(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】移動体窓部制御方法及び移動体窓部制御装置
(51)【国際特許分類】
B60J 1/00 20060101AFI20240122BHJP
B60R 11/04 20060101ALI20240122BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B60J1/00 Z
B60R11/04
B60R11/02 Z
(21)【出願番号】P 2020060846
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高松 敦
(72)【発明者】
【氏名】牧田 光弘
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144772(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070330(WO,A1)
【文献】特開2018-063630(JP,A)
【文献】特開2017-039400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
B60R 11/04
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の窓部の透光性を制御する移動体窓部制御装置により実行される移動体窓部制御方法であって、
前記移動体窓部制御装置は、
前記移動体の乗員の視界を検出し、
前記視界のうち、前記窓部を介して前記乗員が視認可能な映像を取得し、
取得された前記映像に含まれる景色の流れを流れ速度として算出し、
前記流れ速度が所定値以上である前記景色を含む前記窓部の遮光範囲を特定し、
前記遮光範囲の透光率を、前記流れ速度が所定値未満である場合の透光率よりも低くなるように制御
し、
前記乗員が複数いる場合には、複数の前記乗員ごとに、前記遮光範囲をそれぞれ特定し、
特定された前記遮光範囲の面積をそれぞれ比較し、複数の前記遮光範囲のうち、前記面積が最も大きい前記遮光範囲を前記遮光範囲として特定する
移動体窓部制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体窓部制御方法であって、
前記移動体に備えられるカメラによって撮像された前記映像から前記流れ速度を算出する移動体窓部制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体窓部制御方法であって、
前記映像に含まれる対象物を特定し、
前記移動体に備えられるセンサによって検出された前記移動体の移動速度と前記移動体から前記対象物までの距離を取得し、
取得された前記移動速度と前記距離に基づいて、前記対象物の流れを前記対象物の流れ速度として算出する移動体窓部制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の移動体窓部制御方法であって、
前記移動体の前方部分に備えられるカメラによって撮像された前記映像から前記流れ速度を予測する移動体窓部制御方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の移動体窓部制御方法であって、
前記移動体に備えられるセンサによって検出された前記移動体の移動速度を取得し、
前記移動速度が所定値以上である場合に、請求項1~4のいずれかに記載の制御を実行する移動体窓部制御方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の移動体窓部制御方法であって、
前記乗員が撮像された乗員画像を取得し、
取得された前記乗員画像に基づいて、前記乗員の視線方向を検出し、
前記視線方向に基づいて、前記視界を検出する移動体窓部制御方法。
【請求項7】
移動体の窓部の透光性を制御する移動体窓部制御装置により実行される移動体窓部制御方法であって、
前記移動体窓部制御装置は、
前記移動体の乗員の視界を検出し、
前記視界のうち、前記窓部を介して前記乗員が視認可能な映像を取得し、
取得された前記映像に含まれる対象物を特定し、
前記移動体に備えられるセンサによって検出された前記移動体の移動速度と前記移動体から前記対象物までの距離を取得し、
取得された前記移動速度と前記距離に基づいて、前記対象物の流れを前記対象物の流れ速度として算出し、
前記流れ速度が所定値以上である前記対象物を含む前記窓部の遮光範囲を特定し、
前記遮光範囲の透光率を、前記流れ速度が所定値未満である場合の透光率よりも低くなるように制御し、
前記映像の横幅に対する前記対象物の横幅の比率を算出し、
算出された前記比率が所定値以下である場合には、前記比率が所定値以下である前記対象物を、前記流れ速度が算出される対象から除外する移動体窓部制御方法。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の移動体窓部制御方法であって、
前記透光率は、前記流れ速度が高いほど低くなるように連続的にまたは段階的に設定される移動体窓部制御方法。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の移動体窓部制御方法であって、
前記窓部は、前記移動体の室内と室外とを仕切り、部分ごとに光を透過する透光状態または遮光する遮光状態に制御可能な複数の範囲から構成される移動体窓部制御方法。
【請求項10】
移動体の窓部の透光性を制御する移動体窓部制御装置であって、
移動体の乗員の視界を検出する乗員視界検出部と、
前記視界のうち、前記窓部を介して前記乗員が視認可能な映像を取得する映像取得部と、
取得された前記映像に含まれる景色の流れを流れ速度として算出する流れ速度算出部と、
前記流れ速度が所定値以上である前記景色を含む前記窓部の遮光範囲を特定する遮光範囲特定部と、
前記遮光範囲の透光率を、前記流れ速度が所定値未満である場合の透光率よりも低くなるように制御する窓部透光率制御部とを備え
、
前記遮光範囲特定部は、
前記乗員が複数いる場合には、複数の前記乗員ごとに、前記遮光範囲をそれぞれ特定し、
特定された前記遮光範囲の面積をそれぞれ比較し、
複数の前記遮光範囲のうち、前記面積が最も大きい前記遮光範囲を前記遮光範囲として特定する
移動体窓部制御装置。
【請求項11】
移動体の窓部の透光性を制御する移動体窓部制御装置であって、
移動体の乗員の視界を検出する乗員視界検出部と、
前記視界のうち、前記窓部を介して前記乗員が視認可能な映像を取得し、取得された前記映像に含まれる対象物を特定する映像取得部と、
前記移動体に備えられるセンサによって検出された前記移動体の移動速度と前記移動体から前記対象物までの距離に基づいて、前記対象物の流れを前記対象物の流れ速度として算出する流れ速度算出部と、
前記流れ速度が所定値以上である前記対象物を含む前記窓部の遮光範囲を特定する遮光範囲特定部と、
前記遮光範囲の透光率を、前記流れ速度が所定値未満である場合の透光率よりも低くなるように制御する窓部透光率制御部とを備え、
前記流れ速度算出部は、
前記映像の横幅に対する前記対象物の横幅の比率を算出し、
算出された前記比率が所定値以下である場合には、前記比率が所定値以下である前記対象物を、前記流れ速度が算出される対象から除外する移動体窓部制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体窓部制御方法及び移動体窓部制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の走行状態を検知するセンサと、低速走行時は、運転者の視界を広くするように、高速走行時は、予め設定された遮光範囲の遮光により、運転者の視界を狭めるように制御される遮光部が設けられた窓部とを備える車両が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、移動体の窓部から見える景色のうち乗員の視界を流れる速度が速い部分を乗員が見ていると乗員の眼は反射的に景色の変化に追従しようとして左右に小刻みに動く。このような眼球の動きが原因のひとつとなって乗員は乗り物酔いを起こしやすい。特許文献1に記載の車両は、単に車速のみに応じて遮光範囲が予め設定された遮光部を制御しているため、車両が低速走行するとき、流れる速度が速い景色、例えば、相対速度が速い対向車両等が乗員の視界に入る場合、又は、車両が高速走行するとき、車両の窓部を介して視認可能な景色のうち、乗員の視界に、遮光範囲外に流れる速度が速い部分が映っている場合に、乗員が乗り物酔いしやすいという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、移動体の乗員の乗り物酔いを防止できる移動体窓部制御方法及び移動体窓部制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、移動体の乗員の視界を検出し、視界のうち、窓部を介して乗員が視認可能な映像を取得し、映像に含まれる景色の流れを流れ速度として算出し、流れ速度が所定値以上である景色を含む窓部の遮光範囲を特定し、遮光範囲の透光率を、流れ速度が所定値未満である場合の透光率よりも低くなるように制御することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動体の乗員の乗り物酔いを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る移動体窓部制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る車両の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る移動体窓部制御が実行される場面を示す図である。
【
図4】
図4は、窓部における遮光範囲が設定される一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る移動体窓部制御の概要を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る車両が走行するコースを示す図である。
【
図7A】
図7Aは、第1実施形態に係る車両がコースAを走行するときの窓部を介して視認可能な映像を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、第1実施形態に係る車両がコースBを走行するときの窓部を介して視認可能な映像を示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る移動体窓部制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る移動体窓部制御の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
本発明に係る移動体窓部制御装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る移動体窓部制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態では、移動体窓部制御装置10は、車両1に備えつけられた装置であり、コントローラ11と、映像取得装置20と、乗員視界検出装置30と、窓部透光率変更装置40とを備える。車両1は、複数の座席を有しており、例えば、乗員を乗せて走行する乗合タクシーやバスである。
図2は、車両1の構成の一例を示す図である。
図2で示されるように、車両1には、座席3の正面が車両1の進行方向に対して垂直方向を向くように、複数の座席3が車両1内に配置されている。また、この複数の座席3は、車両1の進行方向に沿って一列に配置されている。言い換えると、車両1の進行方向をX軸方向としたときに、複数の座席3の正面はY軸方向を向くように配置され、かつ、複数の座席3が車両1の片側の側面に沿って、X軸方向に一列に配置されている。そして、車両1の、座席3が配置されている側とは反対側の側面には、図示しない乗降口と窓部2が車両1の進行方向に対して垂直方向、すなわち、Y軸方向に向くように設置されている。また、この複数の窓部2は、車両1の進行方向、すなわち、X軸方向に沿って一列に配置されている。つまり、車両1内の座席3に着座した乗員4は、視線を正面に向けると、反対側の窓部2を通じて、車外の景色の映像、すなわち、光線の屈折・反射によって生成される像を見ることができる。例えば、
図2で示されるように、乗員4の視線方向5は、それぞれ反対側の側面の窓部2の方向を向いている。乗員4は車両1の進行方向に対して垂直方向を向くように座っているため、窓部2を介して視認可能な車外の景色は車両1の進行方向とは反対方向に流れていくように見える。一般的に、移動体の窓部を介して視認可能な車外の景色のうち乗員の視界を流れる速度が速い部分を見ていると乗員の眼は反射的に景色の変化に追従しようとして左右に小刻みに動く。このような眼球の動きが原因のひとつとなって乗員は乗り物酔いを起こしやすい。車外の景色のうち視界を流れる速度が速い部分とは、例えば、車両から近傍にある景色や、車両が旋回する時の外輪側の景色である。逆に、車外の景色のうち視界を流れる速度が遅い部分とは、例えば、車両から遠方にある景色や車両が旋回する時の内輪側の景色である。なお、本実施形態では、車両1の座席は進行方向に対して垂直方向を向くように設定されることを前提としているが、これに限らず、一般的な車両のように、座席が進行方向を向くように配置されていることとしてもよい。この場合には、乗員が進行方向に対して垂直方向に顔を向けることで、乗員は窓部を通して車外の景色を見ることができる。また、本実施形態では、車両を前提としているが、これに限らず、乗員を乗せて移動することができる移動体であればよく、例えば、電車、船舶、飛行物体等であってもよい。
【0011】
コントローラ11は、ハードウェア及びソフトウェアを備えたコンピュータにより構成され、プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)を備えている。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。コントローラ11は、機能ブロックとして、窓部映像取得部12と、流れ速度算出部13と、遮光範囲特定部14と、窓部制御部15とを備え、各機能を実現する又は各処理を実行するためのソフトウェアと、ハードウェアとの協働により各機能を実行する。コントローラ11は、移動体窓部制御装置10全体の処理を制御する。具体的には、コントローラ11は、映像取得装置20と乗員視界検出装置30により取得された情報に基づいて、車両1の窓部を通じて乗員が視認可能な車外の映像を取得する。そして、コントローラ11は、車外映像に含まれる景色の流れを流れ速度として算出して、算出された流れ速度が所定値以上である景色を含む遮光範囲を特定し、窓部の遮光範囲の透光率を低くする制御を行う。
【0012】
窓部映像取得部12は、乗員視界検出装置30により検出される乗員の視線方向の視界と、映像取得装置20により取得される車両1の車外映像に基づいて、乗員の視界のうち、窓部を介して乗員が視認可能な映像を取得する。当該映像には、車両1の周囲の景色が含まれる。具体的には、まず、窓部映像取得部12は、乗員視界検出装置30により検出された乗員の視線方向の視界の範囲を取得する。乗員の視線方向は、例えば、乗員の目の位置を基準にした、上下(視線方向の高さ)や左右(窓部が複数ある場合には、どの窓部を見ているか)の方向である。次に、窓部映像取得部12は、映像取得装置20から、乗員の視線方向の視界のうち、車両1の窓部を介して視認可能な映像を取得する。このとき取得される映像は、車両1の窓部を介して視認可能な全ての範囲の映像を取得することとしてもよいし、車両1の窓部を介して視認可能な一部の範囲の映像を取得することとしてもよい。例えば、窓部を介して視認可能な映像内の上部には、空などの、視界を流れる速度が遅い景色を含む可能性が高いため、あらかじめ映像の取得範囲から除外することとしてもよい。
【0013】
流れ速度算出部13は、窓部を介して乗員が視認可能な映像に含まれる景色の流れを流れ速度として算出する。景色は静止していて動かないものであるが、移動中の車両1に乗車している乗員から車外の景色を見ると、景色は、乗員の視界を車両1の進行方向とは反対方向に移動しているように見える。流れ速度算出部13は、景色の見かけの移動速度を算出する。例えば、流れ速度算出部13は、窓部を介して乗員が視認可能な映像におけるオプティカルフローを推定し、映像に含まれる景色の流れ速度を算出する。例えば、まず、流れ速度算出部13は、映像取得装置20により撮像された映像の、時系列的に連続する2以上の撮像画像を取得する。そして、流れ速度算出部13は、複数の撮像画像間における対応点を求め、一定時間における対応点の位置の変化量に基づいて、撮像された映像に含まれる景色の流れ速度を算出する。
【0014】
なお、本実施形態では、流れ速度が算出される対象となる映像は、当該映像が車両1の窓部を介して乗員により視認可能となった時に、車両1の側方に設置された映像取得装置20によって撮像されたものを想定している。すなわち、流れ速度算出部13は、乗員が窓部を介して実際に視認している映像に対して、即時に当該映像に含まれる景色の流れ速度を算出している。しかし、これに限らず、流れ速度算出部13は、車両1の進行方向の前方の車外の映像に基づいて、映像に含まれる景色の流れ速度を算出することとしてもよい。具体的には、まず、車両1の前方に設置された映像取得装置20は、車両1から所定距離前の位置における車外の映像を取得する。そして、流れ速度算出部13は、当該位置における車外の映像中のオプティカルフローを推定し、映像に含まれる景色の流れ速度を算出する。また、所定距離前の位置における車外の映像が車両1の窓部を介して視認可能となるタイミングは、車両1の車速と当該位置までの距離から算出できる。したがって、流れ速度算出部13は、所定時間後に窓部を介して視認可能となる映像に含まれる景色の流れ速度を事前に予測することができる。窓部を介して乗員が視認可能な映像に対して流れ速度算出部13が即時に流れ速度を算出する場合には、演算処理の遅延により制御に遅れが生じる可能性があるが、事前に流れ速度を予測することで、演算処理の遅延による影響を小さくすることができる。また、流れ速度算出部13は、車両1の前方カメラが取得した画像データから流れ速度を予測することに限らず、車両1の前方を走行している先行車両の車載カメラが撮像した画像データを車車間通信で取得して、流れ速度を予測することとしてもよい。
【0015】
遮光範囲特定部14は、窓部を介して視認可能な映像に含まれる景色のうち、流れ速度が所定値以上である景色を含む遮光範囲を特定する。具体的には、遮光範囲特定部14は、まず、窓部を介して視認可能な映像に含まれる景色の流れ速度が所定値以上であるか否かの判定を行い、窓部を介して視認可能な映像に含まれる景色のうち、流れ速度が所定値以上であると判定される景色の範囲を特定する。そして、遮光範囲特定部14は、流れ速度が所定値以上である景色の範囲に応じて、当該範囲を含む遮光範囲を特定する。遮光範囲は、窓部に対応する範囲であって、流れ速度が所定値以上である景色の範囲に応じて設定される。例えば、遮光範囲の横幅は、窓部の横幅に対応するよう設定される。一方で、遮光範囲の高さは、流れ速度が所定値以上である景色の範囲の高さに応じて設定される。
図3は、窓部を介して視認可能な車外の映像を示す一例である。
図3の例では、窓部を介して視認可能な映像に含まれる景色のうち、道路領域Rの範囲の景色の流れ速度が所定値以上である場合を示している。このような場合には、
図4で示されるように、遮光範囲特定部14は、道路領域Rを含む範囲を遮光範囲に設定する。例えば、遮光範囲特定部14は、道路領域Rの範囲が遮光範囲に含まれるように遮光範囲の高さを設定する。
【0016】
また、車両1に乗員が複数いる場合には、乗員ごとに、車両1内における位置や目の高さが異なるため、窓部を介して視認可能な映像に含まれる景色の流れ速度が速い範囲、すなわち、遮光範囲が乗員ごとに異なる。そのため、遮光範囲特定部14は、車両1に乗員が複数いる場合には、乗員それぞれの視線方向の視界に対して、遮光範囲を特定して、特定されたそれぞれの遮光範囲の面積を比較する。そして、遮光範囲特定部14は、複数の遮光範囲のうち、最も面積が広い遮光範囲を遮光範囲として特定する。また、遮光範囲特定部14は、複数の乗員ごとに特定された遮光範囲を全て含む範囲を遮光範囲として特定することとしてもよい。
【0017】
窓部制御部15は、車両1の窓部の遮光範囲の透光率を、流れ速度が所定値未満である場合の透光率よりも低く設定するよう制御する。具体的には、まず、窓部制御部15は、車両1の窓部に一体的にまたは接近するように設置された複数のパネルのうち、窓部の遮光範囲に対応する範囲のパネルの位置を特定する。次に、窓部制御部15は、窓部の遮光範囲に対応する範囲のパネルとして特定したパネルの状態を遮光状態に制御するとともに、遮光範囲以外の範囲のパネルの状態を透光状態に制御する制御情報を生成する。そして、窓部制御部15は、生成された制御情報を窓部透光率変更装置40に出力する。制御情報には、少なくとも、各パネルの状態として遮光状態または透光状態が設定されていて、さらに、遮光状態の透光率が設定されている。このとき、遮光状態の透光率は、景色の流れ速度が所定値未満である場合の透光率よりも低く設定されている。例えば、景色の流れ速度が所定値未満である場合には、透光率が100%である透光状態に設定されるのに対して、遮光範囲に対応する範囲のパネルは、透光状態(透光率100%)よりも透光率を少なくとも30%以上低く設定した遮光状態(透光率70%以下)に制御される。なお、遮光状態のパネルの透光率は、少なくとも透光状態のパネルの透光率よりも低いものであればよい。例えば、遮光状態の透光率は0%の他、10%や30%であってもよく、透光状態の透光率は100%の他、90%や70%であってよい。また、本実施形態では、遮光範囲の透光率について、窓部制御部15は、流れ速度が所定値以上である範囲を、流れ速度が所定値未満である範囲よりも透光率を低くするように制御することとしてもよいし、同じ範囲について、流れ速度が所定値以上である場合には、流れ速度が所定値未満である場合よりも透光率を低くするように制御することとしてもよい。
【0018】
また、透光率は、景色の流れ速度が速い範囲ほど透光率を低くするように設定されることとしてもよい。例えば、景色の流れ速度に応じて連続的に透光率を設定することとしてもよいし、景色の流れ速度に応じて設定されたいくつかの区分ごとに、段階的に透光率を設定することとしてもよい。段階的な透光率の設定の仕方としては、例えば、所定の第1流れ速度、所定の第2流れ速度というように所定の流れ速度を設定し、第1流れ速度、第2流れ速度を超えると、それぞれ透光率が30%、40%に設定される。なお、車内から乗員が外の景色を全く見ることができない場合にはかえって車酔いが起こりやすい場合もあるため、乗員が適度に車外の景色を見られるようにすることとしてもよい。例えば、窓部制御部15は、窓部を介して視認可能な映像のうち最も流れ速度が遅い部分の透光率を100%(透光状態)に設定し、流れ速度が速い部分になるにつれて連続的または段階的に透光率を低く設定する。
【0019】
映像取得装置20は、車両1の車外の映像を取得する。車外の映像は、車両1の周囲の景色を含む。映像取得装置20は、例えば、車両1の側面に設置されているカメラである。映像取得装置20は、車両1の周囲の映像を撮像するよう設置されていて、一定の時間間隔で、車両1の車外の映像を撮像する。映像取得装置20により撮像された画像データは、コントローラ11に出力される。映像取得装置20は、側面に設置されているカメラに限らず、車両1の前方に設置されているカメラであってもよい。
【0020】
乗員視界検出装置30は、乗員の視線方向に基づいて、乗員の視界を検出する。乗員視界検出装置30は、乗員を撮像するカメラを含む。乗員視界検出装置30は、車両1の乗員を撮像するように設置されていて、一定の時間間隔で乗員を撮像する。次に、乗員視界検出装置30は、乗員の画像データを画像解析し、乗員の目の位置と顔の向きに基づいて、視線方向を検出する。そして、乗員視界検出装置30は、乗員の視線方向の視界を検出する。また、乗員視界検出装置30は、乗員がかけている眼鏡の向きによって視線方向を検出することとしてもよい。また、乗員がジャイロセンサ等を含む位置姿勢推定装置を装着している場合には、乗員視界検出装置30は、当該位置姿勢推定装置によって取得された目の位置や顔の向きから乗員の視界を検出することとしてもよい。また、乗員視界検出装置30は、車両1内の乗員の位置情報または座席の位置情報に基づいて、乗員の眼の位置を検出することとしてもよい。また、車両1内に乗員が複数いる場合には、乗員それぞれの視界を検出する。
【0021】
窓部透光率変更装置40は、車両1の窓部に設置された複数のパネルからなる装置である。複数のパネルは、窓部に一体的にまたは接近するように設置されていて、遮光状態、透光状態、または、透光率を変更した状態に制御可能なパネルである。複数のパネルは、窓部の少なくとも一部に設置される。窓部透光率変更装置40は、窓部制御部15から出力された制御情報に基づいて、複数のパネルの状態を制御する。なお、窓部の範囲のうち、透光率を変更できる部分は、窓部全体でも窓の一部であってもよい。
【0022】
次に、
図5を用いて、本実施形態に係る移動体窓部制御方法の手順について説明する。
図5は、移動体窓部制御を実行するための手順を示すフローチャートである。本実施形態では、車両1が走行を開始すると、コントローラ11はステップS501から移動体窓部制御を開始する。なお、本実施形態では、車両1が走行している場面を想定している。
【0023】
ステップS501では、乗員視界検出装置30は、乗員の視線方向の視界を検出する。具体的には、乗員視界検出装置30は、車両1の乗員を撮像して、撮像された撮像画像から乗員の眼の位置や顔の向きを解析する。そして、乗員視界検出装置30は、解析結果に基づいて、視線方向の視界を検出する。また、乗員視界検出装置30は、所定の時間間隔で繰り返し乗員の視界を検出する。
【0024】
ステップS502では、コントローラ11は、ステップS501で検出された乗員の視界のうち、車両1の窓部を介して乗員が視認可能な映像を取得する。具体的には、コントローラ11は、乗員の視界のうち、窓部を介して視認可能な車外の映像を映像取得装置20から取得する。また、このとき、映像取得装置20は、所定の時間間隔で車外の映像が撮像された複数の撮像画像をコントローラ11に出力する。複数の撮像画像は、時系列的に連続する2以上の撮像画像である。
【0025】
ステップS503では、コントローラ11は、ステップS502で取得された車外の映像の複数の撮像画像に基づいて、車外の映像におけるオプティカルフローを推定し、車外の映像に含まれる景色の流れ速度を算出する。
【0026】
ステップS504では、コントローラ11は、窓部を介して視認可能な映像に含まれる景色のうち、ステップS503で算出された流れ速度が所定値以上である景色の範囲を特定する。具体的には、コントローラ11は、車外映像に含まれる景色において、流れ速度が所定値以上であるか否かを判定して、流れ速度が所定値以上であると判定された景色の範囲を特定する。
【0027】
ステップS505では、コントローラ11は、ステップS504で特定された流れ速度が所定値以上であると判定された景色の範囲を含む遮光範囲を特定する。例えば、コントローラ11は、遮光範囲の横幅を窓部の横幅と対応するように設定し、遮光範囲の高さを、流れ速度が所定値以上であると判定された景色の範囲が遮光範囲に含まれるように設定することで、遮光範囲を特定する。
【0028】
ステップS506では、コントローラ11は、遮光範囲に対応する窓部の複数のパネルを遮光状態にする窓部透光率制御を行う。具体的には、コントローラ11は、まず、窓部の複数のパネルのうち、遮光範囲に対応するパネルの状態を遮光状態に制御する制御情報を生成する。次に、コントローラ11は、生成した制御情報を窓部透光率変更装置40に出力する。そして、窓部透光率変更装置40は、入力された制御情報に基づいて、遮光範囲に対応する窓部の複数のパネルの状態を遮光状態に変更する制御を実行する。
【0029】
ステップS507では、コントローラ11は、遮光範囲以外の範囲に対応する窓部の複数のパネルを透光状態にする窓部透光率制御を行う。具体的には、コントローラ11は、まず、窓部の複数のパネルのうち、遮光範囲以外の範囲に対応するパネルの状態を透光状態に制御する制御情報を生成する。次に、コントローラ11は、生成した制御情報を窓部透光率変更装置40に出力する。そして、窓部透光率変更装置40は、入力された制御情報に基づいて、窓部の複数のパネルの状態を透光状態になるよう制御する。具体的には、ステップS507の制御処理を実行する前に、パネルの状態が透光状態である場合には、パネルの状態が透光状態となる。一方、ステップS507の制御処理を実行する前に、パネルの状態が遮光状態である場合には、パネルの状態は遮光状態から透光状態に変更する。
【0030】
ステップS508では、コントローラ11は、車両1の走行が終了したか否かを判定する。コントローラ11は、車両1の走行が終了したと判定した場合には、移動体窓部制御を終了する。また、車両1の走行が終了したと判定されない場合には、ステップS501に戻り、以下、車両1の走行が終了するまでフローを繰り返す。これにより、本実施形態では、車両1が走行しているとき、常に、乗員の視線方向の動きに合わせて、車外の景色が速く流れる範囲の窓部を部分的に遮光状態にすることができる。
【0031】
次に、車両1が走行しているときに、移動体窓部制御が実行される一例を説明する。
図6は、車両1が走行するコースの一例を示す図である。コースは、コースAの領域とコースBの領域に分けられる。コースAとコースBでは、窓部を介して視認可能な景色のうち、流れ速度が所定値以上である景色の範囲の面積の大きさが異なる。具体的には、車両1がコースAを走行しているときは、流れ速度が所定値以上である景色の範囲が、車両1がコースBを走行しているときの流れ速度が所定値以上である景色の範囲よりも大きい。すなわち、車両1がコースAを走行しているときに特定される遮光範囲の面積は、車両1がコースBを走行しているときに特定される遮光範囲の面積よりも大きい。
図7Aは、車両1がコースAを走行しているときの、窓部を介して視認可能な映像に含まれる景色の一例を示す図である。
図7Aは、景色の中に含まれる道路の領域と植物の領域の流れ速度が所定値以上である場面を示している。この場合には、コントローラ11は、道路の領域と植物の領域を含む遮光範囲を特定する。また、
図7Bは、車両1がコースBを走行しているときの、窓部を介して視認可能な映像に含まれる景色の一例を示す図である。
図7Bは、景色の中に含まれる道路の領域の流れ速度が所定値以上である場面を示している。この場合には、コントローラ11は、道路の領域を含む遮光範囲を特定する。このとき、コースAにおいて窓部を介して視認可能な道路の領域と植物の領域は、コースBにおいて窓部を介して視認可能な道路の領域よりも面積が大きい。したがって、コントローラ11は、コースAを走行しているときには、コースBを走行しているときよりも面積が大きい遮光範囲を特定する。また、本実施形態では、コントローラ11は、所定の時間間隔で繰り返し移動体窓部制御を実行する。したがって、例えば、車両1がコースAからコースBに移動したときには、コントローラ11は、景色の変化に合わせて透光率の制御を行う。車両1がコースAからコースBに移動すると、特定される遮光範囲の面積は小さくなるので、コントローラ11は、コースAにおいて特定されていた遮光範囲とコースBにおいて特定される遮光範囲との差になる範囲を遮光状態から透光状態に変更する制御を行う。また、逆に、車両1がコースBからコースAに移動するときには、特定される遮光範囲の面積は大きくなるので、コントローラ11は、コースBにおいて特定されていた遮光範囲とコースAにおいて特定される遮光範囲との差になる範囲を透光状態から遮光状態に変更する制御を行う。
【0032】
以上のように、本実施形態では、移動体の窓部の透光性を制御する移動体窓部制御装置により実行される移動体窓部制御方法であって、移動体窓部制御装置は、移動体の乗員の視界を検出し、視界のうち、窓部を介して乗員が視認可能な映像を取得し、取得された映像に含まれる景色の流れを流れ速度として算出し、流れ速度が所定値以上である景色を含む窓部の遮光範囲を特定し、遮光範囲の透光率を、流れ速度が所定値未満である場合の透光率よりも低くなるように制御する。これにより、移動体の乗員の乗り物酔いを防止することができる。
【0033】
また、本実施形態では、移動体に備えられるカメラによって撮像された映像から流れ速度を算出する。これにより、車外映像が車両の窓部を流れる際の速度を取得することができる。
【0034】
また、本実施形態では、移動体の前方部分に備えられるカメラによって撮像された映像から、流れ速度を予測する。これにより、車外映像が車両の窓部を流れる前に流れ速度を算出でき、演算処理の遅延によって制御が遅れることを防止することができる。
【0035】
また、本実施形態では、移動体に備えられるセンサによって検出された移動体の移動速度を取得し、移動速度が所定値以上である場合に、移動体窓部制御を実行する。これにより、景色の中でも近景と遠景で流れ速度に差がある場合にのみ制御を実行して、演算負荷を減らすことができる。
【0036】
また、本実施形態では、乗員が撮像された乗員画像を取得し、乗員画像に基づいて、乗員の視線方向を検出し、視線方向に基づいて、視界を検出する。これにより、実際に乗員が見ている方向に応じて乗員の視界を取得することができる。
【0037】
また、本実施形態では、乗員が複数いる場合には、複数の乗員ごとに、遮光範囲をそれぞれ特定し、遮光範囲の面積をそれぞれ比較し、複数の遮光範囲のうち、面積が最も大きい遮光範囲を遮光範囲として特定する。これにより、乗員ごとの位置や目の高さの違いに対応して、乗員の視界の中で景色が流れる速度が高い範囲を特定することができる。
【0038】
また、本実施形態では、透光率は、流れ速度が高いほど低くなるように連続的にまたは段階的に設定される。これにより、景色が乗員の視界を流れる速度に即して適切に景色を視界から見えにくくすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、窓部は、移動体の室内と室外とを仕切り、部分ごとに光を透過する透光状態または遮光する遮光状態に制御可能な複数の範囲から構成される。これにより、窓部において、部分ごとに光を透過する範囲と遮光する範囲を制御することができる。
【0040】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る移動体窓部制御装置は、以下に説明する点において第1実施形態に係る移動体窓部制御装置と異なること以外は、第1実施形態と同様の構成を有し、第1実施形態と同様に動作するものであり、第1実施形態の記載を適宜、援用する。本実施形態では、コントローラ11は、車両速度検出装置50により取得される車速及び周辺環境取得装置60により取得される車両1と対象物までの距離に基づいて、車外映像に映る対象物の流れ速度を算出する。そして、コントローラ11は、流れ速度が所定値以上である対象物の範囲を含む遮光範囲を特定する制御を行う。対象物は、車両1の周囲の景色の中で乗員が視認可能なものであり、例えば、道路や建物、草木等である。また、対象物は、トンネル内における照明を含む。
【0041】
図8は、第2実施形態に係る移動体窓部制御装置を示す構成図である。第2実施形態に係る移動体窓部制御装置10は、第1実施形態の構成に加えて、車両速度検出装置50と、周辺環境取得装置60とをさらに備える。
【0042】
車両速度検出装置50は、車両1の車速を検出する。例えば、車両速度検出装置50は、車両1のドライブシャフトなどの駆動系の回転速度を計測し、これに基づいて車両1の車速を検出する。車両速度検出装置50により検出された車両1の車速の情報はコントローラ11に出力される。
【0043】
周辺環境取得装置60は、車両1と対象物との間の距離を取得する。周辺環境取得装置60は、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)を用いることができる。また、周辺環境取得装置60の数は特に限定されず、例えば、車両1の前方、側方、及び後方にそれぞれ設けられる。また、周辺環境取得装置60は、車両1の位置情報と、周辺の対象物の位置情報を含む地図情報に基づいて、車両1と対象物との位置関係から、車両1と対象物との間の距離を取得することとしてもよい。周辺環境取得装置60により検出された車両1と対象物の距離の情報はコントローラ11の出力される。
【0044】
また、窓部映像取得部12は、車両1の窓部を介して視認可能な映像に含まれる対象物を特定する。例えば、窓部映像取得部12は、映像取得装置20から取得した映像から、画像認識技術により、対象物の特徴を抽出し、対象物を特定する。また、窓部映像取得部12は、画像セグメンテーションにより、映像上の対象物の境界を抽出することで、対象物を特定することとしてもよい。また、窓部映像取得部12は、車外の映像におけるオプティカルフローを推定し、移動ベクトルが共通する範囲を、対象物の範囲として特定することとしてもよい。また、窓部映像取得部12は、対象物の高さ情報を含む地図情報に基づいて、車両1の窓部を介して視認可能な車外映像に含まれる対象物を特定することとしてもよい。
【0045】
また、流れ速度算出部13は、対象物の流れ速度を算出する。対象物は、静止して動かないものを含むが、移動中の車両1に乗車している乗員から対象物を見ると、対象物は、乗員の視界を車両1の進行方向とは反対方向に移動しているように見える。また、近傍の景色に含まれる対象物は、遠方の景色に含まれる対象物よりも速く乗員の視界を流れていくように見える。流れ速度算出部13は、対象物の見かけの移動速度を算出する。具体的には、流れ速度算出部13は、車両速度検出装置50により検出された車両1の車速と周辺環境取得装置60により取得された車両1と対象物までの距離に基づいて、対象物の流れ速度を算出する。車外映像に含まれる対象物が複数ある場合には、流れ速度算出部13は、対象物ごとに流れ速度を算出する。
【0046】
また、流れ速度算出部13は、車外映像の横幅に対する対象物の横幅の比率が所定値以下である対象物を、流れ速度の算出対象から除外することとしてもよい。これは、車外映像に映る対象物の中でも、電柱やポール等、極めて短時間で乗員の視界を流れていく対象物については、当該対象物に合わせて窓部の一部を遮光状態にする必要がないからである。
【0047】
図9は、移動体窓部制御の手順を示すフローチャートである。以下、
図9のフローチャートに基づいて、移動体窓部制御の手順を説明する。コントローラ11は、車両1の走行が開始すると、ステップS901から制御を開始する。
【0048】
ステップS901では、乗員視界検出装置30は、乗員の視線方向の視界を検出する。
【0049】
ステップS902では、コントローラ11は、ステップS901で検出された乗員の視界のうち、車両1の窓部を介して視認可能な映像を取得する。具体的には、コントローラ11は、乗員の視界に含まれる映像の撮像画像を映像取得装置20から取得する。
【0050】
ステップS903では、コントローラ11は、窓部を介して乗員が視認可能な映像に含まれる対象物を特定する。
【0051】
ステップS904では、車両速度検出装置50は、車両1の車速を取得する。
【0052】
ステップS905では、周辺環境取得装置60は、車両1から対象物までの距離を取得する。
【0053】
ステップS906では、コントローラ11は、対象物の流れ速度を算出する。具体的には、ステップS904で取得された車両1の車速と、ステップS905で取得された車両1から対象物までの距離に基づいて、対象物の流れ速度を算出する。
【0054】
ステップS907では、コントローラ11は、車外映像上で流れ速度が所定値以上である対象物を特定する。具体的には、コントローラ11は、対象物ごとに流れ速度が所定値以上であるか否かを判定して、流れ速度が所定値以上であると判定された対象物を特定する。これにより、車外の映像に含まれる、流れ速度が所定値以上である対象物を特定することで、映像に含まれる景色のうち、流れ速度が所定値以上であると判定された範囲を特定することができる。
【0055】
ステップS908では、コントローラ11は、流れ速度が所定値以上である対象物を含む遮光範囲を特定する。
【0056】
ステップS909では、コントローラ11は、遮光範囲に対応する窓部の複数のパネルを遮光状態にする窓部透光率制御を行う。具体的には、コントローラ11は、まず、窓部の複数のパネルのうち、遮光範囲に対応するパネルの状態を遮光状態に制御する制御情報を生成する。次に、コントローラ11は、生成した制御情報を窓部透光率変更装置40に出力する。そして、窓部透光率変更装置40は、入力された制御情報に基づいて、窓部の複数のパネルの状態を遮光状態に変更する制御を実行する。
【0057】
ステップS910では、コントローラ11は、遮光範囲以外の範囲に対応する窓部の複数のパネルを透光状態にする窓部透光率制御を行う。具体的には、コントローラ11は、まず、窓部の複数のパネルのうち、遮光範囲以外の範囲に対応するパネルの状態を透光状態に制御する制御情報を生成する。次に、コントローラ11は、生成した制御情報を窓部透光率変更装置40に出力する。そして、窓部透光率変更装置40は、入力された制御情報に基づいて、窓部の複数のパネルの状態を透光状態に変更する制御を実行する。
【0058】
ステップS911では、コントローラ11は、車両1の走行が終了したか否かを判定する。コントローラ11は、車両1の走行が終了したと判定した場合には、移動体窓部制御を終了する。また、車両1の走行が終了したと判定されない場合には、ステップS901に戻り、以下、車両1の走行が終了するまでフローを繰り返す。これにより、本実施形態では、車両1の走行中、常に、乗員の視線方向の動きに合わせて、景色が速く流れる部分の窓部を遮光状態にすることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、コントローラ11は、車両速度検出装置50により取得された車両1の車速が所定値以上である場合に、本実施形態に係る移動体窓部制御を実行することとしてもよい。すなわち、コントローラ11は、車両1の車速が所定値未満である場合には、本実施形態に係る移動体窓部制御を実行しない。所定値は、例えば、時速10kmである。一般的に、車外の景色のうち、近景と遠景で乗員の視界を流れる速度が異なって見えるが、近景と遠景で流れる速度に差がないほど車両1の車速が低い場合には、窓部の一部を遮光状態にする制御を実行する必要はないからである。これにより、演算負荷を減らすことができる。
【0060】
なお、本実施形態では、乗員が車両1の進行方向に対して正面に向いて着座している場合には、乗員の視線方向の視界に含まれる車外映像ではなく、正面を向いている乗員が横の窓部のほうに顔を向けたら視認可能となる車外映像を取得することとしてもよい。この場合には、乗員視界検出装置30は、乗員の視線方向を検出するのではなく、乗員の頭の位置を検出し、乗員が視線を横方向に向けた場合の視界を推定し、当該視界に含まれる車外映像を取得する。
【0061】
以上のように、本実施形態では、映像に含まれる対象物を特定し、移動体に備えられるセンサによって検出された移動体の移動速度と移動体から対象物までの距離を取得し、移動速度と距離に基づいて、対象物の流れ速度を算出する。これにより、窓部を介して乗員が視認可能な車外映像に含まれる、流れ速度が高い対象物に対応する範囲を適切に乗員の視界から見えないようにすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、映像の横幅に対する対象物の横幅の比率を算出し、比率が所定値以下である場合には、比率が所定値以下である対象物を、流れ速度が算出される対象から除外する。これにより、横幅が短く乗員の視界を一瞬で流れるような対象物を制御対象から除外することができ、不要な制御が実行されることを回避することができる。
【0063】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0064】
1…車両
10…移動体窓部制御装置
11…コントローラ
12…窓部映像取得部
13…流れ速度算出部
14…遮光範囲特定部
15…窓部制御部
20…映像取得装置
30…乗員視界検出装置
40…窓部透光率変更装置
50…車両速度検出装置
60…周辺環境取得装置