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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20240122BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240122BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20240122BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
H02K5/22
B62D5/04
H02K11/30
H05K7/14 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020038104
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021141728
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】嶋野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】砥川 真一
(72)【発明者】
【氏名】安田 武史
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077149(JP,A)
【文献】特開2020-005480(JP,A)
【文献】特開2017-152389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D5/00-5/32
H02K5/00-5/26
11/00-11/40
H05K7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを収容するモータハウジングと、前記電動モータを制御するための電子部品を実装する回路基板を有し、前記モータハウジングと着脱自在に取り付けられる制御ユニットとを備えるモータ制御装置であって、
前記モータハウジングは、前記電動モータと電気的に接続され、前記制御ユニットの方へ延在する第1端子を備え、
前記制御ユニットは、
装着された際前記第1端子と接続される第2端子と、
着脱方向において少なくとも2枚の回路基板を対向する状態で保持する基板保持部と前記第2端子を保持する端子保持部とを有する基板保持部材と、
を備え、
前記端子保持部は、着脱方向において前記少なくとも2枚の回路基板の間であって前記基板保持部材の外周に設けられ、
前記端子保持部には、前記第1端子が前記第2端子に対して挿抜されるときに生じる着脱方向の荷重を支持する着脱方向および着脱方向と直交する方向の両方に直交する方向に形成された前記第2端子を両側から支持する支持溝が形成され、
前記第2端子は、前記支持溝に挿入される挿入片を有する、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記少なくとも2枚の回路基板は、前記基板保持部材の一端で保持される第1回路基板と、前記基板保持部材の他端で保持され、前記第1回路基板より前記電動モータ側に配置される第2回路基板とを含み、
前記第2回路基板は、前記第2端子との接続用孔を有し、
前記第2端子の一端は、前記接続用孔を貫通し、接合されることを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記少なくとも2枚の回路基板は、前記基板保持部材の一端で保持される第1回路基板と、前記基板保持部材の他端で保持され、前記第1回路基板より前記電動モータ側に配置される第2回路基板とを含み、
前記第1回路基板は、前記電動モータ側に延在する前記第2端子との接続用端子を有し、
前記第2端子の一端は、前記接続用端子と接合されることを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記電動モータは、車両に搭載される電動パワーステアリングに使用されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを制御するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動モータとその電動モータを制御するための回路とを一体にして提供される電動モータを制御するモータ制御装置に関する技術が知られている。例えば、特許文献1は、回路基板に設けられた端子に対し、その他の各種端子を十分な接続信頼性を持って接続できるようになり、装置の小型化に貢献する電子制御装置を開示する。この制御装置は、互いに接合されるケースとカバーとを有し、カバーにはモータユニットを駆動させる駆動回路基板が固定され、ケースには駆動回路基板を制御する制御回路基板が固定されている。ケースの開口部には各基板とモータユニットに電力を供給する電気コネクタが取り付けられており、この電気コネクタの通電端子と、駆動回路基板上に設けられた通電端子とは、ケースとカバーの接合によって直接的に電気接続される。
【0003】
また、特許文献2は、特殊かつ大規模な設備を必要とせず、また、非破壊的にモータとコントロールユニットとを分解可能な駆動装置を開示する。この駆動装置では、コントロールユニットのヒートシンクは、カバーに固定されている。モータのコイルは、ハウジングを挿通してコントロールユニット側に延びているリード線を有する。基板は、リード線に着脱可能に接続したコネクタを有する。これにより、モータとコントロールユニットとを電気的に接続するにあたって、はんだ付けや溶接を用いない。リード線のコネクタへの差し込みにより接続が完了する。そのため、特殊かつ大規模な設備を必要としない。また、組み立て後であっても、コネクタがリード線から抜けるようにモータとコントロールユニットと引き離せば、非破壊的にモータとコントロールユニットとを分解可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-152389号公報
【文献】特開2018-122665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術では、基板上に実装された端子(メス端子)に、モータなどから延びる端子(オス端子)が嵌ることで両者が電気的に接続される構造になっている。しかし、このような構造では、両者を取り付ける際、オス端子がメス端子に与える荷重がすべて基板に付加されるため、メス端子と基板との接合部となるはんだ付けされた部分にひび割れが生ずる懸念がある。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みて考案されたものであり、組み立て時に生ずる端子と他部材との接合部に付加される荷重を低減し、高い接続信頼性を有する着脱自在な電動モータのモータ制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、電動モータを収容するモータハウジングと、電動モータを制御するための電子部品を実装する回路基板を有し、モータハウジングと着脱自在に取り付けられる制御ユニットとを備えるモータ制御装置であって、モータハウジングは、電動モータと電気的に接続され、制御ユニットの方へ延在する第1端子を備え、制御ユニットは、装着された際第1端子と接続される第2端子と、着脱方向において少なくとも2枚の回路基板を対向する状態で保持する基板保持部と第2端子を保持する端子保持部とを有する基板保持部材と、を備え、端子保持部は、着脱方向において少なくとも2枚の回路基板の間であって基板保持部材の外周に設けられ、端子保持部には、第1端子が第2端子に対して挿抜されるときに生じる着脱方向の荷重を支持する荷重支持部が形成されているモータ制御装置が提供される。
これによれば、第1端子が第2端子に対して挿抜されるときに生じる着脱方向の荷重を受ける荷重支持部が回路基板以外の基板保持部材に形成されることで、着脱時に生ずる端子と回路基板や他の端子などの他部材との接合部に付加される荷重を低減し、高い接続信頼性を有する着脱自在な電動モータのモータ制御装置を提供することができる。
【0008】
さらに、少なくとも2枚の回路基板は、基板保持部材の一端で保持される第1回路基板と、基板保持部材の他端で保持され、第1回路基板より電動モータ側に配置される第2回路基板とを含み、第2回路基板は、第2端子との接続用孔を有し、第2端子の一端は、接続用孔を貫通し、接合されることを特徴としてもよい。
これによれば、第2端子は回路基板に接合されているが、回路基板を支持する基板保持部材で第2端子にかかる荷重を支持することで、組み立て時に生ずる第2端子と回路基板との接合部に付加される荷重を低減することができる。
【0009】
さらに、少なくとも2枚の回路基板は、基板保持部材の一端で保持される第1回路基板と、基板保持部材の他端で保持され、第1回路基板より電動モータ側に配置される第2回路基板とを含み、第1回路基板は、電動モータ側に延在する第2端子との接続用端子を有し、第2端子の一端は、接続用端子と電気的に接続されることを特徴としてもよい。
これによれば、第2端子は回路基板から延在する接続用端子に電気的に接続されているが、回路基板を支持する基板保持部材で第2端子にかかる荷重を支持することで、組み立て時に生ずる第2端子と接続用端子との接合部に付加される荷重を低減することができる。
【0010】
さらに、端子保持部は、着脱方向と直交する方向に複数配置され、荷重支持部は、着脱方向および着脱方向と直交する方向の両方に直交する方向に形成された第2端子を両側から支持する支持溝であり、第2端子は、支持溝に挿入される挿入片を有することを特徴としてもよい。
これによれば、第2端子は効率よく支持される。
【0011】
さらに、電動モータは、車両に搭載される電動パワーステアリングに使用されることを特徴としてもよい。
これによれば、組み立て時に生ずる端子と他部材との接合部に付加される荷重を低減し、高い接続信頼性を有する着脱自在な電動パワーステアリング用のモータ制御装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、組み立て時に生ずる端子と他部材との接合部に付加される荷重を低減し、高い接続信頼性を有する着脱自在な電動モータのモータ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の、(A)平面図、(B)右側面図、(C)正面図、(D)上方からの斜視図、(E)下方からの斜視図。
図2】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の、(A)平面図、(B)(A)におけるB-B断面における断面図、(C)(A)におけるA-A断面における断面図。
図3】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の、(A)上方からの展開斜視図、(B)下方からの展開斜視図。
図4】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の組み立て時における着脱方向を示す側面図。
図5】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の斜視図。
図6】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置における、(A)モータハウジングの斜視図、(B)制御ユニットの斜視図。
図7】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の制御ユニットの基板側からの斜視図。
図8】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置における、(A)組み立てられた複数基板の斜視図、(B)ヒートシンクカバーの斜視図。
図9】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置における、(A)モータ接続端子が挿入された状態における組み立てられた複数基板の斜視図、(B)モータ接続端子が挿入された状態における組み立てられた複数基板(カバーを外した場合)の斜視図。
図10】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置における、モータ接続端子が挿入されていない状態における組み立てられた複数基板の斜視図。
図11】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置の基板保持部材の斜視図。
図12】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置における、(A)基板保持部材に保持部材接続端子が取り付けられた状態を示す斜視図、(B)基板保持部材に保持部材接続端子を取りはずした状態を示す斜視図。
図13】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置における、(A)基板保持部材に保持部材接続端子を取り付ける途中の状態を示す斜視図、(B)その拡大斜視図。
図14】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置における保持部材接続端子の、(A)正面図、(B)左側面図、(C)背面図、(D)斜視図。
図15】本発明に係る第一実施例の電動パワーステアリング装置における、(A)保持部材接続端子にモータ接続端子が挿入された状態を示す斜視図、(B)その拡大斜視図。
図16】本発明に係る第二実施例の電動パワーステアリング装置における、(A)基板保持部材と駆動基板を組み立てた状態を示す平面図、(B)(A)におけるC-C断面における断面図。
図17】本発明に係る第二実施例の電動パワーステアリング装置における、(A)基板保持部材と駆動基板を組み立てた状態を示す斜視図、(B)その拡大斜視図、(C)駆動基板130の斜視図。
図18】本発明に係る第二実施例の電動パワーステアリング装置における、(A)基板保持部材と駆動基板を組み立てた状態を示す斜視図(カバー付けた状態)、(B)基板保持部材と駆動基板と電源基板を組み立てた状態を示す斜視図。
図19】本発明に係る実施例の電動パワーステアリング装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る実施例について説明する。
<第一実施例>
図1乃至図15および図19を参照し、本実施例における電動パワーステアリング装置1を説明する。電動パワーステアリング装置1は、車両用の操舵機構を駆動する電動モータMTを収容するモータハウジング200と、電動モータMTを制御するための電子部品を実装する複数の回路基板を有し、モータハウジング200と着脱自在に取り付けられる制御ユニット100とを備える。電動モータMTは、車両の運転者がステアリングを回動操作する際のトルクを支援するため、操舵機構に対して支援操舵トルクを発生させる。制御ユニット100は、支援操舵トルクを発生させる電動モータMTを制御するための制御装置である。なお、本実施例では、電動パワーステアリング装置1について述べるが、これに限定されず、駆動力を発生させる電動モータとその電動モータを制御する制御ユニットとを備える他のモータ制御装置であってもよい。
【0015】
本実施例における電動パワーステアリング装置1においては、図19に示すように、電動モータMTは第1電動モータMTAと第2電動モータMTBから、制御ユニット100は第1制御システム100Aと第2制御システム100Bから構成される。電動パワーステアリング装置1は、全体として、第1電動モータMTAと第1制御システム100Aから構成される第1システム10Aと、第2電動モータMTBと第2制御システム100Bから構成される第2システム10Bからなる。このように、それぞれ2系統に冗長化されているため、いずれかの系統において異常が生じても、電動パワーステアリング装置1としての制御を継続できる。なお、本実施例では、第1電動モータMTAと第2電動モータMTBは、巻線が第1巻線組と第2巻線組から構成されているので冗長系を有し、ロータを共有している。しかし、これに限定されず、第1電動モータMTAと第2電動モータMTBは、2つの別個の電動モータであってもよい。
【0016】
第1制御システム100A/第2制御システム100Bは、図1図19に示すように、車両のバッテリから電源ケーブルと電源コネクタ1111を介して電源基板150上の電源部を構成する電源電子部品151(図3に示す)に電力を供給する。電源コネクタ1111は、コネクタアッシー110の基板側に形成された電源用端子112に接続されている。また、第1制御システム100A/第2制御システム100Bは、制御ケーブルを経由してCAN(Car Area Network、図示せず)と接続されるCANコネクタ1112を介して制御基板160上の制御部を構成するマイクロコンピュータ162に車速信号を供給する。また、第1制御システム100A/第2制御システム100Bは、車両の各所の情報を検出するセンサと接続されるセンサコネクタ1113を介してマイクロコンピュータ162に操舵トルク信号や操舵角信号などを供給する。センサコネクタ1113は、コネクタアッシー110の基板側に形成された制御用端子113に接続されている。制御用端子113は、電源用端子112より出力軸RTの径方向外側に配置される。
【0017】
駆動基板130上の駆動電子部品131であるドライバICは、制御基板160上のマイクロコンピュータ162から制御信号を、電源基板150上の電源部から駆動電力の供給を受け、それぞれのモータ接続端子210を介して第1電動モータMTA/第2電動モータMTBを駆動する。第1電動モータMTA/第2電動モータMTBのロータの回転位置を検出するMRセンサ161(Magnetic Resistanceセンサ)は、制御基板160上に設けられ、検出したモータ回転角信号をマイクロコンピュータ162に入力する。このように、電源コネクタ1111やCANコネクタ1112などのコネクタ111、制御基板160、駆動基板130、および電源基板150は、第1電動モータMTAと第2電動モータMTBにそれぞれ対応する冗長系を有する。図1(A)に示すように、制御ユニット100は、センサコネクタ1113の中心と電動モータMTの回転軸を結ぶ中心線CTの上下で、第1制御システム100Aと第2制御システム100Bに分かれて配置されている。冗長系を有し部品点数が多い場合であってもこのように配置することで小型の電動パワーステアリング装置1を提供することができる。
【0018】
モータハウジング200は、電動モータMTと電気的に接続されるモータ接続端子210(第1端子)を備える。モータ接続端子210は、制御ユニット100の方へ延在して、基板と電気的に接続され、電動モータMTを駆動するための駆動電流を伝達する。なお、モータ接続端子210は、電動モータMTが3相なので3つの端子で一組をなし、図2(B)に示すように、第1制御システム100Aと第2制御システム100Bにそれぞれ対応する2組から構成される。
【0019】
制御ユニット100は、図3に示すように、電動モータMTを収容するモータハウジング200から遠い順に、コネクタアッシー110、ヒートシンクカバー120、駆動基板130(第1回路基板)、基板保持部材140、電源基板150(第2回路基板)、制御基板160を備える。
【0020】
コネクタアッシー110は、電動モータMTを収容するモータハウジング200から最も遠い位置に配置され、バッテリ、CAN、センサなどの外部からのケーブルと接続するための複数のコネクタ111が形成されている。コネクタ111には、外部からのケーブルに対応して、電源コネクタ1111、CANコネクタ1112、センサコネクタ1113がある。ヒートシンクカバー120は、上面の2/3程度の領域でコネクタアッシー110を搭載し、モータハウジング200に固定され、残りの上面や側面において複数の基板が発生させる熱を放熱する。
【0021】
駆動基板130は、電動モータMTを駆動するため、マイクロコンピュータ162の制御信号からPWM信号を生成するプリドライバ、PWM信号により3相の電動モータMTの第1巻線組/第2巻線組を駆動するスイッチング素子から構成されるブリッジ回路、ブリッジ回路の各相の電流を検出するシャント抵抗などを含む駆動電子部品131を搭載する。また、駆動基板130は、電源基板150と電気的に接続する電源駆動間端子132を有する。駆動基板130は、これらの駆動電子部品131を搭載する面を電源基板150(基板保持部材140)側に向けて、この面と反対側の面をヒートシンクカバー120側に向けて配置される。
【0022】
電源基板150は、駆動基板130に対する電源を生成するための電源電子部品151を搭載する。電源電子部品151は、電源コネクタ1111を介して得たバッテリからの電源を、電動モータMTや、制御基板160上のマイクロコンピュータ162に適する電源にするための電源部を構成する。電源基板150は、電源電子部品151を搭載する面を駆動基板130側に向けて、出力軸RTの軸方向において駆動基板130より電動モータMT側に配置される。なお、電源基板150の両面に電源電子部品151を実装されるようにしてもよい。
【0023】
制御基板160は、一方の面に電動モータMTの回転軸の回転を検出するための回転センサ161(MRセンサ161)を、他方の面に駆動電子部品131を制御するためのマイクロコンピュータ162(図3では図示せず)を搭載する。制御基板160は、回転センサ161を搭載する面を電動モータMT側に向けて、出力軸RTの軸方向において電源基板150より電動モータMT側に配置される。本実施例では、制御基板160はヒートシンクカバー120に形成された支柱にネジで固定される。
【0024】
基板保持部材140は、矩形部の4隅で駆動基板130と電源基板150を所定の距離で保持する保持部141(基板保持部)を有する。保持部141は、出力軸RTの軸方向において2枚の回路基板である駆動基板130と電源基板150を対向する状態で保持する。本実施例では、保持部141は、駆動基板130と電源基板150の2枚を保持するが、これに限定されず、たとえば、制御基板160も加えて保持してもよい。所定の距離とは、駆動電子部品131と電源電子部品151の中で最も高さの高い部品が対向する基板に接触しない程度の距離である。保持部141の一端は、電源基板150の電源電子部品151を搭載する面に固定され、その他端は、駆動基板130の駆動電子部品131を搭載する面に固定される。
【0025】
基板保持部材140は、モータ接続端子210と接続される保持部材接続端子143(第2端子)を有する。基板保持部材140は、制御ユニット100とモータハウジング200を組み立てるためにモータ接続端子210(第1端子)が接続される保持部材接続端子143を備える。これにより、モータ接続端子210を保持部材接続端子143に押し込む際に、駆動基板130と電源基板150を所定の距離に維持できる。また、基板保持部材140は、保持部材接続端子143を保持する端子保持部142を有する。詳しくは、後述する。また、基板保持部材140は、モータ接続端子210を保持部材接続端子143に押し込む際に、保持部材接続端子143を保護すると共にモータ接続端子210をガイドするためのプレスインカバー146を備える。
【0026】
上述した、コネクタアッシー110、ヒートシンクカバー120、駆動基板130、基板保持部材140、電源基板150、制御基板160が一体として組み立てられた制御ユニット100と、モータハウジング200は、図4に示すように、矢印の方向(出力軸RTの軸方向)に着脱される。両者が組み立てられる際、モータ接続端子210は、基板保持部材140に設けられた保持部材接続端子143に差し込まれ、両者が分解される際、モータ接続端子210は、保持部材接続端子143から抜かれる。このように、モータ接続端子210は、保持部材接続端子143に対して着脱方向に挿抜される。
【0027】
図5乃至図15を参照して、基板保持部材140が備える、保持部材接続端子143や、それを保持する端子保持部142、保持部材接続端子143を支持する支持溝147(荷重支持部)などについて説明する。図5は、モータハウジング200と制御ユニット100が組み立てられた状態の電動パワーステアリング装置1を、制御ユニット100の方から見た斜視図である。図6は、図5と同じ視点からみた場合の、モータハウジング200と制御ユニット100を別々に示した斜視図である。モータハウジング200の内部には、電動モータMTの方から、制御ユニット100に含まれる出力軸RTの軸方向に積層した複数の回路基板の方へ伸びている2組のモータ接続端子210が現れている。
【0028】
図7は、積層した複数の回路基板の側から制御ユニット100を見た場合の斜視図である。なお、本図では、制御基板160を省いて表示しているので、一番上には電源基板150が示されている。電源基板150は、保持部材接続端子143の一部が差し込まれて接合されるための接続用孔152と、駆動基板130に設けられた接続用端子133(図3に示す)の一部が差し込まれて接合されるための接続用端子孔153を有する。本図は、電源基板150の接続用孔152に、保持部材接続端子143の一部(図14に示される接合片1432)が差し込まれて接合されたところ、および、電源基板150の接続用端子孔153に、接続用端子133が差し込まれて接合されたところを示す。また、図7では、説明のため、モータ接続端子210が回路基板の方へ差し込まれた状態を示しており、モータ接続端子210が電源基板150に開けられた2組の3つの孔を貫通している。
【0029】
図8は、制御ユニット100を、基板保持部材140に駆動基板130と電源基板150が着脱方向(RT)に組み立てられたものと、コネクタアッシー110を搭載したヒートシンクカバー120とに分離した状態を示している。電源基板150の上面では、下方から保持部材接続端子143の一端の一部(図14に示される接合片1432)が接続用孔152を貫通し、ハンダ付けされている。さらに、電源基板150の上面では、下方から駆動基板130に実装されている接続用端子133が接続用端子孔153を貫通し、ハンダ付けされている。接続用孔152と接続用端子孔153は電源基板150に形成された配線パターンによって電気的に接続されている。これにより、駆動基板130のブリッジ回路は、保持部材接続端子143とモータ接続端子210を介して電動モータMTと電気的に接続される。なお、図8においても、制御基板160を省いて表示し、モータ接続端子210が回路基板に差し込まれた状態を示している。
【0030】
図9は、基板保持部材140に駆動基板130と電源基板150が着脱方向に組み立てられたものにモータ接続端子210が差し込まれた状態を示している。駆動基板130、基板保持部材140、電源基板150が組み立てられた状態では、本図(A)のように保持部材接続端子143を保護するプレスインカバー146が取り付けられる。一方、本図(B)は、プレスインカバー146を取りはずした状態を示しており、モータ接続端子210が基板保持部材140の側面に設けられた保持部材接続端子143に差し込まれている状態を示している。
【0031】
図10は、モータ接続端子210が差し込まれていない状態であって、駆動基板130、基板保持部材140、電源基板150が着脱方向に積層して組み立てられた状態を示してしている。駆動基板130は、基板保持部材140の一端で保持され、電源基板150は、基板保持部材140の他端で保持されている。この状態で、ヒートシンクカバー120に固定される。本実施例では、駆動基板130がヒートシンクカバー120にネジで固定される。なお、駆動基板130を基板保持部材140に固定した後に、駆動基板130をヒートシンクカバー120にネジで固定し、さらにその後、基板保持部材140に電源基板150を固定するようにしてもよい。
【0032】
図11は、駆動基板130、基板保持部材140、電源基板150が着脱方向に積層して組み立てられた状態から、駆動基板130と電源基板150を取り除いた基板保持部材140のみを示している。基板保持部材140は、保持部141(基板保持部)と、保持部材接続端子143(第2端子)と、プレスインカバー146を備える。保持部141は、その一端で電源基板150に固定され、他端で駆動基板130に固定され、両基板の間で、着脱方向において駆動基板130と電源基板150を対向する状態で保持する。プレスインカバー146は、保持部材接続端子143を保護するように覆い、上面にモータ接続端子210をガイドするように3つの孔(1つ当たり)が設けられている。保持部材接続端子143は、1つ当たりの端子から2つに分岐した一端(接合片1432)を有しており、モータ接続端子210と接続される部分はプレスインカバー146に覆われている。
【0033】
図12は、プレスインカバー146を取り除いた基板保持部材140を示している。本図(A)は、保持部材接続端子143が基板保持部材140に取り付けられている状態を示し、本図(B)は、保持部材接続端子143が基板保持部材140から取り外されている状態を示している。基板保持部材140は、モータ接続端子210に対応する位置の側面に、着脱方向と直交する方向に複数配置するように端子保持部142を有し、端子保持部142は、保持部材接続端子143の4面(底面、背面、両側面)を囲い、保持部材接続端子143を収容するように設けられている。また、端子保持部142は、着脱方向に積層した駆動基板130と電源基板150の2枚の回路基板の間に位置するように設けられている。
【0034】
図13は、保持部材接続端子143を端子保持部142に取り付ける(または取り外す)途中の状態を示している。本図(B)は、1つの保持部材接続端子143と1つの端子保持部142を拡大した図である。端子保持部142では、保持部材接続端子143の両側(両側面)を支持するための支持溝147(荷重支持部)が形成されている。支持溝147は、保持部材接続端子143の一部(挿入片1431)を挿入できるように形成されており、保持部材接続端子143を支持溝147に滑らせて挿入することで基板保持部材140が組み立てられる。支持溝147は、基板保持部材140の側面(外周)に着脱方向と直交する方向に配置された端子保持部142において、着脱方向および着脱方向と直交する方向の両方に直交する方向に形成されている。これにより、保持部材接続端子143は端子保持部142に効率よく支持される。
【0035】
保持部材接続端子143は、図14に示すように、支持溝147に挿入され支持される挿入片1431と、電源基板150の接続用孔152に嵌められて接合される接合片1432と、モータ接続端子210を両側から挟むように接触する屈曲部1433を有する。屈曲部1433は、モータ接続端子210と確実に接触するために両側から強い力で挟まれるように構成されている。したがって、モータ接続端子210を着脱(挿抜)する際、モータ接続端子210と保持部材接続端子143の屈曲部1433との間には図15の矢印に示すような着脱方向に大きな摩擦力を生ずる。挿入片1431は、そのような摩擦力に由来する荷重に対抗できるよう強固に作製されている。支持溝147は、同様に、モータ接続端子210を差し込む際および抜く際の両方に生じる摩擦力に由来する挿入片1431からの荷重を十分に支持するように作製されている。
【0036】
このように、挿入片1431は、摩擦力を発生させる屈曲部1433からの全荷重を支持溝147により支持され、強固に固定されている。挿入片1431は強固に固定されているので、電源基板150の接続用孔152に嵌められて接合される接合片1432は、移動することはないし、屈曲部1433からの荷重を受けることもない。したがって、モータ接続端子210が保持部材接続端子143に対して挿抜されるときに生じる着脱方向の荷重を受ける支持溝147が回路基板以外の基板保持部材140に形成されることで、着脱時に生ずる接合片1432と電源基板150の接続用孔152との接合部に付加される荷重を低減し、高い接続信頼性を有する着脱自在な電動モータの電動パワーステアリング装置1を提供することができる。
【0037】
また、保持部材接続端子143の一端に位置する接合片1432は電源基板150に接合されているが、この電源基板150を支持する基板保持部材140に設けられた支持溝147が保持部材接続端子143にかかる荷重を支持する。これによれば、組み立て時に生ずる保持部材接続端子143の接合片1432と電源基板150の接合部(ハンダ付け部)に付加される荷重を低減することができる。仮に、モータ接続端子210と接続される端子を電源基板150に設けると、モータ接続端子210の着脱時に発生する荷重が直接端子と電源基板150の接合部に付加されてしまうからである。
【0038】
<第二実施例>
図16乃至図18を参照し、本実施例における電動パワーステアリング装置1Aを説明する。重複記載を避けるため、上記実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し説明を省略し、上記実施例と異なる点を中心に説明する。電動パワーステアリング装置1Aは、電動モータMTを収容するモータハウジング200と、電動モータMTを制御するための電子部品を実装する複数の回路基板を有し、モータハウジング200と着脱自在に取り付けられる制御ユニット100Cとを備える。制御ユニット100Cは、モータハウジング200から遠い順に、コネクタアッシー110、ヒートシンクカバー120、駆動基板130A、基板保持部材140A、電源基板150A、制御基板160を備える。
【0039】
駆動基板130Aは、図17(C)に示すように、ブリッジ回路などの駆動電子部品131と、電動モータMT側に延在し、電源基板150Aと電気的に接続する電源駆動間端子132と、電動モータMT側に延在し、保持部材接続端子143Aと電気的に接続するための接続用端子133Aとを有する。駆動基板130Aは、駆動電子部品131、電源駆動間端子132、および接続用端子133Aを搭載する面を基板保持部材140A側に向けて配置される。
【0040】
電源基板150Aは、図18(B)に示すように、駆動基板130Aに対する電源を生成するための電源電子部品151(基板裏面に実装のため図示せず)と、保持部材接続端子143Aの一部(接合片1432A)と接続用端子133Aの先端が接合された部分と電源基板150との干渉を避けるために設けられた逃げ孔154と、を有する。保持部材接続端子143Aの接合片1432Aと接続用端子133Aの先端は、溶接やはんだ付けにより接合されるので、保持部材接続端子143Aと接続用端子133Aは電気的に接続される。電源基板150Aは、電源電子部品151を搭載する面を駆動基板130A側に向けて、出力軸RTの軸方向において駆動基板130Aより電動モータMT側に配置される。駆動基板130Aは、基板保持部材140Aの一端で保持され、電源基板150Aは、基板保持部材140Aの他端で保持されている。
【0041】
基板保持部材140Aは、図17(A)などに示すように、駆動基板130Aと電源基板150Aを所定の距離で保持する保持部141と、モータ接続端子210と接続される保持部材接続端子143Aと、保持部材接続端子143Aを保持する端子保持部142と、保持部材接続端子143Aを保護するためのプレスインカバー146とを有する。保持部材接続端子143Aの一端(接合片1432A)は、直接接続用端子133Aと電気的に接続される。このように、保持部材接続端子143Aは駆動基板130Aから延在する接続用端子133Aに電気的に接続されているが、駆動基板130Aを支持する基板保持部材140Aで保持部材接続端子143Aにかかる荷重を支持することで、組み立て時に生ずる保持部材接続端子143Aと接続用端子133Aとの接合部に付加される荷重を低減することができる。
【0042】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0043】
たとえば、上記実施例の電動パワーステアリング装置1では、電動モータおよび制御ユニットはそれぞれ2系統に冗長化されていたが、冗長化されていなくともよいし、冗長化の数は3系統以上であってもよい。また、上記実施例の制御ユニットは、駆動基板、電源基板、制御基板の3枚の回路基板を備える構成であるが、たとえば回路基板に実装する部品の集積度が上がることで2枚の回路基板構成とすることも可能である。本願発明は、基板保持部材を挟むように少なくとも2枚の回路基板を備えればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 電動パワーステアリング制御装置(モータ制御装置)
10A/B 第1システム/第2システム
100(100A/B) 制御ユニット(第1制御システム/第2制御システム)
110 コネクタアッシー
111 コネクタ
112 電源用端子
113 制御用端子
120 ヒートシンクカバー
130 駆動基板
131 駆動電子部品
132 電源駆動間端子
133 接続用端子
140 基板保持部材
141 保持部(基板保持部)
142 端子保持部
143 保持部材接続端子(第2端子)
1431 挿入片
1432 接合片
1433 屈曲部
144 保持部材固定部
145 ガイド孔
146 プレスインカバー
147 支持溝(荷重支持部)
150 電源基板
151 電源電子部品
152 接続用孔
153 接続用端子孔
154 逃げ孔
160 制御基板
161 回転センサ(MRセンサ)
162 制御部(マイクロコンピュータ)
200 モータハウジング
210 モータ接続端子(第1端子)
MTA 第1電動モータ
MTB 第2電動モータ
RT 電動モータの出力軸
図1
図2
図3
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