IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許7423422診断装置、診断方法および診断プログラム
<>
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図1
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図2
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図3
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図4
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図5
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図6
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図7
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図8
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図9
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図10
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図11
  • 特許-診断装置、診断方法および診断プログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】診断装置、診断方法および診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/00 20190101AFI20240122BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240122BHJP
【FI】
G01M13/00
G01M99/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020092219
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021188958
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼山 享大
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 伊智郎
(72)【発明者】
【氏名】井川 友博
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 純也
(72)【発明者】
【氏名】尾場瀬 公人
(72)【発明者】
【氏名】中井 元気
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109059816(CN,A)
【文献】中国実用新案第201488848(CN,U)
【文献】特開2016-121956(JP,A)
【文献】特開平10-176977(JP,A)
【文献】特開2005-257416(JP,A)
【文献】YEH Chih-Jung et al.,Development of a Test Bench for Tuning and Validating Electric Power Steering Control Method,Proceedings of the 2007 IEEE Vehicle Power and Propulsion Conference,2007年09月09日,pp.618-622,DOI:10.1109/VPPC.2007.4544197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00~13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する被駆動体の診断を行う診断装置であって、
前記被駆動体は、外付けのモータの駆動により回転し、
前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる実運転データに基づき、前記被駆動体と前記モータの組み合わせの推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と前記推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体及びモータの3次元テーブルを求め、
基準状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである基準状態の3次元テーブルを求め、
前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出する診断装置。
【請求項2】
異常状態でない正常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである正常状態の3次元テーブルに基づく正常状態の推定トルク抵抗値の閾値の分布を所定の閾値分布とし、
前記実運転データに基づき求められた前記判定用3次元テーブルと前記所定の閾値分布とを比較し、比較結果を2値出力する請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記基準状態の3次元テーブルは、前記モータのみを駆動させて得られるモータ運転データに基づき前記モータのモータ推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記モータ推定トルク抵抗値との3次元テーブルであるモータの3次元テーブルであり、
前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記モータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体の3次元テーブルを算出する請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項4】
各前記角速度ごとに前記被駆動体の推定トルク抵抗値の平均値である被駆動体の平均推定トルク抵抗値を算出し、
前記被駆動体の3次元テーブルと前記被駆動体の平均推定トルク抵抗値との差分から被駆動体の変化量の3次元テーブルを算出する請求項3に記載の診断装置。
【請求項5】
前記基準状態の3次元テーブルは、設定された所定の状態において前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる所定状態運転データに基づき前記被駆動体と前記モータの組み合わせの所定状態の推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記所定状態の推定トルク抵抗値との3次元テーブルである所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルであり、
前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルを算出する請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項6】
各前記角速度ごとに前記被駆動体及び前記モータの推定トルク抵抗値の平均値である被駆動体及びモータの平均推定トルク抵抗値を算出し、
前記被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルと前記被駆動体及びモータの平均推定トルク抵抗値との差分から被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルを算出する請求項5に記載の診断装置。
【請求項7】
前記実運転データは、各前記角速度ごとに前記角度及び前記推定トルク抵抗値を取得したデータであり、
等間隔化した角度範囲内の前記推定トルク抵抗値のうち最大値が抽出されて前記推定トルク抵抗値として算出される請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項8】
前記実運転データは、各前記角速度ごとに前記角度及び前記推定トルク抵抗値を取得したデータであり、
等間隔化した角度範囲内の前記推定トルク抵抗値のうち最小値が抽出されて前記推定トルク抵抗値として算出される請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項9】
回転軸を有する被駆動体の診断を行う診断方法であって、
前記被駆動体は、外付けのモータの駆動により回転し、
前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる実運転データに基づき、前記被駆動体と前記モータの組み合わせの推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と前記推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体及びモータの3次元テーブルを求める工程と、
基準状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである基準状態の3次元テーブルを求める工程と、
前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出する工程とを有する診断方法。
【請求項10】
前記基準状態の3次元テーブルは、前記モータのみを駆動させて得られるモータ運転データに基づき前記モータのモータ推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記モータ推定トルク抵抗値との3次元テーブルであるモータの3次元テーブルであり、
前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記モータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体の3次元テーブルを算出する工程を有する請求項9に記載の診断方法。
【請求項11】
前記基準状態の3次元テーブルは、設定された所定の状態において前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる所定状態運転データに基づき前記被駆動体と前記モータの組み合わせの所定状態の推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記所定状態の推定トルク抵抗値との3次元テーブルである所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルであり、
前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルを算出する工程を備える請求項9に記載の診断方法。
【請求項12】
回転軸を有する被駆動体の診断を行う診断プログラムであって、
前記被駆動体は、外付けのモータの駆動により回転し、
前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる実運転データに基づき、前記被駆動体と前記モータの組み合わせの推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と前記推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体及びモータの3次元テーブルを求めるステップと、
基準状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである基準状態の3次元テーブルを求めるステップと、
前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出するステップとを有する診断プログラム。
【請求項13】
前記基準状態の3次元テーブルは、前記モータのみを駆動させて得られるモータ運転データに基づき前記モータのモータ推定トルク抵抗値を算出し求められる角度と角速度と前記モータ推定トルク抵抗値との3次元テーブルであるモータの3次元テーブルであり、
前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記モータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体の3次元テーブルを算出するステップを有する請求項12に記載の診断プログラム。
【請求項14】
前記基準状態の3次元テーブルは、設定された所定の状態において前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる所定状態運転データに基づき前記被駆動体と前記モータの組み合わせの所定状態の推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記所定状態の推定トルク抵抗値との3次元テーブルである所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルであり、
前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルを算出するステップを有する請求項12に記載の診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転軸を有する被駆動体の診断装置、診断方法および診断プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロケットエンジンのターボポンプや工作機械などの回転軸を有する被駆動体は、その機械としての健全性を評価するため適時に健全性診断が行われる。被駆動体は、それ自身のみでは駆動できないことから、診断する際は作業熟練者による手作業にて回転が行われ、異常の有無が診断されている。
しかし、経験に基づく診断では、その作業者の感覚や熟練度に頼ることとなり、一定の品質を保つことが困難である。
【0003】
そこで、特許文献1に開示があるように、被駆動体をモータで駆動することが検討されている。特許文献1には、モータの回転速度が予め定められた基準速度を上回り、かつ、推定されたモータの外乱トルクが予め定められた基準トルクを下回ると、異常が発生したと判断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-219991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、モータの回転速度と外乱トルクの2変数による診断であるため、その診断では診断対象である被駆動体の異常の有無の判断にとどまる、という問題があった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、被駆動体の異常の有無に加えて異常の発生状況を判定可能な診断装置、診断方法および診断プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の診断装置は、回転軸を有する被駆動体の診断を行う診断装置であって、前記被駆動体は、外付けのモータの駆動により回転し、前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる実運転データに基づき、前記被駆動体と前記モータの組み合わせの推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と前記推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体及びモータの3次元テーブルを求め、基準状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである基準状態の3次元テーブルを求め、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出する。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の診断方法は、回転軸を有する被駆動体の診断を行う診断方法であって、前記被駆動体は、外付けのモータの駆動により回転し、前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる実運転データに基づき、前記被駆動体と前記モータの組み合わせの推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と前記推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体及びモータの3次元テーブルを求める工程と、基準状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである基準状態の3次元テーブルを求める工程と、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出する工程とを有する。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の診断プログラムは、回転軸を有する被駆動体の診断を行う診断プログラムであって、前記被駆動体は、外付けのモータの駆動により回転し、前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる実運転データに基づき、前記被駆動体と前記モータの組み合わせの推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と前記推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体及びモータの3次元テーブルを求めるステップと、基準状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである基準状態の3次元テーブルを求めるステップと、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出するステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、3次元テーブルを用いるので、異常の有無に加えて異常の発生状況を判定することができる。
また、モータを用いて被駆動体の診断を行うので、作業熟練者による手作業を必要とせず、検査の均質化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の制御を示すフローチャートである。
図2】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の角速度ごとの角度及びトルクのタイムチャートを示す図である。
図3】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の角速度ごとの角度と推定トルク抵抗値の関係を示す図である。
図4】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルの図である。
図5】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の通常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルの図である。
図6】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の異常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルの図である。
図7】本開示の幾つかの実施形態における診断装置が取得する異常分布の図である。
図8】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の通常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルの図である。
図9】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の異常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルの図である。
図10】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の通常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブル及び推定トルク抵抗値の平均値の図である。
図11】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の異常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブル及び推定トルク抵抗値の平均値の図である。
図12】本開示の幾つかの実施形態における診断装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る診断装置、診断方法および診断プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図12には、本開示の幾つかの実施形態に係る診断装置の概略構成が図に示されている。
本開示に係る診断装置50は、回転軸を有する被駆動体10と、被駆動体10を回転させる外付けのモータ20と、の組み合わせに対して適用される。
【0014】
被駆動体10は、それ自身のみでは回転不可であり、例えばロケットエンジンのターボポンプや、工作機械などが挙げられるが、回転軸を有するものであれば、その種類は問わない。
モータ20は、診断装置50による診断を行う場合に被駆動体10に外付けされるモータ20である。診断時において、モータ20の駆動により被駆動体10は回転する。
診断装置50は、例えば被駆動体10の健全性を診断する装置であり、モータ20から運転データを取得して診断を行う。
【0015】
診断装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0016】
図1には、本開示の幾つかの実施形態に係る診断装置の制御がフローチャートに示されている。
診断装置50は、被駆動体10の診断を始めると、被駆動体10をモータ20で駆動させて実運転データを取得する(S101)。実運転データは、複数の速度条件で試験を実施して取得する。取得される実運転データは、被駆動体10及びモータ20の特性を含む。
【0017】
図2には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置の角速度ごとの角度及び推定トルク抵抗値のタイムチャートが図に示されている。
図2に示されるように、診断装置50は、被駆動体10とモータ20の組み合わせについて一定の角速度における角度及びトルクのタイムチャートを取得する。図2のグラフにおいて、縦軸は角度またはトルク、横軸は時間であり、一点鎖線が角度のタイムチャート、実線がトルクのタイムチャートを示す。角度は、時間に比例するように右肩上がりのほぼ直線を示す。トルクは、初めに急激に増加し、ピーク値を示した後減少してその後一定の範囲に収束する。
【0018】
本実施形態の診断装置50は、角速度1deg/sから600deg/sまで1deg/sずつ計600パターンの試験を行い、実運転データを時系列データとして取得するものとする。なお、診断装置50が取得する実運転データの角速度の値や、角速度の区切りは一例である。例えば、実運転データの角速度の値は、被駆動体10の駆動角速度範囲が反映されるとしてもよい。また例えば角速度の区切りは異常状態における分布が判別可能な分解能であればよく、例えば5deg/sずつなどであってもよい。
なお、
【0019】
次に図1のステップS102において、診断装置50は各角速度における推定トルク抵抗値を算出する。
抵抗トルクの推定については、外乱オブザーバにて推定を行う、トルクセンサを用いるなど、様々な方法を採り得るが、その方法については問わない。また、推定トルク抵抗値の算出は、起動直後などを除く被駆動体10及びモータ20の速度が安定した状態で行われるものとする。
【0020】
図3には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置の角速度ごとの角度と推定トルク抵抗値の関係が図に示されている。
図3のグラフにおいて、縦軸は推定トルク抵抗値、横軸は角度である。本実施形態の診断装置50は、前述したように角速度1deg/sから600deg/sまで1deg/sずつ計600パターンの試験を行い取得した実運転データから、各角速度における推定トルク抵抗値を推定して推定トルク抵抗値テーブルを取得する。
【0021】
次に図1のステップS103において、診断装置50は等間隔化した角度範囲内の推定トルク抵抗値のうち、最大値を抽出する。
診断装置50は、各角速度の図3の推定トルク抵抗値テーブルに対し、例えば1degずつに等間隔化し、それぞれの角度範囲内における推定トルク抵抗値の最大値を各角度範囲ごとに抽出する。ここで、本実施形態では角度範囲を1degとしたが、角度範囲は異常状態における分布が判別可能な分解能であればよく、例えば5degずつなどであってもよい。
【0022】
次に図1のステップS104において、診断装置50は角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルを作成する。
診断装置50は、円柱座標系の半径方向に角速度(角速度指令(対数))、角度方向(周方向)に等間隔化した角度、軸方向(高さ方向)に推定トルク抵抗値(最大値)をとり、3次元テーブルを作成する。
【0023】
図4には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルが図に示されている。
図4に示されるように、角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルは、淡色であるほど推定トルク抵抗値が正方向に大きく、濃色であるほど推定トルク抵抗値が負方向に大きいことを示す。角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルは、角度および角速度を入力とし、推定トルク抵抗値を出力とできることから、推定トルク抵抗値の分布であるともいえる。
【0024】
次に図1のステップS105において、診断装置50はステップS104で取得した3次元テーブルと基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出する。
【0025】
図5には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置の通常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルが図に示されている。
本開示における通常状態とは、異常が発生している異常状態を除く、通常時の状態であるとする。
図5の左の図は、被駆動体10及びモータ20の3次元テーブルを示す。図5の中央の図は、後述する基準状態であるモータ20の3次元テーブルを示す。図5の右の図は、被駆動体10のみの3次元テーブルを示す。
【0026】
診断装置50は、予め基準状態の3次元テーブルを取得しておく。本実施形態の基準状態は、被駆動体10の診断において被駆動体10を駆動し回転させるモータ20のみを駆動させた状態であるとする。診断装置50は、モータ20のみを駆動させて得られるモータ運転データに基づきモータ20のみの推定トルク抵抗値であるモータ推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度とモータ推定トルク抵抗値との3次元テーブルであるモータ20の3次元テーブルを本実施形態における基準状態の3次元テーブルとして取得しておく。
【0027】
診断装置50は、図1のステップS104で取得した3次元テーブル(図5の左の図参照)と、予め取得しておいたモータ20の3次元テーブル(図5の中央の図参照)との差分を算出する。この差分が、診断装置50の診断対象である被駆動体10のみの3次元テーブル(判定用3次元テーブル)(図5の右の図参照)である。
【0028】
図6には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置の異常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルが図に示されている。
図6の左の図は、異常状態の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブルを示す。図6の中央の図は、異常状態の基準状態であるモータ20の3次元テーブルを示す。図6の右の図は、異常状態の被駆動体10のみの3次元テーブルを示す。
【0029】
診断装置50は、診断を行う場合、図1のステップS101乃至S105の処理を行い、診断対象である被駆動体10のみの3次元テーブルを取得する。
例えば、被駆動体10に5μmの異物が混入した場合、すなわち異常状態の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブルが図6の左の図に示されている。
【0030】
診断装置50は、異常状態の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブル(図6の左の図参照)と、予め取得しておいたモータ20の3次元テーブル(図6の中央の図参照)との差分を算出する。この差分が、異常状態における診断装置50の診断対象である被駆動体10のみの3次元テーブル(判定用3次元テーブル)(図6の右の図参照)である。
【0031】
求められた通常状態における被駆動体10のみの3次元テーブル(図5の右の図参照)と、異常状態における診断装置50の診断対象である被駆動体10のみの3次元テーブル(図6の右の図参照)とを診断を行う作業者が目視で比較することにより、異常の有無を判定可能である。また被駆動体10における異常が発生している可能性のある角度や角速度を検知し、異常発生個所および異常原因の特定を行うことができる。
【0032】
さらに、明確な診断結果を必要とする場合は、ステップS106へ遷移する。
ステップS106において、診断装置50は判定用3次元テーブルである被駆動体10のみの3次元テーブルと、後述する所定の閾値分布とを比較し、異常分布を取得する。
【0033】
診断装置50は、予め所定の閾値分布を取得しておく。
診断装置50は、異常状態ではなく正常な状態である正常状態(例えば被駆動体10が初期状態(新品)である場合)の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体10の正常状態の3次元テーブルを取得する。この被駆動体10の正常状態の3次元テーブルに基づき、正常状態の推定トルク抵抗値の閾値の分布を、所定の閾値分布として設定する。
【0034】
診断装置50は、被駆動体10のみの3次元テーブルと、所定の閾値分布とを比較し、異常分布を取得する。このように、被駆動体10のみの3次元テーブルを閾値と比較することにより、正常または異常の2値にて異常分布が出力される。正常及び異常を0または1の2値で出力してもよい。
【0035】
図7には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置が取得する異常分布が図に示されている。
図7では、円の半径方向が角速度を示し、円の角度方向(周方向)が角度を示し、角度範囲を10degとして分布を取得している。図7において、白は推定トルク抵抗値が正常である(異常がない)ことを表し、黒は推定トルク抵抗値が異常であることを表す。このように、異常分布を取得することで、被駆動体10において異常が発生している角度及び角速度を一覧することができ、精度の高い異常原因の特定を行うことができる。
【0036】
上記実施形態では、基準状態の3次元テーブルをモータ20の3次元テーブルとする場合について説明したが、本実施形態では、基準状態の3次元テーブルを設定された所定の状態である所定状態の被駆動体10とモータ20の3次元テーブルとする場合について説明する。以下、本実施形態に係る診断装置50について、前述の実施形態と異なる点について主に説明する。
【0037】
図8には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置の通常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルが図に示されている。
図8の左の図は、診断装置50による診断時点の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブルを示す。図8の中央の図は、後述する基準状態である所定状態の被駆動体10とモータ20の3次元テーブルを示す。図8の右の図は、被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブルを示す。
【0038】
診断装置50は、予め本実施形態における基準状態の3次元テーブルを取得しておく。本実施形態の基準状態は、設定された所定の状態である所定状態を示す。具体的には、例えば前述した異常状態ではない正常状態時や、診断の基準となる設定された所定の時点や診断時の前日の時点の状態などである。本実施形態では、設定された所定の状態は、被駆動体10及びモータ20の異常状態ではない正常状態であるとする。
【0039】
診断装置50は、設定された所定の状態、すなわち正常状態の時点において被駆動体10をモータ20で駆動されて得られる所定状態運転データに基づき被駆動体10とモータ20の組み合わせの所定状態の推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と所定状態の推定トルク抵抗値との3次元テーブルである所定状態の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブルを本実施形態における基準状態の3次元テーブルとして取得しておく。
【0040】
本実施形態において診断装置50は図1のステップS101乃至S105の処理を行ない、変化量の3次元テーブルを取得する。
診断装置50は、図1のステップS104で取得した3次元テーブル(図8の左の図参照)と、予め取得しておいた所定状態の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブル(図8の中央の図参照)との差分を算出する。この差分が、被駆動体10及びモータ20の設定された所定の状態(本実施形態の場合、正常状態)からの変化量の3次元テーブル(判定用3次元テーブル)(図8の右の図参照)である。この変化量の3次元テーブルから、設定された所定の状態、例えば正常状態からの変化を把握し、前回からの変化量(この場合経年劣化)を評価することが可能である。
【0041】
図9には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置の異常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルが図に示されている。
図9の左の図は、異常状態の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブルを示す。図9の中央の図は、異常状態の基準状態である所定状態の被駆動体10とモータ20の3次元テーブルを示す。図9の右の図は、異常状態の被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブルを示す。
【0042】
診断装置50は、診断を行う場合、図1のステップS101乃至S105の処理を行い、変化量の3次元テーブルを取得する。
例えば、被駆動体10に5μmの異物が混入した場合、すなわち異常状態の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブルが図9の左の図に示されている。
【0043】
診断装置50は、異常状態の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブル(図9の左の図参照)と、予め取得しておいた所定状態の被駆動体10及びモータ20の3次元テーブル(図9の中央の図参照)との差分を算出する。この差分が、異常状態における被駆動体10及びモータ20の設定された所定の状態(本実施形態の場合、正常状態)からの変化量の3次元テーブル(判定用3次元テーブル)(図9の右の図参照)である。
【0044】
求められた通常状態における被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブル(図8の右の図参照)と、異常状態における被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブル(図9の右の図参照)とを、診断を行う作業者が目視で比較することにより、経年劣化とは異なる異常の有無を判定可能である。また被駆動体10における異常が発生している可能性のある角度や角速度を検知し、異常発生個所および異常原因の特定を行うことができる。
【0045】
本実施形態では、設定された所定の状態を正常状態であるとしたが、前日や1か月前など時間軸におけるある時点を所定状態としてもよい。ある時点を所定状態とすることで、被駆動体10及びモータ20の経年劣化をより詳細に診断することが可能である。
【0046】
さらに、算出された変化量の3次元テーブルについて、各角速度における推定トルク抵抗値の平均値と比較することで、角度毎の変化量のばらつきを評価することができる。
【0047】
図10には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置の通常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルが図に示されている。
図10の左の図は、被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブルを示す。図10の中央の図は、各角速度毎の推定トルク抵抗値の平均値を示す。図10の右の図は、被駆動体10及びモータ20の角度の変化量の3次元テーブルを示す。
【0048】
本実施形態において診断装置50は図1のステップS101乃至S104の処理を行ない、被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブル(図10の左の図参照)を取得する。
【0049】
次に診断装置50は、各角速度毎に推定トルク抵抗値の平均値を求め、図10の中央の図のグラフを求める。図10の中央の図において、縦軸は推定トルク抵抗値、横軸は角速度であり、実線は通常状態における各角速度毎の推定トルク抵抗値の平均値を表す。
【0050】
次に診断装置50は、被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブル(図10の左の図参照)と、通常状態における各角速度毎の推定トルク抵抗値の平均値(図10の中央の図参照)との差分を算出する。この差分が、被駆動体10及びモータ20の角度の変化量の3次元テーブル(判定用3次元テーブル)(図10の右の図参照)である。この角度の変化量の3次元テーブルは、角速度毎の特性が差し引かれていることから、1回転中のばらつきがどの角度にあるかを判定することができる。
【0051】
図11には、本開示の幾つかの実施形態における診断装置の異常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値の3次元テーブルが図に示されている。
図11の左の図は、異常状態の被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブルを示す。図11の中央の図は、異常状態の各角速度毎の推定トルク抵抗値の平均値を示す。図11の右の図は、異常状態の被駆動体10及びモータ20の角度の変化量の3次元テーブルを示す。
【0052】
本実施形態において診断装置50は図1のステップS101乃至S104の処理を行ない、異常状態の被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブル(図11の左の図参照)を取得する。
例えば、被駆動体10に5μmの異物が混入した場合、すなわち異常状態の被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブルが図11の左の図に示されている。
【0053】
次に診断装置50は、各角速度毎に推定トルク抵抗値の平均値を求め、図11の中央の図のグラフを求める。図11の中央の図において、縦軸は推定トルク抵抗値、横軸は角速度であり、破線は異常状態における各角速度毎の推定トルク抵抗値の平均値を表す。
【0054】
次に診断装置50は、異常状態の被駆動体10及びモータ20の変化量の3次元テーブル(図11の左の図参照)と、異常状態における各角速度毎の推定トルク抵抗値の平均値(図11の中央の図参照)との差分を算出する。この差分が、異常状態の被駆動体10及びモータ20の角度の変化量の3次元テーブル(判定用3次元テーブル)(図11の右の図参照)である。この異常状態の角度の変化量の3次元テーブルは、角速度毎の特性が差し引かれていることから、1回転中のばらつきがどの角度にあるかを判定することができる。
【0055】
このように求められた通常状態における被駆動体10及びモータ20の角度の変化量の3次元テーブル(図10の右の図参照)と、異常状態における被駆動体10及びモータ20の角度の変化量の3次元テーブル(図11の右の図参照)とを、診断を行う作業者が目視で比較することにより、角度毎の異常の有無を判定可能である。また被駆動体10における異常が発生している可能性のある角度を検知し、異常発生個所および異常原因の特定を行うことができる。
【0056】
以上説明した各実施形態に記載の診断装置、診断方法および診断プログラムは例えば以下のように把握される。
本開示に係る診断装置(50)は、回転軸を有する被駆動体(10)の診断を行う診断装置であって、前記被駆動体は、外付けのモータ(20)の駆動により回転し、前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる実運転データに基づき、前記被駆動体と前記モータの組み合わせの推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と前記推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体及びモータの3次元テーブルを求め、基準状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである基準状態の3次元テーブルを求め、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出する。
【0057】
被駆動体の健全性の診断を行う場合において3次元テーブルを用いるため、2次元での診断よりもより精度の高い診断を行うことができる。
また、3次元テーブルから角度及び角速度をそれぞれ得ることができるため、異常の有無だけでなく、異常が発生している可能性のある角度及び角速度を得ることができ、異常発生個所および異常原因の特定に寄与することができる。
回転軸を有し外付けのモータで回転する被駆動体に対する健全性の診断において、作業熟練者による作業を必要としないため、被駆動体の健全性診断・検査の均質化を図ることができる。
ここで、基準状態とは、実運転データに基づく3次元テーブルの異常を診断するために用いられる基準となる状態を示し、基準状態の3次元テーブルとは、例えばモータのみの3次元テーブル、前日の被駆動体及びモータの3次元テーブルなどである。
【0058】
また本開示に係る診断装置は、異常状態でない正常状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである正常状態の3次元テーブルに基づく正常状態の推定トルク抵抗値の閾値の分布を所定の閾値分布とし、前記実運転データに基づき求められた前記判定用3次元テーブルと前記所定の閾値分布とを比較し、比較結果を2値出力する。
【0059】
実運転データに基づく判定用3次元テーブルを、正常状態の3次元テーブルに基づく閾値の分布である所定の閾値分布と比較した結果を2値で得られるため、異常の有無だけでなく、正常状態と比較して異常が発生している可能性のある角度及び角速度が得られ、異常原因の特定に寄与することができる。運転データに基づく判定用3次元テーブルのみを取得する場合と比べて、さらに精度の高い異常原因の特定を行うことができる。
【0060】
また本開示に係る診断装置は、前記基準状態の3次元テーブルは、前記モータのみを駆動させて得られるモータ運転データに基づき前記モータのモータ推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記モータ推定トルク抵抗値との3次元テーブルであるモータの3次元テーブルであり、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記モータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体の3次元テーブルを算出する。
【0061】
被駆動体が自身だけでは回転することができず、被駆動体の健全性の診断を行う場合にモータを取り付け回転させて診断する場合に、モータの情報を除外した被駆動体のみの診断を行うことができる。
被駆動体のみの3次元テーブルが得られるため、被駆動体の異常の有無だけでなく、異常が発生している可能性のある角度及び角速度が得られ、異常原因の特定に寄与することができる。
【0062】
また本開示に係る診断装置は、各前記角速度ごとに前記被駆動体の推定トルク抵抗値の平均値である被駆動体の平均推定トルク抵抗値を算出し、前記被駆動体の3次元テーブルと前記被駆動体の平均推定トルク抵抗値との差分から被駆動体の変化量の3次元テーブルを算出する。
【0063】
各角速度ごとの被駆動体の平均推定トルク抵抗値を算出して被駆動体の3次元テーブルとの差分から被駆動体の変化量の3次元テーブルを算出するため、角速度ごとの特性を差し引いた3次元テーブルを得ることができ、角度ごとの3次元テーブル上の分布のばらつきを評価することが可能となる。
【0064】
また本開示に係る診断装置は、前記基準状態の3次元テーブルは、設定された所定の状態において前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる所定状態運転データに基づき前記被駆動体と前記モータの組み合わせの所定状態の推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記所定状態の推定トルク抵抗値との3次元テーブルである所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルであり、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルを算出する。
【0065】
被駆動体が自身だけでは回転することができず、被駆動体の健全性の診断を行う場合にモータを取り付け回転させて診断する場合に、基準状態である所定の状態における被駆動体とモータの3次元テーブルの情報を除外した、所定状態からの抵抗トルク推定値の変化量に基づく診断を行うことができる。
所定状態(基準状態)からどのくらい抵抗トルクが変化したかを確認することができ、異常の有無、異常が発生している可能性のある角度及び角速度の評価に加えて、被駆動体の経年劣化についても評価・判断することができる。
【0066】
また本開示に係る診断装置は、各前記角速度ごとに前記被駆動体及び前記モータの推定トルク抵抗値の平均値である被駆動体及びモータの平均推定トルク抵抗値を算出し、前記被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルと前記被駆動体及びモータの平均推定トルク抵抗値との差分から被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルを算出する。
【0067】
各角速度ごとの被駆動体及びモータの平均推定トルク抵抗値を算出して被駆動体及びモータの3次元テーブルとの差分から被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルを算出するため、角速度ごとの特性を差し引いた3次元テーブルを得ることができ、角度ごとの3次元テーブル上の分布のばらつきを評価することが可能となる。
【0068】
また本開示に係る診断装置は、前記実運転データは、各前記角速度ごとに前記角度及び前記推定トルク抵抗値を取得したデータであり、等間隔化した角度範囲内の前記推定トルク抵抗値のうち最大値が抽出されて前記推定トルク抵抗値として算出される。
【0069】
推定トルク抵抗値のうち最大値が抽出されて推定トルク抵抗値として算出されるため、推定トルク抵抗値が局所的に大きくなる異常、例えば軸受に異物が入り滑りにくくなるなどの異常を検知しやすくすることができる。
【0070】
また本開示に係る診断装置は、前記実運転データは、各前記角速度ごとに前記角度及び前記推定トルク抵抗値を取得したデータであり、等間隔化した角度範囲内の前記推定トルク抵抗値のうち最小値が抽出されて前記推定トルク抵抗値として算出される。
【0071】
推定トルク抵抗値のうち最小値が抽出されて推定トルク抵抗値として算出されるため、推定トルク抵抗値が局所的に小さくなる異常、例えば軸受に油が入り滑りやすくなるなどの異常を検知しやすくすることができる。
【0072】
本開示に係る診断方法は、回転軸を有する被駆動体の診断を行う診断方法であって、前記被駆動体は、外付けのモータの駆動により回転し、前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる実運転データに基づき、前記被駆動体と前記モータの組み合わせの推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と前記推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体及びモータの3次元テーブルを求める工程と、基準状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである基準状態の3次元テーブルを求める工程と、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出する工程とを有する。
【0073】
また本開示に係る診断方法は、前記基準状態の3次元テーブルは、前記モータのみを駆動させて得られるモータ運転データに基づき前記モータのモータ推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記モータ推定トルク抵抗値との3次元テーブルであるモータの3次元テーブルであり、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記モータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体の3次元テーブルを算出する工程を有する。
【0074】
また本開示に係る診断方法は、前記基準状態の3次元テーブルは、設定された所定の状態において前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる所定状態運転データに基づき前記被駆動体と前記モータの組み合わせの所定状態の推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記所定状態の推定トルク抵抗値との3次元テーブルである所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルであり、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルを算出する工程を備える。
【0075】
本開示に係る診断プログラムは、回転軸を有する被駆動体の診断を行う診断プログラムであって、前記被駆動体は、外付けのモータの駆動により回転し、前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる実運転データに基づき、前記被駆動体と前記モータの組み合わせの推定トルク抵抗値を算出し、角度と角速度と前記推定トルク抵抗値との3次元テーブルである被駆動体及びモータの3次元テーブルを求めるステップと、基準状態の角度と角速度と推定トルク抵抗値との3次元テーブルである基準状態の3次元テーブルを求めるステップと、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記基準状態の3次元テーブルとの差分から判定用3次元テーブルを算出するステップとを有する。
【0076】
また本開示に係る診断プログラムは、前記基準状態の3次元テーブルは、前記モータのみを駆動させて得られるモータ運転データに基づき前記モータのモータ推定トルク抵抗値を算出し求められる角度と角速度と前記モータ推定トルク抵抗値との3次元テーブルであるモータの3次元テーブルであり、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記モータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体の3次元テーブルを算出するステップを有する。
【0077】
また本開示に係る診断プログラムは、前記基準状態の3次元テーブルは、設定された所定の状態において前記被駆動体を前記モータで駆動させて得られる所定状態運転データに基づき前記被駆動体と前記モータの組み合わせの所定状態の推定トルク抵抗値を算出して求められる角度と角速度と前記所定状態の推定トルク抵抗値との3次元テーブルである所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルであり、前記被駆動体及びモータの3次元テーブルと前記所定状態の被駆動体及びモータの3次元テーブルとの差分から前記判定用3次元テーブルである被駆動体及びモータの変化量の3次元テーブルを算出するステップを有する。
【0078】
以上、本開示の幾つかの実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
例えば、上述した各実施形態においては等間隔化した角度範囲内の推定トルク抵抗値のうち最大値を抽出するとしたが、最大値に代えて最小値を抽出するとしてもよい。最小値を抽出した場合は、推定トルク抵抗値のうち最小値が抽出されて推定トルク抵抗値として算出されるため、推定トルク抵抗値が局所的に小さくなる異常、例えば被駆動体10における軸受に油が入り滑りやすくなるなどの異常を検知しやすくすることができる。
【0079】
また、上述した実施形態においては算出された変化量の3次元テーブルについて、各角速度における推定トルク抵抗値の平均値と比較することで、角度毎の変化量のばらつきを評価するとしたが、算出された被駆動体10の3次元テーブルについて、各角速度における推定トルク抵抗値の平均値と比較することで、角度毎の変化量のばらつきを評価するとしてもよい。この場合、被駆動体10に限定した精度の高い角度毎の変化量のばらつきを評価し、異常発生個所および異常原因の特定に寄与することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 被駆動体
20 モータ
50 診断装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12