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特許7423401破砕ライン、スポンジチタン集合体の製造方法及びチタンインゴットの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】破砕ライン、スポンジチタン集合体の製造方法及びチタンインゴットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 34/12 20060101AFI20240122BHJP
   C22B 9/04 20060101ALI20240122BHJP
   C22B 9/20 20060101ALI20240122BHJP
   C22B 9/22 20060101ALI20240122BHJP
   B65G 15/42 20060101ALI20240122BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20240122BHJP
   B03C 1/005 20060101ALI20240122BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20240122BHJP
   B02C 1/02 20060101ALN20240122BHJP
   B02C 4/02 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
C22B34/12 102
C22B9/04
C22B9/20
C22B9/22
B65G15/42 Z
B03C1/02 A
B03C1/02 Z
B03C1/005
B03C1/00 B
B02C1/02 Z
B02C4/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020075629
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021172835
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中島 英一
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179757(JP,A)
【文献】特開平07-179211(JP,A)
【文献】特開平04-251014(JP,A)
【文献】実開昭60-103115(JP,U)
【文献】特開2019-163166(JP,A)
【文献】特開2011-126678(JP,A)
【文献】特開2002-120919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
B65G 15/30 - 15/58
B03C 1/02
B03C 1/005
B03C 1/00
B02C 1/02
B02C 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポンジチタンを搬送するベルトコンベアを備える破砕ラインであって、
前記ベルトコンベアは、輪状で巻き掛けられる樹脂製のベルト本体と、該ベルト本体の搬送面から立設され、前記スポンジチタンの搬送方向に所定の間隔で設けられる複数の樹脂製の横桟とを有し、
前記複数の樹脂製の横桟に該横桟の外表面の少なくとも一部を被覆する磁性金属からなるカバー部材が設けられる、破砕ライン。
【請求項2】
前記ベルト本体は、傾斜部を有する、請求項1に記載の破砕ライン。
【請求項3】
前記横桟はそれぞれ、前記スポンジチタンの搬送方向に向かって折れ曲がる屈曲部を有し、
少なくとも前記複数の樹脂製の横桟の先端から前記屈曲部までの搬送方向の外表面は、前記カバー部材で被覆される、請求項1又は2に記載の破砕ライン。
【請求項4】
前記複数の樹脂製の横桟の外表面の全体は前記カバー部材で被覆される、請求項1~3のいずれか一項に記載の破砕ライン。
【請求項5】
前記磁性金属が、フェライト系ステンレス鋼炭素鋼、又はフェライト系ステンレス鋼と炭素鋼の組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の破砕ライン。
【請求項6】
前記破砕ラインは、磁選機を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の破砕ライン。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の破砕ラインを用いて前記スポンジチタンを搬送する工程を含む、スポンジチタン集合体の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のスポンジチタン集合体の製造方法で得られたスポンジチタン集合体をVAR法又はEB法により溶解させてチタンインゴットを製造する工程を含む、チタンインゴットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕ライン、スポンジチタン集合体の製造方法及びチタンインゴットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポンジチタンは、いわゆるクロール法によって製造されうる。すなわち、金属製還元反応容器内で溶融マグネシウムに四塩化チタンを滴下することで還元反応が起こり、大塊状のスポンジチタン塊が生成される。このスポンジチタン塊は大割シャー等で切断されスポンジチタンとなり、さらに破砕シャー等で破砕されてそのスポンジチタンは小粒になる。
【0003】
スポンジチタン塊を破砕する工程においては、大割シャーや破砕シャー等で破砕されたスポンジチタンを搬送する破砕ラインにベルトコンベアが利用される。このベルトコンベアのベルト本体は通常、スポンジチタンとの接触による炎の発生を抑制するために、樹脂製としている。しかしながら、搬送中のスポンジチタンとベルト本体との接触による摩耗や破損等で生じたベルト本体の樹脂の破片がスポンジチタンに混入する場合がある。スポンジチタンからこのような樹脂の破片等の異物を除去することは容易ではなく、多大な手間及び時間を要する。
【0004】
スポンジチタンからの異物除去に関し、特許文献1には、「磁性体粉末が混練された弾性樹脂製のベルトを用いたベルトコンベアで物品を搬送するに際し、前記物品に混入した前記ベルトの破片を磁選除去することを特徴とする異物除去方法」が提案されている。上記特許文献1の技術においては、ベルトの材質が磁性体の粉末を混錬した弾性樹脂であるので、スポンジチタンに混入した異物を磁選機により選別することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-273528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スポンジチタンの破砕ラインのベルトコンベアでは、樹脂製のベルト本体は、スポンジチタンを受け止めながら搬送する。ベルト本体の単位長さ当たりのスポンジチタン搬送量を適切に制御するために、スポンジチタンの搬送方向に沿って所定の間隔で該ベルト本体の搬送面から立設された樹脂製の横桟を有することが望ましいと考えられる。この場合、スポンジチタンをベルトコンベアで搬送する際に、横桟の搬送方向の外表面にスポンジチタンが接触することにより、横桟の摩耗や損耗が生じ、生じた細かな破片がスポンジチタンに混入するという問題がある。上記特許文献1に記載の異物除去方法は磁選機による樹脂破片の除去を効率化するものであるが、異物となる破片の生成量の低減の観点からは改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、スポンジチタン中の異物の混入を低減することが可能な破砕ラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、スポンジチタンの搬送においてベルト本体の摩耗及び損耗の度合いを確認したところ、ベルト本体の搬送面よりも、当該搬送面に立設した横桟の摩耗ないし損耗が激しいことを確認した。この理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のように考えている。すなわち、横桟により区切られるバケットの内、高い位置のバケットに含まれるスポンジチタンが低い位置のバケットに向けて落下することがある。スポンジチタンは、通常、樹脂より硬いため、この落下の際横桟の先端側、さらには先端側における幅方向中央部が摩耗や損耗により抉れ、凹部が生じると考えられる。
【0009】
そこで、本発明者は、横桟の少なくとも一部を磁性金属からなるカバー部材で被覆することにより、異物である破片の混入を抑制することを見出した。通常、金属は樹脂より硬いため、該金属がスポンジチタンと接触しても発生する破片の量が低減される。さらに、カバー部材は磁性金属であるので、カバー部材の破片がスポンジチタンに混入したとしても、当該破片は磁選機等で容易に取り除くことが可能である。また、ベルト本体の表面は樹脂のままであってもよいことを本発明者は知見した。以上より、スポンジチタンへの異物の混入を低減できる。さらに、破砕ラインのメンテナンス負荷を大きく低減できる。
【0010】
すなわち、本発明は一側面において、スポンジチタンを搬送するベルトコンベアを備える破砕ラインであって、前記ベルトコンベアは、輪状で巻き掛けられる樹脂製のベルト本体と、該ベルト本体の搬送面から立設され、前記スポンジチタンの搬送方向に所定の間隔で設けられる複数の樹脂製の横桟とを有し、前記複数の樹脂製の横桟に該横桟の外表面の少なくとも一部を被覆する磁性金属からなるカバー部材が設けられる、破砕ラインである。
【0011】
本発明に係る破砕ラインの一実施形態において、前記ベルト本体は、傾斜部を有する。
【0012】
本発明に係る破砕ラインの一実施形態において、前記横桟はそれぞれ、前記スポンジチタンの搬送方向に向かって折れ曲がる屈曲部を有し、少なくとも前記複数の樹脂製の横桟の先端から前記屈曲部までの搬送方向の外表面は、前記カバー部材で被覆される。
【0013】
本発明に係る破砕ラインの一実施形態において、前記複数の樹脂製の横桟の外表面の全体は前記カバー部材で被覆される。
【0014】
本発明に係る破砕ラインの一実施形態において、前記磁性金属が、フェライト系ステンレス鋼及び/又は炭素鋼である
【0015】
本発明に係る破砕ラインの一実施形態において、当該破砕ラインは、磁選機を更に備える。
【0016】
また、本発明は別の側面において、上記いずれかの破砕ラインを用いて前記スポンジチタンを搬送する工程を含む、スポンジチタン集合体の製造方法である。
【0017】
更に、本発明は別の側面において、上記のスポンジチタン集合体の製造方法で得られたスポンジチタン集合体をVAR法又はEB法により溶解させてチタンインゴットを製造する工程を含む、チタンインゴットの製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、スポンジチタン中の異物の混入を低減することできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明の一実施形態に係る破砕ラインを示す概略断面図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る破砕ラインのベルトコンベアの外観概略を示す部分拡大平面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る破砕ラインに備わる横桟の一例を示す部分拡大断面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る破砕ラインに備わる横桟の他の例を示す部分拡大断面図である。
図2C】本発明の一実施形態に係る破砕ラインに備わる横桟の他の例を示す部分拡大断面図である。
図2D】本発明の一実施形態に係る破砕ラインに備わる横桟の他の例を示す部分拡大断面図である。
図2E】本発明の一実施形態に係る破砕ラインに備わる横桟の他の例を示す部分拡大断面図である。
図2F】本発明の一実施形態に係る破砕ラインに備わる横桟の他の例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は以下に説明する各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して発明を形成してもよい。図1Aにおいては、「上方」は、第1ベルトコンベア400の平面を視認できる側(鉛直方向における上側)を意味する。「下方」は、第1ベルトコンベア400の平面と反対の底面を視認できる側(鉛直方向における下側)を意味する。図1においては、「搬送方向」は、第1プーリ411から第2プーリ412に向かう方向を意味する。本明細書において、「上流」は、破砕ラインのベルトコンベアにスポンジチタンが供給される側を意味し、「下流」は、破砕ラインのベルトコンベアでスポンジチタンが搬出される側を意味する。
なお、図1Aでは、搬送方向に沿ってベルト本体410の搬送面410a(図1B参照)に立設されて配置された一対の側壁430(図1B参照)を示していないが、これは理解を容易にするために省略したものである。
【0021】
[1.破砕ライン]
図1に示す破砕ライン100は、大割プレス(不図示)と、大割プレスで切断されたスポンジチタンが導入される第1破砕シャー200と、第1破砕シャー200で破砕されたスポンジチタンを所定の粒径サイズに分級する第1篩機構300と、第1篩機構300で分級されたスポンジチタンを搬送する第1ベルトコンベア400と、第1ベルトコンベア400で搬送されたスポンジチタンが投入される第1シュート500とを備える。前記大割プレスは、通常破砕ラインに含まれる構成であるが、別途設置することとしてもよい。当該破砕ライン100は、図示しない磁選機、ジョークラッシャー、ダブルロールクラッシャー等を更に備えてよい。以下、各構成要素について図面を使用しながら説明する。なお、破砕ラインに備えられる破砕シャー、篩機構及びベルトコンベアは、1つでもよく、複数でもよい。また、1の破砕シャーと1の篩機構と1のベルトコンベアとを1組とした場合、破砕ラインは、複数組の破砕シャー等を備えてよく、例えば4組の破砕シャー(第1~4破砕シャー)と篩機構(第1~4篩機構)とコンベア(第1~4コンベア)を備えてよい。このとき、下流側に配置される第2~4破砕シャー、第2~4篩機構、及び第2~4ベルトコンベアはそれぞれ、上流側に配置される第1破砕シャー、第1篩機構及び第1コンベアと同様の構成としてよいので、説明を割愛する。破砕ライン100においては破砕工程の最終段階までにカバー部材から生じた異物を除去できればよく、例えば4組目のベルトコンベアに磁選機を備えればよい。すなわち、1組目のベルトコンベアと2組目の破砕シャーとの間、2組目のベルトコンベアと3組目の破砕シャーとの間、3組目のベルトコンベアと4組目の破砕シャーとの間、適宜設置されたジョークラッシャーやダブルロールクラッシャーの下流には磁選機を配置しなくてよい。但し、破砕ライン100は磁選機を複数備えてもよく、その設置場所は適宜選択可能である。なお、篩機構は常に篩別を行う必要はない。篩別不要の判断となった場合、スポンジチタンは篩機構を通過する。
【0022】
(大割プレス)
大割プレスは、金属製還元反応容器内で溶融マグネシウムに四塩化チタンを滴下することで起こる反応により生成されたスポンジチタン塊を切断する。これにより、スポンジチタンが得られる。なお、この大割プレスで生成するスポンジチタンのうち不純物含有量が多いものは次工程に送らず廃棄等の対応としてもよい。
【0023】
(第1破砕シャー)
第1破砕シャー200は、例えば、大割プレスでスポンジチタン塊を切断して得られたスポンジチタンを更に破砕する。第1破砕シャー200は、大割プレスで切断されたスポンジチタンが所定の粒径となるように、スポンジチタンを切断するものである。複数の破砕シャーを備える破砕ライン100においては、第1破砕シャー200で破砕されたスポンジチタンとその第1破砕シャーよりも破砕ライン100の下流側に配置された破砕シャーで破砕されたスポンジチタンとを比べると、下流側の破砕シャーで破砕されたスポンジチタンの粒径が小さいものとなる。つまり、破砕シャーを通るたびに、徐々に粒径の小さいスポンジチタンになる。
【0024】
(第1篩機構)
第1篩機構300は、第1破砕シャー200の下方に配置されている。第1篩機構300は、通常、第1破砕シャー200で破砕されたスポンジチタンを所定の粒径以下となるように分級するが、スポンジチタンを分級せずに第1ベルトコンベア400側に単に通過させることもある。
【0025】
(第1ベルトコンベア)
第1ベルトコンベア400の一端部(上流側の端部)は、図1Aに示すように、第1篩機構300の下方に配置されている。第1ベルトコンベア400は、第1篩機構300を通過したスポンジチタンを搬送する。
【0026】
当該第1ベルトコンベア400は、一端部に配置された第1プーリ411及び該一端部と反対側の他端部(下流側の端部)に配置された第2プーリの412間に輪状に巻き掛けられたベルト本体410と、図1Bに示すように、該ベルト本体410の搬送面410a上に設けた複数の横桟420と、搬送方向に沿って搬送面410aの側部に設けた一対の側壁430とを備える。なお、第1ベルトコンベア400は側壁430がなくてもスポンジチタンを搬送することが可能である。よって、側壁430は第1ベルトコンベア400における必須の構成ではない。
なお、この第1ベルトコンベア400では、ベルト本体410の内側で後述する第1平坦部451と傾斜部452との間に、ベルト本体410の向きを水平方向から傾斜する方向に変更させる第3プーリ413が配置され、また、傾斜部452と第2平坦部453との間に、ベルト本体410の向きを当該傾斜方向から水平方向に変更させる第4プーリ414が配置されている。
【0027】
(ベルト本体)
ベルト本体410は、第1平坦部451と、第2平坦部453と、第1平坦部451及び第2平坦部453の間の傾斜部452とを有する。傾斜部452は、スポンジチタンを搬送する方向(搬送方向)に向かうに従ってスポンジチタンを次第に上昇させるようにベルト本体410を傾斜させている。当該構成により空間を立体的に活用でき、平坦部のみのベルト本体からなるベルトコンベアと比べて、限られた空間においても多くの破砕シャーを破砕ラインに設置可能である。
なお、ベルト本体410は、樹脂製である。この樹脂としては耐摩耗性樹脂であることが好ましく、一般に加硫ゴムや熱可塑性樹脂が使用される。ベルト本体410の樹脂は、耐摩耗性等の向上という観点から、無機フィラーを適宜添加したものでもよい。通常、ベルト本体410の表面は樹脂が露出している。すなわち、スポンジチタンはベルト本体410と接触可能である。
【0028】
(横桟)
複数の横桟420は、ベルト本体410の搬送面410aから立設されスポンジチタンの搬送方向に所定の間隔で設けられる。横桟420の設置方式は適宜選択可能であり、ベルト本体410に嵌め込む形式で設けられてもよいし、ベルト本体410と一体型として設けられてもよい。搬送面410a上には、隣り合う横桟420と側壁430とで区画される空間として、スポンジチタンが配置されるバケット415が設けられる。複数の横桟420は、樹脂製である。この樹脂としては耐摩耗性樹脂であることが好ましく、一般に加硫ゴムや熱可塑性樹脂が使用される。横桟420とベルト本体410がいずれも樹脂製であるためこれらの硬さの差は比較的小さい。よって、破砕ライン100を連続操業としても横桟420とベルト本体410との結合部の損傷を良好に回避できる。該結合部は、横桟420とベルト本体410とが一体型であれば、例えば図2Aに示す基端424に相当し、或いは、横桟420をベルト本体410に嵌め込む形式であれば、横桟420の基端424から一定の距離をおいて位置する幅を持った領域に相当する。なお、横桟420の樹脂は、耐摩耗性等の向上という観点から、無機フィラーを適宜添加したものであってもよい。
【0029】
一実施形態に係る図2Aに示す横桟420はそれぞれ、ベルト本体410の搬送面410aから略垂直方向に延びる。さらに、横桟420はそれぞれスポンジチタンの搬送方向の前方側に向かって折曲する屈曲部423を有する。そうすることで、ベルト本体410の傾斜部452で上方に向かって搬送されているスポンジチタンの落下を低減できる。このとき、スポンジチタンの搬送方向の前方側であって、横桟420の先端422から屈曲部423までの外表面421aとベルト本体410の搬送面410a(図2Aの点線は搬送面410aに平行である)とのなす角θは、0~70°であればよい。
【0030】
(カバー部材)
複数の横桟420の外表面421の少なくとも一部は、磁性金属からなるカバー部材425で被覆されている。そうすることで、カバー部材425で覆われた部位をスポンジチタンとの接触から保護することができて、磁選機で除去できないような異物を生じさせる摩耗や損耗を抑制することができる。また、カバー部材425が磁性金属からなるので、カバー部材425とスポンジチタンとの接触によりカバー部材425の破片が発生してバケット415内に混入しても、当該破片は磁選機で選別して除去することが可能である。なお、本発明において、カバー部材425には、磁性金属の他に、カバー部材425の特性に影響を及ぼさない、微量の不可避不純物が含まれる場合がある。
【0031】
図2A図2Eに、カバー部材425、426、427、428、429の具体例をそれぞれ示す。
図2Aに示すカバー部材425は、樹脂製の横桟420の先端422から屈曲部423までの横桟420の外表面421aを被覆するように設けられている。バケット415内に積載されたスポンジチタンのうち、その積まれた上方に位置する(すなわち、ベルト本体410表面から離れて位置する)スポンジチタンが、特に傾斜部452で第1ベルトコンベア400の振動により変位しやすい。傾斜部452では上方側のバケット415から下方側のバケット415にスポンジチタンが落下することがあり、この際、スポンジチタンが樹脂製の横桟420と接触すると横桟420から樹脂製の破片などが生じうる。当該カバー部材425においては、横桟420の先端422から屈曲部423までの外表面421aを覆うカバー部材425を設けることにより、バケット415内に積まれた上方に位置する変位しやすいスポンジチタンとの衝突する頻度が高い当該外表面421aが保護されるので、スポンジチタンへの横桟420の破片の混入を低減することができる。さらに、仮にカバー部材425から異物となる破片が生じたとしても、磁選機により容易に除去可能である。
一方、横桟420の屈曲部423から基端424までの横桟420の外表面421bは、バケット415内の下方のスポンジチタンが変位しにくいことから、当該スポンジチタンとの衝突があまり起こらない。そのため、図2Aに示すカバー部材425は、横桟420の屈曲部423から基端424までの横桟420の外表面421bを覆わないものとしている。なお、カバー部材425が、図2Aに示すように、横桟420の外表面421aを含む先端422の部分を包み込むキャップ状である場合、該外表面421aとカバー部材425の内面425aとの間にクリアランスを設けてもよい。
また、図2Bに示すカバー部材426は、樹脂製の横桟420の先端422から屈曲部423までの横桟420の外表面421aを被覆するように設けられ、搬送方向と反対側の横桟420の基端424から屈曲部423までの外表面421cの一部を被覆している。ここで、横桟420の外表面421cをカバー部材426で被覆する範囲については、下記の関係式(1)を満たせばよい。なお、第1屈曲点423aは、外表面421cと、搬送方向と反対側の横桟420の先端422から屈曲部423までの外表面421dとの連結部が該当する。
0.1≦H1/H2≦0.5・・・関係式(1)
H1:横桟の第1屈曲点から横桟の基端側のカバー部材の先端部までの最短距離
H2:横桟の第1屈曲点から横桟の基端までの最短距離
また、図2Cに示すカバー部材427は、少なくとも樹脂製の横桟420の先端422から屈曲部423までの搬送方向の外表面421aだけを被覆している。そうすることで、カバー部材427を小さくしつつ、横桟420の破片の混入を低減可能である。このとき、該外表面421aとカバー部材427とは、公知の処理、例えば、磁性金属製のビス等を使用する機械的な係合、化学処理又はレーザー処理で接合すればよい。このような横桟とカバー部材との接合方法は他の実施形態においても採用可能である。
また、図2Dに示すカバー部材428は、樹脂製の横桟420の基端424側から先端422までの外表面421全体を被覆する。そうすることで、スポンジチタンが搬送中に横桟420と接触しないので、スポンジチタンへの横桟420の破片の混入をより確実に低減可能である。なお、ベルト本体410と横桟420がともに樹脂製であるため、これらの結合部において硬さの顕著な相違がなく、ベルト本体410および横桟420の寿命が長くなる。
また、図2Eに示すカバー部材429は、樹脂製の横桟420の屈曲部423から先端422までの搬送方向の外表面421aを被覆し、かつ搬送方向の横桟の屈曲部423から横桟420の基端424までの外表面421bの一部を被覆する。ここで、横桟420の外表面421bをカバー部材429で被覆する範囲については、下記の関係式(2)を満たせばよい。なお、第2屈曲点423bは、外表面421aと外表面421bとの連結部が該当する。
0.0≦H3/H4≦1.0・・・関係式(2)
H3:横桟の第2屈曲点から横桟の基端側のカバー部材の端部までの最短距離
H4:横桟の第2屈曲点から横桟の基端までの最短距離
更に、図2Fに示す横桟420は、屈曲部423(図2A~E参照。)を有しないものであって、該横桟420の外表面421の少なくとも一部を被覆するカバー部材425が設けられる。ここで、横桟420の外表面421をカバー部材425で被覆する範囲については、下記の関係式(3)を満たせばよい。
0.6≦H5/H6≦1.0・・・関係式(3)
H5:横桟の先端から横桟の基端側のカバー部材の端部までの最短距離
H6:横桟の基端から先端までの最短距離
【0032】
磁性金属としては磁性を帯びている金属又は合金であれば良い。なお、カバー部材全体を単独の金属又は合金で形成してもよく、複数の金属や合金を組合せて形成してもよい。磁性金属として、例えば、高い機械強度を有する観点から炭素鋼等が挙げられる。また、磁性金属として、高い機械強度及び防錆性という観点から例えばフェライト系ステンレス鋼等が挙げられる。ステンレス鋼のうち、非磁性であるオーステナイト系ステンレス鋼は上記磁性金属には該当しない。
【0033】
(ジョークラッシャー、ダブルロールクラッシャー)
破砕シャーで破砕されたスポンジチタンは、スポンジチタンの形状を整えるため、ジョークラッシャーやダブルロールクラッシャー(図示省略)での処理に供されてよい。
【0034】
(磁選機)
磁選機は、該磁選機内の磁力により磁性金属材料を含む破片を選別するものであり、破砕ライン100では、スポンジチタンから、カバー部材425、426、427、428、429の磁性金属を含む破片や、大割シャー若しくは第1破砕シャー200の刃の磁性金属材料を含む破片等を取り除く。磁選機は、破砕ライン100の最下流側に配置すればよい。例えば、磁選機は、最下流側のベルトコンベアの直上、又はシュートの排出口に配置する。
【0035】
[2.スポンジチタン集合体の製造方法]
本発明に係るスポンジチタン集合体の製造方法の一実施形態によれば、異物の混入が低減されたスポンジチタン集合体が得られる。当該スポンジチタン集合体の製造方法は、金属製還元反応容器内で溶融マグネシウムに四塩化チタンを滴下することで反応が起こり、大塊状のスポンジチタン塊を生成する還元工程と、先述した破砕ライン100を用いてスポンジチタンを粒状のスポンジチタンに破砕する破砕工程とを含む。なお、上述した構成と重複する説明については割愛する。
【0036】
[3.チタンインゴットの製造方法]
本発明に係るチタンインゴットの製造方法の一実施形態においては、先述したスポンジチタン集合体の製造方法で得られたスポンジチタン集合体をVAR法又はEB法により溶解させてチタンインゴットを製造する。なお、上述した構成と重複する説明については割愛する。
【実施例
【0037】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものではない。
【0038】
[実施例1]
実施例1においては、スポンジチタンを製造するにあたり、大割シャーと、第1~4破砕シャーと、第1~4篩機構と、第1~4ベルトコンベア、磁選機とを備える破砕ラインを敷地内に設置した。破砕シャー、篩機構、ベルトコンベアを1組とし、ベルトコンベアと破砕シャーの間にはシュートを設置した。磁選機は第4ベルトコンベア下流直上に設置した。第1~4ベルトコンベアにおいては、図2Aに示すように、フェライト系ステンレス鋼からなるカバー部材425を、各横桟420の先端422から屈曲部423までの外表面421aが被覆されるように設けた。屈曲部423については、外表面421aとベルト本体の搬送面とのなす角度θが65°であった。
【0039】
このような破砕ラインを用いて、還元工程で生成されたスポンジチタン塊を大割後に破砕する操業を2年間実施した。操業中、作業者は、磁選機通過後のスポンジチタンを目視で検査した。その結果、該スポンジチタンへの異物の混入が確認された件数は、0件であった。
【0040】
[比較例1]
比較例1では、横桟にカバー部材を設けなかった点を除いて実施例1と同様に操業し、その間にスポンジチタンへの異物の混入を作業者が目視で検査した。その結果、2年間の操業において、該スポンジチタンへの異物の混入が確認された件数は、38件であった。該異物は樹脂であり磁選機による除去は困難であった。異物混入が確認されたロット、さらにその前後の適宜のロットについてスポンジチタン中に異物混入がないか目視での検査が必要となった。この目視検査は異物混入発見1回あたり8時間を要した。
【0041】
(実施例による考察)
実施例1は、比較例1と比べて、異物の混入がほとんど確認されなかった。この理由としては、実施例1では、ベルトコンベアで搬送中のスポンジチタンが横桟420と直接衝突せずに、カバー部材425に衝突し、その衝突によるカバー部材425の破片は磁選機で除去されたためと考えられる。
【符号の説明】
【0042】
100 破砕ライン
200 第1破砕シャー
300 第1篩機構
400 第1ベルトコンベア
410 ベルト本体
410a 搬送面
411 第1プーリ
412 第2プーリ
413 第3プーリ
414 第4プーリ
415 バケット
420 横桟
421、421a、421b、421c、421d 外表面
422 先端
423 屈曲部
423a 第1屈曲点
423b 第2屈曲点
424 基端
425、426、427、428、429 カバー部材
430 側壁
451 第1平坦部
452 傾斜部
453 第2平坦部
500 第1シュート
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F