(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】粘着固定具及び粘着固定具の設置構造
(51)【国際特許分類】
A47B 97/00 20060101AFI20240122BHJP
F16B 47/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A47B97/00 E
F16B47/00 V
(21)【出願番号】P 2020104841
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 建世
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
(72)【発明者】
【氏名】川村 裕一
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-313281(JP,A)
【文献】特開2014-113278(JP,A)
【文献】中国実用新案第201123672(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 91/02
A47B 97/00
F16B 45/00-47/00
B65G 1/10
H05K 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の第1面及び第2面に粘着面を有する粘着マットの前記第1面が貼着される固定部を有する粘着固定具であって、
前記固定部は、
前記粘着マットと、
前記粘着マットの前記第1面が貼着されるマット貼着面を有する固定部本体と、
前記マット貼着面に沿う面方向における前記粘着マットの周縁よりも外側において前記固定部本体から前記第2面側に突出する突出部と、を有し、
前記突出部の先端には、圧縮変形されていない前記粘着マットの前記第2面よりも前記第1面寄りに控える傾斜面が設けられ、
前記傾斜面は、前記面方向に沿って前記粘着マットから離れるに従い、前記第2面から前記第1面に向かうように傾斜し
ており、
前記固定部は、前記固定部本体の周縁から突出する突刺部を有し、前記突刺部は、前記突出部の前記傾斜面よりも前記粘着マットの前記第2面側に突出していることを特徴とする粘着固定具。
【請求項2】
厚さ方向の第1面及び第2面に粘着面を有する粘着マットの前記第1面が貼着される固定部を有する粘着固定具の設置構造であって、
前記粘着固定具の前記固定部は、
前記粘着マットと、
前記粘着マットの前記第1面が貼着されるマット貼着面を有する固定部本体と、
前記マット貼着面に沿う面方向における前記粘着マットの周縁よりも外側において前記固定部本体から前記第2面側に突出する突出部と、を有し、
前記突出部の先端には、圧縮変形されていない前記粘着マットの前記第2面よりも前記第1面寄りに控える傾斜面が設けられ、
前記傾斜面は、前記面方向に沿って前記粘着マットから離れるに従い、前記第2面から前記第1面に向かうように傾斜し、
被貼着面に
前記粘着固定具における前記粘着マットの前記第2面が貼着されており、
前記粘着マットが厚さ方向に圧縮変形されているとともに、前記突出部の先端は、前記被貼着面に接触していることを特徴とする粘着固定具の設置構造。
【請求項3】
固定対象物と、当該固定対象物が設置される設置部との間に粘着固定具が介在され、前記粘着固定具によって前記固定対象物を前記設置部に固定する粘着固定具の設置構造であって、
前記粘着固定具は、
厚さ方向の第1面及び第2面に粘着面を有する粘着マットの前記第1面が貼着される固定部を有する粘着固定具であって、
前記固定部は、
前記粘着マットと、
前記粘着マットの前記第1面が貼着されるマット貼着面を有する固定部本体と、
前記マット貼着面に沿う面方向における前記粘着マットの周縁よりも外側において前記固定部本体から前記第2面側に突出する突出部と、を有し、
前記突出部の先端には、圧縮変形されていない前記粘着マットの前記第2面よりも前記第1面寄りに控える傾斜面が設けられ、
前記傾斜面は、前記面方向に沿って前記粘着マットから離れるに従い、前記第2面から前記第1面に向かうように傾斜しており、
前記粘着マットが厚さ方向に圧縮変形されて前記設置部の被貼着面に貼着されているとともに、前記傾斜面と前記被貼着面との間に防水部材が介在していることを特徴とする粘着固定具の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着固定具、及び粘着固定具の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地震発生時に、家具等の固定対象物の転倒を抑止するため、固定対象物は、粘着固定具を用いて設置部に固定されている(例えば、特許文献1参照)。粘着固定具は、相対向する一対の平板を備える。また、粘着固定具は、一対の平板における相対向する一面から突出する雄ねじ棒を備え、一対の雄ねじ棒のリード角は反対方向である。
【0003】
また、粘着固定具は、各平板における他面に粘着手段を備える。粘着手段は、粘着性を備えたゲル状の超軟質ウレタンにより形成される。さらに、粘着固定具は、筒状体を備え、筒状体の内周面には雌ねじが形成されている。筒状体の一端側には、一方の雄ねじ棒が螺合され、筒状体の他端側には、他方の雄ねじ棒が螺合されている。
【0004】
そして、粘着固定具を、固定対象物としてのキャスター付き機器より下方の設置部上における適宜の位置に置く。このとき、設置部には、一方の平板に貼着された粘着手段が貼着される。筒状体を回転させることにより、他方の平板がキャスター付き機器の底面に接近し、さらには、キャスター付き機器の底面に粘着手段が貼着される。さらに筒状体を回転させることにより、両方の粘着手段が厚さ方向に圧縮される。そして、圧縮された粘着手段の貼着により、キャスター付き機器が設置部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、地震時における固定対象物の揺れに伴い、粘着手段をさらに圧縮させたり、横ずれさせたりするといった揺れに伴う負荷が粘着手段に作用し、粘着手段には、当該粘着手段を貼着された面から剥がす力が作用する。
【0007】
本発明の目的は、揺れに伴って粘着マットが剥がれることを抑制できる粘着固定具及び粘着固定具の設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための粘着固定具は、厚さ方向の第1面及び第2面に粘着面を有する粘着マットの前記第1面が貼着される固定部を有する粘着固定具であって、前記固定部は、前記粘着マットと、前記粘着マットの前記第1面が貼着されるマット貼着面を有する固定部本体と、前記マット貼着面に沿う面方向における前記粘着マットの周縁よりも外側において前記固定部本体から前記第2面側に突出する突出部と、を有し、前記突出部の先端には、圧縮変形されていない前記粘着マットの前記第2面よりも前記第1面寄りに控える傾斜面が設けられ、前記傾斜面は、前記面方向に沿って前記粘着マットから離れるに従い、前記第2面から前記第1面に向かうように傾斜しており、前記固定部は、前記固定部本体の周縁から突出する突刺部を有し、前記突刺部は、前記突出部の前記傾斜面よりも前記粘着マットの前記第2面側に突出していることを要旨とする。
【0015】
上記問題点を解決するための粘着固定具の設置構造は、厚さ方向の第1面及び第2面に粘着面を有する粘着マットの前記第1面が貼着される固定部を有する粘着固定具の設置構造であって、前記粘着固定具の前記固定部は、前記粘着マットと、前記粘着マットの前記第1面が貼着されるマット貼着面を有する固定部本体と、前記マット貼着面に沿う面方向における前記粘着マットの周縁よりも外側において前記固定部本体から前記第2面側に突出する突出部と、を有し、前記突出部の先端には、圧縮変形されていない前記粘着マットの前記第2面よりも前記第1面寄りに控える傾斜面が設けられ、前記傾斜面は、前記面方向に沿って前記粘着マットから離れるに従い、前記第2面から前記第1面に向かうように傾斜し、被貼着面に前記粘着固定具における前記粘着マットの前記第2面が貼着されており、前記粘着マットが厚さ方向に圧縮変形されているとともに、前記突出部の先端は、前記被貼着面に接触していることを要旨とする。
【0016】
上記問題点を解決するための粘着固定具の設置構造は、固定対象物と、当該固定対象物が設置される設置部との間に粘着固定具が介在され、前記粘着固定具によって前記固定対象物を前記設置部に固定する粘着固定具の設置構造であって、前記粘着固定具は、厚さ方向の第1面及び第2面に粘着面を有する粘着マットの前記第1面が貼着される固定部を有する粘着固定具であって、前記固定部は、前記粘着マットと、前記粘着マットの前記第1面が貼着されるマット貼着面を有する固定部本体と、前記マット貼着面に沿う面方向における前記粘着マットの周縁よりも外側において前記固定部本体から前記第2面側に突出する突出部と、を有し、前記突出部の先端には、圧縮変形されていない前記粘着マットの前記第2面よりも前記第1面寄りに控える傾斜面が設けられ、前記傾斜面は、前記面方向に沿って前記粘着マットから離れるに従い、前記第2面から前記第1面に向かうように傾斜しており、前記粘着マットが厚さ方向に圧縮変形されて前記設置部の被貼着面に貼着されているとともに、前記傾斜面と前記被貼着面との間に防水部材が介在していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、揺れに伴って粘着マットが剥がれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の粘着固定具及び固定具の設置構造を示す図。
【
図7】粘着固定具が傾いたときの状態を示す断面図。
【
図8】防水部材を備える粘着固定具及びその設置構造を示す断面図。
【
図11】別例の粘着固定具及びその設置構造を示す側面図。
【
図15】粘着マットの隙間形成凹部を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、粘着固定具及び粘着固定具の設置構造を具体化した一実施形態を
図1~
図7にしたがって説明する。
図1~
図3に示すように、固定対象物10は、設置部としての床Fの上面Faに対し、粘着固定具11によって固定されている。固定対象物10としては、印刷装置、複合機、家具、テレビ等が挙げられる。また、設置部としては、床F、天井、机、タンス等が挙げられる。
【0021】
粘着固定具11は、固定対象物10の下面10aと、床Fの上面Faそれぞれに対し粘着マット20によって貼着される。したがって、本実施形態では、固定対象物10の下面10a及び床Fの上面Faは、粘着固定具11が貼着される被貼着面を構成している。また、固定対象物10の下面10aと床Fの上面Faは上下方向に対向する対向面であり、対向面のうちの一方の面を上面Faとし、対向面のうちの他方の面を下面10aとする。
【0022】
粘着固定具11は、一対の固定部12と、各固定部12から突出するボルト状部材21と、一対の固定部12から突出するボルト状部材21が螺合される連結部材30と、を有する。
【0023】
粘着マット20は、厚さ方向の両面に粘着面を有する板状である。粘着マット20は厚さ方向に圧縮変形可能である。粘着マット20は、粘着性を備えるゲル状の超軟質ウレタンにより形成される。また、粘着マット20は、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるまで圧縮されることで、最適の粘着力を発揮するものである。粘着マット20は、厚さ方向の第1面20aが固定部12に貼着され、厚さ方向の第2面20bが、固定対象物10の下面10aや、床Fの上面Faに貼着される。
【0024】
図4又は
図6に示すように、ボルト状部材21は、六角柱状の頭部22と、頭部22から突出する軸部23を有するボルトである。ボルト状部材21の軸線方向に沿って頭部22を見た平面視では、頭部22は六角形状である。頭部22は、平面視六角形状の頭部端面22aと、頭部端面22aに交差する6つの側面22bとを含む。軸部23の外周面には雄ねじが形成されている。
【0025】
次に、固定部12について説明する。なお、粘着固定具11は一対の固定部12を備えるが、一対の固定部12は構成が同じであるため、一方の固定部12について説明し、他方の固定部12の説明は省略する。
【0026】
図3~
図6に示すように、固定部12は、金属板製の固定部本体13と、固定部本体13の周縁から突出する複数の突出部17と、固定部本体13に貼着される粘着マット20と、を備える。
【0027】
固定部本体13は、四角板状である。固定部本体13は、板厚方向の一方の面である表面にマット貼着面13aを備え、板厚方向の他方の面に裏面13bを備える。マット貼着面13aは、粘着マット20より広い面積を有する。また、マット貼着面13aの形状は、粘着マット20の第1面20aの形状である四角形状と一致する。そして、固定部本体13のマット貼着面13aには、粘着マット20が貼着されている。
【0028】
固定部12は、固定部本体13の裏面13bよりも連結部材30に向けて膨出する膨出部14を有する。膨出部14は、筒状に突出する周壁15と、周壁15の突出方向の先端に位置する環状底部16とを有する。環状底部16は、膨出部14の頂部に位置している。
【0029】
マット貼着面13aに対する直交方向に沿って固定部本体13を見た平面視では、周壁15はトラック形状である。周壁15の内面は、マット貼着面13aに沿う面方向に対向する一対の規制面15aと、一対の規制面15aの端同士を繋ぐ一対の弧状面15bとを有する。
【0030】
図5又は
図6に示すように、固定部12は、環状底部16を貫通する貫通孔16aを有する。貫通孔16aは、環状底部16を、固定部本体13の板厚方向に貫通する。貫通孔16aは、固定部本体13の裏面13b側に膨出した膨出部14の頂部に形成されている。固定部本体13の板厚方向へのマット貼着面13aから環状底部16までの寸法を膨出部14の深さDとする。
【0031】
膨出部14には、ボルト状部材21が挿通されている。ボルト状部材21の頭部22は、頭部収容部14cに収容されている。また、頭部22において、軸部23の突出する端面は、膨出部14の頂部である環状底部16に接触している。ボルト状部材21の軸線方向への頭部22の寸法を頭部長さLとする。本実施形態では、膨出部14の深さDは、頭部長さLと同じである。このため、頭部22におけるマット貼着面13a側の面である頭部端面22aは、マット貼着面13aと同一面上に位置している。頭部22の頭部端面22aは、粘着マット20によって覆われている。また、頭部端面22aには、粘着マット20の第1面20aの一部が対向している。そして、頭部端面22aは粘着マット20によって覆われるとともに、第1面20aに貼着された状態で頭部収容部14cに収容されている。
【0032】
ボルト状部材21の軸部23は、環状底部16を貫通している。このため、軸部23は、固定部本体13の裏面13b側へ突出している。つまり、ボルト状部材21は、固定部本体13を板厚方向に貫通する貫通孔16aに、軸部23の先端が裏面13b側へ突出するように挿通されている。軸部23には、ナット24が螺合されている。ナット24と頭部22によって環状底部16が挟まれるとともに、固定部本体13にボルト状部材21が一体化されている。その結果、固定部12とボルト状部材21が一体化されている。
【0033】
頭部22の6つの側面のうち、互いに平行な2つの側面22b間の距離を頭部22の二面幅Wとする。二面幅Wは、周壁15の規制面15a間の距離より僅かに短い。頭部22は、膨出部14の内側となる周壁15の内側に収容されている。頭部22において平行な2つの側面22bは、規制面15aに対向配置され、規制面15aと頭部22との接触により、ボルト状部材21の回転が規制されている。
【0034】
図3、
図5又は
図6に示すように、突出部17は、固定部本体13の縁に沿って長手が延びる突条形状である。突出部17は、固定部本体13の周縁を構成する四つの側縁13dに2つずつ設けられている。突出部17は、各側縁13dの両端寄りに配置されている。各側縁13dに2つ設けられた突出部17は、側縁13dの延びる方向に間隔を空けて配置されている。そして、各側縁13dにおいて隣り合う突出部17の間には凹部18が形成されている。
【0035】
また、各突出部17は、各側縁13dの端から僅かに中央側にずれた位置にある。固定部本体13の各隅では、交差する側縁13dの突出部17同士が互いに離間しており、固定部本体13の各隅において隣接する突出部17同士の間には間隙Sが形成されている。
【0036】
固定部12を、マット貼着面13aに直交する方向に沿って外側から見た平面視では、複数の突出部17は、粘着マット20を囲むように配置されている。ここで、平面視において、全ての突出部17を通過する仮想線Mを想定した場合、この仮想線Mは四角形である。仮想線Mにおける全ての突出部17が占める割合は、凹部18が占める割合より大きくなっている。
【0037】
各突出部17は、粘着マット20の周縁に対向する内面17bを備える。なお、内面17bは、マット貼着面13aに連続する面であり、マット貼着面13aに対し交差する面である。突出部17は、内面17bとマット貼着面13aとの間の角度が90度よりも大きくなるように、固定部本体13よりも外側に向けて傾斜している。
【0038】
突出部17は、固定部本体13から粘着マット20の第2面20b側に突出する。マット貼着面13aから突出部17の先端縁19aまでの寸法を、突出部17の高さ寸法とする。突出部17の高さ寸法は、圧縮されていない状態の粘着マット20の厚さ寸法より小さい。このため、突出部17の全体は、粘着マット20の第2面20bよりも第1面20a側に控えた位置にある。
【0039】
図5の2点鎖線に示すように、突出部17は、固定部本体13の各側縁13dから、マット貼着面13aの面方向に沿って矩形状に突出する凸片17aをマット貼着面13a側に折り曲げることで形成されている。つまり、突出部17は、固定部本体13の周縁に折り曲げ形成されていると言える。突出部17を折り曲げ形成する前は、凸片17aは、固定部本体13の面方向に沿って固定部本体13の周縁から突出する。凸片17aにおいて、固定部本体13の周縁からの突出方向の先に位置する端面17dは、マット貼着面13aに直交する平坦面である。
【0040】
凸片17aを、固定部本体13の側縁13dを折り曲げ起点としてマット貼着面13a側に折り曲げることで突出部17が形成される。凸片17aを折り曲げて突出部17を形成するが、上記したように、突出部17の内面17bとマット貼着面13aとの間の角度が90度より大きくなるように凸片17aの折り曲げ角度を調節することにより、凸片17aの端面17dが傾斜する。
【0041】
そして、各突出部17は、固定部本体13から粘着マット20の第2面20b側へ突出した先端に傾斜面19を備える。傾斜面19は、固定部本体13及び粘着マット20の面方向に沿って粘着マット20から離れるに従い、粘着マット20の第2面20bから第1面20aに向かうように傾斜している。上述したように、凸片17aを折り曲げて形成した突出部17の内面17bは、マット貼着面13aに対し傾斜しているため、凸片17aの突出方向の先端に位置する端面17dも傾斜し、この傾斜した端面17dによって傾斜面19が形成されている。なお、突出部17は、内面17bと傾斜面19との交差部に先端縁19aを備える。先端縁19aは、側縁13dに沿って直線状に延びており、突出部17の交差部はエッジ状である。
【0042】
マット貼着面13aを通過する仮想面C1と、傾斜面19を通過する仮想面C2とで挟まれる角度のうち、小さい方の角度を傾斜面19の傾斜角度θとする。傾斜角度θは0度より大きく、45度以下に設定されるのが好ましい。傾斜角度θが45度より大きいと、地震の揺れによって固定部12が傾いたとき、傾斜面19が被貼着面に面接触しにくくなるためである。
【0043】
また、上述した凹部18は、傾斜面19よりもマット貼着面13a寄りに凹設されている。なお、凹部18は、傾斜面19からマット貼着面13aに至るまで凹設されている。
図3又は
図4に示すように、固定部12は、固定部本体13のマット貼着面13aから裏面13bに向けて突出するビード12aを備える。ビード12aは、固定部本体13を補強する。ビード12aは、固定部本体13をマット貼着面13aから凹ませることにより形成されており、固定部本体13をマット貼着面13aとは反対側に突出させて形成されている。
【0044】
ビード12aは、固定部本体13の中央部から固定部本体13の四隅に向けて真っ直ぐ延びる。なお、ビード12aの形状、固定部本体13における位置は適宜変更してもよい。そして、ビード12aにより、粘着マット20の第1面20aとマット貼着面13aとの間には隙間Jが形成されている。隙間Jは、固定部本体13の中央部から固定部本体13の四隅に向けて真っ直ぐ延びる。また、隙間Jは、固定部本体13のマット貼着面13aから凹む。つまり、隙間Jはマット貼着面13aの一部を裏面13b側に膨出させたビード12aにより形成されている。
【0045】
次に、連結部材30について説明する。連結部材30は、固定部12に一体化されたボルト状部材21の軸部23の先端面を向い合せた状態で、2つの固定部12を連結する。なお、2つのボルト状部材21の雄ねじは互いに逆ねじの関係にある。
【0046】
連結部材30は内周面に雌ねじ孔30aを有する六角筒状である。雌ねじ孔30aは、連結部材30を軸線方向に貫通する。雌ねじ孔30aの軸線方向の第1端側には、一方の固定部12から突出する軸部23が螺合され、雌ねじ孔30aの軸線方向の第2端側には、他方の固定部12から突出する軸部23が螺合されている。つまり、2つの固定部12は、ボルト状部材21及び連結部材30によって連結されている。
【0047】
例えば、一方の固定部本体13に対し、連結部材30が離間するように連結部材30を回転させる。このとき、他方の軸部23を連結部材30と一体回転させると、他方の固定部本体13を、連結部材30の移動距離と同じ量で他方の固定部本体13を移動させることができる。
【0048】
また、一方の固定部本体13に対し、連結部材30が離間するように連結部材30を回転させたとき、他方の軸部23は回転させず、連結部材30のみを回転させる。すると、両方の軸部23が連結部材30から離間し、他方の固定部本体13を、連結部材30の移動距離より多い量で他方の固定部本体13を移動させることができる。
【0049】
上記のように、連結部材30を操作することで、連結部材30の軸線方向に沿った2つの固定部本体13の距離を調節できる。各固定部本体13には粘着マット20が貼着されているため、連結部材30を操作することで、連結部材30の軸線方向に沿った2つの粘着マット20の距離を調節できる。
【0050】
次に、粘着固定具11の設置構造について説明する。粘着固定具11が備える2つの固定部12のうち、下側の固定部12を第1固定部121とし、上側の固定部12を第2固定部122とする。
【0051】
図1又は
図4に示すように、粘着固定具11の設置構造では、第1固定部121の粘着マット20の第2面20bが床Fの上面Faに貼着され、第2固定部122の粘着マット20の第2面20bが固定対象物10の下面10aに貼着されている。また、粘着固定具11の設置構造では、第1固定部121の粘着マット20は、第1固定部121のマット貼着面13aと床Fの上面Faとの間で所望する粘着力が発揮できるように厚さ方向に圧縮変形されている。
【0052】
同様に、第2固定部122の粘着マット20は、第2固定部122のマット貼着面13aと固定対象物10の下面10aとの間で所望する粘着力が発揮できるように厚さ方向に圧縮変形されている。本実施形態では、粘着マット20は、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されている。
【0053】
なお、ボルト状部材21の頭部22は、固定部本体13のマット貼着面13aから突出しておらず、マット貼着面13aと頭部端面22aとは同一面上に位置している。このため、粘着マット20は面方向のいずれの位置でも圧縮量は同じである。そして、頭部22の頭部端面22aは、粘着マット20の第1面20aに貼着されている。
【0054】
粘着固定具11の設置構造において、第1固定部121の突出部17は、先端縁19aを含む傾斜面19が床Fの上面Faから離隔している。このとき、傾斜面19は、圧縮変形された粘着マット20の厚さよりも小さい寸法で、上面Faから離隔している。
【0055】
また、第2固定部122の突出部17は、先端縁19aを含む傾斜面19が固定対象物10の下面10aから離隔している。このとき、傾斜面19は、圧縮変形された粘着マット20の厚さよりも小さい寸法で、下面10aから離隔している。
【0056】
つまり、粘着固定具11の設置構造が構築される前の状態で、傾斜面19が粘着マット20の第2面20bから控えることにより、設置構造が構築されても傾斜面19と各面10a,Faとが離隔する。この離隔を利用することにより、粘着マット20がマット貼着面13aと各面10a,Faとの間で圧縮変形可能になっている。
【0057】
第1固定部121において、粘着マット20の周縁は、それぞれ傾斜面19の先端縁19aと床Fの上面Faとの間、及び凹部18から露出し、第2固定部122において、粘着マット20の周縁は、それぞれ傾斜面19の先端縁19aと固定対象物10の下面10aとの間、及び凹部18から露出する。
【0058】
次に、粘着固定具11の設置方法を説明する。
まず、粘着固定具11において、連結部材30の軸線方向に沿った2つの粘着マット20の第2面20b間の距離を、固定対象物10の下面10aと床Fの上面Faとの離間距離より短くする。
【0059】
次に、床Fの上面Faにおいて、固定対象物10の下面10aより下方に粘着固定具11を配置し、第1固定部121の粘着マット20を上面Faに載置する。そして、連結部材30を回転させて、第2固定部122を固定対象物10に接近させ、第2固定部122の粘着マット20の第2面20bを固定対象物10の下面10aに貼着させる。さらに、連結部材30を回転させて第2固定部122を固定対象物10に接近させる。すると、第1固定部121の粘着マット20、及び第2固定部122の粘着マット20がそれぞれ圧縮変形する。このとき、粘着マット20の厚さが、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるまで圧縮変形するように、連結部材30の回転量を調節する。
【0060】
また、第1固定部121の突出部17が床Fの上面Faから離隔し、第2固定部122の突出部17が固定対象物10の下面10aから離隔するように、連結部材30の回転量を調節する。
【0061】
すると、第1固定部121の粘着マット20の第2面20bが床Fの上面Faに貼着されるとともに、第2固定部122の粘着マット20の第2面20bが固定対象物10の下面10aに貼着される。その結果、粘着固定具11によって固定対象物10が床Fに固定される。
【0062】
粘着固定具11の設置構造において、粘着マット20から固定部本体13を剥がす場合が生じる場合がある。このとき、固定部本体13のビード12a内に設けられた隙間Jに剥離剤を注入するのが好ましい。そして、バール形状の工具の先端を凹部18に差し込み、工具の先端をマット貼着面13aに宛がって、工具を抉る。すると、粘着マット20から固定部本体13を剥がすことができる。
【0063】
次に、粘着固定具11及びその設置構造の作用を説明する。
さて、地震が発生すると、地震での揺れに伴い、床Fが揺れ、固定対象物10が揺れる。すると、揺れに伴い、粘着マット20には部分的に荷重が加わり、さらに圧縮変形する部分が生じる。
【0064】
図7に示すように、粘着マット20がさらに圧縮されると、第1固定部121においては、圧縮した部分に近い突出部17の傾斜面19のほぼ全面が床Fの上面Faに接触する。粘着マット20の部分的な圧縮により、第1固定部121が傾くため、傾斜面19が床Fの上面Faに面接触する。第2固定部122においても、圧縮した部分に近い突出部17の傾斜面19が固定対象物10の下面10aに接触する。
【0065】
また、粘着マット20が厚さ方向全体に圧縮された場合、突出部17の先端縁19aが固定対象物10の下面10aや、床Fの上面Faに接触する。本実施形態では、複数の突出部17の先端縁19aが各面10a,Faに接触する。
【0066】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)地震が発生したとき、粘着マット20の部分的な圧縮によって固定部12が傾いたとき、傾斜面19のほぼ全面が固定対象物10の下面10aや床Fの上面Faに面接触する。傾斜面19と各面10a,Faとの面接触により、固定部12の各面10a,Faに沿う方向へのずれが抑制され、揺れを原因として粘着マット20が剥がれることを抑制できる。
【0067】
(2)固定部12は金属板製であり、突出部17は、固定部本体13の周縁(凸片17a)を折り曲げることにより形成されている。凸片17aの折り曲げ前、凸片17aは固定部本体13の各側縁13dから面方向に突出している。この凸片17aを折り曲げるとき、凸片17aの折り曲げ角度を調節することで、突出部17全体がマット貼着面13aに対し傾斜する。このため、凸片17aの先端に位置する端面17dによって傾斜面19を形成でき、傾斜面19を有する突出部17を簡単に形成できる。
【0068】
(3)粘着マット20が面方向の全体に亘って圧縮された場合、複数の突出部17の先端縁19aが固定対象物10の下面10aや、床Fの上面Faに接触する。各面10a,Faに対する突出部17の先端縁19aの接触に伴う摩擦抵抗により、固定部12の各面10a,Faに沿う方向へのずれが抑制され、揺れを原因とした粘着マット20の粘着力の低下を抑制できる。
【0069】
(4)本実施形態では、複数の突出部17の先端縁19aが同時に各面10a,Faに接触する。このため、各面10a,Faに対する突出部17の先端縁19aの接触に伴う摩擦抵抗をより大きくして、固定部12の各面10a,Faに沿う方向へのずれを抑制できる。また、突出部17はエッジ状であるため、先端縁19aが各面10a,Faに食い込むことで、固定部12の各面10a,Faに沿う方向へのずれが抑制され、揺れを原因とした粘着マット20の粘着力の低下を抑制できる。
【0070】
(5)突出部17は、突条形状である。例えば、突出部17がピン状である場合と比べると、各面10a,Faに対する突出部17の接触面積を大きくできる。このため、面方向への固定部12の揺れが規制され、揺れを原因とした粘着力の低下を抑制できる。
【0071】
(6)複数の突出部17は、粘着マット20の周縁に沿って配置され、粘着マット20の周縁の延びる方向に隣り合う突出部17同士の間には凹部18が形成されている。粘着マット20の周縁の一部には突出部17が対向しているが、凹部18が設けられた部分は、外部に露出している。粘着マット20から固定部本体13を剥がす作業が必要な場合は、凹部18から工具を差し込むことができる。このため、工具を用いて粘着マット20から固定部本体13を剥がす作業が行いやすくなる。
【0072】
(7)固定部12の平面視において、複数の突出部17は、粘着マット20を囲むように配置されている。そして、平面視で複数の突出部17を通過する仮想線Mを想定した場合、仮想線Mにおける全ての突出部17が占める割合は、凹部18が占める割合より大きい。このため、地震が発生して固定部本体13が傾いたときの傾斜面19や先端縁19aの各面10a,Faに対する接触面積を多くできる。
【0073】
(8)固定部本体13のマット貼着面13aと粘着マット20の第1面20aとの間には隙間Jが確保されている。この隙間Jに剥離剤を注入することで、粘着マット20から固定部本体13を剥離しやすくなる。
【0074】
(9)固定部本体13の補強のために固定部本体13にビード12aが設けられ、このビード12aの内側を、剥離剤を注入するための隙間Jとして利用できる。よって、ビード12aと、剥離剤注入のための部位とを固定部本体13に別々に成形する場合と比べると、固定部12の製造が容易となる。
【0075】
(10)固定部本体13は膨出部14を備える。そして、膨出部14の環状底部16にボルト状部材21の頭部22を接触させつつ、周壁15の内側にボルト状部材21の頭部22を収容できる。このため、マット貼着面13aに頭部22を直接接触させる場合と比べると、マット貼着面13aからの頭部22の突出量を減らすことができる。よって、頭部端面22aが粘着マット20の第2面20bから飛び出ないようにするため、粘着マット20に頭部22が貫通する孔を形成する必要がなくなり、粘着マット20の粘着面の面積が減らずに済む。その結果として、粘着マット20の粘着面の面積が減ることによる粘着力の低下を無くすことができる。
【0076】
(11)膨出部14の深さDを頭部22の頭部長さLと同じにした。このため、膨出部14の環状底部16にボルト状部材21の頭部22を接触させた状態では、頭部22の頭部端面22aを、固定部本体13のマット貼着面13aと同一面上に位置させることができる。その結果、粘着マット20が圧縮変形されても面方向のいずれの位置でも圧縮量の偏りがほとんど無く、一定の粘着力を発揮させることができる。
【0077】
(12)膨出部14の周壁15は、規制面15aを備え、頭部22の二面幅Wは、周壁15の規制面15a間の距離より僅かに短い。頭部22の側面22bは、規制面15aに対向配置され、規制面15aと側面22bとの接触により、ボルト状部材21の回転を規制できる。
【0078】
(13)粘着固定具11の設置構造では、粘着マット20の厚さが、圧縮前の厚さの50~90%の厚さとなるように、連結部材30の回転量を調整し、各面10a,Faに対する固定部12の接近量を調整する。このため、粘着マット20が過剰に圧縮されることによる素材破壊を回避し、粘着力の低下を抑制できる。また、粘着マット20が圧縮されないことを原因として、粘着固定具11による突っ張り力が弱まることを回避し、粘着固定具11による固定機能の低下を抑制できる。加えて、地震時には、粘着マット20が圧縮して傾斜面19が固定対象物10の下面10aや床Fの上面Faに即座に面接触するため、地震の揺れによる粘着マット20の過剰圧縮を抑止できる。
【0079】
(14)傾斜面19の傾斜角度θを45度以下に設定した。このため、地震の揺れによって固定部12が傾いたとき、傾斜面19を固定対象物10の下面10aや、床Fの上面Faに面接触させやすい。
【0080】
(15)粘着固定具11の設置構造では、粘着マット20は、マット貼着面13aと各面10a,Faとの間で圧縮変形されているが、突出部17は各面10a,Faから離隔している。このため、地震の揺れに伴う粘着マット20の圧縮変形が許容され、さらに、突出部17が各面10a,Faに接触することにより、粘着マット20がそれ以上圧縮変形することを抑制できる。したがって、突出部17により、粘着マット20の過剰な圧縮変形に伴う粘着力の低下を抑制でき、固定部12によって固定対象物10を床Fに固定した状態を維持できる。
【0081】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○
図8に示すように、固定対象物10と床Fとの間に粘着固定具11が介在され、粘着固定具11によって固定対象物10を床Fに固定する設置構造において、粘着マット20が床Fの上面Fa及び固定対象物10の下面10aに貼着されている。なお、粘着マット20は、連結部材30の回転による固定部本体13の相対的な離間移動に伴って、各面10a,Faと固定部本体13のマット貼着面13aとの間で厚さ方向に圧縮変形されている。この設置構造において、複数の突出部17の傾斜面19と各面10a,Faとの間には防水部材42が介在している。防水部材42は、凹部18にも入り込んでおり、凹部18を閉塞している。また、防水部材42は、粘着マット20よりも荷重を受けて圧縮変形しやすい。
【0082】
これによれば、防水部材42により、各面10a,Faと傾斜面19との間や、凹部18から固定部12の内側に水分等の液体が侵入することを抑制できる。このため、固定部12の内側に、粘着マット20をマット貼着面13aや各面10a,Faから剥がすように作用する液体が浸入することを抑制でき、粘着マット20の粘着力の低下を抑制できる。
【0083】
そして、地震が発生したとき、粘着マット20の部分的な圧縮により、固定部12が傾いたとき、傾斜面19と、各面10a,Faとの間で防水部材42が圧縮されるとともに、傾斜面19は各面10a,Faとの間に防水部材42を挟んだ状態で面接触する。防水部材42を挟んだ傾斜面19と各面10a,Faとの面接触により、固定部12の各面10a,Faに沿う方向へのずれが抑制され、揺れを原因として粘着マット20が剥がれることを抑制できる。
【0084】
なお、
図8に示す設置構造では、第2固定部122の突出部17の傾斜面19と固定対象物10の下面10aとの間に防水部材42は無くてもよい。
○
図9に示すように、固定部12は、突出部17の他に、固定部本体13の周縁から突出する突刺部40を有していてもよい。突刺部40は、側縁13dにおける突出部17同士の間に位置する。突刺部40の先端は、突出部17の傾斜面19よりも粘着マット20の第2面20b側に突出している。
【0085】
これによれば、地震が発生し、粘着マット20が厚さ方向に圧縮されることに伴い、突刺部40が被貼着面としての固定対象物10の下面10aや床Fの上面Faに突き刺さる。突刺部40の突き刺さりにより、面方向への固定部12の揺れが規制され、揺れを原因とした粘着マット20の粘着力の低下を抑制できる。
【0086】
○ 固定部12を、マット貼着面13aに直交する方向に沿って外側から見た平面視において、仮想線Mにおける全ての突出部17が占める割合は、凹部18が占める割合と同じでもよいし、小さくてもよい。要は、マット貼着面13aの周縁に沿う方向への突出部17の寸法を変更し、隣り合う突出部17間の凹部18の大きさを変更してもよい。
【0087】
○ 突出部17は突条形状でなくてもよい。例えば、突出部17をピン形状にし、固定部本体13の各側縁13dに多数の突出部17を設けてもよい。
○
図10に示すように、凹部18は、マット貼着面13aにまで達しておらず、実施形態よりも浅くてもよい。
【0088】
○
図11に示すように、突出部17の先端縁19aが被粘着面としての固定対象物10の下面10aや床Fの上面Faに接触していてもよい。この場合、連結部材30の回転による固定部本体13の相対的な離間移動に伴って、粘着マット20が被貼着面としての下面10aや上面Faとマット貼着面13aとの間で厚さ方向に圧縮変形されている。
【0089】
これによれば、粘着マット20は、マット貼着面13aと被貼着面との間に挟まれ、厚さ方向に圧縮変形する。粘着マット20が圧縮変形した状態では、突出部17の先端縁19aが被貼着面に接触するため、粘着マット20が過剰に圧縮されることを抑制でき、過剰な圧縮を原因とした粘着力の低下を抑制できる。
【0090】
○
図12に示すように、粘着固定具11において、頭部22の頭部端面22aが、マット貼着面13aより突出するように、膨出部14の深さDが設定されていてもよい。この場合、頭部長さLが深さDよりも大きくなる。
【0091】
頭部端面22aがマット貼着面13aよりも突出している場合、粘着マット20は、頭部端面22aと各面10a,Faとの間では、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるまで圧縮されている。この場合、粘着マット20において、頭部端面22aと各面10a,Faとの間の部位は、マット貼着面13aと各面10a,Faとの間の部位よりも大きな圧縮量で圧縮されている。
【0092】
このように構成しても、頭部収容部14cにボルト状部材21の頭部22を収容している。このため、マット貼着面13aに頭部22を直接接触させる場合と比べると、マット貼着面13aからの頭部22の突出量を減らすことができる。よって、頭部22の頭部端面22aが粘着マット20の第2面20bから飛び出ないようにするため、粘着マット20に頭部22が貫通する孔を形成する必要がなくなり、粘着マット20の貼着面積が減らずに済む。その結果として、粘着マット20の粘着面の面積が減ることによる粘着力の低下を無くすことができる。
【0093】
○
図13に示すように、粘着固定具11において、頭部22の頭部端面22aが、マット貼着面13aよりも裏面13b側に控えるように、膨出部14の深さDが設定されていてもよい。この場合、頭部長さLが深さDよりも小さくなる。なお、深さD及び頭部長さLは、粘着マット20の圧縮変形によって頭部収容部14cに粘着マット20が入り込んだとき、その粘着マット20が頭部22の頭部端面22aに貼着可能になるように設定される。
【0094】
そして、頭部端面22aがマット貼着面13aよりも裏面13b側に控えた位置にある場合、連結部材30の回転による固定部本体13の相対的な離間移動に伴って、粘着マット20が被貼着面とマット貼着面13aとの間で厚さ方向に圧縮変形されるとともに、頭部収容部14cに入り込んだ粘着マット20が頭部端面22aに貼着される。このとき、頭部端面22aと各面10a,Faとの間では、粘着マット20は、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるまで圧縮されている。
【0095】
このように構成しても、頭部収容部14cにボルト状部材21の頭部22を収容している。このため、マット貼着面13aに頭部22を直接接触させる場合と比べると、マット貼着面13aからの頭部22の突出量を減らすことができる。よって、頭部22の頭部端面22aが粘着マット20の第2面20bから飛び出ないようにするため、粘着マット20に頭部22が貫通する孔を形成する必要がなくなり、粘着マット20の貼着面積が減らずに済む。その結果として、粘着マット20の粘着面の面積が減ることによる粘着力の低下を無くすことができる。また、粘着マット20の圧縮時には、ボルト状部材21の頭部端面22aに粘着マット20が貼着されるため、粘着マット20の貼着面積を大きくできる。
【0096】
○
図14又は
図15に示すように、固定部12において、粘着マット20の第2面20bに隙間形成凹部20cを設けてもよい。そして、粘着マット20の第2面20bを固定対象物10の下面10aや、床Fの上面Faに貼着したとき、隙間形成凹部20cと各面10a,Faとの間に隙間Jを形成してもよい。
【0097】
隙間形成凹部20cは、第2面20bの面方向に延びる溝状である。また、第2面20bに直交する方向から見た平面視では、隙間形成凹部20cは、面方向に直線状に延びている。また、平面視では、隙間形成凹部20cは、粘着マット20の周縁にまで延びており、粘着マット20の周縁において開口している。なお、隙間形成凹部20cの形状、隙間形成凹部20cの端が開口する位置は適宜変更してもよい。
【0098】
この場合、粘着固定具11において、固定対象物10の設置面となる上面Faには、第1固定部121の粘着マット20が貼着されるとともに、第2固定部122の粘着マット20が固定対象物10に貼着されている。したがって、第2固定部122の粘着マット20は、固定対象物側粘着マットを構成し、第2固定部122が固定対象物側固定部を構成している。
【0099】
粘着固定具11が、固定対象物10の下面10aと、床Fの上面Faとに粘着マット20によって貼着されることにより、固定対象物10と床Fとの間には、第1固定部121及び第2固定部122の固定構造が構築されている。
【0100】
第1固定部121の固定構造において、床Fの上面Faと第1固定部121のマット貼着面13aとの間の粘着マット20は、隙間形成凹部20cによって隙間Jを確保した状態で圧縮変形されている。
【0101】
このように構成した場合、床Fの上面Faから粘着マット20を剥がす必要が生じる場合がある。このとき、床Fの上面Faに剥離剤を散液すると、隙間形成凹部20cによって形成された隙間Jに剥離剤が侵入する。
【0102】
そして、バール形状の工具の先端を凹部18に差し込み、工具の先端を、第1固定部121のマット貼着面13aに宛がって、工具を抉る。すると、床Fの上面Faから粘着マット20を剥がすことができる。特に、隙間形成凹部20cによる隙間Jが確保されていないと、床Fの上面Faにおける粘着マット20の周囲に剥離剤を散液し、粘着マット20の周囲から剥がす必要がある。しかし、隙間形成凹部20cによる隙間Jを確保することで、粘着マット20の面内中央部にまで剥離剤を侵入させることができ、粘着マット20を剥がす作業が行いやすくなる。
【0103】
○ 固定部本体13のマット貼着面13aから粘着マット20に向けて突出する複数の凸部を設け、複数の凸部によってマット貼着面13aと粘着マット20の第1面20aとの間に隙間Jを形成してもよい。この場合、ビード12aは削除されてもよい。
【0104】
○ 粘着マット20の第1面20aに隙間形成凹部20cを形成し、固定部本体13のマット貼着面13aと、粘着マット20の第1面20aとの間に隙間Jを確保してもよい。
【0105】
○ ビード12aに剥離剤の注入口を形成してもよい。
○ 突出部17において、傾斜面19と内面17bとの交差部は、先端縁19aのように角張った形状でなくてもよく、丸みを帯びた形状でもよい。
【0106】
○ 突出部17は、固定部本体13の凸片17aを折り曲げて形成しなくてもよく、例えば、溶接によって凸片17aをマット貼着面13aに接合して形成してもよい。
○ 固定部12は樹脂製であってもよく、この場合、固定部12の固定部本体13と突出部17は樹脂により一体成形される。
【0107】
○ 粘着マット20は、ボルト状部材21の頭部22が収容される孔を有する形状であってもよい。このように構成した場合、マット貼着面13aに粘着マット20が貼着された状態で、粘着マット20の孔は、膨出部14に対応した位置に配置されている。そして、固定部12にボルト状部材21を一体化する場合は、ボルト状部材21の軸部23を粘着マット20の孔から膨出部14内に挿通し、軸部23を貫通孔16aに貫通させつつ、頭部22を環状底部16に接触させる。そして、軸部23にナット24を螺合して固定部12とボルト状部材21を一体化する。
【0108】
○ 固定部本体13のビード12aはなくてもよい。この場合、粘着マット20との間に隙間Jは形成されない。
○ 粘着固定具11の一対の固定部12のうち、一方の固定部12のみに突出部17を設け、他方の固定部12には突出部17を設けなくてもよい。
【0109】
○ 膨出部14の周壁15は円筒状であり、規制面15aを備えていなくてもよい。
○ 周壁15を平面視六角形状にし、周壁15の内面の全てを頭部22の側面22bに対向させて頭部22を回り止めしてもよい。
【0110】
○ 頭部22を平面視六角形状以外の多角形状とし、頭部22の形状に応じて周壁15の内面の形状を多角形状として回転規制部としてもよい。
○ ボルト状部材21は、頭部22と軸部23が一体成形されたボルトであったが、頭部22をナットにより構成するとともに、軸部23を雄ねじ棒により構成し、雄ねじ棒にナットを螺合してボルト状部材21としてもよい。
【0111】
○ 固定部12の固定部本体13と、ボルト状部材21とを溶接によって一体化してもよい。
○ 粘着固定具11は、1つの固定部12と、固定部12から突出する1本のボルト状部材21と、連結部材30と、設置部材と、を備える構成としてもよい。この場合、設置部材は、固定対象物10及び設置部のうち、固定部12が貼着されない方に設置される。また、設置部材は、連結部材30の雌ねじ孔30aに螺合される雄ねじを有する構成であれば、特に固定部12及びボルト状部材21を有する構成に限定されない。
【0112】
○ 固定対象物10は、粘着固定具11によって設置部に固定されるものでなくてもよい。具体的には、他の固定具によって設置部に固定された固定対象物10を、粘着固定具11によって設置部にさらに固定してもよい。
【0113】
○ 実施形態において、固定部本体13は四角板状でなくてもよく、例えば、固定部本体13は円板状であったり、五角板状や六角板状であってもよい。
○ 固定部本体13のマット貼着面13aには、1枚の粘着マット20でなく、複数枚に分割された粘着マット20が貼着されていてもよい。
【0114】
○ マット貼着面13aの形状と粘着マット20の形状は一致していなくてもよく、例えば、マット貼着面13aは四角形状である一方で、粘着マット20は楕円形状であってもよい。
【0115】
○ 突出部17は、固定部本体13の周縁以外の部位から突出していてもよく、例えば、固定部本体13の周縁よりも内側から突出していてもよい。
○ 傾斜面19は、突出部17全体を固定部本体13に対し傾斜させることにより形成されていたが、これに限らない。例えば、突出部17の内面17bがマット貼着面13aに直交するように凸片17aを折り曲げて突出部17を形成しつつ、凸片17aの先端を傾斜角度45度以下となるように切削するなどして傾斜面19を形成してもよい。
【0116】
又は、突出部17の内面17bとマット貼着面13aとの間の角度が鋭角となるように凸片17aを折り曲げて突出部17を形成しつつ、凸片17aの先端を傾斜角度45度以下となるように切削するなどして傾斜面19を形成してもよい。
【0117】
○ 突出部17のエッジ形状は、傾斜面19と内面17bとの交差部により形成されるものでなくてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0118】
(イ)板厚方向の一方の面である表面にマット貼着面を有する固定部本体を備えるとともに、厚さ方向の両面に粘着面を有しており、かつ前記厚さ方向に圧縮変形する板状の粘着マットが前記マット貼着面に貼着される固定部であって、
前記マット貼着面は、前記粘着マットより広い面積を有するとともに、前記粘着面と前記マット貼着面との間には、前記マット貼着面の面方向に沿う一部に隙間が形成されていることを特徴とする固定部。
【0119】
(ロ)前記隙間は、前記固定部本体を前記マット貼着面から凹ませることにより形成されている固定部。
(ハ)前記固定部本体は金属板状であり、前記隙間は前記固定部本体を前記マット貼着面とは反対側に突出させたビードにより形成されている固定部。
【0120】
(ニ)前記隙間内に剥離剤を注入するための注入口が形成されている固定部。
(ホ)板厚方向の一方の面である表面にマット貼着面を有する固定部本体を備えるとともに、厚さ方向の両面に粘着面を有しており、かつ前記厚さ方向に圧縮変形する板状の粘着マットが前記マット貼着面に貼着される固定部であって、
前記マット貼着面は、前記粘着マットより広い面積を有するとともに、前記粘着マットには、当該粘着マットが貼着される面との間に隙間を形成する隙間形成凹部が設けられていることを特徴とする固定部。
【0121】
(ヘ)前記隙間形成凹部は溝状である固定部。
(ト)前記隙間形成凹部は、前記粘着マットの周縁において開口している固定部。
(チ)固定対象物が設置部の設置面に固定された固定構造であって、前記設置面に、上記(イ)~(ト)のいずれか一項に記載の固定部の前記粘着マットが貼着されるとともに、前記設置面に貼着される前記固定部の前記固定部本体と連結され前記固定対象物に貼着される固定対象物側粘着マットを有する固定対象物側固定部が、前記固定対象物に貼着されていることを特徴とする固定構造。
【符号の説明】
【0122】
F…設置部としての床、Fa…被貼着面としての上面、M…仮想線、10…固定対象物、10a…被貼着面としての下面、11…粘着固定具、12…固定部、13…固定部本体、13a…マット貼着面、17…突出部、17b…内面、18…凹部、19…傾斜面、20…粘着マット、20a…第1面、20b…第2面、40…突刺部、42…防水部材。