は、筐体の前面のうちの下部に設けられており、前面のうちの上部には、インクタンク106を配置することが可能である。
【0064】
図12は、インク注入口136の位置を説明する図である。
図12(a)は、液体吐出装置100の概略斜視図であり、
図12(b)は、インクタンク106の拡大図である。第2実施形態で説明したように、筐体105の所定位置にインク注入口136を集約することで、ユーザがインクを注入する際のアクセスが容易となる。インクタンク106のインクは、チューブ7を介して液体吐出ヘッド101(
図12では不図示)に送られる。
図12(a)では、第2実施形態で説明した例と異なり、筐体105の複数の面にインクタンク106が配されている。
【0065】
複数のインクタンク106には、各々にインクの補充を行うためのインク注入口136がインクチューブ138を介して開口している。これら複数のインク注入口136は筐体105の外部から操作可能な一ヵ所に集約するのがよく、これによりインク注入時に付着した液体の清掃が容易に手数をかけずに行うことができ、液体吐出装置のメンテナンス性が向上する。
【0066】
図13は、インク注入口136の位置を説明する図である。
図13(a)は、液体吐出装置100の概略斜視図であり、
図13(b)は、インクタンク106の拡大図である。
図13は、インクチューブ138を設けない例である。第2実施形態で説明した例と異なり、
図13(a)に示すように筐体105の複数の面にインクタンク106が配されている。
【0067】
インクチューブ138を設けずにインクタンク106に直接インク注入口136を開口させる。このとき、各インクタンクのインク注入口136が一か所に集約されるように各インクタンク106およびインク注入口136の形状を設ける。インクチューブ138を設けない場合、液体漏れなどのトラブルを回避することができ、より信頼性の高い液体吐出装置100を提供することができる。さらに部材が削減されることによる液体吐出装置100の軽量化などの効果を得ることができる。
【0068】
図14は、取り外し可能なインクタンク106を説明する図である。複数のインクタンク106は、筐体壁107に設けられており、それぞれ独立して自由に取り外し、および、取り付けが可能である。インクタンク106は、どのように保持されてもよいが、例えばカセット14を筐体の内部の筐体内壁面132に取り付け、カセット14にインクタンク106をはめ込むようにして保持されることができる。このような構成にすることで、インクタンク106の内部にインク成分が固着した場合または衝撃によるインクタンク106の破損が起こった場合などにおいて、必要な個所だけ清掃または修理を行うことが可能となり、メンテナンスが容易となる。
【0069】
図15は、インクタンク106が、筐体105のうちの少なくとも一部の筐体壁の一部を構成する例を示す図である。インクタンク106は、液体吐出装置100の筐体105を兼ね、インクタンク106自体が筐体105として機能する。例えば、筐体の一部または全面にフレーム15を設け、フレーム15にインクタンク106をはめ込む。つまり、フレーム15は、インクタンク106が装着されない状態においては、筐体105の外部と内部とを連通し、インクタンク106が装着されている状態においては、筐体105の外部と内部とを連通しないように構成されている。これにより筐体105の部材が削減され、液体吐出装置100の軽量化が実現できる。さらにインクタンク106を透明な材質とすることで、内部の液体が可視化でき、液体の残量の視認性が向上する。また、またデザイン的な独創性を生むことができる。
【0070】
尚、
図14および
図15の例では、一つの面の筐体壁107に、タンク装着部であるカセット14またはフレーム15を設ける例を説明したが、複数の面の筐体壁107にこれらのタンク装着部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0071】
101 液体吐出ヘッド
102 キャリッジ
105 筐体
106 インクタンク
107 筐体壁