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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】セグメントシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3272 20160101AFI20240122BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
F16J15/3272
F16J15/18 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020104637
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021196037
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 勇気
(72)【発明者】
【氏名】足立 一磨
(72)【発明者】
【氏名】冨田 優紀
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-078772(JP,U)
【文献】特開昭59-200870(JP,A)
【文献】特開2008-163984(JP,A)
【文献】実開昭59-116667(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3272
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周囲に区画されるシール室にガスを封入することで、前記回転軸と、該回転軸が挿通されるケーシングと、の隙間をシールするセグメントシールであって、
前記シール室に収容され、単数または複数のセグメントリングからなるリング体と、
前記シール室における軸方向一側の第1内壁部と前記リング体との間に配置され、該リング体の端面に接触した状態で軸方向にスライド可能なリテーナと、
前記軸方向一側から軸方向他側に向かって前記リテーナを付勢することで、前記シール室において前記第1内壁部に対向する第2内壁部に向けて前記リング体を押圧する付勢部材と、を備え
前記リング体は、前記軸方向一側から前記軸方向他側に向かって順に、
前記リテーナに密着する第1セグメントリングと、
前記第1セグメントリングに隣接する第2セグメントリングと、
前記第2セグメントリングに隣接し、かつ前記第2内壁部に密着する第3セグメントリングと、を有し
前記第2セグメントリングは、周方向に分割されかつ前記回転軸の外周面に摺接する複数のセグメント片からなり、
前記第2セグメントリングを構成する各セグメント片は、周方向において間隔を空けて相対する
ことを特徴とするセグメントシール。
【請求項2】
請求項1に記載されたセグメントシールにおいて、
前記リテーナは、
前記第1内壁部と前記リング体との間に配置される鍔状部と、
前記鍔状部から前記軸方向一側に向かって延び、かつ径方向において前記回転軸と前記ケーシングとの間に配置される筒状部と、を有し、
前記筒状部と前記ケーシングとの間には、前記筒状部と前記ケーシングとの隙間をシールするシール部材が配置される
ことを特徴とするセグメントシール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたセグメントシールにおいて、
前記付勢部材は、軸方向において前記第1内壁部と前記リテーナとの間に配置され、軸方向に伸縮するコイルバネとして構成される
ことを特徴とするセグメントシール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載されたセグメントシールにおいて、
前記リテーナは、前記軸方向一側に向かって突出しかつ前記第1内壁部に挿入される回り止め部を有する
ことを特徴とするセグメントシール。
【請求項5】
請求項に記載されたセグメントシールにおいて、
前記第1セグメントリングは、周方向に分割されかつ前記回転軸の外周面に摺接する複数のセグメント片からなり、
前記第1セグメントリングの各分割面は、前記第2セグメントリングの各分割面に対して周方向にオフセットさせてなる
ことを特徴とするセグメントシール。
【請求項6】
請求項に記載されたセグメントシールにおいて、
前記第1セグメントリングの各分割面は、径方向に対して傾斜した方向に沿って延びる
ことを特徴とするセグメントシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セグメントシールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セグメントシールの一例が開示されている。詳しくは、特許文献1に開示されているセグメントシールは、回転軸(スリーブ)の周囲に区画される第1シール室及び第2シール室と、各シール室に収容されるセグメントリングと、を備えてなる。ここで、第1シール室と第2シール室は軸方向に並んだ状態で互いに連通しており、第1シール室は軸方向一側の空間(例えば大気)に開放される一方、第2シール室は軸方向他側の空間(例えば機内の空間)に開放される。
【0003】
前記特許文献1によれば、第1シール室と第2シール室にパージガスを封入することで、第1シール室と軸方向一側の空間との間の連通、及び、第2シール室と軸方向他側の空間との間の連通をそれぞれ閉塞し、回転軸とケーシングとの隙間を軸方向両側で封止した、いわゆるダブルシール構造を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-119840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1に係る構成を利用する場合、シール室とセグメントリングを少なくとも2つずつ用意する必要がある。そのため、前記特許文献1に係る構成には、軸方向の寸法が長くなるという問題があった。このことは、セグメントシールのコンパクト化を図るには不都合である。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パージガスを封入することでダブルシール構造をなすセグメントシールにおいて、そのコンパクト化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、回転軸の周囲に区画されるシール室にガスを封入することで、前記回転軸と、該回転軸が挿通されるケーシングと、の隙間をシールするセグメントシールに係る。このセグメントシールは、前記シール室に収容され、単数または複数のセグメントリングからなるリング体と、前記シール室における軸方向一側の第1内壁部と前記リング体との間に配置され、該リング体の端面に接触した状態で軸方向にスライド可能なリテーナと、前記軸方向一側から軸方向他側に向かって前記リテーナを付勢することで、前記シール室において前記第1内壁部に対向する第2内壁部に向けて前記リング体を押圧する付勢部材と、を備える。
【0008】
この構成によれば、付勢部材がリテーナを付勢することで、軸方向一側においてはリテーナとリング体との間にシール面が形成されるとともに、軸方向他側においてはリング体と第2内壁部との間にもシール面が形成される。これにより、シール室を軸方向両側で封止することができ、ダブルシール構造を実現することが可能となる。
【0009】
ここで、前記構成を利用するためには、1つのシール室と、そのシール室に収容されるべき1組のリング体のみを用意すればよい。これにより、軸方向における寸法を抑制し、ひいては、セグメントシールのコンパクト化を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本開示によれば、セグメントシールのコンパクト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、セグメントシールの構成を例示する縦断面図である。
図2図2は、第1セグメントリングの構成を例示する平面図である。
図3図3は、第2セグメントリングの構成を例示する平面図である。
図4図4は、第3セグメントリングの構成を例示する平面図である。
図5図5は、リテーナの構成を例示する2面図である。
図6図6は、パージガスの封入について例示する部分拡大図である。
図7図7は、セグメントシールの変形例を示す図1対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0013】
図1に例示されるセグメントシール1は、ポンプ、ブロワー、粉体機器等の回転軸100と、その回転軸100が挿通されるケーシング200と、の隙間Gをシールすることで、機内から大気への流体漏出を防止するものである。
【0014】
特に、本実施形態に係るセグメントシール1は、いわゆるダブルシール構造を実現するように構成されている。すなわち、このセグメントシール1は、回転軸100の周囲に形成されるシール室10にパージガスを封入することで、回転軸100とケーシング200との隙間Gのうち、シール室10から見て軸方向一側(大気側)に位置する第1隙間部G1と、シール室10から見て軸方向他側(機内側)に位置する第2隙間部G2と、を同時にシールするように構成されている。
【0015】
なお、ここでいう「軸方向」とは、回転軸100の軸心Cに沿う方向を指す。同様に、以下の記載における「径方向」とは、軸心Cに直交する方向を指し、「周方向」とは、軸心Cを包み込む方向を指す。
【0016】
また、図1等に示す例では、回転軸100はスリーブ101を有しており、このスリーブ101を介してセグメントシール1と回転軸100とが接触するように構成されているが、以下の記載では、スリーブ101に係る説明は、適宜省略する。
【0017】
図1に示すように、セグメントシール1は、シール室10に収容されるリング体2と、ガータスプリング3と、位置決めピン4と、リテーナ5と、シール部材6と、付勢部材7と、を備える。
【0018】
シール室10は、ケーシング200における回転軸100の周囲の部位に形成される。具体的に、本実施形態に係るシール室10は、回転軸100とケーシング200との隙間Gを径方向の外方に向かって膨出させてなる。
【0019】
詳しくは、図1及び図6に示すように、シール室10は、軸方向一側に位置する第1内壁部11と、軸方向他側に位置する第2内壁部12と、径方向外側に位置する第3内壁部13と、径方向内側に位置する回転軸100の外周面100aと、によって区画された略環状の空間として構成されている。なお、図1及び図6に示す例では、回転軸100の外周面100aは、スリーブ101の外周面に等しい。
【0020】
ここで、第1内壁部11と第2内壁部12は、双方とも径方向に沿って延びており、互いに向かい合うように配置される。第1内壁部11と外周面100aとの間には、大気に通じる第1隙間部G1が設けられる。シール室10は、この第1隙間部G1を介して大気に連通する。同様に、第2内壁部12と外周面100aとの間には、機内に通じる第2隙間部G2が設けられる。シール室10は、この第2隙間部G2を介して機内に連通する。
【0021】
また、第3内壁部13は、軸方向に沿って延びており、回転軸100の外周面100aと向かい合うように配置される。第3内壁部13は、導入口201を介して外部と連通する。この導入口201は、ケーシング200を径方向に貫通しており、外部からシール室10にパージガスを導入するために用いられる。
【0022】
リング体2は、単数又は複数のセグメントリングからなる。具体的に、本実施形態に係るリング体2は、軸方向一側から軸方向他側に向かって順に、リテーナ5に密着する第1セグメントリング21と、第1セグメントリング21に隣接する第2セグメントリング22と、第2セグメントリング22に隣接し、かつ第2内壁部12に密着する第3セグメントリング23と、を有する。
【0023】
ここで、第1セグメントリング21、第2セグメントリング22及び第3セグメントリング23は、図2図4に示すように、それぞれ、周方向に分割された複数のセグメント片21a,22a,23aからなる。
【0024】
図2に示すように、第1セグメントリング21は、略円弧状に形成された3つのセグメント片21aに分割される。本実施形態に係る第1セグメントリング21は、軸方向における一側の端面21bがリテーナ5と密着することで、このリテーナ5との間でシール面を形成させることができる。なお、ここでいう「端面」とは、図2に示すように、軸方向に沿って第1セグメントリング21を正面視したときの表裏いずれか一方の面を指す。第1セグメントリング21はまた、その内周面21cが回転軸100の外周面100aに摺接し、この外周面100aとの間でシール面を形成する。
【0025】
また、各セグメント片21aの外周面には、第1セグメントリング21を回転軸100の軸心Cに沿って平面視したときに、周方向に沿って延びる溝21dが設けられる。この溝21dにガータスプリング3を巻き付けることで、3つのセグメント片21aが外周側から拘束される。この拘束によって、3つのセグメント片21aは、第1セグメントリング21としての一体的なリング形状を構成する。
【0026】
また、各セグメント片21aの外周面には、第1セグメントリング21を回転軸100の軸心Cに沿って平面視したときに、径方向の内側に向かって窪んだ凹部21eが設けられる。図1の紙面下側に示すように、この凹部21eに位置決めピン4を挿入することで、第1セグメントリング21の回転を防ぐことができる。
【0027】
さらに、第1セグメントリング21の各分割面(第1セグメントリング21を3つのセグメント片21aに分割する平面)は、径方向に対して傾斜した方向に沿って延びる(図2の傾斜角θを参照)。
【0028】
図3に示すように、第2セグメントリング22は、略円弧状に形成された3つのセグメント片22aに分割される。本実施形態に係る第2セグメントリング22は、軸方向一側の端面(例えば、図3において符号22bが付された面)を第1セグメントリング21と密着させ、他側の端面が第3セグメントリング23と密着させることができる。第2セグメントリング22はまた、その内周面22cが回転軸100の外周面100aに摺接し、この外周面100aとの間でシール面を形成する。
【0029】
また、各セグメント片22aの外周面には、周方向に沿って延びる溝22dと、凹部22eと、が設けられる。第2セグメントリング22における溝22d及び凹部22eは、第1セグメントリング21における溝21d及び凹部21eと同様の機能を有するように構成される。
【0030】
また、第2セグメントリング22を構成する各セグメント片22aは、周方向において間隔を空けて相対する。詳しくは、3つのセグメント片22aのうちのいずれか1つの端部(特に、周方向における端部)は、そのセグメント片22aに隣接する別のセグメント片22aの端部に対し、周方向において間隔を空けて相対する(図3の間隔Dを参照)。
【0031】
さらに、第2セグメントリング22の各分割面(第2セグメントリング22を3つのセグメント片22aに分割する平面)は、径方向に沿って延びる。ここで、図2図3との比較から理解されるように、第1セグメントリング21の各分割面は、第2セグメントリング22の各分割面に対して周方向にオフセットさせてなる。換言すれば、第1セグメントリング21の各分割面の角度位置と、第2セグメントリング22の各分割面の角度位置と、は互いに相違するようになっている。
【0032】
図4に示すように、第3セグメントリング23は、略円弧状に形成された3つのセグメント片23aに分割される。本実施形態に係る第3セグメントリング23は、軸方向一側の端面23bを第2セグメントリング22と密着させ、他側の端面を第2内壁部12と密着させることができる。後者の密着によって、第3セグメントリング23は、第2内壁部12との間でシール面を形成する。
【0033】
また、第3セグメントリング23の内周面23cは、回転軸100の外周面100aに摺接しない。換言すれば、第3セグメントリング23の内周面23cと、回転軸100の外周面100aとは、径方向に間隔を空けて向かい合う。
【0034】
また、各セグメント片23aの外周面には、周方向に沿って延びる溝23dと、凹部23eと、が設けられる。第3セグメントリング23における溝23d及び凹部23eは、第1セグメントリング21における溝21d及び凹部21eと同様の機能を有するように構成される。
【0035】
さらに、第3セグメントリング23の各分割面(第3セグメントリング23を3つのセグメント片23aに分割する平面)は、径方向に沿って延びる。ここで、図3図4との比較から理解されるように、第2セグメントリング22の各分割面は、第3セグメントリング23の各分割面に対して周方向にオフセットさせてなる。換言すれば、第2セグメントリング22の各分割面の角度位置と、第3セグメントリング23の各分割面の角度位置と、は互いに相違するようになっている。
【0036】
位置決めピン4は、図1に示すようにケーシング200に固定される。この位置決めピン4は、各セグメントリング21,22,23の凹部21e,22e,23eに挿通され、各セグメントリング21,22,23を周方向に位置決めする。
【0037】
リテーナ5は、第1内壁部11と、リング体2を構成する第1セグメントリング21の端面21bと、の間に配置される。このリテーナ5は、第1セグメントリング21の端面21bに接触した状態で軸方向にスライド可能に構成される。リテーナ5は、筒形状を有しており、回転軸100に挿入される。
【0038】
具体的に、本実施形態に係るリテーナ5は、図1及び図5に示すように、第1内壁部11とリング体2との間に配置される鍔状部51と、この鍔状部51から軸方向他側に向かって延び、かつ径方向において回転軸100とケーシング200との間に配置される筒状部52と、鍔状部51から軸方向他側に向かって突出する回り止め部53と、を有する。
【0039】
鍔状部51は、径方向に沿って延びる鍔形状を有する。この鍔状部51は、軸方向一側の端面51aが第1内壁部11に対して間隔を空けて相対し、軸方向他側の端面51bを第1セグメントリング21の端面21bと密着させることができる。後者の密着によって、リテーナ5は、前述のように第1セグメントリング21との間でシール面を形成する。
【0040】
また、鍔状部51の外径は、リング体2を構成する各セグメントリング21,22,23の外径に比して大きい。対して、鍔状部51の内径は、回転軸100の外周面100aの外径に比して大きい。すなわち、鍔状部51の内周面51cは、回転軸100の外周面100aに摺接しない。
【0041】
なお、鍔状部51の外径は、リング体2を構成する各セグメントリング21,22,23の外径と同一にしてもよいし、各セグメントリング21,22,23の外径に比して小さくしてもよい。
【0042】
筒状部52は、軸方向に沿って延びる筒形状を有する。筒状部52は、その軸方向他側の端部において鍔状部51と一体化されている。鍔状部51の内周面51cは、筒状部52の内周面と面一に繋がっている。この内周面51cは、回転軸100の外周面100aに対して間隔を空けて相対する。すなわち、リテーナ5の内周面51cは、回転軸100とは摺接しない。
【0043】
また、図6に示すように、筒状部52は、前述の第1隙間部G1に挿入される。そうして挿入される筒状部52と、ケーシング200との間にはシール部材6が配置される。このシール部材6は、いわゆるOリングとして構成されており、第1隙間部G1のうち、リテーナ5とケーシング200との隙間(具体的には、筒状部52の外周面と、ケーシング200における回転軸100の挿通孔との隙間)をシールする。
【0044】
回り止め部53は、鍔状部51から軸方向他側に向かって突出した円柱形状を有する。回り止め部53は、第1内壁部11の壁面に挿入される。この挿入によって、径方向におけるリテーナ5の回転が抑制される。
【0045】
付勢部材7は、軸方向一側から軸方向他側に向かってリテーナ5を付勢することで、リング体2を第2内壁部12に向けて押圧する。この押圧によって、該リテーナ5とリング体2とが密着するとともに、該リング体2とシール室10の第2内壁部12とが密着する。
【0046】
具体的に、本実施形態に係る付勢部材7は、軸方向に伸縮しかつ鍔状部51を付勢するコイルバネとして構成される。付勢部材7は、鍔状部51のうち、特に回転軸100の軸心Cを中心に回り止め部53と重ならない位置に複数配置される。
【0047】
また、図1に示すように、シール部材6は、回り止め部53と付勢部材7との間のスペースに配置される。このように配置することは、軸方向におけるセグメントシール1のコンパクト化に資する。
【0048】
(パージガスの封入について)
図6の矢印A1に示すように、導入口201からパージガスを封入すると、そのガスは、第2セグメントリング22におけるセグメント片22a間の隙間Dに入り込む。第2セグメントリング22の隙間Dに入り込んだパージガスは、第1セグメントリング21を軸方向一側に向けて押圧するとともに、第3セグメントリング23を軸方向他側に向けて押圧する。
【0049】
一方、図6の矢印A2に示すように、付勢部材7は、軸方向一側から軸方向他側に向かってリテーナ5を付勢する。この付勢によって、軸方向一側においてはリテーナ5と第1セグメントリング21とが密着し、両部材の間にシール面が形成される。それと同時に、軸方向他側においては第3セグメントリング23と第2内壁部12とが密着し、その間にシール面が形成される。これにより、シール室10を軸方向両側で封止することができ、ダブルシール構造を実現することが可能となる。
【0050】
また、付勢部材7によって形成される両シール面は、リテーナ5を介したリング体2の押圧と、パージガスの封入による押圧と、が相まって、より堅固なものとなる。これにより、セグメントシール1のシール性能をさらに高めることが可能となる。特に、パージガスの封入と付勢部材7による押圧とを組み合わせることで、第3セグメントリング23とリテーナ5とを、軸方向の両側から挟み込むように押し付け合わせることができる。このことは、シール性能の向上に資する。
【0051】
さらに、本実施形態に係る構成は、複数のシール室を用いるものではなく、1つのシール室10と、そのシール室10に収容されるべき1組のリング体2のみを用いてなる。これにより、軸方向における寸法を抑制し、ひいては、セグメントシール1のコンパクト化を実現することができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る構成は、1組のセグメントリング(リング体2)のみで十分なシール性能を発揮するため、摺動部品、消耗品等の部品点数を抑制することができる。このことは、セグメントシール1の低コスト化に資する。さらに、1組のセグメントリング(リング体2)のみで十分なシール性能を発揮するため、メンテナンスを従来よりも容易に行うことができるようになる。
【0053】
また、図1及び図5に示すように、筒状部52とケーシング200との間をシール部材6によって封止することで、リテーナ5とケーシング200との隙間からの流体漏出を防止することができる。このことは、シール性能の向上に資する。
【0054】
また、図1に示すように、コイルバネとして構成される付勢部材7は、軸方向において第1内壁部11とリテーナ5との間に配置される。このように配置することで、リテーナ5とリング体2との接触状態を保持しつつ、リテーナ5を介してリング体2を押圧することが可能となる。
【0055】
また、図1に示すように、リテーナ5に回り止め部53を設けることで、リテーナ5の回転を抑制することができる。これにより、リング体2に対するリテーナ5の摺動を抑制し、セグメントシール1の高寿命化に有利になる。
【0056】
また、図3に示すように、第2セグメントリング22を構成するセグメント片22aの端部間に隙間Dを設けることで、パージガスをその隙間Dに誘導し、ひいてはパージガスによる押圧を効果的に行うことができるようになる。
【0057】
また、図2及び図3に示すように、第1セグメントリング21の各分割面と、第2セグメントリング22の各分割面と、を周方向にオフセットさせることで、第1セグメントリング21の各分割面へのパージガスの流入を抑制することができる。これにより、シール性能の向上に有利になる。
【0058】
また、図2に示すように、第1セグメントリング21の各分割面を斜めに傾斜させることで、各分割面の面積をより広く確保することができる。これにより、第1セグメントリング21からのパージガスの流出を抑制し、シール性能の向上に有利になる。
【0059】
《他の実施形態》
前記実施形態では、3つのセグメントリングからなるリング体を例示したが、本開示は、そうした構成には限定されない。図7に示すセグメントシール1’のように、第1セグメントリング21及び第2セグメントリング22からなるリング体2’を用いてもよいし、第2セグメントリング22単体からなるリング体(不図示)を用いてもよい。なお、図7における上記以外の構成は、図1図6を用いて説明した構成と同一であることから、同一の符号を付し、その説明を省略している。
【符号の説明】
【0060】
1 セグメントシール
2 リング体
21 第1セグメントリング
21a セグメント片
22 第2セグメントリング
22a セグメント片
23 第3セグメントリング
23a セグメント片
3 ガータスプリング
4 位置決めピン
5 リテーナ
51 鍔状部
52 筒状部
53 回り止め部
6 シール部材
7 付勢部材
10 シール室
11 第1内壁部
12 第2内壁部
100 回転軸
100a 外周面
200 ケーシング
G 隙間
G1 第1隙間部
G2 第2隙間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7