(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】作業支援装置
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240122BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G06T19/00 600
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2020065583
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 洋介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 有希子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】岡 雅明
(72)【発明者】
【氏名】石原 美樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 早紀
(72)【発明者】
【氏名】上野 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】裴 乗哲
【審査官】石丸 昌平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-133471(JP,A)
【文献】特開2019-095890(JP,A)
【文献】特開2018-169824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示する表示部と、
現実空間を撮影して現実空間画像を出力する撮影部と、
前記現実空間画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、
自位置と、前記表示部に表示されている前記現実空間画像における
予め定められた所定の建柱予定位置に対応する現実位置と、の距離を測定する測距部
であるレーザ距離測定装置と、
前記距離の情報を3次元情報に変換する変換部と、
自位置を測位する測位部と、
自身の姿勢を計測する姿勢計測部と、
前記現実空間画像が表示されている前記表示部に対して、前記3次元情報と前記自位置と前記姿勢に基づいて、前記現実空間画像における鉛直方向に延びるAR電柱イメージを前記建柱予定位置に表示させるAR画像配置部と、
前記AR電柱イメージが重畳表示されている前記現実空間画像を記憶部に記憶させる画像処理部と、を備える作業支援装置。
【請求項2】
前記AR画像配置部は、
前記現実空間画像が表示されている前記表示部に対して、指定された位置に、前記AR電柱イメージに対応するAR支柱イメージおよびAR支線イメージの少なくともいずれかを、前記AR電柱イメージと接する位置を特定した上で表示させる、請求項
1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、
前記AR電柱イメージに関して、長さ、色、対応するAR支柱イメージとAR支線イメージの有無、備考情報の少なくともいずれかを、ユーザによる指定に基づいて決定する、請求項1
または2に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記AR画像配置部は、
前記現実空間画像が表示されている前記表示部に対して、指定された位置にAR工事車両イメージを表示させる、請求項1ないし
3の何れかに記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記AR画像配置部が前記表示部に対して複数の前記AR電柱イメージを表示させる場合に、
前記測距部は、複数の前記AR電柱イメージの間の距離を測定し、
前記表示制御部は、測定された前記距離を前記表示部に表示させる、請求項1ないし
4の何れかに記載の作業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面に電柱を設置(以下、「建柱」ともいう。)する際には、例えば、設計担当者が作業指示書を作成し、工事担当者がその作業指示書に基づいて建柱作業を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-123926号公報
【文献】特開2011-28763号公報
【文献】特開2019-153274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、例えば、設計担当者が大まかな作業指示書を作成すると、工事担当者は現場でその作業指示書を見ても容易に建柱作業をすることができない場合がある。また、工事担当者が現場で確実に容易に建柱作業をすることができるような作業指示書を設計担当者が作成しようとすると、負担が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明の課題は、建柱に関連する作業を支援することができる作業支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業支援装置は、情報を表示する表示部と、現実空間を撮影して現実空間画像を出力する撮影部と、前記現実空間画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、自位置と、前記表示部に表示されている前記現実空間画像における所定の建柱予定位置に対応する現実位置と、の距離を測定する測距部と、前記距離の情報を3次元情報に変換する変換部と、自位置を測位する測位部と、自身の姿勢を計測する姿勢計測部と、前記現実空間画像が表示されている前記表示部に対して、前記3次元情報と前記自位置と前記姿勢に基づいて、前記現実空間画像における鉛直方向に延びるAR電柱イメージを前記建柱予定位置に表示させるAR画像配置部と、前記AR電柱イメージが重畳表示されている前記現実空間画像を記憶部に記憶させる画像処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態の作業支援装置の全体構成の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の制御部のソフトウェア構成の例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の画像処理部が扱う設定内容の例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の作業支援装置の全体処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4のステップS101の処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5のステップS202の処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態の作業支援装置の表示内容の第1の例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態における測距の説明図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の作業支援装置の表示内容の第2の例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の作業支援装置の全体処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2実施形態の作業支援装置の表示内容の例を示す図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態の作業支援装置の第1の処理を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第3実施形態の作業支援装置の第2の処理を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、第4実施形態の作業支援装置の表示内容の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本実施形態の作業支援装置について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。また、以下において、電柱とは、電力柱、電信柱、電話柱、電気柱等を含む概念である。
【0009】
まず、本実施形態の作業支援装置の理解を容易にするために、あらためて従来技術について説明する。建柱工事を行う際は、事前の測量や現場確認の結果に基づいて、建柱申請用図面、作業指示書を作成する。そして、役所へ建柱申請用図面を提出し、工事担当者は設計担当者の作成した作業指示書をもとに建柱作業を実施する。
【0010】
従来技術では、例えば、特許文献1に記載のような、図形データおよび記号データなどからなる装柱図データを利用して、工事指示図、建柱図面などを出力する装置があり、作業指示書の作成に用いられる。しかしながら、作業指示書を作成する設計担当者と、実際の工事を担当する工事担当者とが異なることや、前記のような装置で作成した図面だけでは、建柱位置(以下、「建柱予定位置」ともいう。)を正確に指示できないことがあるため、工事現場の写真を撮影し、補足情報を付加したものを作業指示書に添付したり、場合によっては設計担当者と工事担当者とで再度工事現場の確認を行ったりしている。
【0011】
そこで、本願の発明者は、建柱工事の作業に関連し、AR(Augmented Reality)技術の適用を鋭意検討した。AR技術では、現実空間の任意の場所に仮想的なオブジェクトを配置することが可能であり、その特性から、現場作業における作業指示への応用が期待されている。そして、実世界の状況(例えば位置や物体)に対応した情報(例えば画像情報、テキスト情報など)を利用者に提示するのみならず、利用者が実世界の状況に対して、それらの情報を付与することを可能とする技術が特許文献2に示されている。
【0012】
また、特許文献3では、位置算出装置を有したコンテンツ付加システムを用いることによって、作業空間における特定箇所に対して、作業に関する注意事項や指示などをコンテンツとして付加・再現することを可能とする技術について記載されている。
【0013】
しかし、建柱工事の作業にAR技術を適用する際に、解決するべき課題として、以下の(1)~(3)が挙げられる。
(1)建柱工事では、建柱位置を正確に指示することが重要である。その理由としては、電柱を建柱する際に、土地所有者に対しての使用許諾を得た公有地または私有地に電柱を配置するからである。しかしながら、従来技術では、作業指示書に出力される位置情報と、実際の工事現場での位置情報が紐づいておらず、正確な建柱位置を指定できないことがあるという問題がある。
【0014】
(2)作業指示書だけでは工事担当者が現場状況を事前に確認できないことがあるため、設計担当者が下見の際に、工事現場の写真を撮影し、執務場所に戻ってから撮影画像に補足情報を付加して、作業指示書の補足資料として添付したり、場合によっては設計担当者と工事担当者とで再度現場確認を行ったりしている。これにより、工事担当者が建柱後の電柱の位置および高さや周囲の構造物、樹木との離隔距離のイメージを把握することができるが、設計担当者はこれらの作業を実施するために業務負荷が高くなるという問題もあった。さらに、執務場所で撮影画像に補足情報を付加して役所へ提出する建柱申請用図面を作成することも設計担当者の負担となっていた。
【0015】
(3)複数本建柱する際の現場確認では、レーザ距離測定装置(レーザ測距計)を用いる場合、それぞれの建柱位置に作業者が立って建柱位置間の距離を測るため、最低でも2人の人手が必要であり、1人では対応できないという問題があった。また、ローラー距離計を用いれば、地面の状況によっては1人でも対応可能であるが、地面に凹凸があるなど、ローラー距離計が使用不可能な場合、正確な距離を測るにはレーザ測距計を用いる必要があるため、2人が必要であった。
【0016】
そこで、以下では、AR技術を用いて電柱、支柱、支線の設置位置を表示させること等により、建柱に関連する作業を支援することができる作業支援装置について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の作業支援装置1の全体構成の概要を示す図である。作業支援装置1は、情報処理装置10と、測距装置20と、を備える。作業支援装置1は、例えば、スマートフォンである情報処理装置10に対して測距装置20を通信可能に接続した一体構造とすることで実現できるが、これに限定されない。
【0018】
測距装置20は、通信部21と、制御部22と、測距センサ23と、を備える。通信部21は、例えばブルートゥース(登録商標)等によって情報処理装置10との通信を行う通信インタフェースである。
【0019】
制御部22は、各種演算を行う装置であり、例えば、マイコンにより実現される。制御部22は、例えば、測距センサ23で測定した距離の情報を、情報処理装置10で使用することができるデータ形式に変換する変換部として機能する。
【0020】
測距センサ23は、自位置と、表示部14に表示されている現実空間画像における所定の建柱予定位置(例えば表示部14の表示画面の中央部分)に対応する現実位置と、の距離を測定する測距部の一例である。測距センサ23は、例えば、レーザ距離測定装置であり、発光部から発したレーザの反射光を受光部で受光したタイミングに基づいて当該距離を測定する。
【0021】
情報処理装置10は、通信部11と、カメラ12と、入力部13と、表示部14と、測位部15と、記憶部16と、制御部17と、姿勢計測部18と、を備える。
【0022】
通信部11は、測距装置20や外部装置との通信を行う通信インタフェースである。通信部11は、例えば、NIC(Network Interface Card)を含む。
【0023】
カメラ12は、現実空間を撮影して現実空間画像を出力する撮像部の一例である。
【0024】
入力部13は、ユーザからのデータの入力を受け付ける。表示部14は、情報を表示するディスプレイ等の表示装置である。なお、入力部13と表示部14は、例えば、タッチパネルディスプレイとして実現できる。
【0025】
測位部15は、自位置を測位する(詳細は後述)。
【0026】
記憶部16は、例えば、SSD(Solid State Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。記憶部16は、制御部17で処理されるOS(Operating System)やプログラムや各種データを記憶する。
【0027】
制御部17は、情報処理装置10を統括的に制御する。ここで、
図2は、第1実施形態の制御部17のソフトウェア構成の例を示す図である。この
図2も併せて参照する。制御部17は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate ARray)等である。制御部17は、機能部として、特定部171と、AR画像配置部172と、画像処理部173と、計算部174と、を備える。
【0028】
計算部174は、特定部171やAR画像配置部172の処理に必要な計算を適宜行う。例えば、計算部174は、測距装置20から受信した距離の情報を所定の3次元情報に変換する。
【0029】
特定部171は、3次元空間における自位置(作業支援装置1の位置)を特定する。特定部171は、測位部15による測位結果に基づいて自位置を特定する。特定部171は、例えば、赤外線、無線LAN(Local Area Network)のビーコン信号、GPS(Global Positioning System)、GNSS(Global Navigation Satellite System)等を利用して自位置を特定する。特定部171が自位置を特定する方法は、既知の任意の方法であってよい。
【0030】
AR画像配置部172は、ユーザ操作に基づいて、現実空間画像が表示されている表示部14に対して、測距センサ23で測定した距離の情報から変換された3次元情報と、特定部171によって特定された自位置と、姿勢計測部18によって計測された作業支援装置1(情報処理装置10)の姿勢と、に基づいて、現実空間画像における鉛直方向に延びるAR電柱イメージを建柱予定位置(例えば画面中央)に表示させる。
【0031】
画像処理部173は、各種の画像処理を実行する。画像処理部173は、例えば、カメラ12から出力された現実空間画像を表示部14に表示させる表示制御部として機能する。
【0032】
また、画像処理部173は、AR電柱イメージに関して、長さ、色、形(対応するAR支柱イメージとAR支線イメージの有無等)、備考情報の少なくともいずれかを、ユーザによる指定に基づいて決定する。なお、この第1実施形態では、AR電柱イメージのみを用いることとし、AR支柱イメージとAR支線イメージについては第2実施形態で説明する。
【0033】
ここで、
図3は、第1実施形態の画像処理部173が扱う設定内容の例を示す図である。画像処理部173は、AR電柱のプロパティ情報として、電柱の長さ、色、形、備考情報を、ユーザによる指定に基づいて決定する。このプロパティ情報は、AR電柱を記憶部16に保存した後でも再度編集し、変更することが可能である。また、AR電柱を配置した位置についても記憶部16に保存した後に再度編集し、変更することが可能である。
【0034】
図1、
図2に戻って、画像処理部173は、AR電柱イメージが重畳表示されている現実空間画像を記憶部16に記憶させる。
【0035】
姿勢計測部18は、自身の姿勢を計測する手段であり、例えば、ジャイロセンサである。
【0036】
また、AR画像配置部172が表示部14に対して複数のAR電柱イメージを表示させる場合に、計算部174は、測距センサ23の測定結果等に基づいて、複数のAR電柱イメージの間の距離を測定し、画像処理部173は、測定された距離を表示部14に表示させる。
【0037】
図4は、第1実施形態の作業支援装置1の全体処理を示すフローチャートである。まず、設計担当者は、作業支援装置1を持参して現場に行き、建柱位置(地際)を目視で確認し、決定する。その後、ステップS101において、作業支援装置1は、設計担当者の操作に基づいて、AR電柱建柱作業処理を実行する。
【0038】
ここで、
図5は、
図4のステップS101の処理の詳細を示すフローチャートである。まず、ステップS201において、入力部13は、ARで建柱する電柱(AR電柱)の色、長さの設計担当者による指定入力を受け付ける。
【0039】
次に、ステップS202において、制御部17は、設計担当者による建柱位置の指定を受け付け、距離測定を行う。ここで、
図6は、
図5のステップS202の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0040】
また、
図7は、第1実施形態の作業支援装置1の表示内容の第1の例を示す図である。以下、
図7も併せて参照する。ステップS301において、制御部17は、建柱位置(地際)を決定する。具体的には、制御部17は、表示部14における中央部分(
図7の十字位置31)を建柱位置(地際)として決定する。したがって、設計担当者は、作業支援装置1(カメラ12)の向きを調整して、自分が想定する建柱位置が表示部14の中央部分に映るようにする。
【0041】
次に、ステップS302において、測距センサ23は、建柱位置までの距離を測定する。ここで、
図8は、第1実施形態における測距の説明図である。作業支援装置1に備えられている測距センサ23は、表示部14における中央部分(
図7の十字位置31)に対応する現実空間の建柱位置(地際)までの距離を測定する。測定された距離は、
図7の領域32に表示される。また、領域33には電柱の長さが表示される。また、表示35、36は、樹木である。
【0042】
次に、ステップS303において、制御部22は、ステップS302で測定された距離を、制御部17で使用できるデータ形式にデータ変換する。
【0043】
次に、ステップS304において、制御部22は、通信部21を用いて、ステップS303で作成された変換データを情報処理装置10に送信する。
【0044】
次に、ステップS305において、計算部174は、変換データを3次元情報(XYZ軸情報)に変換する。
【0045】
図5に戻って、ステップS202の後、ステップS203において、入力部13は、建柱位置を指定する操作入力を受け付ける。具体的には、設計担当者は、建柱位置を指定する場合、
図7の表示における建柱ボタン34をクリック操作する。
【0046】
そうすると、ステップS204において、計算部174は、姿勢計測部18による垂直(鉛直)計測機能に基づいて傾斜を考慮して根入れ長さを計算し、AR画像配置部172は、AR電柱を建柱する。そうすると、ステップS205において、画像処理部173によって、
図9に示すように、表示部14の中央の十字部分にAR電柱37が表示される。
【0047】
次に、ステップS206において、入力部13は、AR電柱の備考情報の入力を受け付ける。具体的には、設計担当者が表示部14に表示されているAR電柱37をクリックすると、備考情報の入力画面が表示され、設計担当者はその入力画面を用いて備考情報を入力することができる。具体的な備考情報の例としては、「樹木が建柱位置に近接しているため、建柱の際に接近している場合は樹木を伐採する」、「水道管が建柱位置の3m北側に東西方向に埋設されているため掘削時に破損に注意」など、設計者が工事担当者へ伝達したい内容である。
【0048】
次に、ステップS207において、制御部17は、これまでの処理で作成された情報(AR電柱に関する情報等。以下、「建柱情報」ともいう。)を記憶部16に記憶する。
【0049】
図4に戻って、ステップS101の後、ステップS102において、カメラ12は、設計担当者の操作に基づいて、現実空間画像とAR電柱を合わせて撮影する。撮影された重畳画像は、記憶部16に記憶される。
【0050】
このようにして、第1実施形態の作業支援装置1によれば、建柱に関連する作業を支援することができる。具体的には、表示されている現実空間画像において建柱予定位置を指定し、AR電柱を建柱することができる。その場合、鉛直方向に、根入長さを考慮した高さのAR電柱を表示できる。そして、AR電柱と現実空間を合わせた重畳画像を記憶部16に記憶できる。したがって、その重畳画像を建柱申請用図面や作業指示書に利用することで執務場所(オフィス)における資料作成時間の削減が可能となる。
【0051】
また、カメラ12によって撮影した現実空間画像だけでは、作業支援装置1から建柱予定位置までの距離を高精度に特定できないが、測距センサ23を用いることで当該距離を高精度に測定できる。
【0052】
また、測距センサ23にレーザ距離測定装置を用いることで、測定誤差を抑制し、より遠くの距離まで建柱位置を指定することができる。例えば、超音波距離計測装置を用いると、指向性が低いので測定誤差が大きくなる。また、赤外線距離計測装置を用いると、太陽光等がノイズとして入るので測定誤差が大きくなる。
【0053】
また、作業者(設計担当者)が建柱位置まで移動しなくても建柱位置を指定することができるので、業務負担を軽減できる。また、現行業務(従来技術)では複数本建柱する際の現場確認では、レーザ距離測定装置を用いる場合、それぞれの建柱位置に作業者が立って建柱位置間の距離を図るため、最低でも2人の人手が必要であり、1人では対応できなかった。また、ローラー距離計を用いれば、地面の状況によっては1人でも対応可能であるが、正確な距離を測るには2人が必要であった。本実施形態によれば、作業支援装置1を利用することにより、1人で正確な距離を測りながら建柱図面作成が可能となるため、業務効率化に加え、人件費削減につながる。
【0054】
また、電柱の長さ、色、形(対応するAR支柱イメージとAR支線イメージの有無等)、備考情報を設定できることにより、建柱申請用図面や作業指示書で必要な情報を現場にて作成が可能になり、執務場所の業務の軽減が可能となる。また、それらの情報を変更する場合は、現場に再度行かずに済むため、業務効率が向上する。
【0055】
また、顧客や周辺住民等への説明や交渉時に具体的なイメージ(画像)の提示が可能となる。例えば、顧客(需要家)と移設交渉をする際、建柱位置を変更してほしいという要望があった場合に、移設交渉中に建柱位置を変更した場合のイメージを提示し、変更結果をその場で保存することで、認識齟齬を防止できる。
【0056】
また、AR電柱イメージに対応するAR支柱イメージとAR支線イメージの有無を指定できることで、電柱のみならず支柱や支線の有無(場所等も含む。)を指示することが可能となり、工事担当者への作業指示をさらに充実できる。また、AR電柱の色を指定することで、作業対象の電柱の種類の伝達が容易になる。さらに、備考情報を入力することで、工事担当者への建柱時の情報の伝達がより充実する。
【0057】
また、建柱したAR電柱は3Dかつ360度のどの角度からでも確認ができる。つまり、設計担当者は、工事現場で作業支援装置1を用いてAR電柱を表示させながら動くことで、AR電柱の位置や高さだけでなく、周囲の構造物や樹木との離隔距離などを容易に確認することができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については、重複する説明を適宜省略する。第2実施形態では、AR電柱のほかに、AR支柱やAR支線も表示する。
【0059】
AR画像配置部172は、現実空間画像が表示されている表示部14に対して、指定された位置に、AR電柱イメージに対応するAR支柱イメージおよびAR支線イメージの少なくともいずれかを、AR電柱イメージと接する位置を特定した上で表示させる。
【0060】
図10は、第2実施形態の作業支援装置1の全体処理を示すフローチャートである。ステップS401は、
図4のステップS101と同様である。
【0061】
ステップS401の後、設計担当者は、支柱や支線の設置要否を判断する。AR支柱やAR支線を設置する場合は設計担当者が建柱位置(地際)を目視で確認し、決定する。
【0062】
ステップS402において、制御部17は、設計担当者によってAR支柱やAR支線を設置する旨の操作入力があったか否かを判定し、Yesの場合はステップS403に進み、Noの場合はステップS404に進む。
【0063】
ステップS403において、作業支援装置1は、AR支柱、AR支線の建柱作業処理を実行する。ここで、
図11は、
図10のステップS403の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0064】
まず、ステップS501において、入力部13は、建柱するAR支柱、AR支線の接する先となる親のAR電柱(以下、「親AR電柱」ともいう。)の指定入力を受け付ける。
【0065】
ステップS502において、入力部13は、ARで建柱する電柱の形(つまり、支柱や支線の有無等)、色、長さの指定入力を受け付ける。
【0066】
次に、ステップS503において、制御部17は、建柱位置の指定を受け付け、距離測定を行う。このステップS503は、
図5のステップS202と同様であるので、説明を簡略化する。つまり、設計担当者は、作業支援装置1の向きを調整して、自分が想定する建柱位置(支柱や支線を設置する位置)が表示部14の中央部分に映るようにする。そして、測距センサ23が、建柱位置までの距離を測定する。
【0067】
次に、ステップS504において、入力部13は、建柱位置を指定する操作入力を受け付ける。具体的には、設計担当者は、建柱位置を指定する場合、
図7の表示における建柱ボタン34を操作し、AR支柱・AR支線の建柱位置を指定する。
【0068】
そうすると、ステップS505において、計算部174は、AR支柱・AR支線が親AR電柱と接する地点(部分)を計算し、AR画像配置部172は、AR支柱・AR支線を建柱する。そうすると、ステップS506において、画像処理部173によって、
図12に示すように、表示部14に、中央の十字部分を始点としてAR支柱・AR支線38が親AR電柱37へ向かって表示される。
【0069】
次に、ステップS507において、入力部13は、AR支柱・AR支線の備考情報の入力を受け付ける。具体的には、設計担当者が表示部14に表示されているAR支柱・AR支線38をクリックすると、備考情報の入力画面が表示され、設計担当者はその入力画面を用いて備考情報を入力することができる。
【0070】
次に、ステップS508において、制御部17は、これまでの処理で作成された情報(AR電柱、AR支柱、AR支線に関する情報等。建柱情報)を記憶部16に記憶する。
【0071】
図10に戻って、ステップS403の後、ステップS404において、カメラ12は、設計担当者の操作に基づいて、現実空間画像とAR電柱、AR支柱、AR支線を合わせて撮影する。撮影された重畳画像は、記憶部16に記憶される。
【0072】
このようにして、第2実施形態の作業支援装置1によれば、AR電柱に対する設置位置や接点を考慮したAR支柱やAR支線を表示可能となる。そして、このような画像を建柱申請用図面や作業指示書に利用することで、執務場所における資料作成時間の削減が可能となる。
【0073】
また、第1実施形態のAR電柱と同様、AR支柱やAR支線は3Dかつ360度のどの角度からでも確認ができる。つまり、設計担当者は、工事現場で作業支援装置1を用いてAR電柱に加えてAR支柱やAR支線を表示させながら動くことで、AR電柱、AR支柱、AR支線の位置や高さだけでなく、周囲の構造物や樹木との離隔距離などを確認することができる。
【0074】
(第3実施形態)
第3実施形態では、以下の従来技術に対応する。従来技術では、建柱業務において、例えば、設計担当者が建柱位置の写真を撮影し、建柱の工事内容を工事担当者へ指示する作業指示書を写真や図面を用いて作成する。工事担当者は作業指示書を参照し、後日、建柱位置に建柱を行う。
【0075】
ただし、設計担当者の写真撮影時と工事担当者が工事を実施する日に乖離があり、環境が変化して、撮影された写真が一致しない場合がある。また、写真に目印がなく正確な建柱位置が作業指示書の情報では伝達が難しい場合もある。また、作業指示書に出力される位置情報と、実際の工事現場での位置情報が紐づいておらず、正確な建柱位置を指定できない場合もある。そのような場合には、建柱位置を工事担当者に明確に伝達することが困難であった。その場合、例えば、設計担当者が工事担当者に同行して建柱位置を確認する必要が生じ、手間がかかった。
【0076】
第3実施形態では、作業支援装置1は、設計担当者によってAR電柱などを設定する場合に、位置情報も併せて保持することで、上述のような場合でも、建柱位置を工事担当者に明確に伝達可能とする。
【0077】
図13は、第3実施形態の作業支援装置1の第1の処理を示すフローチャートである。この第1の処理は、設計担当者によってAR電柱等の建柱作業が実施される場合の処理である。
【0078】
まず、ステップS601において、測位部15が例えばGNSSの測位用信号を受信すること等により、現在地を認識する。
【0079】
次に、ステップS602において、特定部171は、ステップS601で取得した情報を開始位置とし、カメラ12や測距センサ23から取得した周辺環境の情報から自身の位置を推定して地図化することで、建柱位置までの位置情報を生成する。
【0080】
次に、ステップS603において、制御部17は、AR電柱、AR支柱、AR支線の建柱作業処理を実行する。このステップS603の処理は、
図5のステップS201~S206、および、
図11のステップS501~S507の処理に対応するので、説明を省略する。
【0081】
次に、ステップS604において、制御部17は、位置情報と建柱情報を記憶部16に記憶する。
【0082】
図14は、第3実施形態の作業支援装置1の第2の処理を示すフローチャートである。この第2の処理は、工事担当者が設計担当者の作成したAR電柱等を再現する場合の処理である。なお、設計担当者が使用する作業支援装置1と工事担当者が使用する作業支援装置1が異なっている場合、工事担当者が使用する作業支援装置1(以下、単に「作業支援装置1」ともいう。)は、通信部11(受信部)によって、設計担当者が使用する作業支援装置1から、現実空間に対応する3次元座標空間における位置情報およびAR電柱イメージを含むAR電柱情報を受信するなどによって、AR電柱情報を共有しておく必要がある。なお、工事担当者が使用する作業支援装置1において、測距装置20は無くてもよい。
【0083】
また、作業支援装置1において、AR画像配置部172は、工事担当者による操作によって現実空間画像が表示されている表示部14に対して、AR電柱情報と自位置と姿勢に基づいて、現実空間画像における鉛直方向に延びるAR電柱イメージを表示させる。
【0084】
図14のステップS701において、作業支援装置1は、蓄積されているAR電柱、AR支柱、AR支線、備考情報を表示し、工事担当者による建柱情報の確認を可能とする。ここで、
図15は、
図14のステップS701の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0085】
ステップS801において、測位部15が例えばGNSSの測位用信号を受信すること等により、現在地を認識する。
【0086】
次に、ステップS802において、特定部171は、ステップS801で認識した現在地情報とカメラ12の情報から自身の位置を測定し、蓄積されているAR建柱位置(AR電柱等の位置)を特定する。
【0087】
次に、ステップS803において、AR画像配置部172と画像処理部173によって、表示部14に建柱情報(AR電柱等)が表示される。工事担当者は、この表示を見て、建柱位置を確認等することができ、容易に建柱工事等を実施することができる。
【0088】
このように、第3実施形態によれば、AR電柱を作成した作業支援装置1以外の作業支援装置1でも、AR電柱情報を受信することで、そのときの現実空間とAR電柱とを重畳して表示させることができるので、設計担当者や工事担当者等にとって便利であり、業務効率が向上する。
【0089】
なお、上述の第1の処理で開始位置を用いたのは必須ではなく、工事担当者が使用する作業支援装置1で、設計担当者が設定したAR電柱等を、AR電柱等の位置情報を用いて確実に正確な位置に表示できればよい。
【0090】
(第4実施形態)
第4実施形態では、AR画像配置部172は、現実空間画像が表示されている表示部14に対して、指定された位置に任意の方向を向いたAR工事車両イメージを表示させる。
【0091】
図16は、第4実施形態の作業支援装置1の表示内容の例を示す図である。
図16では、
図9と比較して、道路RにおいてAR工事車両(高所作業車、建柱車、電源車など)が表示されている。
【0092】
このように、第4実施形態によれば、AR工事車両を表示することで、建柱工事を実施する際に工事現場に入る車両を実物大で表示することができる。さらに、AR工事車両と現実空間を合わせた重畳画像を記憶することができる。よって、この重畳画像を利用することで、道路上での工事車両の車幅等を確認でき、工事現場の周辺住民等にイメージを提示できる。
【0093】
なお、本実施形態の情報処理装置10や測距装置20で実行されるプログラムは、例えば、ROM等にあらかじめ組み込まれて提供される。また、これらのプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0094】
さらに、これらのプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、これらのプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0095】
これらのプログラムは、上述した制御部22や制御部17内の各部(特定部171、AR画像配置部172、画像処理部173、計算部174)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、各部が主記憶装置上に生成される。
【0096】
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0097】
例えば、制御部17が現実空間を認識するときに、現実空間に設けられた二次元バーコードなどのマーカを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…作業支援装置、10…情報処理装置、11…通信部、12…カメラ、13…入力部、14…表示部、15…測位部、16…記憶部、17…制御部、18…姿勢計測部、20…測距装置、21…通信部、22…制御部、23…測距センサ、171…特定部、172…AR画像配置部、173…画像処理部、174…計算部