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特許7423323通信装置、通信装置の制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】通信装置、通信装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/02 20090101AFI20240122BHJP
   H04W 28/08 20230101ALI20240122BHJP
   H04W 36/22 20090101ALI20240122BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240122BHJP
【FI】
H04W74/02
H04W28/08
H04W36/22
H04W84/12
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020010510
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021118442
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】橘 秀明
【審査官】長谷川 未貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-193287(JP,A)
【文献】特表2019-507976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクセスポイントを含む無線ネットワークにおいて、前記複数のアクセスポイントのうちの第1のアクセスポイントに接続するステーションの情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記ステーションの情報に基づいて、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が2以上の所定数以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上であると判定された場合、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションに対してアップリンクデータ送信機会を与えるトリガフレームを送信し、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上でないと判定された場合、前記トリガフレームの送信を禁止するように、前記第1のアクセスポイントの動作を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信装置は、前記無線ネットワークにおいて、他のアクセスポイントからの制御を受けるアクセスポイントとして動作し、
前記制御手段は、前記判定手段により前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上であると判定された場合、前記ステーションに前記トリガフレームを送信し、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上でないと判定された場合、前記トリガフレームを送信しない
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信装置は、前記無線ネットワークにおいて、前記第1のアクセスポイントを制御するアクセスポイントとして動作する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記第1のアクセスポイントから送信されるトポロジの情報を受信することにより、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの情報を取得する
ことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記第1のアクセスポイントに対して、トポロジの情報を照会することにより、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの情報を取得する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1のアクセスポイントに接続しているステーションを他のアクセスポイントにステアリングするステアリング手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記ステアリング手段によるステアリングが実行されない場合に、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記ステアリング手段が、複数の他のアクセスポイントのうち、特定のアクセスポイントに対して、前記ステーションをステアリングした場合に、前記制御手段は、前記特定のクセスポイントに対して、前記トリガフレームを送信させる第1のメッセージを送信する
ことを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第1のメッセージをすでに送信した前記第1のアクセスポイントに対して、前記トリガフレームの送信を停止させる停止手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記無線ネットワークは、Wi-Fi EasyMesh規格に準拠する無線ネットワークであり、他のアクセスポイントを制御するアクセスポイントは、コントローラであり、他のアクセスポイントからの制御を受けるアクセスポイントはエージェントである
ことを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記ステーションの情報は、IEEE1905.1規格に規定されるTopology NotificationメッセージまたはClient Capability Reportメッセージにより取得される
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記アクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上でないと判定された場合、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式で前記アップリンクデータ送信を制御するよう、前記アクセスポイントの動作を制御する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記無線ネットワークの通信状況に応じて、前記所定数を動的に変更する変更手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項13】
通信装置であって、
少なくとも、前記通信装置に接続されているステーションの数が2以上の所定の数以上であることを条件として、前記通信装置に接続されている1以上のステーションにアップリンクデータの送信機会を与えるトリガフレームを送信する送信制御手段を有し、
前記通信装置に接続されているステーションの数が前記所定の数以上でない場合、前記通信装置による前記アップリンクデータの送信機会を与える前記トリガフレームの送信は行われない
ことを特徴とする通信装置。
【請求項14】
前記通信装置に接続されているステーションの数が前記所定の数以上であるかどうかを判定する判定手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項13に記載の通信装置。
【請求項15】
通信装置の制御方法であって、
複数のアクセスポイントを含んで構成される無線ネットワークにおいて、前記複数のアクセスポイントのうちいずれかのアクセスポイントに接続するステーションの情報を取得するステップと、
取得された前記ステーションの情報に基づいて、前記アクセスポイントに接続するステーションの数が2以上の所定数以上であるか否かを判定するステップと、
前記アクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上であると判定された場合、前記アクセスポイントに接続するステーションに対してアップリンクデータ送信機会を与えるトリガフレームを送信し、前記アクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上でないと判定された場合、前記トリガフレームの送信を禁止するように、前記アクセスポイントの動作を制御するステップと
を含むことを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項16】
通信装置の制御方法であって、
少なくとも、前記通信装置に接続されているステーションの数が2以上の所定の数以上であることを条件として、前記通信装置に接続されている1以上のステーションにアップリンクデータの送信機会を与えるトリガフレームを送信するステップと、
前記通信装置に接続されているステーションの数が前記所定の数以上でない場合、前記通信装置による前記アップリンクデータの送信機会を与える前記トリガフレームの送信は行われないよう制御するステップと
を含むことを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1から14のいずれか1項に記載の通信装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークのアクセスポイントとして動作可能な通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Wi-Fi Allianceにおいて策定されたWi-Fi EasyMesh(登録商標)規格は、複数のアクセスポイント(以下、「AP」ともいう)によって形成されるネットワークにおける各種制御を規定している。このような複数のAPが連携することによって形成されるネットワークを、以下、「マルチAPネットワーク」という。
Wi-Fi EasyMesh規格において、マルチAPネットワークを形成するAPは、他のAPから各種情報を取得し、当該情報を用いて複数AP間における効率的なネットワーク制御を実現することができる。
【0003】
マルチAPネットワークを形成するAPは、Multi-AP Controller(以下、「コントローラ」という)と、Multi-AP Agent(以下、「エージェント」という)とのいずれかとして動作する。
コントローラは、他のAPを制御して、マルチAPネットワーク全体を制御するAPである。一方、エージェントは、コントローラの管理下に入り、各種のネットワーク情報をコントローラに報知するAPである。
【0004】
コントローラは、エージェントからIEEE1905.1規格で規定されるプロトコルを用いて報知されるネットワーク情報に基づいて、エージェントに指示を発行することで、マルチAPネットワークを制御する。エージェントがコントローラに報知するネットワーク情報は、ネットワークのトポロジ情報、ディスカバリー情報等を含む。
また、コントローラは、マルチAPネットワークと公衆回線網との間でのデータ通信のプロキシ制御やデータトラフィックの管理を実行する。
【0005】
特許文献1は、IEEE802.11ax準拠のネットワークにおいて、複数のステーション(STA)が複数のチャネル上で同時並行的にランダムアクセスを実行するアクセス方法を開示する。具体的には、特許文献1の技術において、APは、STAから送信されるSTAからAPへのアップリンク送信の要件の情報を搬送するフレームに基づいて、アップリンク送信のリソースの情報を搬送するトリガフレームをネットワークに送信する。STAは、トリガフレームが合意した期間内に受信されない場合、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式に基づく競合アクセス方式でチャネルにアクセスする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2019-500801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のように、IEEE802.11ax規格においては、複数のSTAからAPへのアップリンクデータ送信は、複数のSTAのそれぞれに対してアップリンクデータ送信へのトリガを与えるトリガフレームにより競合アクセス制御される。
具体的には、APは、STA(端末)から送信される、STAのバッファサイズ等のアップリンク送信能力のレポートを受信する。そして、APは、受信されたレポートに基づいて、各STAに対してトリガフレームを送信することで、各STAのアップリンクデータ送信へのトリガを与える。
【0008】
ここで、Wi-Fi EasyMeshのマルチAPネットワークには、多数のIEEE802.11ax準拠のSTAが接続することが可能である。しかしながら、複数のAPにそれぞれ上記のトリガフレーム送信制御を実行させると、APによるトリガフレームの制御がオーバーヘッドとなり、チャネルの利用効率が低下し、無線ネットワークのパフォーマンスが低下するおそれがある。
また、STAからのアップリンクデータ送信が競合する可能性が低く、トリガフレームによる競合アクセス制御の効果が少ない場合にも、APによるトリガフレームの制御の負荷が低減されず、無線ネットワークのパフォーマンス低下を招いてしまいかねない。
【0009】
上記課題の少なくとも1つを解決するため、本発明の1つの側面としての通信装置は、複数のアクセスポイントを含む無線ネットワークにおいて、前記複数のアクセスポイントのうちの第1のアクセスポイントに接続するステーションの情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記ステーションの情報に基づいて、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が2以上の所定数以上であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上であると判定された場合、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションに対してアップリンクデータ送信機会を与えるトリガフレームを送信し、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上でないと判定された場合、前記トリガフレームの送信を禁止するように、前記第1のアクセスポイントの動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とするまた、上記課題の少なくとも1つを解決するため、本発明の1つの側面としての通信装置は、通信装置であって、少なくとも、前記通信装置に接続されているステーションの数が2以上の所定の数以上であることを条件として、前記通信装置に接続されている1以上のステーションにアップリンクデータの送信機会を与えるトリガフレームを送信する送信制御手段を有し、前記通信装置に接続されているステーションの数が前記所定の数以上でない場合、前記通信装置による前記アップリンクデータの送信機会を与える前記トリガフレームの送信は行われないことを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る通信装置は、複数のアクセスポイントを含む無線ネットワークにおいて、前記複数のアクセスポイントのうちの第1のアクセスポイントに接続するステーションの情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記ステーションの情報に基づいて、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が所定数以上か否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が所定数以上であると判定された場合、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションに対してアップリンクデータ送信を指示するフレームを送信し、前記第1のアクセスポイントに接続するステーションの数が前記所定数以上でないと判定された場合、前記フレームを送信しないよう、前記第1のアクセスポイントの動作を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1つの側面としては、複数のアクセスポイントによって形成される無線ネットワークにおいて、複数の端末からアクセスポイントへのアップリンクデータ送信における、無線ネットワークのパフォーマンス低下を抑制することができる。また、本発明の1つの側面としては、STAからのアップリンクデータ送信が競合する可能性が低く、トリガフレームによる競合アクセス制御の効果が少ない場合において、APによるトリガフレームの制御の負荷が低減されず、無線ネットワークのパフォーマンス低下を招くことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る通信システムのネットワーク構成の一例を示す図。
図2】実施形態1に係る通信装置のハードウエアおよび機能構成の一例を示すブロック図。
図3】実施形態1に係る通信装置がマルチAPネットワークのエージェントとして動作する場合に実行するアップリンク制御処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図4】実施形態1に係る通信ネットワークにおける通信装置間の処理シーケンスの一例を示すシーケンス図。
図5】実施形態2に係る通信装置がマルチAPネットワークのコントローラとして動作する場合に実行するアップリンク制御処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図6】実施形態2に係る通信ネットワークにおける通信装置間の処理シーケンスの一例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正または変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0014】
以下、通信装置が、複数のアクセスポイント(AP)によって形成されるマルチAPネットワークを許容するWi-Fi EasyMesh規格に準拠する通信装置である例を説明するが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、通信装置は、複数のAPによって形成される無線ネットワークであるマルチAPネットワークで無線通信を可能とする他の通信方式を使用してもよく、あるいは、単一のAPにより形成される無線ネットワークの通信方式を使用してもよい。なお、Wi-Fi EasyMesh規格は、「Multi-AP Specification Version 1.0」としてWi-Fi Allianceから公表される仕様およびその後続の仕様に従う。
【0015】
(実施形態1)
<本実施形態のネットワーク構成>
本実施形態では、エージェントとして動作するアクセスポイント(AP)が、トリガフレームによるアップリンク制御と他のアップリンク制御とのいずれを実行するかを判定する。他のアップリンク制御とは、例えば、衝突回避型キャリア検知多重アクセス(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance:CSMA/CA)を含むがこれに限定されない。なお、アップリンク制御とは、複数のステーション(STA)がアクセスポイント(AP)に同時に接続してアップリンクを用いたデータ送信を実行する際のアップリンクチャネルの競合制御をいう。
【0016】
図1は、本実施形態に係る通信システムのネットワーク構成の一例を示す図である。
図1に示す通信システムは、1つ以上のAPで構成されるネットワークであるマルチAPネットワーク8に接続される通信装置1~7を備え、マルチAPネットワーク5上で無線通信を実行する。
【0017】
通信装置1、通信装置2、および通信装置3は、それぞれ、IEEE802.11シリーズ規格に準拠する無線LAN(Local Area Network)を構築するアクセスポイント(AP)として動作する。一方、通信装置4~7は、APである通信装置2または通信装置3により構築された無線LANに接続するステーション(STA)として動作する。以下、通信装置1~通信装置3をAP1~AP3と、通信装置4~通信装置7をSTA4~STA7ともいう。
【0018】
無線基地局である通信装置1は、無線LANネットワークを構築し、他のAPである通信装置2および通信装置3とそれぞれ接続している。通信装置2および通信装置3は、それぞれ、アクセス回線とコアネットワークとを中継するバックホール通信により、通信装置1に対するステーション(STA)として、通信装置1に無線LAN接続されている。
なお、APである通信装置1~3は、アクセスポイント機能を有する通信装置であればよく、アクセスポイントを提供する専用機器である必要はない。
【0019】
図1において、通信装置1は、WAN(Wide Area Network)9に接続され、他の通信装置2~7の通信を中継してWAN9に接続させることが可能なゲートウェイとして動作するものとする。通信装置1に替えて、通信装置2または通信装置3がゲートウェイとして動作してもよい。なお、通信装置1~通信装置3は、無線通信に加えて、あるいは無線通信に替えて、有線通信を実行可能であってよい。
【0020】
Wi-Fi EasyMesh規格では、1つのマルチAPネットワークにおいて、コントローラは1つと規定されており、一方、複数のエージェントが許容されている。
本実施形態において、APである通信装置1は、マルチAPネットワーク8において他のAPを制御してマルチAPネットワーク8全体を制御する機能を有するコントローラの役割を担うものとする。
一方、コントローラの役割を担わない他方のAPである通信装置2および通信装置3は、コントローラの管理下に入り、ネットワーク情報をコントローラに報知する機能を有するエージェントの役割を担うものとする。
図1において、STAである通信装置4~通信装置6は、それぞれ、親局と子局の間を接続するフロントホール通信により、APである通信装置2に無線LAN接続されている。同様に、STAである通信装置7は、フロントホール通信により、APである通信装置3に無線LAN接続されている。
【0021】
コントローラは、例えば、所定の制御メッセージをエージェントに送信することにより、エージェントの接続チャネルや送信パワーを制御する。さらにコントローラは、エージェントを異なるAP配下の異なるBSS(Basic Service Set)へ移行させたり、STAのローミング等のステアリングを制御したり、その他、データトラフィックの制御、ネットワークの診断等を実行する。
また、エージェントがコントローラへ報知するネットワーク情報は、エージェント自体の能力情報、および当該エージェントに接続しているSTAやAPの能力情報を含む。
【0022】
エージェントがコントローラへ報知するネットワーク情報はさらに、無線LAN接続チャネルの情報、電波干渉に関する情報、STAのリンク情報(リンクの接続や切断の通知等)、ネットワークトポロジの変化を通知するためのトポロジ情報を含んでよい。ネットワーク情報はさらにまた、Beaconフレームのメトリクス情報等を含んでよい。
【0023】
なお、コントローラの役割を担うAPは、エージェントの機能を同時に備えてよい。本実施形態では、図1に示す通信装置1~通信装置3のいずれもが、コントローラとエージェントの双方の機能を備えているものとして説明するが、コントローラとエージェントのいずれか一方の機能のみを備えてもよい。
図1において、マルチAPネットワーク8は、Wi-Fi EasyMesh規格およびIEEE802.11axに準拠する無線LANネットワークであるものとする。マルチAPネットワーク8は、コントローラAPである通信装置1により構築され、通信装置1、エージェントAPである通信装置2および通信装置3によって形成される。なお、Wi-Fi EasyMesh規格およびIEEE802.11ax規格は一例であり、同様の機能を備えるその他の規格であってもよい。例えばIEEE802.11axの後継規格であるIEEE802.11be規格や、それ以降のIEEE802.11シリーズ規格に対しても適用可能である。
【0024】
マルチAPネットワーク8は、ワイヤレスUSB(Universal Serial Bus)、MBOA(MultiBand OFDM Alliance)、またはBluetooth(登録商標)に準拠するネットワークであってよい。マルチAPネットワーク8はまた、UWB(Ultra Wide Band)、ZigBee(登録商標)、NFC(Near Field Communication)等に準拠するネットワークであってよい。UWBは、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、およびWINET等を含む。
【0025】
なお、図1に示す通信装置1~通信装置3は、Wi-Fi EasyMesh規格に準拠するAPとして動作可能な通信装置であって、図2を参照して後述するハードウエアおよび機能構成を備える通信装置であればよい。通信装置1~通信装置3は、例えば、無線LAN(Local Area Network)ルータ、PC、タブレット端末、スマートフォン、テレビ、プリンタ、複写機、プロジェクタ等のデバイスであってよいが、これらに限定されない。また、通信装置1~通信装置3は相互に異なるデバイスであってよい。同様に、図1に示す通信装置4~7は、Wi-Fi EasyMesh規格に準拠するSTAとして動作可能なあらゆる通信装置であってよく、デバイスの種類は限定されない。
【0026】
<通信装置のハードウエアおよび機能構成>
図2は、本実施形態に係る通信装置のハードウエアおよび機能構成の一例を示す図である。以下、図2に示すハードウエアおよび機能構成を備える通信装置として、図1の通信装置1を参照して説明するが、通信装置2および通信装置3もまた、図2に示すハードウエアおよび機能構成を備えるものとする。
図2の通信装置1は、記憶部11、制御部12、機能部13、入力部14、出力部15、通信部16、およびアンテナ17を備える。
図2の通信装置1の各部は、システムバス18により通信可能に相互接続される。なお、通信装置1は、上記のモジュール全てを備えなくともよく、図2の構成に加えて追加のモジュール等を備えてもよい。
【0027】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の1つまたは複数のメモリにより構成され、後述する各種動作を実行するためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の情報を記憶する。なお、記憶部11として、ROMやRAM等のメモリの他、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリカード、DVD等の記憶媒体を用いてよい。また、記憶部11は、複数のメモリを備えてよい。
【0028】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つまたは複数のプロセッサにより構成される。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、通信装置1全体を統括的に制御する。
【0029】
本実施形態において、制御部12は、マルチAPネットワークにおけるコントローラおよびエージェントの双方の機能を備える。通信装置1は、当該通信装置1への設定や操作に従って、コントローラおよびエージェントのうち少なくとも一方の機能を実行する。
制御部12は、コントローラおよびエージェントの機能を個別に有効化および無効化することができる。
【0030】
マルチAPネットワークのコントローラとして動作する場合、通信装置1は、エージェントから受信したネットワークのトポロジ情報やディスカバリー情報に基づいてエージェントに指示を発行することにより、マルチAPネットワーク8を制御する。
ここで、ネットワークのトポロジ情報は、例えばIEEE1905.1規格に規定されるTopology Notificationメッセージや、Topology Responseメッセージにより取得されてよい。ディスカバリー情報は、例えばIEEE1905.1規格に規定されるAP-Autoconfiguration SearchメッセージやAP-Autoconfiguration Responseメッセージから取得されてよい。これらはいずれも、Wi-Fi EasyMesh規格のプロトコルに基づくメッセージである。
【0031】
コントローラは、これらトポロジ情報やディスカバリー情報に基づいて、Wi-Fi EasyMesh規格の仕様でマルチAP制御メッセージとして規定されるClient Association Control Requestメッセージを送信する。これにより、マルチAPネットワーク8における他のBSSにSTAが接続することを禁止させ、所定のBSSへ明示的にSTAをステアリング(ローミング)して、BSS間で効率的なSTAのステアリングを可能とする。
なお、通信装置1は、コントローラの役割を担わない場合には、コントローラ機能を備えなくてもよい。同様に、通信装置1は、エージェントの役割を担わない場合には、エージェント機能を備えなくてもよい。
【0032】
制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働により、通信装置1全体を制御するようにしてもよい。また、制御部12は、機能部13を制御して所定の処理を実行させる。
【0033】
機能部13は、制御部12の制御の下、例えば、印刷や投影等の所定の処理を実行する。機能部13は、通信装置1が所定の処理を実行するためのハードウェアを含んでよい。例えば、通信装置1がプリンタである場合、機能部13は印刷部であり、印刷処理を実行する。この場合、機能部13が印刷処理するデータは、記憶部11に記憶されているデータであってもよく、後述する通信部16を介して他の通信装置から送信されるデータであってもよい。
入力部14は、マウス等のポインティングデバイスや音声入力、ボタン操作等を介してユーザからの各種操作の受付を行う。
出力部15は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部15による出力とは、例えば、LED(Light Emitting Diode)への表示や画面上への表示、スピーカによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含んでよい。あるいは、タッチパネル等のように、入力部14と出力部15の双方を1つのモジュールで実現してもよい。
【0034】
通信部16は、データリンク層のプロトコルであるIEEE802.11シリーズ規格に準拠した無線LANの制御や、IEEE802.3規格に準拠した有線LAN等の有線通信の制御を実行する。通信部16はさらに、ネットワーク層の通信プロトコルであるIP(Internet Protocol)通信の制御等を行う。
本実施形態において、通信部16は、IEEE802.11規格やIEEE802.3規格に従った通信上で、IEEE1905.1規格に従ったプロトコルを実行する。通信部16はさらに、Wi-Fi EasyMesh規格に従って、コントローラ、および/またはエージェントの制御を実行する。なお、IEEE1905.1規格は、データリンク層とネットワーク層の間の階層に位置するプロトコルを規定した規格である。
通信部16は、アンテナ17を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を実行する。
【0035】
<エージェントとして動作する通信装置が実行する処理>
図3は、APである通信装置がマルチAPネットワーク8におけるエージェントとして動作する場合に実行されるアップリンク制御処理の一例を示すフローチャートである。以下、図1の通信装置2がエージェントとして動作するものとして便宜上説明するが、通信装置2に替えて通信装置3がエージェントとして図3に示す処理を実行してもよい。
なお、図3の各ステップは、通信装置2の電源が投入された際に、通信装置2の記憶部11に記憶されたプログラムを制御部12が読み出し、実行することで実現される。あるいは、通信装置2の電源が投入された場合に替えて、ユーザ操作等により通信設定モード等、所定の動作モードに入った場合や、通信設定アプリケーション等、所定のアプリケーションが起動された場合に、図3の各ステップが実行されてもよい。
【0036】
また、図3に示すフローチャートの少なくとも一部をハードウェアにより実現してもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各ステップを実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略である。また、FPGAと同様にしてGate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現するようにしてもよい。
この場合、図3に示すフローチャートにおける各ブロックは、ハードウエアブロックと見做すことができる。なお、複数のブロックをまとめて1つのハードウエアブロックとして構成してもよく、1つのブロックを複数のハードウエアブロックとして構成してもよい。
【0037】
S1で、通信装置2の制御部12は、APである通信装置2が構成するBSSを介して通信装置2に接続されているステーション(STA)である通信装置の情報を、通信部16を介して取得する。S1で通信装置2が取得するSTAの情報を、以下、STA情報という。
具体的には、通信装置2の制御部12は、IEEE1905.1規格に規定されるプロトコルを用いて接続されるSTA(図1のSTA4~6)のSTA情報を取得してよい。あるいは、通信装置2の制御部12は、IEEE802.11シリーズに準拠した制御パケットにより、接続されるSTAのSTA情報を取得してもよい。
【0038】
通信装置2の制御部12はまた、入力部14を介してユーザからSTA情報の取得要求を受け付けてもよいし、予め記憶部11に一時記憶されたSTA情報を読み込んでもよい。入力部14は、ハードウエアとしてのボタンであってもよく、出力部15に表示されたUI(User Interface)上のボタンであってもよい。
【0039】
S2で、通信装置2の制御部12は、S1で取得されたSTA情報に基づいて、自装置に所定数以上のSTAが接続しているか否かを判定する。
所定数以上のSTAが通信装置2に接続されている場合(S2:Yes)、S3に進み、一方、所定数以上のSTAが通信装置2に接続されていない場合(S2:No)、S4に進む。
なお、S2で参照されるSTAの所定数は、予め通信装置2の記憶部11に静的に登録しておいてもよく、あるいは、通信部16の通信状況に応じて動的に値を変更可能にしてもよい。
【0040】
所定数以上のSTAが通信装置2に接続されている場合、S3で、通信装置2の制御部12は、通信装置2に接続しているすべてのSTAに対して、IEEE802.11axに規定されるトリガフレームを送信することを決定する。通信装置2の通信部16は、通信装置2に接続されているSTAに対して、トリガフレームを送信して、アップリンクデータ装置のトリガを与える。
S3で、通信装置2の通信部16が送信するトリガフレームは、各STAに割り当てられる空間ストリーム数、OFDMA周波数、チャネル帯域を分割したサブチャネルのリソースユニット(RU)のサイズ、STAの電力制御情報等を含んでよい。OFDMAは、Orthogonal Frequency Division Multiple Accessの略である。
【0041】
一方、所定数以上のSTAが通信装置2に接続されていない場合、すなわち、通信装置2に接続されるSTAの数が所定数未満である場合、S4で、通信装置2の制御部12は、他のアップリンク制御方式でアップリンク制御を実行すべきと決定する。他のアップリンク制御方式は、例えば、衝突回避型キャリア検知多重アクセス(CSMA/CA)方式であってよいがこれに限定されない。
なお、S4で、通信装置2の制御部12は、通信装置2に接続されるSTAに、CSMA/CA方式でアップリンク制御を実行する旨を通知してもよい。
【0042】
<マルチAPネットワークにおける通信システム全体の制御シーケンス>
図4は、マルチAPネットワーク8におけるエージェントが、トリガフレームによるアップリンク制御方式および他のアップリンク制御方式(例えば、CSMA/CA)のいずれを実行するかを判定する場合の通信装置間の制御シーケンスの一例を示す。
なお、図4では、通信装置1がコントローラとして機能し、通信装置2および通信装置3がそれぞれエージェントとして機能するよう、予め設定されているものとする。APがコントローラやエージェントとして起動する場合、Wi-Fi EasyMesh規格の仕様に基づき所定の機能を立ち上げる。
具体的には、APがエージェントとして起動すると、マルチAPネットワーク8へ参加するため、まず、バックホール(Backhaul)STAと呼ばれるマルチAPデバイスのSTA機能を立ち上げ、マルチAPネットワーク8への参加処理を開始する。一方、APがコントローラとして起動すると、フロントホール(Fronthaul)APと呼ばれるマルチAPデバイスのAP機能を立ち上げ、他のSTA装置や、他のAPで起動されたバックホールSTAからの接続を待ち受ける。
【0043】
S401で、エージェントとして起動したAP2およびAP3は、コントローラとして起動したAP1に、通信部16を介して、バックホールSTAとして、バックホール通信により、それぞれ無線LAN接続する。
S402で、AP2は、STA4~6に、通信部16を介して、フロントホール通信により、それぞれ無線LAN接続する。
S403で、同様に、AP3は、STA7に、通信部16を介して、フロントホール通信により、無線LAN接続する。
AP2およびAP3は、各STAと接続後、それぞれ、自装置の通信部16を介して、接続されているSTAのSTA情報を取得する。
【0044】
S404で、AP2は、自装置に所定数以上のSTAが接続しているか否かを判定する。
S405で、同様に、AP3は、自装置に所定数以上のSTAが接続しているか否かを判定する。
以下では、各APに接続しているSTAの数の所定数が3であるものとして説明するが、本実施形態はこれに限定されない。
【0045】
S406で、AP3は、自装置に接続しているSTAの数が1であるため、所定数以上のSTAが接続していないと判定し、他のアップリンク制御方式であるCSMA/CA方式によりアップリンク制御を実行することを決定する。
一方、S407で、AP2は、自装置に接続しているSTAの数が3であるため、所定数以上のSTAが接続していると判定し、IEEE802.11axによるトリガフレームを送信することによりアップリンク制御を実行することを決定する。
【0046】
S408で、AP2は、STA4~6に、それぞれトリガフレームを送信する。
一方、AP3は、AP7へトリガフレームを送信しない。すなわち、AP3は、トリガフレームの送信を抑制する。なお、AP3は、STA7に、CSMA/CA方式によりアップリンク制御を実行させるため、通知を送信してもよい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、エージェントとして動作する通信装置は、自装置に接続しているステーションの情報を取得する。そして、通信装置は、自装置に接続しているステーションが所定数以上接続している場合に、接続しているステーションに対してトリガフレームを送信することによりアップリンク制御を実行する。
一方、自装置に接続しているステーションが所定数未満である場合、通信装置は、各ステーションへのトリガフレームの送信を抑制し、他のアップリンク制御方式(例えば、CSMA/CA方式)を用いてアップリンクの競合制御を実行する。このため、すべてのステーションに対して、当該ステーションのアップリンク送信の能力に対応するトリガフレームを生成して送信し、それぞれのステーションからのフィードバックフレームを処理するアクセスポイントの処理負荷が低減される。
これにより、複数のアクセスポイントで構成される無線ネットワークにおいて、複数の端末からアクセスポイントへのアップリンクデータ送信における、無線ネットワークのパフォーマンス低下が有効に防止され、ネットワークパフォーマンスの最適化を図ることができる。
【0048】
(実施形態2)
以下、図5および図6を参照して、実施形態2を、実施形態1と異なる点についてのみ詳細に説明する。
実施形態1では、マルチAPネットワークにおけるエージェントが、トリガフレームによるアップリンク制御方式および他のアップリンク制御方式のいずれを実行するかを判定した。これに対して本実施形態では、マルチAPネットワークにおけるコントローラが、トリガフレームによるアップリンク制御方式および他のアップリンク制御方式(例えば、CSMA/CA方式)のいずれを実行するかを判定する。
実施形態2に係る通信装置のハードウエアおよび機能構成は、図2を参照して説明した実施形態1に係る通信装置と同様であるため、その説明を省略する。
【0049】
<コントローラとして動作する通信装置が実行する処理>
図5は、APである通信装置がマルチAPネットワーク8におけるコントローラとして動作する場合に実行されるアップリンク制御処理の一例を示すフローチャートである。以下、図1の通信装置1がコントローラとして動作するものとして便宜上説明するが、通信装置1に替えて通信装置2または通信装置3がコントローラとして図5に示す処理を実行してもよい。
【0050】
S51で、コントローラとして起動した通信装置1の制御部12は、エージェントである通信装置2および通信装置3が構成するBSSを介して通信装置2および通信装置3に接続されているSTAのSTA情報を取得する。
具体的には、通信装置1の制御部12は、通信部16を介して通信装置2および通信装置3とそれぞれ通信し、IEEE1905.1規格に規定されるプロトコルを用いて、接続されるSTA(図1の通信装置4~7)のSTA情報を取得してよい。あるいは、通信装置1の制御部12は、通信部16を介して通信装置2および通信装置3とそれぞれ通信し、IEEE802.11シリーズに準拠したパケットにより、接続されるSTAのSTA情報を取得してもよい。
【0051】
本実施形態において、通信装置1の制御部12は、Wi-Fi EasyMeshネットワーク構成情報を含むIEEE1905.1規格のTopology Notificationメッセージをエージェントから受信したか否かを判定する。
【0052】
通信装置1がエージェントからTopology Notificationメッセージを受信していない場合(S51:No)、S52に進む。一方、通信装置1がエージェントからTolopogy Notificationメッセージを受信した場合(S51:Yes)、S52およびS53をスキップして、S54に進む。
【0053】
S52で、通信装置1の制御部12は、通信部16を介して、エージェントに対して、IEEE1905.1規格のClient Capability Queryメッセージを送信する。このClient Capability Queryは、エージェントに接続しているSTAのSTA情報をレポートするClient Capability Reportメッセージの送信をエージェントに要求するメッセージである。これにより、コントローラである通信装置1は、マルチAPネットワーク8に接続するSTAのSTA情報をエージェントに照会して取得することができる。
【0054】
S53で、通信装置1の制御部12は、通信部16を介して、エージェントからClient Capability Reportメッセージを受信したか否かを判定する。
通信装置1がエージェントからClient Capability Reportメッセージを受信した場合(S53:Yes)、S54に進む。一方、通信装置1がエージェントからClient Capability Reportメッセージを受信していない場合(S53:No)、S53に戻ってClient Capability Reportメッセージを待ち受ける。
【0055】
S54で、通信装置1の制御部12は、STAの接続先APを切り替えるステアリングを実行するか否かを判定する。STAを他のAPへステアリングすることにより、複数のAP間で接続するSTAの数を平準化してAPの負荷を分散し、マルチAPネットワーク8全体を最適化することができる。
あるいはSTAをステアリングすることにより、STAが接続するAPを1つのAPに集約し、当該APが構成するBSSのネットワークに対してトリガフレーム送信によるアップリンク制御を許可し、マルチAPネットワーク8全体を最適化することができる。
【0056】
なお、STAをステアリングするか否かの指示は、入力部14を介してユーザから入力を受け付けてもよい。あるいは、通信装置1の通信部16は、IEEE802.11kやIEEE802.11vに規定される制御コマンドにより、各エージェントの負荷状況を取得し、負荷の高いエージェントに接続するSTAを他のエージェントに動的にステアリングしてもよい。
通信装置1の制御部12は、ステアリングを実行しないと判定した場合(S54:No)、S55に進み、一方、ステアリングを実行すると判定した場合(S54:Yes)、S60に進む。
【0057】
ステアリングを実行しないと判定した場合、S55で、通信装置1の制御部12は、対向するエージェント(マルチAPネットワーク)に所定数以上のSTAが接続しているか否かを判定する。
具体的には、通信装置1の制御部12は、S51でエージェントから受信したTopology NotificationメッセージまたはS53でエージェントから受信したClient Capability Reportメッセージを参照する。
なお、エージェントに接続するSTAの所定数は、予め記憶部11に静的に登録してもよく、あるいは、通信部16の通信状況に応じて動的に所定数の値を変更してもよい。
【0058】
対向するエージェントに所定数以上のSTAが接続している場合(S55:Yes)、S56に進み、一方、対向するエージェントに所定数以上のSTAが接続していない場合(S55:No)、S58に進む。
対向するエージェントに所定数以上のSTAが接続している場合、S56で、通信装置1の制御部12は、対向するエージェントにトリガフレームを送信することによりアップリンク制御を実行させることを決定する。
S57で、通信装置1の制御部12は、対向するエージェントに、トリガフレームの送信を許可する許可メッセージを送信する。
【0059】
一方、対向するエージェントに所定数以上のSTAが接続していない場合、S58で、通信装置1の制御部12は、対向するエージェントにトリガフレーム送信を許可せず、他のアップリンク制御方式、例えばCSMA/CA方式を実行させることを決定する。
S59で、通信装置1の制御部12は、対向するエージェントに、トリガフレームの送信を許可せず、CSMA/CAによりアップリンク制御すべき旨を示す不許可メッセージを送信する。
なお、許可メッセージおよび不許可メッセージは、IEEE1905.1の制御コマンドにより送信してもよく、あるいは、IEEE802.11シリーズに準拠するパケットにより送信してもよい。
【0060】
S54に戻り、ステアリングを実行すると判定した場合、S60で、通信装置1の制御部12は、マルチAPネットワーク8内において、複数のAP(エージェント)間で、接続するSTAの数を平準化して、APの負荷を分散することが可能か否かを判定する。
具体的には、通信装置1の制御部12は、通信部16を介して、エージェントの負荷を示す負荷情報を対向するエージェントから取得し、取得された負荷情報を参照することにより、STAの数を平準化することが可能か否かを判定する。
通信装置1の通信部16は、このエージェントの負荷情報を、各エージェントから送信されるTopology NotificationメッセージまたはClient Capability Reportメッセージにより取得してよい。あるいは、通信装置1の通信部16は、エージェントの負荷情報を、IEEE802.11kやIEEE802.11vプロトコルを用いて各エージェントから取得してもよい。
【0061】
STAの数を平準化することが可能であると判定した場合(S60:Yes)、S61に進み、一方、STAの数を平準化することが可能でないと判定した場合(S60:No)、S62に進む。
S61で、通信装置1の制御部12は、負荷が高いエージェントに接続しているSTAに対して、負荷の低い他のエージェントにステアリングにより接続先APを切り替えるべき旨を示すステアリング要求メッセージを、通信部16を介して送信する。
なお、ステアリング要求メッセージは、IEEE1905.1の制御コマンドにより送信してもよく、あるいは、IEEE802.11シリーズに準拠するパケットにより送信してもよい。
【0062】
S60に戻り、STAの数を平準化することが可能でないと判定した場合、S62で、通信装置1の制御部12は、STAの接続先APを1つの特定のエージェントに集約するステアリングを実行することを決定する。通信装置1の制御部12は、ステアリング対象のSTAに対して、特定のエージェントにステアリングで接続先APを切り替えるべき旨を示すステアリング要求メッセージを、通信部16を介して送信する。
ステアリング先となる特定のエージェントとして、例えば、負荷が少ない状況のエージェントが選択されてよい。
S63で、通信装置1の制御部12は、ステアリングによりSTAが集約して接続される特定のエージェントに、当該特定のエージェントが構成するBSSのネットワークにおいてトリガフレームの送信によりアップリンク制御を実行させることを決定する。通信装置1の制御部12は、当該特定のエージェントに、トリガフレームの送信を許可する許可メッセージを送信する。
【0063】
<マルチAPネットワークにおける通信システム全体の制御シーケンス>
図6は、マルチAPネットワーク8におけるコントローラが、トリガフレームによるアップリンク制御方式および他のアップリンク制御方式(例えば、CSMA/CA方式)のいずれを実行するかを判定する場合の通信装置間の制御シーケンスの一例を示す。
図6において、S601に先立って、図4に示すS401~S403の処理が実行されて、AP-AP間のバックホール通信およびAP-STA間のフロントホール通信が確立されているものとする。
【0064】
S601で、コントローラとして起動したAP1は、エージェントとして起動したAP2およびAP3からそれぞれ、Topology Notificationメッセージを受信する。S601でAP1に受信されるTolopogy Notificationメッセージは、エージェントであるAP2およびAP3に接続しているSTAのSTA情報を含む。
【0065】
S601でTopology Notificationメッセージを受信できない場合、S602で、AP1は、AP2およびAP3に、それぞれClient Capability Queryメッセージを送信する。
S603で、AP2およびAP3はそれぞれ、Client Capability Queryメッセージの要求に応答して、AP1に、Client Capability Reportメッセージを送信する。
S603でAP1に受信されるClient Capability Reportメッセージも、トポロジ情報として、エージェントであるAP2およびAP3に接続しているSTAのSTA情報を含む。
【0066】
S604で、コントローラであるAP1は、エージェントであるAP2およびAP3からそれぞれ受信したSTA情報に基づいて、STAのステアリングを実行するか否かを判定する。
S605で、AP1はまた、エージェントであるAP2およびAP3からそれぞれ受信したSTA情報に基づいて、エージェントに接続するSTAの数を判定する。なお、S605の処理は、図5で説明したように、STAのステアリングを実行しない場合に実行されてよい。
【0067】
S604でステアリングを実行すると判定した場合、S606で、AP1は、AP2およびAP3に対してそれぞれ、IEEE1905.1プロトコルのClient Steering Requestメッセージを送信する。Client Steering Requestメッセージは、ステアリングさせるSTAおよびステアリング先のエージェントのMACアドレス、STAにステアリング先のエージェントに接続させるための情報を含む。エージェントに接続させるための情報は、ESSID(Extended Service Set Identifier)、PMK(Pairwise Master Key)、PMKID等を含む。
AP1はまた、STAを新たなエージェントにステアリングする際に、IEEE802.11rに規定されるプロトコルを用いた高速ローミングを実行してよい。
【0068】
エージェントであるAP2およびAP3は、AP1から受信したClient Steering Requestメッセージに従って、自装置に接続しているSTAをステアリングして新たなAPへ接続させる。
S607で、コントローラであるAP1は、AP2およびAP3からそれぞれ受信したSTA情報に基づいて、トリガフレーム送信によるアップリンク制御を実行させるエージェントを決定する。AP1はまた、受信したSTA情報に基づいて、CSMA/CA方式によるアップリンク制御(競合制御)を実行させるエージェントを決定する。
【0069】
ここでは、図1に示すように、AP2には所定数である3つ以上のSTA4~6が接続されているため、AP2は、トリガフレーム送信によるアップリンク制御を実行すべきと判定される。一方、AP3には所定数である3つ未満のSTA7が接続されているため、AP3は、CSMA/CA方式によるアップリンク制御を実行すべきと判定される。
【0070】
S608で、コントローラであるAP1は、トリガフレーム送信によるアップリンク制御を許可すべきエージェントであるAP2に対して、トリガフレーム送信を許可する許可メッセージを送信する。
S609で、エージェントであるAP2は、AP1から許可メッセージを受信すると、自装置に接続しているSTA4~6に対して、それぞれトリガフレームを送信する。
なお、許可メッセージを受信して、トリガフレーム送信を許可されたエージェントが、ネットワークのトポロジが変化して、接続するSTAの数が減少したことにより後発的にトリガフレームの送信を許可すべきでないと判定され得る。この場合、コントローラであるAP1は、先に許可メッセージを送信したエージェントに対して、トリガフレームの送信を停止することを指示する停止メッセージを送信してよい。
【0071】
S610で、AP1は、トリガフレーム送信によるアップリンク制御を許可せずCSMA/CA方式によるアップリンク制御を実行させるべきエージェントであるAP3に対して、不許可メッセージを送信する。不許可メッセージを受信したAP3は、STA7へのトリガフレームの送信を抑制し、STA7にCSMA/CA方式によるアップリンク制御を実行させる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、コントローラとして動作する通信装置は、エージェントとして動作する通信装置から、エージェントに接続しているステーションの情報を取得する。そして、通信装置は、エージェントに接続しているステーションが所定数以上接続している場合に、エージェントに接続しているステーションに対してトリガフレームの送信を許可する許可メッセージをエージェントに送信する。
一方、エージェントに接続しているステーションが所定数未満である場合、通信装置は、エージェントに、トリガフレームの送信を抑制し、他のアップリンク制御方式を用いてアップリンク制御させるよう不許可メッセージを送信する。
【0073】
このため、すべてのステーションに対して、当該ステーションのアップリンク送信の能力に対応するトリガフレームを生成して送信し、それぞれのステーションからのフィードバックフレームを処理するアクセスポイントの処理負荷が低減される。
これにより、複数のアクセスポイントで構成される無線ネットワークにおいて、複数の端末からアクセスポイントへのアップリンクデータ送信における、無線ネットワークのパフォーマンス低下が有効に防止され、ネットワークパフォーマンスの最適化を図ることができる。
さらに、複数のエージェントの間でのステーションのステアリングを併用することで、ネットワーク全体のパフォーマンスが最適化される。
【0074】
(他の実施形態)
本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、Webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
また、本発明は、上述の実施形態の一部または1以上の機能を実現するプログラムによっても実現可能である。すなわち、そのプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)における1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理により実現可能である。また、そのプログラムをコンピュータ可読な記録媒体に記録して提供してもよい。
また、コンピュータが読みだしたプログラムを実行することにより、実施形態の機能が実現されるものに限定されない。例えば、プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記した実施形態の機能が実現されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…コントローラ、2、3…エージェント、4、5、6、7…ステーション、8…マルチAPネットワーク、9…WAN、11…記憶部、12…制御部、13…機能部、14…入力部、15…出力部、16…通信部、17…アンテナ、18…システムバス
図1
図2
図3
図4
図5
図6