(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】歩行車
(51)【国際特許分類】
A61H 3/04 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
A61H3/04
(21)【出願番号】P 2020084400
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】川村 満夫
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017115749(DE,A1)
【文献】特表2015-514539(JP,A)
【文献】特開平11-244345(JP,A)
【文献】特開2018-177130(JP,A)
【文献】特開2018-47048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0254630(US,A1)
【文献】特開平9-56511(JP,A)
【文献】実開平5-26507(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる鉛直軸を中心として旋回可能とされた左右一対の前輪と、
それら各前輪よりも後方に配置された左右一対の後輪とを備える歩行車であって、
前記前輪の上方には、
円板状に形成され、中心部に孔部を有する回転体が設けられており、
前記回転体は、
前記孔部に前記鉛直軸を挿通した状態で配設され、前記鉛直軸を中心として回転可能とされており、
前記回転体の半径は、前記鉛直軸の中心から前記前輪の前端部までの距離よりも大きくなっており、
前記回転体は、前記鉛直軸を挟むように設けられた第1部材及び第2部材を有して構成され、
前記第1部材及び前記第2部材は着脱可能に結合されていることを特徴とする歩行車。
【請求項2】
前記前輪の外径は前記後輪の外径よりも大きくされている、請求項
1に記載の歩行車。
【請求項3】
前記前輪及び前記後輪が取り付けられたフレーム体を備え、
前記前輪は、前記フレーム体の下方に配置されており、
前記後輪は、前記フレーム体の側面側に取り付けられており、
前記回転体は、前記前輪と前記フレーム体との間に配置されている、請求項1
又は2に記載の歩行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢者等が歩行する際の補助を行う歩行車が知られている。歩行車は、上下に延びる左右一対のフレーム部と、それら各フレーム部の下端側に設けられた前輪及び後輪とを備える(例えば特許文献1参照)。前輪は、鉛直方向に延びる鉛直軸を中心として旋回可能(回転可能)とされ、それにより歩行車の移動向きを変えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、歩行車は屋内において用いられる場合がある。しかしながら、屋内には周囲に壁等があるため、歩行車を移動させる際、前輪が壁等に当たって移動が困難になるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、屋内において好適に移動させることができる歩行車を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の歩行車は、鉛直方向に延びる鉛直軸を中心として旋回可能とされた左右一対の前輪と、それら各前輪よりも後方に配置された左右一対の後輪とを備える歩行車であって、前記前輪の上方には、上下方向に延びる回転軸を中心として回転可能とされた回転体が設けられており、前記回転体は、前記前輪よりも前方にはみ出た部分と、前記前輪よりも左右方向外側にはみ出た部分とのうち少なくともいずれかを有していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前輪の上方に、上下方向に延びる回転軸を中心として回転可能な回転体が設けられている。この回転体は、前輪よりも前方にはみ出た部分と、前輪よりも左右方向外側にはみ出た部分とのうち少なくともいずれかを有している。回転体が前輪よりも前方にはみ出ている場合には、屋内にて歩行車を前進させた際、前輪よりも先に回転体を壁に当てることができる。この場合、回転体を壁に当てた状態で回転させながら歩行車を転回することができるため、屋内にて歩行車を転回させ易くすることができる。また、回転体が前輪よりも左右方向の外側にはみ出ている場合には、回転体を壁に沿って回転させながら歩行車を移動させることができる。この場合、屋内において歩行車を直進させ易くすることができる。よって、以上より、屋内において歩行車の移動を好適に行うことが可能となる。
【0008】
第2の発明の歩行車は、第1の発明において、前記回転体は、前記前輪よりも前方にはみ出しているとともに、前記前輪よりも左右方向外側にはみ出していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、回転体が前輪よりも前方にはみ出しているとともに、前輪よりも左右方向の外側にはみ出しているため、屋内において歩行車を転回させ易くすることができるとともに直進させ易くすることができる。これにより、屋内にて歩行車の移動をより好適に行うことができる。
【0010】
第3の発明の歩行車は、第1又は第2の発明において、前記前輪の外径は前記後輪の外径よりも大きくされていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、前輪の外径が後輪の外径よりも大きくされているため、それに応じて前輪の上方に配置される回転体の高さ位置を高い位置に設定することができる。これにより、回転体を壁に当てて歩行車を転回させたり直進させたりする際、その転回又は直進を安定した状態で行うことができる。
【0012】
第4の発明の歩行車は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記前輪及び前記後輪が取り付けられたフレーム体を備え、前記前輪は、前記フレーム体の下方に配置されており、前記後輪は、前記フレーム体の側面側に取り付けられており、前記回転体は、前記前輪と前記フレーム体との間に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、回転体が前輪とフレーム体との間に配置されているため、回転体を前輪の直上に無理なく配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】キャスタ周辺を拡大して示す斜視図であり、(a)が回転体を取り外した状態で示しており、(b)が回転体を取り付けた状態で示している。
【
図5】(a)が回転体を斜め上方から見た斜視図であり、(b)が回転体を斜め下方から見た斜視図である。
【
図6】(a)が回転体を構成する第1部材を斜め下方から見た斜視図であり、(b)が第2部材を斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】屋内にて歩行車を移動させる際の回転体の作用を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、歩行車として、屋内で用いられる屋内用の歩行車について具体化している。
図1は、その歩行車10を斜め前方から見た斜視図である。また、
図2は歩行車10を示す側面図であり、
図3は歩行車10を示す平面図である。以下、これら
図1~
図3に基づいて、歩行車10の構成について説明する。なお、以下の説明では、歩行車10を移動させる際の移動方向を前後方向とし、その前後方向に対して直交する方向を左右方向として説明を行う。
【0016】
図1~
図3に示すように、歩行車10は、上下方向に延びる左右一対のフレーム部11と、各フレーム部11の下端側に設けられたキャスタ12及び後輪13とを備える。各フレーム部11は連結部材14を介して互いに連結されている。この場合、それら各フレーム部11によりフレーム体が構成されている。
【0017】
フレーム部11は、アルミニウム等の軽金属により形成されている。フレーム部11は、その下部に設けられ前後方向に延びる下部フレーム15と、下部フレーム15の中間部から上方に延びる縦フレーム16とを有する。下部フレーム15には、その長手方向の中間部に曲げ部17が形成されている。この曲げ部17により、下部フレーム15において曲げ部17よりも前側部分15aが前後方向に水平に延びている一方、曲げ部17よりも後側部分15bが後方に向けて下方傾斜して延びている。これにより、下部フレーム15の前端部は下部フレーム15の後端部よりも高い位置に位置している。また、縦フレーム16は上下方向に延びており、詳しくは若干後方に傾斜した状態とされている。縦フレーム16の下端部は下部フレーム15の曲げ部17に連結されている。
【0018】
キャスタ12は、下部フレーム15の前端部に取り付けられている。キャスタ12は、前輪18と、鉛直方向に延びる鉛直軸19(
図4や
図8参照)とを有して構成されている。キャスタ12は、鉛直軸19を中心として回転可能(旋回可能)とされ、それにより、歩行車10の移動する向きを変えられるようになっている。また、前輪18は、その外径が後輪13の外径よりも大きくされている。
【0019】
後輪13は、下部フレーム15の後端部に取り付けられている。後輪13は、下部フレーム15の外側の側面側に取り付けられている。後輪13は、左右方向に延びる回転軸13aを有し、その回転軸13aを介して下部フレーム15に回転可能に取り付けられている。
【0020】
各フレーム部11には、縦フレーム16の上端側にハンドル21とアームレスト22とブレーキレバー23とロックレバー24とが設けられている。ハンドル21は、使用者が歩行車10を移動させる際に把持する部分であり、縦フレーム16から前方に突出して設けられている。また、アームレスト22は、使用者が歩行車10を移動させる際に使用者の腕を支える部分であり、縦フレーム16から後方に突出して設けられている。
【0021】
ブレーキレバー23とロックレバー24とは縦フレーム16の上端側に取付部25を介して取り付けられている。ブレーキレバー23は、ブレーキ操作を行うためのものであり、ハンドル21の下方に設けられている。また、ロックレバー24は、歩行車10の移動を禁止するロック操作を行うためのものである。ブレーキレバー23が取付部25から前方に突出して設けられているのに対し、ロックレバー24は取付部25から後方に突出して設けられている。
【0022】
各フレーム部11の縦フレーム16の間には座部31が設けられている。座部31はシート状に形成され、その座部31の上には後方から腰掛けることが可能となっている。また、座部31の下面側には物を収容可能な収容かご34が設けられている。また、ハンドル21の下方には物を載せ置くことが可能なトレイ35も設けられている。
【0023】
次に、キャスタ12周辺の構成について
図4に基づいて説明する。
図4は、キャスタ12周辺を拡大して示す斜視図である。
図4において(a)は後述する回転体40を取り外した状態で示しており、(b)は回転体40を取り付けた状態で示している。
【0024】
図4(a)に示すように、キャスタ12は、上述した前輪18及び鉛直軸19に加え、これら前輪18及び鉛直軸19が取り付けられた本体部36を有して構成されている。本体部36は、鋼板により形成され、前輪18を挟んで左右に対向する一対の側板部36aと、前輪18の上方で各側板部36aの上端部を連結して設けられる上板部36bとを有している。前輪18は、左右方向に延びる回転軸18aを有し、その回転軸18aを介して本体部36の各側板部36aに回転可能に取り付けられている。
【0025】
鉛直軸19は、円形断面を有する金属製の軸であり、その下端側が本体部36の上板部36bに取り付けられている。詳しくは、鉛直軸19には、その下端側に鉛直軸19の外周面から突出するフランジ部37が設けられ、そのフランジ部37よりも下端側に外周面におねじが形成されたねじ部(図示略)が設けられている。鉛直軸19のねじ部は上板部36bに設けられた孔部(図示略)に上方から挿通され、その挿通状態でねじ部には上板部36bの下方からナット44が締結されている。これにより、フランジ部37とナット44とにより上板部36bが挟み込まれた状態となっており、それによって鉛直軸19が上板部36bに固定されている。
【0026】
フレーム部11において下部フレーム15の前端部には軸ホルダ38が固定されている。軸ホルダ38は、金属材料により上下方向に延びる筒状(詳しくは円筒状)に形成されている。軸ホルダ38の内側にはキャスタ12の鉛直軸19が下方から挿入されている。鉛直軸19は、かかる挿入状態で軸ホルダ38に回転可能に支持されている。これにより、キャスタ12が鉛直軸19を中心として回転可能とされている。また、鉛直軸19が軸ホルダ38に挿入された状態において、軸ホルダ38の直下に位置するキャスタ12の本体部36(詳しくは上板部36b)と軸ホルダ38との間には所定の隙間が存在している。なお、
図4中の符号39は、軸ホルダ38の上端開口を塞ぐキャップ39である。
【0027】
図4(b)に示すように、各キャスタ12の前輪18の上方には回転体40が設けられている(
図1~
図3も参照)。以下、この回転体40に関する構成について
図4(b)に加え、
図5~
図7を用いながら説明する。
図5は、(a)が回転体40を斜め上方から見た斜視図であり、(b)が回転体40を斜め下方から見た斜視図である。
図6は、(a)が回転体40を構成する第1部材41を斜め下方から見た斜視図であり、(b)が第2部材42を斜め下方から見た斜視図である。また、
図7は、キャスタ12及び回転体40を下方から見た図である。なお、
図4(b)では、回転体40の一部である第1部材41を取り外した状態で示している。
【0028】
図5(a)及び(b)示すように、回転体40は、硬質樹脂により円板状に形成されている。回転体40は、その中心部に厚み方向に貫通する孔部43を有している。孔部43は、その孔形状が円形状とされている。
【0029】
回転体40は、
図4(b)に示すように、その孔部43にキャスタ12の鉛直軸19を挿通させた状態で前輪18の上方に配設されている。回転体40は、かかる配設状態において、鉛直軸19を回転中心として回転可能とされている。回転体40は、前輪18と、前輪18の上方に配置された下部フレーム15及び軸ホルダ38との間に配置されている。したがって、回転体40は、前輪18の直上に配置されている。なお、鉛直軸19が特許請求の範囲に記載の「回転軸」に相当する。
【0030】
詳しくは、回転体40は、その内周部(孔部43の周縁部)をキャスタ12の本体部36(上板部36b)と軸ホルダ38との間に入り込ませた状態で配置されている。鉛直軸19の外周側において本体部36と軸ホルダ38との間には回転体40を受ける受け部材46が設けられている。受け部材46は硬質樹脂により円筒状に形成され、その内側に鉛直軸19を挿通させた状態で取り付けられている。受け部材46は、その下部に径方向外側に突出したフランジ部46aを有している。フランジ部46aは受け部材46の周方向全域に亘って設けられている。
【0031】
回転体40は、その孔部43に受け部材46の上部(及び鉛直軸19)を挿通させた状態で配置され、その配置状態で内周部がフランジ部46aの上に載置されている。これにより、回転体40は、かかる載置状態で受け部材46(詳しくは上部)の外周面に沿って回転されるようになっている。この場合、回転体40は、受け部材46を介して鉛直軸19に回転可能に取り付けられている。
【0032】
回転体40は、
図7に示すように、前輪18よりも前方にはみ出たはみ出し部分40aを有している。回転体40の半径は鉛直軸19の中心から前輪18の前端部までの前後方向の距離よりも大きくなっている。これにより、回転体40の一部が上記はみ出し部分40aとなっている。
【0033】
また、回転体40は、前輪18よりも左右方向の外側にはみ出たはみ出し部分40bを有している。はみ出し部分40bは、そのはみ出し寸法(左右方向の長さ寸法)が前輪18の幅よりも大きくなっている。このはみ出し部分40bにより回転体40は歩行車10において最も左右方向の外側にはみ出している(
図3参照)。
【0034】
なお、本歩行車10では、回転体40が前輪18の上方に配置されている一方、後輪13の上方には配置されていない。
【0035】
続いて、回転体40を鉛直軸19に着脱可能に取り付けるための構成について説明する。
【0036】
回転体40は、鉛直軸19をその両側から挟むように設けられた第1部材41及び第2部材42を有して構成されている。第1部材41は、
図6(a)に示すように、全体として円板状に形成されている。第1部材41には、厚み方向に貫通する切り欠き状の開口部51が形成されている。開口部51は、第1部材41の中心部から径方向の外側に延び当該第1部材41の外周部にて開放されている。
【0037】
第2部材42は、第1部材41の開口部51に配置されている。第2部材42は、切り欠き状の開口部51において、その奥側の一部を除く領域全体に亘って配置されている。この場合、開口部51において第2部材42が配置されていない上記一部の領域により孔部43が形成されている。
【0038】
第2部材42は、開口部51に配置された状態で、第1部材41に着脱可能に結合されている。この結合に関する構成として、第1部材41には、開口部51を挟んだ両側に被係合部としての係合孔53が形成されている。各係合孔53は、第1部材41の径方向(換言すると回転体40の径方向)に延びるスリット状をなしており、第1部材41を厚み方向に貫通している。一方、第2部材42には、
図6(b)に示すように、第1部材41の係合孔53に係合可能な係合部としての爪部54が設けられている。爪部54は第2部材42の下面側に設けられ、係合孔53ごとに複数(2つ)ずつ配置されている。これら各爪部54が係合孔53に係合されることで、第1部材41と第2部材42とが着脱可能に結合されている。そして、これら各部材41,42が着脱可能とされていることで、回転体40が鉛直軸19に着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0039】
なお、第2部材42には、各爪部54の間に係合孔53に挿入可能な挿入部55がさらに設けられている。挿入部55は、第2部材42の下面側に突出する壁状をなし、係合孔53に沿って延びている。
【0040】
続いて、上述した回転体40の作用について説明する。ここでは、屋内において歩行車10を移動させる際における回転体40の作用について
図8に基づき説明する。
図8は、屋内にて歩行車10を移動させる際の回転体40の作用を説明するための図である。
【0041】
図8(a)では、使用者Uが歩行車10を前進させることで歩行車10を居室61から廊下62に出入口63を通じて移動させる様子を示している。この場合、歩行車10の回転体40には前輪18よりも前方にはみ出たはみ出し部分40aが設けられているため、そのはみ出し部分40aが前輪18よりも先に廊下62の壁65に当たることになる。
【0042】
はみ出し部分40aが壁65に当たった後、
図8(b)に示すように、回転体40を壁65に沿って回転させながら歩行車10を転回させる。この場合、回転体40の回転を利用して歩行車10を容易に転回させることができる。
【0043】
歩行車10の転回により、歩行車10の向きが歩行車10の前後方向が廊下62の延びる方向と同じとなる向きになったら、歩行車10を廊下62に沿って移動させる。この場合、
図8(c)に示すように、回転体40には前輪18よりも左右方向外側にはみ出たはみ出し部分40bが設けられているため、回転体40を壁65に沿って回転させながら歩行車10を直進させることができる。そのため、歩行車10を廊下62において容易に直進させることができる。
【0044】
また、図示は省略するが、使用者Uが廊下62を直進中に、歩行車10をUターンさせて反対の方向に戻る場合も想定される。その場合、歩行車10のUターンは、回転体40を壁65に沿って回転させながら行うことができるため、歩行車10のUターンを容易に行うことができる。
【0045】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0046】
上述したように、前輪18の上方に設けた回転体40に前輪18よりも前方にはみ出た部分40aと前輪18よりも左右方向外側にはみ出た部分40bとをそれぞれ設けたことで、屋内において歩行車10を転回させ易くすることができるとともに、歩行車10を直進させ易くすることができる。これにより、屋内において歩行車10の移動を好適に行うことが可能となる。
【0047】
前輪18の外径を後輪13の外径よりも大きくしたため、それに応じて前輪18の上方に配置される回転体40の高さ位置を高い位置に設定することができる。これにより、回転体40を壁に当てて歩行車10を転回させたり直進させたりする際、その転回又は直進を安定した状態で行うことができる。
【0048】
フレーム部11の下方に前輪18が配置されている構成において、回転体40を前輪18とフレーム部11との間に配置したため、回転体40を前輪18の直上に無理なく配置することができる。
【0049】
回転体40の回転軸としてキャスタ12の鉛直軸19を用いたため、回転体40の回転軸を別途設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。また、鉛直軸19は前輪18を回転(旋回)させるための軸であるため、回転体40に前輪18よりも前方にはみ出た部分40aと、前輪18よりも左右方向外側にはみ出た部分40bとを設ける上で、設計上等の点で好都合である。
【0050】
回転体40を、鉛直軸19を挟むように設けられた第1部材41及び第2部材42を有して構成し、それら各部分41,42を着脱可能に結合した。この場合、回転体40を鉛直軸19に着脱可能に取り付けることができる。そのため、回転体40を新しいものに交換したり回転体40を後付けしたりする際に、キャスタ12の鉛直軸19を軸ホルダ38から取り外すことなく、回転体40の交換、後付けを行うことができる。
【0051】
回転体40を、歩行車10において最も左右方向の外側にはみ出るように設けた。この場合、回転体40を壁に沿って回転させながら歩行車10を直進させる際、その直進をよりし易くすることができる。
【0052】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、回転体40が前輪18よりも前方にはみ出た部分(はみ出し部分40a)と、前輪18よりも左右方向外側にはみ出た部分(はみ出し部分40b)との両方を有していたが、これを変更して、回転体が前輪18よりも前方にはみ出た部分と前輪18よりも左右方向外側にはみ出た部分とのうちいずれか一方だけを有する構成としてもよい。回転体が前輪18よりも前方にはみ出た部分を有する構成とすれば、屋内にて歩行車を転回させ易くすることができる。また、回転体が前輪18よりも左右方向外側にはみ出た部分を有する構成とすれば、屋内において歩行車を直進させ易くすることができる。
【0054】
・上記実施形態では、回転体40を着脱可能に結合された複数の部材41,42により構成したが、これを変更して、回転体を一の部材により構成してもよい。この場合、回転体について構成の簡素化を図ることができる。ただ、この場合、回転体40が鉛直軸19に着脱不能に取り付けられるため、回転体40の交換性等を考慮すると、回転体40は複数の部材41,42により構成するのが望ましい。
【0055】
・上記実施形態では、回転体40を鉛直軸19に受け部材46を介して取り付けたが、回転体40を受け部材46を介さず鉛直軸19に直接取り付けてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、回転体40を前輪18と軸ホルダ38との間に配置したが、回転体40を軸ホルダ38の上方に配置してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、キャスタ12の鉛直軸19を回転体40の回転軸として用いたが、鉛直軸19とは別に上下方向に延びる軸部を設け、その軸部を回転体40の回転軸として用いるようにしてもよい。この場合、例えば、かかる軸部をフレーム部11の下部フレーム15に取り付けることが考えられる。
【0058】
・上記実施形態では、回転体40を円板状に形成したが、回転体を球状に形成する等、他の形状としてもよい。また、上記実施形態では、回転体40を硬質樹脂材料により形成したが、回転体をゴム材料や金属材料等、他の材料により形成してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、前輪18の外径を後輪13の外径よりも大きくしたが、前輪18の外径を後輪13の外径と同じか又はそれよりも小さくしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…歩行車、11…フレーム部、13…後輪、18…前輪、19…回転軸としての鉛直軸、40…回転体、40a…はみ出し部分、40b…はみ出し部分。