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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240122BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G03G15/20 525
G03G21/00 370
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020058415
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157096
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筑後 陽一
(72)【発明者】
【氏名】武正 力也
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】舘澤 英和
(72)【発明者】
【氏名】津野 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 充
(72)【発明者】
【氏名】河合 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 泰靖
(72)【発明者】
【氏名】緒方 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】竹内 傑
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-164291(JP,A)
【文献】特開2017-015914(JP,A)
【文献】特開2008-129138(JP,A)
【文献】特開2008-233856(JP,A)
【文献】特開2012-189696(JP,A)
【文献】特開2017-116749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、
第一回転体と、前記第一回転体に当接して記録材を挟持搬送する定着ニップ部を形成する第二回転体とを有し、前記画像形成ユニットにより記録材に形成されたトナー像を記録材に定着する定着ユニットと、
前記第一回転体の表面を清掃する清掃ユニットと、
前記第一回転体に接触した接触状態と、前記第一回転体に接触していない離間状態とに、前記清掃ユニットを移動可能な移動手段と、
前記清掃ユニットの少なくとも一部が交換された場合に、前記第一回転体と前記清掃ユニットとが離間した前記離間状態で、前記画像形成ユニットにトナー像を形成させずに、前記定着ニップ部へ少なくとも1枚の記録材を搬送し前記定着ニップ部を通過させてから、前記清掃ユニットを前記離間状態から前記接触状態に移動する制御モードを実行する制御手段と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記制御モードの実行中、前記定着ニップ部を通過した1乃至複数枚の記録材の搬送方向長さの累計値が、前記第一回転体の周長以上となる場合に、前記定着ニップ部への新たな記録材の搬送を停止し、前記清掃ユニットを前記離間状態から前記接触状態に移動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記清掃ユニットは、前記第一回転体と接触して前記第一回転体を清掃する中間清掃体と、前記中間清掃体と接触して前記中間清掃体を清掃する交換可能な清掃部材と、を備え、
前記制御手段は、前記清掃部材が交換された場合に前記制御モードを実行する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着ユニットは、前記第一回転体を加熱する加熱手段と、前記第一回転体の表面温度を検知する温度検知手段とを備え、
前記制御手段は、前記制御モードの実行時、前記加熱手段により前記第一回転体を加熱し、加熱された前記第一回転体の表面温度がトナーの転移温度よりも高くなった場合に、前記定着ニップ部への記録材の搬送を開始する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
装置本体と、
記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、
第一回転体と、前記第一回転体に当接して記録材を挟持搬送する定着ニップ部を形成する第二回転体とを有し、前記画像形成ユニットにより記録材に形成されたトナー像を記録材に定着する定着ユニットと、
前記第一回転体の表面を清掃する清掃ユニットと、
前記第一回転体に接触した接触状態と、前記第一回転体に接触していない離間状態とに、前記清掃ユニットを移動可能な移動手段と、
前記装置本体に開閉可能に設けられ、開いた状態で前記装置本体内へのアクセスが可能な扉と、
前記扉が閉じられた場合に、前記第一回転体と前記清掃ユニットとが離間した前記離間状態で、前記画像形成ユニットにトナー像を形成させずに、前記定着ニップ部へ少なくとも1枚の記録材を搬送し前記定着ニップ部を通過させてから、前記清掃ユニットを前記離間状態から前記接触状態に移動する制御モードを実行する制御手段と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記定着ユニットは、前記装置本体に交換可能に設けられ、
前記扉は、開いた状態で前記定着ユニットの交換を可能とする、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記清掃ユニットは、前記装置本体に交換可能に設けられ、
前記扉は、開いた状態で前記清掃ユニットの少なくとも一部の交換を可能とする、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記清掃ユニットは、前記第一回転体と接触して前記第一回転体を清掃する中間清掃体と、前記中間清掃体と接触して前記中間清掃体を清掃する交換可能な清掃部材と、を備え、
前記扉は、開いた状態で前記清掃部材の交換を可能とし、
前記制御手段は、前記清掃部材が交換された場合に前記制御モードを実行する、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記制御モードの実行中、前記定着ニップ部を通過した1乃至複数枚の記録材の搬送方向長さの累計値が、前記第一回転体の周長以上となる場合に、前記定着ニップ部への新たな記録材の搬送を停止し、前記清掃ユニットを前記離間状態から前記接触状態に移動する、
ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記定着ユニットは、前記第一回転体を加熱する加熱手段と、前記第一回転体の表面温度を検知する温度検知手段とを備え、
前記制御手段は、前記制御モードの実行時、前記加熱手段により前記第一回転体を加熱し、加熱された前記第一回転体の表面温度がトナーの転移温度よりも高くなった場合に、前記定着ニップ部への記録材の搬送を開始する、
ことを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、電子写真方式などを利用してトナー像が形成された記録材を加熱することで、記録材にトナー像を定着させる定着ユニットを備えている。定着ユニットは、例えば記録材を加熱・加圧しながら挟持搬送する定着ローラと加圧ローラを有する。そして、主に定着ローラに付着したトナーや紙粉を除去するために、清掃ユニットを備えたものが従来から知られている(特許文献1)。特許文献1に記載の装置の場合、清掃ユニットは定着ローラに接触して定着ローラの表面を清掃する金属製の中間清掃ローラと、中間清掃ローラに接触して中間清掃ローラを清掃するクリーニングウェブとを有している。
【0003】
クリーニングウェブ(以下、単にウェブ)において既にトナーを拭き取った使用済み箇所は、トナーを拭き取り難くなる。そこで、清掃ユニットでは、ウェブが少しずつ巻き取られることで、トナーを拭き取っていない未使用箇所が使用されるようになっている。全て使用済みとなったウェブは清掃ユニットから取り外されて、新品のウェブに交換される。あるいは、清掃ユニットごと新品に交換される場合もある。また、上記した定着ユニットが交換可能な場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-212409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した定着ユニットや清掃ユニットあるいはウェブの交換を行う場合、ユーザは装置本体に開閉可能に設けられている前扉などを開放して、そこから交換を行い得る。ただし、前扉が開放されると、装置本体内にゴミや埃などの異物が侵入し、定着ユニットや清掃ユニットあるいはウェブの交換に伴って、異物が定着ローラに付着することがあった。従来では上記の交換後、定着ローラに異物が付着したまま画像形成などが行われてしまい、中間清掃ローラに比べて表面が軟質な定着ローラの表面に対し異物が繰り返し押圧されながら摺擦されて、定着ローラの表面に傷がつく虞があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされ、定着ローラに付着したゴミや埃などの異物を容易に除去可能な画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、第一回転体と、前記第一回転体に当接して記録材を挟持搬送する定着ニップ部を形成する第二回転体とを有し、前記画像形成ユニットにより記録材に形成されたトナー像を記録材に定着する定着ユニットと、前記第一回転体の表面を清掃する清掃ユニットと、前記第一回転体に接触した接触状態と、前記第一回転体に接触していない離間状態とに、前記清掃ユニットを移動可能な移動手段と、前記清掃ユニットの少なくとも一部が交換された場合に、前記第一回転体と前記清掃ユニットとが離間した前記離間状態で、前記画像形成ユニットにトナー像を形成させずに、前記定着ニップ部へ少なくとも1枚の記録材を搬送し前記定着ニップ部を通過させてから、前記清掃ユニットを前記離間状態から前記接触状態に移動する制御モードを実行する制御手段と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の画像形成装置は、装置本体と、記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、第一回転体と、前記第一回転体に当接して記録材を挟持搬送する定着ニップ部を形成する第二回転体とを有し、前記画像形成ユニットにより記録材に形成されたトナー像を記録材に定着する定着ユニットと、前記第一回転体の表面を清掃する清掃ユニットと、前記第一回転体に接触した接触状態と、前記第一回転体に接触していない離間状態とに、前記清掃ユニットを移動可能な移動手段と、前記装置本体に開閉可能に設けられ、開いた状態で前記装置本体内へのアクセスが可能な扉と、前記扉が閉じられた場合に、前記第一回転体と前記清掃ユニットとが離間した前記離間状態で、前記画像形成ユニットにトナー像を形成させずに、前記定着ニップ部へ少なくとも1枚の記録材を搬送し前記定着ニップ部を通過させてから、前記清掃ユニットを前記離間状態から前記接触状態に移動する制御モードを実行する制御手段と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第一回転体に接触していない離間状態で記録材を用いて第一回転体から異物を除去した後に、第一回転体に接触した接触状態に清掃ユニットを移動させることにより、第一回転体に付着した異物を除去することが容易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図。
図2】定着ユニットおよび清掃ユニットの構成を示す概略図。
図3】ウェブ及び中間清掃ローラの接離機構を示す模式図。
図4】定着ローラ、中間清掃ローラ、ウェブの、(a)全接触状態を示す図、(b)中間状態を示す図、(c)全離間状態を示す図。
図5】清掃ユニットの当接、離間制御を行う制御系を示す制御ブロック図。
図6】本実施形態の異物除去処理を示すフローチャート。
図7】通紙距離演算処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態について、図1乃至図7を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0012】
[画像形成装置]
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応して設けられた4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを後述する中間転写ベルト6の回転方向(図中矢印A方向)に沿って配置したタンデム型としている。画像形成装置100は、装置本体100aに接続された原稿読取装置(不図示)又は装置本体100aに通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器(不図示)からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材Sに形成する。記録材Sとしては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
【0013】
装置本体100aは、複数の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを備え、各画像形成部Pa~Pdでは、上述の画像信号に基づいて画像形成が行われる。即ち、画像信号は制御部200によりPWM(パルス幅変調制御)されたレーザービームに変換される。露光装置としてのレーザスキャナ5は、画像信号に応じたレーザービームを走査する。そして、各画像形成部Pa~Pdの像担持体としての感光ドラム3にレーザービームが照射される。
【0014】
なお、Paはイエロー色(Y)の画像形成部、Pbはマゼンタ色(M)の画像形成部、Pcはシアン色(C)の画像形成部、Pdはブラック色(Bk)の画像形成部で、それぞれ対応する色の画像を形成する。画像形成部Pa~Pdは略同一なので、以下にイエロー色(Y)の画像形成部Paの詳細を説明して、他の画像形成部Pb~Pdの説明は省略する。画像形成部Paにおいて、感光ドラム3は、次述するように、画像信号に基づいて表面にトナー像が形成される。
【0015】
1次帯電器としての帯電ローラ2は、感光ドラム3の表面を所定の電位に帯電させて静電潜像形成の準備を施す。レーザスキャナ5からのレーザービームによって、所定の電位に帯電された感光ドラム3の表面に静電潜像が形成される。現像器1は、感光ドラム3上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する。
【0016】
ここで、本実施形態で使用するトナーは、離型剤としてのパラフィン、もしくはポリオレフィンからなるワックスや、シリコーンオイルを含有(内包)している。具体的には、粉砕トナーの内部にワックス成分と顔料が微分散されたトナーを用いている。なお、このようなワックス成分を含有した重合トナーを用いる構成としても構わない。以下の説明では、離型剤としてワックスを例に説明するが、上述したように離型剤としてシリコーンオイルを使用する場合であっても同様である。
【0017】
1次転写ローラ24は、中間転写ベルト6の内周面から放電を行いトナーと逆極性の一次転写バイアスを印加し、1次転写部n1にて感光ドラム3上のトナー像を中間転写ベルト6上へ転写する。中間転写ベルト6は、張架ローラ13、14、15によって図中矢印A方向に、感光ドラム3と同じ周速度で回転可能となるように構成されている。トナー像を中間転写ベルト6に転写した後の感光ドラム3は、クリーナー4でその表面を清掃される。
【0018】
また、中間転写ベルト6上のトナー像は次の画像形成部に搬送され、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の順に、順次それぞれの画像形成部にて形成された各色のトナー像が転写され、4色の画像がその表面に形成される。そして、中間転写ベルト6の回転方向最下流にあるブラック色(Bk)の画像形成部Pdを通過したトナー像は、2次転写ローラ対11、14で構成される2次転写部n2に搬送される。そして、2次転写部において、中間転写ベルト6上のトナー像と逆極性の2次転写電界が印加されることにより、記録材Sにトナー像が2次転写される。
【0019】
二次転写されたトナー像は、記録材Sの4辺端部より一定の余白部を残して形成される。本実施形態では、先端余白部は2~3[mm]程度である。なお、中間転写ベルト6上に残留した転写残トナー及びその他の異物は、中間転写ベルト6の表面に、ベルトクリーナ22における不織布からなるクリーニングウェブ23を摺擦されることで拭い取られる。
【0020】
記録材Sは、カセット10に収容されており、カセット10から給送された記録材Sは、例えば1対のレジストレーションローラで構成されるレジ部12に搬送され、レジ部12で待機する。その後、レジ部12は、中間転写ベルト6上のトナー像と記録材Sの位置を合わせるためにタイミングが制御され、記録材Sが2次転写部n2に搬送される。上述のように各画像形成部Pa~Pd、中間転写ベルト6などを含み、記録材Sにトナー像を2次転写する構成までを、記録材Sにトナー像を形成する画像形成ユニット150とする。
【0021】
2次転写部n2でトナー像が転写された記録材Sは、定着ユニット9に搬送され、定着ユニット9において、加熱、加圧されることで、記録材Sに担持されたトナー像が記録材Sに定着される。定着ユニット9を通過した記録材Sは、排出トレイ8に排出される。なお、記録材Sの両面に画像形成を行う場合は、記録材Sの第一面(表面)へのトナー像の転写及び定着が終了すると、反転搬送部21を経て記録材Sの表裏を逆転し、記録材Sの第二面(裏面)へのトナー像の転写及び定着が行われる。その後、記録材Sは排出トレイ8に排出される。
【0022】
また、装置本体100aには開閉可能な前扉500が設けられている。ユーザは前扉500を開いた状態とすることにより、装置本体100a内の定着ユニット9や清掃ユニット60等に外部からアクセスして交換可能となる。本実施形態の場合、ユーザは前扉500を開けた状態で、装置本体100aから定着ユニット9や清掃ユニット60の交換を行い得る。あるいは、ユーザは前扉500を開けた状態で清掃ユニット60の一部である後述するクリーニングウェブの交換を行い得る。
【0023】
[定着ユニット]
次に、図2を用いて本実施形態の定着ユニット9及び清掃ユニット60の概略構成について説明する。本実施形態における定着ユニット9は、後述するように、離型剤を含有したトナーを用いて記録材上に形成されたトナー像を加熱及び加圧することによって定着する構成を備えている。
【0024】
装置本体100a内に支持されたケーシング31内(図1参照)には、定着ユニット9が配置されている。定着ユニット9は、第一回転体としての定着ローラ40、第二回転体としての加圧ローラ41を有する。このような定着ユニット9では、加圧ローラ41が、例えば総圧力「約784[N](約80[kgf])」で、定着ローラ40に圧接されて、記録材Sを挟持搬送しつつ加熱する定着ニップ部n3が形成されている。
【0025】
加圧ローラ41は、定着ローラ40に当接して記録材上の画像(トナー像)を加熱する定着ニップ部n3を形成している。定着ユニット9では、画像形成ユニット150で記録材Sに二次転写された未定着トナー像が、画像面に接触させる定着ローラ40と加圧ローラ41との間の定着ニップ部n3により挟持搬送されて、記録材Sに定着される。
【0026】
定着ローラ40は、トナー像と接触して、トナー像を記録材に定着させる回転体である。本実施形態では、定着ローラ40は、アルミニウム製の円筒状の芯金40bを有し、芯金40bの外周面に、厚さが例えば3[mm]の弾性層40cが配置され、直径が例えば60[mm]の円筒状のものとして構成される。弾性層40cの下層は、HTV(高温加硫型)シリコーンゴム層であり、このHTVシリコーンゴム層の外周面に、画像面に接触させる耐熱弾性層としてのRTV(室温加硫型)シリコーンゴム層が配置されている。弾性層40c上には、トナーとの離型性向上のために、耐熱性の離型層40dとしてフッ素系樹脂(本実施形態ではPFAチューブ)が被覆されている。
【0027】
また、定着ローラ40内には、定着ローラ40を加熱する加熱手段としての定着ローラヒータ40aが配置されている。定着ローラヒータ40aは、定着ローラ40の芯金40b内の中心部に非回転に配置されており、定着ローラ40の表面温度が所定温度となるようにその内側から加熱する、所定定格電力のハロゲンヒータである。定着ローラヒータ40aは、後述する定着ユニット制御部202(図5参照)の制御で設定温度が変更される。本実施形態では、定着ローラ40の表面温度を検知する温度検知手段としての第一温度検知センサ42aを有する。定着ユニット制御部202は、第一温度検知センサ42aの出力に基づいて定着ローラ40の表面温度が所定温度となるように、定着ローラヒータ40aを制御する。
【0028】
なお、後述する中間清掃ローラ62にヒータを内蔵して中間清掃ローラ62自身を加熱することで、定着ローラ40を加熱するようにしてもよい。この場合には、定着ユニット制御部202は、第一温度検知センサ42aの出力に基づいて中間清掃ローラ62のヒータを制御するようにしてもよい。
【0029】
加圧ローラ41は、定着ローラ40に対向するように配置され、上述のように定着ローラ40との間に定着ニップ部n3を形成するニップ部形成部材である。本実施形態では、加圧ローラ41は、アルミニウム製の円筒状の芯金41bを有し、芯金41bの外周面に、厚さが例えば1[mm]の弾性層41cが配置され、直径が例えば60[mm]の円筒状のものとして構成される。弾性層41cの下層は、HTVシリコーンゴム層であり、このHTVシリコーンゴム層の外周面にフッ素樹脂層が配置されている。弾性層41c上には、トナーとの離型性向上のために、耐熱性の離型層41dが被覆されている。
【0030】
また、加圧ローラ41内には、加圧ローラ41を加熱する加圧ローラヒータ41aが配置されている。加圧ローラヒータ41aは、加圧ローラ41の芯金41b内の中心部に非回転に配置されており、加圧ローラ41の表面温度が所定温度となるようにその内側から加熱する、所定定格電力のハロゲンヒータである。本実施形態では、加圧ローラ41の表面温度を検知する第二温度検知センサ42bを有し、定着ユニット制御部202は、第二温度検知センサ42bの出力に基づいて定着ローラ40の表面温度が所定温度となるように、加圧ローラヒータ41aを制御する。
【0031】
本実施形態では、上述した層構成の定着ローラ40と加圧ローラ41とを組み合わせることによって、シャープメルトトナーに対する離型性をより一層向上させている。また、両面画像の定着のために、定着ローラ40だけでなく加圧ローラ41の表面にも、トナー離型効果の高いRTVまたはLTV(低温加硫型)シリコーンゴム等からなる上記の離型層41dが設けられている。
【0032】
定着ローラ40及び加圧ローラ41は、それぞれ両端がボールベアリング(不図示)によって回転自在に支持されている。定着ローラ40及び加圧ローラ41は、各一方の軸端部に固定された歯車(不図示)が歯車機構(不図示)により互いに連結され、定着ローラモータ211(図5参照)によって一体に回転駆動されることで、それぞれ矢印K、矢印Lの方向に回転する。なお、加圧ローラ41を駆動するモータを別に設けて、定着ローラ40と加圧ローラ41とを別のモータで駆動するようにしてもよい。
【0033】
上述のように、ケーシング31内において、定着ローラ40の表面に当接して定着ローラ40の表面温度を検知するように、サーミスタ等からなる第一温度検知センサ42aが配置されている。第一温度検知センサ42aは、定着ローラ40の回転方向における定着ニップ部n3の上流側に配置されている。第一温度検知センサ42aは、定着ユニット制御部202(図5参照)に接続されている。定着ユニット制御部202では、第一温度検知センサ42aで検知される定着ローラ40の表面温度が所定温度(例えば、約165[℃])に収束するように、定着ローラヒータ40aへの供給電力を調整する。
【0034】
[清掃ユニット]
次に、図2乃至図4(c)を用いて、清掃ユニット60について説明する。なお、図3は中間清掃ローラ62とウェブローラ63とを接離させる接離機構32を示す模式図であり、図2図4(a)乃至図4(c)に示した定着ローラ40を回転軸線反対側から見た図である。本実施形態における中間清掃ローラ62及びウェブの接触、離間状態について、図4(a)乃至図4(c)を用いて説明する。
【0035】
清掃ユニット60は定着ローラ40の表面を清掃するためのもので、定着ローラ40の上方に交換可能に設けられている。清掃ユニット60は、定着ローラ40の表面を清掃するものであって、中間清掃体としての中間清掃ローラ62、清掃部材としてのウェブ(クリーニングウェブ)61、移動手段としての接離機構32などを有する。中間清掃ローラ62は、定着ローラ40と接触して定着ローラ40を清掃する。ウェブ61は、中間清掃ローラ62と接触して中間清掃ローラ62を清掃する。接離機構32は、中間清掃ローラ62及びウェブ61を移動可能である。
【0036】
このような本実施形態の場合、接離機構32を動作させることで、中間清掃ローラ62及びウェブ61を、少なくとも図4(a)~図4(c)の3つの状態とすることが可能である。まず、図4(a)は、定着ローラ40と中間清掃ローラ62とを接触させ、中間清掃ローラ62とウェブ61とを接触させた全接触状態である。図4(b)は、定着ローラ40と中間清掃ローラ62とを接触させ、中間清掃ローラ62とウェブ61とを離間させた中間状態である。図4(c)は、定着ローラ40、中間清掃ローラ62及びウェブ61をそれぞれ離間させた全離間状態である。以下、詳しく説明する。
【0037】
図2に示すように、清掃ユニット60によるクリーニング動作時には、定着ローラ40とウェブ61との間に中間清掃ローラ62を配置するように構成される。中間清掃ローラ62は定着ローラ40に対して従動回転し、定着ローラ40上のトナーや紙粉などを回収する。中間清掃ローラ62に対してウェブ61を摺擦させることで、回収されたトナーや紙粉などのクリーニングを実現している。中間清掃ローラ62は、ウェブ61と定着ローラ40の接触を間接的に実行させるため、ウェブ61に拘束された紙粉などの摺擦により定着ローラ40が傷付いて出力画像にスジが発生する現象を抑制している。
【0038】
清掃部材としてのウェブ61は、ロール状に巻き取られた例えば全長約5mの不織布のシートである。ウェブ61の送り出し端部61aは、ロール芯に固定されてウェブフレーム70(図3参照)に支持された支持軸64に対して着脱可能に支持される。装着部の一例である支持軸(送り出しローラ)64は、ウェブ61の未使用箇所が巻き取り状態で巻き戻し方向へ回転可能に装着される。
【0039】
ウェブ61の巻き取り端部61bは、ウェブフレーム70に支持されたの駆動軸65に着脱可能に保持される。駆動軸65の一端にウェブ61を巻き取るためにウェブ送りモータ210が接続される。ウェブ61は、ウェブローラ63に掛け渡されており、ウェブローラ63に掛け渡された部分を中間清掃ローラ62に摺擦させるようにしている。即ち、ウェブ送りモータ210が巻き取り方向に回転すると、巻き取り端部61bが駆動軸(巻き取りローラ)65に巻き取られることで、ウェブ61がウェブローラ63を経由して送り出し端部61aから引っ張られることにより支持軸64が従動回転する。これにより、ウェブ61は、矢印B方向に徐々に巻き取られていく。そして、このウェブ61の巻き取り動作により中間清掃ローラ62をウェブ61により摺擦する。
【0040】
清掃ユニット60は、ウェブ61を中間清掃ローラ62に押し付けるためのウェブローラ63を有している。ウェブローラ63は、ウェブ61を中間清掃ローラ62へ向かって加圧して中間清掃ローラ62に摺擦させる。ウェブローラ63は、ウェブ61による清掃能力を向上させるために中間清掃ローラ62とのニップ幅を広くとることが好ましい。そのため、例えば耐熱性を有したφ30mmのシリコーンスポンジを軸63a(図3)上に巻き、シリコーンスポンジの上から、トナー付着防止用に厚み100μm程度のフッ素樹脂からなるPFAチューブを被覆して構成される。ウェブローラ63の軸63aは、図3に示すように、清掃ユニット60のウェブフレーム70に形成された長孔70bに対して軸受71を介して中間清掃ローラ62方向に移動可能に支持される。ウェブローラ63の軸63aは、軸受71を介してウェブフレーム70に端部が固定されたウェブローラ加圧バネ72によって付勢されている。
【0041】
中間清掃体としての中間清掃ローラ62は、外径が例えば20mmのローラであって、離型層を有する定着ローラ40よりも溶融したトナーに対する親和性が高いステンレス(SUS303)等の金属製である。そのため、記録材から定着ローラ40へ付着したトナーや紙粉などは、定着ローラ40から中間清掃ローラ62へ回収される。中間清掃ローラ62は、図3に示すように、中間支持アーム67に両端部を支持された回転軸62aによって回転自在に支持される。また、中間清掃ローラ62は、後述する接離機構32により中間支持アーム67が動作することで定着ローラ40に対して接触する状態と離間する状態の間を移動可能に構成される。中間支持アーム67は中間清掃ローラ加圧バネ69により定着ローラ40方向に付勢される。
【0042】
[接離機構]
次に、移動手段としての接離機構32について、図3乃至図4(c)を用いて説明する。接離機構32は、中間清掃ローラ62及びウェブ61を移動可能であって、これらを図4(a)~(c)に示した「全接触状態」、「中間状態」、「全離間状態」の3つの状態に遷移させるものである。
【0043】
このような接離機構32は、中間清掃ローラ62を支持する中間支持アーム67、ウェブ61を支持するウェブフレーム70、着脱カム74などを有する。中間支持アーム67及びウェブフレーム70は、共通の揺動軸70aを中心に揺動自在に支持されている。ウェブフレーム70は、ウェブアーム73が一体に形成されており、ウェブアーム73と不図示のフレームとの間に掛け渡されたばね75により、ウェブローラ63が定着ローラ40に向かう方向に付勢されている。
【0044】
着脱カム74は、ウェブアーム73の当接部73aに当接可能に設けられ、ウェブ着脱モータ209により駆動される。ばね75は、当接部73aが着脱カム74に当接する方向にウェブアーム73を付勢している。着脱カム74は、偏心した形状であって、ウェブ着脱モータ209により回転軸74aを中心に図3の時計方向に回転させられることで、当接部73aをばね75の付勢方向と逆方向に移動させる。これにより、ウェブアーム73と一体のウェブフレーム70が揺動軸70aを中心に図3の反時計方向に揺動し、ウェブフレーム70に支持されたウェブローラ63及びウェブ61を、中間清掃ローラ62から離間させる。
【0045】
また、着脱カム74は、ウェブ着脱モータ209により回転軸74aを中心に図3の反時計方向に回転させられることで、当接部73aをばね75の付勢方向と同方向に移動させる。これにより、ウェブアーム73と一体のウェブフレーム70が揺動軸70aを中心に図3の時計方向に揺動し、ウェブフレーム70に支持されたウェブローラ63及びウェブ61を、中間清掃ローラ62から当接させる。
【0046】
中間支持アーム67は、不図示のフレームとの間にばね69が掛け渡されており、ばね69により、中間清掃ローラ62が定着ローラ40に向かう方向に付勢されている。また、中間支持アーム67は、ウェブフレーム70と一体のウェブアーム73に設けられた規制部73bが突き当たる突き当て部67cを有する。規制部73bは、中間支持アーム67の突き当て部67cと接触することで、中間支持アーム67による中間清掃ローラ62の定着ローラ40方向への回転移動を規制する。
【0047】
突き当て部67cは、全接触状態からウェブフレーム70が着脱カム74により移動されることで、ウェブ61が中間清掃ローラ62から離れた後、規制部73bが突き当たるように配置されている。
【0048】
中間支持アーム67は、規制部73bが突き当て部67cに突き当たった状態で、着脱カム74が更に同方向(図3の時計方向)に駆動されることで、規制部73bと突き当て部77cの当接によりウェブフレーム70と共に、揺動軸70aを中心に揺動する。そして、中間清掃ローラ62が定着ローラ40から離間する方向に中間支持アーム67が移動される。一方、着脱カム74がこれと逆方向に回転駆動されると、中間支持アーム67は、ばね69の付勢力により中間清掃ローラ62が定着ローラ40に当接する方向に移動される。
【0049】
このような接離機構32により、清掃ユニット60を上述の3つの状態とする。即ち、図4(a)に示す全接触状態は、定着ローラ40と中間清掃ローラ62が当接し、且つ、中間清掃ローラ62とウェブ61が当接する状態である。この状態では、ウェブアーム73の規制部73bと中間支持アーム67の突き当て部67cが離間しており、中間清掃ローラ62は定着ローラ40に押圧されている。この時、ウェブローラ63はウェブ61を介して中間清掃ローラ62に対して例えば40[N]で加圧を行う。また、ばね69は、中間清掃ローラ62の両端を定着ローラ40へ向かって付勢して、例えば60[N]の力で中間清掃ローラ62を定着ローラ40に押圧している。
【0050】
上述の接触関係を採ることで、定着ローラ40上に付着した残留トナーや紙粉などは、まず、定着ローラ40に従動回転により中間清掃ローラ62で回収される。その後、ウェブローラ63にてウェブ61が押し付けられることで中間清掃ローラ62に摺擦し、中間清掃ローラ62に回収された残留トナーや紙粉などがウェブ61により清掃除去される。
【0051】
即ち、ウェブ61を介してウェブローラ63を中間清掃ローラ62に当接させた状態で定着ローラ40を回転させると、中間清掃ローラ62の従動回転により定着ローラ40から中間清掃ローラ62上に残留トナーや紙粉などが回収される。そして、回収された残留トナーや紙粉などがウェブ61によって清掃される。この場合、中間清掃ローラ62に接しているウェブ61は、図2の矢印B方向に徐々に巻き取られて、トナーで飽和する前に新しい部分が中間清掃ローラ62と当接する。
【0052】
清掃ユニット60によるクリーニング動作中、ウェブ送りモータ210の回転に伴って、ウェブ61はA4サイズの記録材「1枚」につき例えば「0.5mm」の割合で、徐々に矢印B方向に巻き取られていく。ウェブ61が巻き取られる速度は、中間清掃ローラ62と接したウェブ61の部分がトナーで飽和する前に新しい未使用箇所が中間清掃ローラ62と当接するように設定されている。ウェブ61の送り出し端部61aは、巻き取り端部61bへのウェブ61の巻き取りに伴って従動回転し、ウェブ61の未使用箇所を少しずつ中間清掃ローラ62当接部に供給する。
【0053】
図4(b)に示す中間状態は、定着ローラ40と中間清掃ローラ62とが当接し、ウェブ61が中間清掃ローラ62から離間した状態である。ウェブ着脱モータ209が着脱カム74を回転させると、ウェブアーム73が上述のように揺動軸70aを中心に回動し、全接触状態、あるいは、離間状態から中間状態にウェブ61とウェブローラ63を一体で移動させる。中間状態では、ウェブアーム73の規制部73bと中間支持アーム67の突き当て部67cは離間したままであり、中間清掃ローラ62は定着ローラ40に対して約60[N]の力で押圧される。
【0054】
図4(c)に示す離間状態は、定着ローラ40と中間清掃ローラ62、及びウェブ61が、それぞれ互いに離間した状態である。ウェブ着脱モータ209が着脱カム74を回転させると、ウェブアーム73が上述のように揺動軸70aを中心に回動し、全接触状態から中間状態へ、更に中間状態から離間状態にウェブ61とウェブローラ63を一体で移動させる。
【0055】
離間状態では、ウェブアーム73の規制部73bと中間支持アーム67の突き当て部67cは接触し、中間支持アーム67による中間清掃ローラ62の定着ローラ40方向への回転移動を規制する。また、ウェブアーム73の回転に伴い、突き当て部67aで規制される中間支持アーム67は、中間清掃ローラ62を定着ローラ40から離間させる方向に回転移動する。
【0056】
離間状態では、定着ローラ40と中間清掃ローラ62が完全に離間するため、定着ローラ40の表面に付着した残留トナーや紙粉などが中間清掃ローラ62に堆積しない。そのため、ウェブ61を中間清掃ローラ62に摺擦させるための巻き取り動作を実行する必要がなく、ウェブ61を消費しない。また、中間清掃ローラ62とウェブ61が完全に離間することで、ウェブ61の巻き取り動作を実行しない場合に、ウェブ61で回収したトナーや紙粉などが中間清掃ローラ62に再付着することを抑制できる。また、溶けたトナーなどによるウェブ61と中間清掃ローラ62の貼り付きなどを抑制することが可能である。
【0057】
[制御部]
次に、本実施形態における清掃ユニット60の当接、離間制御を行う制御系について、図5を用いて説明する。画像形成装置100(図1参照)には、各部を統括的に制御する全体システムの制御部200が設けられており、全体システムの制御部200には、操作部としての操作パネル201や定着ユニット制御部202が接続されている。操作パネル201は、ユーザが画像形成装置100に対する各種設定(例えば、記録材の種類などの設定)を行える。定着ユニット制御部202は定着ユニット9に設けられ、定着ユニット9の装置本体への装着に応じて、制御部200とデータ等の送受信可能に接続される。
【0058】
制御手段としての制御部200及び定着ユニット制御部202は、それぞれCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0059】
定着ユニット制御部202には、清掃ユニット制御部203、第一温度検知センサ42a、定着ローラヒータ40a、定着ローラモータ211などが接続されている。また、定着ユニット制御部202には、第二温度検知センサ42b、加圧ローラヒータ41aが接続されている。
【0060】
定着ユニット制御部202は、全体システムの制御部200の指令に従い、第一温度検知センサ42a、第二温度検知センサ42bからの検知信号に基づいて、定着ユニット9の各部を動作させる。例えば、清掃ユニット制御部203を介して清掃ユニット60を制御すると共に、定着ローラヒータ40a、定着ローラモータ211、加圧ローラヒータ41aをそれぞれ制御する。
【0061】
清掃ユニット制御部203は、清掃ユニット60を制御する。清掃ユニット制御部203には、ホームポジションセンサ208、ウェブ着脱モータ209、ウェブ送りモータ210が接続されている。ホームポジションセンサ208は、ウェブローラ63のホームポジションを検知するセンサである。ウェブ着脱モータ209は、上述のように、着脱カム74を回転させてウェブ61を中間清掃ローラ62に着脱、及び、中間清掃ローラ62を定着ローラ40に着脱するモータである。ウェブ送りモータ210は、上述のように、巻き取りローラである駆動軸65を回転させてウェブ61を巻き取るモータである。
【0062】
清掃ユニット制御部203は、ホームポジションセンサ208によるウェブローラ63の中間清掃ローラ62に対する位置を判定しながら、ウェブ着脱モータ209を駆動して着脱カム74を回転させる。これと共に、ウェブ送りモータ210の駆動でウェブ61を巻き取りつつ、ウェブ61を中間清掃ローラ62に着脱させる。本実施形態では、ホームポジションセンサ208は着脱カム74軸上にとりつけられており、前述の全離間状態の時に、反応する(オン状態となる)フォトインタラプタを用いている。
【0063】
さらに、本実施形態の場合、上記の定着ユニット制御部202には、通紙距離検知部220が接続されている。通紙距離検知部220は、通紙距離保存領域221、開始フラグ領域222、通紙フラグ領域223を有する。通紙距離検知部220は、制御部200が後述する「異物除去処理」(制御モード:図6参照)を実行した場合に、定着ローラ40を通過した記録材Sの搬送方向長さの累計長さ(通紙距離と呼ぶ)を演算して、それを通紙距離保存領域221に記憶する。
【0064】
開始フラグ領域222には、定着ローラ40を通過した記録材Sの枚数カウントの開始を判定するために用いる通紙カウント開始フラグが「0」又は「1」のいずれかに設定され記憶されている。通紙カウント開始フラグは、定着ローラ40にゴミや埃などの異物が付着しやすい状況に対応して設定されるフラグであり、例えば以下に例示するような第1、第2の設定条件のときに「1」に設定されている。
【0065】
第1の通紙カウント開始フラグの設定条件は、例えば定着ユニット9を新品に交換した時である。新品の定着ユニット9は、製造元から設置先までの運搬に伴い、長い時間にわたり振動されることが想定される。そうした場合、定着ローラ40には、交換を行うために前扉500(図1参照)が開放された箇所から装置本体内に侵入したゴミや埃、あるいは定着ユニット9内にあった微小な部品のかけらや破片などが付着することがあり得る。そこで、「1」に設定された通紙カウント開始フラグが開始フラグ領域222に記憶された状態で、新品の定着ユニット9が製造元から出荷されるようにしている。
【0066】
第2の通紙カウント開始フラグの設定条件は、例えば清掃ユニット60を新品に交換した時、あるいは清掃ユニット60からウェブ61のみを交換した時である。清掃ユニット60あるいはウェブ61を交換する場合にも、交換を行うために前扉500(図1参照)が開放される。定着ローラ40には、交換を行うために前扉500が開放された箇所から装置本体内に侵入したゴミや埃、あるいは定着ユニット9内にあった微小な部品のかけらや破片などが付着することがあり得る。そこで、ウェブ61の交換が行われた場合、通紙カウント開始フラグが「1」に設定されて開始フラグ領域222に記憶される。この場合には、ウェブ61の交換後に、ユーザが操作パネル201から通紙カウント開始フラグに「1」を設定してよい。あるいは、定着ユニット制御部202がウェブ61の交換をハードウェア的に検知できる構成であるならば、通紙カウント開始フラグが自動的に「1」に設定されてもよい。なお、ウェブ61に限らず、定着ローラ40や中間清掃ローラ62を交換可能に設けておき、これらを交換した場合に、通紙カウント開始フラグを手動あるいは自動的に設定できるようにしてもよい。
【0067】
通紙フラグ領域223には、通紙完了フラグが「0」又は「1」のいずれかに設定され記憶されている。本実施形態の場合、通紙完了フラグは初期値「0」に設定される。そして、後述する「異物除去処理」(図6参照)の実行にあわせ演算され通紙距離保存領域221に記憶される通紙距離が所定値以上である場合に、通紙完了フラグに「1」が設定される。上記の所定値は、例えば定着ローラ40の周長である。詳しくは後述するように、制御部200は通紙完了フラグが「0」である場合、定着ローラ40に付着した異物を除去するために、定着ニップ部n3に記録材Sを通過させる。制御部200は通紙完了フラグが「1」になるまで、定着ニップ部n3に1乃至複数枚の記録材Sを通過させる。具体的には、記録材Sの搬送方向長さの累計値(通紙距離)が定着ローラ40の周長を上回るように、1乃至複数枚の記録材Sを定着ニップ部n3に通過させる。そうすることで、定着ローラ40に付着している異物を記録材Sへ移すことによって、定着ローラ40から異物を除去し得るようにしている。
【0068】
こうして、定着ローラ40に付着した異物を記録材Sに移して除去するには、少なくとも定着ニップ部n3を通過させた記録材Sの通紙距離が定着ローラ40の周長以上になるように、記録材Sを通紙させる必要がある。例えば、直径60mmの定着ローラ40の場合には、A4(短辺の搬送方向長さ210mm)やLTR(短辺の搬送方向長さ215.9mm)以上のサイズの記録材Sを1乃至複数枚用いて、定着ニップ部n3を通過させる。以下、定着ローラ40に付着した異物を記録材Sに移して除去する制御を実現する「異物除去処理」(制御モード)について、図2図5を参照しながら図6及び図7を用いて説明する。
【0069】
[異物除去処理]
本実施形態の「異物除去処理」について、図2図4図5等を参照しつつ、図6及び図7を用いて説明する。本実施形態の場合、ユーザは定着ユニット9や清掃ユニット60あるいはウェブ61の交換を行う前に装置本体の電源をオフし、それらの交換後に電源をオンする。ここに示す「異物除去処理」は、定着ユニット9や清掃ユニット60あるいはウェブ61の交換後の電源オンにあわせて開始される。あるいは、ユーザにより前扉500が開放された後に閉じられた場合に開始される。
【0070】
まず、画像形成装置100が電源オンにより起動した時に、定着ユニット制御部202は、ホームポジションセンサ208がオン状態か否かを判定する(S1)。ホームポジションセンサ208がオン状態でないつまりオフ状態の場合(S1のNO)、定着ユニット制御部202は清掃ユニット60が上述の全離間状態(図4(c)参照)となるようにウェブ着脱モータ209を動作させる(S2)。全離間状態では、ホームポジションセンサ208がオン状態になる。
【0071】
次に、定着ユニット制御部202は、定着ローラモータ211を動作させて、定着ローラ40の回転を開始する(S3)。定着ローラ40の回転が開始すると、制御部200の指令に基づき、定着ユニット制御部202は、定着ローラヒータ40aにより第一温度検知センサ42aの検知結果に基づく定着ローラ40の温度制御を開始する(S4)。そして、定着ユニット制御部202は、定着ローラ40の表面温度が使用するトナーの転移温度(詳しくはベース樹脂のガラス転移温度)よりも高い所定温度(例えば165℃)以上に到達したか否かを判定する(S5)。定着ローラ40の表面温度が所定温度以上に到達するまで(S5のNO)、定着ユニット制御部202は処理の進行を待機する。
【0072】
ここで、定着ローラ40をトナーの転移温度よりも高くするのは、後述するように記録材Sが定着ニップ部n3を通過した際に、定着ローラ40に付着したゴミや埃などの異物を除去しやすくするためである。即ち、定着ローラ40にトナーが付着した状態でゴミや埃などが付着した場合、トナーが冷えてしまうと、定着ローラ40からゴミや埃などを除去し難い。そこで、定着ローラ40をトナーの転移温度よりも高くして、定着ローラ40に付着しているトナーを溶融することで、トナーと共にゴミや埃などを記録材Sによって除去しやすくしている。
【0073】
「異物除去処理」に実行時、定着ローラ40の表面温度が所定温度以上に到達した場合(S5のYES)、定着ユニット制御部202は通紙カウント開始フラグが「1」に設定されているか否かを判定する(S6)。通紙カウント開始フラグが「1」に設定されていない場合(S6のNO)、定着ユニット制御部202はステップS9の処理にジャンプする。この場合には、後述する記録材Sを搬送して定着ニップ部n3を通過させる制御が行われない。他方、通紙カウント開始フラグが「1」に設定されている場合(S6のYES)、定着ユニット制御部202は通紙完了フラグが「1」に設定されているか否かを判定する(S7)。
【0074】
通紙完了フラグが「1」に設定されていない場合(S7のNO)、制御部200は1枚の記録材Sの搬送を開始して(通紙開始)、定着ニップ部n3を通過させる制御を行う(S8)。この場合、制御部200は画像形成ユニット150により記録材Sにトナー像を形成させずに、定着ニップ部n3へ記録材Sを搬送し定着ニップ部n3を通過させる。そして、定着ユニット制御部202は、1枚目の記録材Sの搬送が開始されるのにあわせて「通紙距離演算処理」(図7参照)を開始する。上記した記録材Sの搬送を開始して定着ニップ部n3を通過させる制御は、通紙完了フラグが「1」に設定されるまで繰り返し行われる(S7のNO、S8)。つまり、「通紙距離演算処理」により通紙完了フラグが「1」に設定されるまで、1乃至複数枚の記録材Sが定着ニップ部n3へ向け搬送され、定着ニップ部n3を通過する。
【0075】
ここで、「通紙距離演算処理」について、図5を参照しつつ図7を用いて説明する。図7に示すように、定着ユニット制御部202は、開始フラグ領域222に記憶されている通紙カウント開始フラグが「1」に設定されているか否かを判定する(S21)。通紙カウント開始フラグが「1」に設定されている場合(S21のYES)、定着ユニット制御部202は、通紙距離保存領域221に記憶されている通紙距離をリセットする(S22)。そして、定着ユニット制御部202は、通紙距離を演算して通紙距離保存領域221に記憶する(S23)。ここで言う通紙距離は「定着ニップ部n3を通過した記録材Sの枚数」と「記録材Sの搬送方向長さ」とを乗算した値である。その後、定着ユニット制御部202は、開始フラグ領域222に記憶されている通紙カウント開始フラグを「0」に設定(更新)して(S24)、ステップS26の処理に進む。他方、紙カウント開始フラグが「1」に設定されていない場合(S21のNO)、定着ユニット制御部202は、通紙距離を演算して通紙距離保存領域221に記憶して(S25)、ステップS26の処理に進む。
【0076】
ステップS26の処理において、定着ユニット制御部202は通紙距離保存領域221に記憶した通紙距離が所定距離以上であるか否かを判定する。通紙距離が所定距離より小さい場合(S26のNO)、定着ユニット制御部202はステップS21の処理に戻り、上記ステップS25の処理を繰り返す。そして、通紙距離が所定距離以上となった場合(S26のYES)、定着ユニット制御部202は通紙フラグ領域223に記憶されている通紙完了フラグを「1」に設定(更新)して(S27)、本「通紙距離演算処理」を終了する。このようにして、「異物除去処理」(図6参照)において、定着ニップ部n3に搬送された記録材Sの枚数に応じた「通紙距離」が演算され、通紙距離保存領域221に記憶される。
【0077】
図6に戻り、通紙完了フラグが「1」に設定されている場合(S7のYES)、定着ユニット制御部202は清掃ユニット60を全離間状態から全接触状態(図4(a)参照)に移行する(S9)。即ち、定着ユニット制御部202は、「異物除去処理」の実行中、定着ニップ部n3を通過した記録材Sの搬送方向長さの累計値が、定着ローラ40の周長以上となる場合に新たな記録材Sの搬送を停止して、清掃ユニット60を全接触状態に移動させる。全接触状態では、定着ローラ40から中間清掃ローラ62が回収した残留トナーや紙粉などをウェブ61でかきとることで定着ローラ40表面のクリーニングが可能である。本実施形態では、記録材Sによりゴミや埃などの異物を除去した後の定着ローラ40の表面を、ウェブ61によりさらにクリーニングすることで、異物をより除去できるようにしている。全接触状態に移行してから所定時間経過後、定着ユニット制御部202は、ウェブ着脱モータ209を動作させ、清掃ユニット60を全接触状態から全離間状態に戻す(S10)。その後、定着ユニット制御部202は、定着ローラヒータ40aによる定着ローラ40の温度制御を停止する(S11)。
【0078】
以上のように、本実施形態では、清掃ユニット60や定着ユニット9の交換後、あるいはウェブ61のみの交換後に、清掃ユニット60を定着ローラ40から離間させた状態で、1乃至複数枚の記録材Sを定着ニップ部n3へ搬送し通過させる。これによれば、上記した交換時に例え定着ローラ40にゴミや埃などの異物が付着したとしても、定着ニップ部n3を通過させた記録材Sによって定着ローラ40から異物を除去することができる。それ故、清掃ユニット60や定着ユニット9あるいはウェブ61の交換後に、定着ローラ40の表面に異物が押圧されて摺擦されることがないので、定着ローラ40の表面に傷がつくのを抑制できる。また、定着ローラ40に異物が付着したまま画像形成が行われないので、好ましい。
【0079】
[他の実施形態]
なお、定着ユニット9は、定着ローラ40の表面状態を回復させるために、定着ローラ40の表面を摺擦するリフレッシュローラを有する場合がある。リフレッシュローラは、記録材Sの通過によって荒れた定着ローラ40の表面と、荒れていない表面との両方に対して細かい摺擦傷を多数付けて所望のレベルまで荒らすことにより、定着ローラ40全体の表面状態の差を小さくする。こうしたリフレッシュローラを有する場合、上述した「異物除去処理」(図6参照)において、リフレッシュローラも定着ローラ40から離間させて、定着ニップ部n3に1乃至複数枚の記録材Sを通過させ定着ローラ40から異物を除去させるのが好ましい。
【0080】
上述の実施形態では、定着ユニット9は、未定着トナー像を記録材S(シート)に定着させる構成として説明したが、定着ユニット9は、定着済み画像又は半定着画像を担持した記録材を加熱して画像の表面性状を調整する加熱処理装置であってもよい。また、定着ユニット9は、ローラ形状の定着ローラ40でなく、ベルト形状の定着ベルトを有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
9…定着ユニット、32…移動手段(接離機構)、40…第一回転体(定着ローラ)、40a…加熱手段(定着ローラヒータ)、41…第二回転体(加圧ローラ)、42a…温度検知手段(第一温度検知センサ)、60…清掃ユニット、61…清掃部材(ウェブ)、62…中間清掃体(中間清掃ローラ)、100…画像形成装置、100a…装置本体、150…画像形成ユニット、200…制御手段(制御部)、202…制御手段(定着ユニット制御部)、500…扉(前扉)、n3…定着ニップ部、S…記録材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7