(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】電動ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20240122BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B22D17/32 Z
B22D17/32 B
B22D17/22 K
(21)【出願番号】P 2020029544
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 吉久
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】井尻 崇
(72)【発明者】
【氏名】西村 友希
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051552(JP,A)
【文献】特開2011-156579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を開閉及び型締する型締装置と、型締された前記金型内に溶湯金属を射出する射出装置と、前記型締装置及び前記射出装置を制御する制御装置とを備える電動ダイカストマシンであって、
前記射出装置は、
射出用モータと、
前記射出用モータの駆動力が伝達されて回転するねじ軸と、
前記ねじ軸に螺合され、前記ねじ軸の回転に伴って進退方向に進退する進退ナットと、
前記進退ナットの進退に追従してスリーブ内を前記進退方向に進退することによって、前記スリーブ内に貯留された溶湯金属を、型締された前記金型内に射出する射出プランジャ
と、
前記進退ナットに固定された第1部材と、
前記射出プランジャに固定された第2部材と、
前記第1部材及び前記第2部材の間に配置され、前記射出プランジャの前進時に発生するサージ圧を受けて前記進退方向に弾性圧縮される弾性体とを備え、
前記制御装置は、
予め定められた射出速度で前記射出プランジャが前進するように、前記射出用モータに駆動指令を出力する射出処理と、
前記射出処理の後の冷却期間において、予め定められた目標圧力で前記射出プランジャが溶湯金属を押圧するように、前記射出用モータに駆動指令を出力する増圧処理と、
前記冷却期間中の前記増圧処理より後に、前記射出用モータへの駆動指令の出力を停止することによって、前記射出用モータに蓄積するトルクを解放するトルク解放処理と、
前記冷却期間が終了した後に、前記型締装置に前記金型を型開させるのと連動して、予め定められた突出し速度で前記射出プランジャが前進するように、前記射出用モータに駆動指令を出力する突出し処理と
、
前記トルク解放処理より後で且つ前記突出し処理より前に、前記射出プランジャが前記弾性体を予め定められた目標圧縮量だけ弾性圧縮させるように、前記射出用モータに駆動指令を出力する与圧処理とを実行することを特徴とする電動ダイカストマシン。
【請求項2】
前記射出装置は、前記射出用モータの回転速度を検知する第1回転センサを備え、
前記制御装置は、
前記射出処理及び前記突出し処理において、前記第1回転センサで検知した回転速度が予め定められた値に近づくように、前記射出用モータに出力する駆動指令を増減させるフィードバック制御を実行し、
前記与圧処理において、前記フィードバック制御を停止することを特徴とする請求項
1に記載の電動ダイカストマシン。
【請求項3】
前記制御装置は、前記冷却期間の終了後に予め定められた遅延時間が経過したタイミングで、前記与圧処理から前記突出し処理に移行することを特徴とする請求項
1または
2に記載の電動ダイカストマシン。
【請求項4】
前記型締装置は、
前記金型を開閉する型開閉モータと、
前記型開閉モータの回転速度を検知する第2回転センサとを備え、
前記制御装置は、前記第2回転センサによって前記型開閉モータの回転が検知されたタイミングで、前記与圧処理から前記突出し処理に移行することを特徴とする請求項
1または
2に記載の電動ダイカストマシン。
【請求項5】
前記射出装置は、前記射出プランジャの位置を検知する位置センサを備え、
前記制御装置は、前記位置センサによって前記射出プランジャの変位が検知されたタイミングで、前記与圧処理から前記突出し処理に移行することを特徴とする請求項
1または
2に記載の電動ダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータによって駆動される電動ダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、射出用サーボモータと、射出用サーボモータの駆動力が伝達されて回転するねじ軸と、ねじ軸の回転に伴って進退する進退ナットと、進退ナットの進退に追従してスリーブ内を進退することによって、スリーブ内に貯留された溶湯金属を金型内に射出する射出プランジャとを備える電動ダイカストマシンが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載の電動ダイカストマシンは、射出プランジャを前進させて溶湯金属を金型内に射出する射出処理と、金型内の溶湯金属を凝固させる冷却期間中に射出プランジャで溶湯金属を押圧する増圧処理と、金型の型開に連動して射出プランジャを前進させる突出し処理とを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
増圧処理では、射出プランジャを前進させる向きの駆動指令が射出用サーボモータに出力されるものの、既に前進限に位置する射出プランジャは前進しない。そのため、射出用サーボモータは、増圧処理中に実効トルクが蓄積することによって、突出し処理でトルク不足に陥る場合がある。その結果、型開された金型から成形品を押し出すことができないという課題を生じる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、突出し処理で金型から成形品を適切に押し出すことができる電動ダイカストマシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、金型を開閉及び型締する型締装置と、型締された前記金型内に溶湯金属を射出する射出装置と、前記型締装置及び前記射出装置を制御する制御装置とを備える電動ダイカストマシンであって、前記射出装置は、射出用モータと、前記射出用モータの駆動力が伝達されて回転するねじ軸と、前記ねじ軸に螺合され、前記ねじ軸の回転に伴って進退方向に進退する進退ナットと、前記進退ナットの進退に追従してスリーブ内を前記進退方向に進退することによって、前記スリーブ内に貯留された溶湯金属を、型締された前記金型内に射出する射出プランジャと、前記進退ナットに固定された第1部材と、前記射出プランジャに固定された第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材の間に配置され、前記射出プランジャの前進時に発生するサージ圧を受けて前記進退方向に弾性圧縮される弾性体とを備え、前記制御装置は、予め定められた射出速度で前記射出プランジャが前進するように、前記射出用モータに駆動指令を出力する射出処理と、前記射出処理の後の冷却期間において、予め定められた目標圧力で前記射出プランジャが溶湯金属を押圧するように、前記射出用モータに駆動指令を出力する増圧処理と、前記冷却期間中の前記増圧処理より後に、前記射出用モータへの駆動指令の出力を停止することによって、前記射出用モータに蓄積するトルクを解放するトルク解放処理と、前記冷却期間が終了した後に、前記型締装置に前記金型を型開させるのと連動して、予め定められた突出し速度で前記射出プランジャが前進するように、前記射出用モータに駆動指令を出力する突出し処理と、前記トルク解放処理より後で且つ前記突出し処理より前に、前記射出プランジャが前記弾性体を予め定められた目標圧縮量だけ弾性圧縮させるように、前記射出用モータに駆動指令を出力する与圧処理とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、突出し処理で射出用モータに大きなトルクを出力させることができるので、金型から成形品を適切に押し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電動ダイカストマシンの側面図である。
【
図4】電動ダイカストマシンのハードウェア構成図である。
【
図6】自動成形処理中における射出プランジャの速度、射出用モータに負荷されるトルク、射出プランジャの先端にかかる圧力、及び衝撃緩衝装置の圧縮量の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電動ダイカストマシン10の側面図である。電動ダイカストマシン10は、金型内に溶湯金属を射出して、成形品を製造する。
図1に示すように、電動ダイカストマシン10は、型締装置20と、射出装置30と、制御装置60(
図6参照)とを主に備える。
【0011】
型締装置20は、金型21の開閉及び型締を行う。具体的には、型締装置20は、固定側金型22を支持する固定ダイプレート23と、可動側金型24を支持する可動ダイプレート25と、型開閉モータ26とを主に備える。固定側金型22及び可動側金型24は、電動ダイカストマシン10の左右方向(水平方向)において、互いに対面するように支持されている。
【0012】
可動ダイプレート25は、型開閉モータ26の駆動力がトグルリンク機構27を通じて伝達されることによって、タイバー28に沿って左右方向に移動する。可動ダイプレート25が左方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが離間(型開)する。一方、可動ダイプレート25が右方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが当接(型閉)する。そして、可動ダイプレート25を右方向に移動させる向きの圧力がさらに加わると、固定側金型22及び可動側金型24が型締される。
【0013】
型締された金型21の内部には、ビスケットB、ランナR、ゲートG、キャビティC、及びオーバーフロー部Oが形成される。ビスケットB、ランナR、ゲートG、キャビティC、及びオーバーフロー部Oは、溶湯金属が進入する内部空間である。
【0014】
ビスケットBは、金型21の内部空間のうち、溶湯金属の流通方向の最も上流側に位置する。ビスケットBは、後述する射出スリーブ31に連通して水平方向に延びる円筒形状の空間である。ランナRは、ビスケットB及びゲートGの間に位置している。ゲートGは、ランナR及びキャビティCの間に位置している。ゲートGは、溶湯金属の流通方向に直交する断面積がランナR及びキャビティCより小さい。そのため、ランナRからキャビティCに供給される溶湯金属は、ゲートGを通過する際に加速される。
【0015】
キャビティCは、成形品の形状に対応する空間である。キャビティCに充填された溶湯金属が凝固することによって、成形品が成形される。オーバーフロー部Oは、金型21の内部空間のうち、溶湯金属の流通方向の最も下流側に位置する。オーバーフロー部Oを満たす量の溶湯金属を金型21内に充填することにより、キャビティC内への溶湯金属の充填不足を防止することができる。
【0016】
射出装置30は、型締された金型21内に溶湯金属を射出する。射出装置30は、射出スリーブ31と、射出プランジャ32と、プランジャ駆動装置33とを主に備える。本実施形態に係る射出装置30は、型締装置20と水平方向(型締装置20の右方)に離間して配置されている。
【0017】
射出スリーブ31は、固定ダイプレート23に取り付けられた円筒形状の部材である。射出スリーブ31の先端部は、金型21のビスケットBに連通している。また、射出スリーブ31には、ラドル(図示省略)によって供給された溶湯金属が貯留される。
【0018】
射出プランジャ32は、射出スリーブ31内に進退可能に収容されている。プランジャ駆動装置33が射出プランジャ32を前進させると、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属がビスケットB、ランナR、及びゲートGを通じてキャビティCに供給される。一方、プランジャ駆動装置33が射出プランジャ32を後退させると、ラドルから供給される溶湯金属を貯留する空間が射出スリーブ31内に形成される。
【0019】
プランジャ駆動装置33は、射出用モータ34の駆動力を射出プランジャ32に伝達することによって、電動ダイカストマシン10の左右方向(以下、「進退方向」と表記する。)に沿って射出プランジャ32を進退させる。
【0020】
図2は、プランジャ駆動装置33の概略斜視図である。
図3は、プランジャ駆動装置33の要部断面図である。
図2及び
図3に示すように、プランジャ駆動装置33は、射出用モータ34と、ねじ軸36と、進退ナット37と、連結筒38と、ガイドロッド39a、39bと、衝撃緩衝装置40とを主に備える。
【0021】
射出用モータ34は、射出プランジャ32を進退させるための駆動力を発生させる電動サーボモータである。射出用モータ34の駆動力は、射出用モータ34の出力軸と、ねじ軸36と一体回転するプーリ34aとに巻回されたタイミングベルト34bを通じてねじ軸36に伝達される。
【0022】
ねじ軸36は、プランジャ駆動装置33のハウジングに軸受36aを介して回転自在に支持されている。ねじ軸36は、電動ダイカストマシン10の左右方向(すなわち、進退方向)に延設されている。ねじ軸36は、射出用モータ34の駆動力が伝達されて、一方側及び他方側に回転する。
【0023】
進退ナット37は、ねじ軸36に螺合されている。進退ナット37は、ねじ軸36の回転に伴って進退方向に進退する。より詳細には、進退ナット37は、ねじ軸36の一方側の回転に伴って前進し、ねじ軸36の他方側の回転に伴って後退する。
【0024】
連結筒38は、円筒形状の外形を呈する。連結筒38は、ねじ軸36に外挿されて、ねじ軸36と同じ方向(すなわち、進退方向)に延設されている。連結筒38は、一端が射出プランジャ32に連結され、他端が後述する第2ブロック42に連結されている。すなわち、射出プランジャ32は、連結筒38を介して第2ブロック42に固定される。
【0025】
ガイドロッド39a、39bは、プランジャ駆動装置33のハウジングに固定されている。ガイドロッド39a、39bは、ねじ軸36及び連結筒38に隣接する位置において、ねじ軸36と平行(すなわち、進退方向)に延設されている。
図2では、ねじ軸36及び連結筒38を挟むように、2本のガイドロッド39a、39bが配置されているが、ガイドロッド39a、39bの数はこれに限定されない。
【0026】
衝撃緩衝装置40は、射出プランジャ32を前進させる際に発生するサージ圧が、金型21に伝搬するのを阻止する役割を担う。衝撃緩衝装置40は、第1ブロック(第1部材)41と、第2ブロック(第2部材)42と、コイルバネ(弾性体)43a、43bとを主に備える。
【0027】
第1ブロック41は、進退ナット37に固定されて、進退ナット37と共に進退方向に進退する。第2ブロック42は、連結筒38を介して射出プランジャ32に固定されて、射出プランジャ32と共に進退方向に進退する。また、第1ブロック41及び第2ブロック42は、進退方向に所定の間隔を隔てて対向配置されている。
【0028】
第1ブロック41及び第2ブロック42には、各々を進退方向に貫通し且つ互いに連通する貫通孔41a、41b、42a、42bが形成されている。そして、連通する貫通孔41a、42aにガイドロッド39aが挿通され、連通する貫通孔41b、42bにガイドロッド39bが挿通される。すなわち、第1ブロック41及び第2ブロック42は、ガイドロッド39a、39bに案内されて、進退方向に独立して進退する。
【0029】
また、第1ブロック41及び第2ブロック42には、互いに対面する側面から進退方向に延び且つ互いに連通する凹部41c、41d、42c、42dが形成されている。そして、連通する凹部41c、42cにコイルバネ43aが収容され、連通する凹部41d、42dにコイルバネ43bが収容される。
【0030】
コイルバネ43a、43bは、予め進退方向に圧縮された状態で、第1ブロック41及び第2ブロック42の間(すなわち、凹部41c、42c及び凹部41d、42d)に配置されている。そして、第1ブロック41及び第2ブロック42が独立して進退(すなわち、第1ブロック41及び第2ブロック42の間隔が変化)することによって、コイルバネ43a、43bは進退方向に伸縮する。また、コイルバネ43a、43bは、ねじ軸36の周方向に等間隔に配置されるのが望ましい。
【0031】
図4は、電動ダイカストマシン10のハードウェア構成図である。制御装置60は、例えば、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)61、各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)62、及び演算手段の作業領域となるRAM(Random Access Memory)63を備える。そして、ROM62に記憶されたプログラムをCPU61が読み出して実行することによって、後述する各処理を実現してもよい。
【0032】
但し、制御装置60の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0033】
制御装置60は、電動ダイカストマシン10全体の動作を制御する。より詳細には、制御装置60は、位置センサ64から出力される検知信号と、ロータリエンコーダ65、66から出力されるパルス信号と、表示入力装置67から出力される入力信号とに基づいて、型開閉モータ26及び射出用モータ34の駆動を制御する。制御装置60は、型開閉モータ26及び射出用モータ34を駆動させるために、駆動指令を出力する。
【0034】
駆動指令とは、例えば、射出用モータ34に供給する駆動電流である。すなわち、制御装置60は、射出用モータ34に供給する駆動電流を大きくすることによって、射出用モータ34の回転速度(すなわち、射出プランジャ32の移動速度)を増加させる。また、制御装置60は、射出用モータ34に供給する駆動電流を小さくすることによって、射出用モータ34の回転速度を減少させる。但し、駆動指令は、射出用モータ34に印加する駆動電圧の大きさであってもよい。型開閉モータ26に対する駆動指令も同様である。
【0035】
位置センサ64は、射出プランジャ32の位置を検知し、検知結果を示す検知信号を制御装置60に出力する。また、ロータリエンコーダ(第2回転センサ)65は、型開閉モータ26の回転に応じたパルス信号を制御装置60に出力する。さらに、ロータリエンコーダ(第1回転センサ)66は、射出用モータ34の回転に応じたパルス信号を制御装置60に出力する。
【0036】
表示入力装置67は、オペレータに報知すべき各種情報を表示するディスプレイ、及びオペレータによる操作を受け付けるボタン、スイッチ、ダイヤルなどを備えるユーザインタフェースである。また、表示入力装置67は、ディスプレイに重畳されたタッチパネルを備えてもよい。表示入力装置67は、オペレータの入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作に対応する入力信号を制御装置60に出力する。
【0037】
図5は、自動成形処理のフローチャートである。
図6は、自動成形処理中における射出プランジャ32の速度、射出用モータ34に負荷されるトルク、射出プランジャ32の先端にかかる圧力、及び衝撃緩衝装置40の圧縮量の時間変化を示す図である。
【0038】
自動成形処理は、複数の成形品を連続して成形する処理である。制御装置60は、自動成形処理の開始指示を表示入力装置67を通じて受け付けたことに応じて、
図5に示す自動成形処理を開始する。なお、自動成形処理の開始時点において、進退ナット37は後退限に位置しているものとする。
【0039】
まず、制御装置60は、型開閉モータ26を駆動することによって、型締装置20に金型21を型閉及び型締させる(S11)。これにより、金型21の内部に、ビスケットB、ランナR、ゲートG、キャビティC、及びオーバーフロー部Oが形成される。
【0040】
次に、制御装置60は、射出用モータ34を低速駆動することによって、射出プランジャ32を低速で前進させる(S12)。これにより、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属は、ビスケットB、ランナR、及びゲートGに進入する。次に、制御装置60は、溶湯金属がゲートGを満たしたタイミングで、射出用モータ34を高速駆動することによって、射出プランジャ32を高速で前進させる(S13)。これにより、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属が、キャビティC及びオーバーフロー部Oに一気に流れ込む。ステップS12の処理は低速射出処理の一例であり、ステップS13の処理は高速射出処理の一例であり、ステップS12、S13の処理は射出処理の一例である。
【0041】
制御装置60は、ロータリエンコーダ65から単位時間あたりに出力されるパルス信号の数をカウントすることによって、射出用モータ34の回転速度を把握することができる。また、コイルバネ43a、43bの伸縮を無視すれば、射出プランジャ32の前進速度と、射出用モータ34の回転速度とは一対一の関係にある。そこで、制御装置60は、ステップS13において、ロータリエンコーダ65から出力されるパルス信号に基づいて射出プランジャ32が予め定められた射出速度で前進するように、射出用モータ34に出力する駆動指令を増減させるフィードバック制御を実行する。
【0042】
フィードバック制御とは、所定の時間間隔毎に目標値と実測値との差を演算し、演算した差が0に近づくように駆動指令を増減する処理を繰り返す制御である。すなわち、制御装置60は、ロータリエンコーダ65のパルス信号で特定される射出プランジャ32の前進速度(実測値)が、射出速度(目標値)より遅い場合に駆動指令を増加し、射出速度より速い場合に駆動指令を減少させる処理を、射出処理中に繰り返し実行する。
【0043】
また、制御装置60は、位置センサ64で検知された射出プランジャ32の位置が予め定められた切替位置に到達したタイミングで、低速射出処理から高速射出処理に移行する。また、制御装置60は、位置センサ64で検知された射出プランジャ32の位置が予め定められた前進限に到達したタイミングで、高速射出処理を終了する。
【0044】
次に、制御装置60は、高速射出処理が終了してから予め定められた時間(以下、「冷却期間」と表記する。)が経過するまで、金型21の型開を待機する。この冷却期間は、金型21内に射出された溶湯金属が冷えて凝固するのに必要な時間である。制御装置60は、高速射出処理が終了したタイミングで、冷却期間の経過を検知するためのタイマをスタートさせる。そして、制御装置60は、増圧処理(S14)、トルク解放処理(S15)、及び与圧処理(S16)を、冷却期間中に順次実行する。
【0045】
増圧処理は、金型21内に射出した溶湯金属を射出プランジャ32で押圧する処理である。これにより、キャビティC内に隙間なく溶湯金属を充填することができる。そこで、制御装置60は、予め定められた目標圧力で射出プランジャ32が溶湯金属を押圧するように、射出用モータ34に駆動指令を出力する(S14)。また、制御装置60は、増圧処理において、予め定められた時間継続して駆動指令を出力し続ける。
【0046】
なお、射出プランジャ32の押圧力を目標圧力に近づける制御は、射出プランジャ32に負荷される圧力を検知するロードセル(図示省略)の検知結果に基づくフィードバック制御でもよいし、射出用モータ34から射出プランジャ32に至る駆動力の伝達経路に配置されたトルクリミッタによる制御であってもよい。
【0047】
増圧処理では、射出用モータ34に駆動指令が出力され続けるものの、射出プランジャ32は既に前進限に位置しているので、射出用モータ34は回転しない。そのため、射出用モータ34にはトルクが蓄積する。そして、射出用モータ34にトルクが蓄積すると、後述する突出し処理(S18)において、十分な力で成形品を突き出すことができなくなる。
【0048】
そこで、制御装置60は、予め定められた時間だけ増圧処理を実行した後に、射出用モータ34への駆動指令の出力を停止する(S15)。すなわち、トルク解放処理は、冷却期間中の増圧処理より後に実行される。これにより、増圧処理中に射出用モータ34に蓄積されたトルクが解放される。その結果、
図6に示すように、射出用モータ34のトルク、射出プランジャ32の先端にかかる圧力、及びコイルバネ43a、43bの圧縮量が減少する。
【0049】
与圧処理は、突出し処理に先立って、予め定められた目標圧縮量だけコイルバネ43a、43bを弾性圧縮させる処理である。すなわち、与圧処理は、トルク解放処理の後で且つ突出し処理の前に実行される。そして、制御装置60は、射出プランジャ32がコイルバネ43a、43bを目標圧縮量だけ弾性圧縮させるように、射出用モータ34に駆動指令を出力する(S16)。
【0050】
なお、増圧処理と同様に、与圧処理においても射出プランジャ32は前進しない。そこで、制御装置60は、与圧処理において、一定の駆動指令(すなわち、予め定められた大きさの電流値)を射出用モータ34に出力し続ける。換言すれば、制御装置60は、与圧処理において、射出プランジャ32の前進速度を目標速度に近づけるためのフィードバック制御を停止する。
【0051】
次に、制御装置60は、冷却期間の経過を検知するタイマがタイムアウトしたタイミングで、金型21が型開される向きに型開閉モータ26を駆動する。但し、制御装置60が型開閉モータ26に駆動指令を出力してから、金型21が実際に型開(換言すれば、型開閉モータ26が回転)を開始するまでには、タイムラグ(例えば、0.2~0.3sec)がある。
【0052】
そこで、制御装置60は、型開閉モータ26に駆動指令を出力した後も、後述する突出しタイミングが到来するまで(S17:No)、与圧処理を継続する。すなわち、制御装置60は、与圧処理を継続しつつ、型開閉モータ26に駆動指令を出力する。換言すれば、与圧処理は、冷却期間が経過した後もしばらく継続される。
【0053】
そして、制御装置60は、突出しタイミングが到来した時点で(S17:Yes)、予め定められた突出し速度で射出プランジャ32が前進するように、射出用モータ34に駆動指令を出力する(S18)。ステップS18の処理は、突出し処理の一例である。また、制御装置60は、突出し処理において、射出プランジャ32の前進速度が突出し速度(目標速度)に近づくように、前述したフィードバック制御を実行する。
【0054】
突出し処理によって、成形品を押し出す向きの力がビスケットB内の金属に付与される。これにより、型締装置20が金型21を型開させるのと連動して、射出プランジャ32が射出処理時の前進限を超えて金型21内の成形品を突き出す。突き出された成形品は、ロボットアーム(図示省略)などによって取り出される。
【0055】
次に、制御装置60は、射出プランジャ32を後退させる向きに、射出用モータ34を駆動する。次に、制御装置60は、予め定められた数の成形品を既に成形したか否か(すなわち、成形完了したか否か)を判断する(S19)。そして、制御装置60は、成形完了していないと判断した場合に(S19:No)、ステップS11以降の処理を再び実行する。一方、制御装置60は、成形完了したと判断した場合に(S19:Yes)、自動成形処理を終了する。
【0056】
突出しタイミングは、与圧処理から突出し処理に移行するタイミングである。突出しタイミングは、例えば、金型21が現実に型開を開始するタイミングである。換言すれば、突出しタイミングは、射出用モータ34を駆動することによって、射出プランジャ32が前進可能となるタイミングである。突出しタイミングは、例えば、以下の3つのタイミングが考えられる。
【0057】
一例として、制御装置60は、冷却期間の経過を検知するタイマがタイムアウトしてから予め定められた遅延時間が経過したタイミングで、与圧処理から突出し処理に移行してもよい。遅延時間は、制御装置60が型開閉モータ26に駆動指令を出力してから、金型21が実際に型開を開始するまでのタイムラグより短い時間(例えば、0.1sec)に設定される。
【0058】
他の例として、制御装置60は、与圧処理中にロータリエンコーダ65がパルス信号の出力を開始した(すなわち、型開閉モータ26の回転が検知された)タイミングで、与圧処理から突出し処理に移行してもよい。さらに他の例として、制御装置は、与圧処理中に位置センサ64によって射出プランジャ32の変位(前進)が検知されたタイミングで、与圧処理から突出し処理に移行してもよい。
【0059】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0060】
上記の実施形態によれば、冷却期間中の増圧処理より後にトルク解放処理を実行するので、増圧処理で射出用モータ34に蓄積したトルクを、突出し処理に先立って解放することができる。これにより、射出用モータ34にトルクが蓄積していない状態で、突出し処理を実行することができる。その結果、突出し処理で射出用モータ34に大きなトルクを出力させることができるので、金型21から成形品を適切に押し出すことができる。
【0061】
なお、上記の実施形態に係る電動ダイカストマシン10において、射出プランジャ32を急激に前進させると、衝撃緩衝装置40が弾性圧縮される。そのため、突出し処理において、射出用モータ34に対する駆動指令より遅れて、射出プランジャ32が前進することになる。その結果、金型21の型開に連動して成形品を押し出すことができないという新たな課題を生じる。
【0062】
そこで上記の実施形態では、トルク解放処理及び突出し処理の間に与圧処理を実行する。これにより、コイルバネ43a、43bを予め目標圧縮量まで弾性圧縮した状態で、突出し処理を実行することができる。その結果、射出用モータ34の駆動力がダイレクトに射出プランジャ32に伝達されるので、突出し処理における射出プランジャ32の追従性の低下が防止できる。
【0063】
但し、与圧処理中は射出プランジャ32が前進できないので、射出プランジャ32を目標速度に近づけるフィードバック制御を実行すると、射出用モータ34に供給される駆動指令(すなわち、電流値)が大きくなり過ぎる。そして、この状態で突出し処理を開始すると、
図6に吹き出しで示すように、射出プランジャ32の前進速度にバタつきが生じる。これは、大きな駆動指令によって射出プランジャ32が必要以上に加速され、フィードバック制御により射出プランジャ32が急減速及び急加速を繰り返しながら、徐々に突出し速度に収束するためである。
【0064】
そこで上記の実施形態では、射出処理及び突出し処理でフィードバック制御を実行し、トルク解放処理でフィードバック制御を停止する。これにより、突出し処理における射出プランジャ32の前進速度がバタつくのを防止することができる。その結果、金型21の型開タイミングと、射出プランジャ32による成形品の突出しタイミングとを、高精度に同期させることができる。
【0065】
また、上記の実施形態によれば、冷却期間が経過した直後ではなく、突出しタイミングの到来を待って突出し処理を開始する。これにより、型開閉モータ26の駆動指令の出力から金型21の現実の型開開始までのタイムラグを考慮して、突出し処理を開始することができる。その結果、金型21の型開タイミングと、射出プランジャ32による成形品の突出しタイミングとを、さらに高精度に同期させることができる。
【0066】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
10…電動ダイカストマシン、20…型締装置、21…金型、22…固定側金型、23…固定ダイプレート、24…可動側金型、25…可動ダイプレート、26…型開閉モータ、27…トグルリンク機構、28…タイバー、30…射出装置、31…射出スリーブ、32…射出プランジャ、33,33A,33B,33C…プランジャ駆動装置、34…射出用モータ、34a,35a…プーリ、34b,35b…タイミングベルト、35c…ワンウェイクラッチ、35…増圧用モータ、36…ねじ軸、37…進退ナット、38…連結筒、39a,39b…ガイドロッド、40…衝撃緩衝装置、41…第1ブロック(第1部材)、41a,41b,42a,42b…貫通孔、41c,41d,42c,42d…凹部、42…第2ブロック(第2部材)、43a,43b…コイルバネ(弾性体)、60…制御装置、61…CPU、62…ROM、63…RAM、64…位置センサ、65,66…ロータリエンコーダ、67…表示入力装置(入力装置)