(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】担体分離装置、担体分離装置の運転方法、多段担体分離装置、および嫌気性処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 29/01 20060101AFI20240122BHJP
C02F 3/28 20230101ALI20240122BHJP
C02F 3/10 20230101ALI20240122BHJP
【FI】
B01D29/04 510B
C02F3/28 A
C02F3/28 B
C02F3/10 Z
B01D29/04 520E
B01D29/04 530A
B01D29/04 520D
(21)【出願番号】P 2020086239
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松林 未理
(72)【発明者】
【氏名】蒲池 一将
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利宏
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 裕一
(72)【発明者】
【氏名】加納 一憲
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-217449(JP,A)
【文献】特開2009-220096(JP,A)
【文献】特開平09-183038(JP,A)
【文献】実開昭56-062108(JP,U)
【文献】特開2014-124538(JP,A)
【文献】特開2018-144008(JP,A)
【文献】特開2013-240768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04,35/08-37/08
C02F 3/28-3/34
C02F 3/02-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽と、該外槽の内部に収容し、微生物を保持する担体を含む処理水の旋回流を内部に発生させるための、曲面形状の旋回流形成部および側壁部を含む区画部で形成された内槽と、を備えた分離槽と、
前記旋回流の側方の前記側壁部に配置され、前記担体を分離した処理水を前記内槽から前記外槽へ透過させるスクリーンと、
前記担体を含む処理水を前記内槽へ流入する流入部と、
前記担体が分離された処理水を前記外槽から外部へ流出させる流出部と、
前記内槽の底部に設けられ、前記スクリーンで分離した担体を当該内槽から外部へ排出させるための担体排出部と、
を有し、
前記流入部に設けられ、前記担体を含む処理水の流入量を調整可能とし、当該流入量を一時的に減少ないし停止する流入調整部と、
前記内槽内の前記担体を含む処理水の排出量を調整可能とし、前記担体を含む処理水の排出量を増加させる排出調整部と、
の少なくともいずれか一方を有することを特徴とする担体分離装置。
【請求項2】
前記スクリーンの表面を摺動により洗浄するブラシと、
前記ブラシを前記スクリーンの表面で横方向に摺動させる摺動機構と、
前記摺動機構を作動させる駆動源と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の担体分離装置。
【請求項3】
前記旋回流の旋回流速が80m/h以上であり、前記スクリーンでの処理水の透過流速の前記旋回流速に対する比が1以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の担体分離装置の運転方法。
【請求項4】
微生物を保持する担体および夾雑物を含む処理水中の当該担体および夾雑物を分離可能な多段担体分離装置であって、
前記多段担体分離装置は、第1分離装置と第2分離装置とを備え、
前記第1分離装置および前記第2分離装置は、それぞれ、外槽および内槽を備える分離槽と、前記担体を含む処理水を前記内槽へ流入する流入部と、前記担体が分離された処理水を前記外槽から外部へ流出させる流出部と、
を備え、
前記外槽は、内部に前記内槽を収容し、
前記内槽は、内部で、前記担体を含む処理水の旋回流を発生させるための曲面形状の旋回流形成部および側壁部を含む区画部と、前記側壁部に設けられ
たスクリーンと、で形成され、
前記スクリーンは、前記第1分離装置と前記第2分離装置とに設けられ、前記旋回流の側方に配置され、夾雑物または担体が分離された処理水を前記内槽から前記外槽へ透過させ、且つ、当該第1分離装置の当該スクリーンの目開きが、当該第2分離装置の当該スクリーンの目開きより大きく、
前記第1分離装置の前記流出部と前記第2分離装置の前記流入部は連結され、
前記第1分離装置もしくは前記第2分離装置は、前記内槽の底部に設けられ、前記スクリーンで分離した担体を当該内槽から外部へ排出させるための担体排出部を有し、
前記第1分離装置もしくは前記第2分離装置の前記流入部に設けられ、前記担体を含む処理水の流入量を調整可能とし、当該流入量を一時的に減少ないし停止する流入調整部と、
前記内槽内の前記担体を含む処理水の排出量を調整可能とし、前記担体を含む処理水の排出量を増加させる排出調整部と、
の少なくともいずれか一方を備えたことを特徴とする多段担体分離装置。
【請求項5】
被処理水に含まれる有機物を分解し酸発酵処理水を得る酸発酵槽と、
前記酸発酵処理水を流入させ、当該酸発酵処理水
を微生物
が保持
される担体で嫌気性処理し
、該担体を含む処理水を得る反応槽と、
外槽と、該外槽の内部に収容し、前記担体を含む処理水の旋回流を内部に発生させるための、曲面形状の旋回流形成部および側壁部を含む区画部で形成された内槽と、を備えた分離槽と、
前記旋回流の側方の前記側壁部に配置され、前記担体を分離した処理水を前記内槽から前記外槽へ透過させるスクリーンと、
前記担体を含む処理水を前記内槽へ流入する流入部と、
前記担体が分離された処理水を前記外槽から外部へ流出させる流出部と、
前記反応槽と、前記内槽の底部に設けられ、前記担体を外部へ流出させる担体排出部と、を連結する連結部と、
を有し、
前記流入部に設けられ、前記担体を含む処理水の流入量を調整可能とし、当該流入量を一時的に減少ないし停止する流入調整部と、
前記内槽内の前記担体を含む処理水の排出量を調整可能とし、前記担体を含む処理水の排出量を増加させる排出調整部と、
の少なくともいずれか一方を備えたことを特徴とする嫌気性処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体分離装置、担体分離装置の運転方法、多段担体分離装置、および嫌気性処理装置に関し、特に担体を含む処理水を処理する能力の向上に資する技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
有機物を含有する廃水(有機性廃水)の処理方法として、有機性廃水を、非生物担体を保持する反応槽に通水して該担体に付着した嫌気性微生物により生物学的に処理する嫌気性処理法が、広く用いられている。特に、当該嫌気性処理法では、反応槽内にグラニュール汚泥や上記の担体を存在させ、有機性廃水を上向流通水させることで、高負荷高速処理を行うことができる。
【0003】
ところで、流動性の非生物担体を用いる方法では、担体に微生物が付着して担体の表面に生物膜が形成され、生物膜内部でガスが発生する反応が進行し、発生したガスが担体に付着する結果、担体の見かけ比重が小さくなって担体が反応槽内で浮上し、担体が分離された処理水と共に流出してしまうという問題がある。このような問題は、比重が大きく、沈降速度の大きい担体を用いることにより軽減することは可能である。しかし、比重が過度に大きく、沈降速度が過度に大きい担体では、被処理水との接触効率が悪く十分な処理効率が得られず、また、沈降した担体の堆積層に固形物が蓄積して流路が目詰まりするといった問題があり、一方で、このような問題のない担体を用いた場合、上述の発生ガスによる担体の浮上、流出を避けることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-110820号公報
【文献】特開2014-237102号公報
【文献】特開2009-220096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題に対して、例えば特許文献1、2に記載の装置では、反応槽内から流出した担体を反応槽の外部の別の槽(処理水槽)に溜め、そこで分離させた担体を循環配管等で再度反応槽に戻すことを可能とした装置が提案されている。当該装置では、反応槽の外部に、処理水槽とともに、担体から分離された気泡(メタンガス)を処理するための付帯設備も別途必要になるため、有機性廃水の処理装置として構成要素が多くなってしまったり、また設置面積が大きくなってしまうという問題があり、処理水中の固体を容易に分離する観点で十分ではなかった。
【0006】
また、反応槽内から処理水とともに担体などの固体が流出する問題に対しては、反応槽の外部に固体と処理水を分離するスクリーンを設けて、分離した固体を掻き寄せ機により集めて反応槽内に戻す方法も考えられるが、例えば硫化物を含む水に接触した掻き寄せ機が空気中にさらされることで、腐食してしまうという問題点もある。
さらに、その他、反応槽内にスクリーンを設け、固体が処理水とともに流出しようとしてもスクリーンで分離する方法も考えられるが、反応槽での処理を行う過程で、スクリーンに固体が目詰まりしやすく、それ防ぐためには別途の例えば散気動力などが必要となり得る。
【0007】
なお、特許文献3には、「流入する液体に含まれる固形物を分離する装置において、分離槽と、分離槽の内部を流入室と流出室に仕切る仕切板と、仕切板に設けたスクリーンと、流入室に形成された流入部と、流出室に形成された排出部とを備え、前記流入室には流入部から流入する液体を反転させて該流入室内に上下方向の旋回流を形成するための誘導部が設けられ、前記スクリーンは前記形成される旋回流の側面に沿うように配置されていることを特徴とする分離装置」が提案されている。しかし、この装置は、下水道管路を流れる排水や工場内の廃水処理施設等を流通する液体に含まれる固形物を分離するためのものであり、担体を含む処理水中から担体を分離するためには使用していない。
【0008】
そこで、本発明は、担体を含む処理水で旋回流を発生させることで、スクリーンへの担体の目詰まりを防止するとともに、担体を含む処理水から担体を容易に分離することが可能な担体分離装置、担体分離装置の運転方法、多段担体分離装置、および、廃水処理を効率的に行うことが可能な嫌気性処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の担体分離装置は、
外槽と、該外槽の内部に収容し、微生物を保持する担体を含む処理水の旋回流を内部に発生させるための、曲面形状の旋回流形成部および側壁部を含む区画部で形成された内槽と、を備えた分離槽と、
前記旋回流の側方の前記側壁部に配置され、前記担体を分離した処理水を前記内槽から前記外槽へ透過させるスクリーンと、
前記担体を含む処理水を前記内槽へ流入する流入部と、
前記担体が分離された処理水を前記外槽から外部へ流出させる流出部と、
を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の担体分離装置は、
前記スクリーンの表面を摺動により洗浄するブラシと、
前記ブラシを前記スクリーンの表面で横方向に摺動させる摺動機構と、
前記摺動機構を作動させる駆動源と、を有することが好ましい。
【0011】
本発明の担体分離装置の運転方法は、上記の担体分離装置の運転方法であって、
前記旋回流の旋回流速が80m/h以上であり、前記スクリーンでの処理水の透過流速の、前記旋回流速に対する比が1以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の多段担体分離装置は、微生物を保持する担体および夾雑物を含む処理水中の当該担体および夾雑物を分離可能な多段担体分離装置であって、
前記多段担体分離装置は、第1分離装置と第2分離装置とを備え、
前記第1分離装置および前記第2分離装置は、それぞれ、外槽および内槽を備える分離槽と、担体を含む処理水を前記内槽へ流入する流入部と、担体が分離された処理水を前記外槽から外部へ流出させる流出部と、を備え、
前記外槽は、内部に前記内槽を収容し、
前記内槽は、内部で、担体を含む処理水の旋回流を発生させるための曲面形状の旋回流形成部および側壁部を含む区画部と、前記側壁部に設けられスクリーンと、で形成され、
前記スクリーンは、前記旋回流の側方に配置され、夾雑物または担体が分離された処理水を前記内槽から前記外槽へ透過させ、
前記第1分離装置の前記流出部と前記第2分離装置の前記流入部は連結され、
前記第1分離装置の前記スクリーンは、前記第2分離装置の前記スクリーンよりも、目開きが大きいことを特徴とする。
【0013】
本発明の嫌気性処理装置は、
被処理水に含まれる有機物を分解し酸発酵処理水を得る酸発酵槽と、
前記酸発酵処理水を流入させ、当該酸発酵処理水の微生物を保持する担体で嫌気性処理し担体を含む処理水を得る反応槽と、
外槽と、該外槽の内部に収容し、前記担体を含む処理水の旋回流を内部に発生させるための、曲面形状の旋回流形成部および側壁部を含む区画部で形成された内槽と、を備えた分離槽と、
前記旋回流の側方の前記側壁部に配置され、前記担体を分離した処理水を前記内槽から前記外槽へ透過させるスクリーンと、
前記担体を含む処理水を前記内槽へ流入する流入部と、
前記担体が分離された処理水を前記外槽から外部へ流出させる流出部と、
前記反応槽と、前記内槽の底部に設けられ、前記担体を外部へ流出させる担体排出部と、を連結する連結部と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、担体を含む処理水で旋回流を発生させることで、スクリーンへの担体の目詰まりを防止するとともに、担体を含む処理水から担体を容易に分離することが可能な担体分離装置、担体分離装置の運転方法、多段担体分離装置、および、廃水処理を効率的に行うことが可能な嫌気性処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る担体分離装置を備える嫌気性処理装置を示す模式図である。
【
図2】
図1の担体分離装置を模式的に示す透視斜視図である。
【
図3】
図1の担体分離装置を、内槽を除いた状態で模式的に示す透視斜視図である。
【
図4】
図1の担体分離装置の内槽を模式的に示す透視斜視図である。
【
図5】
図1の担体分離装置を模式的に示す透視正面図である。
【
図6】
図1の担体分離装置を模式的に示す透視平面図である。
【
図7】
図1の担体分離装置を用いて処理水から固体を分離している状態を模式的に示す透視斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る担体分離装置を模式的に示す透視平面図である。
【
図9】
図8の担体分離装置を模式的に示す透視正面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る多段担体分離装置を模式的に示す透視正面図である。
【
図11】(a)~(g)は比較例として用いた反応槽を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の担体分離装置1は、例えば
図1に示すような嫌気性処理装置4において用いることができる装置であって、担体を含む処理水から担体を分離するためのものである。
具体的には、本実施形態の担体分離装置1を備えることができる嫌気性処理装置4は、食品工場等の製造廃水、化学工場等の有機性廃水、一般下水等の、有機物を含む有機性廃水を、嫌気性微生物と接触させて嫌気性処理を行う装置であり、有機性廃水を、非生物担体を保持する反応槽41に通水して該担体に付着した嫌気性微生物により生物学的に処理する。そして、本実施形態の担体分離装置1は、上記のような嫌気性処理装置4中の反応槽41で処理した処理水について、処理水中に担体が含まれ得ることから、処理水から担体を分離するために用いることができる。
なお、本実施形態の担体分離装置1は、
図1に示すような嫌気性処理するための嫌気性処理装置4への適用に限定されず、処理水から担体や固体を分離するための用途において本実施形態の担体分離装置1を用いることができる。また、当該嫌気性処理装置4の説明は、後述の本実施形態の嫌気性処理装置4の欄に詳説する。
【0017】
そして、本実施形態の担体分離装置1は、
図2に示すように、外槽11および内槽12を備える分離槽10と、担体を含む処理水を内槽12へ流入する流入部15と、担体が分離された処理水を外槽11から外部へ流出させる流出部16と、を備える。また、本実施形態の担体分離装置1では、外槽11は、内槽12を当該外槽11の内部に収容し、内槽12は、当該内槽12の内部に担体を含む処理水の旋回流(
図7を参照)を発生させるための曲面形状の旋回流形成部132および側壁部131を含む区画部13と、側壁部131に設けられスクリーン14と、で形成され、スクリーン14は、旋回流の側方に配置され、担体が分離された処理水を内槽12から外槽11へ透過させる。さらに、本実施形態の担体分離装置1は、
図2に示すように、内槽12の底部に設けられ、スクリーン14で分離した担体を当該内槽12から外部へ排出させるための担体排出部17を備えることができる。
【0018】
本実施形態の担体分離装置1はこのような構成を有することにより、担体を含む処理水で旋回流を発生させることで、スクリーンへの担体の目詰まりを防止するとともに、担体を含む処理水から担体を容易に分離することができる。
具体的には、本実施形態の担体分離装置1は、外槽11および内槽12を備える分離槽10を備え、担体が分離された処理水を内槽12から外槽11へ透過させるスクリーン14が設けられていることから、担体を含む処理水中の担体を分離することができる。
この際、本実施形態の担体分離装置1は、内槽12を形成する区画部13として曲面状の旋回流形成部132を有していることから、
図7に示すように、担体を含む処理水が流入した後、内槽12の内部に担体を含む処理水の旋回流を発生させることができる。そして、本担体分離装置1においてスクリーン14が当該旋回流の側方に配置されていることから、処理水中の担体が処理水の旋回時の遠心力によって旋回流の内外に担体の偏在が生じて、スクリーン14への担体の目詰まりを低減することができ、それにより、処理水が、担体が分離された状態でスクリーン14を透過しやすくなる。
なお、旋回流が生じることによって、内槽12内での担体の水面への浮き上がりも防止することができる。
したがって、本実施形態の担体分離装置1によれば、担体を含む処理水で旋回流を発生させることで、スクリーンへの担体の目詰まりを防止するとともに、担体を含む処理水から担体を容易に分離することができる。また、本実施形態の担体分離装置1は、上記のように、構成要素が多くないので簡易で複雑でない構造であり、省スペースな装置とすることができ、清掃などのメンテナンスも容易に行うことができる。
さらに、担体分離装置1は、担体排出部17を備えることにより、処理水に含まれていた担体、すなわち、スクリーン14から外槽11へ透過せず旋回流によって集められた担体を、処理水内で濃縮された状態で容易に装置外へ排出させることができる。
【0019】
ここで、本実施形態において、処理水とは、上述のような有機物を含む有機性廃水を例えば嫌気性処理して得られる廃水(処理途中の廃液を含んでいてもよい)であり、例えばメタン発酵水である。処理水には浮遊汚泥や担体から剥離した生物膜が含まれ、系外に排出しないと反応槽内に過剰に蓄積し、担体の流動性が低下することで処理が悪化する恐れがある。担体分離装置1に流入する処理水は、微生物を保持する担体を含むものであり、処理水の組成や濃度には特に限定されない。
【0020】
担体としては、微生物を担持して、担体表面で微生物を繁殖させることができるものであれば特に制限無く用いることができる。
担体の形状は、球状、円柱状、直方体、中空状などいずれの形状でもよいが、微生物の担持量、繁殖した微生物と有機性廃水との接触効率、嫌気性反応槽内での担体の保持量などを考慮して、特に球状が好ましい。
担体の寸法は、平均値(球状粒子の場合には中位径d50、他の形状の場合には最大寸法と最小寸法との算術平均値)で0.1mm以上20mm以下が好ましく、2mm以上10mm以下が好ましい。
担体は、微生物が付着しやすい細孔を有する多孔質担体であることが好ましく、細孔径は1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
また、担体は、嫌気性反応槽内にて良好に流動させる観点から、未使用の担体を充填した直径80mmの円筒カラムに清水を上向流で上昇線速度(LV)を1m/h以上20m/h以下で通水した場合の膨張率(投入時担体高さに対する通水時担体高さ)が、105%以上150%以下、LV2m/h以上15m/h以下で通水した場合の膨張率110%以上130%以下となることが好ましい。
担体の材料は、嫌気性微生物が付着すればどのような材料でもよいが、上述の諸要件を充足することから、特に活性炭、ポリビニルアルコール、エチレングリコールなどが好ましい。
担体の比重は、1.001以上1.5以下であることが好ましく、1.01以上1.5以下であることがより好ましい。このように、担体の比重が比較的大きいことが、担体分離装置1の内槽12内に沈降しやすいことから望ましい。
【0021】
続いて、本実施形態の担体分離装置1の構造についてより詳細に説明する。
本実施形態の担体分離装置1は、
図2に示すように分離槽10を備える。当該分離槽10は地中に埋設してもよく、地上に設置することもできる。分離槽10は、後述する区画部13等を除いた状態の
図3に示すように、底部111と側部112とによって区画される略直方体状の箱型とすることができ、内部に、担体を含む処理水を導入する空間を有する。
底部111には、窪み113が形成されており、後述するように、内槽12内の担体を担体排出部17に導き出し易い形状となっている。
図示の例では、当該窪み113は、図の上下方向下方から上方に向かって窪み113の開口部が広がるように窪み113の側面が傾斜しており、截頭錐体状(漏斗のような形状)となっている。
また、分離槽10は、上方に開口部を有するとともに、当該開口部は着脱自在な蓋部(図示せず)で閉じることができる。
分離槽10は、図示の例では直方体状に形成されているが、特にその形状は任意にすることができる。
【0022】
また、分離槽10は、耐食性を有する材料で形成されていることが好ましく、例えばコンクリート、ステンレスなどの金属、FRP(繊維強化プラスチック)、またはポリエチレンなどの樹脂で形成することができる。或いは分離槽10は、コンクリートで分離槽10の外枠を形成し、その内側に、上記の金属、FRP、または樹脂で内面を形成することもできる。
【0023】
担体分離装置1は、
図2に示すように、例えば反応槽からの担体を含む処理水を分離槽10内、具体的には内槽12内に流入させるための流入部15を備える。流入部15は、
図3に示すように、分離槽10の外部から延びて分離槽10の側部112に開口部を有する配管とすることもできるが、分離槽10の外部から内槽12の内部まで伸びる配管とすることもできる。また、流入部15は、分離槽10の外部から分離槽10の開口部付近まで延びる配管とし、担体を含む処理水が分離槽10の開口部を介して流し込まれるように形成することもできる。
また、流入部15は、図示は省略するが、担体を含む処理水の流入量を調整可能なポンプや弁などの流入調整部を有することができる。
流入部15は、耐食性を有する材料で形成されていることが好ましく、例えばステンレスなどの金属で形成することができる。
【0024】
担体分離装置1は、
図2に示すように、担体が分離された処理水を分離槽10内、具体的には外槽11内から流出させるための流出部16を備える。流出部16は、
図3に示すように、分離槽10の側部112に開口部を有し分離槽10の外部へ延びる配管とすることもできるが、外槽11内で開口し分離槽10の外部へ延びる配管とすることもできる。また、流出部16は、内槽12内から分離槽10の開口部を介して外部へ延びる配管とし、担体が分離された処理水を例えばポンプ等で吸引して外部へ流出するように形成することもできる。
また、流出部16は、図示は省略するが、担体を含む処理水の流出量を調整可能なポンプや弁などの流出調整部を有することができる。
流出部16は、耐食性を有する材料で形成されていることが好ましく、例えばステンレスなどの金属で形成することができる。
【0025】
担体分離装置1は、
図2に示すように、内槽12の底部に設けられた、スクリーン14で分離した担体を当該内槽12から外部へ排出させるための担体排出部17を備えることができる。担体排出部17を設けることにより、処理水に含まれていた担体、すなわち、スクリーン14から外槽11へ透過せず旋回流によって集められた担体を、処理水内で濃縮された状態で容易に装置外へ排出させることができる。また、その際、担体を沈殿させるための槽を別途設ける必要もない。
なお、担体排出部17は、
図3に示すように、分離槽10の底部111、より具体的には窪み113内に形成することができ、分離槽10の底部111に開口部を有し分離槽10の外部へ延びる配管とすることができる。
また、担体排出部17は、耐食性を有する材料で形成されていることが好ましく、例えばステンレスなどの金属で形成することができる。
【0026】
分離槽10の内部には、
図2に示すように、区画部13の側壁部131と旋回流形成部132とが設けられており、それにより、分離槽10の内部に、外槽11が内槽12を内部に収容するように、内槽12を区画形成している。そして、そのように区画形成された内槽12には、その内部に、例えば反応槽から流入部15を介して流入した担体を含む処理水が存在する空間であって、主に、担体を含む処理水によって旋回流が形成される空間S1(
図5において符号S1をつけて破線で囲む範囲。以下、旋回流形成空間S1とも称す。)と、沈降しつつある担体を集める空間S2(
図5において符号S2をつけて破線で囲む範囲。以下、担体回収空間S2とも称す。)とが形成され得る。担体回収空間を設けることで、担体は旋回流速に巻き込まれずに沈降することができる。
また、外槽11には、その内部に、内槽12内の担体を含む処理水が後述するスクリーン14を透過して溜められる空間が形成され、外槽11に存在する担体が分離された処理水は流出部16から外部へ流出する。
このように、区画部13は、内槽12と外槽11とを、担体の分離前後の処理水が相互に混ざり合わないように区画している。
【0027】
本実施形態において、区画部13は、具体的には、
図2、
図4、
図5(分離槽10を正面から視た図)、
図6(分離槽10を上方から視た図)、
図7に示すように、内槽12の内部に担体を含む処理水の旋回流を発生させるための曲面形状の旋回流形成部132および側壁部131を含む。さらに図示の例では、流入部15から流入する担体を含む処理水を内槽12内に適切に導くために、区画部13は、旋回流形成部132および側壁部131の上部(図示の例では上下方向上方の部分)に形成される開口部の縁から延びる導板部133をさらに有する。
なお、区画部13は、耐食性を有する材料で形成されていることが好ましく、例えばステンレスなどの金属で形成することができる。
【0028】
側壁部131は、図示の例では、
図4、
図7等に示すように、流入部15からの担体を含む処理水の流入方向に沿う方向に表面が延びる1対の板状の部分である。より詳細には、側壁部131は、分離槽10の側部112から離間して位置し、内槽12内の旋回流形成空間S1の外周(側面)を区画している。
側壁部131は、その表面が流入部15から流入する担体を含む処理水の流入方向に沿う方向に延び、換言すれば、
図6に示すように、上方から視た際に、流入部15が延びる方向に沿う方向に側壁部131の表面が延びている。それにより、側壁部131は、担体を含む処理水が内槽12内に流入し旋回流が形成された際、旋回流の側方に位置することとなる(旋回流の全体形状を円柱状と仮定した場合、旋回流の流れ方向が円柱の曲面に沿う方向となる。旋回流の側方とは円柱の底面側となる)。
また、側壁部131は、後述のスクリーン14を保持しており、スクリーン14が
図5に示すように、側壁部131の中央に位置している。また、側壁部131の上下方向下端は、分離槽10の底部111の窪み113の開口部に位置している。
【0029】
なお、側壁部131の表面が「担体を含む処理水の流入方向に沿う方向に延びる」や「流入部が延びる方向と沿う方向に延びる」とは、側壁部131の表面が延びる方向が、担体を含む処理水の流入方向と厳密に同じ方向である必要はなく、例えば、角度15°以下程度のずれがあることは許容され得、好ましくは7°以下である。また、図示の例では、スクリーン14が側壁部131の中に設けられているが、本実施形態においては、側壁部131がすべてスクリーン14で形成されていてもよい。
また、側壁部131は、図示の例では1対の板状の部分となっているが、例えば内槽12を、分離槽10の側部112の一方側に寄せて配置する場合などには、側壁部131は1つの板状の部分と、分離槽10の側部112と、することもできる(すなわち、分離槽10の側部112を区画部13の側壁部131として兼用することもできる。)。
【0030】
旋回流形成部132は、図示の例では、
図4等に示すように、1対の側壁部131のそれぞれに隣接する1対の板状の部分である。より詳細には、旋回流形成部132は、分離槽10の側部112から離間して位置し、内槽12内の旋回流形成空間S1の外周(側面)を区画している。旋回流形成部132は、その表面が側壁部131に直交するように設けられており、
図6に示すように、上方から視た際に、流入部15が延びる方向に直交する方向に旋回流形成部132の表面が延びている。
また、
図5に示すように、1対の旋回流形成部132によって区画される内槽12の横方向の長さ(一方の旋回流形成部132の表面から他方の旋回流形成部132の表面までの横方向長さ)が、内槽12の上下方向上方から下方に向かって漸増し、最大の長さとなった後、漸減している。
より具体的には、1対の旋回流形成部132は、
図5に示すように、円弧状の曲板となっており、1対の旋回流形成部132によって区画される内槽12は、正面視で略円形状または楕円状になっている。
なお、1対の旋回流形成部132は、相互に円弧の曲率半径が異なっており、1対の旋回流形成部132のうち、流入部15からの担体を含む処理水の流入方向前方にある旋回流形成部132の方が、流入方向後方にある旋回流形成部132よりも曲率半径が大きくなっているが、同じにすることもできる。
また、旋回流形成部132の上下方向下端は、分離槽10の底部111の窪み113の開口部に位置している。
【0031】
なお、旋回流形成部132の表面が「側壁部131に直交する」や「流入部15が延びる方向に直交する方向に延びる」とは、厳密にそれらが直交する必要はなく、例えば、角度15°以下程度のずれがあることは許容され得、好ましくは7°以下である。
前記旋回流形成部132は、円弧状の曲板(曲面R形状)により形成されているため、内槽での流動をスムーズにして良好な旋回流を形成させる効果があるが、従来技術における内槽が直方体で構成された場合や、旋回流形成のため平面板を用いた場合では、隅の部分で流れに停滞が発生、旋回流速が低下し、スクリーンの洗浄効果を低下させることで閉塞しやすくなる。
更に、旋回流形成部132を曲面とすることで、旋回流の際に、担体が曲面に当たり、接触するので衝撃をやわらげ担体に損傷を与えることが低減され、また担体に付着した生物膜の過剰な剥離を抑制することができる効果があり、過度な壁面への衝突を低減し、担体に付着した生物膜を過剰に剥離させることを防止する。
【0032】
分離槽10の内槽12では、上述のように、流入部15から流入した担体を含む処理水で旋回流が形成されることが可能である。当該旋回流は、旋回流形成部132によって形成することができ、具体的には、
図7に示すように、流入した担体を含む処理水が旋回流形成部132の表面にあたり、担体を含む処理水が旋回するように誘導されることで旋回流が形成される。
なお、本実施形態において、旋回流形成部132は、担体を含む処理水で旋回流を形成可能であれば、形状等は特に限定されない。
【0033】
導板部133は、図示の例では、
図2、
図4、
図7に示すように、流入部15から流入する担体を含む処理水を内槽12内に適切に導くために設けられており、側壁部131および旋回流形成部132の上部に形成される開口部の縁から、横方向に延びる横板部134と、上下方向に延びる縦板部135とを有する。横板部134および縦板部135は、内槽12および外槽11内の担体を含む処理水と担体が分離された処理水の混ざり合いを防ぐとともに、流入部15から流入する担体を含む処理水を、側壁部131および旋回流形成部132の上部に形成される開口部まで導くことができる。
【0034】
また、分離槽10の内槽12を区画形成する区画部13は、旋回流が形成されて沈降しつつある担体を集める空間S2を区画形成する部分を有することができ、図示の例では、当該窪み113を、当該空間S2を区画する部分として有ることができる。そして、この例では、窪み113は、
図2、
図4に示すように、側壁部131および旋回流形成部132の上下方向下方(鉛直方向下方)に配置されており、担体は、
図7に示すように、側壁部131および旋回流形成部132により形成される旋回流形成空間S1内で、旋回流に乗って偏在した後に当該窪み113内に沈降し得る。
本実施形態においては、内槽12内の、担体を集める部分は、当該窪み113に代えて、側壁部131および旋回流形成部132の上下方向下方に連結する、例えば金属板で形成された漏斗状の回収板部(図示せず)を設けることによっても形成することができる。
【0035】
尚、区画部13としての空間S2を区画形成する部分は、担体を外部へ排出させるための担体排出部17と連結されていることが好ましい。具体的には、
図3に示すように、図示の例では、窪み113の底部に担体排出部17が形成されている。
【0036】
担体分離装置1は、
図2等に示すように、区画部13の側壁部131に設けられ、担体を分離するとともに担体を含む処理水を内槽12から外槽11に透過させるスクリーン14を備える。具体的には、スクリーン14は、特に制限されるものではないが、パンチングメタル、ウエッジワイヤー、金網等、その目開きが分離対象の担体の寸法に対して小さければ、任意のものを使用することができる。スクリーン14としては、担体の寸法よりも小さい目開きを用いることが好ましい。具体的には、担体の寸法の25~90%、より好ましくは40~80%とする。
また、スクリーン14の材料は、耐腐食性の材料であることが好ましく、例えばステンレスとすることができる。
【0037】
スクリーン14は、区画部13に、具体的には区画部13の中でも、旋回流の側方に配置されるように設けられている。スクリーン14は、図示の例のように、区画部13が側壁部131を有するときは、側壁部131の中央に少なくとも設けられている。
また、スクリーン14の大きさは、装置の運転条件、担体を含む処理水中の分離すべき担体の大きさ等によって任意にすることができる。また、図示の例では、スクリーン14は、1対設けられているが、いずれか一方だけであってもよい。
【0038】
担体分離装置1は、
図2や
図3等に示すように、分離槽10の底部111にドレン排水部19を備えることができ、これにより、担体分離装置1の運転を停止して分離槽10内の清掃や点検等の際に、残留する担体が分離された処理水などを排水することができる。ドレン排水部19は、分離槽10の底部111に開口部を有し分離槽10の外部へ延びる、例えばステンレスなどの金属製の配管とすることができる。
【0039】
担体分離装置1は、図示は省略するが、分離槽10内に水位を測定可能なセンサを備えることができる。具体的には、センサは、分離槽10内でも内槽12内に設けることができる。前記担体分離装置1は、スクリーンの目詰まりが生じにくい特徴を持っているが、担体表面の生物膜の状態や、異物の流入によって目詰まりすることがある。仮にスクリーン14が担体や異物によって目詰まりを起こした場合、それによって内槽12内の水位が上昇することが想定されるが、水位を測定しモニターすることで、担体を含む処理水が内槽12から溢れ出すことを防止することができる。また、水位が上昇した場合には、スクリーン14面の目詰まりを開放するための制御を行ったり、流入部15を閉止するなどを行うことができる。
なお、図示の例の担体分離装置1において、通常運転時では、水位は、区画部13の側壁部131および旋回流形成部132によって形成される開口部付近の高さに位置にすることができる。
【0040】
担体分離装置1は、図示は省略するが、内槽12内の担体を含む処理水の排出量を調整する排出調整部をさらに備えることができる。具体的には、排出調整部は、担体排出部17に設けることもでき、この場合、担体排出部17からの担体を含む処理水の排出量を、排出調整部としてのポンプや弁で調整することができる。或いは、担体排出部17に、担体排出部17から分岐するドレン配管とドレン配管の開閉を調整する弁とを排出調整部として設けることができ、当該弁を制御することで、担体排出部17からの担体を含む処理水の排出量を調整することができる。或いは、図示は省略するが、内槽12の上下方向下方に、具体的には、分離槽10の底部111のうち内槽12内に位置する部分に、内槽12内に開口するドレン配管と、ドレン配管の開閉を調整する弁とを排出調整部として設けることができ、当該弁を制御することで、内槽12内の担体を含む処理水の排出量を調整することができる。
【0041】
このように、担体分離装置1が排出調整部を備えることで、例えば、スクリーン14に担体が目詰まりした場合に、スクリーン14を洗浄することができる。具体的には、例えば、担体分離装置1を運転中において、排出調整部によって担体を含む処理水の排出を増加させることで、内槽12内に存在する担体を含む処理水の量を減少させることができるが、それにより、スクリーン14を介して内槽12から外槽11へ透過する担体を含む処理水の量が減少し或いは担体が分離された処理水が外槽11から内槽12へ逆流するので、スクリーン14に目詰まりした担体を取り除くことができる。
【0042】
ここで、本発明の他の実施形態の担体分離装置2では、上述の担体分離装置1の構成に加えて、担体分離装置2は、
図8や
図9に示すように洗浄部21を備える。当該洗浄部21は、スクリーン14の表面に沿って移動することで、スクリーン14に目詰まりした担体を取り除いて、洗浄することができる。
【0043】
洗浄部21は、詳細には、
図8および
図9に示すように、スクリーン14の表面を摺動により洗浄するブラシ22と、当該ブラシ22をスクリーン14の表面で横方向に摺動させる摺動機構と、摺動機構を作動させる駆動源26を有する。
ブラシ22は、図示の例では上下方向に延びる姿勢で設けられており、その長さが、スクリーン14の上下方向の長さよりも長くなっている。なお、図示の例ではブラシ22は2つであるが、任意の数とすることができる。
また、摺動機構は、ブラシ22をスクリーン14の内槽内側の表面に沿って移動させることができれば特に限定されないが、1対の環状のベルト24と、ベルト24を内槽内に支持するローラ25とを有している。
具体的には、ローラ25が、内槽内を上下方向に延びる姿勢で、1対のスクリーン14の横方向端部付近に4本設置され、1対の環状のベルト24が、4本のローラ25の周囲に取り付けられている。1対のベルト24は、
図9に示すように、スクリーン14よりも上下方向上方と下方に位置するようにローラ25の下端付近と上端付近に取り付けられ、また、ブラシ22の両方の端部と接続している。
さらに、駆動源26は、摺動機構を作動させるものであり、図示の例では、1対のベルト24を回転移動させるように設けられている。
このように、洗浄部21がブラシ22と摺動機構と駆動源26を有することにより、ブラシ22がスクリーン14の表面を掃くように周回移動し、スクリーン14に目詰まりした担体を取り除いて、スクリーン14を洗浄することができる。
【0044】
なお、図示の例では、洗浄部21は、スクリーン14の内槽内側に設けられており、スクリーン14の内槽内側の表面に沿って移動しているが、洗浄部を、スクリーン14の外槽側(内槽外側)に設けて、スクリーン14の外槽側の表面に沿って移動して洗浄するようにしてもよい。
【0045】
続いて、本実施形態の多段担体分離装置について説明する。
本実施形態の多段担体分離装置3は、微生物を保持する担体および夾雑物を含む処理水中の当該担体および夾雑物を分離可能な装置であり、上述の本発明の実施形態の担体分離装置1を複数連結して備えるものである。
具体的には、本実施形態の多段担体分離装置3は、
図10に示すように、第1分離装置31と第2分離装置32とを備え、第1分離装置31と第2分離装置32とは、スクリーンの目開き以外、上述の本発明の実施形態の担体分離装置1と同様な構成を有することができる。より具体的には、第1分離装置31および第2分離装置32は、それぞれ、外槽11および内槽12を備える分離槽10と、担体を含む処理水を内槽12へ流入する流入部15、34と、担体が分離された処理水を外槽11から外部へ流出させる流出部33、16と、を備え、外槽11は、内部に、内槽12を収容し、内槽12は、内部で、担体を含む処理水の旋回流を発生させるための曲面形状の旋回流形成部132および側壁部131を含む区画部13と、側壁部131に設けられスクリーン14と、で形成され、スクリーン14は、旋回流の側方に配置され、夾雑物または担体が分離された処理水を内槽12から外槽11へ透過させる。
そして、第1分離装置31の流出部33と第2分離装置32の流入部34は連結され、第1分離装置31のスクリーン14は、第2分離装置32のスクリーン14よりも、目開きが大きくなっている。
【0046】
本実施形態の多段担体分離装置3がこのような構成を有することにより、スクリーンへの担体の目詰まりを防止するとともに、担体を含む処理水から担体を容易に分離することができる。より詳細には、担体を含む処理水中には、処理前の有機性廃水(原水)由来の夾雑物が含まれていたり、処理過程で外部から混入した夾雑物が含まれることがある。担体として担体だけでなく夾雑物も含んだ状態の処理水について、1つの担体分離装置で分離しようとする場合には、担体がスクリーンを通過しないようにスクリーンの開口を比較的小さくすることとなり、夾雑物がスクリーンを目詰まりしやすくなる。そして、スクリーンが目詰まりした場合には、スクリーンの清掃等のメンテナンスを行う必要が生じる。
それに対して、本実施形態の多段担体分離装置3では、第1分離装置31のスクリーン14の目開きが、第2分離装置32のスクリーン14の目開きよりも大きいので、担体を含む処理水中の夾雑物については、第1分離装置31で分離させることができる。また、担体については、第1分離装置31でスクリーンを通過し、担体を含む処理水として第1分離装置31の流出部より流出した後、第2分離装置32で分離させることができる。
すなわち、本実施形態の多段担体分離装置3によれば、スクリーンの清掃等のメンテナンスを効率化するとともに、処理水から夾雑物や担体をそれぞれ容易に分離して装置3外に取り出すことができる。
【0047】
ここで、本実施形態において、第1分離装置31でのスクリーンの目開きは第2分離装置32でのスクリーンの目開きよりも大きくなっているところ、第1分離装置31でのスクリーンは、目開きが担体の寸法の120%以上であることが好ましい。また、第2分離装置32でのスクリーンは、担体の寸法よりも小さい目開きを用いることが好ましい。具体的には、担体の寸法の25~90%、より好ましくは40~80%とする。
尚、酢酸、乳酸、プロピオン酸、メタノール、エタノールなどの炭素数5以下の低分子有機物を40%以上含む場合は、酸発酵が不要となるため、酸発酵槽42はpH調整槽として機能させたり、不要となる場合がある。
【0048】
尚、本実施形態において、第1分離装置31では、夾雑物を回収して排出し、担体は透過させる。第2分離装置32では、担体を回収して返送し、担体が分離された処理水と微細汚泥を透過させる。
【0049】
次いで、本実施形態の担体分離装置の運転方法について説明する。
本実施形態の担体分離装置の運転方法は、上記の本発明の実施形態の担体分離装置1を用いて行う運転方法であって、担体を含む処理水の旋回流の旋回流速が80m/h以上であり、スクリーン14での担体を含む処理水の透過流速の、旋回流速に対する比(透過流速/旋回流速)が1以下である。
より詳細には、担体分離装置1の運転は、
図7に示すように、担体分離装置1の流入部15より担体を含む処理水を内槽12内に流入させて、処理水の流入によって処理水で旋回流を形成させ、次いで、スクリーン14で担体を分離して担体が分離された処理水を外槽11に流入させ、そして、外槽11中の担体が分離された処理水を流出部16から流出させることで、行われる。その際、本実施形態の担体分離装置1の運転方法では、担体を含む処理水の旋回流の流速を80m/h以上とし、スクリーン14での担体を含む処理水の透過流速の、旋回流速に対する比(透過流速/旋回流速)を1以下とする。
本実施形態の担体分離装置の運転方法において、上記の条件で運転することにより、スクリーン14への担体の目詰まりを防止するとともに、担体を含む処理水から担体を容易に分離することができる。
【0050】
ここで、本実施形態においては、担体分離装置1の流入部15から流入される処理水の流入量を7m3/h以上とすることが好ましい。また、内槽12内での旋回流速を80m/h以上とすることが好ましい。上記の流速にすることにより、スクリーン14への担体の目詰まりをより防止するとともに、担体を含む処理水から担体をより容易に分離することができる。
また、本実施形態の担体分離装置の運転方法では、担体分離装置1が担体排出部17を備えることは必須ではないが、備えることが好ましい。
【0051】
また、透過流速の旋回流速に対する比は、0.5以下であることが好ましい。当該比を0.5以下とすることにより、スクリーン14への担体の目詰まりをより抑制することができる。
また、当該比は、0.1以上であることが好ましい。当該比を0.1以上とすることにより、分離した処理水量を低下させすぎないようにすることができる。
【0052】
尚、本明細書において、旋回流の流速とは、流入部15により流入する担体を含む処理水の流入流量Q(m
3/h)を、旋回流半径R(m)と旋回流幅W(m)とを乗じた値で除した値(m/h)を指す(すなわち、旋回流の流速(m/h)=Q(m
3/h)÷(R(m)×W(m)))。
また、透過流速とは、流入流量Q(m
3/h)を、スクリーン14の面積A(m
2)で除した値(m/h)を指す(すなわち、透過流速(m/h)=Q(m
3/h)÷A(m
2))。
また、上記の旋回流半径R(m)とは、担体分離装置1を正面から視たときにおける(例えば
図5)、内槽12内の、旋回流が形成される空間(旋回流形成空間S1)の面積を求め、当該面積を円と仮定して算出した半径とすることができ、また、例えば
図5に示すように、旋回流が形成される空間が、旋回流形成部132で区画される場合には、旋回流の中心と、当該中心からより離間して位置する方の旋回流形成部132(
図6では左側の旋回流形成部132)の内表面と、を水平方向に測った長さとすることもできる。
さらに、上記の旋回流幅W(m)とは、旋回流の側方から区画する区画物(例えば側壁部131など)の内表面間の距離であり、例えば
図2に示すように、旋回流の側方に、1対の側壁部131に設けられた1対のスクリーン14がある場合には、
図6に示すように、スクリーン14の表面間の距離とすることができる。
また、上記のスクリーン14の面積A(m
2)は、スクリーンが存在する領域の面積であって、ワイヤなどの骨子部分を含んだ面積である。
【0053】
上記の旋回流の流速およびスクリーン14での透過流速は、特に限定されないが、流入部15により流入する担体を含む処理水の流入流量Q(m3/h)を調整したり、スクリーン14の面積Aを調整したり(具体的には、スクリーン14自体の大きさを変更したり、スクリーン14の目開きを調整)することにより、調整することができる。
【0054】
ところで、本実施形態の担体分離装置1の運転方法において、上記の運転条件によって担体等のスクリーン14への目詰まりは低減可能であるが、以下のような洗浄工程を有することができる。
具体的には、洗浄工程において、流入部15に、担体を含む処理水の流入量を調整可能な流入調整部(図示は省略)を設けるとともに、当該流入調整部により、担体を含む処理水の流入量を一時的に減少ないし停止する。スクリーン14に目詰まりしている担体は、担体を含む処理水がスクリーン14を透過する際の水圧で目詰まりしているのであるが、流入量を一時的に減少ないし停止させることにより、スクリーン14での透過流速、およびそれに伴って担体を含む処理水の透過による水圧が低下し、スクリーン14に目詰まりしていた担体を沈降させてスクリーン14を洗浄することができる。
また、上記の流入調整部による調整に代えて、或いは、それに加えて、担体分離装置1に、内槽12内の担体を含む処理水の排出量を調整することができる排出調整部を設けるとともに、排出調整部により、担体を含む処理水の排出量が増加するように調整する。これにより、流入調整部により担体を含む処理水の流入量を一時的に減少ないし停止するように調整した場合と同様に、スクリーン14での透過流速を低下させて、スクリーン14を洗浄することができる。
尚、排出調整部での調整は、担体排出部17に設けた、排出調整部としてのポンプや弁を調整すること、或いは、担体排出部17に、担体排出部17から分岐するドレン配管とドレン配管の開閉を調整する弁とを排出調整部として設けて、当該弁を制御すること、或いは、内槽12の上下方向下方に、具体的には、分離槽10の底部111のうち内槽12内に位置する部分に、内槽12内に開口するドレン配管と、ドレン配管の開閉を調整する弁とを排出調整部として設けて、当該弁を制御すること、等によって行うことができる。
【0055】
また、他の洗浄工程としては、
図8や
図9に示すように、担体分離装置2に洗浄部21を備えさせ、当該洗浄部21を用いることによっても、スクリーン14を洗浄することができる。
さらに、その他の洗浄工程としては、機械洗浄(高圧ノズルジェット水、スプリンクラー、掻き寄せ機等)を分離槽10に設け、当該機械洗浄を用いて洗浄することができる。
本実施形態において、洗浄工程は、タイマー設定等によって定期的に実施したり、または、水位を測定可能なセンサを用いて、水位が所定の水位以上になった場合に実施したりすることができる。
【0056】
続いて、本実施形態の嫌気性処理装置について説明する。
本実施形態の嫌気性処理装置4は、
図1に示すような、有機性廃水を処理するための装置であり、具体的には、食品工場等の製造廃水、化学工場等の有機性廃水、一般下水等の、有機物を含む有機性廃水を、嫌気性微生物と接触させて嫌気性処理を行う装置である。
より詳細には、本実施形態の嫌気性処理装置4は、微生物を保持する担体で嫌気性処理し担体を含む処理水を得る反応槽41と、担体を含む処理水を流入し、当該処理水中の担体を分離した処理水を流出する担体分離装置1と、を備える。また、嫌気性処理装置4は、任意で、被処理水に含まれる有機物を分解し酸発酵処理水を得る酸発酵槽42を備えることができる。
また、本実施形態の嫌気性処理装置4において、担体分離装置1は、先述の本発明の実施形態の担体分離装置1であって、内槽12の底部に設けられた、スクリーン14で分離した担体を外部へ流出させる、担体排出部17を備える装置を用いることができる。さらに、本実施形態の嫌気性処理装置4では、担体排出部17と反応槽41とが連結部(連結ライン(図示の例ではラインL5、L4))で連結される。
【0057】
本実施形態において、具体的には、酸発酵槽42は、廃液などの被処理水に含まれる有機物を分解し酸発酵処理水を得る槽であるが、反応槽41の処理での前処理を行う槽として、廃水に含まれる有機物(高分子)を、酢酸やプロピオン酸といった低分子有機酸まで分解することができる。
酸発酵槽42で得られた酸発酵処理水は、酸発酵槽42と反応槽41とを連結するラインL4により、反応槽41に流出される。
【0058】
反応槽41では、被処理水(廃液または上記の酸発酵槽42を設ける場合には酸発酵処理水)を流入させ、当該被処理水を微生物を保持する担体で嫌気性処理し担体を含む処理水を得る。特に限定されないが、反応槽41は、反応槽41内にグラニュール汚泥や担体を含み、有機性廃水を上向流通水して、高負荷高速処理を行うことができる。嫌気性反応槽41(メタン発酵槽)では、嫌気性反応により発生するバイオガス(メタンガス)が嫌気性反応槽41内を上昇して、嫌気性反応槽41の上部から外部に排出されて回収される。このとき、微生物を保持している担体も一緒に上昇し、嫌気性反応槽41から越流として流出することがある。
尚、反応槽41では、
図1に示すように、反応槽41の上部と下部とをつなぐ循環ラインL1を設けて、循環させることもできる。
反応槽41は、機械式やガス撹拌による完全混合槽、上向流嫌気性汚泥床(UASB:Upflow Anaerobic Sludge Blanket)、UASB法の高負荷向け改良型として膨張汚泥床(EGSB:Expanded Granular Sludge Bed)や効率的な流動状態を有するガスコレクタと案内壁とバッフルを内部に備える反応槽に適用できる。
【0059】
担体分離装置1は、上記の本発明の実施形態の担体分離装置1であって、反応槽41で廃水が処理された後の、または処理中の担体を含む処理水が、ラインL2を通り、担体分離装置1の流入部を介して分離槽内に流入する。そして、担体分離装置1において、処理水中の担体が分離されて、担体が分離された処理水が流出部より流出し、また、分離された担体(担体が濃縮された処理水)が、担体排出部より排出される。
担体分離装置1の流出部より排出された担体が分離された処理水は、ラインL3を通って嫌気性処理装置4の外部に搬出することができる。また、ラインL3を通る担体が分離された処理水の一部は、ラインL6を通って、再度、酸発酵槽42に戻すこともできる。
【0060】
そして、本実施形態の嫌気性処理装置4では、担体分離装置1の担体排出部と反応槽41とが連結部(連結ライン)で連結されている。具体的には、
図1の例では、ラインL4に、担体分離装置1の担体排出部から延びるラインL5が合流し、それにより、担体分離装置1の担体排出部と反応槽41とが連結されている。
本実施形態の嫌気性処理装置4では、嫌気性処理装置4が担体分離装置1を備え、また、担体分離装置1の担体排出部と反応槽41とが連結ラインで連結されていることから、効率的に廃水処理を行うことができる。具体的には、有機性廃水を担体を用いて嫌気性処理する場合には、処理水とともに担体も反応槽41から流出することがあるが、嫌気性処理装置4が担体分離装置1を備えるので、容易に担体を分離し排出させることができる。
そして、排出した担体は、速やかに担体を反応槽41に戻すことができ、再び、廃水の処理に用いることができる。また、担体分離装置1により、容易に担体が分離された処理水を得ることができるので、嫌気性処理した担体が分離された処理水も容易に得ることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0062】
(検討1)
検討1では、
図2に示すような担体分離装置に、担体を含む処理水を所定の条件で3時間流入させて、担体が分離された処理水を得られるかを検証した。その結果を表1に示す。
なお、処理水は、反応槽内で、有機性廃水をポリビニルアルコールのゲル状担体を用いて嫌気性処理を行った後の廃水である。また、担体分離装置のスクリーンは、寸法が0.25m
2、目開きが2mmである。担体を含む処理水の流入量、旋回流の流速、透過流速は下記表の通りである。
さらに、スクリーンが目詰まりしたかどうかは、内装内部における水位上昇の目視確認の方法で判断した。
【0063】
【0064】
表1よりわかるように、内槽内での旋回流速を80m/h以上にした実験例2、3は、旋回流速を80m/h以下とした実験例1と比較して、スクリーンの目詰まりがなく、担体を分離した処理水を容易に効率よく得ることができた。
【0065】
(検討2)
検討2では、検討1と同様な方法で反応槽で有機性廃水を嫌気性処理し、担体が分離された処理水を得るために、様々な分離方法を用いて検討した。その際、分離のために採用した各分離方法に付随して用いた装置や設備についてのメンテナンス性、導入コスト、耐腐食性、また、分離の際に用いたスクリーンの目詰まりの有無の観点で、各分離方法を評価した。その結果を下記表2に示す。
尚、当該検討2は、検討1と同様に、3時間行った。反応槽内の処理水は、有機性廃水をポリビニルアルコールのゲル状担体を用いて嫌気性処理を行った後の廃水である。また、スクリーンを用いる場合には、用いたスクリーンは、寸法が0.25m2、目開きが2mmである。
【0066】
実施例1では、担体を分離するために
図2に示すような担体分離装置を用い、検討1での実験例3と同じ条件で運転した。
比較例1では、
図11(a)に示すように、反応槽51aとは別の分離槽52aを用いて、担体の分離を行った。具体的には、反応槽51aから流出した担体を含む処理水を分離槽52aに流入させ、次いで、分離槽52aでの担体の分離を、担体を含む処理水で旋回流を発生させずに、流出部の手前に傾斜させて配置されたスクリーン53aに透過させることで行った。なお、反応槽51aからの流出量は12m
3/hとした。
比較例2では、
図11(b)に示すように、反応槽51b内の流出部の開口部を覆うようにスクリーン53bを設け、担体を含む処理水をスクリーン53bに透過させることで、担体の分離を行った。なお、反応槽51bからの流出量は12m
3/hとした。
比較例3では、
図11(c)に示すように、反応槽51cとは別の分離槽52cを用いて担体の分離を行った。具体的には、反応槽51cから流出した担体を含む処理水を分離槽52cに流入させる前に担体に付着したメタンガス等の気泡を気液分離管を用いて分離して、担体が分離槽52c内に沈降しやすいようにした。そして、担体が沈降し分離された状態となった処理水を、流出部の手前に配置されたスクリーン53cに透過させることで担体が分離された処理水を得た。なお、反応槽51cからの流出量は12m
3/hとした。
比較例4では、
図11(d)に示すように、反応槽51dとは別の分離槽52dを用いて行った。具体的には、分離槽52dには、槽内の底部に担体が沈降する沈降部が設けられている。反応槽51dから流出した担体を含む処理水を分離槽52dに流入させ、次いで、分離槽52d内の沈降部で担体を沈降させつつ、分離槽52dでの担体の分離を、担体を含む処理水で旋回流を発生させずに、流出部の手前に配置されたスクリーン53dに透過させることで担体の分離を行った。なお、反応槽51dからの流出量は12m
3/hとした。
比較例5では、
図11(e)に示すように、反応槽51e内の水面付近に、スクリーン53eを設け、ポンプを用いて排出させた。スクリーン53eは、スクリーン53eの周囲に流入する処理水中に担体が含まれにくくする整流板で囲んだ。なお、反応槽51eからの流出量は12m
3/hとした。
比較例6では、
図11(f)に示すように、反応槽51fでの廃水の処理を、酸気装置を用いて上向流で行い、廃水を処理して生成した担体を含む処理水を反応槽51f外に流出させる際に、流出部の手前に傾斜させて配置されたスクリーン53fに透過させることで、担体の分離を行った。なお、反応槽51fからの流出量は12m
3/hとした。
比較例7では、
図11(g)に示すように、反応槽51gとは別の開放系の分離槽52gを用いて、担体の分離を行った。具体的には、分離槽52gの開口部にスクリーン53gを傾斜した状態で配置し、反応槽51gから流出した担体を含む処理水を当該スクリーン53gの上方からスクリーン53gに向けて流した。これにより、担体は、スクリーンを透過せずに濾されて分離槽52gから反応槽51gに戻される。担体が分離された処理水は、スクリーン53gを透過して、分離槽52gの流出部から流出させた。なお、反応槽51gからの流出量は12m
3/hとした。
【0067】
また、メンテナンス性、コスト、耐腐食性、目詰まりの有無の評価は下記の方法で行った。
メンテナンス性は、スクリーン部の点検において作業難易度で比較した。
コスト性は、建設費で比較した。
耐腐食性は、分離装置内部への外気(酸素)流入の有無で比較した。
目詰まりの有無は、スクリーン面の目詰まり頻度で比較した。
【0068】
【0069】
表2に示されるように、本発明に係る担体分離装置を用いることで、メンテナンス性、コスト性、耐腐食性、目詰まりの有無の観点で良好な結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、担体を含む処理水で旋回流を発生させることで、スクリーンへの担体の目詰まりを防止するとともに、担体を含む処理水から担体を容易に分離することが可能な担体分離装置、担体分離装置の運転方法、多段担体分離装置、および、廃水処理を効率的に行うことが可能な嫌気性処理装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
1、2:担体分離装置
10:分離槽
11:外槽
111:底部
112:側部
113:窪み
12:内槽
13:区画部
131:側壁部
132:旋回流形成部
133:導板部
134:横板部
135:縦板部
14:スクリーン
15、34:流入部
16、33:流出部
17:担体排出部
19:ドレン排水部
21:洗浄部
22:ブラシ
24:ベルト
25:ローラ
26:駆動部
3:多段担体分離装置
31:第1分離装置
32:第2分離装置
4:嫌気性処理装置
41:反応槽
42:酸発酵槽
51a、51b、51c、51d、51e、51f、51g:反応槽
52a、52c、52d、52g:分離槽
53a、53b、53c、53d、53e、53f、53g:スクリーン
L1:循環ライン
L2~L6:ライン
S1:旋回流形成空間
S2:担体回収空間
R:旋回流半径
W:旋回流幅