(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】現像ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240122BHJP
G03G 21/18 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G21/18 114
(21)【出願番号】P 2020052569
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019070139
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】杉山 遼
(72)【発明者】
【氏名】小川 祥寛
(72)【発明者】
【氏名】宇野 真史
(72)【発明者】
【氏名】上杉 知也
(72)【発明者】
【氏名】松永 賢太
(72)【発明者】
【氏名】盛合 渉
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-112150(JP,A)
【文献】特開2009-237042(JP,A)
【文献】特開2005-258201(JP,A)
【文献】特開2008-292830(JP,A)
【文献】特開2009-109957(JP,A)
【文献】特開2012-215647(JP,A)
【文献】特開2012-181224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、該導電性基体上の導電性弾性層と、該導電性弾性層上の表面層と、を有する現像ローラであって、
該表面層はポリウレタンをバインダーとして含むマトリックスと、該マトリックスに分散される樹脂粒子とを含み、
該表面層の厚み方向の断面において測定される、該表面層の外表面から深さ1.0μm以上の領域における該マトリックスの弾性率E
bは10MPa以上、100MPa以下であり、
該表面層の外表面は、
第1の凸部と、
該外表面の該第1の凸部が存在しない領域に存在し、その高さが、該第1の凸部の高さよりも5.0μm以上低い第2の凸部と、を有し、
該第1の凸部は、第1の樹脂粒子に由来し、
該第2の凸部は、第2の樹脂粒子に由来し、
該第1の樹脂粒子はポリウレタンを含み、かつ、該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第1の樹脂粒子の弾性率E
1は、100MPa以上、2000MPa以下であり、
該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第2の樹脂粒子の弾性率E
2
は、2MPa以上、50MPa以下であり、
該外表面は、
最大高さRz
平均値が、6μm以上、18μm以下であり、
山の頂点密度Spdが、5.0×10
3(1/mm
2)以上、5.0×10
4(1/mm
2)以下である、
ことを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
前記第1の樹脂粒子の体積平均粒子径が10μm以上、20μm以下であり、かつ、前記表面層中の該第1の樹脂粒子の体積比率が3体積%以上、25体積%以下であって、
前記第2の樹脂粒子の体積平均粒子径が3μm以上、10μm以下であり、かつ、該表面層中の該第2の樹脂粒子の体積比率が15体積%以上、50体積%以下である、請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記最大高さRz平均値が、8μm以上、16μm以下であり、
前記山の頂点密度Spdが、1.0×10
4(1/mm
2)以上、3.5×10
4(1/mm
2)以下である、請求項1または2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記表面層中の前記第1の樹脂粒子の体積比率が8体積%以上、20体積%以下であり、前記第2の樹脂粒子の体積比率が25体積%以上、40体積%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記弾性率E
1が、1000MPa以上、2000MPa以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記表面層の厚み方向の断面において測定される、該表面層の外表面から深さ0.1μmまでの第1領域の前記マトリックスの弾性率E
b0が200MPa以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の現像ローラ。
【請求項7】
前記表面層の厚み方向の断面において測定される、該表面層の外表面から深さ1.0μmから1.1μmまでの第2領域の弾性率E
b1が10MPa以上、100MPa以下である、請求項6に記載の現像ローラ。
【請求項8】
前記表面層は、該表面層の外表面から所定の深さまでの領域において、架橋アクリル樹脂を更に含む、請求項6または7に記載の現像ローラ。
【請求項9】
前記表面層の外表面から所定の深さまでの領域のマトリックスが、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の少なくとも一方を更に含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の現像ローラ。
【請求項10】
前記所定の深さが、前記表面層の外表面から深さ1μm未満の領域である請求項8または9に記載の現像ローラ。
【請求項11】
電子写真
画像形成装置の本体に着脱可能に装着されているプロセスカートリッジであって、請求項1~
10のいずれか一項に記載の現像ローラを具備することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
感光体と、該感光体上に形成される静電潜像に対して現像剤を供給する現像ローラと、を有する電子写真画像形成装置であって、該現像ローラが、請求項1~
10のいずれか一項に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は現像ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた複写機やファクシミリ、プリンター等の電子写真画像形成装置(以降、「画像形成装置」ともいう)の省エネルギー化が進んでいる。画像形成装置を省エネルギー化する方法の一つとして、各部材の摺擦時の低トルク化(各部材の当接圧減等)があげられる。
【0003】
前記電子写真方式を用いた画像形成装置のプロセスとしては、まず、感光体の外表面が帯電ローラの如き帯電手段により帯電される。その後、前記外表面をレーザーの如き露光光を照射して静電潜像を形成する。次に、現像容器内に収容されているトナーは、トナー規制部材及び現像ローラとの摺擦により帯電するとともに、現像ローラ上にコートされる。コートされた該トナーは、現像ローラの回転によって前記静電潜像が形成された感光体と現像ローラとの当接部に搬送される。そして、現像ローラと感光体との回転速度差によって現像ローラ上のトナーを感光体へと擦りつけるともに、該当接部に設けられた該静電潜像と現像ローラに印可される電圧との電位差によってトナーが感光体へと現像される。その後、感光体へ現像されたトナーは転写ベルト等を介し、または直接、記録紙へと転写され熱と圧力により定着される。該転写時に、感光体の外表面上には、転写されなかったトナー(以降、「残留トナー」ともいう)が残留する場合がある。かかる残留トナーは該感光体に当接配置されるクリーニングブレードによって除去される。これが画像形成装置の一般的なプロセスである。
【0004】
ここで、クリーニングブレードは感光体に対して高い当接圧で接しているため、感光体との摺擦によって高い摩擦力が発生している。クリーニングブレードの感光体への当接圧を低減することで、大きな省エネルギー効果が期待できる。しかしながら、当該当接圧の低減により、残留トナーの除去が不十分となり、感光体の外表面に残留トナーが付着する場合がある。このような感光体の外表面の汚染は、その後に形成される電子写真画像の画質を低下させることがある。
【0005】
特許文献1には、現像ローラとトナー規制部材との摺擦に伴う現像ローラ上のトナーへのストレスの低減により、該トナー規制部材へのトナー融着の抑制を目的として、現像ローラの表面層にウレタン粒子と該ウレタン粒子よりも平均粒子径の小さいウレタン粒子とを有する現像ローラが開示されている。
また、特許文献2には現像ローラとトナー規制部材との摺擦に伴う現像ローラ上のトナーへのストレスの低減により、該現像ローラへのトナー融着の抑制を目的として、現像ローラの表面層にアクリル粒子と該アクリル粒子よりも平均粒子径の小さいウレタン粒子とを有する現像ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-112150号公報
【文献】特開2009-237042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、残留トナーの感光体の外表面への固着を抑制すべく、現像ローラとして特許文献1や特許文献2に記載の現像ローラを用いることを検討した。しかしながら、これらの現像ローラを用いた場合においても、感光体の外表面へのトナー成分の固着防止効果は限定的であった。
【0008】
本開示の一態様は、クリーニングブレードの感光体への当接圧を低減した場合にも感光体の外表面の汚染をより良く抑制し得る現像ローラの提供に向けたものである。
本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像の安定した形成に資するプロセスカートリッジの提供に向けたものである。
本開示のさらに他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によれば、
導電性基体と、該導電性基体上の導電性弾性層と、該導電性弾性層上の表面層と、を有する現像ローラであって、
該表面層はポリウレタンをバインダーとして含むマトリックスと、該マトリックスに分散される樹脂粒子とを含み、
該表面層の厚み方向の断面において測定される、該表面層の外表面から深さ1.0μm以上の領域における該マトリックスの弾性率E
b
は10MPa以上、100MPa以下であり、
該表面層の外表面は、
第1の凸部と、
該外表面の該第1の凸部が存在しない領域に存在し、その高さが、該第1の凸部の高さよりも5.0μm以上低い第2の凸部と、を有し、
該第1の凸部は、第1の樹脂粒子に由来し、
該第2の凸部は、第2の樹脂粒子に由来し、
該第1の樹脂粒子はポリウレタンを含み、かつ、該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第1の樹脂粒子の弾性率E
1
は、100MPa以上、2000MPa以下であり、
該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第2の樹脂粒子の弾性率E
2
は、2MPa以上、50MPa以下であり、
該外表面は、
最大高さRz平均値が、6μm以上、18μm以下であり、
山の頂点密度Spdが、5.0×103(1/mm2)以上、5.0×104(1/mm2)以下である、現像ローラが提供される。
【0010】
また、本開示の他の態様によれば、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に装着されているプロセスカートリッジであって、前記現像ローラを具備するプロセスカートリッジが提供される。
さらに、本開示の他の態様によれば、感光体と、該感光体上に形成される静電潜像に対して現像剤を供給する現像ローラと、を有する電子写真画像形成装置であって、該現像ローラが、前記現像ローラである電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、クリーニングブレードの感光体への当接圧を低減させた場合であっても、感光体の外表面の汚染をより良く防止し得る現像ローラを得ることができる。また、本開示の他の態様によれば、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資するプロセスカートリッジを得ることができる。さらに、本開示の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を形成することができる電子写真画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一態様に係る現像ローラの表面層の一部の断面図であり、(a)は感光体非当接時、(b)は感光体当接時を示す。
【
図2】本開示の一態様に係る現像ローラの概念図である。
【
図3】本開示の一態様に係るプロセスカートリッジの構成図である。
【
図4】本開示の一態様に係る電子写真画像形成装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、特許文献1に係る現像ローラを用いた場合にも、感光体の外表面へのトナー成分の固着抑制効果が限定的であり、感光体の外表面の汚染に起因する画質の低下を十分には抑制できない理由について検討を重ねた。その過程で、本発明者らは、感光体の外表面の汚染に起因する電子写真画像の画質低下には、2つの異なる理由に起因する画質低下が関わっていることを認識した。
【0014】
1つ目は、セキュリティー画像(複写によって『COPY』等の文字を浮き出せることができる画像)等、1dot毎の微細な静電潜像の集合により構成する画像(1dot画像)の濃度が低下することである。この現象は、感光体外表面へのシリカなどに代表されるトナーの外添剤の堆積に起因していると考えられる。
クリーニングブレードの当接圧を低減させた場合、感光体外表面上に残留したトナー成分、特にシリカなどの粒径の小さな外添剤を掻き取りきれず、クリーニングブレードを通過しやすくなる。このような場合、トナーは、クリーニングブレードと感光体との当接部や、その後の帯電ローラ等と感光体との当接部を通過する際に押し固められ、感光体外表面に堆積しやすくなる。この場合に1dot画像の濃度が低下することが判った。これは、感光体外表面上に外添剤の堆積層が形成されることで、露光光が感光体の外表面に届きにくくなるためであると推察している。
【0015】
通常の電子写真装置は、複数(例えば8個)のdotを組合せたものを1つの大きなdotに見立てるディザ方式によって画像を形成している。該ディザ方式を用いることで静電潜像形成の際にレーザを1dotの8倍の面積に照射できるため、シャープな静電潜像を形成しやすく、結果としてより高品位な画像が得られるためである。一方、該セキュリティー画像のような1dot(例えば600dpiであれば42μm四方)毎の微細な静電潜像の集合によって構成する画像の場合、レーザを照射できる面積が狭くシャープな静電潜像を形成しにくい。このような1dot画像の場合に、感光体外表面へ外添剤など堆積層が形成された際の静電潜像形成がより困難になることで、濃度低下が顕在化していると推察している。この外添剤の堆積は、外添剤が強く帯電し、各部材へ移行しやすくなる低温低湿環境下での耐久時に顕著であった。
【0016】
ここで特許文献1に記載の現像ローラを使用した場合、前記感光体外表面への外添剤の堆積を抑制することができず、1dot画像の濃度が低下する場合があった。これは、特許文献1の現像ローラは感光体との当接部において、トナーのストレスを抑制する効果があるものの、クリーニングブレードや帯電ローラなどの他部材によって感光体外表面に押し固められた外添剤を除去しきれず、堆積の抑制が困難であったと推察している。一方、特許文献2に記載の現像ローラを使用した場合、該現像ローラ表面層に高硬度で大粒径のアクリル粒子が存在することができる。その場合、該アクリル粒子によって形成される表面層外表面の高硬度の凸部が感光体外表面を擦ることで、前記押し固められた外添剤の除去が促進されることを確認した。しかしながら、特許文献2に記載の現像ローラを使用した場合においても、下記感光体の汚染に伴うもう1つの画質低下が発生する場合があることが判った。
【0017】
2つ目は、画像が白い粒状に抜ける白ポチの発生である。この現象は、トナー樹脂成分が感光体外表面に塊状の融着物として付着することに起因すると考えられる。
特許文献2に記載の現像ローラを用いた場合、前記の通り該アクリル粒子が大粒径であることで感光体外表面を擦ることができる一方、感光体に加えトナー規制部材などの部材との当接部において選択的に摩耗してしまう。この結果、該アクリル粒子による表面層外周面の高硬度な凸部がテーブル状に平滑化する。この状態で耐久が進行すると、テーブル状に平滑化したアクリル粒子と感光体との間でトナーが押しつぶされ、感光体外表面上に融着しやすくなることが判った。加えて、クリーニングブレードの当接圧を低減させた場合には、該感光体外表面上に融着したトナーが、クリーニングブレードでも掻き取られずに感光体外表面に残留する。
さらに、この感光体外表面に融着したトナーが起点となって、加速度的にトナー融着物が粗大化し、塊状の融着物となる。このようにして感光体外表面に塊状の融着物が発生すると、その個所では現像ローラから感光体へとトナー移行ができなくなる、すなわち現像できないため、画像に白ポチが発生する。これは、熱や湿度の影響を受けてトナーが潰れやすくなる高温高湿環境下での耐久において顕著であった。
【0018】
また、特許文献2に記載の現像ローラを用いた場合、前記の通り1dot画像の濃度低下を抑制できる一方、該1dot画像の粒状性が悪化することが判った。これは、該現像ローラの該アクリル粒子による高硬度な凸部が感光体外表面を強力に擦る際に、1dot画像を形成する感光体外表面上の微細な静電潜像に現像されたトナー群を掻き乱すことによって引き起こされたと推察している。
【0019】
このように、感光体外表面の汚染の抑制と、1dot画像の粒状性の悪化の抑制と、がトレードオフの関係となっており、クリーニングブレードの当接圧低減の実現に向けた課題である。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、現像ローラの表面層を、下記特定の樹脂をバインダーとして含むマトリックス及び樹脂粒子の組合せ、かつ、特定の表面プロファイルとなるよう設計することで、上記の課題を解決しうることを見出した。
【0020】
即ち、本開示の一態様に係る現像ローラは、
導電性基体と、該導電性基体上の導電性弾性層と、該導電性弾性層上の表面層と、を有し、
該表面層はポリウレタンをバインダーとして含むマトリックスと、該マトリックスに分散される樹脂粒子とを含み、
該表面層の厚み方向の断面において測定される、該表面層の外表面から深さ1.0μm以上の領域における該マトリックスの弾性率をEbとしたとき、Ebは10MPa(10×106Pa)以上、100MPa(100×106Pa)以下であり、該表面層の外表面は、第1の凸部と、該外表面の該第1の凸部が存在しない領域に存在し、その高さが、該第1の凸部の高さよりも5.0μm以上低い第2の凸部と、を有し、
該第1の凸部は、第1の樹脂粒子に由来し、
該第2の凸部は、第2の樹脂粒子に由来し、
該第1の樹脂粒子はポリウレタンを含み、かつ、該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第1の樹脂粒子の弾性率をE1としたとき、E1は、100MPa(100×106Pa)以上、2000MPa(2000×106Pa)以下であり、該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第2の樹脂粒子の弾性率をE2としたとき、E2は、2MPa(2×106Pa)以上、50MPa(50×106Pa)以下であり、
該外表面は、
最大高さRz平均値が、6μm以上、18μm以下であり、
山の頂点密度Spdが、5.0×103(1/mm2)以上、5.0×104(1/mm2)以下である。
【0021】
該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第1の樹脂粒子の弾性率E1を100MPa以上、かつ、該外表面の最大高さRz平均値を6μm以上とすることで、感光体外表面の汚染に伴う1つ目の画質低下の要因である外添剤の堆積を掻き取ること、即ち1dot画像の濃度低下抑制が可能となる。該弾性率E1を100MPa以上とすることで、該外添剤の堆積層を掻き取ることができる硬さとなる。最大高さRz平均値は、該外表面に存在する多数の凸部のうち、より高い凸部の高さと頻度とを表現するパラメータである。Rz平均値を6μm以上とすることで、該外表面に存在する第1の凸部は、現像ローラにコートされたトナー層から頭を出して感光体を擦ることができるだけの十分な高さを持ち、かつ、該堆積層を掻き取りきれるだけの十分な頻度とを有することができる。
【0022】
さらに、該第1の樹脂粒子がポリウレタンを含むことで、感光体やトナー規制部材との摺擦による摩耗が抑制され、該第1の樹脂粒子に由来する該第1の凸部の上面がテーブル状に平滑化されることなく球面を維持することができる。これに加えて、該第1の樹脂粒子の弾性率E1を2000MPa以下とすることで、該第1の樹脂粒子に由来する該第1の凸部が感光体を擦る際のトナーの潰れが格段に抑制され、白ポチの発生を抑制できることを見出した。
【0023】
さらに、Rz平均値を18μm以下にするとともに、マトリックスに含まれるバインダーとしてポリウレタン樹脂を用い、かつ、該表面層の厚み方向の断面において測定される、該表面層の外表面から深さ1.0μm以上の領域における該マトリックスの弾性率Eb(以下、表面層マトリックスの弾性率Ebとも称する)、該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第2の樹脂粒子の弾性率E2、及び、山の頂点密度Spdを上記範囲とすることで、高硬度な第1の樹脂粒子がありながらも1dot画像の粒状性の悪化を抑制できることを見出した。
【0024】
ここで、
図1(a)に本態様に係る現像ローラ表面層の断面図を示す。
該表面層には表面層マトリックス1と該マトリックスに分散された樹脂粒子として、第1の樹脂粒子2と第2の樹脂粒子4を含む。
又、表面層の外表面には、第1の樹脂粒子2に由来する第1の凸部3と、第2の樹脂粒子4に由来する第2の凸部5が形成されている。第1の凸部3の間(第1の凸部が存在しない領域)には第2の凸部5が外表面に存在する領域6、が含まれる。
図1(b)に、本態様に係る現像ローラと感光体との当接時の断面模式図を示す。
図1(b)に図示されるように、本開示の構成とすることで、第1の凸部3が感光体8により荷重9で押し込まれる。このとき、表面層マトリックス1には強い反力10が発生し、この反力10によって第2の凸部の存在する領域6がアーチ状に盛り上がった領域7となる。これは、表面層マトリックスの弾性率E
bを100MPa以下とし、かつ、第2の樹脂粒子の弾性率E
2を30MPa以下とすることで、該第2の凸部の存在する領域が柔軟となる。そして、第1の樹脂粒子は、100MPa以上の高弾性であるために感光体からの押圧時に変形せずに押し込まれる。さらに第1の樹脂粒子と表面層マトリックスとは、共にポリウレタンを含むために強く密着しており、該第1の樹脂粒子が押し込まれる際に表面層マトリックスには強い反力が発生する。この反力によって、上記バインダーと第2の樹脂粒子の存在によって柔軟になっている領域がアーチ状に盛り上がると推察している。
さらに該領域6には、該第2の粒子4によって微細な凸部(第2の凸部5)が多数存在している。1dot画像のような感光体外表面上の微細な静電潜像に現像されたトナー群は、高硬度な第1の樹脂粒子に由来する第1の凸部3からの摺擦により一度は掻き乱される。
しかしながら、上記のように第2の樹脂粒子4が存在する領域がアーチ状に盛り上がり感光体8に近接することで、感光体上の掻き乱されたトナーは、感光体8と該第2の凸部5が存在し、盛り上がった領域7との間に挟まれる。このとき感光体の外表面に対して速度差を持って移動する現像ローラ外表面に多数存在する微細な第2の凸部5によって、感光体上の掻き乱されたトナーが均されて、再び均一になった、と推察している。このようにして、1dot画像の粒状性の悪化を抑制できたと推察している。第1の凸部の高さと頻度を表現するRz平均値を18μm以下とすることで、アーチ状に盛り上がった第2の凸部が存在する領域7が感光体へ十分近接でき、上記トナーを均す効果を奏することができる。
さらに、表面層の外表面の山の頂点密度Spdは、単位面積あたりに存在する凸部(山頂点)の数を表現するパラメータであり、凸部が複数種存在する場合、小さな凸部、即ち、本開示における第2の樹脂粒子に由来する第2の凸部の頻度に強く依存する。Spdを5.0×10
3(1/mm
2)以上、即ち、前記第2の樹脂粒子に由来する第2の凸部を多数存在させることで、前記第1の凸部によって掻き乱されたトナーを多数存在する第2の凸部によって押し戻し、均一に均すことができる。これにより、1dot画像の粒状性悪化を抑制することができる。また、Spdを5.0×10
4(1/mm
2)以下とすることで、第2の凸部がトナーを押し戻し、均すことができるだけの凸高さを維持できる。
【0025】
以下に、
図2を用いて本態様に係る現像ローラ20について詳細に説明する。
<現像ローラ>
現像ローラ20は、
図2の軸方向に垂直な方向の断面概略図に示されるように、導電性基体21と、該導電性基体上の導電性弾性層23と、該導電性弾性層上の表面層22とを有する。導電性弾性層23は必要に応じて1層であっても2層以上有していてもよい。表面層22は単層である。
【0026】
1.導電性基体
導電性基体は、その上に設けられる導電性弾性層及び表面層を支持する機能を有する。該導電性基体の材質としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属;これらの金属を含むステンレス鋼、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金を挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。基体の表面には、耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理を施すことができる。さらに、樹脂製の基材の表面を金属で被覆して表面を導電性とした基体や、導電性樹脂組成物から製造された基体も使用可能である。
【0027】
2.導電性弾性層
導電性弾性層は、中実体、発泡体のいずれであってもよい。また、導電性弾性層は、単層であっても、複数の層からなっていてもよい。導電性弾性層は、該第1の凸部が押圧された際の反力により、該第2の樹脂粒子が存在する領域がアーチ状に盛り上がりやすくなる理由から、中実体であることが好ましい。また、導電性弾性層の弾性率は、0.5MPa(0.5×106Pa)以上、10MPa(10×106Pa)以下であることが好ましい。このような導電性弾性層の材質としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、シリコーンゴムは低弾性率であるため、好ましい。
【0028】
導電性弾性層は、現像ローラに要求される機能に応じて、導電剤、非導電性充填剤、その他成形に必要な各種添加剤成分として、架橋剤、触媒、分散促進剤等を含有してもよい。該導電剤としては、各種導電性金属又はその合金、導電性金属酸化物、これらで被覆された絶縁性物質の微粉末、電子導電剤、イオン導電剤等を用いることができる。これらの導電剤は、粉末状や繊維状の形態で、単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、電子導電剤であるカーボンブラックは、導電性の制御が容易であり、また経済的であることから好ましい。該非導電性充填剤としては、例えば、以下のものを例示することができる。珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム、珪酸ジルコニウム、珪酸アルミニウム、タルク、アルミナ、酸化鉄。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0029】
導電性弾性層の体積抵抗率は、1.0×104~1.0×1010Ω・cmであることが好ましい。導電性弾性層の体積抵抗率がこの範囲内であることにより、現像電界の変動を抑制しやすい。該体積抵抗率は1.0×104~1.0×109Ω・cmであることがより好ましい。なお、導電性弾性層の体積抵抗率は、導電性弾性層中の前記導電剤の含有量により制御することができる。
【0030】
導電性弾性層の厚さは、0.1mm以上50.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上10.0mm以下であることがより好ましい。
【0031】
導電性弾性層の形成方法としては、例えば、押出成形、プレス成形、射出成形、液状射出成形、注型成形等の各種成形法により、適切な温度及び時間で加熱硬化させて基体上に導電性弾性層を成形する方法を挙げることができる。例えば、基体を設置した円筒形金型内に未硬化の導電性弾性層材料を注入し、加熱硬化することによって、基体外周に導電性弾性層を精度よく成形することができる。
【0032】
3.表面層
表面層は、
ポリウレタンをバインダーとして含むマトリックスと、該マトリックスに分散される樹脂粒子とを含み、
該表面層の厚み方向の断面において測定される、該表面層の外表面から深さ1.0μm以上の領域における該マトリックスの弾性率をEbは10MPa以上、100MPa以下であり、
該表面層の外表面は、
第1の凸部と、
該外表面の該第1の凸部が存在しない領域に存在し、その高さが、該第1の凸部の高さよりも5.0μm以上低い第2の凸部と、を有し、
該第1の凸部は、第1の樹脂粒子に由来し、
該第2の凸部は、第2の樹脂粒子に由来し、
該第1の樹脂粒子はポリウレタンを含み、かつ、該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第1の樹脂粒子の弾性率をE1としたとき、E1は、100MPa以上、2000MPa以下であり、
該表面層の厚み方向の断面において測定される、該第2の樹脂粒子の弾性率をE2としたとき、E2は、2MPa以上、50MPa以下であり、
該外表面は、
最大高さRz平均値が、6μm以上、18μm以下であり、
山の頂点密度Spdが、5.0×103(1/mm2)以上、5.0×104(1/mm2)以下である。
【0033】
また、該表面層には該表面層の導電性を制御する目的で導電剤を配合することができる。また、トナー離形性などを制御する目的で界面活性剤など添加剤を配合してもよい。
さらに、該表面層の外表面近傍が高硬度であると、第1の凸部による感光体外表面を掻き取る効果が大きくなったり、第2の凸部によるトナーを均す効果が大きくなったりするため、より好ましい。
【0034】
該表面層の層厚は、4μm以上100μm以下であることが好ましい。該層厚は、第1及び第2の凸部が形成されていない部分での厚みとなる。該厚み内に第1の凸部を形成しない第1の樹脂粒子や第2の凸部を形成しない第2の樹脂粒子を含んでいてもよい。該層厚を4μm以上とすることで、第1の樹脂粒子や第2の樹脂粒子に由来する第1の凸部や第2の凸部が形成されやすく、Rz平均値やSpdを上記範囲に設定しやすい。また、該層厚を4μm以上とすることで、該表面層の外表面近傍を高硬度化した場合においても該表面層マトリックスの弾性率Ebの影響が支配的になり、該表面層の柔軟な変形が起こりやすいため好ましい。該層厚を100μm以下とすることで、該表面層の柔軟な変形が起こりやすいため好ましい。より好ましくは6μm以上30μm以下である。
【0035】
3-1.マトリックス
マトリックスにはバインダーとしてポリウレタンが含まれる。該マトリックスがポリウレタンを含むことで、ポリウレタンを含む第1の樹脂粒子との密着性が向上する。これにより該第1の樹脂粒子が押し込まれる際に表面層マトリックスには強い反力が発生し、表面層マトリックスと第2の粒子の存在によって柔軟になっている領域がアーチ状に盛り上がることができると推察している。また、該表面層マトリックスに含まれるポリウレタンは、前記弾性率Ebとすることができるものであれば、特に限定されない。ポリウレタンは、ポリオールとイソシアネート、必要に応じて鎖延長剤から得ることができる。ポリウレタンの原料たるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリウレタンの原料たるイソシアネートとしては、例えば以下が挙げられる。トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、及びこれらの混合物。ポリウレタンの原料たる鎖延長剤としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオールの如き2官能性低分子ジオール、トリメチロールプロパンの如き3官能性低分子トリオール、及びこれらの混合物が挙げられる。また、上記の各種イソシアネート化合物と、各種ポリオールを、イソシアネート基が過剰な状態で予め反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有する、プレポリマータイプのイソシアネート化合物を用いてもよい。また、これらのイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を、MEKオキシムなどの各種ブロック剤でブロック化した材料を用いてもよい。
【0036】
いずれの材料を用いた場合においても、ポリオールとイソシアネートを加熱により反応させることでポリウレタンを得ることができる。さらに、ポリオールかイソシアネートのいずれか一方、あるいは両方が、分岐構造を有し、官能基数が3個以上であることにより、得られるポリウレタンは架橋ポリウレタンとなる。
【0037】
また、後述の方法によって測定することができる該マトリックスの外表面から1μm以上の深さの弾性率Ebは、10MPa以上、100MPa以下である。該弾性率Ebを10MPa以上とすることで、第1の樹脂粒子を被覆して第1の凸部を形成した場合に、外添剤の堆積層を掻き取る効果を得られる。また、該弾性率Ebを100MPa以下とすることで、第2の凸部が存在する領域において、該第2の樹脂粒子とともに柔軟に変形できる。これにより、該第1の凸部が感光体から押し込まれる際にアーチ状に盛り上がることが可能となり、トナーを均すことができる距離まで感光体と近接することができると推察している。該弾性率Ebが50M以下であると、該第1の凸部の高さが高く、また頻度が多い場合においても第2の凸部が存在する領域が感光体に近接しやすくなるため、より好ましい。
【0038】
該マトリックスの弾性率Ebは、樹脂の分子構造やシリカやカーボンブラックなどの微細粒子の添加による相互作用などによって上記範囲に調整することができる。
【0039】
3-2.第1の凸部及び第2の凸部
該表面層の外表面には、第1の凸部と、該外表面の該第1の凸部が存在しない領域に存在し、その高さが、該第1の凸部の高さよりも5.0μm以上低い第2の凸部が存在する。該第1の凸部は下記第1の樹脂粒子に由来し、該第2の凸部は下記第2の樹脂粒子に由来する。該表面層の外表面に存在する5.0μm以上の高低差を有する2つの凸部を後述の方法により確認し、該2つの凸部を形成する粒子の弾性率を後述の方法により測定することで、該表面層の外表面に、第1の凸部及び第2の凸部が存在することを確認することができる。
【0040】
3-3.最大高さRz平均値
該表面層外表面の最大高さRz平均値は、6μm以上、18μm以下である。最大高さRz平均値は、後述の測定方法によって求められる数値であり、多数の最大高さRzの平均値であるため、該外表面に存在する多数の凸部のうち、より高い凸部の高さと頻度とを表現することのできるパラメータである。本開示においては、該第1の凸部は第2の凸部より高いため、該Rz平均値は該第1の凸部の高さと頻度とに強い相関を持つ。Rz平均値を6μm以上とすることで、該第1の凸部は現像ローラにコートされるトナー層から突出し感光体を擦り、前記外添剤の堆積層を掻き取ることができるだけの十分な高さ及び頻度となる。また、Rz平均値を18μm以下とすることで、第2の凸部が存在する領域がアーチ状に盛り上がったときに感光体へ十分近接でき、上記トナーを均す効果を奏することができる。
【0041】
また、Rz平均値を8μm以上、16μm以下とすることがより好ましい。Rz平均値を上記範囲とすることで、下記第1の粒子に由来する凸部が外添剤の堆積層に加え、クリーニングブレードや帯電ローラなどによって感光体外表面上に押し潰されたトナーまで掻き取りやすくなる。これによりさらに塊状のトナー融着物の成長を防ぎ、白ポチの発生を抑制できるため好ましい。
Rz平均値は、上述の通り第1の凸部の高さと頻度とに強い相関を持つため、主に第1の樹脂粒子の原材料の体積平均粒子径や配合量によって調整することができる。また、下記第2の樹脂粒子の原材料の体積平均粒子径や配合量、該表面層の層厚によっても、該第1の凸部の突出具合を変えることができ、Rz平均値を調整することができる。ここで、原材料の樹脂粒子の体積平均粒子径は、後述の実施例に示すように粒度分布測定機を用いた「レーザ回折・散乱法」によるメディアン径である。
【0042】
3-4.山の頂点密度Spd
後述の方法によって測定することができる該表面層外表面の山の頂点密度Spdは、5.0×103(1/mm2)以上、5.0×104(1/mm2)以下である。山の頂点密度Spdは、単位面積あたりに存在する凸の数を表現するパラメータであり、凸部が多数存在する場合、小さな凸部の頻度との相関が強くなる。したがって、Spdは第2の凸部の頻度と強い相関を持つ。Spdを5.0×103(1/mm2)以上、即ち、第2の凸部を多数存在させることで、前記第1の凸部によって掻き乱されたトナーを多数存在する第2の凸部によって押し、均一に均すことができる。これにより、1dot画像の粒状性悪化を抑制することができる。また、Spdを5.0×104(1/mm2)以下とすることで、第2の凸部がトナーを押し、均すことができるだけの凸高さを維持できる。また、Spdを1.0×104(1/mm2)以上、3.5×104(1/mm2)以下とすることがより好ましい。Spdを上記範囲とすることで、上記Rz平均値を8μm以上とした場合にも、より十分トナーを均す効果を発現できるだけの第2の凸部の密度及び凸高さとすることができ、1dot画像の粒状性悪化を抑制できるため好ましい。
本開示におけるSpdは、下記第1の樹脂粒子及び下記第2の樹脂粒子の体積平均粒子径や配合量によって調整することができる。中でも、上述の通り相対的に小さな第2の凸部の頻度と強い相関を持つため、主に第2の樹脂粒子の体積平均粒子径や配合量によって調整することができる。
【0043】
3-5.第1の樹脂粒子
第1の樹脂粒子は前記第1の凸部の内部に存在し、該第1の樹脂粒子にはポリウレタンが含まれる。該第1の樹脂粒子がポリウレタンを含むことで、感光体やトナー規制部材との摺擦による摩耗が大幅に抑制され、該第1の樹脂粒子に由来する第1の凸部の上面がテーブル状に平滑化することなく球面を維持することができる。これによりトナーの潰れが抑制され、白ポチの発生を抑制できる。加えて、該第1の樹脂粒子がポリウレタンを含むことで、ポリウレタンを含む前記マトリックスとの密着性が向上する。これにより該第1の樹脂粒子が押し込まれる際に表面層マトリックスに強い反力を発生させることができ、マトリックスと第2の粒子の存在によって柔軟になっている領域をアーチ状に盛り上げることができる。
【0044】
該第1の樹脂粒子に含まれるポリウレタンは、該第1の樹脂粒子の弾性率E1を100MPa以上、2000MPa以下とすることができるものであれば、特に限定されない。該ポリウレタンとしては、例えばエーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリオレフィン系ポリウレタン等が挙げられる。
該第1の樹脂粒子の弾性率E1を100MPa以上とすることで、該第1の凸部が該外添剤の堆積層を掻き取ることができる硬さとなる。
【0045】
さらに、該弾性率E1が100MPa以上であることで、感光体との当接により押圧される際に、第1の樹脂粒子が変形せずに表面層内部へ押し込まれる。これにより、マトリックスには強い反力が発生し、該反力により第2の樹脂粒子が存在する領域をアーチ状に盛り上げることができる。また、該弾性率E1を2000MPa以下とすることで、該第1の樹脂粒子に由来する該第1の凸部が感光体を擦る際のトナーの潰れが格段に抑制され、白ポチの発生を抑制できる。該弾性率E1のより好ましい範囲は1000MPa以上、2000MPa以下である。1000MPa以上とすることで、外添剤の堆積層よりもさらに掻き取ることが困難な、クリーニングブレードや帯電ローラなどによって感光体外表面上に押し潰されたトナーまで掻き取りやすくなる。この高い弾性率によりさらに塊状のトナー融着物の成長を防ぎ、白ポチの発生を抑制できるため好ましい。該第1の樹脂粒子の弾性率E1は、樹脂の分子構造や架橋度などによって上記範囲に調整することができる。
【0046】
該第1の樹脂粒子の表面層中での体積平均粒子径は10μm以上20μm以下であることが好ましい。10μm以上とすることで、第1の樹脂粒子に由来する該第1の凸部が、現像ローラ外表面上のトナーコート層から突出しやすくなり、感光体を掻き取りやすくなる。また、20μm以下とすることで、感光体に現像されたトナーを粗大な粒子によって掻き乱しすぎず、1dot画像の粒状性の悪化を抑制しやすいため、好ましい。より好ましい範囲は13μm以上18μm以下である。該体積平均粒子径は、後述する方法で形成した表面層に含まれる状態の該第1の樹脂粒子の体積平均粒子径であり、その測定方法についても後述する。
【0047】
また、該第1の樹脂粒子は、該表面層中に3体積%以上、25体積%以下含まれていることが好ましい。3体積%以上とすることで、外添剤の堆積層を掻き取ることができるだけの頻度で該第1の凸部を存在させやすい。また、25体積%以下とすることで、感光体に現像されたトナーを過剰な頻度で掻き乱しにくくなり、1dot画像の粒状性の悪化を抑制しやすい。より好ましくは8体積%以上、20体積%以下である。8体積%以上、20体積%以下とすることで、外添剤の堆積層よりもさらに掻き取ることが困難な、クリーニングブレードや帯電ローラなどによって感光体外表面上に押し潰されたトナーまで掻き取りやすくなる。これによりさらに塊状のトナー融着物の成長を防ぎ、白ポチの発生を抑制できるため好ましい。
【0048】
3-6.第2の樹脂粒子
第2の樹脂粒子の弾性率E2は、2MPa以上、50MPa以下である。2MPa以上とすることで、該第2の樹脂粒子が存在する領域が感光体に近接しトナーを押し均す際に、該第2の凸部と感光体との間に挟まれたトナーからの圧による変形を抑制できる。これにより、トナーを押し均すことができる凸高さを維持でき、トナーを均す効果を奏し、1dot画像の粒状性悪化を抑制することができる。また、50MPa以下とすることで、第2の凸部が存在する領域6が柔軟になる。これにより、該第1の凸部が感光体から押圧される際の反力により、該領域6がアーチ状に盛り上がるため、感光体に近接しトナーを均す効果を奏し、1dot画像の粒状性悪化を抑制することができたと推察している。該第2の樹脂粒子の弾性率E2は、樹脂の分子構造や架橋度などによって上記範囲に調整することができる。
【0049】
該第2の樹脂粒子の材質としては、ポリウレタンやシリコーンなどが挙げられる。中でもポリウレタンを含む樹脂粒子は、ポリウレタンを含むマトリックスと密着しやすく、第1の凸部が押圧される際の反力を受けやすくなり、アーチ状に盛り上がりやすくなるため好ましい。
【0050】
また、第2の樹脂粒子の表面層中での体積平均粒子径は該第1の樹脂粒子の表面層中での体積平均粒子径より小さい。これにより第1の樹脂粒子に由来する第1の凸部を第2の樹脂粒子に由来する第2の凸部よりも高くすることができる。該第1の樹脂粒子の体積平均粒子径と、該第2の樹脂粒子の体積平均粒子径の差は5μm以上、15μm以下であることが好ましい。差を5μm以上とすることで、第1の凸部が現像ローラ外表面にトナーが被覆された際のトナーコート層より突出し感光体外表面を掻き取りやすくなるため好ましい。また、差を15μm以下とすることで、該第2の樹脂粒子が存在する領域がアーチ状に盛り上がった際に、該領域が感光体へ近接し感光体上のトナーを均しやすくなるため好ましい。該第2の樹脂粒子の体積平均粒子径は、3μm以上、10μm以下であることが好ましい。3μm以上とすることで、該第2の凸部が感光体に近接してトナーを均す際に、トナーを押すことができるだけの凸高さを形成しやすいため好ましい。また、10μm以下とすることで、該第2の樹脂粒子に由来する第2の凸部が高密度で微細になりやすくなり、上記トナーを均す効果を奏しやすいため好ましい。より好ましくは、4μm以上、8μm以下である。該体積平均粒子径は、後述する方法で形成した表面層に含まれる状態の該第2の樹脂粒子の体積平均粒子径であり、その測定方法についても後述する。
【0051】
また、該第2の樹脂粒子は、該表面層中に15体積%以上、50体積%以下含まれていることが好ましい。15体積%以上とすることで、該第2の樹脂粒子に由来する第2の凸部が高密度で微細になりやすくなり、上記トナーを均す効果を奏しやすいため好ましい。また、50体積%以下とすることで、該第2の凸部が適度に高くなりやすく、感光体に近接してトナーを均す際に、トナーを押すことができるだけの凸高さを形成しやすいため好ましい。より好ましくは25体積%以上40体積%以下である。上記範囲とすることで、上記Rz平均値を8μm以上とした場合にも、より十分トナーを均す効果を発現できるだけの第2の凸密度及び凸高さとすることができ、1dot画像の粒状性悪化を抑制できるため好ましい。
第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子を上記のようにすることで、該表面層外表面のRz平均値やSpdを本開示の範囲に調整することができる。
【0052】
3-7.導電剤
該表面層には該表面層の導電性を制御する目的で導電剤を配合することができる。該表面層に配合される導電剤としては、イオン導電剤やカーボンブラックのような電子導電剤が挙げられる。中でも、導電性弾性層の導電性と導電性弾性層のトナーに対する帯電性能とを制御することができるため、カーボンブラックが好ましい。導電性弾性層の体積抵抗率は、1×103Ω・cm以上1×1011Ω・cm以下の範囲であることが好ましい。
【0053】
3-8.添加剤
該表面層は、本開示の特徴を損なわない範囲で各種添加剤を含むことができる。例えば、表面層にシリカの如き無機化合物微粒子を配合することで、表面層へ補強性を付与したり、バインダー樹脂の弾性率Ebを調整したりすることができる。また、トナー離型性向上や動摩擦係数低減等、現像ローラとして要求される性能向上を目的として、表面層にシリコーンオイル等の有機化合物系添加剤を配合しても良い。
【0054】
3-9.表面層の形成方法
表面層の形成方法は特に限定されないが、例えば以下の方法により形成することができる。前記バインダー樹脂と第1及び第2の樹脂粒子、必要に応じて前記導電剤や、前記添加剤を含む表面層形成用の塗工液を調製する。該塗工液に基体又は導電性弾性層等が形成された基体をディッピングし、乾燥させることにより、基体上に表面層を形成する。
【0055】
4.表面層の外表面近傍の高硬度化
該表面層は、外表面近傍の領域、即ち、該外表面から深さ0.1μmまでの第1領域のマトリックスの弾性率をEb0(以下、外表面近傍の弾性率Eb0とも称する)としたき、Eb0が、200MPa(200×106Pa)以上、30,000MPa(30GPa=30,000×106Pa)以下であることが好ましい。該外表面近傍の弾性率Eb0を200MPa以上とすることで、該第1の樹脂粒子を被覆し第1の凸部を形成するマトリックスが高硬度となり、該第1の凸部が感光体を掻き取る効果を大きくすることができる。
【0056】
また、該第2の樹脂粒子を被覆し第2の凸部を形成するマトリックスも高硬度となり、トナーとの付着力が低減する。これにより、該第2の凸部により感光体に現像されたトナーを均す際に、トナーが流動しやすくなりトナーがより均されやすくなる。
また、マトリックスの該外表面近傍の弾性率Eb0を30GPa以下とすることで、表面層が本来持つ柔軟性を保ちやすいため好ましい。外表面の近傍のみが30GPa以下となることで、上記外表面近傍が高硬度になることによる効果を奏しながらも、該第1の凸部が押圧される際の反力による該第2の樹脂粒子が存在する領域がアーチ状に盛り上がることができる柔軟性を維持しやすい。
【0057】
表面層の該外表面近傍の高硬度化する領域は、該外表面から深さ1μm未満であると、該表面層の柔軟性を維持しやすいため、好ましい。
このような外表面近傍の高硬度化は、樹脂に、アクリルモノマーを含浸させ架橋させることで実現することができる。特に、該マトリックスがバインダーとしてポリウレタンを含む場合、含浸し架橋したアクリルモノマー(架橋アクリル樹脂)の弾性率が極めて高い場合にも、ポリウレタンの持つ靱性の効果により、架橋アクリル存在部の脆化を抑制することができる。さらに、前記表面層マトリックスに、さらにシリコーン系界面活性剤または、フッ素系界面活性剤の如き界面活性剤を含有することができる。該界面活性剤は、含シリコーン基または、含フッ素基、の如き低極性基、と変性部位に高極性基を併せ持つことができる。ポリウレタンのウレタン基又は他の高極性基と、界面活性剤分子中の含シリコーン基または、含フッ素基、の如き低極性基と、の極性差が大きいことにより、界面活性剤は該表面層の外表面近傍に移行し留まる。さらに、この界面活性剤を含んだマトリックスに対して、アクリルモノマーが含浸する際、アクリルモノマーが界面活性剤付近に留まりやすい。特に界面活性剤の高極性基と極性差が近いアクリルモノマーを含浸させると、外表面近傍にとどまりやすく、好ましい。その後、該含浸したアクリルモノマーを架橋させることで、該表面層の外表面の近傍の所定の深さ、例えば深さ1μm未満の領域に存在するマトリックスを局所的に高硬度化させることができる。また、ポリウレタンが架橋ポリウレタンである場合、架橋アクリル樹脂とともに相互侵入高分子網目構造を構成することができる。
【0058】
相互侵入高分子網目(Interpenetrating Polymer Network)構造(以下、IPN構造という)とは、二つ以上の高分子の網目構造が共有結合で結ばれることなくお互いに入り組み、絡み合った構造である。そして、この構造は網目を形成する分子鎖を切断しない限りほどけることは無い。
IPN構造の形成方法としては、いくつかの方法を挙げることができる。例えば、第一の成分のポリマーの網目を先に形成させておき、次に第二の成分のモノマーと重合開始剤で膨潤させた後で第二の成分のポリマーの網目を形成させる、逐次網目形成法。あるいは、それぞれ反応機構の異なる第一の成分のモノマーと、第二の成分のモノマー、さらに、各々の重合開始剤を混合し、同時に網目を形成させる、同時網目形成法などが挙げられる。
【0059】
ここで用いられるアクリルモノマーの種類としては、架橋構造を形成させるために、官能基としてアクリロイル基、またはメタクリロイル基を複数個有する多官能モノマーであることが好ましい。ここで官能基が6個以下であると、アクリルモノマーの粘度上昇が抑制され、アクリルモノマーが表面層の外表面上に残留せず内部へ染みこみやすくなるため好ましい。さらに、官能基が4個以下のアクリルモノマーを用いると、該界面活性剤と併用した際に、アクリルモノマーが表面層の外表面上に残留せず内部へ染みこみやすくなるとともに、該表面層の外表面の近傍、例えば深さ1μm未満の領域にとどまりやすくなり、より好ましい。
上記アクリルモノマーの分子量としては、200以上750以下の範囲であることが好ましい。この範囲の分子量を用いることで、表面層に含まれるバインダー樹脂に効率的に含浸させることができ、その外表面近傍を高硬度化させることができる。
すなわち、上述の分子量範囲と粘度範囲を満たすアクリルモノマーを、1種類または2種以上選択し、表面層に含浸して架橋させることで、該表面層の外表面近傍を高硬度化することができる。
【0060】
このようなアクリルモノマーや下記重合開始剤を表面層へ含浸させる方法は特に限定されないが、例えば以下の方法によって行うことができる。
前記アクリルモノマー、必要に応じて、重合開始剤、増感剤、溶媒などを含む塗工液を調整する。次いで、前記表面層が形成されたローラに対して、ディッピング、ロールコート、スプレー塗布など公知の塗工方法で該塗工液を塗布する。これにより、該表面層に該アクリルモノマーなどが含浸される。次いで、必要に応じて該溶媒を乾燥させたのち、下記架橋方法によってアクリルモノマーを架橋することで、該表面層の外表面近傍を高硬度かすることができる。
【0061】
アクリルモノマーの架橋方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、加熱や紫外線照射などの方法が挙げられる。
各重合方法に対しては、公知のラジカル重合開始剤やイオン重合開始剤を用いることができる。
加熱して重合する場合の重合開始剤としては、例えば、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレートの如き過酸化物;
2,2-アゾビスブチロニトリル、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メトキシプロピオンアミド)、ジメチル-2,2-アゾビス(イソブチレート)の如きアゾ化合物が挙げられる。
【0062】
紫外線を照射して重合する場合の重合開始剤としては、例えば、2、2-ジメトキシ-1、2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0063】
なお、これらの重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、重合開始剤の配合量は、特定の樹脂を形成するための化合物(例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物)全量を100質量部としたときに、効率的に反応を進行させる観点から、0.5質量部以上10質量部以下で使用することが好ましい。
【0064】
なお、加熱装置や紫外線照射装置は、公知のものを適宜用いることができる。紫外線を照射する光源としては、例えば、LEDランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、及び、低圧水銀ランプ等を用いることができる。重合の際に必要な積算光量については、使用する化合物や重合開始剤の種類や添加量に応じて、適宜、調整することができる。
該ポリウレタンを含むマトリックスに含浸された状態で架橋アクリル樹脂が存在していることを確認する方法としては、例えば、以下の如き方法が挙げられる。(1)溶剤抽出によって確認をする方法、(2)含浸処理前後でのガラス転移点の変化を確認する方法、(3)含浸処理前後での熱クロマトグラムのピークトップ温度の変化を確認する方法、(4)μMSによって確認をする方法。
【0065】
<プロセスカートリッジ及び画像形成装置>
本開示の一態様に係るプロセスカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着されるプロセスカートリッジであって、本態様に係る現像ローラを有する。また、本態様に係る画像形成装置は、感光体と、該感光体に当接して配置される本態様に係る現像ローラとを有する。本開示によれば、多様な環境下において、高品位な画像を安定して提供し得るプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供できる。
【0066】
該プロセスカートリッジを
図3に示す。
図3に示されるプロセスカートリッジ30は、電子写真装置に着脱可能であり、本態様に係る現像ローラ20、現像ブレード34、トナー33aを収容するトナー容器33、トナー供給ローラ32を有する現像装置35を備える。また、
図3に示されるプロセスカートリッジ30は、感光体31、クリーニングブレード38、廃トナー収容容器37、帯電ローラ36とともに一体化されたオールインワンプロセスカートリッジである。
【0067】
本開示の一態様に係る画像形成装置を
図4に示す。
図4に示される画像形成装置には、現像ローラ20、トナー供給ローラ32、トナー33aを収容しているトナー容器33及び現像ブレード34を有する現像装置35が着脱可能に装着されている。また、現像装置35、感光体31、クリーニングブレード38、廃トナー収容容器37及び帯電ローラ36を有するプロセスカートリッジが脱着可能に装着されている。なお、感光体31、クリーニングブレード38、廃トナー収容容器37及び帯電ローラ36は、画像形成装置本体に配備されていてもよい。
【0068】
感光体31は矢印方向に回転し、感光体31を帯電処理するための帯電ローラ36によって一様に帯電され、感光体31に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光39により、その表面に静電潜像が形成される。
該静電潜像は、感光体31に対して接触配置される現像装置35によって現像剤であるトナー33aを付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。該現像は、露光部にトナー像を形成する所謂反転現像である。
可視化された感光体18上の可視化されたトナー像は、転写部材である転写ローラ43によって記録媒体である紙47に転写される。紙47は、給紙ローラ46及び吸着ローラ49を経て装置内に給紙され、エンドレスベルト状の転写搬送ベルト45により感光体31と転写ローラ43との間に搬送される。転写搬送ベルト45は、従動ローラ46、駆動ローラ42、テンションローラ44により稼働している。転写ローラ43及び吸着ローラ49には、バイアス電源50から電圧が印加されている。
トナー像を転写された紙47は、定着装置41により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
一方、転写されずに感光体31上に残存した転写残トナーは、感光体31の表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード38により掻き取られ、廃トナー収容容器37に収納される。クリーニングされた感光体31は、上述の操作を繰り返し行う。
該クリーニングブレード38の当接圧の低減は、感光体31に対するクリーニングブレード38の侵入量を減少させることによって行うことができる。
【0069】
現像装置35は、一成分トナーとしてトナー33aを収容したトナー容器33と、トナー容器33内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光体31と対向設置されたトナー担持体としての現像ローラ20とを備える。この現像装置35は感光体31上の静電潜像を現像して可視化する。
また、現像ブレード34としては、例えば、金属製の板金にゴム弾性体を固定した部材、SUSやリン青銅の薄板の様なバネ性を有する部材、またはその表面に樹脂やゴムを積層した部材などが用いられる。
また、現像ブレード34と、現像ローラ20との間に電位差を設けることにより、現像ローラ1上のトナー層を制御することが可能であり、そのためには現像ブレード34は導電性を有することが好ましい。なお、現像ローラ20及び現像ブレード34にはバイアス電源50から電圧が印加されており、現像ブレード34に印加する電圧は、現像ローラ20に印加する電圧に対して、0Vから-300V程度の差とすることが好ましい。
【0070】
現像装置35における現像プロセスを、以下に説明する。
回転可能に支持されたトナー供給ローラ32により現像ローラ20上にトナー33aが塗布される。現像ローラ20上に塗布されたトナー33aは、現像ローラ20の回転により現像ブレード34と摺擦される。ここで、現像ブレード34に印加されたバイアスにより、現像ローラ20上のトナー33aが現像ローラ20上に均一にコートされる。現像ローラ20は感光体31と回転しながら接触し、感光体31の外表面に形成された静電潜像を、現像ローラ20上にコートされたトナー33aにより現像することで、トナー画像が形成される。
トナー供給ローラ32としては、例えば、多孔質発泡構造を有する層を備えたローラや、基体上にレーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシを備えたローラを用い得る。これらのローラは、現像ローラ20へのトナー33a供給及び未現像トナーの剥ぎ取り性に優れることから好ましい。また、トナー供給ローラ32としては、例えば、基体の周囲にポリウレタンフォームを設けた弾性ローラを用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本開示に係る現像ローラ等について具体的に説明するが、本開示に係る現像ローラ等は、これらの実施例において具現化された構成のみに限定されるものではない。なお、以下の説明中、「平均(一次)粒子径」と表示され、特に測定方法の記載のないものは、その粒子の供給元のカタログ値を示す。
【0072】
<1.導電性弾性ローラの製造>
(1-1.導電性弾性ローラ1の製造)
基体として、外径6mm、長さ260mmのSUS304製の軸芯体にプライマー(商品名:DY35-051、東レダウコーニング社製)を塗布し、焼付けしたものを用意した。この基体を金型内に配置し、以下の表1に示す材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を、該金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、該金型を加熱することにより、付加型シリコーンゴム組成物を温度150℃で15分間加熱して硬化させ、脱型した。その後、さらに温度180℃で1時間加熱して硬化反応を完結させ、基体の外周に厚さ2.00mmの導電性弾性層を有する導電性弾性ローラ1を製造した。
【0073】
【0074】
(1-2.導電性弾性ローラ2の製造)
基体として、外径6mm、長さ260mmのSUS304製の軸芯体にプライマー(商品名:DY35-051、東レダウコーニング社製)を塗布し、焼付けしたものを用意した。以下の表2に示す材料を混練して未加硫ゴム組成物を調製した。
次に、基体の供給機構、未加硫ゴム組成物の排出機構を有するクロスヘッド押出機を用意し、クロスヘッドには内径10.1mmのダイスを取付け、押出機とクロスヘッドの温度を30℃に、基体の搬送速度を60mm/secに調整した。この条件で、押出機より未加硫ゴム組成物を供給して、クロスヘッド内にて基体に外周に未加硫ゴム組成物を弾性層として被覆し、未加硫ゴムローラ2を得た。次に、170℃の熱風加硫炉中に前記未加硫ゴムローラを投入し、15分間加熱した。その後、GC80の砥石を使用して回転研磨機(商品名:LEO-600-F4L-BME、水口製作所社製)で研磨して、軸芯体の外周に厚さ2.0mmの導電性弾性層を有する導電性弾性ローラ2を製造した。
【0075】
【0076】
<2.表面層塗工液の調製>
(2-1.イソシアネート基末端プレポリマーB-1の製造)
窒素雰囲気下、反応容器中でポリメリックMDI(商品名:ミリオネートMR200、東ソー社製)25質量部に対し、ポリエーテルポリオール(商品名:PTG-L3500、保土ヶ谷化学工業社製)100質量部を徐々に滴下した。この時、反応容器内の温度を65℃に保持した。滴下終了後、65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量が4.3質量%であるイソシアネート基末端プレポリマーB-1を得た。
【0077】
(2-2.表面層塗工液X-1の調製)
次いで、以下の表3に示す配合で原材料を混合した。
【0078】
【0079】
次いで、上記原材料の固形分が30質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を加え、混合液1を得た。さらに、内容量450mLのガラス瓶内に、該混合液1 250質量部と、平均粒子径0.8mmのガラスビーズ200質量部とを入れ、ペイントシェーカー(東洋精機社製)を用いて3時間分散させた。その後、ガラスビーズを除去し、表面層形成用の表面層塗工液X-1を得た。
【0080】
(2-3.表面層塗工液X-2~X-32、J-1~J-9の調製)
処方を表4に記載したように変更した以外は、表面層塗工液X-1と同様にして表面層塗工液X-2~X-32及びJ-1~J-9を調製した。なお、表4中、「種類」の欄に記号にて記載した原材料の詳細を表5-1~表5-2に記載した。
なお、表5-1~5-2中、イソシアネート(イソシアネート基末端プレポリマー)「B-1」の調製方法は前記した。また、イソシアネート「B-2」、ウレタン粒子D-2、D-3、D-5、D-6、D-7、D-8、D-12、D-13、E-6及びE-7の調製方法は、表5-2の後に記載した。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
(2-4-1.イソシアネート基末端プレポリマーB-2の製造)
窒素雰囲気下、反応容器中でポリメリックMDI(商品名:ミリオネートMR200、東ソー社製)33質量部に対し、ポリカーボネートポリオール(商品名:デュラノールT5652、旭化成社製)100質量部を徐々に滴下した。この時、反応容器内の温度を65℃に保持した。滴下終了後、65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量が4.3質量%であるイソシアネート基末端プレポリマーB-2を得た。
【0085】
(2-4-2.ウレタン粒子D-2の製造)
懸濁安定剤(リン酸カルシウム)を含む水中に、アミン系ポリオールA-4を3質量部、イソシアネート基末端プレポリマーB-1を97質量部入れ、撹拌して懸濁液とした。次いで、該懸濁液を加温して反応を開始し、十分に反応させてウレタン粒子を生成させた。その後、該ウレタン粒子を固液分離により回収し、洗浄により該懸濁安定剤を除去し、乾燥させた。得られたウレタン粒子を、風力分級機(商品名:EJ-L-3型、日鉄鉱業社製)を用いて分級した。該ウレタン粒子の体積平均粒子径(メディアン径)を粒度分布測定機(商品名:コールターマルチサイザーII、コールター社製)で測定した結果、13.0μmであった。これをウレタン粒子D-2とした。
【0086】
(2-4-3.ウレタン粒子D-3、D-12、D-13の製造)
懸濁液の撹拌速度及びウレタン粒子の分級条件を変更した以外は2-4-2.ウレタン粒子D-2の製造と同様にして、ウレタン粒子D-3(体積平均粒子径20.0μm)、D-12(体積平均粒子径8.0μm)、D-13(体積平均粒子径30.0μm)を製造した。
【0087】
(2-4-4.ウレタン粒子D-5、D-6の製造)
ウレタン粒子D-1(商品名:アートパールCE400透明、体積平均粒子径15.0μm、根上工業社製)を、風力分級機(商品名:EJ-L-3型、日鉄鉱業社製)を用いて分級した。該ウレタン粒子の体積平均粒子径(メディアン径)を粒度分布測定機(商品名:コールターマルチサイザーII、コールター社製)で測定した結果、13.0μmであった。これをウレタン粒子D-5とした。また、分級条件を変更することで、体積平均粒子径20.0μmのウレタン粒子D-6を製造した。
【0088】
(2-4-5.ウレタン粒子D-7、D-8の製造)
ウレタン粒子に「アートパールU400透明」(商品名、体積平均粒子径15.1μm、根上工業社製)を用いた以外は、2-4-4.ウレタン粒子D-5、D-6の製造と同様にして、ウレタン粒子D-7(体積平均粒子径13.0μm)及びD-8(体積平均粒子径20.0μm)を製造した。
【0089】
(2-4-6.ウレタン粒子E-6、E-7の製造)
ポリオールをポリカーボネート系ポリオールA-3 35質量部、イソシアネートをイソシアネート基末端プレポリマーB-2 65質量部に変更し、懸濁液の撹拌速度及びウレタン粒子の分級条件を変更した以外は2-4-2.ウレタン粒子D-2の製造と同様にして、ウレタン粒子E-6(体積平均粒子径8.0μm)、ウレタン粒子E-7(体積平均粒子径8.0μm)を製造した。
【0090】
<3.(実施例1;現像ローラZ-1の作製)>
表面層塗工液X-1に、導電性弾性ローラ1を1回ディッピングした後、温度23℃で30分間風乾した。次いで温度160℃に設定した熱風循環乾燥機中で1時間乾燥させて、導電性弾性ローラの外周面上に表面層が形成された現像ローラZ-1を作製した。なお、ディッピング塗布浸漬時間は9秒であった。ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度が20mm/sec、最終速度が2mm/secになるように調整し、20mm/secから2mm/secの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。
【0091】
<4.物性評価>
(物性評価4-1.最大高さRz平均値)
本態様に係る最大高さRz平均値は、現像ローラの表面層の外表面をレーザ顕微鏡(商品名:VK-X150、キーエンス社製)でスキャンすることで測定することができる。まず、現像ローラZ-1を、該現像ローラ外表面の周方向頂点が該レーザ顕微鏡のレンズ直下、現像ローラ軸方向がレーザ顕微鏡観察視野の長手方向、となるように設置した。次いで該表面層の外表面の形状を下記条件で測定した。
【0092】
モード:形状測定エキスパート
測定レンズ:50倍
Z軸上下限:レーザ視野にて反射光が観察されなくなる範囲
レーザ明るさ:自動
ダブルスキャン:必ず行う
測定モード:表面形状
測定サイズ:高精細(2048×1536)
測定品質:高精度
RPD:ON
ピッチ:0.13μm
【0093】
次いで、上記測定結果を、該レーザ顕微鏡の付属ソフトである、マルチファイル解析アプリケーションで読み込んだ。読み込んだ画像を、下記順番で補正した。
面形状補正:
補正方法:二次曲面補正、指定方法:領域指定
高さカットレベル:
カットレベル:強
平滑化:
サイズ:7×7、種類:単純平均
次いで、Rz平均値を下記条件で算出した。
測定モード:「複数線粗さ」
測定領域:水平線
周囲本数:18本
間隔:20本飛ばし
測定値:Rz平均値
【0094】
以上の測定を、現像ローラ軸方向の等間隔5か所×周方向の等間隔6か所の計30か所について行い、その算術平均値を現像ローラZ-1の最大高さRz平均値とした。このように、本態様に係るRz平均値は、短い距離における18本×30か所、計540点の最大高さRzの平均値であることから、該表面層の外表面における、より高い凸部の高さと頻度とを表現することができる。結果を表7に示す。
【0095】
(物性評価4-2.山の頂点密度Spd)
山の頂点密度Spdは、上記最大高さRz平均値と同様に顕微鏡下での表面観察で求めることができる。まず、現像ローラZ-1の外表面の形状測定を、上記最大高さRz平均値と同様に行った。
次いで、上記測定結果を、該レーザ顕微鏡の付属ソフトである、マルチファイル解析アプリケーションで読み込んだ。読み込んだ画像を、上記最大高さRz平均値と同様に補正した。
次いで、Spdを下記条件で算出した。
測定モード:「表面粗さ」
測定領域:全領域
測定値:Spd
【0096】
以上の測定を、現像ローラ軸方向の等間隔5か所×周方向の等間隔6か所の計30か所について行い、その1mm2あたりの算術平均値を現像ローラX-1の山の頂点密度Spdとした。結果を表7に示す。
【0097】
(物性評価4-3.第1の凸部と第2の凸部の確認)
現像ローラZ-1の表面層の外表面における第1の凸部と第2の凸部との高さの差は、上記最大高さRz平均値と同様に顕微鏡下での表面観察で求めることができる。
まず、現像ローラZ-1の外表面の形状測定を、上記最大高さRz平均値と同様に行った。
次いで、記測定結果を、該レーザ顕微鏡の付属ソフトである、マルチファイル解析アプリケーションで読み込んだ。読み込んだ画像を、上記最大高さRz平均値と同様に補正した。
次いで、測定モード:「線粗さ」、にて、測定視野に存在する相対的に大きな凸部の頂点と相対的に小さな凸部の頂点とを、二点指定で結び、該大きな凸部の頂点と該小さな凸部の頂点との高さの差が5.0μm以上である2つの凸部を抽出した。
次いで、該大きな凸部と小さな凸部とが判別可能なように現像ローラの外表面にマーキングを施した。次いで、現像ローラを-150℃に冷却し、クライオミクロトーム(UC-6(製品名)、ライカマイクロシステムズ社製)を用いて、マーキングした2つの凸部の頂部を通り、かつ、該表面層の厚み方向の断面が表れてなるゴム薄片を切り出した。
【0098】
(物性評価4-4.弾性率)
測定には、走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope、SPM)(商品名:MFP-3D-Origin、オックスフォード・インストゥルメンツ社製)を用いた。
具体的には、上記で作製したゴム薄片を、室温23℃湿度50%の環境下に24時間放置した。次に、シリコンウエハ上に、該ゴム薄片を載せ、該シリコンウエハを、上記走査プローブ顕微鏡のステージにセットした。そして、該ゴム薄片の、該表面層の断面部分を、探針(AC160(製品名)、オリンパス社製)で走査した。なお、探針に関する条件としては、バネ定数:28.23nN/nm,インパルス定数:82.59nm/V,共振周波数:282kHz(1次),1.59MHz(高次)である。また、他の測定条件としては、SPMの測定モードはAM-FMモード、探針の自由振幅は3V、セットポイント振幅は2V(1次)及び25mV(高次)とした。そして、視野20μm×20μmのサイズにおいて、スキャン速度は1Hz、スキャン点数は縦256点及び横256点とした。
その後、表面層マトリックス、第1の樹脂粒子、第2の樹脂粒子、及び、導電性弾性層について、後述の領域における10点の測定箇所を指定し、それぞれにおいてコンタクトモードでフォースカーブを取得した。なお、フォースカーブ取得時の条件は、以下の条件で行った。トリガー値は0.2~0.5V(硬度によって変更)、フォースカーブを測定する距離500nm、スキャン速度1Hz(探針が1往復する速さ)の条件でフォースカーブを取得した。その後、それぞれのフォースカーブについて、Hertz理論に基づくフィッティングを行った。得た結果について、最高値と最低値を除く8点の算術平均を求めた各測定領域の弾性率とした。
【0099】
(物性評価4-4-1.表面層マトリックスの弾性率)
表面層マトリックスの弾性率Ebを以下のように測定した。
該ゴム薄片の、表面層の厚み方向断面における、表面層の外表面から深さ方向に1.1~1.2μmの領域の表面層マトリックスの弾性率を上記4-4に記載の方法で測定した。
次いで、該領域から前記導電性弾性層界面近傍まで弾性率を、深さ方向に1.0μmピッチの領域で同様に測定した。なお、コンタクトモードでの測定は、導電剤やフィラーなどを避けて行った。以上の測定を、現像ローラ軸方向の等間隔3か所×周方向の等間隔3か所の計9か所について行い、その算術平均値を現像ローラZ-1の表面層マトリックスの弾性率Ebとした。結果を表7に示す。
表面層マトリックスの第1領域の弾性率Eb0:該表面層の厚み方向の断面において測定される、外表面から深さ方向0.1μmまでの領域を第1領域とし、該第1領域の弾性率を上記測定方法に基づき測定した。なお、コンタクトモードでの測定は、導電剤やフィラーなどを避けて行った。以上の測定を、現像ローラ軸方向の等間隔3か所×周方向の等間隔3か所の計9か所について行い、その算術平均値を現像ローラZ-1の表面層第1領域の弾性率Eb0とした。結果を表7に示す。
表面層マトリックスの第2領域の弾性率Eb1:前記表面層マトリックスの弾性率Ebの測定の際に得られた、外表面から深さ方向に1.0~1.1μmの領域の弾性率を該表面層マトリックスの第2領域の弾性率Eb1とした。結果を表3に示す。ここで、Eb0が200MPa以上であって、かつ、Eb1が、10MPa以上、100MPa以下、であると、該マトリックスが高硬度化した領域が1μm未満となり、該表面層の柔軟性を維持しやすいため、好ましい。Eb1はより好ましくは80MPa以下である。
【0100】
(物性評価4-4-2.第1の樹脂粒子の弾性率)
該第1の凸部を形成する第1の樹脂粒子の弾性率E1を以下の方法で測定した。該ゴム薄片の、表面層の厚み方向断面における、該第1の凸部を形成している粒子の中心付近の領域の弾性率を上記測定方法に基づき測定した。以上の測定を、現像ローラ軸方向の等間隔3か所以上×周方向の等間隔3か所以上の計9か所以上において計45個もしくはそれ以上の数の第1の凸部について行い、その算術平均値を算出した。
得られた算術平均値が100MPa以上、2000MPa以下であることを確認し、該大きな凸部を形成する粒子が第1の樹脂粒子であることを特定するとともに、該粒子内部の弾性率を現像ローラZ-1の第1の樹脂粒子の弾性率E1とした。結果を表7に示す。
【0101】
(物性評価4-4-3.第2の樹脂粒子の弾性率)
該第2の凸部を形成する第2の樹脂粒子の弾性率E2を以下のように測定した。該ゴム薄片の、表面層の厚み方向断面における、該第2の凸部を形成している粒子の中心付近の領域の弾性率を上記測定方法に基づき測定した。以上の測定を、現像ローラ軸方向の等間隔3か所以上×周方向の等間隔3か所以上の計9か所以上において計45個もしくはそれ以上の数の第2の凸部について行い、その算術平均値を算出した。
得られた算術平均値が2MPa以上、50MPa以下であることを確認し、該小さな凸部を形成する粒子が第2の樹脂粒子であることを特定するとともに、該粒子の弾性率を現像ローラZ-1の第2の樹脂粒子の弾性率E2とした。結果を表7に示す。
【0102】
(物性評価4-4-4.導電性弾性層の弾性率)
現像ローラZ-1の該導電性弾性層の弾性率は、それぞれ以下の方法で測定した。
導電性弾性層の弾性率Ee:現像ローラZ-1の導電性弾性層の樹脂について、該導電性弾性層断面の弾性率を上記測定方法に基づき測定した。具体的には、表面層界面から深さ方向に2.0μm以上の領域を同様に測定した。なお、コンタクトモードでの測定は、導電剤やフィラーなどを避けて行った。以上の測定を、現像ローラ軸方向の等間隔3か所×周方向の等間隔3か所の計9か所について行い、その算術平均値を現像ローラZ-1の導電性弾性層の弾性率Eeとした。結果を表7に示す。
【0103】
(物性評価4-5.表層中に存在する樹脂粒子の体積平均粒子径DV及び体積比率)
表面層中に存在する樹脂粒子の体積平均粒子径DVは、下記方法によって測定した。まず、上記弾性率の測定に用いた表面層断面に存在するすべての樹脂粒子の弾性率を測定した。次いで、測定された樹脂粒子の弾性率から、弾性率の高い粒子を第1の樹脂粒子、相対的に弾性率の低い粒子を第2の樹脂粒子として区分した。さらに、区分した各粒子の断面積から、各粒子の断面の円相当直径DSを算出した。そして、各粒子が球体であり、該断面が該球体をランダムに切断したことによる断面である、と仮定し、下記式(1)によって断面の円相当径DSから該樹脂粒子の粒径Dを算出した。
【0104】
【0105】
以上の測定を、現像ローラ軸方向の等間隔3か所以上×周方向の等間隔3か所以上の計9か所以上において、第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子それぞれ計100個以上の粒子について行った。このようにして得られた各粒子のDと、4/3×π×(D/2)3を用いて変換した体積値と、を用い、第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子の体積平均粒子径(メディアン径)DV1及びDV2を算出した。
この表面層中の体積平均粒子径と原料としての粒子の体積平均粒子径(単に平均粒子径ともいう)は良好な相関関係を有していることが表7~表9、表17から理解できる。
また、該表面層中の第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子の体積比率は、断面積から得られる面積比率と同じ比率であるため、上記測定の際の断面を用いて算出した。具体的には、該表面層の断面に存在する全樹脂粒子を、弾性率によって第1の樹脂粒子、第2の樹脂粒子に区分した上で、該表面層の断面積に占める第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子の面積比率を算出した。この測定を現像ローラ軸方向の等間隔3か所以上×周方向の等間隔3か所以上の計9か所以上において行い、その算術平均値を第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子の体積比率V1及びV2とした。
【0106】
(物性評価4-6.表面層の層厚)
本態様に係る該表面層の外表面から深さ方向の層厚は以下の方法で測定した。
まず、該表面層の外表面から深さ方向の断面を含むゴム薄片をカッターナイフで切り出した。次いで、光学顕微鏡を用い該断面を観察し、該表面層の外表面に存在する凸部と凸部の間の凹部の極小点と、該表面層と該導電性弾性層との界面までの距離を測定した。上記測定を、現像ローラ軸方向の等間隔3か所以上×周方向の等間隔3か所以上の計9か所以上において各10点行い、その算術平均値を該表面層の層厚とした。
【0107】
<5.画像評価>
プロセスカートリッジの低トルク化を目的として、プロセスカートリッジ(商品名:HP 410X High Yield Magenta Original LaserJet Toner Cartridge (CF413X)、ヒューレット・パッカード社製)のクリーニングブレードの感光体に対する侵入量を小さくした。具体的には、該クリーニングブレードの組み付け座面を1mm削ることによって侵入量を小さくした。これによりプロセスカートリッジが低トルクとなる一方で、トナー外添剤成分の堆積やトナーの融着などにより感光体外表面が汚染しやすくなる。次に、該プロセスカートリッジに作製した現像ローラZ-1を組み込み、該プロセスカートリッジを画像形成装置であるレーザービームプリンター(商品名:Color Laser Jet Pro M452dw、ヒューレット・パッカード社製)に装填した。
【0108】
(画像評価5-1.1dot画像の粒状性)
前記カートリッジを低温低湿環境下(温度15℃、相対湿度10%)にて24時間以上エージングを行った。
前記エージング後、同環境下において、1dot画像(4dotのうち1dotが濃度100%、3dotが濃度0%のパターンを繰り返して成る画像)をA4紙で1枚出力した。得られた1dot画像の粒状性(ガサツキ)を目視で評価した。1dot画像の粒状性の評価基準は以下の通りである。結果を「1dot画像の粒状性」として表(表10、11、18)に示す。
ランクA:1dot画像のガサツキがなく、粒状性が非常に良好である。
ランクB:1dot画像のガサツキが極軽微であり、粒状性が良好である。
ランクC:1dot画像のガサツキが軽微。
ランクD:1dot画像のガサツキがあり、粒状性が悪い。
【0109】
(画像評価5-2.1dot画像の濃度低下)
画像評価5-1ののち、同環境下において、印字率0.5%の画像をA4で100,000枚出力後、再び該1dot画像を出力した。次いで、画像評価5-1で得た1dot画像の濃度と、100,000枚出力後の1dot画像の濃度と、を、分光濃度計(商品名:508、Xrite社製)を用いて測定し、100,000枚出力前後の濃度差(出力前の濃度-出力後の濃度)を求めた。画像濃度差の評価基準は以下の通りである。結果を「1dot画像の濃度低下」として表(表10,11、18)に示す。
ランクA:画像濃度差が0.05未満であり、画像濃度変化が非常に小さい。
ランクB:画像濃度差が0.05以上0.10未満。
ランクC:画像濃度差が0.10以上0.20未満。
ランクD:画像濃度差が0.20以上であり、画像濃度変化が大きい。
【0110】
(画像評価5-3.白ポチ)
画像評価5-1及び5-2と同じ構成のプロセスカートリッジを用意し、高温高質環境下(温度30℃、相対湿度80%)にて24時間以上エージングを行った。前記エージング後、同環境下において、印字率0.5%の画像をA4で100,000枚出力後、黒ベタ画像(全面が濃度100%の画像)を出力した。得られた画像における白ポチ(直径300μm以上の白抜け)の有無を目視で評価した。1dot画像の粒状性の評価基準は以下の通りである。結果を「白ポチ」として表(表10、11、18)に示す。
ランクA:白ポチが存在しない。
ランクB:白ポチが1画像中に10個未満。
ランクC:白ポチが1画像中に10個以上20個未満。
ランクD:白ポチが1画像中に20個以上。
【0111】
<5.(実施例2~32、比較例1~9;現像ローラZ-2~Z-32、K-1~K-9の作製]>
導電性弾性ローラ、及び表面層塗工液を、表6に記載のものとした以外は実施例1と同様にして、実施例2~32の現像ローラZ-2~32、比較例1~9の現像ローラK-1~K-9を製造した。なお、実施例18~20の現像ローラZ18~20は表面層の層厚を変更するために表面層塗工液の固形分濃度を適宜調整した。
【0112】
【0113】
【0114】
次いで、製造した実施例2~32の現像ローラZ-2~32、比較例1~9の現像ローラK-1~K-9を実施例1と同様にして物性評価及び画像評価を行った。結果を表7~表11に示す。
なお、比較例1~4及び6~9の現像ローラでは、表面層中での体積平均粒子径が10μmより大きい粒子を第1の樹脂粒子、10μm以下の粒子を第2の樹脂粒子、としてそれぞれの弾性率及び体積比率の測定値を表9に記載した。また、比較例5の現像ローラでは、弾性率により区分した体積平均粒子径が相対的に大きな樹脂粒子を第1の樹脂粒子、小さな樹脂粒子を第2の樹脂粒子として、それぞれの弾性率及び体積比率の測定値を表9に記載した。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
<6.実施例33~62;現像ローラZ-33~Z-62の作製>
<6-1.表面層塗工液X-33~X-X-54の調製>
表12に記載した配合の表面層塗工液X-33~X-54を調製した。
また、表12で使用した添加剤F-1~F-3の詳細を表14に記載した。
【0121】
【0122】
<6-2.含浸塗工液W-1の調製>
以下の配合で原材料を混合した。
アクリルモノマーG-1 :100.0質量部
(商品名:NKエステルA-NPG、新中村化学社製)
光重合開始剤H-1 :10.0質量部
(商品名:Omnirad184、IGM Resins社製)
次いで、上記原材料の固形分が11質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を加え、回転課題で3時間撹拌し含浸塗工液W-1を得た。
【0123】
<6-3.含浸塗工液W-2~W-4の調製>
表13に記載の処方とした以外は含浸塗工液W-1と同様にして含浸塗工液W-2~W-4を調製した。
また、表13で使用したアクリルモノマーG-1~G-4、光開始重合剤H-1、H-2の詳細を表14に記載した。
【0124】
【0125】
【0126】
<6-4.ローラY-1~Y-30の製造>
面層塗工液X-1を表15に示す表面層塗工液とした以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ローラ上に表面層を被覆したローラY-1~Y-30を製造した。
【0127】
【0128】
<6-5.(実施例33;現像ローラZ-33の作製>
含浸塗工液W-1を、前記ローラY-1へ1回ディッピングし含浸させた後、23℃で120分間風乾した。なお、ディッピング塗布引き上げ速度は、20mm/secで行った。次いで、該ローラY-1を20rpmで該表層付きローラ周方向に回転させながら、高圧水銀UVランプ(商品名:ハンディータイプUV硬化装置、マリオネットワーク社製)を用いて大気雰囲気にて積算光量15000mJ/cm2となるように該ローラY-1該表面にUV光を照射し、該アクリルモノマーを架橋硬化させた。以上のようにして、含浸処理を施した現像ローラZ-33を作製した。
【0129】
次いで、作製した実施例33の現像ローラZ-33を実施例1と同様にして物性評価及び画像評価を行った。結果を表17及び表18に示す。
【0130】
<6-6.(実施例34~62;現像ローラZ-34~Z-62の作製]>
ローラY-1及び表面層塗工液W-1を表16に記載したとおりに変更した以外は実施例33と同様にして現像ローラZ-34~Z-62を作製した。次いで、作製した実施例34~62の現像ローラZ-34~62を実施例1と同様にして物性評価及び画像評価を行った。結果を表17及び表18に示す。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
表10~11、18に示した通り、本開示の構成を満たす実施例1から62の現像ローラによって、耐久を通して高品位な画像が得られた。特に、実施例33~62では、表面層の外表面近傍の表面層マトリックスの高硬度化によって、さらに高品位な画像が得られた。
【0135】
一方、比較例1の現像ローラは、第1の樹脂粒子がアクリル樹脂粒子であり、弾性率が2000MPaよりも高いために、白ポチが悪く、また、表面層マトリックスとの密着性がポリウレタン樹脂粒子の場合より低いことで1dot画質の粒状性も悪かったと推察される。
比較例2の現像ローラでは、アクリル樹脂粒子の弾性率を本開示の第1の樹脂粒子の弾性率の範囲内としたが、白ポチや1dot画像の粒状性は改善しなかった。
比較例3の現像ローラでは、第1の樹脂粒子にウレタン粒子を用いたものの、該粒子の弾性率が本開示の範囲を下回ったことで、感光体外表面の汚染物を掻き取りきることができず、1dot画像の濃度低下が大きく、白ポチも悪かったと推察される。
比較例4の現像ローラでは、第2の樹脂粒子に本開示の範囲を上回る弾性率の粒子を用いた結果、第2の樹脂粒子が存在する領域が高硬度化し、アーチ状の盛り上がりを形成できず、1dot画像の粒状性が悪かったと推察される。加えて、表面層全体の高硬度化により、トナーの劣化が促進され白ポチが悪化したと推察される。
比較例5の現像ローラでは、第1の樹脂粒子に体積平均粒子径の小さな粒子を少量用いたため、最大高さRz平均値が本開示の範囲を下回った結果、感光体外表面の汚染物を掻き取りきれず、1dot画像の濃度が大きく低下し白ポチも悪かったと推察される。
比較例6の現像ローラでは、第1の樹脂粒子に体積平均粒子径の大きな樹脂粒子を多量に用いたため、最大高さRz平均値が本開示の範囲を上回った結果、1dot画像の粒状性が悪化したと推察される。比較例7の現像ローラは、第2の樹脂粒子を用いなかったことで、第2の凸部が存在せず山の頂点密度Spdが本開示の範囲を下回ったことで、掻き乱された感光体外表面上のトナーを均す効果を得られず、1dot画像の粒状性が悪化したと推察される。
また、比較例8の現像ローラは、第2の樹脂粒子に体積平均粒子径が小さい粒子を多量に用いた結果、山の頂点密度Spdが本開示の範囲を上回ったことで、掻き乱されたトナーを均す効果が小さくなり、1dot画像の粒状性が悪化したと推察される。
また、比較例9の現像ローラは、マトリックスの深さ1μm以上での弾性率Ebが本開示の範囲を上回った結果、第2の樹脂粒子が存在する領域が高硬度化し、アーチ状の盛り上がりを形成できず、1dot画像の粒状性が悪かったと推察される。加えて、表面層全体の高硬度化により、トナーの劣化が促進され白ポチが悪化したと推察される。
【符号の説明】
【0136】
1:表面層マトリックス
2:第1の樹脂粒子
3:第1の凸部
4:第2の樹脂粒子
5:第2の凸部