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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】給送装置及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/04 20060101AFI20240122BHJP
   B65H 11/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B65H1/04 324
B65H11/00 D
B65H11/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020024188
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021127236
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高原 浩行
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-153478(JP,A)
【文献】特開2016-210608(JP,A)
【文献】国際公開第2011/086662(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/04
B65H 11/00
B41J 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する給送装置であって、
駆動源を有する本体と、
前記本体に対して回動自在に取り付けられて前記記録媒体が積載されるトレイと、
前記トレイに設けられて前記記録媒体をハンドリングするハンドリング機構と、
前記本体に取り付けられ、前記駆動源からの駆動力によって前記トレイの回動軸を含む平面内で回転する動作アーム部と、
前記動作アーム部に対向するように前記トレイに設けられた動作レバーと、
備え
前記動作アーム部が回転することによって前記動作レバーに当接して前記動作レバーが押し込まれ、押し込まれた前記動作レバーが受ける前記駆動力が前記ハンドリング機構に伝達されることを特徴とする、給送装置。
【請求項2】
前記回動軸の位置で前記動作アーム部と前記動作レバーとが当接する、請求項1に記載の給送装置。
【請求項3】
前記動作アーム部は、前記回動軸に直交する軸の周りで回転可能であって一端が前記駆動源によって駆動されるカムに当接可能なカムフォロワーの他端に形成されている、請求項1または2に記載の給送装置。
【請求項4】
前記カムは前記駆動源によって駆動されて前記回動軸に平行な軸の周りで回転する、請求項3に記載の給送装置。
【請求項5】
前記トレイは前記本体に供給される前記記録媒体が積載される給紙トレイである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の給送装置。
【請求項6】
前記ハンドリング機構は、前記給紙トレイの上に積載された前記記録媒体の端部の位置を揃えるサイドガイドを備え、前記駆動力が伝達されたときに前記サイドガイドは前記端部から離間するように駆動される、請求項5に記載の給送装置。
【請求項7】
前記記録媒体の1対の辺に対応してそれぞれ前記サイドガイドが設けられている、請求項6に記載の給送装置。
【請求項8】
前記記録媒体の幅に合わせて前記サイドガイドの間隔を調節可能とする摩擦部材を備える、請求項7に記載の給送装置。
【請求項9】
前記トレイは前記本体から排出された前記記録媒体が積み上げられる排紙トレイである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の給送装置。
【請求項10】
前記ハンドリング機構は、前記排紙トレイの上に積み上げられる前記記録媒体の端部の位置を揃え揃えガイドを備え、前記駆動力が伝達されたときに前記揃えガイドは前記端部に向かうように駆動される、請求項9に記載の給送装置。
【請求項11】
前記記録媒体の1対の辺に対応してそれぞれ前記揃えガイドが設けられている、請求項10に記載の給送装置。
【請求項12】
前記記録媒体の幅に合わせて前記揃えガイドの間隔を調節可能とする摩擦部材を備える、請求項11に記載の給送装置。
【請求項13】
前記回動軸の周りでの前記本体に対する前記トレイの角度を所定角度に固定する固定手段をさらに有する、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の給送装置。
【請求項14】
前記固定手段は、複数の角度のいずれかで前記トレイの角度を固定する、請求項13に記載の給送装置。
【請求項15】
前記複数の角度のうちの1つは、前記記録媒体を水平方向に搬送する角度である、請求項14に記載の給送装置。
【請求項16】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の給送装置と、
前記給送装置で搬送された記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、を備える記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙などの記録媒体を搬送する給送装置と、給送装置を備える記録装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙などの記録媒体を搬送する機能を有する給送装置の例として、プリンター、複写機、ファクシミリなどが挙げられる。給送装置には、記録媒体が積み上げられるトレイが設けられ、トレイには記録媒体を様々に取り扱うハンドリング機構が設けられる。ハンドリング機構としては、搬送方向とは直交する方向で記録媒体の位置をサイドガイドによって揃えつつ必要に応じてサイドガイドを記録媒体から離間させる用紙ガイド機構、排出される記録媒体の積み上げの位置を揃える紙揃え機構などがある。非使用時にトレイを折り畳んで給紙装置の本体に収容するために、トレイは給送装置の本体に回動可能に取り付けられ、ハンドリング機構には給送装置の本体から駆動力が伝達される。特許文献1は、給送装置の本体内に給送される記録媒体などが載置されるシート供給トレイであって、用紙ガイド機構と離間機構とを備えるものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-46313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すものでは、トレイを給送装置の本体に取り付ける回動軸と同軸に設けられた第1のギアとトレイ側に設けられて第1のギアに係合する第2のギアとによってハンドリング機構に駆動力を伝達している。この構成では、給送装置の本体に対するトレイの開き角の変化によっても第2のギアが回転するからハンドリング機構も動き、その結果、ハンドリング機構が安定して動作しなくなることがある。
【0005】
本発明の目的は、給送装置の本体へのトレイの収納に支障をきたすことなく、給送装置の本体に対するトレイの角度が変化するときであってもトレイに設けられているハンドリング機構が安定して動作することを可能にする給送装置と、そのような給送装置を備える記録装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の給送装置は、記録媒体を搬送する給送装置であって、駆動源を有する本体と、本体に対して回動自在に取り付けられて記録媒体が積載されるトレイと、トレイに設けられて記録媒体をハンドリングするハンドリング機構と、本体に取り付けられ、駆動源からの駆動力によってトレイの回動軸を含む平面内で回転する動作アーム部と、動作アーム部に対向するようにトレイに設けられた動作レバーと、を備え、動作アーム部が回転することによって動作レバーに当接して動作レバーが押し込まれ、押し込まれた動作レバーが受ける駆動力がハンドリング機構に伝達されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、給送装置の本体へのトレイの収納に支障をきたすことなく、給送装置の本体に対するトレイの角度が変化するときであってもトレイに設けられているハンドリング機構が安定して動作することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録装置を示す斜視図である。
図2】記録媒体を搬送している状態でのインクジェット記録装置の断面図である。
図3】第2の給紙ユニットを説明する図である。
図4】駆動伝達機構を示す詳細図である。
図5】リアトレイのセット状態を示す断面図である。
図6】インクジェット記録装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図7】第2の給紙ユニットを介した記録媒体の搬送を説明する斜視図である。
図8】インクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。
図9】サイドガイドの離間を示す斜視図である。
図10】駆動伝達機構を説明する第2の給紙ユニットの底面図である。
図11】動作アームと動作レバーとの当接状態を示す図である。
図12】本発明の第2の実施形態のインクジェット記録装置を示す図である。
図13】紙揃え機構の動作を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここでは、記録用紙などの記録媒体を搬送する給送装置が、その記録媒体に対して記録液(例えばインク)を吐出して記録を行うプリンターであるインクジェット記録装置であるものとして説明する。もちろん、給送装置はインクジェット記録装置に限定されるものではなく、複写機やファクシミリなどであってもよい。本発明に基づく給送装置は、いずれも、給送装置の本体に取り付けられて記録媒体が積載される給紙トレイや排紙トレイなどのトレイを備えるものであり、これらのトレイには、記録媒体をハンドリングするハンドリング機構が設けられている。非使用時にはトレイは収納されるように構成されており、そのために、最も簡素で安定した機構である回動ヒンジ機構によってトレイは給送装置の本体に取り付けられている。ハンドリング機構は、例えば、搬送方向とは直交する方向で記録媒体の位置をサイドガイドによって揃えつつ必要に応じてサイドガイドを記録媒体から離間させる用紙ガイド機構や、排出される記録媒体の積み上げの位置を揃える紙揃え機構などである。ハンドリング機構を動作させるためにトレイ自体にモーターやソレノイドなどのアクチュエーターを設けることも可能であるが、その場合にはコストの増加を伴う。そこで、本実施形態の給送装置は、給送装置の本体の内部に設けられた駆動源から駆動伝達機構を介してハンドリング機構に対して駆動力が伝達されるように構成されている。駆動伝達機構には、回転ヒンジ機構によって取り付けられているトレイの開き角によらずに安定してトレイ側に駆動力を伝達できることが求められる。ここで説明する駆動伝達機構は、このような要求を満足するものである。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態におけるインクジェット記録装置1を示す斜視図であって、図1(a)はインクジェット記録装置1の主要部を示し、図1(b)は記録のために第2の給紙ユニットK2から記録媒体Pを搬送している状態を示している。図2は、記録媒体Pを搬送しているときのインクジェット記録装置1の主要部の断面図である。この第1の実施形態は、給紙トレイ303にハンドリング機構として用紙ガイド機構が設けられている場合を説明するものである。
【0011】
インクジェット記録装置1は、図示矢印B方向に往復移動しながら記録媒体Pに対して記録液を吐出するインクジェット記録ヘッド6を備えている。インクジェット記録ヘッド6によって記録が行われる領域に対して搬送されるべき記録媒体Pを蓄えるために、インクジェット記録装置1は2つの給紙ユニットK1,K2を備えている。第1の給紙ユニットK1は比較的薄い記録媒体に適合したものであり、第2の給紙ユニットK2は、厚紙などの第1の給紙ユニットK1からは給送できない記録媒体Pを1枚ずつ給送するために設けられている。第1の給紙ユニットK1に積載された記録媒体Pをインクジェット記録装置1の内部に搬送するために、第1の給紙ローラー3が設けられている。同様に、第2の給紙ユニットK2に積載された記録媒体Pをインクジェット記録装置1の内部に搬送するために、第2の給紙ローラー301が設けられている。インクジェット記録装置1の内部に搬送された記録媒体Pをさらに図示矢印A方向に搬送するために第1の搬送ローラー対4と第2の搬送ローラー対5とが設けられている。記録媒体Pの搬送方向Aとインクジェット記録ヘッド5の往復移動方向Bとはほぼ直交している。第1の搬送ローラー対4と第2の搬送ローラー対5との間の領域は、インクジェット記録ヘッド6によって記録媒体Pに記録がなされる領域である。記録媒体Pに搬送路において第1の搬送ローラー対の直ぐ上流の位置には、搬送路に記録媒体Pが有るかないかを検出する媒体検出センサー30が設けられている。インクジェット記録装置1の利用者は、使用したい記録媒体Pの種類や紙質、大きさ、厚さ、硬さなどに応じて、第1の給紙ユニットK1か第2の給紙ユニットK2かを選択して使用する。
【0012】
利用者が所望の記録媒体Pに対して記録を行う場合、その所望の記録媒体Pをいずれかの給紙ユニットK1,K2にセットする。ここでは記録対象の記録媒体Pを第2の給紙ユニットK2にセットするものとする。記録媒体Pを第2の給紙ユニットK2にセットした後、利用者は、インクジェット記録装置1に接続するコンピュータを操作して、記録を行うための信号をインクジェット記録装置1に供給する。この信号により、第2の給紙ユニットK2の給紙ローラー301が回転して記録媒体Pを図示A方向に搬送し、さらに記録媒体Pは、第1の搬送ローラー対4により、インクジェット記録ヘッド6の移動領域の下方にまで搬送される。インクジェット記録ヘッド6は、不図示のガイド手段と駆動手段とによって図中矢印B方向に往復移動しながら記録液を記録媒体Pの方向に吐出する。第1の搬送ローラー対による記録媒体Pの搬送とインクジェット記録ヘッド6による記録液の吐出とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Pの表面に記録液による画像が形成される。記録媒体Pは、第2の搬送ローラー対5の位置に達すると、第2の搬送ローラー対5により排紙トレイ(不図示)に排出され、これにより記録媒体Pに対する記録動作が終了する。ここでは第2の給紙ユニットK2にセットされた記録媒体Pを搬送して記録を行う場合を説明したが、第1の給紙ユニットK1にセットされた記録媒体Pを搬送して記録を行う処理も同様に行われる。
【0013】
次に、給紙ユニットK1,K2について説明する。第1の給紙ユニットK1と第2の給紙ユニットK2とは同様の構成のものであるので、ここでは、第2の給紙ユニットK2の構成の詳細を説明する。図3は第2の給紙ユニットK2を示す図であって、図3(a)は斜視図であり、図3(b)は底面図である。図4は駆動伝達機構を詳細に示す図であって、図4(a)は後述するサイドガイド305A,305Bが相対的に閉じた状態を示し、図4(b)はサイドガイド305A,305Bが相対的に開いた状態を示している。
【0014】
第2の給紙ユニットK2は、ベース302と給紙トレイであるリアトレイ303とから構成されている。ベース302は、インクジェット記録装置1の本体に属する部材である。ベース302には、記録媒体PをX方向に搬送する上述した搬送ローラー301と、記録媒体Pを第2の給紙ユニットK2にセットする際に記録媒体Pの先端を突き当てて先端位置を決めるストッパー304とが設けられている。記録媒体Pが積載されるものであることからリアトレイ303はインクジェット記録装置1の使用時にはインクジェット記録装置1の本体部から背面側に突出している必要があるが、非使用時には突出していないことが好ましい。このため非使用時にリアトレイ303を折り畳んでインクジェット記録装置1の本体部側に収納できるように、リアトレイ303は、1対の回転ヒンジ330A,330Bを介し、ベース302に対して回動自在に取り付けられている。図においてX1-X1線は、ベース302に対するリアトレイ303の回動軸340を示している。
【0015】
リアトレイ303は、そこに積載された記録媒体Pに対するハンドリングを行うための機構として、記録媒体Pをセットするときに記録媒体Pの両側に位置を規制するための1対のサイドガイド305A、305Bを備えている。サイドガイド305A、305Bは、それぞれ、搬送方向Aとは直交する方向での両端部となる記録媒体Pの1対すなわち辺に対応して設けられている。サイドガイド305A,305Bにより、記録媒体Pの1対の辺を挟みこむことによって、第2の給紙ユニットK2における記録媒体Pが所定の位置に位置決めされることになる。サイドガイド305A,305Bの相互間の間隔は記録媒体Pのサイズによって変更できることが必要である。そこで、リアトレイ303において記録媒体Pが積載される面をリアトレイガイド306には、図3(a)において矢印Y方向に移動可能に設けられたシフト部材307が設けられている。サイドガイド305Aは、シフト部材307に対するY方向の位置が調節可能であるように、不図示の摩擦部材を介してシフト部材307に取り付けられている。摩擦部材は、間隔調整のために利用者が手でサイドガイド305AをY方向に移動した際には適度な摺動負荷を与え、かつ、利用者がサイドガイド305Aから手を離した状態ではサイドガイド305Aがシフト部材307に固定されるように構成されている。
【0016】
サイドガイド305Aの裏面には、ラックギアを有するラック部材308Aが固定されている。サイドガイド305Bは、リアトレイガイド306に対して図中Y方向に移動可能に設けられており、サイドガイド305Bにはラックギアを有するラック部材308Bが固定されている。ラック部材308Aとラック部材308Bとの間には、ピニオンギア309が設けられており、ピニオンギア309とラック部材308Aが噛み合い、同じくピニオンギア309とラック部材308Bが噛み合っている。その結果、利用者がその手でサイドガイド305AをY方向に移動させるとサイドガイド305BがY方向逆方向に移動することになる。同様に利用者がサイドガイド305BをY方向に移動させると、サイドガイド305AがY方向逆方向に移動する。利用者は、使用しようとする記録媒体Pのサイズに合わせてサイドガイド305A,305Bの相互間の間隔を調整できる。
【0017】
ベース302には、第2の給紙ユニットK2を駆動するためにインクジェット記録装置1の本体部から供給される駆動力が入力する入力ギア310が設けられている。入力した駆動力は、入力ギア310からアイドラギア311を介してメインカムギア312に伝えられる。図3(b)に示すように、メインカムギア312の同軸上には、第1のカム313、第2のカム314、第3の離間カム315が固定されており、それぞれ、後述のローラーの離間動作、ストッパーの開閉、サイドガイド離間の動作に関与する。メインカムギア312の回転軸は、回動軸340すなわちX1-X1線と対して平行となっている。第3のカム315には、カムフォロワー316が当接している。図4に示すように、カムフォロワー316はZ1軸を中心として回転可能である。カムフォロワー316の他端は動作アーム部316Aであり、動作アーム部316Aは、リアトレイ303の回動軸340であるX1-X1軸上で動作レバー317と対向している。動作レバー317は、回動軸Z2を中心として回動可能であり、回動軸Z2を挟んで動作レバー317の他端はアーム317Aとなっており、このアーム317Aは、シフト部材307の当接部307Aと対向している。ここでZ1軸及びZ2軸は、いずれも回動軸340に対して直交する軸である。
【0018】
図5は、リアトレイ303の使用状態に応じた種々のセット状態を示す断面図である。リアトレイ303は回動軸340の周りで回動可能であるようにベース302に取り付けられている。図5(a)は、インクジェット記録装置1を使用していないときにリアトレイ303をインクジェット記録装置1の本体部に収納した状態を示していおり、リアトレイ303は直立状態となって固定されている。図5(b)は、インクジェット記録装置1の使用のためにリアトレイ303を開けた状態を示している。記録媒体Pの先端位置の位置決めなどを容易にするために、リアトレイ303は、インクジェット記録装置1の本体側に向かって下がる斜め状態となっている。厚紙であるなど記録媒体Pの種類によってはリアトレイ303を水平にした方が好ましいときもある。図5(c)は、リアトレイ303を水平にした状態を示している。リアトレイ303には、リアトレイ303を水平状態の姿勢で固定できる不図示の固定手段が設けられている。固定手段は、回動軸340の周りでのインクジェット記録装置1の本体に対するリアトレイ303の角度を所定角度に固定するものである。固定手段は、水平状態を以外の姿勢にリアトレイ303を固定できるように構成されていてもよく、複数の角度のうちのいずれかでリアトレイ303を固定できるものであってもよい。インクジェット記録装置1は、リアトレイ303を水平状態に固定することで、剛度の高い記録媒体であっても曲げることなく、記録および排紙することができる。リアトレイ303を水平状態に固定することで、記録媒体Pは曲げられることなく水平方向に搬送される。図5(d)は、インクジェット記録装置1の背面側にある壁などの障害物350がリアトレイ303に干渉した状態を示している。狭隘な場所にインクジェット記録装置1を設置した場合には、図5(b)に示すような正規の角度でリアトレイ303を開けることができず、図5(d)に示したように不完全な状態でしかリアトレイ303を開けられないことがある。本実施形態の目的は、図5(d)に示したような不完全な状態であってもハンドリング機構であるサイドガイド305A,305Bを正常かつ安定して動作させることである。
【0019】
次に、サイドガイド305A,305Bや各ローラー類を駆動するためにインクジェット記録装置1に設けられる制御部について説明する。図6は制御部の構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置1には、媒体検出センサー30や駆動源であるモーター221が設けられ、さらに、媒体検出センサー30の検出結果が入力しモーター221を制御するコントローラー222が設けられている。コントローラー222は、インクジェット記録装置1に対する上位装置であるPC(パーソナルコンピュータ)223が接続する。PC223からインクジェット記録装置1には、記録のための各種の信号が供給される。
【0020】
以下、第1の実施形態のインクジェット記録装置1の動作を説明する。図7は第2の給紙ユニットK2を介した記録媒体Pの搬送を説明する斜視図であり、図7(a)は記録媒体Pをセットした状態を示し、図7(b)は搬送開始時の状態を示し、図7(c)は搬送中の状態を示している。また図8は、コントローラー222によるインクジェット記録装置1の動作制御を説明するフローチャートである。第2の給紙ユニットK2を使用する場合、利用者は、図5(b)に示すようにリアトレイ303を開けた上で、サイドガイド305A,305Bの相互間の間隔を記録媒体Pの幅より広げる。そして利用者が、記録媒体Pの束を斜めになっているリアトレイ303から第2の給紙ユニットK2内に挿入し、突き当て位置にあるストッパー304に突き当てる。さらに利用者は、サイドガイド305A,305Bのいずれか一方もしくは両方を動かすことによって記録媒体Pの方に移動させ、1対のサイドガイド305A,305Bにより記録媒体Pの両端を挟み込んで記録媒体Pをセットする。本実施形態では上述のようにラック部材308A,308B及びピニオンギア309によってサイドガイド305A,305Bが連動するので、利用者は、サイドガイド305A,305Bの一方を動かせばよい。この状態で、図7(a)に示すように、記録媒体Pは、その先端がストッパー304によって、両端がサイドガイド305A,305Bによって位置決めされ、記録開始位置にセットされる。利用者は、ここまでの操作を手動で行う。
【0021】
続いて、利用者は、記録媒体Pに対して記録を行うために、インクジェット記録装置1に接続されたPC223を操作し、PC223からコントローラー221に記録動作の開始を指示する信号を送る。これによりコントローラー221は、図8に示す処理の実行を介する。まず、コントローラー221は、ステップ201において、記録媒体Pをインクジェット記録装置1の内部に搬送する給紙動作を開始し、駆動源であるモーター221(図6参照)を駆動して入力ギア310を回転させる。入力ギア310の回転により、モーター221から駆動力はアイドラギア311を介してメインカムギア312に伝えられ、メインカムギア312に固定されている第1のカム313、第2のカム314及び第3のカム315が回転する。これらの回転により、まず、第2のカム314によりストッパー304が駆動されて、図7(b)に示すように記録媒体Pの先端から離れる。その結果、記録媒体Pは矢印A方向に搬送可能な状態となる。この状態が搬送開始時の記録媒体Pの状態である。
【0022】
次に第1のカム313が動作し、記録媒体Pから離れていた給紙ローラー301が記録媒体Pに当接し、これによりステップ202に示すように給紙ローラー301による記録媒体PのA方向への搬送が開始する。ステップ203においてコントローラー221は、搬送路に設けられている媒体検出センサー30が記録媒体Pの先端を検知したかどうかを判定する。給紙ローラー301が所定量駆動されても記録媒体Pの先端を検出しない場合には、コントローラー221は、ステップ204において、装置の異常であると判定してインクジェット記録装置1を停止し、処理を終了させる。ステップ203において記録媒体Pの先端が検出されると、コントローラー221は、次にステップ205において、搬送中の記録媒体Pの斜行取り動作を開始する。斜行取り動作とは、搬送方向Aに対して斜めとなった状態で記録媒体Pが搬送されているときに、記録媒体Pの辺が搬送方向Aに対して平行となるように記録媒体Pの向きを矯正する動作のことである。斜行取り動作が行われている間は、サイドガイド305A,305Bは記録媒体Pの両方の辺にそれぞれ接した状態を維持して記録媒体Pに接触し、これにより、記録媒体Pの斜行を矯正することについての補助ガイド動作を実行する。
【0023】
本実施形態において実行可能な斜行取り動作には、種々のものがあるがここではその一例を説明する。もちろん、本実施形態に適用可能な斜行取り動作はここで述べるものに限定されるものではない。媒体検出センサー30が記録媒体Pの先端を検知したときから、第2の給紙ローラー301によって記録媒体Pを搬送方向Aに一定距離だけ搬送する。この一定距離は、媒体検出センサー30から第1の搬送ローラ対4のまでの距離より少し長い、例えば4mm程度長い距離に設定されている。この時点では第1の搬送ローラー対4は回転していないので、記録媒体Pの先端は、第1の搬送ローラー対4のニップ間に堰き止められて第1の搬送ローラー対4に平行になるように揃えられる。このあと第1の搬送ローラー対4が回転を開始し、その結果、ステップ206において、先端の辺が第1の搬送ローラー対4に対して平行になるように揃えられた記録媒体Pが、図7(c)に示すように第2の搬送ローラー対5に向けて送り出される。この処理を頭出しと呼ぶ。
【0024】
斜行取り動作ののち、入力ギア310がさらに回転すると、第3のカム315が軸Z1を中心としてカムフォロワー316を回動させる。カムフォロワー316の他端の動作アーム部316Aは、リアトレイ303の回動軸340(X1-X1軸)上で動作レバー317に当接して動作レバー317を回動軸340の延びる方向に押す。動作レバー317は、一端を押されたことによって回動軸Z2を中心として回動し、その他端のアーム317Aが、シフト部材307の当接部307Aを押し込む。その結果、シフト部材307は、図において矢印C方向に駆動される。シフト部材307に摩擦部材を介して取り付けられているサイドガイド305Aと、サイドガイド305Aに取り付けられているラック部材308とは、シフト部材307と同じ方向に一緒に駆動される。ラック部材308Aとラック部材308Bとの間にはピニオンギア309が設けられていることにより、シフト部材307の移動に伴い、ラック部材308Bとサイドガイド305Bとは、図において矢印D方向に駆動される。この動作により、ステップ207において、サイドガイド305A、305Bは、記録媒体Pの両端からそれぞれ矢印C及び矢印Dの方向に移動して記録媒体Pから離間する。
【0025】
図9は、搬送されている記録媒体Pの表面に垂直な方向から第2の給紙ユニットK2を見ることにより、サイドガイド305A,305Bの離間を説明する斜視図である。図9(a)は、サイドガイド305A,305Bが記録媒体Pの両辺にそれぞれ当接した状態、すなわちサイドガイド305A,305Bが相対的に閉じた状態を示している。図9(b)は、サイドガイド305A,305Bが記録媒体Pから離間した状態、すなわちサイドガイド305A,305Bが相対的に開いた状態を示している。図10は、第2の給紙ユニットK2の要部の底面図であって、サイドガイド305A,305Bの離間のために用いられる駆動伝達機構を示している。図10(a)はサイドガイド305A,305Bが相対的に閉じた状態を示し、図10(b)はサイドガイド305A,305Bが相対的に開いた状態を示している。
【0026】
その後、コントローラー222は、ステップ208において、インクジェット記録ヘッド6から記録媒体Pに対して記録液を吐出させる記録動作を実行する。記録動作では、不図示のガイド手段と駆動手段によって図中矢印B方向へインクジェット記録ヘッド6を移動走査ながらインクを吐出することと、第1の搬送ローラー対4による記録媒体Pの搬送とを交互に繰り返す。記録媒体Pへの記録が終了すれば、ステップ209において、記録済みの記録媒体Pがインクジェット記録装置1から排出され、一連の装置の動作が終了する。本実施形態では、記録動作中はサイドガイド305A,305Bが記録媒体Pから離間しているので、搬送される記録媒体Pに加わるバックテンションが軽減されて良好な搬送精度を得ることができる。その結果、高い位置精度で記録媒体Pに対して記録液を吐出することが可能になり、良好な記録を得ることが可能となる。
【0027】
図5を用いて説明したように、リアトレイ303は回動軸340の周りで種々の角度を取り得る。普通紙などの通常の記録媒体Pに対して記録を行うときは、図5(b)に示す位置にリアトレイ303が固定され、厚紙や硬質な紙などの記録媒体Pに対して記録を行うときは、図5(c)に示すように水平状態にリアトレイ303は固定される。本実施形態では、サイドガイド305A,305Bの離間を行うためにインクジェット記録装置1の本体側から出力される駆動力はカムフォロワー316を経て動作レバー317へと回動軸340上において回動軸340の軸方向に伝達される。その結果、インクジェット記録装置1の本体部に対して可動部であるリアトレイ303がどのような角度を取っていたとしても確実に駆動力を伝達することが可能になり、サイドガイド305A,305Bの離間動作を同じように実行できるようになる。図5(d)に示したようにインクジェット記録装置1の設置場所の制約からリアトレイ303を正規の角度まで広げられない場合であっても、他の角度であるときと同じようにサイドガイド305A,305Bの離間動作を行わせることができる。これらにより、本実施形態によれば、給送装置の1つとして、利便性の高いインクジェット記録装置1を提供することができる。
【0028】
図11は、カムフォロワー316の他端の動作アーム部316Aと動作レバー317との当接の状態を示す図である。図11(a)は、この当接部を拡大して示す斜視図であり、図11(b)は、リアトレイ303の回動軸340(X1-X1軸)の方向から見た側面図である。第1の実施形態においては、動作アーム部316Aと動作レバー317とは、回動軸340上で当接して、直線運動の形態で駆動力を伝達する。当接であるので、回動軸340の周りで動作アーム部316Aと動作レバー317とが相対的に回転しても、そのような相対的な回転を妨げることなく駆動力を伝達することができる。図11(b)では、直交する2つの一点鎖線L1,L2の交点である点Lによって回動軸340が示され、点Lにおいてカムフォロワー316の他端の動作アーム部316Aと動作レバー317が当接している。両者の当接位置は厳密に回動軸340上にある必要はなく、リアトレイ303の角度によらずに両者が当接可能な範囲内であれば、回動軸340から多少ずれていてもよい。すなわち、本実施形態では、カムフォロワー316の動作アーム部316Aが動作レバー317を押す方向が回動軸340と一致していることがまず重要である。ただし、当接位置が回動軸340からずれるほど、リアトレイ303の角度によらずに当接できるようにするために当接面の面積を大きくする必要があり、そのことは、インクジェット記録装置1の大型化につながる。動作アーム部316Aが動作レバー317に当接する位置が、例えば図11(b)において破線の枠Jで囲まれた範囲内にあれば、インクジェット記録装置1を大型化することなく、本実施形態による効果を得ることできる。
【0029】
[第2の実施形態]
第1の実施形態は、インクジェット記録装置1における給紙トレイに対して本発明を適用したものであるが、インクジェット記録装置1において記録済みの記録媒体Pが排出されて積み上げられる排紙トレイにも本発明を適用することができる。第2の実施形態では、第1の実施形態と同様のインクジェット記録装置1に対して排紙トレイ400を設け、この排紙トレイ400にハンドリング機構として設けられる紙揃え機構に対して本発明を適用した例を説明する。図12は、本発明の第2の実施形態のインクジェット記録装置1の構成を示す図であって、図12(a)及び図12(b)は、それぞれ、インクジェット記録装置1の主要部の斜視図と底面図である。また図13は、排紙トレイ400に設けられる紙揃え機構の動作を示す上面図であって、図13(a)は揃えガイド401A,401Bが相対的に開いている状態を示し、図13(b)は揃えガイド401A,401Bが相対的に閉じている状態を示している。排紙トレイ400では、インクジェット記録装置1の本体から次々と排出される記録媒体Pを揃えながら排紙トレイ400上に積み上げる必要がある。また、使用時において排紙トレイ400はインクジェット記録装置1の本体から手前側に突出するものであるので、非使用時には排紙トレイ400を折り畳んで収納できるようにする必要がある。以下の説明において、第1の実施形態で用いたものと同じ参照符号は、第1の実施形態におけるものと同様の部材を示しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0030】
インクジェット記録装置1によって記録された記録媒体Pは、排紙トレイ400に送られる。排紙トレイ400は、インクジェット記録装置1の本体に対して、図示X2-X2線で示す回動軸440の周りを回動可能なように取り付けられている。排紙トレイ400には、排出された記録媒体Pの両辺を揃えるために両辺にそれぞれ対応する1対の揃えガイド401A,401Bが設けられ、揃えガイド401A,401Bは紙揃え機構を構成する。揃えガイド401A,401Bは、第1の実施形態においてサイドガイド305A,305BをC及びD方向に駆動する構成と同様のラック部材408A,408Bとピニオンギア409とを有する構成により、図12において図示E及びF方向に駆動される。排紙トレイ400には、第1の実施形態でのシフト部材307と同様の排紙シフト部材(不図示)が設けられており、この排紙シフト部材に対して揃えガイド401Aが不図示の摩擦部材を介して取り付けられている。摩擦部材を備えることにより、第1の実施形態と同様に、記録媒体Pの幅に合わせて揃えガイド401A,401Bの間隔を調節することが可能になる。また、本実施形態においても、インクジェット記録装置1の本体に対する排紙トレイ400の角度を所定角度に固定する固定手段を設けるようにしてもよい。
【0031】
揃えガイド401A,401Bを駆動する構成について、簡単に説明する。インクジェット記録装置1に設けられるモーターなどの不図示の駆動源により駆動されて、カムフォロアー416がZ3軸を中心として回動する。Z3軸は、排紙トレイ400の回動軸440すなわちX2-X2軸に対して直交している。カムフォロワー416の他端の動作アーム416Aは、回動軸440上で動作レバー417を回動軸440方向に押す。その結果、動作レバー417は、回動軸Z4を中心として回動し、排紙シフト部材の当接部407Aを押し込むことで排紙シフト部材が図示E方向に駆動される。排紙シフト部材に対して摩擦部材を介して固定されている揃えガイド401Aとラック部材408Aも排紙シフト部材と同じ方向すなわち図示E方向に一緒に駆動される。ラック部材408Aとラック部材408Bとの間にはピニオンギア409が設けられていることにより、ラック部材408Bと揃えガイド401Bとは図示F方向に駆動される。この動作によって2つの揃えガイド401A、401Bは記録媒体Pの方向に動いて揃えガイド401A,401Bの間隔が狭まることとなり、排紙トレイ400上に積み上げられる記録媒体Pの両側の端部が揃えられることになる。
【0032】
本実施形態においても、X2-X2線で表される軸の周りでインクジェット記録装置1の本体に対して排紙トレイ400がどのような角度にあっても、同じように揃えガイド401A,401Bを駆動することが可能である。インクジェット記録装置1の設置場所によってはインクジェット記録装置1の前面に壁や他の物体などがあって排紙トレイ400を十分に広げられないことがある。本実施形態によれば、排紙トレイ400を十分に広げられない場合などであっても、排紙トレイ400に積み上げられる記録後の記録媒体Pに対する紙揃えを行うことが可能であり、利便性の高いインクジェット記録装置1を提供することができる。
【0033】
上述の各実施形態によれば、給紙トレイ303や排紙トレイ400の各々について、インクジェット記録装置1の本体に対する角度によらずにこれらのトレイに設けられるハンドリング機構の動作(例えば駆動タイミングや駆動量)を同じにすることができる。その結果、ハンドリング機構の安定した動作を得ることができる。さらにハンドリング機構を収納したときに不具合が生じない、構成自由度の高い給装装置の駆動伝達機構を得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 インクジェット記録装置
302 ベース
303 リアトレイ
305A,305B サイドガイド
316 カムフォロワー
316A 動作アーム部
317 動作レバー
K1,K2 給紙ユニット
図1
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