IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三栄水栓製作所の特許一覧

特許7423415合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型
<>
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図1
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図2
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図3
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図4
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図5
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図6
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図7
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図8
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図9
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図10
  • 特許-合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240122BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240122BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20240122BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C45/26
B29C33/44
B29C45/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020086497
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181162
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勉
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-236795(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220416(JP,U)
【文献】特開2007-276224(JP,A)
【文献】特開2001-260182(JP,A)
【文献】特開2012-131114(JP,A)
【文献】実開昭58-089309(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 45/26
B29C 33/44
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が13mmより小さく一定曲率で湾曲して100mm以上延びる円錐台形状の孔を有する合成樹脂製品の成形方法であって、
固定型と、該固定型に対して合体して前記合成樹脂製品の外形形状に相当する形状のキャビティを形成する可動型と、前記キャビティ内に出入可能に前記固定型に配設されるとともに内部に形成された空気孔に常時空気が通されて冷却された前記孔を形成するための入れ子部材と、を有する成形型を利用して、
前記キャビティ内に前記入れ子部材を配置した状態で溶融した合成樹脂を注入して冷却硬化させた後、前記入れ子部材を退出させるとともに前記固定型から前記可動型を離隔させて前記合成樹脂製品を脱型する合成樹脂製品の成形方法。
【請求項2】
請求項1において、前記孔は前記合成樹脂製品の外形形状に沿って延びており、
前記空気孔は前記キャビティ内に前記入れ子部材が配置された状態で前記孔に沿って延びている合成樹脂製品の成形方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記入れ子部材は中心線に沿って二つ割にした状態で前記中心線に沿って延びる溝を形成したのち合わせてパーティングラインを溶接することにより前記空気孔を形成する合成樹脂製品の成形方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記合成樹脂製品はシャワーヘッドである合成樹脂製品の成形方法。
【請求項5】
直径が13mmより小さく一定曲率で湾曲して100mm以上延びる円錐台形状の孔を有する合成樹脂製品の成形型であって、
固定型と、該固定型に対して合体して前記合成樹脂製品の外形形状に相当する形状のキャビティを形成する可動型と、前記キャビティ内に出入可能に前記固定型に配設された前記孔を形成するための入れ子部材と、を有し、
前記入れ子部材は、内部に形成された空気孔に常時空気が通されて冷却されており、前記固定型に対し前記可動型が合体された状態で前記キャビティ内に配置されて溶融した合成樹脂が前記キャビティ内に注入され、前記固定型に対し前記可動型が離隔する前に成形された前記合成樹脂製品から退出させられるものである合成樹脂製品の成形型。
【請求項6】
請求項5において、前記孔は前記合成樹脂製品の外形形状に沿って延びており、
前記空気孔は前記キャビティ内に前記入れ子部材が配置された状態で前記孔に沿って延びている合成樹脂製品の成形型。
【請求項7】
請求項5又は請求項6において、前記入れ子部材は中心線に沿って二つ割にした状態で前記中心線に沿って延びる溝を形成したのち合わせてパーティングラインを溶接することにより前記空気孔を形成する合成樹脂製品の成形型。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれか1項において、前記合成樹脂製品はシャワーヘッドである合成樹脂製品の成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型に関する。詳しくは、細く一定曲率で湾曲した孔を有する合成樹脂製品の成形方法及びそれに用いる成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製品であるシャワーヘッドは、内部に水を通すために細く一定曲率で湾曲した通水孔が設けられている。特許文献1に記載された技術においては、シャワーヘッドに通水路となる細く一定曲率で湾曲した通水孔を設けるのに射出成形の過程で中子を利用している。すなわち、可動型と固定型を合体させて設けた成形空間内に通水孔と同一形状の中子を配置した状態で、成形空間内に加熱溶融した合成樹脂材料を加圧注入して充填硬化させたのち、中子を除去し、可動型を後退させてシャワーヘッド製品を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術においては、成形のたびにシャワーヘッド製品から中子を抜き取るとともに、次の成形のために中子を冷却して成形空間内に再配置するという作業が必要であった。これによって、単位時間当たりの生産量が限られ生産効率が悪いという問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、細く一定曲率で湾曲した孔を有する合成樹脂製品を効率よく生産することができる成形方法及びそれに用いる成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、直径が13mmより小さく一定曲率で湾曲して100mm以上延びる円錐台形状の孔を有する合成樹脂製品の成形方法である。固定型と、該固定型に対して合体して前記合成樹脂製品の外形形状に相当する形状のキャビティを形成する可動型と、前記キャビティ内に出入可能に前記固定型に配設されるとともに内部に形成された空気孔に常時空気が通されて冷却された前記孔を形成するための入れ子部材と、を有する成形型を利用する。前記キャビティ内に前記入れ子部材を配置した状態で溶融した合成樹脂を注入して冷却硬化させた後、前記入れ子部材を退出させるとともに前記固定型から前記可動型を離隔させて前記合成樹脂製品を脱型することを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、通常成形の度ごとに型から取り外して冷却しなければならない入れ子部材を固定型に配設して空気を通して常時冷却した状態でキャビティ内に出入させることができる。これによって、合成樹脂施品を成形するたびに入れ子部材を型から取り外して冷却する必要がないので合成樹脂製品の生産を効率よく行うことができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記孔は前記合成樹脂製品の外形形状に沿って延びており、前記空気孔は前記キャビティ内に前記入れ子部材が配置された状態で前記孔に沿って延びていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、空気孔は孔の形状に相当する入れ子部材の外形形状に沿って設けられているので入れ子部材を効率的に冷却することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記入れ子部材は中心線に沿って二つ割にした状態で前記中心線に沿って延びる溝を形成したのち合わせてパーティングラインを溶接することにより前記空気孔を形成することを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、入れ子部材の中に中心線に沿って湾曲して延びる空気孔を簡便に形成することができる。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第1発明ないし上記第3発明のいずれかにおいて、前記合成樹脂製品はシャワーヘッドであることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、吐出させる水を供給する孔を小径に形成できるので握る部分の外径が小さく子供でも握りやすいシャワーヘッドを成形することができる。
【0014】
本発明の第5発明は、直径が13mmより小さく一定曲率で湾曲して100mm以上延びる円錐台形状の孔を有する合成樹脂製品の成形型である。固定型と、該固定型に対して合体して前記合成樹脂製品の外形形状に相当する形状のキャビティを形成する可動型と、前記キャビティ内に出入可能に前記固定型に配設された前記孔を形成するための入れ子部材と、を有する。前記入れ子部材は、内部に形成された空気孔に常時空気が通されて冷却されており、前記固定型に対し前記可動型が合体された状態で前記キャビティ内に配置されて溶融した合成樹脂が前記キャビティ内に注入され、前記固定型に対し前記可動型が離隔する前に成形された前記合成樹脂製品から退出させられるものであることを特徴とする。
【0015】
第5発明によれば、通常成形の度ごとに型から取り外して冷却しなければならない入れ子部材を固定型に配設して空気を通して常時冷却した状態でキャビティ内に出入させることができる。これによって、合成樹脂製品を成形するたびに入れ子部材を型から取り外して冷却する必要がないので合成樹脂製品の生産を効率よく行うことができる。
【0016】
本発明の第6発明は、上記第5発明において、前記孔は前記合成樹脂製品の外形形状に沿って延びており、前記空気孔は前記キャビティ内に前記入れ子部材が配置された状態で前記孔に沿って延びていることを特徴とする。
【0017】
第6発明によれば、空気孔は孔の形状に相当する入れ子部材の外形形状に沿って設けられているので入れ子部材を効率的に冷却することができる。
【0018】
本発明の第7発明は、上記第5発明又は上記第6発明において、前記入れ子部材は中心線に沿って二つ割にした状態で前記中心線に沿って延びる溝を形成したのち合わせてパーティングラインを溶接することにより前記空気孔を形成することを特徴とする。
【0019】
第7発明によれば、入れ子部材の中に中心線に沿って湾曲して延びる空気孔を簡便に形成することができる。
【0020】
本発明の第8発明は、上記第5発明ないし上記第7発明のいずれかにおいて、前記合成樹脂製品はシャワーヘッドであることを特徴とする。
【0021】
第8発明によれば、吐出させる水を供給する孔を小径に形成できるので握る部分の外径が小さく子供でも握りやすいシャワーヘッドを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態である合成樹脂製品の成形方法で成形されたシャワーヘッドの斜視図である。
図2図1におけるII-II矢視線断面図である。
図3】上記実施形態における成形型の要部の斜視図である。型を閉じた状態を示す。
図4】上記実施形態における成形型の要部の斜視図である。型を開いた状態を示す。
図5図3におけるV-V矢視線断面図である。
図6図4におけるVI-VI矢視線断面図である。
図7図5におけるVII-VII矢視線断面図である。
図8図6におけるVIII-VIII矢視線断面図である。
図9図5におけるIX-IX矢視線断面図である。
図10図5におけるX-X矢視線断面図である。
図11】上記実施形態における成形型の要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る合成樹脂製品の成形方法(以下、「成形方法」という。)及び合成樹脂製品の成形型(以下、「成形型」という。)について、図1図11を用いて説明する。以下の説明において、方向に関する説明は各図に示された上下前後左右の方向に基づいて行うものとする。
【0024】
まず、成形方法及び成形型によって成形される合成樹脂製品であるシャワーヘッド1について説明する。図1及び図2には、シャワーの先端に装着する合成樹脂製のシャワーヘッド1が示されている。シャワーヘッド1は、曲管状をしており吐出部2と、グリップ部3と、を有する。ここで、シャワーヘッド1が、特許請求の範囲の「合成樹脂製品」に相当する。
【0025】
吐出部2は、外形が略円柱状をしており内部に開口部2aを有する略円柱状の空洞部2bが形成されている。吐出部2の外形における円柱の中心軸CL1と、空洞部2bの中心軸CL1とは一致している。空洞部2bの開口部2aの側には、空洞部2bの中心軸CL1から径方向に離れた位置に中心軸CL1を同一とする円環状の溝部2cが形成されている。空洞部2bと溝部2cの間には円環状の立壁部2dが形成され、立壁部2dの溝部2cの面である外側面2d1には、空洞部2bの中心軸CL1と同一の中心軸CL1を有する雄ねじが形成されている。外側面2d1には、複数の貫通孔が設けられた略円盤状のシャワー板(図示せず)が螺合により取付けられるようになっている。空洞部2bの外周縁部には、径方向内側に向かって突出するとともに中心軸CL1の延びる方向に延びる複数のリブ2b1が周方向に等間隔で配設されている。複数のリブ2b1は、後述するようにシャワーヘッド1を脱型する時シャワーヘッド1が中心軸CL1の回りに回転しないように機能する。
【0026】
グリップ部3は、一定曲率で湾曲する中心軸CL2を有する略円筒状に形成されている。グリップ部3の内部には、中心軸CL2を有する湾曲した円錐台形状の通水孔3aが形成されている。通水孔3aの一端側は、第1開口3a1において吐出部2の空洞部2bの外周縁部に連通し、通水孔3aの他端側は、第2開口3a2において外部に開口している。詳しくは、通水孔3aの第1開口3a1は直径が6mmで第2開口3a2は直径が13mmとされ、第2開口3a2から第1開口3a1に向かって直径が徐々に減少するように形成されている。これは、後述するシャワーヘッド1の成形において通水孔3aを形成する入れ子体14f(図4参照)を周方向に脱型しやすくするためのものである。中心軸CL2に沿った第1開口3a1から第2開口3a2までの寸法は約130mmである。グリップ部3の第2開口3a2の側の端部は外形が縮径された縮径部3bとされ、縮径部3bには雄ねじが形成されている。これは、縮径部3bに図示しないシャワーホースの端部を取付けるためのものである。シャワーホースからグリップ部3の通水孔3aに供給された吐水は第1開口3a1を通って吐出部2の空洞部2bに供給され、シャワー板の複数の貫通孔を通って吐出される。ここで、通水孔3aが、特許請求の範囲の「孔」に相当する。
【0027】
図3図6及び図11にシャワーヘッド1を射出成形するための成形型10が示されている。この成形型10は、実際の型の要部であり実際の型は成形型10の外部を覆う部分を含んでいる。成形における型の作動については成形型10の部分のみで説明できるため成形型10について説明していく。
【0028】
成形型10は、固定型11と、固定型11に対し前後方向に開閉する可動型12と、を有する。図3及び図5に示すように、固定型11に対して可動型12を閉じたとき、吐出部2を下方に配置した姿勢のシャワーヘッド1の外形に相当するキャビティ13が形成される。図4及び図6に示すのは、固定型11に対して可動型12を開いたときの状態である。固定型11には、キャビティ13の中に入れ子体14fを出し入れする入れ子出入機構14と、シャワーヘッド1の吐出部2を成形する吐水部成形機構15と、が配設されている。また、固定型11と可動型12との間には、固定型11に対する可動型12の開閉の動きに連動して作動する縮径部成形機構16が配設されている。固定型11の上面部には、左右方向に延びて横断面が上方に開口する略U字状の移動制御溝11aが形成されている。移動制御溝11aは、後述する縮径部成形機構16における左右一対の副可動型16aの移動を制御する機能を有する。なお、固定型11と可動型12には内部に図示しない水を流す配管が配設されており、常に所定温度の水を流すことによって一定の温度に保たれている。
【0029】
入れ子出入機構14は、固定型11に対し図示しない部材を介して固定されたシリンダベース14aと、シリンダベース14aに取付けられたエアシリンダ14bと、エアシリンダ14bのピストンロッド14b1に取付けられたラック14cと、を有する。さらに、入れ子出入機構14は、ピニオン14dと、ピニオン14dに噛み合う弧状ギア14eと、弧状ギア14eの先端部に取付けられた入れ子体14fと、を有する。シリンダベース14aは、水平方向に延びる矩形状のベース板14a1と、ベース板14a1の上面側に上方に向かって対向して延びて配設された左右一対の矩形状の縦板14a2と、各縦板14a2の上端部間を架け渡し状に連結する矩形状の横板14a3と、を有する。横板14a3はベース板14a1と平行に延びて、上面視でその中央部にエアシリンダ14bが上方に向かって延びるように取付けられている。エアシリンダ14bのピストンロッド14b1は、横板14a3に設けられた上下方向に貫通する貫通孔を通って上下方向に伸縮するようになっている。シリンダベース14aは、ベース板14a1が固定型11に対し図示しない部材を介して固定されることにより、固定型11に対し相対移動しないようにされている。ピストンロッド14b1の先端部には、後面側に左右方向に延びる歯14c1が形成されたラック14cが上下方向に延びて配設されている。ラック14cは、シリンダベース14aによって上下可動かつ前後左右に揺動不能に支持されている。弧状ギア14eは、左右方向に延びる中心軸14gを中心として厚み方向を左右方向とした扇板状に形成され外周面に左右方向に延びる歯14e1が設けられている。弧状ギア14eは、図示しない支持部材によって固定型11に対して中心軸14gを中心に回転可能で、左右方向に移動不能に支持されている。ピニオン14dは、外周面に左右方向に延びる歯14d2が設けられその右半分がラック14cの歯14c1に歯合し、左半分が弧状ギア14eの歯14e1に歯合している。歯14c1と歯14d2と歯14e1は、同一の歯面形状をしている。これによって、エアシリンダ14bのピストンロッド14b1の上下動に伴ってラック14cが上下動し、ピニオン14dが回転して弧状ギア14eが中心軸14gを中心に回転するようになっている。そして、図3及び図5に示す型を閉じた状態において、ピニオン14dは弧状ギア14eの後端部と歯合しており、図4及び図6に示す型を開いた状態において、ピニオン14dは弧状ギア14eの前端部と歯合している。
【0030】
図5及び図6に示すように、弧状ギア14eの前端部には入れ子体14fが取付けられている。入れ子体14fは、取付部14f1と入れ子部14f2とを有する。取付部14f1は、ブロック状の部材で入れ子部14f2を弧状ギア14eに連結する機能を果たす。取付部14f1の上部には、図5に示す型が閉じられた状態で後述する係合凸部16b41の下端部側が係合する係合凹部14f11が形成されている。また、取付部14f1には、入れ子部14f2が取付けられた状態で入れ子部14f2の空気流路14f21に連通して空気を供給する空気供給孔14f12が設けられている。空気供給孔14f12には、図示しないホースがつながれてホースから圧縮エアが供給されるようになっている。取付部14f1の前端部には入れ子部14f2が取付けられている。入れ子部14f2は、外形がシャワーヘッド1の通水孔3aの形状に一致する形状をして、その中心軸14fCLは、側面視で中心軸14gを中心とする円弧の一部に一致している。図5に示す型が閉じられた状態で入れ子部14f2の中心軸14fCLと、シャワーヘッド1の通水孔3aの中心軸CL2とは一致している。図10に示すように、入れ子部14f2には、中心軸14fCLを中心とした直径が約2mmの円柱状の空気流路14f21が設けられている。空気流路14f21の形成は、次のように行う。まず、空気流路14f21を形成する前の入れ子部14f2を中心軸14fCLを含んで上下方向に延びるパーティング面14fSで二つ割にした状態で二つ割の空気流路14f21の形状に相当する溝14f211を形成する。次に、溝14f211を設けた二つ割にした入れ子部14f2を再度パーティング面14fSで合わせて、パーティング面14fSの外周部であるパーティングラインの部分をレーザ溶接で連結する。空気流路14f21の後端部は、取付部14f1の空気供給孔14f12に連結され、空気流路14f21の前端部は、入れ子部14f2の前端部において大気に開放されている。空気流路14f21に常時空気が通されることによって入れ子部14f2は冷却されている。空気流路14f21に通す空気は冷却されているとさらに有効である。入れ子部14f2は、後端部(取付部14f1の側の端部)の直径が13mmで、前端部(先端部)の直径が6mmの中心軸が一定曲率で湾曲した円錐台形状に形成されている。これは、シャワーヘッド1を射出成形したのち入れ子部14f2をスムーズに脱型するためである。ここで、入れ子部14f2と空気流路14f21が、それぞれ特許請求の範囲の「入れ子部材」と「空気孔」に相当する。また、中心軸14fCLと溝14f211が、それぞれ特許請求の範囲の「中心線」と「溝」に相当する。
【0031】
図3図6及び図9に示すように、吐水部成形機構15は、内軸部15aと、外筒部15bと、駆動部15cと、を有する。内軸部15aは、前後方向に延びる軸を有する円柱状の本体部15a1の前端部(先端部)に拡径された略円柱状の拡径部15a2が連結された形状をしている。拡径部15a2の外周面及び前面はシャワーヘッド1の吐出部2の空洞部2bに対応する形状をしている。拡径部15a2の外周面には、複数のリブ2b1に対応した複数の溝部15a21が形成されている(図11参照)。また、拡径部15a2には、入れ子体14fの入れ子部14f2の前端部が当接したとき、空気流路14f21と連通する空気流路15a22が形成されている(図5及び図6参照)。空気流路15a22は、入れ子部14f2の空気流路14f21から供給された空気を、内軸部15aと外筒部15bとの間の隙間を通して外部に放出する。内軸部15aは、固定型11に対し図示しない部材を介して固定された固定部材15a4によって、固定型11に対し相対移動及び回動しないように固定されている。外筒部15bは、内軸部15aと軸を共通にする円筒状部材で、内軸部15aの本体部15a1に対して相対回動可能に嵌合する円筒状の本体部15b1と、本体部15b1の前端部(先端部)に拡径された略円柱状の拡径部15b2が連結された形状をしている。本体部15b1は、前後に間隔を隔てて配置された2つのベアリング15b11によって、固定型11に対し回動可能に支持されている。本体部15b1の後端部側には、プーリ15c1が取付けられプーリ15c1の下方には、内軸部15aの軸と平行に前後方向に延びる軸を中心に駆動されるプーリ15c2が固定型11に対し図示しない部材を介して取付けられている。プーリ15c1とプーリ15c2の間はベルト15c3によって連結されており、プーリ15c2が駆動されて回転するとプーリ15c1を介して外筒部15bが回転するようになっている。拡径部15b2の前端部は、わずかに拡径された円環状の円環部15b21として形成されている。円環部15b21は、シャワーヘッド1の吐出部2の溝部2cに対応する形状とされ、円環部15b21の内側面15b22には立壁部2dの外側面2d1の雄ねじに対応する雌ねじが形成されている。
【0032】
図3図8及び図11に示すように、縮径部成形機構16は、固定型11の上面部に配置され固定型11に対し左右方向に移動可能な左右一対の副可動型16aと、可動型12の上面部に固定された移動制御機構16bと、を有する。図7及び図8に示すように、左右一対の副可動型16aは、中心軸CL2を含み上下に延びる面に関して左右対称形状をしており、下端部に設けられた係合凸部16a1が固定型11の移動制御溝11aに係合した状態で左右方向に移動可能とされている。図7に示す、左右一対の副可動型16aが互いに当接した状態において内部にシャワーヘッド1の縮径部3bの外形に対応するキャビティ16a2が形成されるようになっている(図11参照)。また、図7に示す左右一対の副可動型16aが互いに当接した状態において上面視で中心軸CL2を中心に約35度の角度で交わるとともに水平に延びる下制御棒軸16b11を中心とした断面円形の制御孔16a3が形成されている。移動制御機構16bは、図7及び図8に示すように、上面視で中心軸CL2を中心に約35度の角度で交わるとともに水平に延びる左右一対の下制御棒16b1を有する。さらに、移動制御機構16bは、図5及び図6に示すように、側面視で左右一対の下制御棒16b1の中心軸である下制御棒軸16b11を含む面に対して約20度の角度で斜め上方に延びる上制御棒軸16b21を中心軸とした上制御棒16b2を有する。各下制御棒16b1と上制御棒16b2は、同径の円柱状の棒体でその直径は、各副可動型16aの制御孔16a3の直径よりわずかに小さく設定されている。そして、各副可動型16aの制御孔16a3に各下制御棒16b1が挿入された状態で固定型11に対し可動型12が配置されている。これによって、固定型11に対し可動型12を閉じると各副可動型16aも閉じて内部にキャビティ16a2を形成し、固定型11に対し可動型12を開くと各副可動型16aは互いに左右に離隔する。
【0033】
図3図6に示すように、上制御棒軸16b21の上方には押圧部材16b3が配置されている。押圧部材16b3の下面部16b31は、上制御棒軸16b21と平行に水平面に対し約20度の角度をなして斜め上方に向かって延びている。上制御棒軸16b21には、固定型11に対し可動型12を閉じた状態で入れ子体14fの入れ子部14f2をキャビティ13の中に挿入した時、入れ子体14fを固定型11に対ししっかり支持するための支持部材16b4が摺動可能に取付けられている。詳しくは、支持部材16b4の下端部には、固定型11に対し可動型12を閉じた状態で入れ子体14fの入れ子部14f2をキャビティ13の中に挿入されたとき、入れ子体14fの取付部14f1の係合凹部14f11に係合する係合凸部16b41が形成されている。また、支持部材16b4には、上制御棒軸16b21が通される上制御棒軸16b21の直径よりわずかに大きい内径を有する制御孔16b42が形成されている。さらに、支持部材16b4の上面部には、支持部材16b4が上制御棒軸16b21の根元方向に移動した時押圧部材16b3の下面部16b31に当接して摺動する摺動面16b43が形成されている。加えて、支持部材16b4は上制御棒軸16b21に支持された状態で上制御棒軸16b21の先端方向に付勢がされている。これによって、固定型11に対し可動型12を閉じた状態で入れ子体14fの入れ子部14f2をキャビティ13の中に挿入していくと、支持部材16b4は、入れ子体14fの係合凹部14f11に係合凸部16b41が係合しながら上制御棒軸16b21の根元方向に向かって押圧され移動する。そして、摺動面16b43が押圧部材16b3の下面部16b31に当接して下方向に向かって押圧されることにより入れ子体14fの取付部14f1を固定型11に対ししっかり支持する。この状態から入れ子体14fの入れ子部14f2をキャビティ13の中から退出させていくと上記の作動と逆に支持部材16b4は、入れ子体14fの係合凹部14f11に対する係合凸部16b41の係合を解除しながら上制御棒軸16b21の先端方向に向かって移動する。
【0034】
上記の成形型10を使用して、シャワーヘッド1は次のように成形される。図3図5及び図7に示すように、固定型11に対して可動型12を閉じるとともに入れ子体14fの入れ子部14f2をキャビティ13の中に挿入した状態でキャビティ13内に溶融した合成樹脂材料を注入する。このとき、固定型11と可動型12及び左右一対の副可動型16aによってシャワーヘッド1の外形が形成され、入れ子体14fの入れ子部14f2によって通水孔3aが形成される。具体的には、固定型11と可動型12によって形成されるキャビティ13によって、シャワーヘッド1の縮径部3b以外の部分の外形が形成されるとともに、左右一対の副可動型16aによってシャワーヘッド1の縮径部3bの外形が形成される。そして、入れ子体14fの入れ子部14f2の外形によって通水孔3aの外周壁部分が形成される。このとき、入れ子部14f2の空気流路14f21には常時空気が通され拡径部15a2の空気流路15a22を通して型の外部に放出されるので入れ子部14f2は冷却されており接触する溶融した合成樹脂材料を急速に冷却して固化させることができる。なお、空気流路14f21に冷却のために水等の液体を通すと、空気流路14f21の前端部から空気流路15a22に入った液体は、内軸部15aと外筒部15bとの間の隙間を通過できず冷却ができない。また、液体を通す流路を入れ子部14f2の中に往復で設け外部に液体が漏れ出ないようにすることは、流路が狭くなりすぎ詰まりがちになるので採用できない。
【0035】
注入した合成樹脂材料が固化したのち、入れ子出入機構14のエアシリンダ14bを作動させてラック14cを引き上げると、ピニオン14dを介して弧状ギア14eが中心軸14gを中心に図5において時計回りに回転する。それに伴って、入れ子体14fは弧状ギア14eとともに回転して入れ子部14f2を成形されたシャワーヘッド1の通水孔3aから引き出す。このとき、支持部材16b4は入れ子体14fの取付部14f1との係合を解かれて上制御棒軸16b21に沿って斜め上方に移動する。次に、固定型11に対して可動型12を前方向に移動させて型を開く。すると、左右一対の下制御棒16b1の働きで左右一対の副可動型16aが左右に開く。この状態が図4及び図6に示す状態である。
【0036】
次に、図4及び図6に示す状態において、縮径部成形機構16のプーリ15c2を駆動して回転させるとベルト15c3を介してプーリ15c1が回転する。これによって、プーリ15c1に連結された外筒部15bが回転する。この回転方向は、円環部15b21の内側面15b22に形成されている雌ねじをシャワーヘッド1の吐出部2における立壁部2dの外側面2d1に形成された雄ねじに対し緩める方向とする。このとき、成形されたシャワーヘッド1における吐出部2の複数のリブ2b1は、内軸部15aにおける拡径部15a2の複数の溝部15a21と係合しているのでシャワーヘッド1は内軸部15aの軸の回りには回転せず前方向に向かって固定型11から押し出される。これによって、成形されたシャワーヘッド1は固定型11から脱型される。これが成形から脱型までの一連の工程である。次の成形においては、上述と逆の順序で型を閉じて溶融した合成樹脂材料の注入を行う。この一連の工程にわたって入れ子体14fの入れ子部14f2の空気流路14f21には常時空気が通されて冷却されているので入れ子部14f2の冷却工程を別途設ける必要がなく連続して射出成形ができる。
【0037】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。通常射出成形の度ごとに型から取り外して冷却しなければならない入れ子体14fの入れ子部14f2を固定型11に配設して空気を通して常時冷却した状態でキャビティ13内に出入させることができる。これによって、シャワーヘッド1を成形するたびに入れ子体14fの入れ子部14f2を固定型11から取り外して冷却する必要がないのでシャワーヘッド1の生産を効率よく行うことができる。また、入れ子部14f2の空気流路14f21は入れ子部14f2の外形形状に沿って設けられているので入れ子部14f2を効率的に冷却することができる。さらに、入れ子部14f2は中心軸14fCLに沿って二つ割にした状態で中心軸14fCLに沿って延びる溝を形成したのち合わせてパーティングラインを溶接することにより空気流路14f21を形成している。これによって、入れ子部14f2の中に中心軸14fCLに沿って湾曲して延びる直径が2mm程度の細径の空気流路14f21を形成することができる。加えて、シャワーヘッド1の通水孔3aを直径13mm以下の小径に形成できるので握る部分の外径が小さく子供でも握りやすいシャワーヘッドを成形することができる。
【0038】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態においては、入れ子体14fをエアシリンダ14bの作動により回転させてキャビティ13の中に出し入れするように構成した。しかし、これに限らず、油圧シリンダの作動やモータ等の電力装置の作動により回転させるようにしてもよい。また、上記実施形態においては、成形型10において、固定型11に対して可動型12が前後方向に開閉移動するものとして構成したが、この反対に可動型12を固定してそれに対して固定型11を前後方向に開閉移動するものとしてもよい。さらに、入れ子部14f2は、3Dプリンタを利用して製造することにより内部に空気流路14f21を形成することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 シャワーヘッド(合成樹脂製品)
2 吐出部
3 グリップ部
3a 通水孔(孔)
10 成形型
11 固定型
12 可動型
13 キャビティ
14 入れ子出入機構
14f 入れ子体
14f1 取付部
14f2 入れ子部(入れ子部材)
14f21 空気流路(空気孔)
14f211 溝
14fCL 中心軸(中心線)
14fS パーティング面
14g 中心軸
16 縮径部成形機構
16a 副可動型
16a2 キャビティ
16b 移動制御機構
CL1 中心軸
CL2 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11