(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】柱脚固定構造、建築物、及び柱脚固定構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
E02D27/00 D
(21)【出願番号】P 2020088011
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019095969
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉山 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】亀田 哲二郎
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-042845(JP,U)
【文献】実開昭60-042846(JP,U)
【文献】特開昭62-160368(JP,A)
【文献】特開平05-272144(JP,A)
【文献】特開昭64-010838(JP,A)
【文献】特開昭64-006428(JP,A)
【文献】特開2018-115473(JP,A)
【文献】特開平01-010837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱脚の下端部の周囲を包囲する型枠と、
前記型枠の周囲に打設された基礎と、
前記型枠の側方を包囲する補強鉄筋構造と、
前記型枠及び前記補強鉄筋構造の側方を包囲する基礎型枠と、を備え、
前記型枠は、
当該型枠の内側と外側とを連通する孔を有し前記柱脚の下端部の側方を包囲する仕切部材と、
前記仕切部材を支持する構造部材と、を備え、
前記柱脚の下端部と前記型枠との間隙に充填材が充填されて
おり、
前記基礎型枠は、捨てコンクリートの表面上に設置される第1基礎型枠を備え、
前記第1基礎型枠は、鋼板を用いて円筒形状に形成されている柱脚固定構造。
【請求項2】
前記基礎型枠は、前記第1基礎型枠より上方に設置され、前記第1基礎型枠よりも狭い範囲を包囲する第2基礎型枠をさらに備え、
前記第2基礎型枠は、鋼板を用いて円筒形状に形成されている請求項1に記載の柱脚固定構造。
【請求項3】
前記第2基礎型枠は、前記型枠に支持された拘束材により固定されている請求項2に記載の柱脚固定構造。
【請求項4】
前記補強鉄筋構造は、
前記型枠の側方において上下方向に延びる主筋と、
前記型枠の側方において水平方向に配設されるフープ筋と、を備える請求項1
~3の何れか1項に記載の柱脚固定構造。
【請求項5】
前記仕切部材は、
網目構造を備える請求項1
~4の何れか1項に記載の柱脚固定構造。
【請求項6】
前記仕切部材は、
メタルラスである請求項1~
5の何れか1項に記載の柱脚固定構造。
【請求項7】
前記柱脚は、
前記基礎の上面の上方において側方に突出した支持部材を備え、
前記支持部材は、
前記基礎に接続される請求項1~
6の何れか1項に記載の柱脚固定構造。
【請求項8】
前記基礎は、
前記型枠の周囲に設置されたアンカーボルトを備え、
前記支持部材は、
前記アンカーボルトを介して前記基礎に接続される請求項
7に記載の柱脚固定構造。
【請求項9】
前記柱脚は、
ウェブの両端にフランジが形成されたH形鋼により構成される請求項1~
8の何れか1項に記載の柱脚固定構造。
【請求項10】
前記柱脚は、
前記基礎の上面よりも下方に設けられた板状のリブプレートを備え、
前記リブプレートは、
板面を前記柱脚の立設方向に向けて設置されている請求項
9に記載の柱脚固定構造。
【請求項11】
前記柱脚は、
筒状体である請求項1~8の何れか1項に記載の柱脚固定構造。
【請求項12】
前記柱脚は、
側面に突出部を備える請求項
9~
11の何れか1項に記載の柱脚固定構造。
【請求項13】
前記突出部は、
前記基礎の上面よりも下方に形成されている請求項
12に記載の柱脚固定構造。
【請求項14】
請求項1~
13の何れか1項に記載の柱脚固定構造を備える建築物。
【請求項15】
包囲した空間の内側と外側とを連通する孔を有する仕切部材と前記仕切部材を支持する構造部材とを備える型枠を設置する型枠設置工程と、
前記型枠の側方において上下方向に延びる主筋及び水平方向に延び前記型枠を囲むフープ筋を備える補強鉄筋構造を設置する補強鉄筋構造設置工程と、
前記型枠及び前記補強鉄筋構造の側方を包囲する基礎型枠を設置する基礎型枠設置工程と、
前記型枠の周囲に基礎を打設する基礎打設工程と、
前記型枠の内側に柱脚を挿入し立設する立柱工程と、
前記型枠と前記柱脚との間隙に充填材を注入する注入工程と、を備え
、
前記基礎型枠は、捨てコンクリートの表面上に設置される第1基礎型枠を備え、
前記第1基礎型枠は、鋼板を用いて円筒形状に形成され、
前記基礎打設工程は、前記第1基礎型枠に前記基礎を打設する第1基礎打設工程を含む、柱脚固定構造の施工方法。
【請求項16】
前記基礎型枠は、前記第1基礎型枠より上方に設置され、前記第1基礎型枠よりも狭い範囲を包囲する第2基礎型枠をさらに備え、
前記第2基礎型枠は、鋼板を用いて円筒形状に形成され、
前記基礎打設工程は、前記第1基礎打設工程後に前記第2基礎型枠に前記基礎を打設する第2基礎打設工程をさらに含む、請求項15に記載の柱脚固定構造の施工方法。
【請求項17】
前記第2基礎型枠は、前記型枠に支持された拘束材により固定される請求項16に記載の柱脚固定構造の施工方法。
【請求項18】
前記基礎の上面にアンカーボルトを設置するアンカーボルト設置工程を備える請求項
15~
17の何れか1項に記載の柱脚固定構造の施工方法。
【請求項19】
前記柱脚から側方に突出して形成されたフランジ部と前記アンカーボルトとを接続する請求項
18に記載の柱脚固定構造の施工方法。
【請求項20】
前記注入工程の前に、前記アンカーボルトにナットを取り付け、前記ナットの上に前記フランジ部を載置し、前記ナットの位置調整を行うことにより、前記柱脚の高さ方向の位置調整を行う柱脚位置調整工程を備える請求項
19に記載の柱脚固定構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱脚固定構造、建築物、及び柱脚固定構造の施工方法に関し、特に基礎に埋設された柱脚固定型枠を用いて形成される柱脚固定構造、建築物、及び柱脚固定構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物等の柱脚を固定する場合には、打設されたコンクリートの上面に柱脚を立設し、さらに柱脚の周囲にコンクリートを打設することにより柱脚の下端部を基礎梁に埋め込む柱脚固定構造が知られている。また、上面を開口した筒型容器構造の埋め込み柱脚ケースを基礎梁コンクリート中に埋設し、埋め込み柱脚ケースの中へ鉄骨柱の下端部を挿入し固定して構成される柱脚固定構造が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている柱脚固定構造によれば、捨てコンクリート上の柱建て方位置に設置用脚を介して埋め込み柱脚ケースが設置される。そして、埋め込み柱脚ケースの上端に設けられたフランジ部が露出するように箱抜き状態にした基礎梁コンクリートが打設され、埋め込み柱脚ケースの中へ鉄骨柱の下部が挿入される。鉄骨柱の外周にはフランジが固定されており、そのフランジを埋め込み柱脚ケースのフランジ部に重ねられる。鉄骨柱のフランジは、垂直方向に縦押しボルトがねじ込まれており、埋め込み柱脚ケースのフランジ部には水平方向に横押しボルトがねじ込まれている。鉄骨柱は、縦押しボルトの操作によって高さの調整が行われ、水平方向の横押しボルトの調整によって水平方向の心出し調整が行われる。その後、鉄骨柱のフランジと埋め込み柱脚のフランジ部とは、固定ボルトで締結され、埋め込み柱脚ケースと鉄骨柱との間隙にモルタルが充填され鉄骨柱が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている柱脚固定構造は、埋め込み柱脚ケースと基礎梁コンクリートとの結合力及び支圧効果の向上を図るために、鉄骨柱からの荷重を基礎梁コンクリートに伝達させるための強度を確保した筒型容器構造となっている。また、埋め込み柱脚ケースは、側面に基礎梁コンクリートと柱脚ケースとの間で荷重を伝達させるためのスタッドボルトを設ける必要があり、埋め込み柱脚ケースの構造が複雑でコストが掛かるという課題があった。
【0006】
また、特許文献1に開示されている柱脚固定構造は、鉄骨柱の位置調整を行うために、鉄骨柱のフランジに縦押しボルトを複数備え、埋め込み柱脚ケースのフランジ部には横押しボルトを複数備える。さらに、鉄骨柱の位置調整後に鉄骨柱のフランジと埋め込み柱脚のフランジ部とを固定ボルトで締結し、そのフランジ及びフランジ部は、基礎梁コンクリートに埋め込まれる。そのため、基礎梁コンクリートは、柱脚ケースの上端のフランジ部が露出するように、柱脚ケースの上端の周囲を箱抜き状態となるように凹みを形成する必要がある。そして、鉄骨柱の位置調整及び固定ボルト締結の後に、フランジ及びフランジ部が配置されている基礎梁コンクリートの凹みにコンクリートを打設し、フランジ及びフランジ部を覆うため、施工するにあたり工程が多くなるという課題があった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、柱脚を挿入するために基礎に設けられた挿入穴を形成する型枠の構造を簡易にすることにより、基礎に柱脚を固定する強度を確保しつつ、柱脚固定構造の施工を容易にすることができる柱脚固定構造、建築物、及び柱脚固定構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る柱脚固定構造は、柱脚の下端部の周囲を包囲する型枠と、前記型枠の周囲に打設された基礎と、前記型枠の側方を包囲する補強鉄筋構造と、前記型枠及び前記補強鉄筋構造の側方を包囲する基礎型枠と、を備え、前記型枠は、当該型枠の内側と外側とを連通する孔を有し前記柱脚の下端部の側方を包囲する仕切部材と、前記仕切部材を支持する構造部材と、を備え、前記柱脚の下端部と前記型枠との間隙に充填材が充填されており、前記基礎型枠は、捨てコンクリートの表面上に設置される第1基礎型枠を備え、前記第1基礎型枠は、鋼板を用いて円筒形状に形成されているものである。
【0009】
本発明に係る建築物は、上記柱脚固定構造を備えるものである。
【0010】
本発明に係る柱脚固定構造の施工方法は、包囲した空間の内側と外側とを連通する孔を有する仕切部材と前記仕切部材を支持する構造部材とを備える型枠を設置する型枠設置工程と、前記型枠の側方において上下方向に延びる主筋及び水平方向に延び前記型枠を囲むフープ筋を備える補強鉄筋構造を設置する補強鉄筋構造設置工程と、前記型枠及び前記補強鉄筋構造の側方を包囲する基礎型枠を設置する基礎型枠設置工程と、前記型枠の周囲に基礎を打設する基礎打設工程と、前記型枠の内側に柱脚を挿入し立設する立柱工程と、前記型枠と前記柱脚との間隙に充填材を注入する注入工程と、を備え、前記基礎型枠は、捨てコンクリートの表面上に設置される第1基礎型枠を備え、前記第1基礎型枠は、鋼板を用いて円筒形状に形成され、前記基礎打設工程は、前記第1基礎型枠に前記基礎を打設する第1基礎打設工程を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、仕切部材に型枠の内側と外側とを連通する孔構造が形成されているため、型枠と柱脚の下端部との間隙に充填される充填材は、型枠の外側に形成された基礎と接して凝固する。これにより、充填材と基礎とが直接結合するため、柱脚固定構造は、スタッドボルト等の基礎に荷重を伝達する部材を型枠に設ける必要がなく、かつ柱脚と型枠とを互いに固定する構造を必要とせず、簡易な構造で柱脚を基礎に埋め込み固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る柱脚固定構造100の上面図である。
【
図5】実施の形態1に係る柱脚固定構造100の型枠10の側面図である。
【
図6】実施の形態1に係る柱脚固定構造100の型枠10の断面図である。
【
図7A】実施の形態1に係る柱脚固定構造100の基礎90が形成される前の斜視図である。
【
図7B】実施の形態1に係る柱脚固定構造100の基礎90を形成するために使用される基礎型枠94の変形例を示した斜視図である。
【
図8】実施の形態1に係る柱脚固定構造100の柱脚50の変形例である柱脚150の平面図及び側面図である。
【
図9】実施の形態1に係る柱脚固定構造100の柱脚50の変形例である柱脚250の斜視図である。
【
図10】実施の形態2に係る柱脚固定構造200の断面図である。
【
図11】実施の形態2に係る柱脚固定構造200の柱脚250が設置される前の状態を示す断面図である。
【
図12】実施の形態3に係る柱脚固定構造300の上面図である。
【
図13】実施の形態3に係る柱脚固定構造300の断面図である。
【
図14】実施の形態3に係る柱脚固定構造300に基礎390が形成される前の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面では、各部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、各部品の配置及び向きを限定するものではない。また、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であって、本発明は明細書内の記載のみに限定されるものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の上面図である。
図2は、
図1の柱脚固定構造100の断面図である。
図3は、
図1の柱脚50の下端部の斜視図である。
図4は、
図2の型枠10の斜視図である。なお、
図2は、
図1のA-A部の断面を示している。柱脚固定構造100は、基礎90に柱脚50の下端部51を埋め込み、柱脚50を基礎90に固定するためのものである。柱脚固定構造100は、例えば鉄骨造建物の建築に用いられるものであり、鉄骨造建物の主架構の柱脚の下端部と基礎90との接続部に使用される。柱脚50の下端部51を基礎90に埋め込み固定することにより、柱脚50は露出柱脚と比較して基礎90に対する固定度が向上する。従って、柱脚50を用いた建物は、強度及び剛性が向上し、又は柱脚50を露出柱脚を用いた場合よりも細くすることができる。なお、以下の説明においては、柱脚50が延びる方向を上下方向として説明する。
【0015】
(全体構造)
図2に示される様に、柱脚固定構造100は、基礎90の内部に型枠10が埋め込まれている。柱脚50の下端部51は、型枠10の内側に配置され、型枠10を構成する構造部材11及び仕切部材20により側方を包囲されている。また、柱脚50の下端部51の下方にも仕切部材20が配置されている。型枠10は、基礎90において、上方に向かって開口している穴60を形成する。柱脚50の下端部51は、その穴60に挿入されている。穴60に挿入された柱脚50の下端部51と型枠10との間隙61には充填材が充填されている。なお、実施の形態1において、基礎90を形成する充填材91及び穴60に充填された充填材95として用いられる材料は、コンクリートであるが、その他の材料で構成されていても良い。
【0016】
図1に示される様に、基礎90は、平面視において円形に形成されている。基礎90は、基礎を形成するために捨てコンクリート92の上に設置された基礎型枠94(
図7A又は
図7Bを参照)の内側に充填材91としてコンクリートを充填することにより形成される。基礎型枠94の内側には、コンクリートを充填する前に捨てコンクリート92の上方に底部鉄筋80が配置され、型枠10も捨てコンクリート92の上面に配置されオールアンカー83等の固定手段により固定されている。型枠10は、捨てコンクリート92に固定されることにより、基礎型枠94に充填材91を充填された場合に位置が変動しない。実施の形態1においては、基礎型枠94は、平面視において円形に形成され、基礎90も平面視において円形であるが、この形態のみに限定されるものではない。基礎90は、例えば楕円形、矩形等、必要に応じて形状を変更することができる。
【0017】
(柱脚50)
図3に示される様に、柱脚50は、ウェブ部56の両端にフランジ部57が形成されたH形鋼により構成されている。柱脚50の下端部51の上部には、フランジ部57の外側面に支持部材52として、断面がL字形のアングルが固定されている。支持部材52は、柱脚50の下端部51が基礎90に形成された穴60に挿入されている状態において、基礎90の上面93よりも上方に位置し、基礎90と接続されている。支持部材52は、断面がL字形になっているアングルの一方の板面を柱脚50のフランジ部57の側面に固定することにより、柱脚50に固定されている。支持部材52であるアングルの他方の板面は、柱脚50のフランジ部57の側面に対し直角に配置され、基礎90の上面93に略平行になっている。
【0018】
柱脚50の下端に突出部53が形成されている。突出部53は、柱脚50のフランジ部57の側面から側方に突出している。実施の形態1においては、突出部53は、フランジ部57の側面に板状部材を溶接等の接合手段により接合して形成されている。ただし、突出部53は、
図3に示された形態のみに限定されるものでは無い。突出部53は、例えばフランジ部57の側面に固定されたボルト等のように、側面から突出して形成され、柱脚50の下端部51に固定されていれば、他の形態であっても良い。
【0019】
型枠10の内側に充填材95が注入されると、充填材が突出部53の上下に充填される。実施の形態1においては、充填材95としてコンクリートが型枠10の内側に注入されるため、突出部53の上方には凝固したコンクリートがある。柱脚50に上方向に引き抜く荷重が掛かった場合、柱脚50に掛かった引き抜き荷重は、柱脚50の突出部53の上面から突出部53の上方に位置するコンクリートに伝達される。これにより、柱脚固定構造100は、柱脚50が上方向に引き抜かれる荷重に対抗することができる。
【0020】
柱脚50は、支持部材52よりも下にリブプレート54を備える。リブプレート54は、板状部材をウェブ部56及び2つのフランジ部57に接合して形成されており、板面を上下方向に向けて設置されている。リブプレート54は、フランジ部57の内側面57bとウェブ部56の表面56aとにより三方を囲まれた部分に設置されており、平面視においてウェブ部56の表面56aからフランジ部57の先端57aまで延設されている。
【0021】
型枠10の内側に充填材95が注入されると、充填材95がリブプレート54の上下に充填される。実施の形態1においては、充填材95としてコンクリートが型枠10の内側に注入されるため、リブプレート54の下方には凝固したコンクリートがある。柱脚50に下方向に押し込まれる荷重が掛かった場合、柱脚50に掛かった押し込み荷重は、柱脚50のリブプレート54の下面からリブプレート54の下方に位置するコンクリートに伝達される。これにより、柱脚固定構造100は、柱脚50が下方向に押し込まれる荷重に対抗することができる。
【0022】
(型枠10)
図5は、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の型枠10の側面図である。
図6は、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の型枠10の断面図である。
図6は、
図5のB-B部の断面構造を示している。型枠10は、構造部材11に仕切部材20を取り付けて構成されている。構造部材11は、柱脚50が延びる方向に沿って配置された4本の脚部材14と、脚部材14の上端に取り付けられた上部枠部材12と、脚部材14の下端から所定の高さの位置に取り付けられた下部枠部材15と、を備える。脚部材14の下端は、固定部材13をオールアンカー83等により捨てコンクリート92の上面に固定することができる。
【0023】
上部枠部材12は、平面視において矩形に形成されており、4本の脚部材14のうち隣合う2本の脚部材14の上端同士を接続するように配置されている。下部枠部材15も、平面視において矩形に形成されており、捨てコンクリート92の上面から所定の高さ位置において隣合う脚部材14同士を接続するように配置されている。構造部材11は、それぞれが直方体の稜線に相当する位置に配置され、基礎90に形成される直方体形状の穴60の稜線部分を形成するように構成されている。構造部材11により形成される直方体の側面及び底面に相当する位置に仕切部材20が取り付けられている。仕切部材20は、基礎90に形成される直方体形状の穴60の側面62及び底面63を形成するように構成されている。
【0024】
型枠10は、上部枠部材12と下部枠部材15との間を接続する縦支持部材16を備えていても良い。縦支持部材16は、上下方向に延び、上部枠部材12及び下部枠部材15に両端が固定されている。また、型枠10は、上部枠部材12と下部枠部材15との間の位置において、隣合う脚部材14同士を接続する横支持部材17を備えていても良い。横支持部材17は、水平方向に延び、2本の隣合う脚部材14に両端が固定されている。縦支持部材16及び横支持部材17は、型枠10の側面に配置されている仕切部材20が変形しないように支持する部材である。縦支持部材16及び横支持部材17は、型枠10の周囲に基礎90を形成する充填材91が充填された場合に仕切部材20が変形しないように支持する。
【0025】
(仕切部材20)
実施の形態1において、仕切部材20は、ラス材により構成されている。ラス材は、例えば、薄い金属板に所定の一方向に延びる切り込みを入れて、切り込みに直交する方向に金属板を引っ張ることにより網目を形成したエキスパンデッドメタルラスである。又は、ラス材は、針金を編んで形成されたワイヤーラスであっても良い。ただし、仕切部材20は、基礎90を形成する充填材91が型枠10の内側に流入せず、かつ型枠10の内側(基礎90に形成された穴60の内部)に注入された充填材95と型枠10の外側の充填材91とが接触できる構造であれば、その他の形態を取ることができる。例えば、複数の孔を形成した金属板であって、孔が型枠10の内側と外側とを連通するように形成されたものを仕切部材20として使用しても良い。
【0026】
柱脚固定構造100は、仕切部材20を備えることにより、型枠10の外側にある充填材91と型枠10の内側にある充填材95とを直接結合することができる。そのため、仕切部材の内側と外側とが遮断され充填材91及び95が接触することがない従来の柱脚固定構造の型枠と比較して、実施の形態1に係る柱脚固定構造100は、型枠10と基礎との結合力を確保するためのスタッドボルト等の構造を必要としない。柱脚固定構造100は、柱脚50に掛かった荷重が型枠10の内側にある充填材95に伝達され、型枠10の内側の充填材から直接型枠10の外側にある充填材91に伝達される。そのため、柱脚固定構造100は、型枠10の内側の充填材95と外側の充填材91とが一体となって柱脚50に掛かった荷重に対し対抗することができる。
【0027】
(柱脚固定構造100の施工方法)
以下に、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の施工方法について説明する。まず、地盤上に打設された捨てコンクリート92上に基礎90を形成するための基礎型枠94及び基礎90の内部に埋め込まれる底部鉄筋80が配置される。
【0028】
図7Aは、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の基礎90が形成される前の斜視図である。
図7Bは、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の基礎90を形成するために使用される基礎型枠94の変形例を示した斜視図である。
図7A及び
図7Bに示される様に、捨てコンクリート92上に型枠10が固定される。なお、
図7Aに示された基礎型枠94の形状及び構造は、一例であり、この形態に限定されるものではない。例えば、基礎型枠94は、
図7Bに示される様に平面視において矩形に形成されていても良いし、その他の形態であっても良い。実施の形態1においては、
図2に示される様に、基礎90の下部に埋め込まれる底部鉄筋80の上方に柱脚50の下端部51が挿入される穴60が形成される。そのため、基礎型枠94及び底部鉄筋80を設置した後に型枠10を設置しているが、基礎型枠94及び底部鉄筋80の構造に応じて設置する順番は適宜変更することができる。捨てコンクリート92上に型枠10を設置する工程を型枠設置工程と称する。
【0029】
基礎90を形成する充填材91を基礎型枠94に注入出来る状態かつ型枠10が設置された後に、型枠10の周囲に充填材91としてコンクリートが注入される。
図2に示される様に、基礎90を形成する充填材91は、型枠10の上部枠部材12の上面と略同一面となるように充填される。型枠10の周囲に基礎90が打設される工程を基礎打設工程と称する。なお、捨てコンクリート92上に基礎型枠94を設置する工程を、基礎型枠設置工程と称する。基礎型枠設置工程は、基礎打設工程に含まれる。
【0030】
基礎90を形成する充填材91が打設されると、基礎90の上面93に矩形の開口を有する穴60が形成される。その穴60の周囲にアンカーボルト81(
図2参照)が設置される。アンカーボルト81は、打設された基礎90の上面93から打ち込まれて設置される打ちこみアンカーである。アンカーボルト81は、基礎90が打設された後に設置されることにより、精度良く設置することができる。ただし、アンカーボルト81は、基礎90を打設する前に基礎90の内部に配置される鉄筋などに固定して設置されていても良い。この工程をアンカーボルト設置工程と称する。
【0031】
アンカーボルト81が基礎90に設置された後に、柱脚50が基礎90に形成された穴60に挿入される。柱脚50の支持部材52の端部に上下方向に貫通して設けられた貫通孔52a(
図3参照)にアンカーボルト81(
図2参照)が挿通される。支持部材52は、アンカーボルト81に螺合したナット82により高さ方向の位置が調整される。ナット82は、アンカーボルト81において下方に螺合されているナット86により所望の高さに固定される。柱脚50の傾き及び高さが調整された後、支持部材52は、ナット85を締結してアンカーボルト81に固定される。これにより、柱脚50は、アンカーボルト81を介して基礎90に接続され、位置決めされる。なお、支持部材52に設けられた貫通孔52aがアンカーボルト81の外径に対し大きく形成されることにより、柱脚50は水平方向位置の調整も可能となる。柱脚固定構造100は、アンカーボルト81の設置精度に応じて、水平方向位置調整が可能になるように構成しても良い。以上の工程を立柱工程と称する。また、特に柱脚50の位置を調整する工程を柱脚位置調整工程と称する。柱脚位置調整工程は、立柱工程に含まれる。
【0032】
穴60に柱脚50が立てられ、柱脚50の位置調整を行った後に、穴60の内部に充填材95としてコンクリートが注入される。型枠10と柱脚50の下端部51との間隙61は、隙間が確保されており、充填材95の充填が容易である。また、柱脚50として
図3に示されるH形鋼が用いられる場合は、柱脚50の2つのフランジ部57の間から充填材95を注入することができるため、作業が容易である。この工程を、注入工程と称する。
【0033】
柱脚50は、アンカーボルト81を介して基礎90に接続され、ナット82、85、及び86を締結することにより固定されているため、注入工程においても位置が変動しない。
【0034】
(柱脚固定構造100の作用)
以上に説明したように、柱脚固定構造100は、柱脚50の下端部51の周囲を包囲する型枠10と、型枠10の周囲に打設された基礎90と、を備える。型枠10は、型枠10の内側と外側とを連通する孔を有し柱脚50の下端部51を包囲する仕切部材20と、仕切部材20を支持する構造部材11と、を備える。そして、柱脚50の下端部51と型枠10との間隙61に充填材95が充填されている。
このように構成されることにより、柱脚固定構造100は、基礎90と直接結合している型枠10の内側の充填材95により柱脚50の下端部51が固定される。従って、柱脚50に掛かる荷重が基礎90に直接伝達されることになり、柱脚固定構造100は、柱脚50の固定強度を確保することができる。また、型枠10は、簡易な構造であり、基礎90との結合力を確保するための部品を必要としないため、コストが低減され、重量が低減されて設置も容易である。
【0035】
仕切部材20は、網目構造を備える、例えばエキスパンデッドメタルラスである。このように構成されることにより、型枠10の内側の充填材95と外側の充填材91とは、網目構造により形成されている複数の孔を通じて接触するため、接触する面積が大きくなり、結合力が高くなる。また、仕切部材20は、網目構造となっていることにより軽量になり、型枠10全体も重量が低減する。
【0036】
柱脚50は、基礎90の上面93の上方において側方に突出した支持部材52を備える。支持部材52は、基礎90に接続される。これにより、柱脚50は、基礎90に対し直接接続されて位置決めされるため、位置精度を出しやすい。また、基礎90は、型枠10の周囲に設置されたアンカーボルト81を備える。そして、支持部材52は、アンカーボルト81を介して基礎90に接続されている。これにより、柱脚50は、支持部材52をアンカーボルト81に締結固定することにより容易に位置決めができる。また、アンカーボルト81にナット82を螺合させて支持部材52の高さ位置を調整できるため、柱脚50の高さ及び傾きを容易に調整出来る。さらに、柱脚50は、アンカーボルト81に固定されることにより、穴60に充填材95を充填する際に位置ずれが発生せず、精度良く施工できる。
【0037】
柱脚50は、ウェブ部56の両端にフランジ部57が形成されたH形鋼により構成される。柱脚50は、基礎90の上面93よりも下方に設けられた板状のリブプレート54を備える。そして、リブプレート54は、板面を柱脚50の立設方向に向けて設置されている。
【0038】
柱脚50は、側面に突出部53を備える。また、突出部53は、基礎90の上面93よりも下方に形成されている。これにより、柱脚50に掛かる引き抜き方向の荷重が型枠10の内側に充填された充填材95に伝達するため、柱脚固定構造100は、柱脚50の引き抜き方向の荷重に対し対抗することができる。突出部53は、柱脚50の下端部51の下端に設置されることにより、突出部53の上方に位置するコンクリートの高さ方向寸法が大きくなる。そのため、引き抜き荷重が掛かるコンクリートのせん断面積を大きくすることができ、柱脚固定構造100は、引き抜き荷重に対し柱脚50をより強固に固定することが可能となる。
【0039】
(変形例)
図8は、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の柱脚50の変形例である柱脚150の平面図及び側面図である。なお、
図8(a)は、平面図であり、
図8(b)は側面図である。柱脚固定構造100に用いられる柱脚50は、
図8に示される様な、筒状体のコラム又は角形鋼管により構成された柱脚150であっても良い。この場合、H形鋼を用いた柱脚50のようにリブプレート54を配置することができないため、柱脚150の側面に突出部154を設けることにより柱脚150に加わる押し込み方向の荷重を受ける。柱脚150においては、支持部材52と下端の突出部53との間の位置の柱脚150の側面に突出部154を4箇所設けている。突出部154の形態は、
図8に示される形態に限定されず、設置する数量及び形状は適宜変更することができる。
【0040】
図9は、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の柱脚50の変形例である柱脚250の斜視図である。柱脚固定構造100に用いられる柱脚50の支持部材52は、例えば
図9に示される様な、断面形状がT字形状の支持部材152であっても良い。
【0041】
実施の形態2.
次に実施の形態2に係る柱脚固定構造200について説明する。実施の形態2に係る柱脚固定構造200は、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の型枠10の代わりに紙ボイド管210を用いたものである。実施の形態2では、実施の形態1に対する変更点を中心に説明する。実施の形態2に係る柱脚固定構造200の各部については、各図面において同一の機能を有するものは実施の形態1の説明で使用した図面と同一の符号を付して表示するものとする。
【0042】
図10は、実施の形態2に係る柱脚固定構造200の断面図である。
図11は、実施の形態2に係る柱脚固定構造200の柱脚250が設置される前の状態を示す断面図である。柱脚固定構造200の基礎90に形成される穴60は、紙ボイド管210により形成しても良い。紙ボイド管210は、基礎打設工程の前に基礎型枠94内に固定される。筒形状の紙ボイド管210の底面側の開口は、基礎90を形成する充填材91が穴60内に侵入しないように塞がれている。
【0043】
紙ボイド管210は、少なくとも穴60に充填材が注入される注入工程の前には除去される。これを除去工程と称する。また、除去工程が終了し、注入工程が開始される前に、穴60の内側壁面に接着剤を塗布しても良い。これにより、注入工程で穴60に充填される充填材95と基礎打設工程で打設された充填材91との結合力が増加する。
【0044】
(柱脚固定構造200の作用)
実施の形態2に係る柱脚固定構造200によれば、穴60を形成するための型枠である紙ボイド管210を除去してから充填材95を注入するため、穴60に充填された充填材95と基礎打設工程で打設された充填材91との接触面積が増加して結合力が向上する。また、柱脚固定構造200を簡易な構成にできるという利点がある。なお、穴60を形成する型枠として用いられる紙ボイド管210は、注入工程前に除去出来るものであれば、例えば樹脂、金属等のその他の材料により構成されていても良い。
【0045】
実施の形態3.
次に実施の形態3に係る柱脚固定構造300について説明する。実施の形態3に係る柱脚固定構造300は、実施の形態1に係る柱脚固定構造100の型枠10の周囲に補強鉄筋構造40を追加したものである。実施の形態3では、実施の形態1に対する変更点を中心に説明する。実施の形態3に係る柱脚固定構造300の各部については、各図面において同一の機能を有するものは実施の形態1の説明で使用した図面と同一の符号を付して表示するものとする。
【0046】
図12は、実施の形態3に係る柱脚固定構造300の上面図である。
図13は、実施の形態3に係る柱脚固定構造300の断面図である。柱脚固定構造300は、基礎390の内部に埋め込まれている型枠10の側面62の周囲を囲むように補強鉄筋構造40を備える。補強鉄筋構造40は、型枠10の側方において上下方向に延びる主筋41と、型枠10の側方において水平方向に配設されるフープ筋42と、を備える。主筋41とフープ筋42とは互いに交差するように配置され、それぞれの交差部は結束線などの接合手段により接合されている。主筋41は、型枠10の側面62に沿って配置されており、上面視において矩形に配置される。基礎390は、基礎上部390bが補強鉄筋構造40の周囲に少なくとも最小限必要な被り厚さの充填材91を有するが、実施の形態1の基礎90と比較して基礎上部390bの大部分が除去されている。基礎上部390bは、いわゆる柱型である。柱脚固定構造300は、基礎上部390bが小さいため、周囲に構造物を配置することができる。また、柱脚固定構造300は、基礎390を構成する充填材91の量を抑えることができ、強度を確保しつつコストが抑えられる。
【0047】
図13に示すように、主筋41は、U字形に形成され、上下に延びる部分が型枠10の対向する2つの側面62に沿って配置され、水平方向に延びる部分が型枠10の底面63に沿って配置されている。なお、主筋41は、U字形のみに限定されるものではなく、例えばL字形に形成され、主筋41の下端部が外側に突出するように配置されても良い。
【0048】
柱脚固定構造300は、捨てコンクリート92の上面に沿って配置されている底部鉄筋80の上方に上部鉄筋380を備える。上部鉄筋380は、底部鉄筋80と同様に格子状に鉄筋を組み合わせて構成されているが、中央部が型枠10及び補強鉄筋構造40を配置できるように一部の鉄筋が除去されている。上部鉄筋380の中央部の鉄筋が除去された領域は、型枠10及び補強鉄筋構造40の外周の形状に沿って矩形になっている。上部鉄筋380は、上面視において外形の大きい基礎下部390aの内部に配置されるものである。上部鉄筋380は、基礎390に必要な強度に応じ設置されるものである。従って、要求される強度によっては、柱脚固定構造300は、上部鉄筋380を備えていなくともよい。底部鉄筋80及び上部鉄筋380は、ジャバラ鉄筋により構成されていても良い。ジャバラ鉄筋により構成されることにより、特殊技能者である鉄筋工を必要とせずに施工が可能となる。
【0049】
また、補強鉄筋構造40は、工場等の作業現場以外において組み立てられている。従って、補強鉄筋構造40も、特殊技能者である鉄筋工を必要とせず施工が可能となる。
【0050】
図12に示される様に、基礎390の基礎下部390a及び基礎上部390bは、平面視において円柱形に形成されているが、円柱形に限定されるものではない。基礎390は、基礎を形成するために捨てコンクリート92の上に設置された基礎型枠394a及び394b(
図14を参照)の内側に充填材91としてコンクリートを充填することにより形成される。基礎390の形状は、基礎型枠394次第で四角柱形状等のそのほかの形状を取ることもできる。
【0051】
図14は、実施の形態3に係る柱脚固定構造300に基礎390が形成される前の斜視図である。実施の形態3に係る柱脚固定構造300は、実施の形態1に係る柱脚固定構造100と同様に捨てコンクリート92上に型枠10が固定され、また底部鉄筋80が配置され、さらに型枠10の周囲に補強鉄筋構造40が配置される。補強鉄筋構造40は、捨てコンクリート92上に型枠10を配置する前に工場などの別の場所で型枠10と一体化されていても良い。また、補強鉄筋構造40は、捨てコンクリート92上において型枠10の周囲に設置されても良い。補強鉄筋構造40を型枠10の周りに設置する工程を補強鉄筋構造設置工程と称する。補強鉄筋構造設置工程は、型枠10を捨てコンクリート92上に設置する型枠設置工程の前に実施することができる。なお、補強鉄筋構造設置工程は、型枠設置工程の後に実施しても良い。この場合は、予め組立てられた補強鉄筋構造40を型枠10の周りに配置するか、型枠10の周りに補強鉄筋構造40を構築することになる。後者の場合、補強鉄筋構造設置工程の際に、特殊技能者である鉄筋工が必要となる。
【0052】
底部鉄筋80の上方には上部鉄筋380が設置される。なお、
図14において底部鉄筋80は、表示を省略されている。上部鉄筋380は、型枠10及び補強鉄筋構造40が捨てコンクリート92上に設置された後に、型枠10及び補強鉄筋構造40の上方からかぶせるように配置される。つまり、上部鉄筋380の中央部にある中抜き部381に型枠10及び補強鉄筋構造40を通すようにして上部鉄筋380は配置される。上部鉄筋380は、支持材(図示無し)により基礎下部390aの上面393aの近傍に所定のかぶり厚さを持って配置される。なお、上部鉄筋380は、基礎390に必要とされる強度によっては省略される場合がある。
【0053】
型枠10、補強鉄筋構造40、底部鉄筋80及び上部鉄筋380が設置された後に、その周囲に基礎型枠394aが配置される。基礎型枠394aは、柱脚固定構造300の下部において捨てコンクリート92の直上に形成される基礎下部390aを形成するためのものである。基礎型枠394aは、実施の形態1における基礎型枠94と同様に円筒形状の型枠であるが、高さが低く、型枠10の仕切部材20の下部に至る程度の高さになっている。なお、基礎型枠394aは、円筒形状の型枠に限定されるものではなく、
図7Bに示すような矩形の型枠であっても良い。矩形の基礎型枠の場合、外側から基礎型枠を支持する構造が必要となるが、基礎型枠94及び394aの様な薄い鋼板を用いた円筒形状の基礎型枠の場合、形状を保持するための拘束材96により、基礎型枠94及び394aの内部に充填材91を流し込んだ状態においても形状を保持することが可能となる。基礎型枠94、394a及び394bの筒状体を形成する鋼板は、例えば0.6mmの厚さで形成されている。また、基礎型枠394aの捨てコンクリート92からの高さは、
図13に示される高さのみに限定されず、適宜変更することができる。基礎型枠394aは、第1基礎型枠と称する場合がある。
【0054】
拘束材96は、基礎型枠94及び394aに複数設置されていてもよい。複数の拘束材96が、基礎型枠94及び394aと接続されている部分を固定部97とする。複数の固定部97は、それぞれが隣合う固定部97同士を仮想線で繋いで形成される仮想多角形の重心が基礎型枠94及び394aが形成する筒状体の中心部に位置するように配置されている。これにより、拘束材96は、充填材91が充填された状態においても基礎型枠94及び394aの形状を保持することができる。
【0055】
基礎型枠394bは、上部鉄筋380の上方に配置される。基礎型枠394bも基礎型枠394aと同様に円筒形状に形成されている。
図14に示す様に、基礎型枠394bは、型枠10の上面から外側、即ち型枠10の側方に向かって張り出した拘束材396に固定されている。拘束材396は、型枠10の上面に固定されており、上方から見て矩形に形成された上部枠部材12の4つの各辺から外側に向かって張り出すようにして固定されている。なお、拘束材396は、型枠10により支持され基礎型枠394bを固定できる形態であれば、
図14に示されたもの以外の形態をとることもできる。基礎型枠394bは、第2基礎型枠と称する場合がある。
【0056】
基礎型枠394bは、上部枠部材12の先端部、即ち上部枠部材12に固定されている側の端部とは反対の端部に固定されている。
図14に示す様に、基礎型枠394の上端部は、4カ所に固定部397が設けられ、拘束材396と固定されている。拘束材396は、円筒形状である基礎型枠394bの上端部の4カ所を拘束し、基礎型枠394bの形状を保持するとともに、基礎型枠394bの型枠10に対する位置を決める。
【0057】
上記のように、基礎型枠394a及び394bが設置された状態で、まず、下部に位置する基礎型枠394aの内部に充填材91が充填される。基礎型枠394aの内部に充填材91が充填された状態で、充填材91は、ある程度固化するまで養生される。この工程を第1基礎打設工程と呼ぶ。基礎型枠394aの内部に充填された充填材91が流動しない程度に固化した状態になったら、上部に位置する基礎型枠394bに充填材91が充填される。この工程を第2基礎打設工程と呼ぶ。実施の形態3に係る基礎型枠394bは、型枠10に固定され基礎型枠394bの形状を保持できる拘束材396により固定されるため、外部からの支持構造を必要とすることがない。そのため、上記のように下部の基礎型枠394aにより形成される基礎下部390aが固化しなくとも、第1基礎打設工程を実施することができる。つまり、基礎型枠394bは、基礎下部390aが流動しない状態になれば基礎型枠394b内に充填材91を充填して、基礎上部390bを形成することができる。従って、実施の形態3に係る基礎型枠394bによれば、基礎下部390aを作り始めてから基礎上部390bを作り始めるまでの時間を短縮することができ、基礎390の形成に掛かる時間を短縮することができる。また、基礎型枠394a及び基礎型枠394bは、比較的薄い鋼板を用いており、上記のように、従来の木製の型枠の倍に必要としていた支持する部材を外側に設置する必要がない。これにより、基礎型枠394a及び395bを捨て型枠として、基礎390とともに基礎型枠394a及び395bを地盤に埋め戻すことができる。即ち、基礎型枠394a及び基礎型枠394bを用いることによって、木製の型枠を用いた場合に必要な基礎390を埋め戻す前の型枠の解体作業が不要となる。これにより、基礎390の施工期間の短縮が図れる。
【0058】
上記の基礎打設工程、即ち第1基礎打設工程及び第2基礎打設工程が完了した状態では、基礎390の上面393bに矩形の開口を有する穴60が形成される。その後は、実施の形態1と同様に、アンカーボルト設置工程、立柱工程及び注入工程が実施される。
【0059】
実施の形態3に係る柱脚固定構造300によれば、基礎390を形成する充填材91の量が削減され、コストが低減し、基礎390の領域398の部分の省スペース化を実現できる。そのため、柱脚固定構造300は、周囲に別の構造物を配置できるという利点がある。さらに、基礎390は、基礎下部390a及び基礎上部390bのように段差を有する形状であるが、簡易な構造の基礎型枠394a及び394bを用いて短期間で形成することができる。
【0060】
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。例えば、型枠10及び紙ボイド管210の平面視における形状は、矩形だけでなく円形等のその他の形状に変更することができる。また、型枠10の構造部材11の構造は、
図4~
図6に示された形状に限定されるものではなく、例えば板材又は棒材等の材料を使用して適宜変更できる。また、各実施の形態に開示された技術は、組み合わせて用いることができる。要するに、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【符号の説明】
【0061】
10 型枠、11 構造部材、12 上部枠部材、13 固定部材、14 脚部材、15 下部枠部材、16 縦支持部材、17 横支持部材、20 仕切部材、40 補強鉄筋構造、41 主筋、42 フープ筋、50 柱脚、51 下端部、52 支持部材、52a 貫通孔、53 突出部、54 リブプレート、56 ウェブ部、56a 表面、57 フランジ部、57a 先端、57b 内側面、60 穴、61 間隙、62 側面、63 底面、80 底部鉄筋、81 アンカーボルト、82 ナット、85 ナット、86 ナット、90 基礎、91 充填材、92 捨てコンクリート、93 上面、94 基礎型枠、95 充填材、96 拘束材、97 固定部、100 柱脚固定構造、150 柱脚、152 支持部材、154 突出部、200 柱脚固定構造、210 紙ボイド管、250 柱脚、300 柱脚固定構造、380 上部鉄筋、381 中抜き部、390 基礎、390a 基礎下部、390b 基礎上部、391a 基礎下部、393a 上面、393b 上面、394 基礎型枠、394a 基礎型枠、394b 基礎型枠、396 拘束材、397 固定部、398 領域。