(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】コーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
A23F 5/24 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
A23F5/24
(21)【出願番号】P 2020014470
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山本 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】初川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽子
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0328000(US,A1)
【文献】特開2016-106607(JP,A)
【文献】特開2015-119701(JP,A)
【文献】特開2012-187059(JP,A)
【文献】特開2016-154529(JP,A)
【文献】特開2019-201556(JP,A)
【文献】特表2008-524299(JP,A)
【文献】特開昭61-019474(JP,A)
【文献】Shady AWWAD et al.,Quantification of Caffeine and Chlorogenic Acid in Green and Roasted Coffee Samples Using HPLC-DAD and Evaluation of the Effect of Degree of Roasting on Their Levels,Molecules,2021年12月11日,Vol. 26,No. 24,p.7502,DOI: 10.3390/molecules26247502
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 5/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソα酸、カフェインおよびクロロゲン酸を含むコーヒー飲料であって、
該飲料中の前記イソα酸の含有量が1ppm以上15ppm以下であり、前記カフェインの含有量が50mg/100ml以上115mg/100ml以下であり、前記クロロゲン酸の含有量が5.0mg/100ml以上40.0mg/100ml以下である、コーヒー飲料。
【請求項2】
前記イソα酸がホップ由来である、請求項1記載のコーヒー飲料。
【請求項3】
前記飲料のブリックス値が0.3°以上10°以下である、請求項1または2に記載のコーヒー飲料。
【請求項4】
容器詰めされた、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコーヒー飲料。
【請求項5】
焙煎豆を用いたコーヒー抽出液を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコーヒー飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器詰めコーヒー飲料は、簡便に飲用できる嗜好性飲料として広く親しまれている。コーヒー飲料は、苦味を楽しむ飲料である一方で、苦味が口中に残らず、後味がよいことが好まれる傾向にある。
例えば、特許文献1には、良好な苦味とコクを得るため、カフェインとイソクエルシトリンおよびその糖付加物を特定の割合で含むコーヒー飲料が開示されている。
【0003】
一方、苦味を呈する成分として、イソα酸等を含むホップ抽出物が知られている。例えば、特許文献2には、コーヒーの特徴が強化されたバラエティーに富んだコーヒーエキスに関し、コーヒー豆に対して、ホップ等の材料を混合して焙煎する工程を経て作製されることが開示されている。特許文献3ホップ抽出物に含まれるキサントフモールに着目し、キサントフモールを高含有量にしたホップ抽出物をコーヒー抽出液に加え、さらに、ろ過した後、コーヒー飲料を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-119701号公報
【文献】特開2012-187059号公報
【文献】特開2008-524299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示される技術は、苦味と後味に着目したものではあったが、イソクエルシトリンおよびその糖付加物を用いることを前提とするものであり、イソα酸を用いるものではなかった。また、特許文献2、3に開示されるコーヒー飲料は、ホップを用いる手順に特徴があり、また、イソα酸と、コーヒー飲料の苦味と後味との関係について具体的に検討されたものではなかった。
そこで、本発明者らは、より強い苦味を有しつつも、良好な後味が得られるコーヒー飲料を開発する観点から初めてホップ抽出物に含まれるイソα酸に着目し、鋭意検討を行った結果、イソα酸とカフェインとクロロゲン酸の含有量を制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
イソα酸、カフェインおよびクロロゲン酸を含むコーヒー飲料であって、
該飲料中の前記イソα酸の含有量が1ppm以上15ppm以下であり、前記カフェインの含有量が50mg/100ml以上115mg/100ml以下であり、前記クロロゲン酸の含有量が5.0mg/100ml以上40.0mg/100ml以下である、コーヒー飲料が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強い苦味を得つつも、良好な後味が得られるコーヒー飲料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0009】
<コーヒー飲料>
本実施形態のコーヒー飲料は、イソα酸、カフェインおよびクロロゲン酸を含み、前記イソα酸の含有量が1ppm以上15ppm以下であり、前記カフェインの含有量が50mg/100ml以上115mg/100ml以下であり、前記クロロゲン酸の含有量が5.0mg/100ml以上40.0mg/100ml以下に制御するものである。これにより、強い苦味と良好な後味を両立できる。
言い換えると、本実施形態のコーヒー飲料は、カフェインとクロロゲン酸の濃度を特定することで、コーヒー豆の焙煎度合いの指標としている。本実施形態のコーヒー飲料は、コーヒーそのものが有する良好な苦味を得ることを前提とした場合において、所定量のイソα酸を加えた飲料と、そうでない飲料を比較したとき、所定量のイソα酸を加えたコーヒー飲料のほうが、強い苦味と良好な後味のバランスを改善できる点に技術的意義を有する。
かかる理由の詳細は明らかではないが、コーヒーそのものが有する良好な苦味に、少量のイソα酸が加わることで、コーヒーの風味に大きな影響を与えることなく、イソα酸による切れ味のよい苦味を付加できると推測される。
なお、カフェインおよびクロロゲン酸そのものは、苦味を呈するものとして知られているが、コーヒー豆の焙煎度合いが進むにつれて、特にクロロゲン酸の濃度は減少する傾向にある。一方で、コーヒー豆の焙煎度合いが進むにつれて、コーヒー特有の苦味が強くなることも知られている。すなわち、かかるコーヒー特有の苦味とは、焙煎によって生じるアミノ酸など成分の焦げによる苦味の影響を大きく受けたものと考えられる。
以下、コーヒー飲料に含まれる各成分について詳述する。
【0010】
[イソα酸]
イソα酸は、α酸の異性化体である。一般に、ホップに多く含まれるα酸が加熱により異性化することで生じる苦味成分として知られている。
本実施形態のコーヒー飲料においては、イソα酸は、イソフムロン、イソアドフムロン及びイソコフムロンとする。
【0011】
本実施形態のコーヒー飲料中のイソα酸の含有量は、1ppm以上15ppm以下であり、好ましくは1.5ppm以上、9.5ppm以下、より好ましくは2.5ppm以上である。イソα酸の含有量を、上記下限値以上とすることで、苦味を強くするとともに、後味を改善することで飲みやすさも向上できる。一方、イソα酸の含有量を、上記上限値以下とすることで、苦味の強さと後味の良さについて良好なバランスが得られ、また、雑味が少なく飲みやすくなる。
【0012】
イソα酸としては、ホップ由来であることが好ましく、イソα苦味酸であることがより好ましい。イソα苦味酸とは、ホップの花から得られた、イソフムロン類を主成分とするものをいう。クワ科ホップ(Humulus lupulus LINNE)の雌花より、水、二酸化炭素又は有機溶剤で抽出し、熱処理して得られたものである。例えば、イソα苦味酸としては、イソα酸を10~50質量%含むものが好ましい。
【0013】
イソα酸の含有量の測定方法としては、例えば、Analytica EBC(European Brewery Convention)に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法が挙げられる。
【0014】
[カフェイン]
本実施形態のコーヒー飲料は、カフェインを含む。カフェインを含むことにより、嗜好性が良好となり、強い苦味と後味のバランスを向上しやすくなる。
コーヒー飲料全体に対するカフェインの含有量は、50mg/100ml以上115mg/100ml以下であり、65mg/100ml以上100mg/100ml以下が好ましい。
当該カフェインの含有量を、上記下限値以上とすることにより、苦味を強くしつつも、強い苦味と後味のバランスを保持し、また、適度な香味を呈することで飲みやすさも向上できる。すなわち、本実施形態のコーヒー飲料は、コーヒーらしい苦味を呈することを前提としている。一方、当該カフェインの含有量を、上記上限値以下とすることにより、適度な苦味と後味のバランスを保持しつつ、過度な苦味のない飲みやすさが得られる。
【0015】
[クロロゲン酸]
本実施形態のコーヒー飲料は、クロロゲン酸を含む。クロロゲン酸を含むことにより、嗜好性が良好となり、強い苦味と後味のバランスを向上しやすくなる。
クロロゲン酸とは、3-カフェオイルキナ酸とも呼ばれる。
コーヒー飲料全体に対するクロロゲン酸の含有量は、5.0mg/100ml以上40.0mg/100ml以下であり、7.0mg/100ml以上35mg/100ml以下が好ましく、7.0mg/100ml以上30mg/100ml以下がより好ましい。
当該クロロゲン酸の含有量を、上記下限値以上とすることにより、苦味を強くしつつも、強い苦味と後味のバランスを保持し、また、適度な香味を呈することで飲みやすさも向上できる。一方、当該クロロゲン酸の含有量を、上記上限値以下とすることにより、コーヒーらしい適度な苦味と後味のバランスを保持しつつ、過度な苦味のない飲みやすさが得られる。
【0016】
また、カフェインの含有量に対するクロロゲン酸の含有量は(クロロゲン酸の含有量/カフェインの含有量)は、強い苦味と後味のバランスを良好にする観点からは、好ましくは0.05以上1.0以下、より好ましくは0.08以上0.5以下、さらに好ましくは0.10以上0.35以下である。
【0017】
カフェインおよびクロロゲン酸の濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより、測定することができる。
また、コーヒー飲料中のカフェインおよびクロロゲン酸の濃度は、原料であるコーヒー豆の焙煎度や抽出条件、濃縮条件などを変化させたり、製剤などの単体を添加する等して調整できる。本実施形態のコーヒー飲料においては、コーヒー本来の風味を生かす観点から、焙煎度合いを調製して、カフェインおよびクロロゲン酸の濃度することが好ましい。
【0018】
[コーヒー飲料]
本実施形態のコーヒー飲料は、コーヒー豆から抽出または溶出した成分(コーヒー分)を原料とする飲料及びこれにその他の成分が加えられている飲料であり、飲んだときにコーヒー風味が感じられる飲料をいい、1977年に制定された「コーヒー含有飲料等の表示に関する公正競争規約」にも記載されているように、コーヒー豆を原料とした飲料及びこれに糖類、乳製品、乳化された食用油脂その他の可食物を加え容器に密封した飲料のことを指す。また、本実施形態においては、コーヒー豆使用量が生豆換算で1重量%未満の飲料であっても、飲んだときにコーヒー風味が感じられる飲料については、コーヒー飲料として扱うこととする。
一方、「飲用乳の表示に関する公正競争規約」によれば、2017年現在、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものについては、乳飲料として扱われることになる。
本実施形態に係るコーヒー飲料については、コーヒー豆を原料とした飲料であるため、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものであったとしても、コーヒー飲料として扱うこととする。
【0019】
上記のコーヒー豆としては、特に限定されず、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などの栽培樹種が挙げられる。また、コーヒー豆の品種としては、特に限定されず、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、およびキリマンジャロなどが挙げられる。コーヒー豆は1種でもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
コーヒー豆の焙煎温度や焙煎環境等の条件は、特に限定されず、通常の方法を採用できる。また、焙煎コーヒー豆を用いた抽出方法としては、特に限定されないが、例えば、ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、および連続式などが挙げられる。
【0020】
焙煎コーヒー豆の焙煎度は、L値として、20以下が好ましく、19以下がより好ましく、18以下がさらに好ましく、17以下がことさらに好ましい。L値の下限は、特に限定されないが、良好なコーヒー風味を得る観点から、例えば、好ましくは10以上、より好ましくは14以上である。
L値は、コーヒー豆の焙煎度合を色で表したものであり、L値100を白、L値0を黒とする。すなわち、コーヒー豆の焙煎が進むほどL値は小さくなることを意図する。また、コーヒー豆の焙煎が進むほど、クロロゲン酸濃度は低下する傾向がある。
【0021】
ここで、本実施形態のコーヒー飲料にコーヒー分を含有させる方法としては、特に限定されず当業者が適宜設定することができる。例えば、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液(コーヒー抽出液)や、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥させたインスタントコーヒー等を用いて、これらのうち1種または2種以上を飲料中に添加するといった方法等を挙げることができる。
粉砕した焙煎豆としては、粗挽き、中挽き、細挽き等が挙げられ、特に限定されない。
【0022】
コーヒー飲料中のコーヒー可溶性固形分の含有量の下限値は、本格的なコーヒー感、飲みやすさ、おいしさを得るため、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.9質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。
一方、コーヒー飲料中のコーヒー可溶性固形分の含有量の上限値は、香り、酸味、苦味、後味のバランスを良好にしつつ、口あたりを良好にするため、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.3質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
【0023】
コーヒー飲料は、乳を含まないブラックコーヒー飲料(有糖と無糖を問わない。)であってもよく、必要に応じて、1種または2種以上の乳分を含有した乳入りコーヒー飲料であってもよい。
【0024】
[ブリックス値]
本実施形態のコーヒー飲料のブリックス値(Bx)は、飲みやすさを向上しつつ、香り、酸味、苦味、後味のバランスを良好にする観点から、好ましくは、0.3°以上10°以下であり、より好ましくは、0.5°以上7°以下であり、さらに好ましくは、1.0°以上6°以下である。
ブリックス値は、コーヒー飲料全量に対する可溶性固形分の合計含有量を示す。ブリックス値は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
ブリックス値は、例えば、後述の甘味料の量、その他の各種成分の量などにより調整することができる。
【0025】
本実施形態のコーヒー飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の香気成分、乳、甘味料、酸味料、乳化剤、pH調整剤(重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、果汁、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、および増粘安定剤等を含んでもよい。
【0026】
上記の乳としては、生乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、部分脱脂乳、練乳、粉乳、および発酵乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
乳入りコーヒー飲料である場合、乳の含有量は特に限定されないが、良好な乳風味を得つつ、コーヒー感の向上効果と、良好な苦味と後味を得る観点から、乳固形分(乳脂肪分と無脂乳固形分とを合わせたものを意味する。)量を0.5~3.5質量%とすることが好ましく、乳固形分量を0.8~2.5質量%とすることがより好ましく、乳固形分量を1.0~2.0質量%とすることがさらに好ましい。
【0027】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0028】
[容器]
本実施形態のコーヒー飲料に用いられる容器としては、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。コーヒー飲料の風味を保持する観点から、スチール缶であることが好ましく、軽量で再栓可能な観点からは、蓋つきのペットボトル、スチール缶およびアルミ缶が好ましい。
コーヒー飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000gが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500gがより好ましい。
【0029】
本実施形態のコーヒー飲料が容器詰めされた場合の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0030】
<コーヒー飲料の製造方法>
本実施形態のコーヒー飲料の製造方法は、まず、コーヒー分を準備する工程と、当該コーヒー分と、イソα酸を混合し、該飲料中の当該イソα酸の含有量が1ppm以上15ppm以下となるように調製する工程とを含む。これにより、強い苦味と後味の良さを両立した、飲みやすいコーヒー飲料を得ることができる。
本実施形態において、イソα酸としては、上記コーヒー飲料について説明したものと同様のものを用いることができる。その他の成分についても、同様に用いることができる。
上記コーヒー分とは、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液(コーヒー抽出液)や、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥させたインスタントコーヒー等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合したものであってもよい。なかでも、コーヒー分としては、焙煎豆を用いたコーヒー抽出液を用いることが好ましく、当該焙煎豆の焙煎度合いが20以下であることがより好ましい。
【0031】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<分析方法>
1.イソα酸
コーヒー飲料中のイソα酸の含有量は、以下のようにして測定した。
測定試料を次の方法で調製した。超純水にて適宜希釈した試料10mlをガラス製遠沈管にとり、メタノール10mlを加えて数回反転混合した後、遠心機で遠心(3000rpm、15分、室温)し、上清をPTFE製フィルター(Whatman SYRINGEFILTER13mm Disposable Filter Device PTFE、孔径0.45μm)で濾過後、分析試料とした。
〔装置構成〕
・検出器:SPD-M20A prominence(株式会社島津製作所)
・カラムオーブン:CTO-20AC prominence(株式会社島津製作所)
・ポンプ:LC-20AD prominence(株式会社島津製作所)
・オートサンプラー:SIL-20ACHT prominence(株式会社島津製作所)
・カラム:Zorbax Eclipse 5 XDB-C8 内径4.6mm×長さ250mm、粒子径5μm(Agilent Technologies)
〔分析条件〕
・サンプル注入量:50μL
・流量:1.0mL/min
・検出波長:270nm
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:メタノール
・溶離液B:1%クエン酸緩衝液(pH7.0)(10.9gのクエン酸一水和物を約950mlの超純水に溶解する。45%水酸化カリウム溶液でpHを7.0に調製し、超純水を加えて1000mlにする。溶液をフィルター(ADVAVTEC MIXED CELLULOSE ESTER A045A047A)で濾過する)、30(V/V)%アセトニトリル溶液
〔グラジエント条件〕
時間 溶離液A溶離液B
0.0分 15% 85%
5.0分 15% 85%
30.0分80% 20%
33.0分80% 20%
35.0分15% 85%
45.0分15% 85%
〔標準物質の調製〕
イソα酸標準品(DCHA-Iso、LaborVeritas)を30mg精秤し、100mlの透明なガラス製のメスフラスコに入れ、そこに約40mlの酸性メタノール(1Lのメタノールに0.5mlのりん酸(85%)を加える)を入れ、溶解し、20℃で酸性メタノールに定容し、光から保護しておく。これを、1%クエン酸緩衝液(pH7.0)、35(V/V)%アセトニトリル溶液で適宜希釈した。
〔イソα酸含有量の測定〕
I1(16.3分)、I2(17.1分)、I3(20.5分)、I4(21.1分)の面積値を合算し、標準物質の面積値を基準に含有量を求めた。
【0034】
2.カフェインおよびクロロゲン酸
各コーヒー飲料を、限外ろ過フィルタユニット(Amicon Ultra)によって1000rpm、30分の条件でろ過することによりサンプルを得た。次いで、当該サンプル100ml中におけるカフェインの含有量(mg/100ml)およびクロロゲン酸の含有量(mg/100ml)を、UHPLC(Nexera((株)島津製作所)、検出器:PDA)を用いて以下の条件により測定した。
カラム:ZORBAX EclipsePlus C18(アジレント・テクノロジー(株))
カラムオーブン温度:45℃
移動相A液:0.17%リン酸含む超純水
移動相B液:0.17%リン酸含むメタノール
ポンプ流量:1.2ml/min
注入量:3μl
セル部温調温度:40℃
それぞれのピーク面積から、標準物質(カフェイン:CAS58-08-2、和光純薬、クロロゲン酸:CAS 327-97-9、SIGMA-ALDRICH)の面積値を基準とし、カフェイン含有量、クロロゲン酸含有量を求めた。
【0035】
[実験例1:イソα酸の含有量の違い]
<容器詰めコーヒー飲料の調製>
コーヒー豆(ブラジル産、L値16)100gを95℃の熱水1000gで抽出してコーヒー抽出液を得た。得られたコーヒー抽出液(L16)と、インスタントコーヒー(IC)を混合してコーヒー原料(コーヒー可溶性固形分4.0g/100ml)を調製し、これに重曹、ホップ抽出物(イソα苦味酸)を、以下の表1に示す含有量となるように配合し、コーヒー飲料を調製し、缶に充填しレトルト殺菌をして、容器詰めコーヒー飲料を得た(試作品1~7。コーヒー可溶性固形分2.0g/100ml)。
なお、ホップ抽出物としては、イソα酸含有量が25質量%のものを用いた。
【0036】
<官能評価>
次に、得られた容器詰めコーヒー飲料(20℃)それぞれを、熟練した7名のパネラーが試飲し、以下の表2に示す評価基準に従い「苦味の強さ」、「後味の良さ」、「飲みやすさ」それぞれについて、7段階(1~7点)評価を実施し、その平均点を求めた。また、評価する際は、対照例1の飲料を対照品(基準値4点)として評価を実施した。結果を表1に示す。
【0037】
【0038】
【0039】
[実験例2:カフェインおよびクロロゲン酸の含有量の違い-1]
<容器詰めコーヒー飲料の調製>
実験例1と同様にして、コーヒー原料(コーヒー固形分4.0g/100ml)を調製した。得られたコーヒー原料の配合量を調整してコーヒー可溶性固形分の量が表3の数値となるようにし、さらに重曹、ホップ抽出物(イソα苦味酸)、カフェイン製剤を、以下の表3に示す含有量となるように配合し、コーヒー飲料を調製し、缶に充填しレトルト殺菌をして、容器詰めコーヒー飲料を得た(試作品8~14)。
【0040】
<官能評価>
上記実験例1と同様にして、官能評価を行った。結果を、表3に示す。
【0041】
【0042】
[実験例3:カフェインおよびクロロゲン酸の含有量の違い-2]
<容器詰めコーヒー飲料の調製>
表4に示す焙煎度合いのコーヒー原料を用い、実験例1と同様にして、コーヒー抽出液を得た。得られたコーヒー抽出液を用いて、以下の表4に示す含有量となるように、重曹、ホップ抽出物(イソα苦味酸)を配合し、コーヒー飲料を調製し、缶に充填しレトルト殺菌をして、容器詰めコーヒー飲料を得た(試作品15~20)。
【0043】
<官能評価>
上記実験例1と同様にして、官能評価を行った。結果を、表4に示す。
【0044】