(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】木製壁材と鉄骨柱との接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
E04B1/94 D
E04B1/94 M
E04B1/94 E
(21)【出願番号】P 2020063207
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】519378768
【氏名又は名称】株式会社ホルツストラ一級建築士事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】三宅 朗彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】濱田 真
(72)【発明者】
【氏名】前川 利雄
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】中里 太亮
(72)【発明者】
【氏名】稲山 正弘
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169507(JP,A)
【文献】実開昭48-094325(JP,U)
【文献】特開2006-348558(JP,A)
【文献】特開2013-087464(JP,A)
【文献】特開2017-025524(JP,A)
【文献】特開2002-146943(JP,A)
【文献】特開2019-206849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0167475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04B 1/58
E04B 2/56,2/88
E04F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製壁材の板面に開口するように形成された溝と鉄骨柱の外周面の一部とが嵌合された状
態で、当該木製壁材と鉄骨柱とが接合手段により接合された木製壁材と鉄骨柱との接合構造であって、
木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面を覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部を備えたことを特徴とする木製壁材と鉄骨柱との接合構造。
【請求項2】
木製壁材の板面に開口するように形成された溝と鉄骨柱の外周面の一部とが嵌合された状態、あるいは、木製壁材の板面又は端面と鉄骨柱の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材と鉄骨柱とが接合手段により接合された木製壁材と鉄骨柱との接合構造であって、
木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面を覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部と、
外側耐火処理部における鉄骨柱の周方向両端から木製壁材の内側まで延長するように設けられた内側耐火処理部と、
を備え、
内側耐火処理部は、木製壁材の板面より外側に位置された鉄骨柱の周方向両端位置から当該鉄骨柱の表面に沿って木製壁材の板面から木製部材の内側に延長するように形成された溝と、当該溝内に充填されるように設けられた耐火材とで構成されたことを特徴とする木製壁材と鉄骨柱との接合構造。
【請求項3】
木製壁材の板面に開口するように形成された溝と鉄骨柱の外周面の一部とが嵌合された状態、あるいは、木製壁材の板面又は端面と鉄骨柱の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材と鉄骨柱とが接合手段により接合された木製壁材と鉄骨柱との接合構造であって、
木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面の両端近傍において鉄骨柱と木製壁材とに接触するように熱膨張性耐火材が設けられて構成された境界近傍耐火処理部と、
木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面及び境界近傍耐火処理部の熱膨張性耐火材の表面を覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部と、
を備えたことを特徴とする木製壁材と鉄骨柱との接合構造。
【請求項4】
木製壁材の板面に開口するように形成された溝と鉄骨柱の外周面の一部とが嵌合された状態、あるいは、木製壁材の板面又は端面と鉄骨柱の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材と鉄骨柱とが接合手段により接合された木製壁材と鉄骨柱との接合構造であって、
木製壁材の板面に開口するように形成された溝と当該溝に嵌合される鉄骨柱の外周面の一部との間において木製壁材と鉄骨柱とに接触するように熱膨張性耐火材が設けられて構成された熱膨張性耐火処理部、あるいは、木製壁材の板面又は端面と鉄骨柱の外周面の一部との間において木製壁材と鉄骨柱とに接触するように熱膨張性耐火材が設けられて構成された熱膨張性耐火処理部と、
木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面を覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部と、
を備えたことを特徴とする木製壁材と鉄骨柱との接合構造。
【請求項5】
鉄骨柱と接触するように温度上昇抑制手段が設けられて火災時において鉄骨柱の温度上昇を抑制する温度上昇抑制部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の木製壁材と鉄骨柱との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工性に優れた木製壁材と鉄骨柱との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木製壁材と鉄骨梁とを接合して耐力壁を構築することが知られている(非特許文献1等参照)。
当該木製壁材と鉄骨梁との接合構造は、CLT(Cross
Laminated Timber(直交集成板))により形成された木製壁材としてのCLT壁パネルの上端側と上側鉄骨梁とが接合され、かつ、当該CLT壁パネルの下端側と下側鉄骨梁とが接合された構造である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】新建築 第九十四巻十二号 「兵庫県林業会館」p150-p155、2019年10月1日発行、株式会社新建築社。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した木製壁材と鉄骨梁との接合構造では、木製壁材と鉄骨梁との接合に、せん断金物、引きボルト、木製壁と鉄骨梁との間に充填する無収縮モルタル等の多数の部品が必要になるとともに、接合構造が複雑となり、施工性の面での課題があった。
本発明は、上述した課題に鑑み、施工性に優れ、かつ、鉄骨柱の耐火性能を確保できる耐火構造を備えた木製壁材と鉄骨柱との接合構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造は、木製壁材の板面に開口するように形成された溝と鉄骨柱の外周面の一部とが嵌合された状態で、当該木製壁材と鉄骨柱とが接合手段により接合された木製壁材と鉄骨柱との接合構造であって、木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面を覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部を備えたことを特徴とするので、施工性に優れ、かつ、鉄骨柱の耐火性能を確保できる耐火構造を備えた木製壁材と鉄骨柱との接合構造を提供できる。
また、本発明に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造は、木製壁材の板面に開口するように形成された溝と鉄骨柱の外周面の一部とが嵌合された状態、あるいは、木製壁材の板面又は端面と鉄骨柱の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材と鉄骨柱とが接合手段により接合された木製壁材と鉄骨柱との接合構造であって、木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面を覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部と、外側耐火処理部における鉄骨柱の周方向両端から木製壁材の内側まで延長するように設けられた内側耐火処理部と、を備え、内側耐火処理部は、木製壁材の板面より外側に位置された鉄骨柱の周方向両端位置から当該鉄骨柱の表面に沿って木製壁材の板面から木製部材の内側に延長するように形成された溝と、当該溝内に充填されるように設けられた耐火材とで構成されたことを特徴とするので、施工性に優れ、かつ、鉄骨柱の耐火性能を確保できる耐火構造を備えた木製壁材と鉄骨柱との接合構造を提供できるとともに、内側耐火処理部の機能により、鉄骨柱の耐火性能を向上できる。
また、本発明に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造は、木製壁材の板面に開口するように形成された溝と鉄骨柱の外周面の一部とが嵌合された状態、あるいは、木製壁材の板面又は端面と鉄骨柱の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材と鉄骨柱とが接合手段により接合された木製壁材と鉄骨柱との接合構造であって、木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面の両端近傍において鉄骨柱と木製壁材とに接触するように熱膨張性耐火材が設けられて構成された境界近傍耐火処理部と、木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面及び境界近傍耐火処理部の熱膨張性耐火材の表面を覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部と、を備えたことを特徴とするので、施工性に優れ、かつ、鉄骨柱の耐火性能を確保できる耐火構造を備えた木製壁材と鉄骨柱との接合構造を提供できるとともに、境界近傍耐火処理部の熱膨張性耐火材の機能により、鉄骨柱の耐火性能をより向上できる。
また、本発明に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造は、木製壁材の板面に開口するように形成された溝と鉄骨柱の外周面の一部とが嵌合された状態、あるいは、木製壁材の板面又は端面と鉄骨柱の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材と鉄骨柱とが接合手段により接合された木製壁材と鉄骨柱との接合構造であって、木製壁材の板面に開口するように形成された溝と当該溝に嵌合される鉄骨柱の外周面の一部との間において木製壁材と鉄骨柱とに接触するように熱膨張性耐火材が設けられて構成された熱膨張性耐火処理部、あるいは、木製壁材の板面又は端面と鉄骨柱の外周面の一部との間において木製壁材と鉄骨柱とに接触するように熱膨張性耐火材が設けられて構成された熱膨張性耐火処理部と、木製壁材の板面より外側に位置される鉄骨柱の表面を覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部と、を備えたことを特徴とするので、施工性に優れ、かつ、鉄骨柱の耐火性能を確保できる耐火構造を備えた木製壁材と鉄骨柱との接合構造を提供できるとともに、熱膨張性耐火処理部の熱膨張性耐火材の機能により、鉄骨柱の耐火性能をより向上できる。
また、鉄骨柱と接触するように温度上昇抑制手段が設けられて火災時において鉄骨柱の温度上昇を抑制する温度上昇抑制部を備えたので、温度上昇抑制部の機能により、鉄骨柱の耐火性能をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】木製壁材と鉄骨柱との接合構造により構築された壁を室内側から見た斜視図(実施形態1)。
【
図2】木製壁材の溝と鉄骨柱の外周面の一部とを分離して示した斜視図(実施形態1)。
【
図3】木製壁材と鉄骨柱との接合構造により構築された壁を室外側から見た斜視図(実施形態1)。
【
図4】木製壁材の溝と鉄骨柱の外周面の一部との嵌合状態を示し、(a)は、鉄骨柱を構成するH形鋼と木製壁材の溝との嵌合状態を示す平面図、(b)は、鉄骨柱を構成する矩形鋼管と木製壁材の溝との嵌合状態を示す平面図(実施形態1)。
【
図5】木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す斜視図(実施形態1)。
【
図6】木製壁材と鉄骨柱としてのH形鋼との接合構造に設けられたH形鋼の耐火構造を示す断面図((a)は実施形態1の耐火構造、(b)は実施形態2の耐火構造、(c)は実施形態3の耐火構造、(d)は実施形態5の耐火構造を示す))。
【
図7】木製壁材と鉄骨柱としての角型鋼管との接合構造に設けられた角型鋼管の耐火構造を示す断面図((a)は実施形態1の耐火構造、(b)は実施形態2の耐火構造、(c)は実施形態3の耐火構造、(d)は実施形態5の耐火構造を示す))。
【
図8】(a)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す斜視図、(b)は当該接合手段を分解して示す斜視図(実施形態6)。
【
図9】(a)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す平面図、(b)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す室外側から見た正面図(実施形態6)。
【
図10】(a)は木製壁材と鉄骨柱とが上下側の接合手段を用いて接合された状態を示す斜視図(実施形態7)、(b)は木製壁材と鉄骨柱とが上側の接合手段を用いて接合された状態を示す斜視図(実施形態8)。
【
図11】(a)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す斜視図、(b)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す正面図(実施形態11)。
【
図12】(a)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す斜視図、(b)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す正面図(実施形態11)。
【
図13】木製壁材と鉄骨柱としてのH形鋼との接合構造に設けられたH形鋼の耐火構造を示す断面図((a)は実施形態1、(b)は実施形態2、(c)は実施形態3、(d)は実施形態5に対応した耐火構造を示す(実施形態11))。
【
図14】木製壁材と鉄骨柱としての角型鋼管との接合構造に設けられた角型鋼管の耐火構造を示す断面図((a)は実施形態1、(b)は実施形態2、(c)は実施形態3、(d)は実施形態5に対応した耐火構造を示す(実施形態11))。
【
図15】(a)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す斜視図、(b)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す断面図(実施形態12)。
【
図16】(a)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す斜視図、(b)は木製壁材と鉄骨柱とが接合手段を用いて接合された状態を示す平面図(実施形態12)。
【
図17】木製壁材と鉄骨柱としてのH形鋼との接合構造に設けられたH形鋼の耐火構造を示す断面図((a)は実施形態1、(b)は実施形態2、(c)は実施形態3、(d)は実施形態5に対応した耐火構造を示す(実施形態12))。
【
図18】木製壁材と鉄骨柱としての角型鋼管との接合構造に設けられた角型鋼管の耐火構造を示す断面図((a)は実施形態1、(b)は実施形態2、(c)は実施形態3、(d)は実施形態5に対応した耐火構造を示す(実施形態12))。
【
図19】木製壁材と鉄骨柱との接合構造により構築された壁を利用した床構造を示す斜視図。
【
図20】木製壁材と鉄骨柱との接合構造により構築された壁としてのスパンドレルを備えた建物のスパンドレル近傍部分の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造は、
図1乃至
図5に示すように、所定の間隔を隔てて隣り合うように立設された一方の鉄骨柱3A(3)及び他方の鉄骨柱3B(3)と、一方の鉄骨柱3Aの外周面の一部を嵌合させるための一方の溝2A(2)と他方の鉄骨柱3Bの外周面の一部を嵌合させるための他方の溝2B(2)とが一方の板面11に開口するように形成された木製壁材1とを備え、木製壁材1が一方の鉄骨柱3Aと他方の鉄骨柱3Bとに跨るように配置されて、一方の鉄骨柱3Aの外周面の一部と木製壁材1の一方の溝2Aとが嵌合されたとともに、他方の鉄骨柱3Bの外周面の一部と木製壁材1の他方の溝2Bとが嵌合された状態で、木製壁材1と鉄骨柱3A,3Bとが接合手段4により接合されるとともに、鉄骨柱3の耐火構造を備えた接合構造とした。
【0008】
換言すれば、木製壁材1の溝2Aで鉄骨柱3Aの外周面の一部を挟み込むとともに、木製壁材1の溝2Bで鉄骨柱3Bの外周面の一部を挟み込むようにして、木製壁材1の溝2A,2Bに鉄骨柱3A,3Bの外周面の一部を嵌合させた後、木製壁材1と鉄骨柱3A,3Bとを接合手段4を用いて接合した接合構造とした。
このように、木製壁材1の溝2A,2Bに鉄骨柱3A,3Bの外周面の一部を嵌合させたことによって、木製壁材1の溝2A,2Bで鉄骨柱3の外周面の一部を挟み込んで木製壁材1が所定の位置に位置決めされた状態となるとともに、木製壁材1の左右方向(水平方向)の動きが鉄骨柱3A,3Bにより拘束された状態となる。
そして、当該状態のまま接合手段4を用いて木製壁材1と鉄骨柱3A,3Bとを接合することにより、木製の壁を容易に構築できる。
【0009】
即ち、互いに間隔を隔てて立設された2本以上の鉄骨柱3A,3B…に跨がるように一枚の木製壁材1を接合する場合、一枚の木製壁材1の一方の板面11にそれぞれ各鉄骨柱3A,3B…に対応する溝2A,2B…を設けておく。そして、2本以上の鉄骨柱3A,3B…の外周面の一部と一枚の木製壁材1の溝2A,2B…とが嵌合された状態で木製壁材1と鉄骨柱3A,3B…とが接合手段4を用いて接合された構造としたことにより、木製壁材2が2本以上の鉄骨柱3A,3B…で拘束された状態となるので、2本以上の鉄骨柱3A,3B…によって木製壁材1に対する拘束力が向上した壁を構築できる。
【0010】
木製壁材1は、例えば、CLT(Cross
Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer
Lumber(単板積層材))又は合板又は製材等の木により形成された板状部材である。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号の直交集成板の日本農林規格第1条に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、農林水産省告示第2773号の単板積層材の日本農林規格第1条に規定されたように、「ロータリーレース、スライサーその他の切削機械により切削した単板を主としてその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着した一般材及び繊維方向が直交する単板を用いた場合にあっては、直交する単板の合計厚さが製品の厚さの30%未満であり、かつ、当該単板の枚数の構成比が30%以下である一般材」である。
【0011】
鉄骨柱3としては、例えば、形鋼、鋼管等の鋼材が用いられる。
形鋼としては、例えば、断面H形のH形鋼が用いられる。
鋼管としては、例えば、断面中空矩形の矩形鋼管が用いられる。
【0012】
鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、
図4(a)に示すように、木製壁材1に形成された溝2は、例えばH形鋼の各フランジ31,31におけるウェブ32の一方の面33よりも一方側に位置される各フランジ31,31の各半分のうち材軸方向に延長する所定範囲の嵌合対象フランジ部分34,34が嵌合される溝2,2により形成される。
そして、鉄骨柱3を構成するH形鋼の当該嵌合対象フランジ部分34,34が木製壁材1の溝2,2に嵌合されて、ウェブ32の一方の面33と木製壁材1の一方の板面11とが接触した状態に設定された後、接合手段4を用いて木製壁材1と鉄骨柱3とが接合される(
図5参照)。
当該構成とすれば、鉄骨柱3を構成するH形鋼による木製壁材1に対する拘束力向上効果を高めることができる。
【0013】
鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、
図4(b)に示すように、木製壁材1に形成された溝2は、例えば角型鋼管の外周面において半周分の範囲に対応する半外周面のうち材軸方向に延長する所定範囲の嵌合対象外周面部分35が嵌合される溝2に形成される。
当該嵌合対象外周面部分35は、例えば、角型鋼管の4つの側面のうちの1つの側面と当該1つの側面と隣り合う2つの側面における周方向に沿った側面半分領域とからなる面部分で構成される。
そして、鉄骨柱3を構成する角型鋼管の嵌合対象外周面部分35が木製壁材1の溝2に嵌合された状態に設定された後、接合手段4を用いて木製壁材1と鉄骨柱3とが接合される(
図5参照)。
当該構成とすれば、鉄骨柱3を構成する角型鋼管による木製壁材1に対する拘束力向上効果を高めることができる。
【0014】
尚、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、木製壁材1に形成された溝2は、嵌合対象フランジ部分34,34とウェブ32の一方の面33とからなる部分、即ち、H形鋼の外周面において半周分の範囲に対応する半外周面のうち材軸方向に延長する所定範囲の嵌合対象外周面部分が嵌合される溝2により形成されてもよい。
この場合、鉄骨柱3を構成するH形鋼の嵌合対象外周面部分が木製壁材1の溝2に嵌合された状態に設定された後、接合手段4を用いて木製壁材1と鉄骨柱3とが接合されることになり、鉄骨柱3を構成するH形鋼による木製壁材1に対する拘束力向上効果を高めることができる。
【0015】
即ち、木製壁材1に形成された溝2は、鉄骨柱3の外周面における半周分の範囲に対応する半外周面のうち材軸方向に延長する所定範囲の嵌合対象外周面部分が嵌合される溝2とすることが好ましい。
【0016】
木製壁材1と鉄骨柱3とを接合する接合手段4は、木製壁材1と鉄骨柱3とに貫通して両者を接合するビス、ボルト、ドリフトピン等の棒状接合部材40、又は、木製壁材1と鉄骨柱3とを接着する接着剤、又は、上述した棒状接合部材と接着剤とを併用した手段とすればよい。
【0017】
例えば、鉄骨柱3がH形鋼であって接合手段4の棒状接合部材40としてビスを用いる場合は、
図5(a)に示すように、ビスを鉄骨柱3側から木製壁材1にねじ込んだり、
図5(b)に示すように、ビスを木製壁材1側から鉄骨柱3にねじ込んだり、あるいは、ビスを鉄骨柱3側及び木製壁材1側の両方側からねじ込むようして、木製壁材1と鉄骨柱3とを接合すればよい。
【0018】
そして、実施形態1に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造では、
図6(a),
図7(a)に示すように、木製壁材1の一方の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面3fを覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部8による鉄骨柱3の耐火構造を備えた接合構造とした。
尚、本発明において、木製壁材1の一方の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面3fとは、木製壁材1の一方の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面のうち、木製壁材1と接触していない表面のことである。
【0019】
尚、
図6(a)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、鉄骨柱3の表面3fは、木製壁材1と接触しているH形鋼の嵌合対象フランジ部分34,34及びウェブ32の一方の面33以外の表面であり、当該表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部8が構成される。
また、
図7(a)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、鉄骨柱3の表面3fは、木製壁材1と接触している嵌合対象外周面部分35以外の表面であり、当該表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部8が構成される。
【0020】
外側耐火処理部8を形成する耐火材としては、例えば、ロックウール、耐火ボード等の耐火材を用いた。
【0021】
実施形態1に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造によれば、木製壁材1の溝2A,2Bと鉄骨柱3A,3Bの外周面の一部とを嵌合させた状態で、木製壁材1と鉄骨柱3A,3Bとを接合手段4を用いて接合するだけなので、接合作業が容易となり、施工性に優れた接合構造を提供できる。
【0022】
また、実施形態1に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造によれば、木製壁材1の溝2A,2Bに鉄骨柱3A,3Bの外周面の一部を嵌合させた構成であるため、鉄骨柱3によって木製壁材1に対する拘束力が向上した耐力壁(耐震壁)等の木製の壁を構築できる。
特に、木製壁材1に形成された溝2を、鉄骨柱3の外周面における半周分の範囲に対応する半外周面のうち材軸方向に延長する所定範囲の嵌合対象外周面部分が嵌合される溝2とすることにより、鉄骨柱3による木製壁材1に対する拘束力向上効果を高めることができる。
【0023】
また、実施形態1に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造によれば、木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面3fを覆うように耐火材が設けられて構成された外側耐火処理部8による鉄骨柱3の耐火構造を備えたので、鉄骨柱3の耐火性能を確保できる木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造を実現できる。
即ち、実施形態1に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造によれば、施工性に優れ、かつ、鉄骨柱3の耐火性能を確保できる耐火構造を備えた木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造を提供できる。
【0024】
実施形態2
実施形態1で説明したように、木製壁材1の板面11に開口するように形成された溝2と鉄骨柱3の外周面の一部とが嵌合された状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段4により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、
図6(b),
図7(b)に示すように、外側耐火処理部8と内側耐火処理部81とで構成された耐火構造8Aを備えた接合構造とした。
外側耐火処理部8は、木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面3fを覆うように耐火材が設けられて構成される。
内側耐火処理部81は、外側耐火処理部8における鉄骨柱3の周方向両端から木製壁材1の内側まで延長するように設けられて構成される。
尚、内側耐火処理部81は、木製壁材1の板面11より外側に位置された鉄骨柱3の周方向両端位置から当該鉄骨柱3の表面3fに沿って木製壁材1の板面11から木製部材1の内側に延長するように形成された溝21と、当該溝21内に充填されるように設けられた耐火材とで構成されたものとした。
また、溝21の鉄骨柱3側は、鉄骨柱3の表面が露出するように形成され、溝21内に充填されるように設けられた耐火材と鉄骨柱3の表面とが接触するように構成されることが好ましい。
即ち、外側耐火処理部8の耐火材と内側耐火処理部81の耐火材とが連続するように設けられている。
【0025】
尚、
図6(b)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、鉄骨柱3の表面3fは、木製壁材1と接触しているH形鋼の嵌合対象フランジ部分34,34及びウェブ32の一方の面33以外の表面であり、当該表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部8が構成される。
また、H形鋼の嵌合対象フランジ部分34,34の表面(ウェブ32と繋がっていない側の表面)側に位置される木製壁材1の一方の板面11に近い側(ウェブ32に近い側)に溝21が形成されて当該溝21内に耐火材が充填されるように設けられることで、当該H形鋼の嵌合対象フランジ部分34,34の表面側における木製壁材1の板面11に近い側が耐火材で覆われた内側耐火処理部81が構成される。
また、
図7(b)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、鉄骨柱3の表面3fは、木製壁材1と接触している嵌合対象外周面部分35以外の表面であり、当該表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部8が構成される。
また、角型鋼管の嵌合対象外周面部分35の表面側に位置される木製壁材1の板面11に近い側に溝21が形成されて当該溝21内に耐火材が充填されるように設けられることで、当該角型鋼管の嵌合対象外周面部分35の表面側における木製壁材1の板面11に近い側が耐火材で覆われた内側耐火処理部81が構成される。
【0026】
外側耐火処理部8及び内側耐火処理部81を形成する耐火材としては、例えば、ロックウール、耐火ボード等の耐火材を用いた。
【0027】
実施形態2に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造によれば、外側耐火処理部8と内側耐火処理部81とで構成された耐火構造8Aを備えたので、外側耐火処理部8によって鉄骨柱3の耐火性能を確保できるとともに、内側耐火処理部81の機能により、鉄骨柱3の周方向両端位置近傍における木製壁材1の板面11側の燃え抜けによって鉄骨柱3が延焼してしまうこと(鉄骨柱3の周方向両端位置近傍における木製壁材1の板面11側が燃え落ちてしまい、当該燃え落ちた部分を介して鉄骨柱3が延焼してしまうこと)を抑制でき、鉄骨柱3の耐火性能に優れた木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造を実現できる。
【0028】
実施形態3
実施形態1で説明したように、木製壁材1の板面11に開口するように形成された溝2と鉄骨柱3の外周面の一部とが嵌合された状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段4により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、
図6(c),
図7(c)に示すように、境界近傍耐火処理部82と外側耐火処理部80とで構成された耐火構造8Bを備えた接合構造とした。
境界近傍耐火処理部82は、木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面3fの両端近傍において鉄骨柱3と木製壁材1とに接触するように熱膨張性耐火材が設けられて構成される。
より詳細には、境界近傍耐火処理部82は、木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面3fの両端近傍において木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面3fと木製壁材1の板面11より内側に位置される鉄骨柱3の表面とに亘って接触するように熱膨張性耐火材が設けられて構成されている。
外側耐火処理部80は、木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面3f及び境界近傍耐火処理部82の熱膨張性耐火材の表面を覆うように耐火材が設けられて構成される。
【0029】
尚、
図6(c)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、H形鋼の嵌合対象フランジ部分34,34の表面(ウェブ32と繋がっていない側の表面)側に位置される木製壁材1の一方の板面11に近い側(ウェブ32に近い側)に溝22が形成され、当該溝22内に熱膨張性耐火材が挿入されて、当該熱膨張性耐火材が、木製壁材1の板面11より外側に位置されるフランジの表面3fと木製壁材1の板面11より内側に位置されるフランジの表面とに亘って接触するように設けられたことにより、境界近傍耐火処理部82が構成される。
そして、木製壁材1と接触しているH形鋼の嵌合対象フランジ部分34,34及びウェブ32の一方の面33以外の表面、及び、木製壁材1の板面11より外側に位置される境界近傍耐火処理部82の熱膨張性耐火材の表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部80が構成される。
また、
図7(c)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、角型鋼管の嵌合対象外周面部分35の表面側に位置される木製壁材1の板面11に近い側に溝22が形成されて当該溝22内に熱膨張性耐火材が挿入されて、当該熱膨張性耐火材が、木製壁材1の板面11より外側に位置される角型鋼管の表面3fと木製壁材1の板面11より内側に位置される角型鋼管の表面とに亘って接触するように設けられたことにより、境界近傍耐火処理部82が構成される。
そして、木製壁材1と接触している角型鋼管の嵌合対象外周面部分35以外の表面、及び、木製壁材1の板面11より外側に位置される境界近傍耐火処理部82の熱膨張性耐火材の表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部80が構成される。
【0030】
境界近傍耐火処理部82を形成する熱膨張性耐火材としては、例えば、熱膨張性を有した耐火シート又は熱膨張性を有した耐火塗料等の熱膨張性耐火材を用いた。
外側耐火処理部80を形成する耐火材としては、例えば、ロックウール、耐火ボード等の耐火材を用いればよい。
【0031】
実施形態3に係る木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造における耐火処理部8Bによれば、境界近傍耐火処理部82と外側耐火処理部80とを備えた構成としたので、火災時において、境界近傍耐火処理部82の熱膨張性耐火材が膨張する機能によって、鉄骨柱3の周方向両端位置近傍における木製壁材1の板面11側の燃え抜けによって鉄骨柱3が延焼してしまうこと(鉄骨柱3の周方向両端位置近傍における木製壁材1の板面11側が燃え落ちてしまい、当該燃え落ちた部分を介して鉄骨柱3が延焼してしまうこと)を抑制でき、かつ、外側耐火処理部8によって鉄骨柱3の耐火性能を確保できるので、鉄骨柱3の耐火性能に優れた木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造を実現できる。
【0032】
実施形態4
実施形態1で説明したように、木製壁材1の板面11に開口するように形成された溝2と鉄骨柱3の外周面の一部とが嵌合された状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段4により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、図示しないが、熱膨張性耐火処理部と外側耐火処理部とで構成された耐火構造を備えた接合構造としてもよい。
この場合、熱膨張性耐火処理部は、木製壁材1の板面11に開口するように形成された溝2と当該溝2に嵌合される鉄骨柱3の外周面の一部との間において木製壁材1と鉄骨柱3とに接触するように熱膨張性耐火材(上述した熱膨張性を有した耐火シート又は熱膨張性を有した耐火塗料等の熱膨張性耐火材)が設けられた構成とする。
また、外側耐火処理部は、木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面3fを覆うように耐火材(上述したロックウール、耐火ボード等の耐火材)が設けられた構成とする。
【0033】
実施形態4に係る木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造における耐火構造によれば、熱膨張性耐火処理部と外側耐火処理部とを備えた構成としたので、火災時において、熱膨張性耐火処理部の熱膨張性耐火材が膨張する機能により、木製壁材1の溝2の表面側の燃え抜けによって鉄骨柱3が延焼してしまうこと(木製壁材1の溝2の表面側が燃え落ちてしまい、当該燃え落ちた部分を介して鉄骨柱3が延焼してしまうこと)を抑制でき、かつ、外側耐火処理部によって木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の耐火性能を確保できるので、鉄骨柱3の耐火性能に優れた木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造を実現できる。
【0034】
また、実施形態3、及び、実施形態4によれば、熱膨張性耐火材である耐火シート又は耐火塗料等は、厚さの薄い(例えば3mm厚さ程度)のものを用いて、所望の耐火性能を得ることができるため、耐火構造の小型化が図れる。
【0035】
実施形態5
実施形態5に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造は、実施形態1乃至実施形態4で示した各耐火構造8,8A,8B等を備えた接合構造において、鉄骨柱3と接触するように温度上昇抑制手段が設けられて火災時において鉄骨柱3の温度上昇を抑制する温度上昇抑制部を備えた構成とした。
例えば、
図6(d),
図7(d)に示すように、実施形態1の外側耐火処理部8と、温度上昇抑制部83とで構成された耐火構造8Cを備えた構造とした。
【0036】
温度上昇抑制部83は、例えば、温度上昇抑制手段としての例えば石こうボードを、鉄骨柱3の表面の一部又は全部に接触するように設けることで構成される。
【0037】
実施形態5に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造によれば、温度上昇抑制部83を備えたことで、以下の効果が得られる。
実施形態1乃至実施形態4で示した各耐火構造8,8A,8B等により耐火処理された鉄骨柱3は、温度450℃以下の耐火性能を有するが、木製壁材1は260℃で発火するため、鉄骨柱3の温度が260℃に達した場合、鉄骨柱3と接触した木製壁材1の部分が燃える。
しかしながら、実施形態5では、鉄骨柱3と接触するように温度上昇抑制手段として石こうボードが設けられて構成された温度上昇抑制部83を備えるため、火災時において石こうボードの温度が100℃を超えると当該石こうボード中の結晶水が水に化学変化する。
つまり、石こうボードと接触する鉄骨柱3の温度が100℃を超えると石こうボード中の結晶水が水になり、蒸発潜熱効果によって鉄骨柱3の温度上昇が抑制される。
従って、鉄骨柱3の温度が260℃に到達するまでの時間を長くできるようになるため、鉄骨柱3と接触した木製壁材1の部分が燃えるまでの時間を長くでき、長時間耐火仕様を実現できるようになる。
【0038】
実施形態6
木製壁材と鉄骨柱とを接合する接合手段として、
図8,
図9に示すように、鉄骨柱3に連結されて木製壁材1を上下方向から挟み込んで木製壁材1を拘束する上側拘束部材5A及び下側拘束部材5Bと、上側拘束部材5Aと木製壁材1の上端部とに貫通して両者を固定する棒状固定部材40及び下側拘束部材5Bと木製壁材1の下端部とに貫通して両者を固定する棒状固定部材40と、上側拘束部材5Aと鉄骨柱3とを固定する棒状固定部材40A及び下側拘束部材5Bと鉄骨柱3とを固定する棒状固定部材40Aと、を備えた接合手段5を用いてもよい。尚、棒状固定部材40Aとしては例えば高力ボルト41等を使用すればよい。
【0039】
上側拘束部材5A及び下側拘束部材5Bは、左側部材51と右側部材52と中央部材53とを備える。
左側部材51及び右側部材52は、例えば鉄骨柱3の左右いずれかの側面に取付けられるフラットバー等の壁材側取付板55と、壁材側取付板55の一端縁より延長するように設けられて柱側取付板56の板面と直交する板面を有した柱側取付板56と、壁材側取付板55の側縁と柱側取付板56の側縁とに亘って延長するように設けられた補強板57とを備える。
中央部材53は、例えば鉄骨柱3がH形鋼である場合、木製壁材1の上端面12又は下端面13と接触する板面を有した基板58aと、基板58aの左右の両側縁より同方向に延長して互いに対向するH形鋼のフランジ31,31の内面にそれぞれ接触する板面を有した側板59a,59bと,側板59a,59bの延長端同士を繋いで基板58aの板面と平行に対向する板面を有した対向板58bとを備える。
即ち、中央部材53は、基板58aと側板59a,59bと対向板58bとで囲まれた断面矩形状の貫通中空空間を備えた矩形筒体又は矩形環体により構成される。
【0040】
基板58aの外側の板面と木製壁材1の上端面12又は下端面13とを接触させるとともに、側板59a,59bの外側の板面と鉄骨柱3を構成するH形鋼のフランジ31,31の内面とを接触させた状態となるよう中央部材53を設置する。
そして、壁材側取付板55の外側の板面と木製壁材1の上端面12又は下端面13とを接触させるとともに、柱側取付板56の外側の板面とH形鋼のフランジ31の外側の板面とを接触させた状態となるように、左側部材51及び右側部材52を設置する。
そして、側板59a又は側板59b、フランジ31、柱側取付板56に形成されたボルト挿通孔22,21,23に高力ボルト41のねじ軸部を貫通させてナット42を締結することにより、左側部材51と右側部材52と中央部材53とが鉄骨柱3に固定される。
さらに、左側部材51及び右側部材52に形成されたガイド孔24を介して棒状固定部材40としてビス等を木製壁材1の上端面12側又は下端面13側にねじ込むことで左側部材51及び右側部材52が木製板材1に固定される。
【0041】
実施形態6によれば、木製壁材1の溝2を鉄骨柱3の外周面の一部に嵌合させた状態で、木製壁材1と鉄骨柱3とを接合手段5を用いて接合するだけなので、接合作業が容易となり、施工性に優れた接合構造を提供できる。
また、上側拘束部材5A及び下側拘束部材5Bと棒状固定部材40,40Aと棒状固定部材40とによる接合手段5を用いて、木製壁材1の上端面12側と下端面13側とが上下から拘束された状態で、木製壁材1と鉄骨柱3とが接合された構成となるので、鉄骨柱3と上側拘束部材5Aと下側拘束部材5Bとによって木製壁材1に対する拘束力が向上した耐力壁(耐震壁)等の壁を構築できる。
【0042】
尚、木製壁材1と鉄骨柱3とを接合する接合手段5は、鉄骨柱3に連結されて木製壁材1を上下方向から挟み込んで木製壁材1を拘束する上側拘束部材5A及び下側拘束部材5Bと、上側拘束部材5Aと木製壁材1の上端部とに貫通して両者を接合する棒状接合部材40及び上側拘束部材5Aと木製壁材1の上端部とを接着させる接着剤のうちの少なくとも一方と、下側拘束部材5Bと木製壁材1の下端部とに貫通して両者を接合する棒状接合部材40及び下側拘束部材5Bと木製壁材1の下端部とを接着させる接着剤のうちの少なくとも一方とで構成されたものであればよい。
即ち、上側拘束部材5Aや下側拘束部材5Bと木製壁材1とを接合する手段は、ビス、ボルト、ドリフトピン等の棒状接合部材40、又は、接着剤、又は、当該棒状接合部材40と接着剤とを併用した手段とすればよい。
【0043】
実施形態7
図10(a)に示すように、実施形態1において説明した接合手段4及び実施形態2において説明した接合手段5の両方の接合手段を用いてもよい。
【0044】
実施形態8
図10(b)に示すように、実施形態1において説明した接合手段4と実施形態2において説明した上側拘束部材5A又は下側拘束部材5Bを用いた接合手段とを併用した接合手段を用いてもよい。
【0045】
実施形態7,8によれば、木製壁材1に対する拘束力向上効果をさらに高めることができる。
【0046】
実施形態9
実施形態6では、上側拘束部材5A及び下側拘束部材5Bは、左側部材51と右側部材52と中央部材53とを備えた構成のものを例示したが、当該上側拘束部材及び下側拘束部材は、例えば、中央部材53を備えずに、左側部材51と右側部材52とで構成されたものであってもよい。
【0047】
実施形態10
また、上側拘束部材及び下側拘束部材は、木製壁材1の上端面12又は下端面13と接触させる板面を有してかつ鉄骨柱3に溶接等で固定されたフラットバー等の取付板により構成されてもよい。
この場合、当該取付板は、例えば、一方の端縁から、鉄骨柱3を構成するH形鋼の嵌合対象フランジ部分34,34や鉄骨柱3を構成する角型鋼管の嵌合対象外周面部分35を挿入するための図外のスリットが形成されたものを用いる。そして、当該取付板の板面を木製壁材1の上端面12又は下端面13に接触させながら、上記図外のスリット内に鉄骨柱3の嵌合対象フランジ部分34,34や嵌合対象外周面部分35を挿入した後に、取付板の図外のスリットの周囲と鉄骨柱3とを溶接等により固定する。その後、取付板に形成された図外のガイド孔を介して棒状固定部材40としてのビス等を木製壁材1の上端面12側又は下端面13側にねじ込むことによって取付板を木製板材1に固定すれば、木製板材1の上下側から上下の取付板(フラットバー)によって木製壁材1が拘束された接合構造を実現できる。
【0048】
実施形態11
図11及び
図12に示すように、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造であって、
図13及び
図14に示すように、実施形態1乃至実施形態5で説明した各耐火構造8,8A,8B,8C等を備えた接合構造としてもよい。
【0049】
図11に示す木製壁材と鉄骨柱との接合構造は、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、例えば接合金具としての断面L状のアングル金具5Xを用いて、木製壁材1と鉄骨柱3とを接合した構造である。
例えば、アングル金具5XのL字の縦片を構成する一方の平板部5aの板面と鉄骨柱3の表面(例えば
図11に示すH形鋼の鉄骨柱3の場合、フランジの表面)とを接触させた状態で溶接又は棒状接合部材としてビス等で当該一方の平板部5aを鉄骨柱3に固定するとともに、アングル金具5XのL字の横片を構成する他方の平板部5bの板面と木製壁材1の一方の板面11とを接触させた状態で棒状接合部材40としてのビス等で木製壁材1を当該他方の平板部5bに固定することによって、木製壁材1と鉄骨柱3とを接合した接合構造とした。
即ち、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、接合金具としてのアングル金具5X、溶接又は棒状接合部材等の接合手段を用いて、木製壁材1と鉄骨柱3とが接合された接合構造とした。
【0050】
図12に示す木製壁材と鉄骨柱との接合構造は、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、木製壁材1の上下側を補強連結板57A付きの取付板(フラットバー)55Aを用いて、木製壁材1と鉄骨柱3とを接合した構造である。
尚、鉄骨柱3の外周面の一部とは、H形鋼の場合、例えば
図13に示すように各フランジの一端面3a,3aであり、角型鋼管の場合、例えば
図14に示すように一側面3aである。
例えば、木製壁材1の上側は、取付板55Aに溶接等で連結された補強連結板57Aの板面と鉄骨柱3の表面(例えば
図12に示すH形鋼の鉄骨柱3の場合、フランジの表面)とを接触させた状態で溶接又は棒状接合部材としてのビス等で当該補強連結板57Aを鉄骨柱3に固定するとともに、取付板55Aを棒状接合部材40としてのビス等で木製壁材1の上端面12側に固定する。
また、同様に、木製壁材1の下側は、取付板55Aに溶接等で連結された補強連結板57Aの板面と鉄骨柱3の表面とを接触させた状態で溶接又は棒状接合部材としてのビス等で補強連結板57Aを鉄骨柱3に固定するとともに、取付板55Aを棒状接合部材40としてのビス等で木製壁材1の下端面13側に固定する。
以上のように、木製壁材1の上下側をそれぞれ補強連結板57A付きの取付板55Aを用いて鉄骨柱3に接合した接合構造とした。
即ち、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、接合金具としての補強連結板57A付きの取付板(フラットバー)55A、溶接又は棒状接合部材等の接合手段を用いて、木製壁材1と鉄骨柱3とが接合された接合構造とした。
【0051】
そして、
図11や
図12のように、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、
図13(a),
図14(a)に示すように、実施形態1と同様な耐火構造である外側耐火処理部8を備えた接合構造とした。
図13(a)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、木製壁材1の板面11と接触している表面となる各フランジの一端面3a,3a以外の表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部8が構成される。
また、
図14(a)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、木製壁材1と接触している表面となる角型鋼管の一側面3a以外の表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部8が構成される。
【0052】
また、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、
図13(b),
図14(b)に示すように、実施形態2と同様な耐火構造8Aを備えた接合構造とした。
図13(b)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、外側耐火処理部8は、木製壁材1の板面11と接触している表面となる各フランジの一端面3a,3a以外の表面を覆うように耐火材が設けられて構成される。
また、内側耐火処理部81は、H形鋼の表面を覆う外側耐火処理部8におけるH形鋼の周方向両端となる各フランジの一端面3a,3aの外側から木製壁材1の内側まで延長する溝21が形成されて当該溝21内に耐火材が充填されるように設けられることによって、外側耐火処理部8における鉄骨柱3の周方向両端から木製壁材1の内側まで延長する耐火材により構成される。
また、
図14(b)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、外側耐火処理部8は、木製壁材1と接触している表面となる角型鋼管の一側面3a以外の表面を覆うように耐火材が設けられて構成される。
また、内側耐火処理部81は、角型鋼管の表面を覆う外側耐火処理部8における角型鋼管の周方向両端(角型鋼管の一側面3aの幅方向両端)の外側から木製壁材1の内側まで延長する溝21が形成されて当該溝21内に耐火材が充填されるように設けられることによって、外側耐火処理部8における鉄骨柱3の周方向両端から木製壁材1の内側まで延長する耐火材により構成される。
【0053】
また、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、
図13(c),
図14(c)に示すように、実施形態3と同様な耐火構造8Bを備えた接合構造とした。
図13(c)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、境界近傍耐火処理部82は、各フランジの一端面3a,3aと木製壁材1の板面11との間に熱膨張性耐火材が設けられた構成、即ち、木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面の両端近傍において鉄骨柱3と木製壁材1とに接触するように熱膨張性耐火材が設けられた構成である。
そして、外側耐火処理部80は、H形鋼の各フランジの一端面3a,3a以外の表面、及び、境界近傍耐火処理部82の熱膨張性耐火材の表面を覆うように耐火材が設けられた構成である
また、
図14(c)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、境界近傍耐火処理部82は、角型鋼管の一側面3aの幅方向両端側と木製壁材1の板面11との間に熱膨張性耐火材が設けられた構成、即ち、木製壁材1の板面11より外側に位置される鉄骨柱3の表面の両端近傍において鉄骨柱3と木製壁材1とに接触するように熱膨張性耐火材が設けられた構成である。
そして、外側耐火処理部80は、角型鋼管の一側面3a以外の表面、及び、境界近傍耐火処理部82の熱膨張性耐火材の表面を覆うように耐火材が設けられた構成である。
【0054】
また、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、実施形態4と同様な熱膨張性耐火処理部と外側耐火処理部とを備えた耐火構造を有した接合構造とした。
鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、当該耐火構造は、
図13(c)と同じ構造とすればよい。
また、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、当該耐火構造における熱膨張性耐火処理部は、木製壁材1の板面11と角型鋼管の外周面の一部である一側面3aとの間において木製壁材1と角型鋼管の一側面3aとに接触するように熱膨張性耐火材が設けられて構成されたものとすればよい。
【0055】
また、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、
図13(d),
図14(d)に示すように、実施形態5と同様な耐火構造8Cを備えた接合構造とした。
図13(d)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、例えば、温度上昇抑制部83は、各フランジにおいて、木製壁材1の板面11に近い側の各フランジの内面に温度上昇抑制手段としての石こうボードを設けた構成とした。
図14(d)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、例えば、温度上昇抑制部83は、角型鋼管の一側面3aの内面に温度上昇抑制手段としての石こうボードを設けた構成とした。
【0056】
実施形態11によれば、木製壁材1の板面11と鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、実施形態1乃至実施形態5と同様な効果が得られる。
【0057】
実施形態12
図15及び
図16に示すように、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造であって、
図17及び
図18に示すように、実施形態1乃至実施形態5で説明した各耐火構造8,8A,8B,8C等を備えた接合構造としてもよい。
尚、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、各フランジの表面にそれぞれ木製壁材1の端面11eが接触して接合された接合構造となる。
また、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、角型鋼管の互いに対向する一対の側面(表面)にそれぞれ木製壁材1の端面11eが接触して接合された接合構造となる。
【0058】
図15に示す木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造は、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、例えば接合金具としての断面L状のアングル金具5Yを用いて、木製壁材1と鉄骨柱3とを接合した構造である。
例えば、アングル金具5YのL字の縦片を構成する一方の平板部5aの板面と鉄骨柱3の表面(例えばH形鋼の鉄骨柱3の場合、フランジの表面)とを接触させた状態で溶接又は棒状接合部材としてのビス等で当該一方の平板部5aを鉄骨柱3に固定するとともに、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とを接触させ、かつ、アングル金具5YのL字の横片を構成する他方の平板部5bの板面と木製壁材1の板面とを接触させた状態で棒状接合部材40としてのビス等で木製壁材1を当該他方の平板部5bに固定することによって、木製壁材1と鉄骨柱3とを接合した接合構造とした。
即ち、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、接合金具としてのアングル金具5Y、溶接又は棒状接合部材等の接合手段を用いて、木製壁材1と鉄骨柱3とが接合された接合構造とした。
【0059】
図16に示す木製壁材と鉄骨柱との接合構造は、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、木製壁材1の上下側を補強連結板57B付きの取付板(フラットバー)55Bを用いて、木製壁材1と鉄骨柱3とを接合した構造である。
例えば、木製壁材1の上側は、取付板55Bに溶接等で連結された補強連結板57Bの端面と鉄骨柱3の表面(例えば
図16に示すH形鋼の鉄骨柱3の場合、フランジの表面)とを接触させた状態で溶接等で当該補強連結板57Bを鉄骨柱3に固定するとともに、取付板55Bを棒状接合部材40としてのビス等で木製壁材1の上端面12側に固定する。また、木製壁材1の下側は、取付板55Bに溶接等で連結された補強連結板57Bの端面と鉄骨柱3の表面とを接触させた状態で溶接等で補強連結板57Bを鉄骨柱3に固定するとともに、取付板55Bを棒状接合部材40としてのビス等で木製壁材1の下端面13側に固定する。
以上のように、木製壁材1の上下側をそれぞれ補強連結板57B付きの取付板55Bを用いて鉄骨柱3に接合した接合構造とした。
即ち、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、接合金具としての補強連結板57B付きのフラットバー55B、溶接又は棒状接合部材等の接合手段を用いて、木製壁材1と鉄骨柱3とが接合された接合構造とした。
【0060】
そして、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、
図17(a),
図18(a)に示すように、実施形態1と同様な耐火構造である外側耐火処理部8を備えた接合構造とした。
図17(a)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、木製壁材1の端面11eと接触しているH形鋼の各フランジの中央側表面以外の表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部8が構成される。
また、
図18(a)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、木製壁材1の端面11eと接触している角型鋼管の互いに対向する一対の側面の中央側表面以外の表面を覆うように耐火材が設けられて外側耐火処理部8が構成される。
【0061】
また、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、
図17(b),
図18(b)に示すように、実施形態2と同様な耐火構造8Aを備えた接合構造とした。
図17(b)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、外側耐火処理部8は、木製壁材1の端面11eと接触しているH形鋼の各フランジの中央側表面以外の表面を覆うように耐火材が設けられて構成される。
また、内側耐火処理部81は、H形鋼の表面を覆う外側耐火処理部8におけるH形鋼の周方向両端の外側から木製壁材1の内側まで延長する溝21が形成されて当該溝21内に耐火材が充填されるように設けられることによって、外側耐火処理部8におけるH形鋼の周方向両端から木製壁材1の内側まで延長する耐火材により構成される。
また、
図18(b)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、外側耐火処理部8は、木製壁材1の端面11eと接触している角型鋼管の互いに対向する一対の側面の中央側表面以外の表面を覆うように耐火材が設けられて構成される。
また、内側耐火処理部81は、角型鋼管の表面を覆う外側耐火処理部8における角型鋼管の周方向両端の外側から木製壁材1の内側まで延長する溝21が形成されて当該溝21内に耐火材が充填されるように設けられることによって、外側耐火処理部8における角型鋼管の周方向両端から木製壁材1の内側まで延長する耐火材により構成される。
【0062】
また、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、
図17(c),
図18(c)に示すように、実施形態3と同様な耐火構造8Bを備えた接合構造とした。
図17(c)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、境界近傍耐火処理部82は、H形鋼の各フランジの表面に接合された各木製壁材1,1の板面近傍において、各フランジの表面と木製壁材1の端面11eとの間に熱膨張性耐火材が設けられた構成、換言すれば、木製壁材1の板面より外側に位置されるH形鋼の表面3fの両端近傍においてH形鋼のフランジの表面と木製壁材1の端面11eとに接触するように熱膨張性耐火材が設けられた構成である。
そして、外側耐火処理部80は、木製壁材1の端面11eと接触しているH形鋼の各フランジの中央側表面以外の表面、及び、境界近傍耐火処理部82の熱膨張性耐火材の表面を覆うように耐火材が設けられた構成である
また、
図18(c)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、境界近傍耐火処理部82は、角型鋼管の互いに対向する一対の側面に接合された各木製壁材1,1の板面近傍において、角型鋼管の側面と木製壁材1の端面11eとの間に熱膨張性耐火材が設けられた構成、換言すれば、木製壁材1の板面より外側に位置される角型鋼管の表面3fの両端近傍において角型鋼管の側面と木製壁材1の端面11eとに接触するように熱膨張性耐火材が設けられた構成である。
そして、外側耐火処理部80は、木製壁材1の端面11eと接触している角型鋼管の互いに対向する一対の側面の中央側表面以外の表面、及び、境界近傍耐火処理部82の熱膨張性耐火材の表面を覆うように耐火材が設けられた構成である。
【0063】
また、木製壁材1の端面11eとと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、実施形態4と同様な熱膨張性耐火処理部と外側耐火処理部とを備えた耐火構造を有した接合構造とした。
鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、当該耐火構造における熱膨張性耐火処理部は、木製壁材1の端面11eとH形鋼のフランジの中央側表面との間に熱膨張性耐火材が設けられて構成されたものとすればよい。
また、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、当該耐火構造における熱膨張性耐火処理部は、木製壁材1の端面11eと角型鋼管の側面との間に熱膨張性耐火材が設けられて構成されたものとすればよい。
【0064】
また、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材と鉄骨柱との接合構造において、
図17(d),
図18(d)に示すように、実施形態5と同様な耐火構造8Cを備えた接合構造とした。
図17(d)に示すように、鉄骨柱3としてH形鋼を用いた場合、例えば、温度上昇抑制部83は、各フランジの内面に温度上昇抑制手段としての石こうボードを設けた構成とした。
図18(d)に示すように、鉄骨柱3として角型鋼管を用いた場合、例えば、温度上昇抑制部83は、木製壁材1の端面11eと接触している角型鋼管の互いに対向する一対の側面の内側に位置される内面に温度上昇抑制手段としての石こうボードを設けた構成とした。
【0065】
実施形態11によれば、木製壁材1の端面11eと鉄骨柱3の外周面の一部とが接触した状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、実施形態1乃至実施形態5と同様な効果が得られる。
【0066】
尚、上述した実施形態1,6,7,8,9,10では、木製壁材1の一方の板面11に開口するように形成された溝2と鉄骨柱3の外周面の一部とが嵌合された状態で、当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造において、1枚の木製壁材1に形成された溝2A,2Bと鉄骨柱3A,3Bの外周面の一部とを嵌合させた状態で木製壁材1と鉄骨柱3A,3Bとを接合手段4を用いて接合した接合構造を例示したが、1枚の木製壁材1の一方の板面11に開口して上下方向に延長するように形成された溝2と1本の鉄骨柱3の外周面の一部とが嵌合された状態で当該木製壁材1と鉄骨柱3とが接合手段により接合された接合構造としてもよい。
当該接合構造であっても、木製壁材1の溝2に鉄骨柱3の外周面の一部を嵌合させたことによって、木製壁材1の溝2で鉄骨柱3の外周面の一部を挟み込んで木製壁材1が所定の位置に位置決めされた状態となるとともに、木製壁材1の左右方向(水平方向)の動きが鉄骨柱3により拘束された状態となり、当該状態のまま接合手段を用いて木製壁材1と鉄骨柱3とを接合することにより、木製の壁を容易に構築できるようになる。
【0067】
また、鉄骨柱3を構成する形鋼として、H形鋼以外の溝形鋼、山形鋼、CT形鋼等の形鋼を用いてもよい。
また、鉄骨柱3を構成する鋼管として、断面中空円形の丸形鋼管等の鋼管を用いてもよい。
【0068】
本発明に係る木製壁材と鉄骨柱との接合構造により構築される木製の壁は、外壁、カーテンウォール、間仕切り壁、腰壁、垂壁等、どのような壁であっても構わない。
当該壁が、鉛直荷重を負担せずに水平力のみ負担する壁である場合、耐火被覆を不要とでき、当該壁を、木製壁材1を用いた現しで構築できるため、建物の内外から木製壁材1による木質感を付与できる意匠性に優れた建物を構築できるようになる。
【0069】
尚、例えば
図19に示すように、本発明により構築される木製の壁における木製壁材1の一方の板面11側(室内側)において、隣り合う鉄骨柱3と鉄骨柱3との間に鉄骨梁60を接続するとともに、鉄骨梁60と直交する方向において、鉄骨柱3と鉄骨柱3との間に鉄骨桁61を接続する。
そして、鉄骨梁60及び鉄骨桁61の上に例えば図外のデッキプレートを敷設し、デッキプレートの上にコンクリートスラブを打設して床62を構築することができる。
【0070】
本発明に係る木製壁材1と鉄骨柱3との接合構造によれば、例えば、木製壁材1を使用してスパンドレル(建築基準法施工令112条第10項、第11項参照)1と呼ばれる壁を備えたスパンドレル部を構築できる。
【0071】
図20に示すように、カーテンウォール工法により構築されるカーテンウォール7は、建物の外面側において上下階の境界部分がスパンドレル部70と呼ばれる延焼防止構造部に形成されるとともに、当該スパンドレル部70を境界とした上下の階の外面側が窓部71に形成される。
即ち、カーテンウォール7のスパンドレル部70は、カーテンウォール工法により構築された建物の外面側において建物の上下階の境界部分に設けられた下階から上階への延焼を防止するための延焼防止構造部である。
【0072】
スパンドレル部70の建物外面側、及び、窓部71は、建物外面側において水平方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられて上下方向に延長する複数の方立(マリオン)74,4…と、水平方向に隣り合う方立の間において上下方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の無目(トランザム)73,73…と、方立74と無目73とで囲まれた矩形状の枠内に嵌め込まれたガラス、メタル、その他の材料で形成された壁パネル72とを備えた構成である。
【0073】
スパンドレル部70は、建物外面側において水平方向に沿って所定の間隔を隔てて対向するように設けられて上下方向に延長する一方の方立74及び他方の方立74と、当該一方の方立74と他方の方立74との間において上下方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた一方の無目73及び他方の無目73と、これら当該一方の方立74と他方の方立74と一方の無目73及び他方の無目73とで囲まれた矩形状の枠内に嵌め込まれたガラス、メタル、その他の材料で形成された壁パネル72と、当該壁パネル72と対向するように当該壁パネル72と建物の床62との間に設置されたスパンドレル(建築基準法施工令112条第10項、第11項参照)1と呼ばれる延焼防止用の壁と、壁パネル72の上端側に連結された上側の無目73とスパンドレル1の上端側との間を塞ぐとともに所定の耐火性を有するように構成された上側支持部材75と、壁パネル72の下端側に連結された下側の無目73とスパンドレル1の下端側との間を塞ぐとともに所定の耐火性を有するように構成された下側支持部材76と、を備えて構成される。
【0074】
スパンドレル1は、スパンドレル部70の建物外面側の壁パネル72と対向するように当該壁パネル72と建物の床62との間に設置された壁であって、垂直方向及び水平方向に延長して、壁パネル72の板面と平行に対向する壁面(板面)を有し、上端が床62の上面よりも上方に位置されてかつ下端が床62の下面よりも下方に位置されるように設置されるか、あるいは、上端が床62の上面よりも上方に位置されるか、あるいは、下端が床62の下面よりも下方に位置されるように設置された壁である。
【0075】
建築基準法施工令によれば、当該スパンドレル1が防火区画(床)となるためには、垂直方向の高さ寸法が900mm以上(即ち、垂直方向の最低高さ寸法が900mm)必要で、かつ、準耐火構造としなければならない旨規定されている。
【0076】
例えば、スパンドレル1を構成する壁を、例えば、板厚60mm以上の木製壁材1を用いて構成することにより、当該木製壁材1の燃え代厚みで60分準耐火構造のスパンドレル1を実現できる。
【0077】
方立74は、例えば図外の固定手段により、スパンドレル1等を介して建物の躯体に固定される。
無目73は、水平方向の両端側が、例えば図外の固定手段を介して方立74,74に固定される。
【0078】
上側支持部材75及び下側支持部材76は、建物の外面側が無目73に連結され、かつ、建物の室内側にはレール77を備え、当該室内側が当該レール77を介してスパンドレル1に支持される。
即ち、上側支持部材75は、スパンドレル1の上端側と当該スパンドレル1の上端側と対向する上側の無目73とを連結して、上側の無目73とスパンドレル1の上端側との間を塞ぐとともに、当該上側の無目73をスパンドレル1に支持させる支持部材として機能する。
同様に、下側支持部材76は、スパンドレル1の下端側と当該スパンドレル1の下端側と対向する下側の無目73とを連結して、下側の無目73とスパンドレル1の下端側との間を塞ぐとともに、当該下側の無目73をスパンドレル1に支持させる支持部材として機能する。
【0079】
上側支持部材75と、上側の無目73と、当該上側支持部材75及び上側の無目73に設けられた耐火処理部80とにより、壁パネル72の上端側とスパンドレル1の上端側との間を塞ぐとともに所定の耐火性を有するように構成された上側部材が構成される。
同様に、下側支持部材76と、下側の無目73と、当該下側支持部材76及び下側の無目73に設けられた耐火処理部80とにより、壁パネル72の下端側とスパンドレル1の下端側との間を塞ぐとともに所定の耐火性を有するように構成された下側部材が構成される。
【0080】
上側部材(上側の無目73及び上側支持部材75)及び下側部材(下側の無目73及び下側支持部材76)の耐火処理部80は、例えば、上側部材及び下側部材の表面、即ち、
図20に示すように、上側支持部材75及び上側の無目73、下側支持部材76と下側の無目73において、壁パネル72と上側部材とスパンドレル1と下側部材とで囲まれた空間と接する内面、及び、当該空間の外側である外面に、耐火材を設けた構成とした。
尚、耐火材としては、例えば、吹付ロックウール、耐火ボード、熱膨張性耐火材(例えば、熱膨張性耐火塗料、熱膨張性耐火シート等)を用いればよい。
【0081】
即ち、スパンドレル1を構成する木製壁材1として準耐火対応の木製板材を用いるとともに、建物外面側の方立74、無目73、及び、上側支持部材75、下側支持部材76に耐火処理部80を設けた構成としたことにより、準耐火構造のスパンドレル部70を構築できる。
【0082】
当該カーテンウォール7のスパンドレル部70を備えた建物において、スパンドレル1が準耐火対応の木製壁材(木製板材)1により構成されれば、室内側からスパンドレル1を構成する木製壁材を見た場合、スパンドレル1の見栄えが向上して、スパンドレル1の木質感を楽しむことができ、室内の意匠性向上が図れて、執務環境の向上が図れる建物を提供できるようになる。
【0083】
また、当該カーテンウォール7のスパンドレル部70を備えた建物において、スパンドレル1が準耐火対応の木製壁材(木製板材)1により構成されれば、スパンドレルがけい酸カルシウム板等の耐火ボードにより構成された従来のスパンドレル部と比べて、衝撃に強く、損傷し難いスパンドレル1を備えたスパンドレル部70を提供できる。
【0084】
また、スパンドレル部70が、ガラス等の光透過性を有した材料により形成された壁パネル72を備えた構成とすることにより、建物の外から建物を見た場合、スパンドレル部70のガラスパネル等の壁パネル72を通してスパンドレル1を構成する木製壁材(木製板材)1を目視することができ、建物の外側からスパンドレル1の木質感を楽しむことができる外観意匠に優れた建物を提供できるようになる。
【0085】
また、従来、特許文献1,2等に開示されたように、スパンドレルは、けい酸カルシウム板(耐火ボード)を用いることが多いため、けい酸カルシウム板による吸放湿作用により、ガラスパネル等の壁パネル72のパネル面に結露が発生する問題が知られている(例えば、「ガラスカーテンウォールスパンドレル部の設計用結露シミュレーションプログラムとその精度検証」、権藤尚、三原邦彰、大山政彦、鉾井修一、日本建築学会環境系論文集 第81巻 第726号 687-696、2016年8月を参照)。
一方、上述したスパンドレル部70を備えた建物において、スパンドレル1が木製壁材(木製板材)1により構成されれば、スパンドレルをけい酸カルシウム板により構成した場合と比べて、ガラスパネル等の壁パネル72のパネル面に結露が発生し難くなるという効果も得られ、建物の外から建物を見た場合の結露による見栄えの悪さを抑制できるようになる。
【符号の説明】
【0086】
1 木製壁材、2,2A,2B 溝、3,3A,3B 鉄骨柱、4 接合手段、
8 外側耐火処理部、11 木製壁材の板面、11e 木製壁材の端面、
80 外側耐火処理部、81 内側耐火処理部、82 境界近傍耐火処理部、
83 温度上昇抑制部。