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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】吹出口装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/06 20060101AFI20240122BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240122BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20240122BHJP
   F24F 13/068 20060101ALI20240122BHJP
   F24F 1/0018 20190101ALI20240122BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20240122BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F13/02 D
F24F13/10 Z
F24F13/068 A
F24F13/06 D
F24F1/0018
F24F3/00 Z
F24F3/044
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020046305
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148331
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】左 勝旭
(72)【発明者】
【氏名】村下 和紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 健人
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】重松 拓也
(72)【発明者】
【氏名】占部 寿雄
(72)【発明者】
【氏名】関 健太郎
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3049595(JP,U)
【文献】特開2002-005499(JP,A)
【文献】実開昭48-019439(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0275653(US,A1)
【文献】特開2009-036400(JP,A)
【文献】特開2005-180747(JP,A)
【文献】特開2004-232972(JP,A)
【文献】特開平10-325594(JP,A)
【文献】特開平10-141751(JP,A)
【文献】特開平01-198242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0195140(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0204985(US,A1)
【文献】登録実用新案第3224670(JP,U)
【文献】特開2020-041756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/06
F24F 13/02
F24F 13/10
F24F 13/068
F24F 1/0018
F24F 3/00
F24F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機から供給される空調空気を搬送するダクトと接続され、空調空気を流入させる流入口と、前記流入口から流入した空調空気が流動する流路と、前記流路を流動してきた空調空気を空調対象空間に向かって流出させる流出口と、を有する筒状のケーシングと、
前記ケーシング内に前記ケーシングより小径の中筒を同心円状に配置することにより前記ケーシングと前記中筒との間に形成された外流路、並びに、前記中筒内に形成された内流路と、
前記ケーシングの流出口側に設けられたノズルと、を備え、
前記外流路を開閉するため前記ケーシング内に前記ケーシングと同心円状に設けられた2枚の半ドーナツ形状の羽根と、
前記羽根をそれぞれ回動可能に支持するため前記ケーシングの直径方向に沿って設けられた2本の支軸と、
前記支軸を正転・逆転させるため前記ケーシング外に設けられた駆動機構と、を備え
前記支軸を中心とする前記羽根の回転範囲は水平状態から90度未満とし、前記中筒の前記流入口側の端部は前記羽根が当接したときに前記羽根が水平状態を基準に90度未満の傾斜姿勢を維持可能となるように前記中筒の流入口側の端部が傾斜状態をなすことを特徴とする吹出口装置。
【請求項2】
前記羽根が前記中筒の流入口側の端部に当接した状態を維持可能である請求項1記載の吹出口装置。
【請求項3】
前記羽根の支軸は水平かつ互いに平行をなすように前記ケーシング内に配置された請求項1または2記載の吹出口装置。
【請求項4】
前記ノズルに風向調整機構を設けた請求項1~の何れかの項に記載の吹出口装置。
【請求項5】
前記ノズルに結露防止手段を設けた請求項1~の何れかの項に記載の吹出口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大空間空調設備の一部として設置され、空調機から供給される空調空気を空調対象空間に向かって吹き出す機能を有する吹出口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アリーナと呼ばれる室内競技用の競技場などにおける空調設備、所謂、大空間空調設備における設計方法としては、空調機から供給される風量が設計風量(100%)であるときの気流伝達分布の検討を行い、気流到達距離を満足できる製品及びサイズにて設計を行うのが一般的である。ただし、この場合、空調機から供給される風量が変動(例えば、100%から50%に減少)すると、これに応じて気流到達距離も変動し、気流到達分布が満足できず、快適な空調を実現できない状態となることがある。
【0003】
一方、空調機から供給される空調空気を搬送するダクトと接続され、空調対象空間に向かって空調空気を吹き出す機能を有する吹出口装置については、従来、様々な構造を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「空気吹出装置」がある。また、発明の属する技術分野は若干異なるが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献2に記載された「防火ダンパー装置」がある。
【0004】
特許文献1に記載された空気吹出装置は、空気流路及び吹出ノズルを有する筐体と、前記空気流路を流れる空気の量を調整可能な流量調整機構と、を備えた空気吹出装置であって、吹出ノズルは、流路面積を一定に保ちながら上流側の端部から下流方向に伸びる入口部、及び、入口部から下流方向に伸びながら下流側の端部に近づくほど流路面積が大きくなる出口部、を有し、空気流路は、吹出ノズルの上流側の端部に接続する主流路及び副流路であって、主流路が、前記入口部が画成する流路の中央部に開口し、副流路が、主流路に隣接し且つ前記入口部が画成する流路の外周部に開口する、主流路及び副流路を含み、流量調整機構は、主流路を流れる空気の量と、副流路を流れる空気の量と、を互いに独立して調整可能であることを特徴とするものである。
【0005】
特許文献2に記載されたダンパー装置は、外管内に所定間隙を保って内管を挿通し、内外に通風路を形成すると共に、前記内外通風路を自動閉塞するようにしたダンパー装置において、外管の一部に弁匣を介装し、該弁匣と内管との間の外通風路と、外通風路近辺における内通風路との遮断手段を設置し、該遮断手段は感熱手段の出力により作動するように構成したことを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-33441号公報
【文献】特開2000-14819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された「空気吹出装置」は、空気吹出装置としての機能(流れ方向及び流量を調整する機能)を損なうことなく小型化することが可能である、という長所を有しているが、大空間空調設備には不向きであり、空調機から供給される空調空気の風量が減少すると風速が減少し、所望の到達距離を確保することができない。
【0008】
また、特許文献2に記載された「防火ダンパー装置」は、内管と外管よりなる内外二重管構造をなす内外通風路を、それぞれ独立して、且つ、同時に自動遮断する機能を有しているが、空調機から供給される空調空気の風量が減少したときに、所望の到達距離を確保する機能は有していない。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、大空間空調設備において、収容人員の増減などにより空調負荷が変動して供給風量が変動することがあっても、所望の地点まで調和空気流を到達させて空調負荷に応じた空調を行うことができる吹出口装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る吹出口装置は、
空調機から供給される空調空気を搬送するダクトと接続され、空調空気を流入させる流入口と、前記流入口から流入した空調空気が流動する流路と、前記流路を流動してきた空調空気を空調対象空間に向かって流出させる流出口と、を有する筒状のケーシングと、
前記ケーシング内に前記ケーシングより小径の中筒を同心円状に配置することにより前記ケーシングと前記中筒との間に形成された外流路、並びに、前記中筒内に形成された内流路と、
前記ケーシングの流出口側に設けられたノズルと、を備え、
前記外流路を開閉するため前記ケーシング内に前記ケーシングと同心円状に設けられた2枚の半ドーナツ形状の羽根と、
前記羽根をそれぞれ回動可能に支持するため前記ケーシングの直径方向に沿って設けられた2本の支軸と、
前記支軸を正転・逆転させるため前記ケーシング外に設けられた駆動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成とすれば、2枚の半ドーナツ形状の羽根を駆動機構で正転・逆転させ、中筒とケーシングとの間に形成された外流路を開閉することにより、定格風量時は外流路及び内流路を空調空気が通過するように設定し、風量減少時は内流路のみを空調空気が流通するように設定することが可能となるため、流入口に供給される空調空気の風量が減少しても、流出口から空調対象空間へ流出する空調空気の風速が減少せず、所望の到達距離を確保することができる。
【0012】
従って、空調対象空間内の空調負荷の増減に基づいて、ケーシング内を流動する空調空気の風量が増減される状況の下で、風量が減少した場合でも定格風量時と同等の到達距離を得ることができ、所望の地点まで空調空気を到達させることができるので、対象空間の空調負荷が変化しても快適性を損なうことがない。また、空調負荷が減少した場合は必要最小限の空調空気で空調可能となるので、省エネを図ることができる。
【0013】
前記吹出口装置においては、前記羽根が前記中筒の流入口側の端部に当接した状態を維持可能であるようにすることができる。
【0014】
このような構成とすれば、中筒とケーシングとの間の外流路の閉鎖状態を維持することが可能となるので、羽根を閉鎖したときの外流路への空調空気の流動を止め、空調空気を確実に中筒内(内流路)へ誘導し、内流路のみに空調空気を流動させることができる。
【0015】
前記吹出口装置においては、前記支軸を中心とする前記羽根の回転範囲は水平状態から90度未満とし、前記中筒の前記流入口側の端部は前記羽根が当接したときに前記羽根が水平状態を基準に90度未満の傾斜姿勢を維持可能となるように前記中筒の流入口側の端部が傾斜状態をなすようにすることができる。
【0016】
このような構成とすれば、羽根閉鎖時に内流路の中心軸に対して羽根が傾斜姿勢を維持可能となるため、中筒内(内流路)へ空調空気を誘導し易くなり、羽根閉鎖時に90度の姿勢を維持する場合と比較して、圧力損失を低減することができる。
【0017】
前記吹出口装置においては、前記羽根の支軸は水平かつ互いに平行をなすように前記ケーシング内に配置することができる。
【0018】
このような構成とすれば、2本の支軸の存在に起因して、ケーシング内を流動する空調空気流中に発生する乱れを最小限に抑えることができ、空調対象空間へ供給される空調空気流の乱れを防止し、所望の位置まで確実に空調空気流を到達させることができる。
【0019】
前記吹出口装置においては、前記ノズルに風向調整機構を設けることができる。
【0020】
このような構成とすれば、空調対象空間に向かって供給される空調空気の風向を調節することが可能となるため、空調対象空間の状況に応じて所望の地点に向けて空調空気を到達させることができる。
【0021】
前記吹出口装置においては、前記ノズルに結露防止手段を設けることができる。
【0022】
このような構成とすれば、特に冷房時、空調空気によって冷却されたノズル表面に発生する結露を防止することができる。結露防止手段としては、例えば、ノズル表面に結露防止部材を設けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、大空間空調設備において、収容人員の増減などにより空調負荷が変動して供給風量が変動することがあっても、所望の地点まで調和空気流を到達させて空調負荷に応じた空調を行うことができる吹出口装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態である吹出口装置が羽根全開状態にあるときの正面斜め上方から見た一部省略斜視図である。
図2図1に示す吹出口装置を空調対象領域の壁体に取り付けた状態を示す一部省略右側面図である。
図3図1に示す吹出口装置の一部省略正面図である。
図4図3中のB-B線における一部省略断面図である。
図5図4の一部省略拡大図である。
図6図1に示す吹出口装置の一部省略背面図である。
図7図1に示す吹出口装置を背面斜め上方から見た一部省略斜視図である。
図8図1に示す吹出口装置を背面斜め下方から見た一部省略斜視図である。
図9図1に示す吹出口装置が羽根全閉状態にあるときの正面斜め上方から見た一部省略斜視図である。
図10図9に示す吹出口装置の一部省略正面図である。
図11図10中のC-C線における一部省略断面図である。
図12図11の一部省略拡大図である。
図13図9に示す吹出口装置の一部省略背面図である。
図14図9に示す吹出口装置を背面斜め上方から見た一部省略斜視図である。
図15図9に示す吹出口装置を背面斜め下方から見た一部省略斜視図である。
図16図1に示す吹出口装置を使用した気流到達試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図16に基づいて、本発明の実施形態である吹出口装置100について説明する。
【0026】
初めに、図1図8に基づいて、後述する羽根18,19が全開状態にあるときの吹出口装置100について説明する。吹出口装置100の使い方は限定しないが、例えば、図2に示すように、空調対象空間(図示せず)の壁体1に設けられた開口部2に取り付けて使用することができる。
【0027】
図1図4に示すように、吹出口装置100は、流入口11並びに流出口13を有する円筒状のケーシング10と、ケーシング10内に同心円状に配置された中筒15と、ノズル40と、2枚の半ドーナツ形状の羽根18,19と、2本の支軸20,21と、駆動機構22と、を備えている。
【0028】
ケーシング10の流入口11は、空調機(図示せず)から供給される空調空気を搬送するダクト3に接続され、ダクト3内を流動してきた空調空気は流入口11からケーシング10内に流入する。ケーシング10内には、流入口11から流入した空調空気が軸心10cに沿って流出口13に向かって流動する流路12が設けられ、流路12を流動してきた空調空気を空調対象空間に向かって矢線A方向に流出させる流出口13が流入口11の180度反対側に設けられている。ケーシング10の流出口13にはノズル40が設けられている。
【0029】
ケーシング10内には、ケーシング10より小径で軸心方向10cの長さも短い中筒15を同心円状に配置することにより、ケーシング10と中筒15との間に外流路16が形成され、中筒15内には内流路17が形成されている。
【0030】
ケーシング10内には、中筒15の周りを包囲するように形成された外流路16を開閉するため、2枚の半ドーナツ形状の羽根18,19がケーシング10と同心円状に設けられ、羽根18,19をそれぞれ回動可能に支持するためケーシング10を横断する方向(略直径方向)に沿って2本の支軸20,21が設けられている。これらの支軸20,21を正転・逆転させるための駆動機構22がケーシング10の外部(右側面の背面寄りの部分)に設けられている。
【0031】
図1図2に示すように、駆動機構22の筐体22aの表面には、羽根18,19の開度を示す指針22bが設けられている。本実施形態では、図2において、指針22bが左側に傾斜しているときは羽根18,19が全開状態(水平状態)であることを示し、右側に傾斜しているときは羽根18,19が全閉状態(傾斜状態)であることを示している。
【0032】
図4図5に示すように、中筒15の流入口11側の端部15a,15bは、何れもケーシング10内において流入口11より流出口13寄りの部分に位置している。支軸20,21より上方に位置する中筒15の端部15aは、中筒15の最上部15dから軸心10cに近づくにつれて流出口13に近づくように傾斜状態をなしており、支軸20,21より下方に位置する中筒15の端部15bは、中筒15の最下部15eから軸心10cに近づくにつれて流出口13に近づくように傾斜状態をなしている。即ち、中筒15の流入口11側の端部15a,15bは流出口13に近づくにつれて互いに接近するような傾斜状態をなしている。
【0033】
中筒15の端部15aは、端部15bよりも流出口13寄りに位置している。中筒15の流出口13側の部分において、端部15aと端部15bとが交差する部分には端部15a,15bよりも流出口13側に凹んだ切欠部15cが形成されている。
【0034】
図4図5に示すように、支軸20,21は軸心10c方向に所定距離を隔てて水平かつ互いに平行をなすように配置されている。支軸20は流出口13寄りに配置され、支軸21は流入口11寄りに配置されている。羽根18,19が開放状態にあるとき、羽根18の基端部18b側は支軸20の上方に位置するように固着され、羽根19の基端部19b側は支軸21の下方に位置するように固着されている。羽根18,19は軸心10cを挟んで互いに平行をなすように配置され、羽根18,19の基端部18b,19bは切欠部15cの領域内に位置している。
【0035】
ケーシング10の流出口13に設けられたノズル40の先端開口部(図1中の矢線A方向の先端に位置する部分)はベルマウス形状をしており、ノズル40の内部には、円筒状の中筒41が軸心10cと同軸上に配置されている。軸心10cと直交する方向に設けられた支軸42を中心に傾動可能に中筒41を配置することにより、風向調整機構が形成されている。支軸42を中心に中筒41の傾斜角度を変更することにより、ノズル40から流出する空調空気の風向を調整することができる。また、ノズル40の表面には、結露防止手段として、結露防止部材44が設けられている。結露防止部材44は限定しないが、例えば、発泡合成樹脂からなる断熱材などが好適である。結露防止部材44として断熱材を使用した場合、適宜、断熱材の表面にノズル40の表面と同一の仕上げ(例えば、塗装など)を施したカバー45を設けることもできる。
【0036】
図5に示すように、支軸20,21を中心とする羽根18,19の回転範囲Rは水平状態から90度未満(本実施形態では60度)としている。後述する図11図12に示すように、羽根18,19は中筒15の流入口11側の端部15a,15bに当接した状態(羽根18,19が水平状態を基準に90度未満(本実施形態では60度)に傾斜した状態)を維持することができる。
【0037】
2枚の半ドーナツ形状の羽根18,19は、中筒15の流入口11側の端部15a,15bに当接することにより、中筒15の周りの外流路16を閉鎖し、中筒15内の内流路17に空調空気を誘導する機能を有している。また、羽根18,19が、中筒15の流入口11側の端部15a,15bに90度未満の傾斜角度で当接したとき、その状態を維持するため、羽根18,19の内周縁18c,19c並びに外周縁18d,19dの平面視形状はそれぞれ半楕円形状をなしている(図7図8参照)。
【0038】
また、図14図15に示すように、羽根18,19の内周縁18c,19c並びに外周縁18d,19dの平面視形状をそれぞれ半楕円形状としたことにより、図12に示すように、羽根18,19が、中筒15の流入口11側の端部15a,15bに90度未満の傾斜角度で当接したとき、図13に示すように、羽根18,19は、中筒15の端部15a,15bとケーシング10の内面との間を隙間なく閉鎖することができる。
【0039】
図1図8に示すように、吹出口装置100の羽根18,19が全開状態(水平かつ平行状態)にあるとき、ダクト3から流入口11を経てケーシング10内に流入した空調空気は、ケーシング10と中筒15との間の外流路16内並びに中筒15の内部の内流路17内を流出口13に向かって流動していき、ノズル40を通過して、空調対象空間へ流出する。
【0040】
この場合、外流路16内を流動してきた空調空気はノズル40のケーシング43と中筒41との間を通過して空調対象空間へ流出し、内流路17内を流動してきた空調空気は中筒15の先端開口部15fから流出してノズル40の中筒41内へ流入し、中筒41の先端開口部41aから空調対象空間へ流出する。
【0041】
次に、図9図15に基づいて、羽根18,19が全閉状態にあるときの吹出口装置100について説明する。羽根18,19が全閉状態にあるときは、図11図12に示すように、羽根18,19が中筒15の流入口11側の端部15a,15bに当接した状態に維持され、これにより、ケーシング10と中筒15との間の外流路16は、流入口11側において閉鎖された状態に保たれる。
【0042】
従って、ダクト3から流入口11を経てケーシング10内に流入した空調空気は、中筒15の内部の内流路17へ流入し、内流路17内を流出口13に向かって流動していき、中筒15の先端開口部15fから流出してノズル40の中筒41内へ流入し、中筒41の先端開口部41aから空調対象空間へ流出する。
【0043】
このように、吹出口装置100においては、2枚の半ドーナツ形状の羽根18,19を駆動機構22で正転・逆転させ、中筒15とケーシング10との間に形成された外流路16を開閉することができるので、定格風量時は外流路16及び内流路17を空調空気が通過するように設定し、風量減少時は内流路17のみを空調空気が流通するように設定することができる。このため、ダクト3を経由して流入口11に供給される空調空気の風量が減少しても、ノズル40から空調対象空間へ流出する空調空気の風速が減少せず、所望の到達距離を確保することができる。
【0044】
従って、空調対象空間内の空調負荷(在員数)の増減に基づいて、ケーシング10内を流動する空調空気の風量が増減される状況の下で、ダクト3から流入口11に供給される空調空気の風量が減少した場合でも、定格風量時と同等の到達距離を得ることができ、所望の地点まで空調空気を到達させることができる。よって、空調対象空間の在員数が変化しても快適性を損なうことがない。また、空調負荷が減少した場合は必要最小限の空調空気で空調可能となるので、省エネを図ることができる。
【0045】
吹出口装置100においては、図11図12に示すように、羽根18,19が中筒15の流入口11側の端部15a,15bに当接した状態を維持可能である。これにより、中筒15とケーシング10との間の外流路16の閉鎖状態を維持することができるので、羽根18,19を閉鎖したときの外流路16への空調空気の漏れを防止することができ、羽根18,19を閉鎖した状態においても、空調空気を確実に中筒15内(内流路17内)へ誘導することができる。
【0046】
吹出口装置100においては、図5に示すように、支軸20,21を中心とする羽根18,19の回転範囲はそれぞれ水平状態から90度未満(60度)とし、中筒15の流入口11側の端部15a,15bは羽根18,19が当接したときに羽根18,19が水平状態を基準に90度未満(60度)の傾斜姿勢を維持可能である。なお、吹出口装置100を使用する場合、羽根18,19は水平状態(全開)または90度未満(60度)の傾斜姿勢(閉鎖(全閉))の何れか一方に設定するのが原則であるが、羽根18,19自体は、水平状態を基準に90度未満(60度)の範囲内において任意の傾斜姿勢(開度)に設定することができる。
【0047】
このような構成とすれば、羽根18,19を閉鎖したときに、内流路17の中心軸(軸心10c)に対して羽根18,19が傾斜姿勢を維持であるため、中筒15内(内流路17内)へ空調空気を誘導し易くなり、羽根18,19の閉鎖時に90度の起立姿勢を維持する場合と比較して、圧力損失を低減することができる。
【0048】
吹出口装置100においては、図3図6に示すように、羽根18,19の支軸20,21は水平かつ互いに平行をなすようにケーシング10内に配置されているため、2本の支軸20,21の存在に起因して、ケーシング10内を流動する空調空気流中に発生する乱れを最小限に抑えることができ、空調対象空間へ供給される空調空気流の乱れを防止し、所望の位置まで確実に空調空気流を到達させることができる。
【0049】
吹出口装置100においては、ノズル40のケーシング43内に支軸42を中心に傾動可能な中筒41を配置することにより、風向調整機構を形成しているので、空調対象空間に向かって供給される空調空気の風向を調節することが可能であり、空調対象空間の状況に応じて所望の地点に向けて空調空気を到達させることができる。
【0050】
吹出口装置100においては、ノズル40の結露防止手段として、ノズル40の表面に結露防止部材を設けているので、特に冷房時、空調空気によって冷却されたノズル40の表面に発生する結露を防止することができる。
【0051】
次に、図16(a)~(c)に基づいて、吹出口装置100を使用した気流到達試験結果について説明する。図16(a)~(c)は、地面から所定の高さに配置された吹出口装置100から、風量(m3/h)並びに羽根18,19の開度を変えて水平方向に調和空気を吹き出したときの調和空気の到達状態をそれぞれ放物線状の曲線で模式的に示している。
【0052】
図16(a)~(c)において、縦軸は、吹出口装置100の設置高さ(m)を示しており、横軸は、吹出口装置100の設置場所から水平方向に離れた距離(m)を示している。本試験においては、吹出口装置100の設置高さを5(m)とし、吹出口装置100から水平方向に10(m)離れた位置における風速(m/s)を測定した。また、居住域(床面(地面)から高さ1.5mまでの空間)に到達する気流の風速(m/s)についても測定した。なお、吹出口装置100のダクトサイズ(ノズルサイズ)φは300(mm)であり、中筒15のサイズφは220(mm)である。
【0053】
図16(a)は、吹出口装置100に供給される調和空気の風量を「1930(m3/h):100%」とし、羽根18,19の開度を「全開」としたときの調和空気の到達状態を示している。図16(a)を見ると、吹出口装置100から水平に10(m)離れ、かつ地面から高さ3.6(m)の位置における気流中心部の風速が1.25(m/s)となっていることが分かる。また、吹出口装置100から水平に15(m)程度離れ、且つ、地面から高さ1.5(m)の位置における気流中心部の風速が0.86(m/s)であり、0.5(m/s)以上の風速が確保されていることが分かる。
【0054】
図16(b)は、吹出口装置100に供給される調和空気の風量を「1158(m3/h):60%」とし、羽根18,19の開度を「全開」としたときの調和空気の到達状態を示している。図16(b)を見ると、吹出口装置100から水平に10(m)離れ、かつ地面から高さ1.5(m)の位置における気流中心部の風速が0.65(m/s)となっており、0.5(m/s)以上の風速は確保されているが、居住域における到達距離は10(m)という値に留まり、前述した図16(a)の場合の測定値には及んでいないことが分かる。
【0055】
即ち、図16(a)の場合に比べ、吹出口装置100に供給される調和空気の風量が60%まで減少すると、吹出口装置100から水平に10(m)離れた位置における風速も52%まで減少することが分かる。このことは、吹出口装置100に供給される調和空気の風量が減少すると、調和空気の到達距離も減少することを示している。
【0056】
図16(c)は、吹出口装置100に供給される調和空気の風量を「1158(m3/h):60%」とし、羽根18,19を「閉鎖(全閉)」したときの調和空気の到達状態を示している。図16(c)を見ると、吹出口装置100から水平に10(m)離れ、かつ地面から高さ3.6(m)の位置における気流中心部の風速が1.05(m/s)となり、吹出口装置100から水平に15(m)程度離れ、かつ地面から高さ1.5(m)の位置における気流中心部の風速が0.73(m/s)となり、0.5(m/s)以上の風速は確保されていることが分かる。
【0057】
即ち、図16(a)の場合に比べ、吹出口装置100に供給される調和空気の風量が60%まで減少したときも、羽根18,19を「閉鎖」すれば、吹出口装置100から水平に10(m)離れた位置における風速は84%程度しか減少しないことが分かる。このことは、羽根18,19を「閉鎖」すれば、吹出口装置100に供給される調和空気の風量が減少したときも、図16(a)の場合と同等の調和空気の到達距離を確保することができることを示している。
【0058】
図16(a)~(c)に示す気流到達試験結果を総合すると、吹出口装置100を大空間空調設備の一部として使用すれば、収容人員の増減などにより空調負荷が変動することがあっても、空調空気流を所望の地点まで到達させ、空調負荷に応じた空調を行うことができることが分かる。
【0059】
なお、図1図16に基づいて説明した吹出口装置100は、本発明に係る吹出口装置の一例を示すものであり、本発明に係る吹出口装置100は、前述した吹出口装置100に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る吹出口装置は、大規模な展示場や運動競技施設などにおける大空間空調設備の一部として、土木建設業などの産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 壁体
2 開口部
3 ダクト
10,43 ケーシング
10c 軸心
11 流入口
12 流路
13 流出口
15,41 中筒
15a,15b 端部
15c 切欠部
15d 最上部
15e 最下部
15f,41a 先端開口部
16 外流路
17 内流路
18,19 羽根
18a,19a 先端部
18b,18b 基端部
18c,19c 内周縁
18d,19d 外周縁
20,21,42 支軸
22 駆動機構
22a 筐体
22b 指針
40 ノズル
44 結露防止部材
45 カバー
100 吹出口装置
R 回転範囲
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図16