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特許7423382シール部材、燃料電池システム及びシール部材の修復方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】シール部材、燃料電池システム及びシール部材の修復方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2485 20160101AFI20240122BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20240122BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240122BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20240122BHJP
【FI】
H01M8/2485
H01M8/2484
H01M8/04 Z
H01M8/04701
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020060613
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021163519
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】南 和徹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 孝之
(72)【発明者】
【氏名】宅和 雄也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】岩田 伸
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511506(JP,A)
【文献】特開2002-349714(JP,A)
【文献】特開2014-011039(JP,A)
【文献】特開2005-322545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルを有する燃料電池モジュールの構成部材どうしを接合する接合部分に適用されるシール部材であって、
前記燃料電池セルの通常の運転温度より高温の運転温度において溶融し、第1軟化点温度を有する材料からなる第1部材と、
前記燃料電池セルの前記通常の運転温度より高温の運転温度において溶融し、かつ、前記第1部材の前記第1軟化点温度より低い第2軟化点温度を有する材料からなる第2部材とを含
前記第1部材及び前記第2部材の材料は等方性材料である、シール部材。
【請求項2】
前記第1部材と前記第2部材とは互いに隣接している、請求項に記載のシール部材。
【請求項3】
前記第2部材は、前記第1部材の上方に配置されている、請求項に記載のシール部材。
【請求項4】
前記第2部材は前記第1部材の表面を覆うように配置されている、請求項2又は3に記載のシール部材。
【請求項5】
前記第1軟化点温度及び前記第2軟化点温度は前記通常の運転時のシール部材の温度よりも30℃以上高い、請求項1~4のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項6】
前記第1軟化点温度は前記第2軟化点温度よりも60℃以上高い、請求項1~5のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項7】
燃料ガスが通流する燃料ガス通路を有する複数の燃料電池セルと、
前記複数の燃料電池セルの一端が挿入されることで前記燃料ガス通路と連通され、前記燃料ガスを前記燃料ガス通路に供給するマニホールドと、
前記燃料電池セルの一端と前記マニホールドとの接合部分に適用されているシール部材とを備え
前記シール部材は、前記燃料電池セルの通常の運転温度より高温の運転温度において溶融し、第1軟化点温度を有する材料からなる第1部材と、前記燃料電池セルの前記通常の運転温度より高温の運転温度において溶融し、かつ、前記第1部材の前記第1軟化点温度より低い第2軟化点温度を有する材料からなる第2部材とを含む、燃料電池システム。
【請求項8】
通常の運転温度で前記燃料電池セルを運転するように制御する第1運転モードを実行可能であり、前記燃料電池セルの前記通常の運転温度より高温の運転温度であり、かつ、前記第2軟化点温度以上前記第1軟化点温度未満で前記シール部材を加熱可能に前記燃料電池セルを運転するように制御する第2運転モードを実行する運転制御部を備える、請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記第1部材及び前記第2部材の材料は等方性材料である、請求項7又は8に記載の燃料電池システム
【請求項10】
前記第1部材と前記第2部材とは互いに隣接している、請求項7~9のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記第2部材は、前記第1部材の上方に配置されている、請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記第2部材は前記第1部材の表面を覆うように配置されている、請求項10又は11に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記第1軟化点温度及び前記第2軟化点温度は前記通常の運転時のシール部材の温度よりも30℃以上高い、請求項7~12のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
前記第1軟化点温度は前記第2軟化点温度よりも60℃以上高い、請求項7~13のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項15】
燃料電池セルを有し、構成部材どうしを接合する接合部分に適用される請求項1~のいずれか1項に記載のシール部材で前記構成部材どうしが接合されている燃料電池モジュールと、前記燃料電池セルの運転を制御する運転制御部とを備える燃料電池システムにおける前記シール部材の修復方法であって、
前記運転制御部は、通常の運転温度で前記燃料電池セルを運転するように制御する第1運転モードと、前記燃料電池セルの前記通常の運転温度より高温の運転温度であり、前記第2軟化点温度以上前記第1軟化点温度未満で前記シール部材を加熱可能に前記燃料電池セルを運転する第2運転モードとを実行可能である、シール部材の修復方法。
【請求項16】
燃料電池セルを有し、構成部材どうしを接合する接合部分に適用される請求項1~のいずれか1項に記載のシール部材で前記構成部材どうしが接合されている燃料電池モジュールと、加熱部と、前記加熱部を制御する加熱部制御部とを備える燃料電池システムにおけるシール部材の修復方法であって、
前記加熱部制御部は、前記第2軟化点温度以上前記第1軟化点温度未満で前記シール部材を加熱するように前記加熱部を制御する、シール部材の修復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材、燃料電池システム及びシール部材の修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の燃料電池システムは、燃料ガスを供給するマニホールドと、マニホールドから燃料ガスの供給を受けるセルスタックとを備えている。セルスタックは、長手方向に延びる楕円形の筒状の複数のセルが、マニホールドに対して長手方向が突出するように、かつ、平行に立設して構成されている。セルは、マニホールドからの燃料ガスの供給と、空気の供給とを受けて電気化学反応によって発電を行う。
【0003】
特許文献1では、マニホールドに設けられた挿入口にセルの長手方向の一端が挿入されて接合され、シール部材で封止される。また、隣接するセルの一端どうしもシール部材によって封止されている。特許文献1のシール部材は、表層部の緻密部と、緻密部の下部の多孔質部と、その他の部分とから構成されている。多孔質部の下端はシール部材の下端にまで達している。このようなシール部材の構成により、シール部材内部の熱収縮による応力を緩和することができ、シール部材の表層部にまでシール部材の剥離が進むことを抑制できるとされている。よって、セルとマニホールドとの接合部分、セル間の接合部分などのシール部材が設けられた箇所におけるシール部材の剥離を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-112045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、接合部分のシール部材に急激な温度変化が生じた場合、運搬及び地震等の振動により許容値以上の応力が接合部分のシール部材にかかった場合等には、シール部材に破損が生じる可能性がある。そうすると、破損部分から燃料ガス等が漏洩する。現状では、シール部材に破損が生じると、燃料電池セルの使用が困難である。
【0006】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、燃料電池システムに用いるシール部材、燃料電池システム及びシール部材の修復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシール部材の特徴構成は、
燃料電池セルを有する燃料電池モジュールの構成部材どうしを接合する接合部分に適用されるシール部材であって、
前記燃料電池セルの通常の運転温度より高温の運転温度において溶融し、第1軟化点温度を有する材料からなる第1部材と、
前記燃料電池セルの前記通常の運転温度より高温の運転温度において溶融し、かつ、前記第1部材の前記第1軟化点温度より低い第2軟化点温度を有する材料からなる第2部材とを含
前記第1部材及び前記第2部材の材料は等方性材料である点にある。
上記特徴構成の第1部材及び第2部材を含むシール部材は、燃料電池モジュールの構成部材どうしを接合する接合部分に適用されている。第1部材及び第2部材はともに通常の運転温度より高温の運転温度において燃料電池セルが運転されている場合に溶融する第1軟化点温度及び第2軟化点温度を有している。よって、燃料電池セルが通常の運転温度で運転されている場合においては、第1部材及び第2部材は溶融しない。第2部材の第2軟化点温度は、第1部材の第1軟化点温度よりも低い。よって、シール部材が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となる温度で燃料電池セルを運転した場合、第2部材は溶融するものの第1部材は溶融しない。シール部材にひび及び剥がれ等の破損が生じた場合、前述のように加熱することで第1部材は溶融せずそのままの形状を維持するが、第2部材が溶融して第1部材の破損部分を埋め合わせて修復する。これにより、シール部材が破損した場合であっても修復することで、接合部分を封止して燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。
加えて、上記特徴構成のようにシール部材を構成する第1部材及び第2部材を等方性材料で形成することで、シール部材の異方的な熱膨張によって生じる応力を抑制でき、また応力のかかる方位による強度ばらつきも抑えられるため、シール部材の強度が部分的に小さくなることを抑制でき、接合部分を強固に封止できるなど安定なシール部材を得ることができる。また、第1部材の破損部分を第2部材で修復した場合も、等方性材料でシール部材を構成できるため部分的に強度が小さくなることを抑制できる。
【0008】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、
燃料ガスが通流する燃料ガス通路を有する複数の燃料電池セルと、
前記複数の燃料電池セルの一端が挿入されることで前記燃料ガス通路と連通され、前記燃料ガスを前記燃料ガス通路に供給するマニホールドと、
前記燃料電池セルの一端と前記マニホールドとの接合部分に適用されているシール部材とを備え、
前記シール部材は、前記燃料電池セルの通常の運転温度より高温の運転温度において溶融し、第1軟化点温度を有する材料からなる第1部材と、前記燃料電池セルの前記通常の運転温度より高温の運転温度において溶融し、かつ、前記第1部材の前記第1軟化点温度より低い第2軟化点温度を有する材料からなる第2部材とを含む点にある。
上記特徴構成の第1部材及び第2部材を含むシール部材は、燃料電池セルの一端とマニホールドとの接合部分に適用されている。第1部材及び第2部材はともに通常の運転温度より高温の運転温度において燃料電池セルが運転されている場合に溶融する第1軟化点温度及び第2軟化点温度を有している。よって、燃料電池セルが通常の運転温度で運転されている場合においては、第1部材及び第2部材は溶融しない。第2部材の第2軟化点温度は、第1部材の第1軟化点温度よりも低い。
シール部材が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となる温度で燃料電池セルを運転した場合、第2部材は溶融するものの第1部材は溶融しない。第1部材にひび及び剥がれ等の破損が生じた場合、前述のように加熱することで第1部材は溶融せずそのままの形状を維持するが、第2部材が溶融して第1部材の破損部分を埋め合わせて修復する。これにより、燃料電池セルの一端とマニホールドとの接合部分のシール部材が破損した場合であっても、シール部材を修復することで燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。
【0009】
本発明に係る燃料電池システムの更なる特徴構成は、前記第1部材及び前記第2部材の材料は等方性材料である点にある。
【0010】
上記特徴構成のようにシール部材を構成する第1部材及び第2部材を等方性材料で形成することで、シール部材の異方的な熱膨張によって生じる応力を抑制でき、また応力のかかる方位による強度ばらつきも抑えられるため、シール部材の強度が部分的に小さくなることを抑制でき、接合部分を強固に封止できるなど安定なシール部材を得ることができる。また、第1部材の破損部分を第2部材で修復した場合も、等方性材料でシール部材を構成できるため部分的に強度が小さくなることを抑制できる。
【0011】
本発明に係るシール部材及び燃料電池システムの更なる特徴構成は、前記第1部材と前記第2部材とは互いに隣接している点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、第1部材と第2部材とは互いに隣接しているため、第1部材が破損した場合に、シール部材を前述のように加熱することで第1部材に隣接する第2部材が溶融して第1部材の破損部分を埋め合わせて修復できる。
【0013】
本発明に係るシール部材及び燃料電池システムの更なる特徴構成は、前記第2部材は、前記第1部材の上方に配置されている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、第2部材は第1部材の上方に配置されているため、シール部材を前述のように加熱することで第1部材の上方の第2部材が溶融して重力により第1部材の破損部分に入り込む。これにより、第1部材の破損部分が第2部材により埋め合わされて修復できる。
【0015】
本発明に係るシール部材及び燃料電池システムの更なる特徴構成は、前記第2部材は前記第1部材の表面を覆うように配置されている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、シール部材は第1部材と接するいずれの表面も覆うように配置されている。よって、シール部材を前述のように加熱することで、第1部材のいずれの表面からも破損部分に第2部材を溶融して入り込ませて修復できる。
【0017】
本発明に係るシール部材及び燃料電池システムの更なる特徴構成は、前記第1軟化点温度及び前記第2軟化点温度は前記通常の運転時のシール部材の温度よりも30℃以上、より好ましくは100℃以上高い点にある。
【0018】
上記特徴構成のように第1軟化点温度及び第2軟化点温度が通常の運転時のシール部材の温度よりも30℃以上、より好ましくは100℃以上高いため、第1部材及び第2部材は燃料電池セルの通常の運転温度では溶融せずシール部材として形状を維持できる。よって、燃料電池セルが運転している場合でもシール部材は封止機能を安定的に提供する。
【0019】
本発明に係るシール部材及び燃料電池システムの更なる特徴構成は、前記第1軟化点温度は前記第2軟化点温度よりも60℃以上高い点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、第1軟化点温度は第2軟化点温度よりも60℃以上高い。よって、シール部材が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となる温度で燃料電池セルを運転することで、第1部材の形状を維持したままで第2部材を溶融させ、溶融した第2部材により第1部材の破損部分を埋め合わせて修復できる。
【0023】
本発明に係る燃料電池システムの更なる特徴構成は、
通常の運転温度で前記燃料電池セルを運転するように制御する第1運転モードを実行可能であり、前記燃料電池セルの前記通常の運転温度より高温の運転温度であり、かつ、前記第2軟化点温度以上前記第1軟化点温度未満で前記シール部材を加熱可能に前記燃料電池セルを運転するように制御する第2運転モードを実行する運転制御部を備える点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、運転制御部は、第2運転モードを実行することで、第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満でシール部材を加熱可能に燃料電池セルを運転するように制御する。通常の運転温度よりも高温の運転温度で燃料電池セルが運転されると、第1部材は溶融せずそのままの形状を維持するが、第2部材が溶融して第1部材の破損部分を埋め合わせて修復することができる。これにより、シール部材が破損した場合であっても修復することで、接合部分を封止して燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。また、シール部材の修復を燃料電池セルの運転温度で調整することで行うことができる。なお、第2運転モードの運転温度は、第2部材が十分に溶融するように第2軟化点よりも30℃以上高い温度であることが好ましい。加えて、第2運転モード中の第1部材の十分な強度を維持するため、第1軟化点温度は第2運転モードの運転温度よりも30℃以上、より好ましくは100℃以上高いことが好ましい。
【0025】
本発明に係るシール部材の修復方法は、
燃料電池セルを有し、構成部材どうしを接合する接合部分に適用される上記のシール部材で前記構成部材どうしが接合されている燃料電池モジュールと、前記燃料電池セルの運転を制御する運転制御部とを備える燃料電池システムにおける前記シール部材の修復方法であって、その特徴構成は、
前記運転制御部は、通常の運転温度で前記燃料電池セルを運転するように制御する第1運転モードと、前記燃料電池セルの前記通常の運転温度より高温の運転温度であり、前記第2軟化点温度以上前記第1軟化点温度未満で前記シール部材を加熱可能に前記燃料電池セルを運転する第2運転モードとを実行可能である点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、運転制御部は、第2運転モードを実行することで、第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満でシール部材を加熱可能に燃料電池セルを運転するように制御する。通常の運転温度よりも高温で燃料電池セルが運転されると、第1部材は溶融せずそのままの形状を維持するが、第2部材が溶融して第1部材の破損部分を埋め合わせて修復することができる。これにより、シール部材が破損した場合であっても修復することで、接合部分を封止して燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。また、シール部材の修復を燃料電池セルの運転温度を調整することで行うことができる。
【0027】
本発明に係るシール部材の更なる修復方法は、
燃料電池セルを有し、構成部材どうしを接合する接合部分に適用される上記のシール部材で前記構成部材どうしが接合されている燃料電池モジュールと、加熱部と、前記加熱部を制御する加熱部制御部とを備える燃料電池システムにおけるシール部材の修復方法であって、その特徴構成は、
前記加熱部制御部は、前記第2軟化点温度以上前記第1軟化点温度未満で前記シール部材を加熱するように前記加熱部を制御する点にある。
【0028】
第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満でシール部材を加熱部により加熱した場合、第2部材は溶融するものの第1部材は溶融しない。第1部材にひび及び剥がれ等の破損が生じた場合、前述のように加熱することで第1部材は溶融せずそのままの形状を維持するが、第2部材が溶融して第1部材の破損部分を埋め合わせて修復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】円筒平板型の燃料電池モジュールを示す側面図である。
図3】円筒平板型の燃料電池モジュールを示す上面図である。
図4】円筒平板型の燃料電池モジュールにおける一部拡大斜視図である。
図5】円筒平板型の燃料電池モジュールにおけるシール部材の配置を示す拡大図である。
図6】円筒平板型の燃料電池モジュールにおけるシール部材の破損部分を示す拡大図である。
図7】円筒平板型の燃料電池モジュールにおけるシール部材が修復されている様子を示す拡大図である。
図8】平板型の燃料電池モジュールを示す分解斜視図である。
図9】平板型の燃料電池モジュールにおける燃料ガスの流れを示す断面図である。
図10】平板型の燃料電池モジュールにおける酸化剤ガスの流れを示す断面図である。
図11】平板型の燃料電池モジュールにおけるシール部材の配置を示す拡大図である。
図12】平板型の燃料電池モジュールにおけるシール部材の破損部分を示す拡大図である。
図13】平板型の燃料電池モジュールにおけるシール部材が修復されている様子を示す拡大図である。
図14】円筒型の燃料電池モジュールを示す側面図である。
図15】円筒型の燃料電池モジュールにおけるシール部材の配置を示す拡大図である。
図16】円筒型の燃料電池モジュールにおけるシール部材の破損部分を示す拡大図である。
図17】円筒型の燃料電池モジュールにおけるシール部材が修復されている様子を示す拡大図である。
図18】シール部材の配置の他の例を示す模式図である。
図19】他の燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔実施形態〕
以下に、本発明の実施形態に係るシール部材の修復方法について、図1を用いて説明する。
【0031】
(1)燃料電池システムの構成
(1-1)全体構成
燃料電池システム100は、図1に示すように、燃料電池発電装置1を備えている。また、燃料電池システム100は、燃料電池発電装置1に燃料ガス、改質水及び酸化剤ガスを供給するために、燃料ガス供給用の燃料ガス用ポンプ2と、昇圧ポンプ5と、脱硫器3と、改質水供給用の改質水タンク9と、酸化剤ガス供給用の空気ブロア15とを備えている。また、燃料電池システム100は、燃料電池発電装置1から排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器17と、熱交換器17との間で循環させる水等の熱媒を収容する貯湯タンク19とを備えている。また、燃料電池システム100は、燃料電池システム100の運転を制御する運転制御部71を備えている。
【0032】
本実施形態の運転制御部71は、通常の運転温度よりも高温で後述の燃料電池セルAを運転するように制御する第2運転モードを実行する。これによりシール部材を補修し、燃料ガス及び酸化剤ガス等の各種ガス(以下、単に燃料ガス等という場合もある)の漏洩を抑制する。この点については後述する。
【0033】
都市ガス(例えば、都市ガス13A)等の炭化水素系の原燃料は、燃料ガス用ポンプ2により所定流量の出力が制御されて昇圧ポンプ5に供給される。さらに、原燃料は、昇圧ポンプ5の作動により原燃料供給路41を通して脱硫器3に供給される。
【0034】
脱硫器3は、原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器3を備えることにより、硫黄化合物による改質器28あるいは燃料電池発電装置1に対する影響を抑制することができる。
【0035】
改質水タンク9からは、改質水ポンプ7の作動により改質水供給路43を通して燃料電池発電装置1に改質水が供給される。
【0036】
改質水タンク9は、後述の触媒燃焼排ガスから凝縮水を回収する。また、改質水タンク9に供給される凝縮水を水精製器(図示せず)により精製するようになっている。具体的には、熱交換器17の出口から排出路51を介して排出される後述の触媒燃焼排ガスから、凝縮水回収路45を介して凝縮水を水精製器(図示せず)に回収する。そして、水精製器(図示せず)により精製された凝縮水が改質水タンク9に回収される。
【0037】
また、改質水タンク9には、凝縮水とは独立に、水供給部13から水を供給可能になっている。
【0038】
燃料電池発電装置1は、収納容器40内に収納されており、燃料電池モジュール23、気化器27、改質器28及び燃焼部29を備えている。
【0039】
気化器27には、改質水供給路43を介して改質水タンク9から改質水が供給され、原燃料供給路41を介して脱硫された原燃料が供給される。原燃料供給路41は脱硫器3よりも下流側の部位で、改質水供給路43に合流されており、収納容器40外にて合流された改質水と原燃料とが気化器27に供給される。改質水及び原燃料が供給された気化器27は、改質水から水蒸気を生成する。気化器27にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路31を通して改質器28に供給される。
【0040】
改質器28は、気化器27にて生成された水蒸気を用いて、脱硫器3において脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素ガスを主成分とする燃料ガス(還元性成分を有するガス)を生成する。このとき、改質器28は、後述の燃焼部29での燃料成分ガスを含む未燃ガスの燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の水蒸気改質を行う。
【0041】
改質器28にて生成された燃料ガスは、燃料ガス供給路33を通して燃料電池モジュール23に供給される。燃料ガスは、燃料電池モジュール23を構成する複数の燃料電池セルAに対して分配されて供給される。各燃料電池セルAは、燃料ガスが供給されるアノードと、空気ブロア15を通じて酸化剤ガスが供給されるカソードと、アノードとカソードとの間の電解質とを有しており、燃料ガス及び酸化剤ガスを反応させて発電する。
【0042】
インバータ39は、燃料電池モジュール23において発電された出力電圧を調整し、商用系統(図示せず)から受電する電力と同じ電圧及び同じ周波数にする。
【0043】
燃焼部29には、燃料電池モジュール23における発電反応に用いられずに排出される燃料成分ガスを含む未燃ガスが供給される。燃焼部29は、供給された未燃ガスを燃焼する。燃焼部29からは、未燃ガスの燃焼により生じたセル燃焼排ガス(燃焼排ガスの一例)が排出される。
【0044】
セル燃焼排ガスは改質器28に供給されるとともに、燃焼触媒部35を介してガス出口37から収納容器40の外部に排出される。改質器28は、前述の通り、セル燃焼排ガスの熱、つまり燃料成分ガスの燃焼により生じた燃焼熱を用いて水蒸気改質を行う。
【0045】
ガス出口37には、燃焼触媒部35が配置され、セル燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分である未燃ガスを燃焼除去する。燃焼触媒部35は、例えば、白金系触媒等から構成されている。
【0046】
ガス出口37からは、燃焼触媒部35での未燃ガスの燃焼により生じた触媒燃焼排ガス(燃焼排ガスの一例)が排出される。触媒燃焼排ガスは、排出路52を介して熱交換器17に送られる。
【0047】
燃料電池発電装置1の各部には温度及び電圧を検出するための各種検出部が設けられてる。本実施形態では、燃料電池セルAにおける温度を検出するためのセル温度検出部T1と、燃焼部29におけるセル燃焼排ガスの温度を検出するための燃焼部温度検出部T2と、燃焼触媒部35における触媒燃焼排ガスの温度を検出するための触媒温度検出部T3と、燃料電池セルAにおける発電電圧を検出するための電圧検出部Vとを備えている。これらの検出部の検出結果は、運転制御部71に送信される。
【0048】
熱交換器17では、ガス出口37から排出される触媒燃焼排ガスと、貯湯タンク19から排出される熱媒との間で熱交換が行われる。例えば、熱媒が水である場合、触媒燃焼排ガスと水との間で熱交換が行われ温水が生成され、貯湯タンク19に収容される。触媒燃焼排ガスは、水との熱交換により温度が低下した状態で排出路51に排出される。熱交換器17を出た熱媒は、熱媒循環路61に排出され貯湯タンク19に導入される。さらに、貯湯タンク19を出た熱媒循環路61を通流して再び熱交換器17に導入される。よって、熱媒循環路61によって、熱交換器17と貯湯タンク19との間で熱媒が循環する。
【0049】
なお、貯湯タンク19には、貯湯タンク19中の湯水を出湯するための出湯路19a、及び、湯水の出湯に応じて貯湯タンク19に給水するための給水路19bが設けられている。貯湯タンク19に収容された温水は、お風呂及び洗面等への供給に用いることが可能であり、燃料電池発電装置1からの触媒燃焼排ガスの排熱を再利用することができる。
【0050】
また、熱媒循環路61には、循環ポンプ63と、ラジエータ65とが備えられている。循環ポンプ63は、回転数を制御し、所望の回転数で貯湯タンク19からの熱媒を熱交換器17に供給する。ラジエータ65は、熱媒循環路61を通流する熱媒の熱を放熱させるための放熱ファン65aと、図示しない温度センサとを有する。
【0051】
(1-2)燃料電池モジュールの構成とシール部材
次に、燃料電池モジュール23の構成について説明する。以下では、燃料電池モジュール23として、円筒平板型の燃料電池モジュール、平板型の燃料電池モジュール及び円筒型の燃料電池モジュールを例に挙げて説明する。
また、燃料電池モジュール23には、燃料ガス及び酸化剤ガス等の各種ガスの漏洩を防ぐためのシール部材が設けられているが、各燃料電池モジュールの構成の説明とともにシール部材の構成についても説明する。
【0052】
(a)円筒平板型の燃料電池モジュール
円筒平板型の燃料電池モジュール23について図2図5を用いて説明する。
円筒平板型の燃料電池モジュール23は、複数の円筒平板型の燃料電池セルAと、集電部材213と、導電部材214と、電流引き出し部215と、燃料ガスが導入されるマニホールドMとを有している。複数の円筒平板型の燃料電池セルAは、集電部材213を介して互いに平行に配置されており、マニホールドMから立設するように設けられている。導電部材214は、複数の燃料電池セルA及び集電部材213を挟持するように、燃料電池セルAの配置方向の両端に設けられている。電流引き出し部215は導電部材214に接続されており、燃料電池セルAの発電により生じる電流を取り出す。
【0053】
燃料電池セルAは、円筒平板形状に形成されており、導電性部材201と、燃料極層203と、電解質層204と、中間層205と、空気極層206と、密着層207と、インターコネクタ208とを有する。導電性部材201には、燃料電池セルAの立設している方向に沿って導電性部材201を貫通する燃料ガス流路202が設けられている。燃料ガス流路202には、マニホールドMから供給される燃料ガスが通流する。
【0054】
隣接する燃料電池セルAの一方側には、導電性部材201から外側に向かって、燃料極層203、電解質層204、中間層205、空気極層206が順に積層されている。燃料極層203及び電解質層204は、隣接する燃料電池セルAの他方側の一部にまで延びて形成されている。そして、隣接する燃料電池セルAの他方側における燃料極層203及び電解質層204が形成されていない部分には、密着層207を介してインターコネクタ208が形成されている。
【0055】
以上のような円筒平板型の燃料電池モジュール23において、シール部材80は、例えば図4図5に示すように、マニホールドMに連通するように立設された燃料電池セルAとマニホールドMとの接合部分に塗布されている。図4図5の例では、マニホールドMの上面にシール部材80が塗布されており、燃料電池セルAとマニホールドMとの接合部分がシール部材80により封止されている。このように燃料電池セルAとマニホールドMとの接合部分にシール部材80を配置することで、燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。本実施形態のシール部材80は、図5に示すように、第1部材81と第2部材83とにより構成されている。図5の例では、第1部材81は第2部材83の下方に位置している。
【0056】
第2部材83は、燃料電池セルAの通常の運転時の第2部材83のシール温度(後述の第1運転モードでの例えば500~650℃のシール温度)より高温(例えば700℃以上)である第2軟化点温度を有する材料からなる。つまり、例えば、燃料電池セルAの通常の運転温度は700~750℃であるが、通常の運転時の第2部材83のシール温度は500~650℃になっている。そして、燃料電池セルAが通常の運転温度(例えば700~750℃)より高温の運転温度(例えば780~900℃)に制御された場合、第2部材83のシール温度は700℃以上となり第2部材83は溶融可能となる。このように第2軟化点温度は、燃料電池セルAが高温(例えば780~900℃)に制御された場合において第2部材83が溶融可能な温度である。
【0057】
また、第1部材81は、燃料電池セルAの通常の運転時の第1部材81のシール温度より高温であり、かつ、第2軟化点温度より高温である第1軟化点温度を有する材料からなる。つまり、例えば、燃料電池セルAの通常の運転温度は700~750℃であるが、通常の運転時の第1部材81のシール温度は500~650℃になっている。そして、燃料電池セルAが通常の運転温度(例えば700~750℃)より高温の運転温度(例えば780~900℃)に制御された場合、第1部材81のシール温度は700℃以上となる。第1軟化点温度は、燃料電池セルAが高温(例えば780~900℃)に制御された場合においても第1部材81が溶融しない温度である。
【0058】
よって、燃料電池セルAが通常の運転温度で運転されている場合においては、第1部材81及び第2部材83は溶融しない。そのため、燃料電池セルAが通常の運転で発電を行っている場合はシール部材80は溶融せず形状等を保持しており、燃料ガス等の漏洩を抑制する。
【0059】
ここで、シール部材80が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となる温度で燃料電池セルAを運転した場合(後述の第2運転モード)、シール部材80のうち第2部材83は溶融し、第1部材81は溶融せずに形状等を保持している。通常の運転時のシール温度とは、これに限定されないが、例えば500~650℃である。また、通常の運転時のシール温度よりも高温であり、第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満の温度とは、例えば650~850℃である。また、第1軟化点温度以上とは、例えば900℃を超える温度である。
【0060】
例えば、円筒平板型の燃料電池モジュール23において、図6に示すように燃料電池セルAとマニホールドMとの接合部分のシール部材80に破損部分85が生じたとする。この場合、マニホールドMから燃料ガスが漏洩する。そこで、通常の運転温度(第1運転モードでの通常の運転温度)よりも高温(第2運転モードでの高温)の運転温度において燃料電池セルAを運転することで、シール部材80が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となり流動状態となる。この場合、シール部材80のシール温度は第1軟化点温度未満であるため、第1部材81は溶融しない。一方、シール部材80のシール温度は第2軟化点温度以上であるため、第2部材83は溶融する。よって、シール部材80にひび及び剥がれ等の破損が生じた場合、前述のように加熱することで第1部材81は溶融せずそのままの形状を維持するが、図7に示すように第2部材83が溶融して第1部材81の破損部分85を埋め合わせて修復する。図6図7のシール部材80では、溶融する第2部材83が第1部材81の上方に配置されているため、シール部材80を前述のように加熱することで第1部材81の上方の第2部材83が溶融して重力により第1部材81の破損部分85に入り込む。これにより、第1部材81の破損部分85が第2部材83により埋め合わされて修復できる。よって、シール部材80が破損した場合であっても修復することで、接合部分を封止して燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。
【0061】
上記の通りシール部材80に破損が生じた場合、シール部材80の第1部材81は溶融せず第2部材83を溶融して流動状態とすることでシール部材80の破損部分85を修復する。この場合、燃料電池セルAを高温にすることで第2部材83を溶融してある程度流動状態にするものの、第2部材83の溶融が進み過ぎて接合部分から流れ出してしまうことや、材料の一部が揮発してしまうことを抑制する必要がある。これらの点を考慮して、第1部材81及び第2部材83の材料を適宜選択するのが好ましい。
【0062】
例えば、第1部材81の第1軟化点温度及び第2部材83の第2軟化点温度は、通常の運転温度(例えば700~750℃)における第1部材81及び第2部材83のシール温度よりも30℃以上高いと好ましく、100℃以上高いとさらに好ましい。これにより、第1部材81及び第2部材83は燃料電池セルAの通常の運転温度では溶融せずシール部材80として形状を維持できる。よって、燃料電池セルAが通常運転している場合でもシール部材80は封止機能を安定的に提供する。
【0063】
また、第1部材81の第1軟化点温度は第2部材83の第2軟化点温度よりも60℃以上高いと好ましく、150℃以上高いとさらに好ましい。これにより、シール部材80が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となる温度で燃料電池セルAを運転することで、第1部材81の形状を維持したままで第2部材83を溶融させ、溶融した第2部材83により第1部材81の破損部分85を埋め合わせて修復できる。
【0064】
また、第1部材81及び第2部材83の材料は等方性材料であるのが好ましい。これにより、シール部材80の異方的な熱膨張によって生じる応力を抑制でき、また応力のかかる方位による強度ばらつきも抑えられるため、シール部材80の強度が部分的に小さくなることを抑制でき、接合部分を強固に封止できるなど安定なシール部材80を得ることができる。また、第1部材81の破損部分85を第2部材83で修復した場合も、等方性材料でシール部材80を構成できるため部分的に強度が小さくなることを抑制できる。
【0065】
このようなシール部材80に用いることができる材料としては、例えばSiO-B系、SiO-CaO系、MgO-B系等の非晶質ガラス及び結晶化ガラス、α-アルミナに代表されるような耐熱セラミックス粒子などのフィラーによって形状保持させたガラス等を用いることができる。第1部材81としては、これらの材料等から第1軟化点温度を満たす材料が選択される。同様に、第2部材83としては、これらの材料等から第2軟化点温度を満たす材料が選択される。
なお、結晶化ガラスとは、例えば、全体積に対して、結晶相が占める体積が60%以上であり、非晶質相等が占める体積が40%未満のガラスである。
【0066】
(b)平板型の燃料電池モジュール
平板型の燃料電池モジュール23について図8図11を用いて説明する。
平板型の燃料電池モジュール23は、燃料電池セルAを収容する第1セパレータ101と、燃料ガス及び酸化剤ガスを燃料電池セルAの平面に供給するための溝103a、103bが形成された第2セパレータ103とが、交互にZ方向に積層されて構成されている。
【0067】
燃料電池セルAは、第1セパレータ101の中央部に収容されている。燃料電池セルAは、Z方向の下方から上方に向かって空気極層115、電解質層113及び燃料極層111が順に積層されるともに、燃料極層111上に集電部材117が積層されて形成されている。第1セパレータ101は、この燃料電池セルAの上面及び下面を露出するように中央部に開口が形成されている。
【0068】
第2セパレータ103は、第1セパレータ101において燃料電池セルAが配置されている中央部に対応する位置に、溝103a及び溝103bを有する。溝103aは、燃料ガスを燃料電池セルAの燃料極層111に供給するために、第2セパレータ103の下面に形成されている。つまり、図8によると、第1セパレータ101の燃料極層111側に対向する第2セパレータ103において、その下面の溝103aが燃料極層111に対応している。本実施形態では、溝103aは、図8中のX方向に沿って延びて形成されている。また、溝103aは、Y方向に離隔して4本形成されている。
【0069】
一方、溝103bは、空気極層115に酸化剤ガスを供給するために、第2セパレータ103の上面に形成されている。つまり、図8によると、第1セパレータ101の空気極層115側に対向する第2セパレータ103において、その上面の溝103bが空気極層115に対応している。本実施形態では、溝103bは、図8中のY方向に沿って延びて形成されている。また、溝103bは、X方向に離隔して4本形成されている。なお、溝103aと溝103bとは互いに所定の間隔をおいて隔離して形成されている。
【0070】
第2セパレータ103の溝103a及び溝103bそれぞれに燃料ガス及び酸化剤ガスを通流させるために、積層された第1セパレータ101及び第2セパレータ103を貫通する開口が周縁に形成されている。この開口には、燃料ガスを供給するための開口と、酸化剤ガスを供給するための開口とが含まれる。具体的に、開口としては、燃料ガスを燃料電池セルAに供給するための燃料ガス供給路121inと、燃料電池セルAで発電に用いられなかった燃料ガスを排出する燃料ガス排出路121outと、酸化剤ガスを燃料電池セルAに供給するための酸化剤ガス供給路123inと、燃料電池セルAで発電に用いられなかった酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス排出路123outとが設けられている。
【0071】
燃料ガス供給路121in及び燃料ガス排出路121outは、X方向に対向するように第1セパレータ101及び第2セパレータ103の周縁に形成されている。また、燃料ガス供給路121inと燃料ガス排出路121outとは溝103aを介して連通している。そして、燃料ガスは、燃料電池モジュール23の下方から供給され、燃料ガス供給路121inをZ方向の上方に向かって通流するとともに(図8図9中のFGin)、溝103a内にも供給される。これにより、燃料極層111に燃料ガスが供給される。燃料電池セルAで発電に用いられなかった燃料ガスは、溝103aを通って燃料ガス排出路121outに導入される。排出された燃料ガスは、燃料ガス排出路121outをZ方向の下方に向かって通流し(図8図9中のFGout)、燃料電池モジュール23の外部に排出される。
【0072】
酸化剤ガス供給路123in及び酸化剤ガス排出路123outは、Y方向に対向するように第1セパレータ101及び第2セパレータ103の周縁に形成されている。また、酸化剤ガス供給路123inと酸化剤ガス排出路123outとは溝103bを介して連通している。そして、酸化剤ガスは、燃料電池モジュール23の下方から供給され、酸化剤ガス供給路123inをZ方向の上方に向かって通流するとともに(図8図10中のOGin)、溝103a内にも供給される。これにより、空気極層115に酸化剤ガスが供給される。燃料電池セルAで発電に用いられなかった酸化剤ガスは、溝103bを通って酸化剤ガス排出路123outに導入される。排出された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出路123outをZ方向の下方に向かって通流し(図8図10中のOGout)、燃料電池モジュール23の外部に排出される。
【0073】
以上のような平板型の燃料電池モジュール23において、シール部材80は、例えば図9図10に示すように、燃料電池セルAと第1セパレータ101との接合部分(シール部材80a)、第1セパレータ101と第2セパレータとの接合部分(シール部材80b)に配置されている。このようにシール部材80を配置することで、燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。
【0074】
図11は、燃料電池セルAと第1セパレータ101との接合部分に配置されたシール部材80aを示す拡大図である。本実施形態のシール部材80は、図11等に示すように、第1部材81と第2部材83とにより構成されている。図11の例では、第1部材81は燃料電池セルA側に、第2部材83は第1セパレータ101側に位置している。第1部材81及び第2部材83の材料は、上述したシール部材80と同様である。
【0075】
例えば、平板型の燃料電池モジュール23において、図11に示すようにシール部材80に破損部分85が生じたとする。通常の運転温度(第1運転モードでの通常の運転温度)よりも高温(第2運転モードでの高温)の運転温度において燃料電池セルAを運転することで、シール部材80が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となり流動状態となる。この場合、シール部材80のシール温度は第1軟化点温度未満であるため、第1部材81は溶融しない。一方、シール部材80のシール温度は第2軟化点温度以上であるため、第2部材83は溶融する。よって、シール部材80にひび及び剥がれ等の破損が生じた場合、前述のように加熱することで第1部材81は溶融せずそのままの形状を維持するが、図13に示すように第2部材83が溶融して第1部材81の破損部分85を埋め合わせて修復する。これにより、シール部材80が破損した場合であっても、シール部材80を修復することで燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。シール部材80の材料については既述した通りである。
【0076】
なお、上記の図12図13では、シール部材80aの破損の修復について説明したが、シール部材80bの破損についても同様に修復可能である。
【0077】
(c)円筒型の燃料電池モジュール
円筒型の燃料電池モジュール23について図14図15を用いて説明する。
円筒型の燃料電池モジュール23は、円筒状の燃料電池セルAと、集電部材319と、燃料極側端子321と、空気極側端子325とを有している。燃料電池セルAは、円筒状の内部から順に燃料極層311、電解質層313、空気極層315が順に積層されている。燃料電池セルAの最も内面の燃料極層311は燃料ガスが通流する燃料ガス通流部317を構成している。集電部材319は、空気極層315の外面に接して設けられており、酸化剤ガスの供給を受ける。
【0078】
電解質層313及び燃料極層311は、軸心方向において燃料電池セルAから突出して形成されている。この突出した電解質層313及び燃料極層311に、燃料極側端子321が取り付けられている。一方、空気極層315の外面に設けられた集電部材319に、空気極側端子325が取り付けられている。燃料極側端子321には貫通孔321aが設けられており、空気極側端子325には貫通孔325aが設けられている。貫通孔321a、燃料ガス通流部317及び貫通孔325aが連通しており、燃料ガスが通流する。
【0079】
以上のような円筒平板型の燃料電池モジュール23において、シール部材80は、例えば図14図15に示すように燃料極側端子321と燃料電池セルAから突出している電解質層313及び燃料極層311との接合部分、図14に示すように空気極側端子325と空気極層315との接合部分に配置されている。このように燃料電池セルAと端子との接合部分にシール部材80を配置することで、燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。
【0080】
例えば円筒型の燃料電池モジュール23において、図16に示すように燃料電池セルAと燃料極側端子321との接合部分のシール部材80に破損部分85が生じたとする。この場合、燃料電池モジュール23の外に燃料ガスが漏洩する。そこで、通常の運転温度(第1運転モードでの通常の運転温度)よりも高温(第2運転モードでの高温)の運転温度において燃料電池セルAを運転することで、シール部材80が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となり流動状態となる。この場合、シール部材80のシール温度は第1軟化点温度未満であるため、第1部材81は溶融しない。一方、シール部材80のシール温度は第2軟化点温度以上であるため、第2部材83は溶融する。よって、シール部材80にひび及び剥がれ等の破損が生じた場合、前述のように加熱することで第1部材81は溶融せずそのままの形状を維持するが、図17に示すように第2部材83が溶融して第1部材81の破損部分85を埋め合わせて修復する。これにより、シール部材80が破損した場合であっても、シール部材80を修復することで燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。シール部材80の材料については既述した通りである。
【0081】
(2)運転制御部が実行するシール部材の修復方法
上記の燃料電池システム100の運転制御部71は、シール部材80が破損した場合に修復を行うための修復方法を実行する。
(2-1)修復方法の全体の流れ
まず、シール部材80の修復方法の全体の流れについて説明する。
運転制御部71は、通常の運転温度で燃料電池セルAを運転するように制御する第1運転モードと、通常の運転温度よりも高温で燃料電池セルAを運転するように制御する第2運転モードとを実行可能であり、所定のタイミングで第2運転モードを実行する。
【0082】
第1運転モードは、例えば、燃料電池システム100で発電された発電電力を負荷等に供給している通常運転を意味する。第1運転モードにおける通常の運転温度とは、通常運転の場合の燃料電池セルAの温度である。通常の運転温度は、これに限定されないが、例えば700~750℃である。
【0083】
そして、運転制御部71は、燃料ガス用ポンプ2を制御することによる燃料ガス供給量の制御、空気ブロア15を制御することによる酸化剤ガス供給量の制御、改質水ポンプ7を制御することによる水蒸気量の制御等によって燃料電池セルAの温度を制御する。なお、運転制御部71は、セル温度検出部T1、燃焼部温度検出部T2、触媒温度検出部T3及び電圧検出部V等が検出した各種温度及び電圧等を参照し、燃料電池セルAの温度を制御する。
【0084】
一方、第2運転モードは、第1運転モードとは異なり、シール部材80の修復を行うための修復方法を実行する際の運転を意味する。第2運転モードにおける燃料電池セルAの温度は、第1運転モードにおける通常の運転温度よりも高く、第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満でシール部材80を加熱可能であり、シール部材80のうち第2部材83を溶融して第1部材81を修復可能な温度である。第2運転モードの運転温度は、これに限定されないが、例えば780~900℃である。第2運転モードにおける運転温度の制御方法については後述する。
【0085】
運転制御部71は、上記のシール部材80を修復するための第2運転モードを、所定のタイミングで実行する。所定のタイミングとは、任意のタイミングであってもよいし、定期的なタイミングであってもよい。その他、運転制御部71は、燃料ガス等の漏洩が検出されたタイミングで第2運転モードを実行してもよい。
第2運転モードを開始した後、運転制御部71は、任意のタイミングで第2運転モードを終了してもよいし、第2運転モードを所定期間実行した後に終了してもよい。その他、後述の通り燃料電池システム100の状態に基づいて第2運転モードを終了してもよい。
【0086】
以上のように第2運転モードの実行によって、シール部材80が溶融して破損部分85が埋め合わされることで修復される。これにより、シール部材80が破損した場合であっても、シール部材80を修復することで燃料ガス等の漏洩を抑制することができる。よって、燃料ガス等の漏洩による燃料電池セルAにおける発電性能の低下を抑制でき、また、環境への悪影響も抑制できる。また、シール部材80の修復を燃料電池セルの運転温度を調整することで行うことができる。
【0087】
(2-2)第2運転モードにおける温度制御の例
第2運転モードでは、運転制御部71は、第1運転モードでの通常の運転温度よりも高温であり、シール部材80が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となるように燃料電池セルAの運転を制御する。以下では、第2運転モードにおける燃料電池セルAを高温での運転に制御する方法の一例について説明する。
【0088】
運転制御部71は、第2運転モードにおいて、燃料ガス用ポンプ2を制御して燃料ガスの供給量を第1運転モードよりも増加させ、燃料電池セルAの温度を上昇させる。燃料ガスの供給量の増加分に応じて燃焼量が増加する。これにより、燃料電池セルAの温度を上昇させて高温で運転させることができる。
【0089】
運転制御部71は、第2運転モードにおいて、空気ブロア15を制御して酸化剤ガスの供給量を第1運転モードよりも減少させ、燃料電池セルAの温度を上昇させる。酸化剤ガスの供給量を減少させると、燃料電池セルAの冷却が抑制される。これにより、燃料電池セルAの温度を上昇させて高温で運転させることができる。
【0090】
なお、運転制御部71は、前述のように温度を上昇させるように制御した場合、セル温度検出部T1が検出する燃料電池セルAの温度を監視しておき、所定の高温(シール部材80が第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満となる温度)まで温度を上昇させる制御を行う。そして、所定の高温まで燃料電池セルAの温度が上昇すると、運転制御部71は温度をさらに上昇させる制御を停止させることができる。
【0091】
また、運転制御部71は、前述のように高温に制御する場合に、当該高温まで徐々に温度を上げるように制御することができる。これにより、急激な温度上昇による急激な熱応力の発生等による燃料電池セルAの変形及び割れ等を抑制できる。
【0092】
また、運転制御部71は、燃料電池セルAの発電性能が回復したか否かを見ながら徐々に温度を上昇させることができる。シール部材80の破損によって燃料ガス等が漏洩している場合、燃料電池セルAへの燃料ガス等の供給量が減り発電性能が低下する。そこで、運転制御部71は、温度を所定の温度だけ上昇させたにも関わらず燃料電池セルAの発電性能が低下したままで回復していない場合は、シール部材80の破損が修復されていないとして、さらに温度を上昇させシール部材80を溶融して修復可能なように制御する。この場合であっても、所定の高温(例えば900℃)までで温度の上昇を停止させるのが、燃料電池セルAの変形及び割れ等を防ぐ観点から好ましい。なお、運転制御部71は、電圧検出部Vで検出される発電電圧が通常運転での発電電圧よりも低い場合、燃焼部温度検出部T2が検出したセル燃焼排ガスの温度が通常運転の場合よりも高いままである場合、触媒温度検出部T3が検出した触媒燃焼排ガスの温度が通常運転の場合よりも高いままである場合等には、シール部材80の破損が修復されておらず、発電性能が回復していないと判断する。
【0093】
一方、運転制御部71は、温度を所定の温度だけ上昇させたことで燃料電池セルAの発電性能が回復した場合は、さらなる温度の上昇を停止させるか、通常運転の温度に戻すように制御する。なお、運転制御部71は、電圧検出部Vで検出される発電電圧が通常運転での発電電圧と同程度かそれ以上の場合、燃焼部温度検出部T2が検出したセル燃焼排ガスの温度が通常運転の場合と同程度となった場合、触媒温度検出部T3が検出した触媒燃焼排ガスの温度が通常運転の場合と同程度となった場合等には、シール部材80の破損が修復されて発電性能が回復していると判断する。
【0094】
なお、運転制御部71は、徐々に温度を上昇させつつ燃料電池セルAの発電性能を確認するにあたっては、例えば900℃の高温で燃料電池セルAを運転してシール部材80を修復し、その後、一旦通常の運転温度に戻して燃料電池セルAを運転し、通常の運転温度で燃料電池セルAの発電性能を確認するのが好ましい。発電性能が確認できた後、発電性能が回復していない場合は、運転制御部71は、先の温度よりも高温の例えば920℃の高温で燃料電池セルAを運転させる。発電性能が回復している場合は、運転制御部71は、通常の運転温度で燃料電池セルAを運転する。
【0095】
(2-3)第2運転モードの開始条件の例
運転制御部71は、任意のタイミング、定期的なタイミング、燃料ガス等の漏洩が検出されたタイミング等の所定のタイミングで第2運転モードを実行する。ここでは、燃料ガス等の漏洩が検出されたタイミングでの第2運転モードの開始について説明する。
【0096】
運転制御部71は、燃焼部温度検出部T2が検出したセル燃焼排ガスの温度が開始用燃焼温度閾値よりも大きくなると、第2運転モードを実行する。燃焼部29から排出されるセル燃焼排ガスの温度が開始用燃焼温度閾値よりも大きくなった場合とは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いた燃料電池セルAでの発電性能が低下し、燃焼部29での未燃ガスの燃焼が増加してセル燃焼排ガスの温度が上昇している場合である。この場合、シール部材80が破損して燃料ガス及び酸化剤ガス等が漏洩し、発電性能の低下が生じているとして、運転制御部71はシール部材80を修復するための第2運転モードを実行する。なお、開始用燃焼温度閾値は、例えば、通常運転での燃焼部29におけるセル燃焼排ガスの温度より高い温度に設定されている。
【0097】
運転制御部71は、触媒温度検出部T3が検出した触媒燃焼排ガスの温度が開始用触媒温度閾値よりも大きくなると、第2運転モードを実行する。燃焼触媒部35から排出される触媒燃焼排ガスの温度が開始用触媒温度閾値よりも大きくなった場合とは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いた燃料電池セルAでの発電性能が低下し、燃焼触媒部35での未燃ガスの燃焼が増加し触媒燃焼排ガスの温度が上昇した場合である。この場合、シール部材80が破損して燃料ガス及び酸化剤ガス等が漏洩し、発電性能の低下が生じているとして、運転制御部71はシール部材80を修復するための第2運転モードを実行する。なお、開始用触媒温度閾値は、例えば、通常運転での燃焼触媒部35における触媒燃焼排ガスの温度より高い温度に設定されている。
【0098】
運転制御部71は、電圧検出部Vが検出した発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さくなると、第2運転モードを実行する。電圧検出部Vが検出した燃料電池セルAの発電電圧が開始用電圧閾値よりも小さくなった場合とは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いた燃料電池セルAでの発電性能が低下した場合である。この場合、シール部材80が破損して燃料ガス及び酸化剤ガス等が漏洩し、発電性能の低下が生じているとして、運転制御部71はシール部材80を修復するための第2運転モードを実行する。なお、開始用電圧閾値は、例えば、通常運転での燃料電池セルAにおける発電電圧より低い電圧に設定されている。
【0099】
(2-4)第2運転モードの終了条件の例
運転制御部71は、第2運転モードを開始した後、任意のタイミング、第2運転モードを所定期間実行した後のタイミング、燃料電池システム100の状態に基づいたタイミング等の所定のタイミングで第2運転モードを終了する。ここでは、燃料電池システム100の状態に基づいたタイミングでの第2運転モードの終了について説明する。
【0100】
燃焼部29から排出されるセル燃焼排ガスの温度が停止用燃焼温度閾値よりも小さくなった場合、運転制御部71は第2運転モードの実行を停止する。なお、燃焼部29から排出されるセル燃焼排ガスの温度が停止用燃焼温度閾値よりも小さくなった場合とは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いた燃料電池セルAでの発電性能が向上し、燃焼部29での未燃ガスの燃焼が減り燃焼部29の温度が低下した場合である。この場合、運転制御部71は、シール部材80の破損が修復されて燃料ガス及び酸化剤ガス等の漏洩が抑制され、発電性能の低下が抑制されたとして、第2運転モードの実行を停止する。
なお、停止用燃焼温度閾値は、例えば、通常運転での燃焼部29におけるセル燃焼排ガスの温度に設定されている。
【0101】
燃焼触媒部35から排出される触媒燃焼排ガスの温度が停止用触媒温度閾値よりも小さくなった場合、運転制御部71は第2運転モードの実行を停止する。なお、燃焼触媒部35から排出される触媒燃焼排ガスの温度が停止用触媒温度閾値よりも小さくなった場合とは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いた燃料電池セルAでの発電性能が向上し、燃焼触媒部35での未燃ガスの燃焼が減り温度が低下した場合である。この場合、運転制御部71は、シール部材80の破損が修復されて燃料ガス及び酸化剤ガス等の漏洩が抑制され、発電性能の低下が抑制されたとして、第2運転モードの実行を停止する。
なお、停止用触媒温度閾値は、例えば、通常運転での燃焼触媒部35における触媒燃焼排ガスの温度に設定されている。
【0102】
電圧検出部Vが検出した燃料電池セルAの発電電圧が停止用電圧閾値よりも大きくなった場合、運転制御部71は第2運転モードの実行を停止する。なお、電圧検出部Vが検出した発電電圧が停止用電圧閾値よりも大きくなった場合とは、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いた燃料電池セルでの発電性能が向上して発電電圧が上昇した場合である。この場合、運転制御部71は、シール部材80の破損が修復されて燃料ガス及び酸化剤ガス等の漏洩が抑制され、発電性能の低下が抑制されたとして、第2運転モードの実行を停止する。
なお、停止用電圧閾値は、例えば、通常運転での燃料電池セルAの発電電圧に設定されている。
【0103】
〔実験例〕
図2図5に示す円筒平板型の燃料電池モジュール23において、図6に示すようにシール部材80に破損部分85を形成した。第1部材81は、Si、Al等の成分を含むガラス材料で形成されている。
また、第2部材83は、B、Mg、Ca、Ba等の成分を含むガラスフリットA~Cを用いて形成されている。ガラスフリットA~Cの非晶質ガラス以外の組成は次の通りである。ガラスフリットA~Cそれぞれは、テルピネオールを分散媒としたペーストに生成され、第1部材81の上部に第2部材83として塗布されている。
ガラスフリットA:B6%、Mg12%、Al4%、Si6%、Ca3%、Zn10%、Ba19%
ガラスフリットB:B5%、Mg9%、Al3%、Si5%、Zn5%、Ba10%、La30%
ガラスフリットC:B5%、Mg12%、Al3%、Si5%、Ca5%、La33%
【0104】
上記の組成の第1部材81及び第2部材83から形成されたシール部材80を燃料電池セルAとマニホールドMとの接合部分に塗布し、円筒平板型の燃料電池モジュール23を作成した。燃料電池セルAに燃料ガス及び酸化剤ガスを供給しつつ、790℃まで温度を上昇させて2時間運転を継続した。2時間運転前のシール部近傍のHeガスリーク濃度及び2時間運転後のシール部近傍のHeガスリーク濃度をそれぞれHeリークディテクターにて測定した。測定結果は以下の通りである。
【表1】
Tg:ガラス転移温度であり、ミクロな流動性が生じる温度
Ts:軟化点温度であり、マクロな流動性が出てくる温度
Tc:結晶化温度であり、ガラスの結晶化発熱が最大となる温度
【0105】
上記の結果に示す通り、第2部材83にガラスフリットA~Cを用いて燃料電池セルAを790℃で運転した場合、いずれもHeガスのリーク量が運転前よりも運転後の方が減少している。一方、第2部材83を含まず第1部材81のみでシール部材80が形成されている場合には、運転前より運転後の方がリーク量が増加している。これは、第1部材81の破損部分85が修復されておらず、Heガスがリークしていることを意味する。
この結果から、シール部材80の破損部分85が、第2部材83が溶融して入りこむことによって修復されていることが分かる。
【0106】
〔他の実施形態〕
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0107】
(1)上記実施形態の図5等のシール部材80は、溶融する第2部材83が第1部材81の上方に配置されている。しかし、第1部材81と第2部材83との配置関係はこれに限定されない。図18に示すように、第1部材81が第2部材の上方に配置されても良いし、第1部材81と第2部材83とが左右方向に並ぶように配置されてもよい。また、第1部材81が第2部材83により挟持されるようにシール部材80が構成されてもよい。また、第2部材83により第1部材81の破損部分85を修復できればよく、第1部材81と第2部材83との間に別途の介在層が配置されていてもよい。
また、第2部材83は第1部材81の表面全体を覆っている必要はなく、第1部材81の表面の一部を覆っていてもよい。
【0108】
(2)上記実施形態では、運転制御部71が、通常の運転温度よりも高温の運転温度において燃料電池セルAを運転することで、シール部材80を第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満としてシール部材80を修復している。しかし、シール部材80を第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満に加熱できればよく、シール部材80の修復にあたって燃料電池セルAの運転状態を変更する必要はない。例えば、図19に示すように、燃料電池発電装置1の収納容器40内にヒータ(加熱部)75を配置し、ヒータ75によりシール部材80を加熱してもよい。この場合、加熱部制御部73は、上述したのと同様に任意のタイミング、定期的なタイミング、燃料ガス等の漏洩が検出されたタイミングでヒータ75を加熱し、第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満でシール部材80を加熱するように制御する。
【0109】
(3)上記実施形態では、溶融した第2部材83が第1部材81の破損部分85に入り込む方法の一例として、第1部材81の上方に配置され流動状態となった第2部材83が重力により第1部材81の破損部分85に入りこむ態様を説明した。しかし、流動状態の第2部材83が第1部材81の破損部分85に入り込む態様としては、破損部分85側からの圧力の吸引力による場合もあり得る。その他の入り込む態様として、毛細管現象等も挙げられる。
【0110】
(4)上記実施形態では、第1運転モードにおける通常の運転温度を700~750℃とし、第2運転モードにおける運転温度を780~900℃とした。そして、第2部材83の第2軟化点温度を700℃以上とし、第1部材81の第1軟化点温度を900℃以上とした。しかし、第2運転モードにおけるシール部材80のシール温度が、通常の運転温度におけるシール部材80のシール温度以上であり、かつ、第2軟化点温度以上第1軟化点温度未満との条件を満たすのであれば、通常の運転温度、第2運転モードにおける運転温度、第1軟化点温度、第2軟化点温度はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0111】
23 :燃料電池モジュール
71 :運転制御部
73 :加熱部制御部
75 :ヒータ
80 :シール部材
81 :第1部材
83 :第2部材
85 :破損部分
100 :燃料電池システム
A :燃料電池セル
M :マニホールド
図1
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