(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】電池モジュールの保護構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240122BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2020073740
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019086402
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】高波 雄太
(72)【発明者】
【氏名】川口 聡
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大輔
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/061109(WO,A1)
【文献】特開2011-218939(JP,A)
【文献】国際公開第2018/149762(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア下に搭載される電池モジュールの保護構造であって、
電池モジュールを収容したケース体と、前記ケース体の下部側に配設したガード部材からなり、
前記ケース体と前記ガード部材との間に所定のクリアランスからなる隙間部を有し、
前記ガード部材は中空断面形状から
なり、
前記ガード部材は両端部に、上方及び外側に向けて略L字形状に折り返した締結部を有し、
前記ケース体は前記ガード部材の両側の締結部に跨がって取り付けてあり、
前記ガード部材は車体側に対して前記両側の締結部にて締結されていることを特徴とする電池モジュールの保護構造。
【請求項2】
前記ガード部材は複数のパネル材からなり、前記複数のパネル材は相互に嵌合連結してあることを特徴とする請求項1記載の電池モジュールの保護構造。
【請求項3】
前記ガード部材はアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項
1又は2記載の電池モジュールの保護構造。
【請求項4】
前記ガード部材は中空断面形状の中空端部側に整流部材を有していることを特徴とする請求項
1又は2記載の電池モジュールの保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車,ハイブリッド自動車等に電池モジュールを駆動源として搭載する際の保護構造に関し、特に車両のフロアの下側に電池モジュールを搭載する際の保護構造に係る。
【背景技術】
【0002】
電気自動車,ハイブリッド自動車等には、駆動源として二次電池からなる電池モジュールが搭載されている。
電池モジュールは、バッテリーモジュール,電池パック等とも称されている。
電池モジュールを車両に搭載する構造には、車両のリア側,フロント側等、車体空間部に搭載する構造の他に、近年は車体のフロアの下部に搭載する構造も検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、バッテリーケースを車両ボディの下面に対向して取り付ける構造において、バッテリーモジュールを下面側のリブと上面側のケース内押圧部にて支持する構造を開示する。
これでは路面の凹凸や走行中の飛石等により、下側から上方に向けて荷重が負荷された場合に、下面側のリブを介してバッテリーモジュールに直接的に負荷が加わり、このバッテリーモジュールが破損する恐れがある。
また、同公報には、バッテリーモジュールの下部側に冷却器を配設した例になっているが、この冷却器にも底部からの入力がそのまま加わる構造になっているので、冷却器の保護も不充分である。
【0004】
特許文献2には、フロアパネルの下側にバッテリーモジュールを配置する際に、平板状のガード部材に骨格部材を設け、この骨格部材にバッテリーモジュールを取り付けることで、ガード部材とバッテリーモジュールの下面の間に、空隙Sを形成した構造を開示する。
しかし、この場合もガード部材の下側から入力された荷重は、ガード部材から骨格部材を介して、直接的にバッテリーモジュールに加わる技術的課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-181746号公報
【文献】特開2018-114911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車体のフロアの下側に電池モジュールを搭載する際に、外部からの入力荷重に対しての保護効果が高く、軽量化を図るのにも有効な電池モジュールの保護構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電池モジュールの保護構造は、車両のフロア下に搭載される電池モジュールの保護構造であって、電池モジュールを収容したケース体と、前記ケース体の下部側に配設したガード部材からなり、前記ケース体と前記ガード部材との間に所定のクリアランスからなる隙間部を有し、前記ガード部材は中空断面形状からなることを特徴とする。
【0008】
ここで、電池モジュールを収容したケース体とは、繰り返し充電使用可能な、いわゆる二次電池及びその制御機器等を収容したものである。
本発明において、ケース体とガード部材の間に設けた隙間部のクリアランスは、ガード部材に下側外部から荷重が負荷された場合に所定以上に変形しないと、ガード部材がケース体の底部と接触しないようにした隙間部の寸法をいう。
また、ケース体の底部下面に冷却や加温のための温調部材、例えばヒートシンク等を取り付けた場合には、この温調部材とガード部材との間に所定のクリアランスからなる隙間部を設けることになる。
【0009】
本発明においては、ガード部材を中空断面形状からなるパネル材等にしたので、中空部の変形により外部からの入力荷重を吸収することができるので、保護強度の向上と軽量化の両立を図ることができる。
このような中空断面形状のガード部材は、例えばアルミニウム合金の押出材により容易に製作することができる。
ガード部材は一枚のパネル体でもよいが、押出加工の生産性等を考慮すると、ガード部材は複数のパネル材からなり、前記複数のパネル材は相互に嵌合連結してあってもよい。
【0010】
本発明において、ガード部材は両端部に、上方及び外側に向けて略L字形状に折り返した締結部を有し、前記ケース体は前記ガード部材の両側の締結部に跨がって取り付けてあり、前記ガード部材は車体側に対して前記両側の締結部にて締結されていてもよい。
【0011】
本発明において、前記ガード部材は中空断面形状の中空端部側に整流部材を有していてもよい。
ここで整流部材は、車両の走行中にエアーの流れの向きを変えることで走行抵抗低減や異音が発生するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電池モジュールの保護構造にあっては、電池モジュールを収容したケース体とガード部材との間に、所定のクリアランスからなる隙間部を形成するとともに、ガード部材を中空断面形状にしたので、外部からの入力荷重を中空部の変形で吸収しつつ、ガード部材とケース体との間に設けた隙間部にて所定以上に大きく変形しないと、このガード部材がケース体に当接しないので、電池モジュールの保護効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る電池モジュールの保護構造例を示す。
【
図2】(a)はガード部材に整流部材を取り付けた斜視図を示し、(b)は整流部材の側面視を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る車両に搭載する電池モジュールの保護構造の例を以下、図に基づいて説明する。
図1に電池モジュールの車両搭載部分の断面図を示す。
車両の駆動電源となる複数の電池モジュール3は、ケース体10の内部に収容されている。
ケース体10の構造に特に制限はないが、車体のフロアライン1の下側に搭載する場合には、外部から水が浸入しないようになっているのが好ましい。
本実施例は、板状の底部11から枠状の側壁部12を立設し、上部はカバー部材13で覆う構造例になっている。
底部11は、側壁部12よりも外側に延在させた取付部11aを有し、この取付部11aにてガード部材20とケース体10を固定するようになっている。
【0015】
ガード部材20は、アルミニウム合金の押出材で製作した例になっていて、両端部側の第1パネル21,第2パネル22と、その間を連結した中間パネル23で構成した例になっている。
図1は、中間パネル23を一枚のみ表示したが、複数の中間パネルが相互に連結されていてもよい。
【0016】
各パネルは、上面部と下面部との間をつなぐ複数のリブ21b,22b,23bを有し、その間に複数の中空部21c,22c,23cを形成した例になっている。
中間パネル23の端部には、嵌合凸部23aを形成し、第1パネル21と第2パネル22の端部にそれぞれ形成した嵌合凹部21d,22dの内側に嵌合連結されている。
嵌合連結すると連結強度が高いとともに、嵌合凸部23aの先端部と嵌合凹部21d,22dとの間の隙間22eにて熱変形量を吸収することができる。
なお、嵌合凸部を第1パネル21又は第2パネル22に設けて、それに対応する嵌合凹部を中間パネル側に設けてもよい。
【0017】
第1パネル21と第2パネル22の外側端部は、上方及び外側方向に折り曲げて略L字形状に延在させ、この両端部に締結部21a,22aを形成し、この部分にて車体フレーム2と締結部材24を用いて締結固定してある。
ケース体10は、両側の取付部11aにてガード部材20の両側の締結部21a,22a間に架け渡すように、このガード部材20に固定されている。
ケース体10の底部11の両側に設けた取付部11aは、電池モジュール3の収容部よりも外側に位置しているので、ガード部材の下側から受けた荷重は枠状の側壁部12に伝播され、電池モジュール3に直接荷重が伝わるのを防ぐ。
なお、
図1はガード部材20の締結部21a,22aであって、車体フレーム2との締結部材24よりも内側に単独でケース体10を固定した例になっているが、ケース体10の底部の取付部11aとガード部材20の締結部とを重ねるようにして、車体フレーム2に締結してもよい。
【0018】
本実施例では、ケース体10の底部11の下面に冷却又は加温用の温調部材14を密着配置した例になっていて、この温調部材14の下面とガード部材20の上面との間に、所定のクリアランスからなる隙間部dを形成してある。
これにより、ガード部材20が下側からの入力荷重により変形しても、直に温調部材14に当接するのを防ぐ。
また、この温調部材14は必ずしも必要ではなく、その場合にはケース体10の下面とガード部材20の上面との間に、所定のクリアランスからなる隙間部dが形成される。
【0019】
ガード部材20の下側から外部入力が加わると、ガード部材の中空部の変形と、ガード部材20の全体の上方への撓みにて、衝撃を吸収することができる。
【0020】
本発明において、ガード部材20の車体フレームへの締結方向は、車両の前後方向でも左右方向でも、その方向に制限はない。
例えば、車両の前後方向に配置されているメンバー等の車体フレームにあっては、車両の前後方向に沿って、等ピッチに締結部材24を配置することで、ガード部材20に受けた変形荷重を両側の車体フレーム2全体に伝播させることもできる。
【0021】
本発明において、ケース体10の配置方向や配置の大きさに制限はなく、車体の設計に応じて取り付け方が決定される。
図1は、車両の前後方向に配置されているメンバ等の左右一対の車体フレーム2にガード部材20が取り付けられた例になっている。
第1パネル21,中間パネル23,第2パネル22の中空部21c~23cが車両の前後方向に配置されるように、それぞれのパネルは車幅方向に連結された例になっている。
上記ガード部材20を部品として、上方から斜めに見た図を
図2(a)に示し、整流部材25の側面視を
図2(b)に示す。
図2(a)に示した図では、車両の前後方向のフロント側を(FR),上方を(UP),走行方向に向かって右側を(RH)で、それぞれ示す。
このようにガード部材20を車両フロアの下側に取り付けると、車両の走行中はパネルの中空断面形状の中空端部にエアーが当たることになる。
この際に端部が中空形状であると空気抵抗が大きく、異音が発生する恐れもある。
そこで
図2に示した実施例では、ガード部材20のフロント側(FR)の中空端部を塞ぐように整流部材25を取り付けた。
整流部材25はアルミニウム合金の押出材で製作した例になっていて、上壁部25aと下壁部25bとの車両の前後方向のフロント側にエアーの流れを、車両フロアーの下側に向けて誘導する斜壁25cを形成した例になっている。
整流部材25の後壁部25fは、パネルの中空端部を塞ぐように配置され、取付片部25eでパネルに連結されている。
整流部材25も中空断面形状としたことで、ガード部材20の剛性が向上し、保護効果も大きくなる。
【符号の説明】
【0022】
1 フロアライン
2 車体フレーム
3 電池モジュール
10 ケース体
11 底部
12 側壁部
13 カバー部材
14 温調部材
20 ガード部材
21 第1パネル
21a 締結部
21b リブ
21c 中空部
21d 嵌合凹部
22 第2パネル
22a 締結部
22b リブ
22c 中空部
23 中間パネル
23a 嵌合凸部
23b リブ
23c 中空部
d 隙間部
25 整流部材