(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F16D 23/12 20060101AFI20240122BHJP
B60K 23/02 20060101ALI20240122BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240122BHJP
【FI】
F16D23/12 B
B60K23/02 K
G05G1/30 E
B60K23/02 R
(21)【出願番号】P 2020078843
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】青山 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 通隆
(72)【発明者】
【氏名】大町 仁志
(72)【発明者】
【氏名】澤井 恵
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 大介
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0024289(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 23/12
B60K 23/02
G05G 1/30
1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に搭載されたキャビンと、
前記キャビンに設けられたペダル軸と、
前記ペダル軸に枢支されるクラッチペダルと、
前記車体に設けられたクラッチと、
前記クラッチを断続するクラッチ操作部材と、
前記クラッチ操作部材に一端側が連結されたリンク部材と、
前記キャビンの振動が前記クラッチに伝わるのを抑制するように前記リンク部材の他端側と前記クラッチペダルとを連動連結する連動リンク機構と、
前記キャビンの前方に配置されると共に前記車体に取り付けられた支持フレームと、
を備え、
前記クラッチペダルは、上下方向に長いペダルアームであって、上部が前記ペダル軸に枢支されたペダルアームと、前記ペダルアームの下部に固定された踏み部材と、前記ペダルアームの上部の側方に配置されて前記ペダルアームに固定された連結ステーと、を有し、
前記連動リンク機構は、後端側が前記ペダル軸より下方且つ前記ペダルアームの上部の後方の位置で前記連結ステーに枢支されると共に前記連結ステーから前方に向かうにつれて下方に移行する傾斜方向に延びる連動リンクと、前記連動リンクの前端側と前記リンク部材とを連動連結する中間リンクと、を有し、
前記連動リンクは、前記クラッチペダルの揺動により前後方向に押し引きされ、
前記中間リンクは、前記支持フレームに取り付けられたリンク支軸と、前記リンク支軸に回動可能に嵌められた回動ボスと、前記回動ボスの上部に上方突出状に固定され且つ前記連動リンクの前端側が枢支された第1リンクステーと、前記回動ボスの下部に下方突出状に固定され且つ前記リンク部材の他端側が枢支された第2リンクステーと、を有している作業車両。
【請求項2】
前記支持フレームは、車幅方向で間隔を開けて配置された第1側枠材及び第2側枠材と、前記車体に取り付けられると共に前記第2側枠材が連結された下枠材と、前記下枠材に前記第1側枠材を連結する連結枠と、を有し、
前記連結枠は、前記第1側枠材の下端部が固定される第1部材と、前記第1部材に取り付けられ且つ前記第1側枠材の下部との間に間隔が開けられて配置される支持壁を含む第2部材と、を有し、
前記リンク支軸は、前記支持壁と前記第1側枠材とにわたって設けられている請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記回動ボスは、前記支持壁と前記第1側枠材との間で前記リンク支軸の外側に嵌められている請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記連結枠は、前記キャビンの室内側から前記支持フレームの前方側へワイヤーハーネスを通すための通し部を有している請求項2または3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記連結枠は、前記下枠材と前記車体とを連結する第3部材と、前記第1部材と前記第3部材との間に配置され前記第1部材と前記第3部材とを連結する第4部材と、前記第4部材の車幅方向外方に配置され、前記第1側枠材の下部と前記第3部材とを連結する第5部材と、を有し、
前記通し部は、前記第1部材、前記第3部材、前記第4部材及び前記第5部材で形成されている請求項4に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業車両が知られている。
特許文献1に開示された作業車両は、車体と、車体に搭載されたキャビンとを有している。車体には、走行系の動力伝達装置の動力伝達を断続するクラッチが設けられている。クラッチは、クラッチレバー及びレリーズフォークで構成されるクラッチ操作部材によって断続される。キャビンには、クラッチ操作部材を操作してクラッチを断続するクラッチペダルが設けられている。クラッチ操作部材とクラッチペダルとは、リンク部材によって連動連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャビンは、車体にゴムマウントを介して搭載されるので、例えば、悪路を走行しているときなどの振動によって、車体に対して相対的に上下に振動する。キャビンが車体に対して上下に振動すると、リンク部材が押し引きされ、クラッチの切断及び接続が繰り返し行われる「クラッチジャダー現象」を生じる場合がある。
そこで、本発明は、クラッチジャダー現象を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る作業車両は、車体と、前記車体に搭載されたキャビンと、前記キャビンに設けられたペダル軸と、前記ペダル軸に枢支されるクラッチペダルと、前記車体に設けられたクラッチと、前記クラッチを断続するクラッチ操作部材と、前記クラッチ操作部材に一端側が連結されたリンク部材と、前記キャビンの振動が前記クラッチに伝わるのを抑制するように前記リンク部材の他端側と前記クラッチペダルとを連動連結する連動リンク機構と、前記キャビンの前方に配置されると共に前記車体に取り付けられた支持フレームと、を備え、前記クラッチペダルは、上下方向に長いペダルアームであって、上部が前記ペダル軸に枢支されたペダルアームと、前記ペダルアームの下部に固定された踏み部材と、前記ペダルアームの上部の側方に配置されて前記ペダルアームに固定された連結ステーと、を有し、前記連動リンク機構は、後端側が前記ペダル軸より下方且つ前記ペダルアームの上部の後方の位置で前記連結ステーに枢支されると共に前記連結ステーから前方に向かうにつれて下方に移行する傾斜方向に延びる連動リンクと、前記連動リンクの前端側と前記リンク部材とを連動連結する中間リンクと、を有し、前記連動リンクは、前記クラッチペダルの揺動により前後方向に押し引きされ、前記中間リンクは、前記支持フレームに取り付けられたリンク支軸と、前記リンク支軸に回動可能に嵌められた回動ボスと、前記回動ボスの上部に上方突出状に固定され且つ前記連動リンクの前端側が枢支された第1リンクステーと、前記回動ボスの下部に下方突出状に固定され且つ前記リンク部材の他端側が枢支された第2リンクステーと、を有している。
【0006】
また、前記支持フレームは、車幅方向で間隔を開けて配置された第1側枠材及び第2側枠材と、前記車体に取り付けられると共に前記第2側枠材が連結された下枠材と、前記下枠材に前記第1側枠材を連結する連結枠と、を有し、前記連結枠は、前記第1側枠材の下端部が固定される第1部材と、前記第1部材に取り付けられ且つ前記第1側枠材の下部との間に間隔が開けられて配置される支持壁を含む第2部材と、を有し、前記リンク支軸は、前記支持壁と前記第1側枠材とにわたって設けられている。
また、前記回動ボスは、前記支持壁と前記第1側枠材との間で前記リンク支軸の外側に嵌められている。
【0007】
また、前記連結枠は、前記キャビンの室内側から前記支持フレームの前方側へワイヤーハーネスを通すための通し部を有している。
また、前記連結枠は、前記下枠材と前記車体とを連結する第3部材と、前記第1部材と前記第3部材との間に配置され前記第1部材と前記第3部材とを連結する第4部材と、前記第4部材の車幅方向外方に配置され、前記第1側枠材の下部と前記第3部材とを連結する第5部材と、を有し、前記通し部は、前記第1部材、前記第3部材、前記第4部材及び前記第5部材で形成されている。
【発明の効果】
【0008】
上記の作業車両によれば、連動リンク機構を設けることにより、クラッチジャダー現象を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】クラッチとクラッチペダルとを連動する機構の全体側面図である。
【
図8】ワイヤハーネスの通し部の正面斜視図である。
【
図11】フロントグリルとヘッドライトの固定部分の拡大図である。
【
図12】フロントグリルとヘッドライトの固定部分の分解斜視図である。
【
図13】フロントグリルとヘッドライトの固定部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る作業車両1の全体構成を示す概略側面図である。本実施形態では、作業車両1としてトラクタが例示されている。なお、作業車両1は、ホイールローダやバックホー等の走行可能な作業車両であってもよい。
本実施形態においては、
図1の矢印A1方向(作業車両1の前進方向)を前方、
図1の矢印A2方向(作業車両1の後進方向)を後方、
図1の矢印A3方向を前後方向として説明する。したがって、
図1の手前側が左方であり、
図1の奥側が右方である。また、前後方向A3に直交する水平方向を車幅方向として説明する。また、作業車両1における車幅方向の中央部から左部、或いは、右部へ向かう方向を車幅方向外方として説明する。言い換えれば、車幅方向外方とは、車幅方向であって作業車両1の中心から離れる方向のことである。車幅方向外方とは反対の方向を車幅方向内方として説明する。言い換えれば、車幅方向内方とは、車幅方向であって作業車両1の中心に近づく方向である。
【0011】
図1に示すように、作業車両1は、走行可能な車体(機体)2を有する。車体2は、原動機E1と、原動機E1の後部に連結された伝動ケース3とを有する。
原動機E1は、ディーゼルエンジンである。原動機E1は、作業車両1の前部に位置し、ボンネット4によって覆われている。原動機E1は、電動モータであってもよいし、ディーゼルエンジン及び電動モータを有するハイブリッド型であってもよい。伝動ケース3は、例えば、フライホイールハウジング3Aと、クラッチハウジング3Bと、ミッションケース3Cと、デフケース3Dとを直結して構成される。
【0012】
図1、
図2に示すように、フライホイールハウジング3Aは、エンジンE1から出力される動力によって回転するフライホイール11を収容するケースである。クラッチハウジング3Bは、フライホイール11を介して伝達される原動機E1の動力を断続可能に伝達するクラッチ12を収容するケースである。ミッションケース3Cは、クラッチ12を介して伝達される動力を変速する図示しない変速装置を収容するケースである。デフケース3Dは、変速装置から後述する後輪7へ動力を伝達する図示しない差動装置を収容するケースである。
【0013】
図3に示すように、フライホイール11は、エンジンE1の出力軸E1aと接続されている。クラッチ12は、クラッチディスク13、ダイヤフラムスプリング14、プレッシャープレート15、スリーブ16及びレリーズベアリング17を有して構成されている。
クラッチディスク13は、ミッションケース3C内の変速装置に動力を伝達する伝動軸18と接続する。ダイヤフラムスプリング14は、クラッチ12の接続時に、プレッシャープレート15を介して伝動軸18上に取り付けたクラッチディスク13をフライホイール11に押付ける。これによって、エンジンE1の出力軸E1aと伝動軸18とが接続され、エンジンE1からの動力が変速装置に伝達可能となる。
【0014】
スリーブ16は、伝動軸18に前後方向A3に摺動可能に支持される。クラッチ12の切断時には、スリーブ16がダイヤフラムスプリング14に向かって矢印X1方向に前方移動し、該スリーブ16がレリーズベアリング17をダイヤフラムスプリング14に押付ける。これによりダイヤフラムスプリング14が反り返り、クラッチディスク13がフライホイール11から離反して、エンジンE1の出力軸E1aと伝動軸18とが切断される。つまり、変速装置への動力伝達が切断される。
【0015】
クラッチ12は、
図3に示すクラッチ操作部材19によって断続操作される。クラッチ操作部材19は、レリーズフォーク20と、クラッチレバー21とを有している。レリーズフォーク20は、上部がクラッチハウジング3Bに設けられたレバー軸22に取り付けられ、下部がスリーブ16に設けられた係合部16aに係合している。クラッチレバー21は、一端側21aがレバー軸22に取り付けられており且つレバー軸22から前方に向かうにつれて上方に移行する傾斜方向に延伸するように配置されている。レリーズフォーク20とクラッチレバー21とは、クラッチハウジング3Bに対して、レバー軸22の軸心回りに一体的に揺動可能である。したがって、
図3に示すクラッチ12の接続状態からクラッチレバー21の他端側21bが矢印X2方向に引き上げられると、レバー軸22が回動されると共にレリーズフォーク20の下部がダイヤフラムスプリング14に向かうようにレリーズフォーク20が前方に揺動する。レリーズフォーク20が前方に揺動すると、スリーブ16がダイヤフラムスプリング14に向かって移動し、クラッチ12が切断される。
【0016】
また、クラッチレバー21の引き上げ力が解除されると、ダイヤフラムスプリング14によりスリーブ16が元の位置に復帰されると共にレリーズフォーク20、クラッチレバー21も元の位置に復帰され、クラッチ12が接続される。
図1に示すように、作業車両1は、車体2を走行可能に支持する走行装置5を有する。走行装置5は、車体2前部(原動機E1)の左及び右に設けられた前輪6と、車体2後部(デフケース3D)の左及び右に設けられた後輪7とを有する車輪型走行装置が例示されている。
【0017】
図1に示すように、作業車両1は、車体2(伝動ケース3)に搭載されたキャビン8を有している。キャビン8は、前部及び後部が車体2に防振マウント(ゴムマウント)23によって防振支持されている。前部側の防振マウント23Aは、クラッチハウジング3Bの左及び右に配置され、クラッチハウジング3Bに取り付けられたブラケット24に取り付けられている。後部側の防振マウント23Bは、キャビン8の背面下部の左及び右に配置され、デフケース3Dに取り付けられたブラケット25に取り付けられている。キャビン8の室内の後部には、オペレータが着座する運転席9が設けられている。運転席9の前方には、例えば、前輪7を操向操作するステアリングハンドル10と、クラッチ12をキャビン8の室内側から操作するクラッチペダル26とが設けられている。
【0018】
図2に示すように、クラッチペダル26は、キャビン8の前壁8Aに支持されている。前壁8Aは、キャビン8のフロントガラスの下方に設けられ、ステアリングハンドル10やフロントコンソールパネルや各種レバー等を支持すると共にキャビン8の室内と原動機E1の配置側とを隔離する隔離壁でもある。
図4に示すように、前壁8Aの背面には、一対の軸支ブラケット27が固定されている。この一対の軸支ブラケット27にわたって支持筒28が固定されている。支持筒28は、車幅方向に延伸する軸心を有している。支持筒28には、シャフト29が略同心状に挿通されると共に相対回転不能に固定されている。シャフト29の左部は、支持筒28から左方に突出している。このシャフト29の左部が、クラッチペダル26を支持するペダル軸29aとされている。
【0019】
クラッチペダル26は、吊り下げ式のクラッチペダル26であって、上下方向に長いペダルアーム26Aと、ペダルアーム26Aの上部に固定された回動ボス26Bと、ペダルアーム26Aの下部に固定された踏み部材26Cと、ペダルアーム26Aの上部に固定された連結ステー26Dとを有している。回動ボス26Bは、ペダル軸29aの外側に軸心回り回動可能に嵌められている。つまり、クラッチペダル26は、
図3に示すように、ペダル軸29aの軸心Y1を中心として前後方向に揺動可能にペダル軸29aに支持されている。
【0020】
図3の実線は、クラッチペダル26を踏み込んでいない位置である非踏み込み位置P1を示し、
図3の2点鎖線は、クラッチペダル26を踏み込んだ位置である踏み込み位置P2を示している。クラッチペダル26は、踏み込み位置P2から非踏み込み位置P1へ揺動(戻り方向へ揺動)するように図示しない戻しバネによって付勢されている。クラッチペダル26の戻り方向への揺動は、ストッパ(第1ストッパ)30によって規制される。第1ストッパ30は、
図4に示すように、一対の軸支ブラケット27に固定された棒材31の左部によって形成されている。
図3に示すように、クラッチペダル26は、ストッパ(第2ストッパ)32に当接することで矢印X3で示す踏み込み方向の揺動が規制される。第2ストッパ32は、
図4に示すように、前壁8Aに固定されている。
【0021】
図3に示すように、クラッチペダル26とクラッチ操作部材19(クラッチレバー21)とは、連動機構33によって連動連結されている。連動機構33は、リンク部材34と、連動リンク機構35とを有して構成されている。リンク部材34は、一端側が枢軸36を介してクラッチレバー21の他端側21bに連結されている。リンク部材34は、クラッチレバー21の他端側21bから後方に向かうにつれて上方に移行する傾斜方向に延伸するように配置されている。
【0022】
連動リンク機構35は、キャビン8の振動がクラッチ12に伝わるのを抑制(低減)するようにリンク部材34の他端側とクラッチペダル26とを連動連結する。これにより、キャビン8が車体2に対して相対的に上下に振動することによってクラッチ12の切断及び接続が繰り返し行われる「クラッチジャダー現象」を抑制することができる。
図3に示すように、連動リンク機構35は、連動リンク37と、中間リンク38とを有している。連動リンク37は、一端側がペダル軸29aの下方側で連結ステー26D(クラッチペダル26)にピン39を介して連結されている。連動リンク37は、連結ステー26Dから前方側に延伸するように配置されている。詳しくは、連動リンク37は、連結ステー26Dから前方に向かうにつれて若干下方に移行する傾斜方向に延伸するように配置されていて、クラッチペダル26の揺動により前後に押し引きされる。
【0023】
図4、
図5に示すように、前壁8Aには、挿通穴40が形成されている。連動リンク37は、挿通穴40を挿通してキャビン8の室内側から原動機E1の配置側へと配設されている。
図3に示すように、中間リンク38は、前壁8Aの前方側(原動機E1の配置側)に配置されている。中間リンク38は、リンク支軸38Aと、回動ボス38Bと、第1リンクステー38Cと、第2リンクステー38Dとを有している。リンク支軸38Aは、車体2側に設けられている。詳しくは、
図2に示すように、リンク支軸38Aは、フライホイールハウジング3Aに取り付けられた支持フレーム41に取り付けられている。支持フレーム41は、下部がフライホイールハウジング3Aに取り付けられていてフライホイールハウジング3Aから上方に突出状とされている。支持フレーム41は、ボンネット4内の後部に配置され且つボンネット4を上下揺動可能(開閉可能)に支持している。リンク支軸38Aは、車幅方向に延伸する軸心を有する。
【0024】
図3、
図7に示すように、回動ボス38Bは、リンク支軸38Aの外側に車幅方向に延伸する軸心回りに回動可能に嵌められている。第1リンクステー38Cは、回動ボス38Bの上部に固定されていて、回動ボス38Bから上方側に突出状である。第1リンクステー38Cに、連動リンク37の他端側が枢軸42を介して連結されている。言い換えると、連動リンク37の他端側は、回動ボス38Bの上方側で第1リンクステー38Cに連結されている。第2リンクステー38Dは、回動ボス38Bの下部に固定されていて、回動ボス38Bから下方側に突出状である。詳しくは、第2リンクステー38Dは、回動ボス38Bから下方に向かうにつれて後方に移行する傾斜方向に突出している。第2リンクステー38Dにリンク部材34の他端側が枢軸43を介して連結されている。言い換えると、リンク部材34の他端側は、回動ボス38Bの下方側で第2リンクステー38Dに連結されている。
【0025】
図3に示すように、クラッチペダル26を非踏み込み位置P1から前方(矢印X3方向)に踏込むと、連動リンク37が前方(矢印X4方向)に押動されて回動ボス38Bが矢印X5方向に回動する。これにより、第2リンクステー38Dが上方側に揺動してリンク部材34が矢印X6方向に引き上げられると共にクラッチレバー21が矢印X2方向に引き上げられ、クラッチ12が切断される。
【0026】
また、クラッチペダル26から踏力を解放すると、クラッチペダル26が非踏み込み位置P1に戻ると共に連動リンク37が後方に引動される。これにより、リンク部材34が押し下げられると共にクラッチレバー21が下方揺動し、クラッチ12が接続される。
上記構成では、リンク部材34及び中間リンク38は車体2側であり、連動リンク37はクラッチペダル26の揺動により前後に押し引きされる構造であるので、作業車両1が悪路走行などで振動して、車体2に対してキャビン8が上下に振動しても、該キャビン8の上下振動がクラッチ12に伝わるのを抑制(防止)することができる。つまり、連動リンク37は、クラッチペダル26の揺動により前後に押し引きされてクラッチ12を断続操作するので、キャビン8の上下振動で連動リンク37が前後移動するのが抑制されることにより、キャビン8の振動でクラッチ12が断続動作されるのを防止できる。これにより、クラッチジャダー現象を抑制することができる。
【0027】
図5に示すように、支持フレーム41は、第1側枠材46と、第2側枠材47と、上枠材48と、下枠材49と、連結枠50とを有している。第1側枠材46及び第2側枠材47は、上下方向に長く形成され、車幅方向で間隔を開けて配置されている。第1側枠材46は、フライホイールハウジング3Aの左側方側に配置され、支持フレーム41の左部を構成する。第2側枠材47は、フライホイールハウジング3Aの右側方側に配置され、支持フレーム41の右部を構成する。第1側枠材46の下端は、第2側枠材47の下端よりも高い位置に在り、第1側枠材46及び第2側枠材47の上端は、略同じ高さ位置に在る。上枠材48は、第1側枠材46と第2側枠材47との上端同士を連結している。
【0028】
図6に示すように、下枠材49は、フライホイールハウジング3Aの上方側に配置され、第1側枠材46の下方位置から第2側枠材47の下端部にわたって設けられている。下枠材49の左部は、第1側枠材46の下方に間隔を開けて配置され、連結枠50を介して第1側枠材46に連結されている。下枠材49の右部は、第2側枠材47の下端側に連結されている。下枠材49の下面側には、複数の(一対の)取付ステー(第1取付ステー51L、第2取付ステー51R)が下方突出状に固定されている。第1取付ステー51Lは、フライホイールハウジング3Aの上部左側に配置され、フライホイールハウジング3Aの上部に設けられた第1取付部3Aaにボルト固定されている。第2取付ステー51Rは、フライホイールハウジング3Aの上部右側に配置され、フライホイールハウジング3Aの上部に設けられた第2取付部3Abにボルト固定されている。
【0029】
図6、
図7、
図8に示すように、連結枠50は、第1部材52~第5部材56を有して構成されている。第1部材52~第5部材56は、板材によって形成されている。第1部材52は、車幅方向に長い板材によって形成され、板面が上下方向を向くように配置されている。第1部材52は、左部が第1側枠材46の下端部に固定されていて、第1側枠材46から右方に突出している。第2部材53は、第1部材52の右部上にボルト固定される取付壁53aと、取付壁53aの左端から上方に延出された支持壁53bとを有している。
【0030】
図7に示すように、支持壁53bと第1側枠材46の下部との間には間隔が開けられている。支持壁53bと第1側枠材46の下部とにわたってリンク支軸38Aが設けられている。リンク支軸38Aの右端側は支持壁53bに固定され、リンク支軸38Aの左端側は第1側枠材46にナット57によって取り付けられている。回動ボス38Bは、支持壁53bと第1側枠材46との間でリンク支軸38Aの外側に嵌められている。第2部材53及び第1側枠材46は、中間リンク38を取り付ける取付部を構成している。
【0031】
図7に示すように、第3部材54は、上壁54aと、上壁54aの左端部から下方側に延びる側壁54bとを有している。上壁54aは、下枠材49の左部の上面に重ね合わされて固定されている。側壁54bの上部54baは、上壁54aの左端部から鉛直下方に延出されている。側壁54bの中途部54bbは、上部54baの下端から車幅方向内方に向かうにつれて下方に移行する傾斜方向に延出されている。側壁54bの下部54bcは、中途部54bbの下端から鉛直下方に延出されている。側壁54bの下部54bcは、フライホイールハウジング3Aの左側部の上下方向中途に設けられた第3取付部3Acにボルト固定されている。クラッチレバー21は、側壁54bの中途部の右側方を通って側壁54bの前方から後方に配設されている。
【0032】
図7、
図8に示すように、第4部材55は、第1部材52と第3部材54の上壁54aとの間に配置され、第1部材52と第3部材54とを連結している。第4部材55は、第1部位55aと、第2部位55bとを有している。第1部位55aは、板面が車幅方向を向き、第1部材52の右端部と第3部材54の上壁54aの右端部との間に配置され且つこれらに固定されている。第2部位55bは、第1部位55aの左端部から車幅方向外方(左方)に延出された後、車幅方向外方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延出され、且つ第1部材52及び第3部材54に固定されている。
【0033】
図6、
図8に示すように、第5部材56は、第4部材55の車幅方向外方に配置され、第1側枠材46の下部と第3部材54の上部とを連結している。第5部材56は、第1部分56a、第2部分56b、第3部分56c、第4部分56d及び第5部分56eを有している。第1部分56aは、第1側枠材46の左面にボルト固定されている。第2部分56bは、第1部分56aの下端から車幅方向外方側に延出されている。詳しくは、第2部分56bは、第1部分56aの下端から車幅方向外方に向かうにつれて若干下方に移行する傾斜方向に延出されている。第3部分56cは、第2部分56bの左端から下方に延出されている。第4部分56dは、第3部分56cの下端から第3部材54に向けて延出されている。詳しくは、第4部分56dは、第3部分56cの下端から下方に向かうにつれて車幅方向内方(右方)に移行する傾斜方向に延出している。第5部分56eは、第4部分56dの下端から下方に延出されていて、第3部材54の側壁54bの上部54baにボルト固定されている。
【0034】
図2に示すように、キャビン8の室内側から原動機E1の配置側へ、電気配線を束ねたワイヤーハーネス(ハーネス束)58が配策されている。
図8に示すように、連結枠50は、第1部材52、第3部材54、第4部材55及び第5部材56で形成された通し部59を有している。この通し部59にワイヤーハーネス58を通すことで、キャビン8の室内側から原動機E1の配置側へワイヤーハーネス58を配策することができる。第5部材56は、第1側枠材46と第3部材54とにボルト固定されているので、第5部材56を取り外すことにより、通し部59は側方(左側方)に開放状となり、ワイヤーハーネス58を容易に通すことができる。
【0035】
図2に示すように、作業車両1は、原動機E1の後部上方に、排ガス浄化装置であるDPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル微粒子捕集フィルター)60が設けられている。DPF60は、原動機E1の排気ガスに含まれるPM (Particulate Matter: 粒子状物質) を捕集し、自動的にPMを燃焼(DPF再生)処理する装置である。
DPF60は高温になるので、ワイヤーハーネス58はDPF60から遠ざける必要がある。中間リンク38のリンク支軸38Aの下方に、通し部59を形成することで、ワイヤーハーネス58をDPF60から遠ざけながらキャビン8の室内側から原動機E1の配置側へ配策することができる。
【0036】
なお、クラッチジャダー現象を抑制する方法として、クラッチペダル26とクラッチレバー21とを、アウタチューブと該アウタチューブ中に摺動可能に挿入されるインナケーブルとを有するケーブルによって連動連結する方法がある。しかしながら、ケーブルは大きく湾曲させる必要がある。本実施形態の作業車両1では、クラッチレバー21の上方に、DPF60を支持するブラケットやDPF60に接続されるホース等があるので、ケーブルを大きく湾曲させながら配置できるスペースがない。このような場合に、クラッチペダル26とクラッチレバー21とを連動連結するのに、上記連動機構33の構成をとるのが有効である。
【0037】
次に、ボンネット4の前部の構成について説明する。
図9に示すように、ボンネット4は、前部に、樹脂製のフロントグリル61と、フロントグリル61に取り付けられた一対のヘッドライト62とを有している。一対のヘッドライト62は、フロントグリル61の背面側に配置され、フロントグリル61に取り付けられている。フロントグリル61におけるヘッドライト62の対応部分には、ヘッドライト62のレンズ部62aを露出させる開口63が形成されている。
【0038】
図10は、フロントグリル61の上部を背面からみた背面図を示している。各ヘッドライト62の背面の車幅方向外方側には、係合凸状部64が形成されている。また、各ヘッドライト62の背面の車幅方向外方側には、係合凸状部64に係合するステー65が配置されている。
図11、
図12に示すように、ステー65は、板材によって形成され、基部65aと、基部65aから延びる複数の延出部65bと、各延出部65bに形成された引っ掛け部65cとを有している。基部65aは、係合凸状部64の車幅方向外方側に係合凸状部64に沿って配置される。基部65aの上部及び下部には、ピン挿通穴(挿通穴)66が貫通状に形成されている。複数の延出部65bは、基部65aの上部及び下部から車幅方向内方に延びている。各引っ掛け部65cは、延出部65bの車幅方向内端部から前方に延びている。
【0039】
図12、
図13に示すように、フロントグリル61の背面の係合凸状部64の車幅方向外方側には、複数のピン形状部(係合突起)67が形成されている。複数のピン形状部67は、上側のピン挿通穴66Aに挿通される上ピン形状部67Aと、下側のピン挿通穴66Bに挿通される下ピン形状部67Bとを含む。
ステー65は、ピン形状部67に嵌められるスピードナット68によって取り付けられる。詳しくは、ステー65は、上側のピン挿通穴66Aに上ピン形状部67Aを挿通させると共に下側のピン挿通穴66Bに下ピン形状部67Bを挿通させ且つ上下の引っ掛け部65cを係合凸状部64の車幅方向内方側に係合する。この状態でスピードナット68を各ピン形状部67に嵌めることによって、ヘッドライト62とフロントグリル61とを固定する。このとき、ステー65によって、フロントグリル61がヘッドライト62に引き寄せられ、開口63の縁部(車幅方向外方側の縁部)63aとヘッドライト62(レンズ部62a)との間に隙間ができないようにすることができる。
【0040】
ところで、ヘッドライト62をボンネット4の樹脂製フロントグリル61に取り付ける場合、ヘッドライト62の外形と、フロントグリル61におけるヘッドライト62の周囲の形状とを合わせる為に、板金ステーとボルト・ナットを用いて組み付けることが考えられる。この場合、ボルトによってヘッドライト62をフロントグリル61に組み付ける為、組み付けに工数を有するという問題がある。また、ボルトの締め付け時に工具が入るスペースを確保する必要があり、それによりフロントグリル61の意匠の自由度が制限されるという問題もある。そこで、ボルトを用いた取り付けとは異なる取り付け構造を考案する必要がある。
【0041】
本実施形態では、ステー65を用いて樹脂製のフロントグリル61をヘッドライト62に引き寄せながらフロントグリル61とヘッドライト62とを固定することで、ヘッドライト62の外形と樹脂製のフロントグリル61との間に隙間ができないようにすることができる。
また、フロントグリル61側にピン形状部67を設けることでスピードナット68を用いてステー65を固定することができる。即ち、ステーをボルトを用いて固定するのではなく、スピードナット68を用いることにより組み立て工数を低減することができる。また、スピードナット68を用いることにより工具が入るスペースを考慮する必要がなく、フロントグリル61の意匠の自由度を確保することができる。
【0042】
上記作業車両1は、車体2と、車体2に搭載されたキャビン8と、キャビン8に設けられたクラッチペダル26と、車体2に設けられたクラッチ12と、クラッチ12を断続するクラッチ操作部材19と、クラッチ操作部材19に一端側が連結されたリンク部材34と、キャビン8の振動がクラッチ12に伝わるのを抑制するようにリンク部材34の他端側とクラッチペダル26とを連動連結する連動リンク機構35と、を備えている。
【0043】
連動リンク機構35を設けることにより、クラッチジャダー現象を抑制することができる。
また、連動リンク機構35は、一端側がクラッチペダル26に連結された連動リンク37と、連動リンク37の他端側とリンク部材34とを連動連結する中間リンク38とを有し、連動リンク37は、クラッチペダル26の揺動により前後に押し引きされる。
【0044】
この構成によれば、連動リンク37はクラッチペダル26の揺動により前後に押し引きされるので、作業車両1が悪路走行などで振動して、車体22に対してキャビン88が上下に振動しても、連動リンク37が押し引きされるのが抑制され、クラッチジャダー現象を抑制することができる。
また、中間リンク38は、車体2側に設けられたリンク支軸38Aと、リンク支軸38Aに回動可能に嵌められた回動ボス38Bと、回動ボス38Bに固定されていて連動リンク37の他端側が連結される第1リンクステー38Cとを有している。
【0045】
この構成によれば、連動リンク37をクラッチペダル26の揺動により前後に押し引きさせることができる。
また、クラッチペダル26は、上部がキャビン8に設けられたペダル軸29aに枢支されたペダルアーム26Aを有し、第1リンクステー38Cは、回動ボス38Bから上方側に突出し、連動リンク37は、一端側がペダルアーム26Aにペダル軸29aの下方側で連結され、他端側が回動ボス38Bの上方側で第1リンクステー38Cに連結されている。
【0046】
この構成によれば、吊り下げ式のクラッチペダル26におけるクラッチジャダー現象を抑制することができる。
また、中間リンク38は、回動ボス38Bから下方側に突出する第2リンクステー38Dを有し、リンク部材34の他端側は、回動ボス38Bの下方側で第2リンクステー38Dに連結されている。
【0047】
この構成によれば、連動リンク37の前後の押し引き動作をリンク部材34に伝えることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
2 車体
8 キャビン
12 クラッチ
19 クラッチ操作部材
26 クラッチペダル
26A ペダルアーム
29a ペダル軸
34 リンク部材
35 連動リンク機構
37 連動リンク
38 中間リンク
38A リンク支軸
38B 回動ボス
38C 第1リンクステー
38D 第2リンクステー