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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】透水性付与剤及びその利用
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/188 20060101AFI20240122BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20240122BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20240122BHJP
   D06M 13/192 20060101ALI20240122BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20240122BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20240122BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
D06M13/188
D06M13/148
D06M13/17
D06M13/192
D06M13/224
D06M13/256
D06M13/292
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020078845
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172927
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】多田 充宏
(72)【発明者】
【氏名】小南 裕志
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-069752(JP,A)
【文献】特開2019-218641(JP,A)
【文献】特開2010-031407(JP,A)
【文献】特開2012-102424(JP,A)
【文献】特開2008-295837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)及び下記成分(C)を含有する、透水性付与剤。
成分(A):グルコン酸
成分(B):アルキルホスフェート、アルキルホスフェート塩、ポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート、ポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸およびジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種
成分(C):1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種と脂肪族カルボン酸とのエステル
【請求項2】
前記透水性付与剤の不揮発分に占める前記成分(A)の重量割合が0.1~20重量%、前記成分(B)の重量割合が10~60重量%、前記成分(C)の重量割合が10~70重量%である、請求項1に記載の透水性付与剤。
【請求項3】
有効50重量%濃度水溶液の20℃における粘度が100~1000mPa・sである、請求項1又は2に記載の透水性付与剤。
【請求項4】
下記成分(D)をさらに含み、前記透水性付与剤の不揮発分に占める下記成分(D)の重量割合が1~40重量%である、請求項1~3のいずれかに記載の透水性付与剤。
成分(D):炭素数3~12の炭化水素基を有する2価のアルコールまたは炭素数3~12の炭化水素基を有するモノアルキルグリセロールエーテル
【請求項5】
前記成分(D)が、1,3-プロパンジオールである、請求項4に記載の透水性付与剤。
【請求項6】
グルコースである成分(E)をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の透水性付与剤。
【請求項7】
不織布製造用合成繊維に対して、請求項1~6のいずれかに記載の透水性付与剤を付与してなる、透水性繊維。
【請求項8】
請求項7に記載の透水性繊維を含有する、不織布。
【請求項9】
請求項7に記載の透水性繊維を集積させて繊維ウェブを作製し、該繊維ウェブを熱処理する工程を含む、不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性付与剤及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつや合成ナプキンを代表とする生理用品等の吸収性物品は、熱可塑性樹脂を含む繊維(ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維等)を主材とする各種不織布に親水性を付与したトップシートと、撥水性を付与したバックシートと、トップシートとバックシートの間に綿状パルプや高分子吸収体等からなる材料とを配置した3層から形成される構造になっていることが多い。尿や体液等の液体はトップシートを通過して吸収体に吸収されるが、トップシートには透水性のよいこと、すなわち液体がトップシート上から内部の吸収体に完全に吸収される迄の時間が極めて短い瞬時透水性が必要である。さらに、僅か1回から2回の液体の吸収によってトップシート上の処理剤が流出して透水性が急激に低下するのは、おむつの取り替え回数が増すことになって好ましくないので、トップシートには繰り返しの液体吸収に耐える耐久透水性が要求される。さらに、トップシートが肌と同じ弱酸性を示すことが要求されている。このような要求特性を満足するために、例えば、特許文献1に記載の透水性付与剤を用いることが開示されている。
透水性付与剤は、繊維に均一に付着させるため、水に乳化して低濃度のエマルションという形態で付与する。しかし、特許文献1の透水性付与剤を用いた場合、乳化性が悪いことから、繊維への付与を行う際に均一に給油できないために、透水性付与剤の繊維上への不均一付着により、不織布の製造面ではカード機へのスカム堆積、不織布の性能面では透水性能の不均一化、といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-210693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、耐久透水性及び給油工程の安定化に優れ、不織布を弱酸性化することができる透水性付与剤を提供することである。又、該透水性付与剤が付着した繊維および不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の3成分を含有する繊維処理剤であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の透水性付与剤は、下記成分(A)、下記成分(B)及び下記成分(C)を含有する。
成分(A):グルコン酸
成分(B):アルキルホスフェート、アルキルホスフェート塩、ポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート、ポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸およびジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種
成分(C):1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種と脂肪族カルボン酸とのエステル
【0006】
以下の要件を具備すると、より好ましい。
1)前記透水性付与剤の不揮発分に占める前記成分(A)の重量割合が0.1~20重量%、前記成分(B)の重量割合が10~60重量%、前記成分(C)の重量割合が10~70重量%である。
2)有効50重量%濃度水溶液の、20℃における粘度が100~1000mPa・sである。
3)下記成分(D)をさらに含み、前記透水性付与剤の不揮発分に占める下記成分(D)の重量割合が1~40重量%である。
成分(D):炭素数3~12の炭化水素基を有する2価のアルコールまたは炭素数3~12の炭化水素基を有するモノアルキルグリセロールエーテル
4)前記成分(D)が、1,3-プロパンジオールである。
5)グルコースである成分(E)をさらに含む。
【0007】
本発明の透水性繊維は、不織布製造用合成繊維に対して、上記透水性付与剤を付与してなる。
本発明の不織布は、上記透水性繊維を含有する。
本発明の不織布の製造方法は、上記透水性繊維を集積させて繊維ウェブを作製し、該繊維ウェブを熱処理する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の透水性付与剤は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を必須に含有する。以下、
各成分について説明する。
【0009】
[成分(A)]
成分(A)は、グルコン酸であり、本発明の透水性付与剤に必須の成分である。
本発明の透水性付与剤におけるグルコン酸の機能としては、成分(B)及び成分(C)と併用されることで不織布を弱酸性化し、耐久透水性及び給油工程の安定化に寄与する。
グルコン酸は、グルコン酸塩として存在してもよいが、透水性付与剤が弱酸性を示す程度に酸の状態で存在している。
グルコン酸塩としては、アンモニウム塩および金属塩が挙げられる。
グルコン酸塩のアンモニウム塩としては、グルコン酸アンモニウムやグルコン酸トリメチルアンモニウム、グルコン酸トリエタノールアンモニウムなどのアミン塩等が挙げられる。
グルコン酸の金属塩としては、グルコン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸亜鉛、グルコン酸鉄、グルコン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0010】
[成分(B)]
成分(B)は、アルキルホスフェート、アルキルホスフェート塩、ポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート、ポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸およびジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種である。
成分(B)としては、混合物であってもよく、1種または2種以上を用いてもよい。
【0011】
アルキルホスフェート、アルキルホスフェート塩、ポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート及びポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩を構成するアルキル基の炭素数としては、本願効果を奏する観点から、6~18が好ましく、8~16がより好ましく、8~14がさらに好ましい。
アルキルホスフェート塩およびポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩を構成する塩としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アミン塩又はアンモニウム塩等が挙げられ、制電性を付与する観点から、中でもアルカリ金属塩が好ましい。アルキルホスフェート塩を構成する塩は、1種又は2種以上から構成されてもよい。
アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、中でもカリウム塩が好ましい。
ポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェートおよびポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩を構成するポリオキシアルキレン基は、下記一般式(1)で示される。
一般式(1) (AO)m
Oは、例えば、それぞれ独立に、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基である。1つのAOにおいて、オキシエチレン基とオキシプロピレン基など、複数種のオキシアルキレン基を含んでもよい。
mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。mは、1~100であり、好ましくは2~30、より好ましくは3~10である。
【0012】
アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸塩を構成するアルキル基の炭素数としては、本願効果を奏する観点から、6~18が好ましく、8~16がより好ましく、8~14がさらに好ましい。
アルキルスルホン酸塩を構成する塩としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アミン塩又はアンモニウム塩等が挙げられ、制電性を付与する観点から、中でもアルカリ金属塩が好ましい。アルキルスルホン酸塩を構成する塩は、1種又は2種以上から構成されてもよい。
アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、中でもナトリウム塩が好ましい。
ジアルキルスルホコハク酸およびジアルキルスルホコハク酸塩を構成するアルキル基の炭素数としては、本願効果を奏する観点から、6~18が好ましく、8~16がより好ましく、8~14がさらに好ましい。
ジアルキルスルホコハク酸塩を構成する塩としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アミン塩又はアンモニウム塩等が挙げられ、制電性を付与する観点から、中でもアルカリ金属塩が好ましい。アルキルスルホン酸塩を構成する塩は、1種又は2種以上から構成されてもよい。
アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、中でもナトリウム塩が好ましい。
【0013】
[成分(C)]
成分(C)は、1価アルコール、多価アルコールおよびこれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる少なくとも1種と脂肪族カルボン酸とのエステルである。
本発明の透水性付与剤は、成分(A)、成分(B)に加え、当該成分(C)を含むことにより、耐久透水性及び給油工程の安定化に寄与する。
【0014】
1価アルコールとしては、特に限定はないが、1価の脂肪族アルコール等が挙げられる。1価の脂肪族アルコールの炭素数は分布があってもよい。また、飽和であっても不飽和あってもよく、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。脂肪族アルコールの炭素数は、1~22が好ましく、1~18がより好ましく、4~18がさらに好ましく、8~18が特に好ましい。
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
1価アルコールのアルキレンオキシド付加物について、アルキレンオキシドの炭素数は2~4が好ましい。2種類以上のアルキレンオキシドを付加する場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。また、アルキレンオキシドの付加モル数は、0~150が好ましく、0~50がさらに好ましく、0~20が特に好ましく、0が最も好ましい。
【0015】
多価アルコールとしては、特に限定はないが、2~8価のアルコール等が挙げられ、2~6価のアルコールが好ましく、2~4価のアルコールが好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ショ糖などのポリオール類が挙げられる。さらに、グリセリンの縮合物であるジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン等のポリグリセリンも含まれる。
多価アルコールのアルキレンオキシドのアルキレンオキシド付加物について、アルキレンオキシドの炭素数は2~4が好ましい。2種類以上のアルキレンオキシドを付加する場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。また、アルキレンオキシドの付加モル数は、0~150が好ましく、0~50がさらに好ましく、0~20が特に好ましく、0が最も好ましい。
【0016】
脂肪族カルボン酸は、分子内にヒドロキシル基を有さない脂肪酸が好ましい。脂肪族カルボン酸としては、特に限定はなく、脂肪酸や脂肪族ポリカルボン酸であってもよい。脂肪酸としては、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。これらの中でも、飽和脂肪酸が好ましく、脂肪酸の炭素数は、4~30が好ましく、4~22がさらに好ましく、4~18が特に好ましい。
【0017】
飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0018】
脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルバリル酸、クエン酸等が挙げられる。
また、これらの脂肪族ポリカルボン酸無水物も使用することができ、例えば、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、無水スベリン酸、無水アゼライン酸、無水セバシン酸、無水マレイン酸、無水クエン酸等が挙げられる。
【0019】
多価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、椰子油、パーム油や大豆油、牛脂などの天然から得られる油脂類、パーム油や大豆油や牛脂に水素を添加した硬化パーム油や硬化大豆油、硬化牛脂等を用いてもよい。
【0020】
多価アルコールのアルキレンオキシド付加物と脂肪族カルボン酸のエステルとしては、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とからエステルを得てから、炭素数2~4のアルキレンオキシドを付加した物質を使用してもよい。
【0021】
1価アルコールおよび/または1価アルコールのアルキレンオキシド付加物と脂肪族カルボン酸とのエステルとしては、2-エチルヘキシルオレエート、イソオクチルオレエート、ラウリルオレエート、ステアリルオレエート、オレイルオレエート、トリデシルオレエート、ブチルステアレート、イソオクチルステアレート、オレイルイソステアレート、オレイルステアレート、イソトリデシルステアレート、イソプロピルパルミテート、イソオクチルパルミテート、オレイルパルミテート、トリデシルパルミテート、トリデシルラウレート、オレイルラウレートポリオキシエチレン(10モル)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル、ジオクチルアジペート、ジラウリルアジペート、ジイソトリデシルアジペート、ジイソステアリルアジペート、ジオレイルアジペート、ジオクチルフマレート、ジオクチルフタレート等が挙げられる。
【0022】
多価アルコールおよび/または多価アルコールのアルキレンオキシド付加物と脂肪族カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジオレエート、グリセリンモノオクタネート、グリセリンモノデカノエート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジオクタネート、グリセリンジデカノエート、グリセリンジラウレート、グリセリントリオレエート、ヘキサグリセリンモノステアレート、トリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリオレエート、トリメチロールプロパンモノパルミテート、ペンタエリスリトールテトラオレエート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20モル)グリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタントリオレエート、コハク酸ジ(3-ヒドロキシプロピル)、コハク酸メチル(3-ヒドロキシプロピル)等が挙げられる。
【0023】
〔成分(D)〕
本発明の透水性付与剤は、本願発明の効果を発揮する観点から、成分(D)を含むと好ましい。成分(D)は、炭素数3~12の炭化水素基を有する2価のアルコールまたは炭素数3~12の炭化水素基を有するモノアルキルグリセロールエーテルである。
炭素数3~12の炭化水素基を有する2価のアルコールとしては、炭素数3~12の炭化水素基を有する2価のアルコールとしては、炭素数3~12の鎖状脂肪族アルコール、炭素数3~12の脂環式アルコール等を挙げることができる。
炭素数3~12の鎖状脂肪族アルコールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール及び1,12-ドデカンジオール等を挙げることができる。本願効果を発揮する観点から、1,3-プロパンジオールが特に好ましい。
【0024】
炭素数3~12の脂環式アルコールとしては、例えば、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。
その他の炭素数3~12の炭化水素基を有する2価のアルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジ(1,3-プロピレン)グリコール、ジ(1,2-プロピレン)グリコール、イソプレングリコール等が挙げられる。
これらの2価アルコールは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
炭素数3~12の炭化水素基を有するモノアルキルグリセロールエーテルとしては、例えば、1-O-ヘキシルグリセロール、1-O-ヘプチルグリセロール、1-O-オクチルグリセロール、1-O-ノニルグリセロール、1-O-デシルグリセロール、1-O-ドデシルグリセロール、1-O-ミリスチルグリセロール、1-O-オレイルグリセロール、1-O-ステアリルグリセロール、1-O-イソステアリルグリセロール、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロパン-1,2-ジオール等が挙げられる。本願効果を発揮する観点から、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロパン-1,2-ジオールが特に好ましい。
【0026】
(その他成分)
本発明の透水性付与剤はその他成分として、本願発明の効果を発揮する観点から、グルコースである成分(E)を含むと好ましい。また、下記の成分(F)、成分(G)を含有してもよい。
【0027】
前記成分(F)は、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル(F1)、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸との縮合物(F2)及び当該縮合物(F2)の少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル(F3)から選ばれる少なくとも1種である。
【0028】
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル(F1)は、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、多価アルコールの水酸基のうち、2個以上(好ましくは全部)の水酸基がエステル化されている。したがって、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルは、複数の水酸基を有するエステルである。
【0029】
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸は、脂肪酸の炭化水素基に酸素原子を介してポリオキシアルキレン基が結合した構造を有し、ポリオキシアルキレン基の脂肪酸の炭化水素基と結合していない片末端が水酸基となっている。
【0030】
ヒドロキシ脂肪酸としては、たとえば、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等が挙げられ、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸が好ましい。
多価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、グリセリンが好ましい。
ポリオキシアルキレン基としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドが挙げられる。
【0031】
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸との縮合物(F2)を構成するジカルボン酸としては、たとえば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0032】
前記縮合物(F2)の少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル(F3)を構成する封鎖脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラノリン脂肪酸(ウールグリースを精製したラノリン誘導体である炭素数12~36の脂肪酸)等が挙げられる。
【0033】
前記成分(G)は、ポリオキシアルキレン変性シリコーンであり、ポリオキシアルキレン基としては、たとえば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、これらの基を構成する単量体から2種以上を選び重合して得られる基等を挙げることができる。オキシアルキレン基を2種類以上選んだ場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。
【0034】
〔透水性付与剤〕
本発明の透水性付与剤は弱酸性を示す。具体的には、透水性付与剤の有効1重量%濃度エマルションのpHは3以上6未満であり、3.2~5.7が好ましく、3.5~5.5がより好ましい。pHが3未満では、構成成分の分解等により透水性付与剤として不安定となる為に好ましくなく、6以上では、繊維に対して弱酸性を付与することができない。
【0035】
本発明の透水性付与剤の先行技術に対する有利な技術的特徴として、耐久透水性を有するにも拘らず、粘度が低いために、繊維に均一に付着しやすく、耐久親水性の効果が発揮され易いことが挙げられる。耐久透水性油剤は、分子量が大きいため、粘度が高いことが通常であった。粘度が低いことは、成分(A)~(C)の3成分を同時に含むことにより得られる技術的特徴である。
本発明の透水性付与剤の有効50重量%濃度水溶液の20℃における粘度は、本願効果を奏する観点から、100~1000mPa・sが好ましく、100~900mPa・sがより好ましく、100~700mPa・sがさらに好ましく、100~500mPa・sが最も好ましい。
【0036】
前記透水性付与剤の不揮発分に占める前記成分(A)の重量割合は、本願効果を奏する観点から、0.1~20重量%が好ましく、0.3~17重量%がより好ましく、0.5~16重量%がさらに好ましく、1~15重量%が特に好ましい。前記透水性付与剤の不揮発分に占める前記成分(A)の重量割合としての成分(A)は、グルコン酸およびその塩を含む。
前記透水性付与剤の不揮発分に占める前記成分(B)の重量割合は、本願効果を奏する観点から、10~60重量%が好ましく、13~55重量%がより好ましく、15~50重量%がさらに好ましく、20~45重量%が特に好ましい。
前記透水性付与剤の不揮発分に占める前記成分(C)の重量割合は、本願効果を奏する観点から、10~70重量%が好ましく、13~60重量%がより好ましく、15~55重量%がさらに好ましく、20~50重量%が特に好ましい。
なお、本発明における不揮発分とは、処理剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。本発明における有効成分とは、当該不揮発分を意味する。
【0037】
〔透水性繊維〕
本発明の透水性繊維は、不織布製造用合成繊維(繊維本体)とこれに付着した上記透水性付与剤とから構成される透水性繊維であり、一般的には所定の長さに切断した短繊維である。透水性付与剤の不揮発分の付着率は、前記透水性繊維に対して0.1~2重量%であり、好ましくは0.3~1重量%である。透水性繊維に対する透水性付与剤の不揮発分の付着率が0.1重量%未満では、瞬時透水性、耐久透水性が低下することがある。一方、透水性付与剤の不揮発分の付着率が2重量%を超えると、繊維をカード処理する時に巻付きが多くなって生産性が大幅に低下し、乾式法等の方法により得られた不織布等の繊維製品が透水後にベトツキが大きくなることがある。
【0038】
不織布製造用合成繊維(繊維本体)としては、たとえば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維等であり、複合繊維の組み合わせとしては、ポリオレフィン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂の場合、例えば、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、直鎖状高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレンと他のα-オレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリプロピレン、直鎖状高密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン等が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂/ポリエステル系樹脂の場合、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、直鎖状高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂/ポリエステル系樹脂の場合、例えば、共重合ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。さらにポリアミド系樹脂/ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂/ポリアミド系樹脂等からなる繊維も例示することができる。繊維処理剤が付着される前の不織布製造用合成繊維は、疎水性合成繊維ということもできる。
これら不織布製造用合成繊維(繊維本体)のなかでも、付着した繊維処理剤が尿や体液等の液体で濡れても繊維表面に残り易いという理由から、ポリオレフィン系繊維(ポリオレフィン繊維やポリオレフィン繊維を含む複合繊維)、ポリエステル系繊維(ポリエステル繊維やポリエステル繊維を含む複合繊維)等の不織布製造用合成繊維に本発明の繊維処理剤は好適である。
【0039】
繊維の断面構造は鞘芯型、並列型、偏心鞘芯型、多層型、放射型あるいは海島型が例示できるが、繊維製造工程での生産性や、不織布加工の容易さから、偏心を含む鞘芯型または並列型が好ましい。また、断面形状は円形または異形形状とすることができる。異形形状の場合、例えば扁平型、三角形~八角形等の多角型、T字型、中空型、多葉型等の任意の形状とすることができる。
【0040】
本発明の繊維処理剤は、そのまま希釈等せずに繊維本体に付着させてもよく、水等で不揮発分全体の重量割合が0.5~5重量%となる濃度に希釈してエマルジョンとして繊維本体に付着させてもよい。繊維処理剤を繊維本体へ付着させる工程は、繊維本体の紡糸工程、延伸工程、捲縮工程等のいずれであってもよい。本発明の繊維処理剤を繊維本体に付着させる手段については、特に限定はなく、ローラー給油、ノズルスプレー給油、ディップ給油等の手段を使用してもよい。繊維の製造工程やその特性に合わせ、より均一に効率よく目的の付着量が得られる方法を採用すればよい。また、繊維処理剤が付与された繊維の乾燥の方法としては、熱風および赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよい。
【0041】
〔不織布の製造方法〕
不織布の製造方法として、特に限定なく、公知の方法を採用できる。原料繊維としては短繊維や長繊維を用いることができる。原料繊維が短繊維のウェブ形成方式としては、カード方式やエアレイド方式等の乾式法や抄紙方式等の湿式法が挙げられる。また原料繊維が長繊維のウェブ形成方式としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等が挙げられる。また、繊維間結合方式としては、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、スティッチボンド法等が挙げられる。
本発明の不織布の製造方法は、本発明の透水性繊維(例えば短繊維)をカード機等に通し繊維ウェブを作製し、得られた繊維ウェブを熱処理する工程を含むものが好ましい。すなわち、本発明の繊維処理剤は、不織布の製造において繊維ウェブを熱処理する工程を有する場合に、特に好適に使用されるものである。
繊維ウェブを熱処理して接合させる方法としては、加熱ロールまたは超音波による熱圧着、加熱空気による熱融着、熱圧着点(ポイントボンディング)法等の熱融着法が挙げられる。繊維ウェブを熱処理して接合させる一例としては、芯に高融点の樹脂を使用し鞘に低融点の樹脂を使用する鞘芯型の複合繊維の場合、低融点の樹脂の融点付近で熱処理することで、繊維交点の熱接着を容易に行なうことができる。
熱接着させる工程を含む不織布の製造方法としては、繊維処理剤が付与された短繊維をカード機等に通しウェブとしたものを上述のように熱処理して接合させ一体化する方法、エアレイド法でパルプ等を積層する際に本発明の透水性繊維(短繊維)と混綿して、上述のように熱処理して接合させる方法等も挙げられる。その他、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等により得られた繊維成形体に対して、本発明の繊維処理剤を付着させたものを加熱ロールまたは加熱空気等で熱処理して、または加熱ロールまたは加熱空気等で熱処理したものに本発明の繊維処理剤を付着させて、不織布を製造する方法も挙げられる。
【0042】
スパンボンド法の一例としては、複合繊維樹脂を紡糸し、次に、紡出された複合長繊維フィラメントを冷却流体により冷却し、延伸空気によってフィラメントに張力を加えて所期の繊度とする。その後、紡糸されたフィラメントを捕集ベルト上に捕集し、接合処理を行ってスパンボンド不織布を得る。接合手段としては、加熱ロールまたは超音波による熱圧着、加熱空気による熱融着、熱圧着点(ポイントボンディング)法等がある。
得られたスパンボンド不織布に本発明の繊維処理剤を付与する方法としては、グラビア法、フレキソ法、ゲートロール法等のロールコーティング法、スプレーコーティング法等で行うことができるが、不織布への塗布量を片面ずつ調節できるものであれば特に限定されるものではない。また、繊維処理剤が付与された不織布の乾燥の方法としては、熱風および赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよい。
【0043】
本発明の不織布において、透水性を発揮する対象の液体としては、尿、軟便、泥状便、水様便、血液、体液、滲出液等が挙げられる。本発明の不織布の用途としては、乳児用使い捨ておむつ、介護用使い捨ておむつ、生理用品、包帯、絆創膏、消毒布、サージカルテープ等の衛生材料用途、ペット用排泄シート、芳香剤の吸液芯、液体防虫剤の吸液芯、清掃布等の日用品用途、コーヒーフィルター、水切りシート等の食品関連用途等が挙げられる。
【実施例
【0044】
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、各実施例、比較例における評価項目と評価方法は以下の通りである。又、各実施例、比較例における処理剤の明細と評価結果を表1及び2にまとめて示す。処理剤の明細中、配合比率はいずれも重量%を表す。なお、実施例及び比較例において、透水性付与剤の各特性の評価は次の方法に従って行った。
(実施例1~8及び比較例1~5)
表1及び2に示す各成分及び水を混合して、透水性付与剤全体に占める不揮発分の重量割合が50重量%の実施例1~8、比較例1~5の繊維処理剤をそれぞれ調製した。得られた透水性付与剤をそれぞれ約60℃の温水で不揮発分の重量割合が0.9重量%の濃度になるよう希釈して希釈液を得た。
次に、繊維本体300gに対しそれぞれの透水性付与剤の希釈液150gをディップ給油法で付着させ、透水性繊維に付着する透水性付与剤の不揮発分の付着量を0.45重量%にした。繊維本体は、透水性付与剤等の繊維処理剤が付着していない、ポリプロピレン(芯)-ポリエチレン(鞘)系複合繊維であり、単繊維繊度が2.2Dtex、繊維長が38mmのものであった。それぞれの透水性付与剤の希釈液を付着させた繊維を、80℃の温風乾燥機の中に2時間入れた後、室温で8時間以上放置して乾燥させて、透水性繊維を得た。
【0045】
なお、表1及び2に示す各成分は次の通り。
化合物A1:グルコン酸
化合物a1:クエン酸
化合物B1:オクチルホスフェートカリウム塩
化合物B2:ラウリルホスフェートカリウム塩
化合物B3:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩
化合物B4:ジトリデシルスルホコハク酸ナトリウム塩
化合物C1:ソルビタンモノラウレート
化合物C2:ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノラウレート
化合物C3:ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタントリオレエート
化合物C4:グリセリンモノオクタネート
化合物C5:グリセリンジオクタネート
化合物D1:1,3-プロパンジオール
化合物D2:1,4-ブタンジオール
化合物D3:3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロパン-1,2-ジオール
化合物D4:1-O-オレイルグリセロール
化合物E :グルコース
化合物F1:ポリオキシエチレン(20モル)カスターワックス
化合物F2:ポリオキシエチレン(20モル)カスターワックスのマレイン酸縮合物の水酸基1モル当量あたりステアリン酸1モル当量で封鎖したエステル
化合物G :ポリオキシエチレン変性シリコーン
【0046】
得られた透水性繊維をそれぞれ開繊工程およびカード試験機を用いたカード工程に通し、目付25g/mのウェブを作製した。その際、それぞれの透水性繊維について、下記に示す評価方法でカード工程における物性(制電性)を評価した。得られたウェブをエアースルー型熱風循環乾燥機中135℃で熱処理してウェブを固定し、不織布を得た。得られた不織布について、下記に示す評価方法で透水性評価した。その結果を表1及び2に示す。
【0047】
[溶液]
(pH)
各透水性付与剤の有効1重量%濃度エマルションのpHを測定した。pHが3以上6未満であると実用に供し得る。
【0048】
[給油工程]
(溶液安定性)
表1及び2に示す各成分及び水を混合して、透水性付与剤全体に占める不揮発分の重量割合が5重量%の実施例1~8、比較例1~5の繊維処理剤をそれぞれ調製した。それぞれの透水性付与剤の希釈液80gを100mL容量のガラス製スクリュー管瓶に入れ、25℃の恒温室内で静置させた。24時間後の溶液状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。3以上であると実用に供し得る。
〔判定基準〕
5 … 無色透明で均一な状態
4 … 青白く透明感があり、分離や沈殿がない状態
3 … 青白~白色の半透明であり、分離や沈殿がない状態
2 … 軽く振ると分散するが、わずかに分離や沈殿がある状態
1 … 激しく撹拌しないと分散しない分離や沈殿がある状態
【0049】
[製綿工程]
(スカム発生の有無)
製綿工程のスカム発生の代用評価として、ポリエステルフィラメントを用いてスカム評価を行った。
各透水性付与剤の有効10重量%濃度エマルションを市販のポリエステルフィラメント(200d/24f)の脱脂糸に定量ポンプを用いて、OPU=1.0%となるように給油した。
各透水性付与剤付着糸を40mmφ梨地クロムピン上、糸速度200m/分、入張力25g、接触角180度で一定長(10000m)走行させたときのピン上に蓄積するスカムの有無を肉眼で判定した。3以上であると実用に供し得る。
〔判定基準〕
5 … スカム発生が見られない
4 … スカム発生が僅かに見られる
3 … スカムが少し発生する
2 … スカム発生が見られる
1 … スカムの発生が多く見られる
【0050】
[カード工程]
(制電性)
カード試験機を用いて20℃×45%RHの条件で試料撥水性繊維40gをシリンダー回転数970rpm(設定可能な最高回転数)でミニチュアカード機に通す。発生した静電気の電圧を測定し、以下の基準で評価する。なお、5が最も良い評価であり、3以上であると実用に供し得る。
5 … 0.5kV未満
4 … 0.5~1.0kV
3 … 1.0kV超~1.5kV、
2 … 1.5kV超~2.0kV
1 … 2.0kVより大
【0051】
[不織布のpH]
各不織布の表面pHを、フラット型pH測定計を用いて測定し、以下の基準で評価する。○であると実用に供し得る。
〔判定基準〕
○ … pHが3以上6未満
× … pHが3未満または6以上
【0052】
[不織布の透水性]
(不織布の瞬時透水性)
不織布を濾紙(東洋濾紙、No.5)の上に重ね、不織布表面から10mmの高さに設置したビューレットより1滴(約0.05ml)の人工尿を滴下して、不織布表面から水滴が消失するまでの時間を測定する。不織布表面の20箇所でこの測定を行って5秒未満の個数を表示する。個数を以下の基準で評価する。なお、5が最も良い評価であり、3以上であると実用に供し得る。
〔判定基準〕
5 … 19個~20個
4 … 17個~18個
3 … 14個~16個
2 … 11個~13個
1 … 10個以下
【0053】
(不織布の耐久透水性)
EDANA法のRepeated Liquid Strike-Through Time法に従い、不織布(10cm×10cm)に0.9%生理食塩水を透水させ、透水時間を測定した。透水後、不織布を2枚の濾紙(東洋濾紙、No.5)の間に挟み、その上に板(10cm×10cm)と重り(500g)を乗せて3分間放置して脱水し、その後さらに5分間風乾した。
試験に供した不織布について、同様の作業を繰り返して行う。この繰り返し試験では回数を重ねても透水時間が短い方がよい。時間(秒数)を以下の基準で評価する。なお、5が最も良い評価であり、3以上であると実用に供し得る。
〔判定基準〕
5 … 2秒未満
4 … 2秒以上3秒未満
3 … 3秒以上5秒未満
2 … 5秒以上10秒未満
1 … 10秒以上
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び2から明らかなように、実施例1~8までの透水性付与剤は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有するため、溶液及び不織布が弱酸性化されており、耐久透水性及び給油工程の安定化に寄与する。
一方、比較例1~5では、成分(A)を含まない場合(比較例1、5)、成分(B)を含まない場合(比較例2、4)、成分(C)を含まない場合(比較例3)には、本願の弱酸性化、耐久透水性及び給油工程の安定化寄与のうち、少なくとも1つを解決できていない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の透水性付与剤を用いて処理した不織布製造用合成繊維及び不織布は、紙おむつや合成ナプキンを代表とする生理用品等の吸収性物品のトップシートに用いられる。その他、食品用途、医療用途、及び工業用途での吸水性シートを必要とする場面で使用することもできる。