(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/10 20060101AFI20240122BHJP
E04F 21/16 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E04G21/10 Z
E04F21/16 D
(21)【出願番号】P 2020030045
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 喜昭
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-037361(JP,A)
【文献】特開2003-129663(JP,A)
【文献】特開2010-285748(JP,A)
【文献】特開2003-341413(JP,A)
【文献】特開2019-73962(JP,A)
【文献】特開2020-20117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/10
E04F 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が平滑なコンクリート構造物を施工する方法であって、
コンクリートを打設した後、コンクリート表面を押し均すステップと、
打設した前記コンクリートから採取したコンクリートサンプルに対する貫入抵抗値試験により測定した貫入抵抗値が5.0~8.5(N/mm
2
)となり、前記コンクリート表面を鏝で仕上げた際に凸部が見え始めたタイミングで、
前記コンクリート表面
の近傍の粗骨材に起因して周囲よりも盛り上がった
前記コンクリート表面の凸部に対し、粗骨材押し込み用の施工装置を押し当てることにより、
前記コンクリート表面
の近傍の粗骨材のみを下方に押し込み、
前記凸部をなくすように施工するステップとを有
し、
前記施工装置は、前記コンクリート表面の近傍の粗骨材のみを下方に押し込むための押し込み手段を備え、前記押し込み手段は、円筒状または円柱状のローラ部材と、前記ローラ部材を回転可能に支持する支持部材と、粗骨材を押し込むために設けられるとともに前記ローラ部材の表面において所定の間隔で複数設けられた針状部材とを有し、前記ローラ部材の幅は2cm~5cm、前記各針状部材の隙間は1~2mmであることを特徴とするコンクリート構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンクリートスラブのようなコンクリート構造物の施工方法および施工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートスラブの施工は、プラントからミキサーで運ばれたコンクリートを打設し、全体を決められた高さになるように均し、コンクリートの硬化程度にしたがって表面を金鏝で押えてゆくことで、緻密で滑らかなコンクリートスラブの表面を作ってゆく手順により施工している(例えば、特許文献1~3を参照)。表面の金鏝押えは、作業の効率化と省力化から、騎乗式トロウェルなどの押え機械を用いるケースがある。
【0003】
一方、本特許出願人は、コンクリートスラブの表面を効率よく正確な高さに仕上げるための技術として、特許文献4~6に記載のものを既に提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-171793号公報
【文献】特開2003-247344号公報
【文献】特開平3-147975号公報
【文献】特願2019-099563号(現時点で未公開)
【文献】特願2019-171996号(現時点で未公開)
【文献】特開2018-188810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
騎乗式トロウェルなどの押え機械による金鏝仕上げは、人の手による作業と比較して大きな力が掛けられるため、短時間で緻密なコンクリート表面に仕上げることができる。一方で、コンクリート表面は、極めて滑らかで平滑になることから、
図6のような表面の凸部が発生するケースがある。この凸部の高さは通常0.5mm程度であるため、コンクリートが硬化して表面の艶がなくなると目立たなくなるが、硬化途中や硬化後の表面に塗装するなどして艶があると、光の当たり方によっては目についてしまい、見た目に悪く、凸部直下に気泡があってそのうちに表面が剥がれて不具合になってしまうのではないかと危惧されてしまうケースがある。そのため、凸部を発生させないようにするには、コンクリート内の空気を抜くために、コンクリート打設時に十分にバイブレーターをかけることが推奨されているが、凸部の発生を抑える明確な効果は確認できていない。また、この凸部は手による金鏝押えや、ハンドトロウェルによる押えの場合は発生しにくい傾向にある。そのため、騎乗式トロウェルなどの押え機械での押えを敬遠する要因にもなっており、施工機械化を進めるうえでのネックとなっている。このため、コンクリート表面に凸部を発生させない施工方法が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コンクリート表面に凸部を発生させないコンクリート構造物の施工方法および施工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るコンクリート構造物の施工方法は、表面が平滑なコンクリート構造物を施工する方法であって、コンクリートを打設した後、コンクリート表面を押し均すステップと、所定のタイミングで、コンクリート表面近傍の粗骨材に起因して周囲よりも盛り上がったコンクリート表面の凸部に対し、粗骨材押し込み用の施工装置を押し当てることにより、コンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込み、凸部をなくすように施工するステップとを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他のコンクリート構造物の施工方法は、上述した発明において、コンクリート表面を鏝で仕上げた際に凸部が見え始めたタイミングで、粗骨材押し込み用の施工装置を押し当てることにより、コンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るコンクリート構造物の施工装置は、表面が平滑なコンクリート構造物を施工するために用いられる装置であって、コンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込むための押し込み手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他のコンクリート構造物の施工装置は、上述した発明において、円筒状または円柱状のローラ部材と、ローラ部材を回転可能に支持する支持部材と、粗骨材を押し込むために設けられるとともにローラ部材の表面において所定の間隔で複数設けられた針状部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコンクリート構造物の施工方法によれば、表面が平滑なコンクリート構造物を施工する方法であって、コンクリートを打設した後、コンクリート表面を押し均すステップと、所定のタイミングで、コンクリート表面近傍の粗骨材に起因して周囲よりも盛り上がったコンクリート表面の凸部に対し、粗骨材押し込み用の施工装置を押し当てることにより、コンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込み、凸部をなくすように施工するステップとを有するので、コンクリート表面に凸部を発生させないようにすることができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他のコンクリート構造物の施工方法によれば、コンクリート表面を鏝で仕上げた際に凸部が見え始めたタイミングで、粗骨材押し込み用の施工装置を押し当てることにより、コンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込むので、作業を効率的に進めることができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係るコンクリート構造物の施工装置によれば、表面が平滑なコンクリート構造物を施工するために用いられる装置であって、コンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込むための押し込み手段を備えるので、所定のタイミングでコンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込むことで、コンクリート表面に凸部を発生させないようにすることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他のコンクリート構造物の施工装置によれば、円筒状または円柱状のローラ部材と、ローラ部材を回転可能に支持する支持部材と、粗骨材を押し込むために設けられるとともにローラ部材の表面において所定の間隔で複数設けられた針状部材とを備えるので、針状部材でコンクリート表面近傍の粗骨材を均等に押し込むことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、凝結試験結果の例(気温16℃)を示す図である。
【
図2】
図2は、凸部が発生する過程を示す写真図である。
【
図3】
図3は、凸部のコア断面(A,B,C)を示す写真図である。
【
図4】
図4は、本発明に係るコンクリート構造物の施工装置の実施の形態を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明に係るコンクリート構造物の施工方法の実施の形態を示す図である。
【
図6】
図6は、従来のコンクリートスラブ表面の凸部を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、騎乗式トロウェルのような押し機械の金鏝仕上げにおける上記の課題に対して、コンクリート表面に凸部を発生させない施工方法を提供するものである。
【0017】
以下に、本発明に係るコンクリート構造物の施工方法および施工装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
(本発明の基本原理)
まず、本発明の基本原理について説明する。
打設したコンクリートは、時間の経過とともに徐々に硬化してゆく。コンクリートの硬化具合の測定は、JIS A 1147「コンクリートの凝結時間試験方法」に規定されており、コンクリートよりふるい分けたモルタルに、既定の断面積の針を25mm貫入させ、
図1の測定例に示すように経過時間と貫入抵抗値の関係を求める。凝結試験においては、3.5(N/mm
2)を始発、28.0(N/mm
2)を終結と呼んでいる。
【0019】
従来より、騎乗式トロウェルの金鏝による押えの適切なタイミングは、1回目が凝結試験で得られる貫入抵抗値の始発の3.5(N/mm
2)を目安とし、2回目は6.0(N/mm
2)を目安としている。2回目の騎乗式トロウェルの金鏝押えの後は、フレスノ鏝で表面を仕上げると鏝跡がない滑らかな仕上がりが得られる。コンクリート表面の凸部は、
図2に示すように2回目の金鏝押えを行い、フレスノ鏝で仕上げた直後から見えてくる。これは、コンクリート表面が滑らかになったために、表面の僅かな凸部でも光の当たり具合で目立ってくるためである。
【0020】
本発明者が、この凸部についてコンクリート硬化後にコア抜きして断面を観察したところ、
図3のコア断面A、B、Cのように表面から5mm程度の深さに粗骨材があるケースがほとんどであることがわかった。したがって、コンクリート表面に発生する凸部は気泡ではなく、コンクリート表面近くにある粗骨材の形状が、コンクリート表面がフレスノ鏝で滑らかになることで表面に現れる現象であると言える。
【0021】
そこで、本発明者は、コンクリート表面近くにある粗骨材による凸部をなくすために、この粗骨材だけを下に押し込む方法を見出した。粗骨材を押し込むのは、フレスノ鏝で表面を仕上げた際に凸部が見え始めたタイミングがよい。このようにすれば、押し込む必要がある位置が明確であり効率的である。
【0022】
(コンクリート構造物の施工装置)
次に、上記の基本原理に基づいて考案したコンクリート構造物の施工装置の実施の形態について説明する。
図4(1)は、本実施の形態に係るコンクリート構造物の施工装置の外観図、(2)は寸法の例、(3)は押し込み作業の状況、(4)は針状部材の間隔が2mm以上のローラの例である。
【0023】
図4(1)に示すように、本実施の形態に係るコンクリート構造物の施工装置1は、針状ローラ(押し込み手段)からなる。この針状ローラは、円柱状のローラ部材2と、ローラ部材2を回転可能に支持する支持部材3と、把持部材4と、粗骨材を押し込むために設けられるとともにローラ部材2の表面において所定の間隔で複数設けられた針状部材5とを備える。この針状ローラを、上記の所定のタイミングでコンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込むことで、コンクリート表面に凸部を発生させないようにすることができる。
【0024】
粗骨材の大きさは、大きくても2~3cm程度であるから、
図4(1)に示される針状ローラが、粗骨材を均等に押し込むことができて効果的である。針状部材5は、針金のような針状の細い形状のもので構成することが好ましい。
【0025】
ローラ部材2の幅に制約はないが、大きすぎると周囲の押し込む必要のない粗骨材も一緒に押し下げてしまう可能性があり、平滑に仕上げたコンクリート表面が凹む可能性があるので、作業には注意が必要となってくる。したがって、ローラ部材2の幅は粗骨材の長さ程度の2cm~5cmがよい。押し込む深さは、凸部の高さの0.5mm程度でよいので、
図4(3)のように軽く押し込む程度でよく、押えた後は再度、フレスノ鏝で仕上げると綺麗に仕上げることができる。
【0026】
ローラ部材2の表面の各針状部材5の隙間は1~2mmがよく、
図4(4)のように間隔が2mm以上になるとコンクリート表面の細骨材を挟んでしまい、コンクリート表面に穴が開く可能性がある。穴の開いた部分は補修可能であるが、面積が広いと手間が増えて大変であり、大きく穴が開いてしまうと平滑性に影響する。針状部材5の太さは細いほど、粗骨材を押し込む力に負けないほどの強さがあればよく、例えば
図4(2)に示すような樹脂製の太さ、幅1mm程度がよい。
【0027】
なお、ローラ部材2の幅を1m近くに大きくして、フレスノ鏝で仕上げる前にコンクリート表面全体を針状ローラで押えて表面の粗骨材を押し込んでおき、フレスノ鏝で仕上げる方法も考えられる。ただし、この方法は、作業面積が大きくなるので手間がかかり、ローラ部材2がうまく回転しないなどのトラブルがあった場合はコンクリート表面に大きな傷を作ってしまうことになるので注意が必要である。
【0028】
上記の実施の形態においては、押し込み手段が針状ローラで構成される場合を例にとり説明したが、本発明の押し込み手段はこれに限るものではない。押し込み手段は、針金のような針状の細い形状のものを用いて構成することが好ましいが、コンクリート表面近くの粗骨材だけを押し込むことができるものであればいかなる構成でもよい。
【0029】
(コンクリート構造物の施工方法)
次に、本発明に係るコンクリート構造物の施工方法の実施の形態について説明する。この施工方法は、
図5に示すようなステップS1~S8の手順で実施される。
【0030】
まず、ステップS1において、コンクリートを打設し、表面を均してコンクリートスラブを形成するとともに、コンクリートサンプルを採取する。このサンプルを用いて貫入抵抗値試験を開始する。この試験は、JIS A 1147「コンクリートの凝結時間試験方法」に則って実施するものとし、
図1の測定例に示すような経過時間と貫入抵抗値の関係を取得する。なお、サンプルの採取は、例えばコンクリートのミキサー車から行うことができる。例えば打設日の午前最初の1台目と午後最初の1台目から採取してもよいし、午前最初の1台目からだけ採取してもよい。また、例えば、何台目のミキサー車のコンクリートがどの範囲に打設されたかを記録しておき、貫入試験から算出された時間をそれぞれ加算しておいてもよい。ただし、全てのミキサー車に積まれたコンクリートが、ある程度同じ品質(例えば硬化速度が同じ)のコンクリートであることが前提である。
【0031】
次の工程のハンドトロウェルや騎乗式トロウェル(押え機械)の押え作業は、タイミングが重要である。タイミングが早すぎると、円盤がコンクリートに潜ってしまったり、大きくえぐり取ってしまったりしてコンクリートの平滑性を悪くするおそれがある。
【0032】
そこで、次のステップS2においては、コンクリートスラブ上に人が乗れる状態である貫入抵抗値0.5(N/mm2)を目安に、ハンドトロウェルの円盤によるあま出し作業を開始する。このあま出し作業は、ステップS1で開始した貫入抵抗値試験で得られる貫入抵抗値が0.5(N/mm2)になる時刻を見計らって開始してもよいし、この時刻の前後の所定範囲内に開始してもよい。また、目安とする貫入抵抗値は0.5(N/mm2)に限るものではなく、例えば0.4~0.9(N/mm2)程度の貫入抵抗値を目安にしてもよい。
【0033】
次のステップS3においては、貫入抵抗値2.0(N/mm2)を目安に、騎乗式トロウェル(押え機械)の円盤によるあま出し作業を開始する。騎乗式トロウェルの円盤は、ハンドトロウェルの円盤よりも重量があるためである。このあま出し作業は、ステップS1で開始した貫入抵抗値試験で得られる貫入抵抗値が2.0(N/mm2)になる時刻を見計らって開始してもよいし、この時刻の前後の所定範囲内に開始してもよい。また、目安とする貫入抵抗値は2.0(N/mm2)に限るものではなく、例えば1.7~3.2(N/mm2)程度の貫入抵抗値を目安にしてもよい。なお、ステップS2、S3は、この順序で行うことが施工品質を高める上で望ましいが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ステップS2を省略してステップS3を実施してもよいが、早すぎると騎乗式トロウェル(押え機械)がコンクリートに埋まるおそれがあり、遅すぎるとあま出しが十分にできなくなるおそれがあるため留意する必要がある。
【0034】
次のステップS4においては、貫入抵抗値3.5(N/mm2)を目安に、騎乗式トロウェル(押え機械)の金鏝による1回目の仕上げ作業を開始する。このタイミングは厳密ではないが、円盤と金鏝では接地面積が異なることでコンクリート表面に大きな力が加わるため、早すぎるとコンクリート表面を荒らすことに留意する。この金鏝仕上げ作業は、ステップS1で開始した貫入抵抗値試験で得られる貫入抵抗値が3.5(N/mm2)になる時刻を見計らって開始してもよいし、この時刻の前後の所定範囲内に開始してもよい。また、目安とする貫入抵抗値は3.5(N/mm2)に限るものではなく、例えば3.0~5.4(N/mm2)程度の貫入抵抗値を目安にしてもよい。この金鏝仕上げ作業の終了は、例えば6.0(N/mm2)程度を目安とすることができる。なお、本実施の形態では押え機械として騎乗式トロウェルを用いているが、本発明の押え機械はこれに限るものではなく、例えば、金鏝1枚あたり10kg~45kg程度の押え機械を用いることができる。
【0035】
次のステップS5においては、貫入抵抗値6.0(N/mm2)を目安に、騎乗式トロウェルの金鏝による2回目の仕上げ作業と、フレスノ鏝による仕上げ作業を開始する。貫入抵抗値6.0(N/mm2)は、これまで機械施工での目安としていた貫入抵抗値28.0(N/mm2)と比べると小さく、表面はまだ軟らかい状態である。したがって、騎乗式トロウェルの金鏝による2回目の仕上げ作業は、金鏝の跡(半円状の筋)が付きやすいので、騎乗式トロウェルの金鏝仕上げの後から、フレスノ鏝で表面を仕上げると鏝跡がない仕上がりが得られるため好ましい。この仕上げ作業は、ステップS1で開始した貫入抵抗値試験で得られる貫入抵抗値が6.0(N/mm2)になる時刻を見計らって開始してもよいし、この時刻の前後の所定範囲内に開始してもよい。また、目安とする貫入抵抗値は6.0(N/mm2)に限るものではなく、例えば5.0~8.5(N/mm2)程度の貫入抵抗値を目安にしてもよい。
【0036】
このステップS5の最中において、コンクリート表面に凸部が発生していることを確認した場合は(ステップS6)、処理をステップS7に進める。一方、凸部が発生していない場合はステップS8に進める。
【0037】
次のステップS7においては、コンクリート表面近傍の粗骨材に起因して周囲よりも盛り上がったコンクリート表面の凸部に対し、上記の針状ローラ(粗骨材押し込み用の施工装置)を押し当てることにより、凸部直下の粗骨材のみを下方に押し込み、凸部をなくすように施工する。その後、押し込んだ部分を、再度フレスノ鏝などで仕上げる。こうすることで、コンクリート表面に凸部を発生させないようにすることができる。
【0038】
次のステップS8においては、一連の作業を終了する。
【0039】
こうして仕上げたコンクリート表面を散水養生し、硬化・乾燥させることで、表面に凸部がない滑らかなコンクリートスラブが完成する。本実施の形態によれば、騎乗式トロウェルなどの騎乗式の押え機械を用いても、表面に凸部がない滑らかなコンクリートスラブを容易に施工することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明に係るコンクリート構造物の施工方法によれば、表面が平滑なコンクリート構造物を施工する方法であって、コンクリートを打設した後、コンクリート表面を押し均すステップと、所定のタイミングで、コンクリート表面近傍の粗骨材に起因して周囲よりも盛り上がったコンクリート表面の凸部に対し、粗骨材押し込み用の施工装置を押し当てることにより、コンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込み、凸部をなくすように施工するステップとを有するので、コンクリート表面に凸部を発生させないようにすることができる。
【0041】
また、本発明に係る他のコンクリート構造物の施工方法によれば、コンクリート表面を鏝で仕上げた際に凸部が見え始めたタイミングで、粗骨材押し込み用の施工装置を押し当てることにより、コンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込むので、作業を効率的に進めることができる。
【0042】
また、本発明に係るコンクリート構造物の施工装置によれば、表面が平滑なコンクリート構造物を施工するために用いられる装置であって、コンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込むための押し込み手段を備えるので、所定のタイミングでコンクリート表面近傍の粗骨材のみを下方に押し込むことで、コンクリート表面に凸部を発生させないようにすることができる。
【0043】
また、本発明に係る他のコンクリート構造物の施工装置によれば、円筒状または円柱状のローラ部材と、ローラ部材を回転可能に支持する支持部材と、粗骨材を押し込むために設けられるとともにローラ部材の表面において所定の間隔で複数設けられた針状部材とを備えるので、針状部材でコンクリート表面近傍の粗骨材を均等に押し込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係るコンクリート構造物の施工方法および施工装置は、例えばコンクリートスラブのような表面の平滑性が要求されるコンクリート構造物に有用であり、特に、コンクリート表面に凸部を発生させないように施工するのに適している。
【符号の説明】
【0045】
1 コンクリート構造物の施工装置
2 ローラ部材
3 支持部材
4 把持部材
5 針状部材