(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20240122BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E21D9/093 G
E21D9/06 301Z
(21)【出願番号】P 2020086774
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】和田 健介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博一
(72)【発明者】
【氏名】野澤 剛二郎
(72)【発明者】
【氏名】本多 眞
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-302697(JP,A)
【文献】特開平09-184394(JP,A)
【文献】特開平01-322090(JP,A)
【文献】特開2000-160981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/093
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘削機に設けられたN本(Nは2以上の整数)のシールドジャッキのうち前記シールド掘削機を推進させるために使用が想定される前記シールドジャッキの組み合わせであるシールドジャッキパターンを複数計算する計算部と、
前記計算部が計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して前記シールドジャッキパターンによる推進合力の力点位置の情報を関連づけた複数の関連情報を格納する格納部と、
前記シールド掘削機を推進させる前記シールドジャッキの力点位置の目標位置を取得する力点位置取得部と、
前記シールド掘削機を推進させるために使用するシールドジャッキパターンを選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記シールドジャッキパターンの情報を出力する出力部と、
を有し、
前記選択部は、前記格納部に格納されている複数の前記力点位置のうち、前記力点位置取得部で取得した前記目標位置と同一の前記力点位置、又は前記目標位置に最も近い前記力点位置に関連付けられたシールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択
し、
前記選択部は、
前記格納部に格納されている前記各力点位置に対して前記目標位置からの差異を比較し、前記差異が最も小さい前記力点位置のジャッキパターンを選択し、
前記格納部には、前記計算部が計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して、前記力点位置の情報と、前記シールドジャッキパターンに含まれる前記シールドジャッキの使用本数と、を関連づけた複数の関連情報が格納され、
前記選択部は、前記シールド掘削機を推進させるために現在使用されている前記シールドジャッキの本数と、前記格納部に格納されている前記使用本数と、の本数差を前記シールドジャッキパターンごとに求め、前記本数差が所定数以下である条件下において前記差異が最も小さい前記シールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択する、
情報処理装置。
【請求項2】
シールド掘削機に設けられたN本(Nは2以上の整数)のシールドジャッキのうち前記シールド掘削機を推進させるために使用が想定される前記シールドジャッキの組み合わせであるシールドジャッキパターンを複数計算する計算部と、
前記計算部が計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して前記シールドジャッキパターンによる推進合力の力点位置の情報を関連づけた複数の関連情報を格納する格納部と、
前記シールド掘削機を推進させる前記シールドジャッキの力点位置の目標位置を取得する力点位置取得部と、
前記シールド掘削機を推進させるために使用するシールドジャッキパターンを選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記シールドジャッキパターンの情報を出力する出力部と、
を有し、
前記選択部は、前記格納部に格納されている複数の前記力点位置のうち、前記力点位置取得部で取得した前記目標位置と同一の前記力点位置、又は前記目標位置に最も近い前記力点位置に関連付けられたシールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択
し、
前記選択部は、
前記格納部に格納されている前記各力点位置に対して前記目標位置からの差異を比較し、前記差異が最も小さい前記力点位置のジャッキパターンを選択し、
前記格納部には、前記計算部が計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して、前記力点位置の情報と、前記シールドジャッキパターンに含まれる前記シールドジャッキの使用本数と、を関連づけた複数の関連情報が格納され、
前記選択部は、前記シールド掘削機を推進させるために現在使用されている前記シールドジャッキの本数と、前記格納部に格納されている前記使用本数と、の本数差を前記シールドジャッキパターンごとに求め、前記本数差をD、定数をαとし、前記差異をLとした場合には、(L+αD)で求める値が最小となる前記シールドジャッキパターンを前記複数の関連情報から選択する、
情報処理装置。
【請求項3】
前記計算部は、前記N本のシールドジャッキのうち、前記N本以下のM本以上の前記シールドジャッキがシールド掘削機を推進させる前記シールドジャッキとして設定されたシールドジャッキパターンをすべて計算する、
請求項1
または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記計算部は、複数の前記シールドジャッキパターンを計算するにあたって、前記シールドジャッキが故障する恐れのある不適切なシールドジャッキパターンを除外する、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータが、シールド掘削機に設けられたN本(Nは2以上の整数)のシールドジャッキの中から、前記シールド掘削機を推進させるために使用するシールドジャッキの組み合わせを示すシールドジャッキパターンを選択するための情報処理方法であって、
前記N本のシールドジャッキのうち前記シールド掘削機を推進させるために使用が想定される前記シールドジャッキの組み合わせであるシールドジャッキパターンを複数計算する計算ステップと、
前記計算ステップが計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して前記シールドジャッキパターンによる推進合力の力点位置の情報を関連づけた複数の関連情報を格納部に格納する格納ステップと、
前記シールド掘削機を推進させる前記シールドジャッキの力点位置の目標位置を取得する力点位置取得ステップと、
前記格納部に格納されている複数の前記力点位置のうち、前記力点位置取得ステップで取得した前記目標位置と同一の前記力点位置、又は前記目標位置に最も近い前記力点位置に関連付けられたシールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択する選択ステップと、
前記選択ステップで選択された前記シールドジャッキパターンの情報を出力する出力ステップと、
を含
み、
前記選択ステップでは、前記格納部に格納されている複数の前記力点位置のうち、前記力点位置取得ステップで取得した前記目標位置と同一の前記力点位置、又は前記目標位置に最も近い前記力点位置に関連付けられたシールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択し、
前記選択ステップでは、
前記格納部に格納されている前記各力点位置に対して前記目標位置からの差異を比較し、前記差異が最も小さい前記力点位置のジャッキパターンを選択し、
前記格納ステップでは、前記計算ステップで計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して、前記力点位置の情報と、前記シールドジャッキパターンに含まれる前記シールドジャッキの使用本数と、を関連づけた複数の関連情報を格納し、
前記選択ステップでは、前記シールド掘削機を推進させるために現在使用されている前記シールドジャッキの本数と、前記格納部に格納されている前記使用本数と、の本数差を前記シールドジャッキパターンごとに求め、前記本数差が所定数以下である条件下において前記差異が最も小さい前記シールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択する、
情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータが、シールド掘削機に設けられたN本(Nは2以上の整数)のシールドジャッキの中から、前記シールド掘削機を推進させるために使用するシールドジャッキの組み合わせを示すシールドジャッキパターンを選択するための情報処理方法であって、
前記N本のシールドジャッキのうち前記シールド掘削機を推進させるために使用が想定される前記シールドジャッキの組み合わせであるシールドジャッキパターンを複数計算する計算ステップと、
前記計算ステップが計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して前記シールドジャッキパターンによる推進合力の力点位置の情報を関連づけた複数の関連情報を格納部に格納する格納ステップと、
前記シールド掘削機を推進させる前記シールドジャッキの力点位置の目標位置を取得する力点位置取得ステップと、
前記格納部に格納されている複数の前記力点位置のうち、前記力点位置取得ステップで取得した前記目標位置と同一の前記力点位置、又は前記目標位置に最も近い前記力点位置に関連付けられたシールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択する選択ステップと、
前記選択ステップで選択された前記シールドジャッキパターンの情報を出力する出力ステップと、
を含
み、
前記選択ステップでは、前記格納部に格納されている複数の前記力点位置のうち、前記力点位置取得ステップで取得した前記目標位置と同一の前記力点位置、又は前記目標位置に最も近い前記力点位置に関連付けられたシールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択し、
前記選択ステップでは、
前記格納部に格納されている前記各力点位置に対して前記目標位置からの差異を比較し、前記差異が最も小さい前記力点位置のジャッキパターンを選択し、
前記格納ステップでは、前記計算ステップで計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して、前記力点位置の情報と、前記シールドジャッキパターンに含まれる前記シールドジャッキの使用本数と、を関連づけた複数の関連情報を格納し、
前記選択ステップでは、前記シールド掘削機を推進させるために現在使用されている前記シールドジャッキの本数と、前記格納部に格納されている前記使用本数と、の本数差を前記シールドジャッキパターンごとに求め、前記本数差をD、定数をαとし、前記差異をLとした場合には、(L+αD)で求める値が最小となる前記シールドジャッキパターンを前記複数の関連情報から選択する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法によってトンネルを採掘するシールド掘削機が知られている。シールド掘削機は、シールド掘削機を推進させるための複数のシールドジャッキを有している。オペレータは、各シールドジャッキの使用の有無を選択することで、シールド掘削機の掘進方向を制御している。
【0003】
具体的には、オペレータは、シールドジャッキによる推進合力の力点の位置(以下、「力点位置」という。)が、目標位置になるように、使用するシールドジャッキ(推進ジャッキ)を設定する。これにより、シールド掘削機の掘進方向が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、目標位置が与えられても、力点位置を目標位置に一致させるために複数のシールドジャッキの中からどのシールドジャッキを設定すればよいかを目標位置から把握することはオペレータにとって難しく、経験が浅いオペレータの場合、この設定に多くの時間を要したり、また、力点の目標位置に合わせることができず、適切にシールド掘削機の掘進方向を制御できないことがある。さらに、シールドジャッキの操作に注力しすぎるあまり、シールドジャッキ以外の操作が疎かになるという弊害が発生することがある。熟練したオペレータであればシールドジャッキの設定を短時間で行うことが出来るが、昨今建設分野での機械の熟練オペレータの減少が顕著であり、シールド工事も例外ではなく、使用するシールドジャッキ(推進ジャッキ)を容易に設定することが求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、使用するシールドジャッキ(推進ジャッキ)を容易に設定可能な情報処理装置及び情報処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、シールド掘削機に設けられたN本(Nは2以上の整数)のシールドジャッキのうち前記シールド掘削機を推進させるために使用が想定される前記シールドジャッキの組み合わせであるシールドジャッキパターンを複数計算する計算部と、前記計算部が計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して前記シールドジャッキパターンによる推進合力の力点位置の情報を関連づけた複数の関連情報を格納する格納部と、前記シールド掘削機を推進させる前記シールドジャッキの力点位置の目標位置を取得する力点位置取得部と、前記シールド掘削機を推進させるために使用するシールドジャッキパターンを選択する選択部と、前記選択部で選択された前記シールドジャッキパターンの情報を出力する出力部と、を有し、前記選択部は、前記格納部に格納されている複数の前記力点位置のうち、前記力点位置取得部で取得した前記目標位置と同一の前記力点位置、又は前記目標位置に最も近い前記力点位置に関連付けられたシールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択する、情報処理装置である。
【0008】
(2)本発明の一態様は、コンピュータが、シールド掘削機に設けられたN本(Nは2以上の整数)のシールドジャッキの中から、前記シールド掘削機を推進させるために使用するシールドジャッキの組み合わせを示すシールドジャッキパターンを選択するための情報処理方法であって、前記N本のシールドジャッキのうち前記シールド掘削機を推進させるために使用が想定される前記シールドジャッキの組み合わせであるシールドジャッキパターンを複数計算する計算ステップと、前記計算ステップが計算した複数の前記シールドジャッキパターンのそれぞれに対して前記シールドジャッキパターンによる推進合力の力点位置の情報を関連づけた複数の関連情報を格納部にする格納ステップと、記シールド掘削機を推進させる前記シールドジャッキの力点位置の目標位置を取得する力点位置取得ステップと、前記格納部に格納されている複数の前記力点位置のうち、前記力点位置取得ステップで取得した前記目標位置と同一の前記力点位置、又は前記目標位置に最も近い前記力点位置に関連付けられたシールドジャッキパターンを、前記複数の関連情報から選択する選択ステップと、前記選択ステップで選択された前記シールドジャッキパターンの情報を出力する出力ステップと、を含む情報処理方法である。
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、使用するシールドジャッキを容易に設定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態における情報処理装置が適用されるシールド掘削機10を側面から見た概念図である。
【
図2】本実施形態におけるシールドジャッキ20を正面からみた概念図である。
【
図3】本実施形態における情報処理装置300の機能ブロック図の一例である。
【
図4】本実施形態の関連情報の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態における情報処理装置300の動作の流れを示す図である。
【
図6】本実施形態に係る不適切なシールドジャッキパターン及び適切なシールドジャッキパターンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態に係る情報処理装置及び情報処理方法を、図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置が適用されるシールド掘削機10を側面から見た概念図である。
図2は、シールドジャッキ20を正面からみた概念図である。
【0013】
シールド掘削機10は、シールド工法によってトンネルを採掘する。具体的には、
図1に示すように、シールド掘削機10は、円筒形のスキンプレート11のZ軸の負方向の後部において、エレクタ(不図示)によりセグメントを組み立てて、一次覆工Sを施工しつつ、地山を掘削するための機構である。シールド掘削機10においては、カッタービット15を備えた環状かつ面板型のカッター16のZ軸の負方向の後部にチャンバー12が設けられている。チャンバー12内の側壁には複数の土圧計Dが設置される。土圧計Dは、チャンバー12における泥土の圧力を測定する。ここで、スキンプレート11の軸方向がZ軸方向であり、シールドジャッキ20を正面から見た場合において水平方向がX軸方向であり、鉛直方向がY軸方向である。
【0014】
チャンバー12には作泥土材注入管13から作泥土材14が注入される。チャンバー12内に堆積された掘削土は、練混ぜ翼(不図示)により、作泥土材14と撹拌することで練混ぜられ、泥土に変換される。
【0015】
さらに、シールド掘削機10は、スクリューコンベア17、コンベア18、コンベア19及びN本のシールドジャッキ20-1~20-Nを備える。Nは、2以上の整数であればよい。以下、説明の便宜のため、特に区別しない限りシールドジャッキ20-1~20-Nを「シールドジャッキ20」と記載する場合がある。
【0016】
スクリューコンベア17は、チャンバー12の泥土を、排土ゲートGを介してコンベア18に排土する。そして、コンベア18は、スクリューコンベア17より排出された泥土を、コンベア19を介してトンネルの外部に搬出する。架台Mは、スクリューコンベア17と、コンベア18、及びコンベア19とを支持している。
【0017】
シールドジャッキ20は、シールド掘削機10を推進させる。具体的には、
図2に示すように、シールドジャッキ20は、シールド掘削機10に設けられたスキンプレート11の内周を囲むようにして複数設けられ、スキンプレート11とセグメントとの間に配置される。シールドジャッキ20が油圧操作により推進(伸長)されることでスキンプレート11の面が押されシールド掘削機10が推進する。
【0018】
図2に示す例では、シールド掘削機10は、12本のシールドジャッキ20-1~20-12を備えている。
【0019】
ここで、いずれの位置のシールドジャッキ20を推進させるかによりスキンプレート11の面を推進させる力点の位置(以下、「力点位置」という。)が設定され、シールド掘削機10の推進方向が決定される。すなわち、力点位置は、シールドジャッキ20による推進合力の力点の位置である。また、シールドジャッキ20を推進させる速度によりシールド掘削機10の推進速度が決定される。このように、複数のシールドジャッキ20-1~20-Nのうち、シールド掘削機10を推進させるために使用するシールドジャッキ(以下、「推進ジャッキ」という。)として、いずれのシールドジャッキ20を設定するかによってシールド掘削機10の推進方向が制御される。一例として、シールド掘削機10のオペレータは、シールドジャッキ20による推進合力の力点位置が、予め設定された目標位置になるように、推進ジャッキを設定する操作(以下、「推進ジャッキ設定操作」という。)を行う。また、推進ジャッキの推進速度を設定する操作が行われることによりシールド掘削機10の推進速度が制御される。
【0020】
情報処理装置300は、複数のシールドジャッキ20-1~20-Nのうち、シールド掘削機10を推進させるために使用するシールドジャッキを選択する。例えば、情報処理装置300は、コンピュータである。以下において、本実施形態における情報処理装置300の機能部について説明する。
図3は、本実施形態における情報処理装置300の機能ブロック図の一例である。
【0021】
図3に示すように、情報処理装置300は、計算部310、格納部320、力点位置取得部330、選択部340及び出力部350を備える。
【0022】
計算部310は、シールド掘削機10に設けられたN本(Nは2以上の整数)のシールドジャッキのうちシールド掘削機10を推進させるために使用が想定されるシールドジャッキパターンを複数計算する。シールドジャッキパターンとは、シールド掘削機10に設けられた複数のシールドジャッキ20のうちシールド掘削機を推進させるために使用が想定されるシールドジャッキの組み合わせを示す情報である。なお、シールド掘削機を推進させるために使用が想定されるとは、シールド掘削機10の推進方向を制御するための使用が想定されると同義である。
【0023】
例えば、シールドジャッキパターンは、推進ジャッキとして使用が想定されるすべてのシールドジャッキ20の識別情報を含む情報である。識別情報とは、シールドジャッキ20のそれぞれを特定する情報であればよく、シールドジャッキ20が配置されている位置情報であってもよい。ただし、これに限定されず、シールドジャッキパターンは、シールド掘削機10に設けられた複数のシールドジャッキ20-1~20-Nのうちシールド掘削機10を推進させるために使用が想定されるシールドジャッキ20を識別することができる情報であれば、どのような情報であってもよい。換言すれば、シールドジャッキパターンは、シールド掘削機10に設けられた複数のシールドジャッキ20-1~20-Nのうち、どのシールドジャッキ20が使用され、どのシールドジャッキ20が使用されないかがわかる情報であればよい。
【0024】
本実施形態のシールド掘削機10は、N本のシールドジャッキ20を備える。したがって、計算部310は、2N通りの組み合わせの数のシールドジャッキパターンを計算してもよい。ここで、通常、少数のシールドジャッキ20のみを用いてシールド掘削機10を掘進することは行われず、掘進させるために最低限必要なシールドジャッキ20の本数(以下、「最低使用本数」という。)Mがある。したがって、計算部310は、少なくともM本のシールドジャッキ20を使用するという条件を設定した上で、シールドジャッキパターンを計算してもよい。例えば、最低使用本数をM本と設定した場合においては、計算部310は、式(1)を用いて、シールドジャッキ20がM本以上でのすべてのシールドジャッキパターン(組み合わせ)を計算する。すなわち、計算部310は、N本のシールドジャッキ20のうち、N本以下の本数であるM本以上のシールドジャッキ20が推進ジャッキとして設定されたシールドジャッキパターンをすべて計算する。なお、式(1)に示すCはコンビネーションを表す。また、mは、推進ジャッキの本数である。
【0025】
【0026】
例えば、Nが12であり、Mが10である場合には、以下に示す式(2)で求まる値が計算部310で計算されるシールドパターンの数である。
【0027】
【0028】
計算部310は、複数のシールドジャッキパターンを計算すると、その計算した複数のシールドジャッキパターンの力点位置をそれぞれ算出する。また、計算部310は、計算した複数のシールドジャッキパターンに含まれるシールドジャッキ20の使用本数mをそれぞれ算出する。この使用本数mとは、推進ジャッキの数である。例えば、あるシールドジャッキパターンにおいて、シールドジャッキ20-2、20-4~20-9及び20-11が推進ジャッキとして設定されている場合には、使用本数m=8である。
【0029】
計算部310は、その算出したシールドジャッキパターンのそれぞれに対して力点位置と使用本数mとを関連づけて格納部320に格納する。すなわち、計算部310は、計算したシールドジャッキパターンのそれぞれに対して力点位置と使用本数mとを関連付けた関連情報を格納部320に格納する。
【0030】
格納部320には、計算部310が計算した複数のシールドジャッキパターンのそれぞれに対して、力点位置の情報と、使用本数mと、が関連付けられた複数の関連情報が格納される。
図4は、本実施形態の関連情報の一例を示す図である。
図4に示す例では、複数の関連情報がテーブル形式で格納部320に格納されている。
【0031】
一例として、関連情報におけるシールドジャッキパターンは、複数のシールドジャッキ20-1~20-Nのうち、使用されているシールドジャッキ20(推進ジャッキ)の情報に対しては第1の情報(例えば、「1」)が対応付けられ、使用されていないシールドジャッキ20の情報に対しては第2の情報(例えば、「0」)を対応付けられている。この第1の情報は、上記識別情報の一例である。この第1の情報及び第2の情報の対応付けは、計算部310によって行われる。力点位置は、シールドジャッキパターンによって計算される。例えば、力点位置は、シールドジャッキ20を正面からみた二次元座標系(XY座標系)における水平方向Xと鉛直方向Yとで特定される座標情報(Xi,Yi)である。使用本数mは、シールドジャッキパターンのそれぞれに関連づけられており、第1の情報の数と同一である。
【0032】
力点位置取得部330は、シールド掘削機10を推進させるシールドジャッキ20の力点位置の目標位置(Xs,Ys)を取得する。なお、力点位置取得部330における目標位置(Xs,Ys)の取得方法は、特に限定されず、目標位置(Xs,Ys)を取得できればどのような方法であってもよい。例えば、力点位置取得部330は、外部から目標位置(Xs,Ys)を取得してもよい。また、力点位置取得部330は、特願2018-29144号公報に記載されている機械学習によって目標位置(Xs,Ys)を推定してもよい。例えば、力点位置取得部330は、特願2018-29144号公報に記載されている推定装置によって目標位置(Xs,Ys)(シールド掘削機が掘進すべき力点の位置)を取得してもよいし、特願2018-29144号公報に記載されている推定装置の機能を有してもよい。
【0033】
一例として、力点位置取得部330は、特願2018-29144号公報に記載されていうように、シールド掘削機10の掘進の方向に関する方向データを取得し、 少なくとも方向データを含むデータを推定モデルに入力することにより、シールド掘削機10が掘進すべき力点の位置(目標位置(Xs,Ys))を推定する力点位置推定部を備えてもよい。そして、その推定モデルは、方向データに対応するデータを含む入力データにシールド掘削機10が掘進すべき力点の位置が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより作成されたモデルであってもよい。ただし、これに限定されず、力点位置取得部330は、シミュレーション等を用いて目標位置(Xs,Ys)を算出してもよい。
【0034】
選択部340は、シールド掘削機10を推進させるために使用するシールドジャッキパターンを選択する。例えば、選択部340は、格納部320に格納されている複数の力点位置(Xi,Yi)のうち、力点位置取得部330で取得した目標位置(Xs,Ys)と同一の力点位置(Xi,Yi)、又は目標位置(Xs,Ys)に最も近い力点位置(Xi,Yi)に関連付けられたシールドジャッキパターンを、複数の関連情報の中から選択する。なお、添え字であるiは整数であって、識別番号である。この識別番号iは、関連情報として、シールドジャッキパターンに対応づけられてもよい。すなわち、識別番号iによって、シールドジャッキパターンと力点位置(Xi,Yi)とが関連づけられてもよい。
【0035】
例えば、選択部340は、格納部320に格納されている各力点位置(Xi,Yi)に対して目標位置(Xs,Ys)からの差異Liを比較し、差異Liが最も小さい力点位置(Xi,Yi)のシールドジャッキパターンを複数の関連情報の中から選択する。ここで、例えば、差異Lはユークリッド距離であって、以下の式(3)で求められる。
【0036】
【0037】
例えば、選択部340は、差異Liが最も小さくなる時の識別番号iに対応するシールドジャッキパターンを複数の関連情報の中から選択してもよい。なお、本実施形態の選択部340は、差異Liとしてユークリッド距離を用いたが、これに限定されず、力点位置(Xi,Yi)と目標位置(Xs,Ys)との間の差異を求めることができれば、ユークリッド距離に限定されない。
【0038】
選択部340は、差異Liのほかに、格納部320に格納されている使用本数mの情報を用いて、格納部320に格納されている複数のシールドジャッキパターンの中から、実際にシールド掘削機10を推進させるシールドジャッキパターンを選択してもよい。一例として、選択部340は、シールド掘削機10を推進させるために現在使用されているシールドジャッキの本数Kと、格納部320に格納されている使用本数miと、の本数差Diを格納部320に格納されているシールドジャッキパターンごとに求める。そして、選択部340は、本数差Diが所定数(例えば、2)以下である条件下において差異Liが最も小さいシールドジャッキパターンを、複数の関連情報、すなわち格納部320に格納されている複数のシールドジャッキパターンから選択してもよい。ただし、選択部340は、これに限定されず、例えば、以下に示す式(4)で求まる値が最小となるシールドジャッキパターンを、格納部320に格納されている複数のシールドジャッキパターンから選択してもよい。ここで、αは定数であって、任意に設定可能である。
【0039】
Li+αDi …(4)
【0040】
これにより、目標位置(Xs,Ys)が変更された場合には、オペレータは、従来よりも少ない操作で推進ジャッキ設定操作を行うことができ、オペレータの負担を軽減できる。すなわち、シールドジャッキパターンを選択するにあって、本数差Diが所定数以下という条件又は(Li+αDi)が最小という条件が付加されているため、推進ジャッキを新たに設定する操作(以下、「オン操作」という。)や推進ジャッキとして設定されているシールドジャッキ20に対してその設定を解除する操作(以下、「オフ操作」という。)を行う前記推進ジャッキ設定操作を従来よりも少なくすることができる。なお、本数差Diは、オン操作又はオフ操作を行う必要があるシールドジャッキ20の本数を表す。
【0041】
出力部350は、選択部340で選択されたシールドジャッキパターンの情報を出力する。出力部350による出力態様は、特に限定されない。例えば、出力部350は、選択部340で選択されたシールドジャッキパターンの情報を表示装置に表示させてもよい。一例として、出力部350は、
図2に示すようなシールドジャッキ20を正面からみた概念図を表示装置に表示し、複数のシールドジャッキのうち、選択部340で選択されたシールドジャッキパターンに含まれるシールドジャッキ20を第1の態様で表示装置に表示し、選択部340で選択されシールドジャッキパターンに含まれないシールドジャッキ20を第1の態様とは異なる第2の態様で前記表示装置に表示してもよい。例えば、第1の態様が第1の色(例えば、赤)であって、第2の態様が第1の色とは異なる第2の色(例えば、白)である。
【0042】
次に、情報処理装置300の動作の流れについて、
図5を用いて説明する。情報処理装置300は、シールド掘削機10に設けられたN本のシールドジャッキのうちシールド掘削機10を推進させるために使用が想定されるシールドジャッキパターンを複数計算する(ステップS101)。そして、情報処理装置300は、複数のシールドジャッキパターンを計算すると、その計算した複数のシールドジャッキパターンの力点位置(Xi,Yi)と使用本数miとをそれぞれ算出する。情報処理装置300は、算出したシールドジャッキパターンのそれぞれに対して力点位置(Xi,Yi)と使用本数miとを関連づけた各関連情報を格納部320に格納する(ステップS102)。
【0043】
情報処理装置300は、シールド掘削機10を推進させるシールドジャッキ20の力点位置(Xi,Yi)の目標位置(Xs,Ys)を取得する(ステップS103)。情報処理装置300は、格納部320に格納されている力点位置(Xi,Yi)と、ステップS101で取得した目標位置(Xs,Ys)と、の差異Liを、格納部320に格納されているシールドジャッキパターンごとに算出する(ステップS104)。情報処理装置300は、シールド掘削機10を推進させるために現在使用されているシールドジャッキの本数Kと、格納部320に格納されている使用本数miと、の本数差Diを格納部320に格納されているシールドジャッキパターンごとに算出する(ステップS105)。
【0044】
一例として、情報処理装置300は、本数差Diが所定数(例えば、2)以下である条件下において差異Liが最も小さいシールドジャッキパターンを格納部320に格納されている複数のシールドジャッキパターンから選択する(ステップS106)。そして、情報処理装置300は、選択したシールドジャッキパターンを出力する(ステップS107)。
【0045】
上述したように、本実施形態の情報処理装置300は、シールド掘削機10に設けられたN本(Nは2以上の整数)のシールドジャッキ20のうちシールド掘削機10を推進させるために使用が想定されるシールドジャッキ20の組み合わせであるシールドジャッキパターンを複数計算する計算部310を備える。また、情報処理装置300は、計算部が計算した複数のシールドジャッキパターンのそれぞれに対してシールドジャッキパターンによる推進合力の力点位置の情報を関連づけた複数の関連情報を格納する格納部320を備える。そして、情報処理装置300は、格納部320に格納されている複数の力点位置(Xi,Yi)のうち、力点位置取得部330で取得した目標位置(Xs,Ys)と同一の力点位置(Xi,Yi)、又は目標位置(Xs,Ys)に最も近い力点位置(Xi,Yi)に関連付けられたシールドジャッキパターンを、複数の関連情報から選択する。
【0046】
このように、情報処理装置300は、選択すべき力点位置(目標位置(Xs,Ys))を出力するのではなく、その目標位置(Xs,Ys)に対応するシールドジャッキパターンを出力する。これにより、オペレータは、情報処理装置300から出力されたシールドジャッキパターンのシールドジャッキ20を、推進ジャッキとして設定すればよく、推進ジャッキを容易に設定可能である。すなわち、シールド掘削機10の掘進方向を容易に制御することができる。
【0047】
ここで、目標位置(Xs,Ys)によっては、その目標位置(Xs,Ys)に一致するシールドジャッキパターンが存在しないことがあり、オペレータを混乱させることがある。本実施形態では、情報処理装置300は、目標位置(Xs,Ys)を出力するのではなく、同一の力点位置(Xi,Yi)、又は目標位置(Xs,Ys)に最も近い力点位置(Xi,Yi)に関連付けられたシールドジャッキパターンを出力する。これにより、オペレータが混乱することがない。
【0048】
従来では、オペレータは、表示装置に表示された目標位置(Xs,Ys)に、力点位置を合わせるために、不適切なシールドジャッキパターンを選択してしまう恐れがある。例えば、
図6(a)に示すシールドジャッキパターンを選択してしまうと、シールドジャッキ20によって発生する応力が下部に集中しセグメントを損傷する可能性がある。そのため、
図6(a)は不適切なシールドジャッキパターンである。
図6(b)に示すシールドジャッキパターンでは、一部に応力が集中することがないため、適切なシールドジャッキパターンである。なお、
図6における斜線で塗りつぶしたシールドジャッキ20は、推進ジャッキであることを示す。
【0049】
そこで、計算部310は、シールドジャッキパターンを計算するにあたって、一部に応力が集中する不適切なシールドジャッキパターンを除外してもよい。例えば、
図6を例にすれば、計算部310は、連続した4箇所以上のシールドジャッキ20が不使用となるパターンを除外してもよい。不使用とは、推進ジャッキとして使用しないことである。ただし、不適切なシールドジャッキパターンは、一部に応力が集中するものに限定されない。例えば、不適切なシールドジャッキパターンとは、シールドジャッキ20が故障する恐れのあるシールドジャッキパターンであればよい。計算部310は、シールドジャッキ20が故障したときのシールドジャッキパターンを不適切なシールドジャッキパターンとして設定し、当該不適切なシールドジャッキパターンを除外してもよい。計算部310は、まず、複数のシールドジャッキパターンを計算し、その複数のシールドジャッキパターンのそれぞれにおいて不適切なシールドジャッキパターンか否かを判定してもよい。この場合には、計算部310は、不適切なシールドジャッキパターンではないもの(適切なシールドジャッキパターン)だけにおいて力点位置を算出し、そのシールドジャッキパターン(適切なシールドジャッキパターン)とその力点位置と使用本数とを関連づけて格納部320に格納してもよい。
【0050】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0051】
なお、上述した情報処理装置300の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、上記情報処理装置300の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…シールド掘削機、20…シールドジャッキ、300…情報処理装置、310…計算部、320…格納部、330…力点位置取得部、340…選択部、350…出力部