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特許7423472配管押込み装置、配管押込み設備及び配管外点検方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】配管押込み装置、配管押込み設備及び配管外点検方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20240122BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20240122BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240122BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20240122BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20240122BHJP
   B23P 17/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G02B23/24 A
G01N21/84 A
G03B15/00 L
G02B23/26 C
G02B23/24 B
B26F3/00 M
B26F3/00 S
B23P17/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020134529
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030465
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 智得
(72)【発明者】
【氏名】寺井 藤雄
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-161605(JP,U)
【文献】特開2000-054477(JP,A)
【文献】実開平03-071898(JP,U)
【文献】特開2014-157292(JP,A)
【文献】特開2009-236876(JP,A)
【文献】特開2003-004434(JP,A)
【文献】特開2007-206258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24 - 23/26
G03B 15/00 - 15/035
G03B 15/06 - 15/16
G01N 21/84 - 21/958
B26F 1/00 - 3/16
B23P 5/00 - 17/06
B23P 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内に押し込まれて挿入される配管押込み装置であって、
映像を取得可能な照明付きの映像取得装置を備えたヘッドと、
前記ヘッドをその回転軸回りに回転させる回転機構を備えたヘッド回転装置と、
前記ヘッド回転装置における前記ヘッドの反対側に接続されて前記ヘッド回転装置を押し込むための押込み用ケーブルと、を有し、
前記ヘッドには、前記ヘッドが通過可能な直径の孔を前記配管に、前記ヘッド回転装置が押し込まれる方向にあけるための高圧水を噴射可能なウォータジェットノズルが、前記映像取得装置と共に設けられたことを特徴とする配管押込み装置。
【請求項2】
前記ヘッド回転装置の外側に設けられ、配管の内壁を押圧することで前記ヘッド回転装置を前記配管に支持し固定する固定装置を、更に有することを特徴とする請求項1に記載の配管押込み装置。
【請求項3】
前記ウォータジェットノズルは、ヘッドの回転軸に対して所定角度傾斜して設定されて、前記ヘッドの前記回転軸回りの回転中に高圧水を噴射することで、配管に前記ヘッドが通過可能な孔をあけるよう構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の配管押込み装置。
【請求項4】
前記固定装置は、膨張または収縮可能で、膨張時に配管の内壁を押圧可能な固定用バルーン、または伸長または収縮可能で、伸長時に前記配管の前記内壁を押圧可能な固定用アームを備えて構成されたことを特徴とする請求項2に記載の配管押込み装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配管押込み装置と、
前記配管押込み装置の押込み用ケーブルを挟持して駆動し、前記配管押込み装置を押込み方向に移動させる押込み機構部と、
前記配管押込み装置の前記押込み用ケーブルを巻き回して駆動し、前記配管押込み装置を引戻し方向に移動させる引戻し機構部と、を有して構成されたことを特徴とする配管押込み設備。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配管押込み装置と、
前記配管押込み装置の押込み用ケーブルを挟持して駆動し、前記配管押込み装置を押込み方向および引戻し方向に移動させる押込み機構部と、
前記押込み機構部の回転方向に連動して前記押込み用ケーブルを巻き回してこの押込み用ケーブルを引き出しまたは巻き取るドラムと、を有して構成されたことを特徴とする配管押込み設備。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配管押込み装置を配管内に設置する装置設置ステップと、
前記配管押込み装置を前記配管内の所定調査位置に押し込んでいく装置移動ステップと、
前記配管における孔あけ位置に到達させた後に前記配管押込み装置を固定させ、前記配管押込み装置から放出される高圧水によって前記配管に孔をあける配管孔あけステップと、
この配管にあけられた孔から、前記配管押込み装置に設けられた映像取得装置によって前記配管外を点検する配管外点検ステップと、を有することを特徴とする配管外点検方法。
【請求項8】
前記配管は、原子炉圧力容器内面に設置された給水スパージャまたは炉心スプレイスパージャであることを特徴とする請求項7に記載の配管外点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配管内に押し込まれて配管内外を検査可能な配管押込み装置、この配管押込み装置を備えた配管押込み設備、及び配管外点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事故等が発生して過酷環境となったプラント等の設備内部の状況を把握するために、当該プラント等に配設されている配管を使い、この配管内を通って設備内に検査・作業装置を挿入させて行く方法が考えられるが、この一般的な配管押込み装置としては、カメラのみを備えた装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-206258号公報
【文献】特開昭63-76987号公報
【文献】特開2006-125153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の配管押込み装置としては、例えば、特許文献1に示すように、カメラを搭載した球状のヘッドを用い、このヘッドを高剛性なケーブルで配管内へ押込むことで配管内部を検査するものである。ところが、この配管押込み装置は、配管内部を検査することを想定しており、検査したい箇所が配管経路の外に位置する場合、配管に孔をあけることができないため、配管外を点検することができないという課題がある。
【0005】
また、単に配管に孔をあける装置は、特許文献2や特許文献3に示すような装置があるが、これらの装置ではカメラを配管外へ出すことができないため、配管外の設備を点検することができない。
【0006】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、配管への孔あけを可能にして配管の内外を検査点検することができる配管押込み装置、配管押込み設備及び配管外点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態における配管押込み装置は、配管内に押し込まれて挿入される配管押込み装置であって、映像を取得可能な照明付きの映像取得装置を備えたヘッドと、前記ヘッドをその回転軸回りに回転させる回転機構を備えたヘッド回転装置と、前記ヘッド回転装置における前記ヘッドの反対側に接続されて前記ヘッド回転装置を押し込むための押込み用ケーブルと、を有し、前記ヘッドには、前記ヘッドが通過可能な直径の孔を前記配管に、前記ヘッド回転装置が押し込まれる方向にあけるための高圧水を噴射可能なウォータジェットノズルが、前記映像取得装置と共に設けられたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の実施形態における配管押込み設備は、前記実施形態に記載の配管押込み装置と、前記配管押込み装置の押込み用ケーブルを挟持して駆動して、前記配管押込み装置を押込み方向に移動させる押込み機構部と、前記配管押込み装置の前記押込み用ケーブルを巻き回して駆動して、前記配管押込み装置を引戻し方向に移動させる引戻し機構部と、を有して構成されたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の実施形態における配管外点検方法は、前記実施形態に記載の配管押込み装置を配管内に設置する装置設置ステップと、前記配管押込み装置を前記配管内の所定調査位置に押し込んでいく装置移動ステップと、前記配管における孔あけ位置に到達させた後に前記配管押込み装置を固定させ、前記配管押込み装置から放出される高圧水によって前記配管に孔をあける配管孔あけステップと、この配管にあけられた孔から、前記配管押込み装置に設けられた映像取得装置によって前記配管外を点検する配管外点検ステップと、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、配管への孔あけを可能にして配管の内外を検査点検するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る配管押込み装置を示す側面図。
図2図1の配管押込み装置の内部構成を示す構成図。
図3図1及び図2の配管押込み装置による配管への孔あけ作業の状況を示す説明図。
図4】第2実施形態に係る配管押込み装置を示す側面図。
図5】第3実施形態に係る配管押込み設備を示す側面図。
図6図5の配管押込み設備における配管押込み装置を、検査対象とする配管の入口手前に設置した状態を示す側面図。
図7図6の配管押込み装置の押込み状況を示す側面図。
図8図7の配管押込み装置による配管への孔あけ状況を示す側面図。
図9図8の配管押込み装置による配管外の検査状況を示す側面図。
図10図5の配管押込み設備による配管の孔あけと配管外検査の各動作を説明する配管外点検方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
【0013】
[A]第1実施形態(図1図3)
図1は、第1実施形態に係る配管押込み装置を示す側面図であり、また図2は、図1の配管押込み装置の内部構成を示す構成図である。これらの図1及び図2に示す配管押込み装置10は、配管1内に押し込まれて挿入され、配管1の内部を検査すると共に、配管1に孔2(図3)をあけることで、この孔2を利用して配管1の外部を検査するものであり、ヘッド11、ヘッド回転装置12、固定装置13及び押込み用ケーブル14を有して構成される。ここで、配管1は、配管押込み装置10が押し込められる第1配管1Aと、この第1配管1Aに交差、例えば直交する第2配管(T字配管等)1Bとを有し、この第2配管1Bに配管押込み装置10によって孔2(図3)があけられる。
【0014】
配管押込み装置10は、ヘッド回転装置12によりヘッド11が回転軸O回りに回転駆動され、このヘッド回転装置12におけるヘッド11と反対側に押込み用ケーブル14が接続され、ヘッド回転装置12の外周に固定装置13としての固定用バルーン15が設置されたものであり、ヘッド11が、カメラ16と共にウォータジェットノズル17を一体に備える。
【0015】
つまり、ヘッド11のカメラ16は、配管1の内部及び外部の映像を取得可能な映像取得装置であり、配管1の内外を照らす図示しない照明を備える。このカメラ16により、配管1の内外の状態が視認されて検査点検される。
【0016】
ヘッド11のウォータジェットノズル17は、ヘッド11内に設置された例えば金属製のノズル固定具18に固定され、このノズル固定部18に、ウォータジェットノズル17に連通するノズル内水路19が形成される。ノズル固定具18のノズル内水路19は、ウォータジェットノズル17と、ヘッド回転装置12における後述のスイベルジョイント21との距離が最短になるように設けられている。そして、このノズル内水路19は、上記スイベルジョイント21を介して、押込み用ケーブル14内に配設された高圧水ホース20に接続される。これにより、図示しない高圧水源から高圧水ホース20に導かれた超高圧水が、スイベルジョイント21及びノズル内水路19を経てウォータジェットノズル17から噴射されて、後述の如く配管1の第2配管1Bに孔2があけられる。
【0017】
ここで、ウォータジェットノズル17は、ヘッド11の回転軸Oに対して所定角度θだけ傾斜して設定される。従って、ヘッド11の回転軸O回りの回転中にウォータジェットノズル17から超高圧水Wが噴射されることで、配管1の例えば第2配管1Bに、ヘッド11が通過可能な直径の孔2(図3)があけられる。
【0018】
ヘッド回転装置12は、図2に示すように、ヘッド11のノズル固定具18のノズル内水路19と押込み用ケーブル14内の高圧水ホース20とを接続するスイベルジョイント21を備える。このスイベルジョイント21は、一端側21Aがヘッド11のノズル固定具18に取り付けられて、このノズル固定具18と共に回転可能に設けられる。そして、このスイベルジョイント21の一端側21Aの回転軸は、ヘッド11の回転軸Oと略一致して設定される。
【0019】
更に、ヘッド回転装置12は、モータ22、ドライブギア23及びドリブンギア24を有する回転機構25備える。モータ22の回転駆動力が、ドライブギア23及びドリブンギア24を経てスイベルジョイント21の一端側21Aに伝達され、このスイベルジョイント21の一端側21Aからヘッド11のノズル固定具18へ伝達されることで、ヘッド11が回転軸O回りに少なくとも360度回転駆動される。尚、ドライブギア23及びドリブンギア24に代えて、ドライブプーリ、ドリブンプーリ、及びこれらのプーリに巻き掛けられるベルトなどを用いてもよい。
【0020】
固定装置13としての固定用バルーン15は、ヘッド回転装置12の外周に所定間隔を隔てて複数個、例えば2から4個設置される。これらの固定用バルーン15は、図示しないエア供給源からのエアの供給により膨張し、供給遮断により収縮する。固定用バルーン15は、膨張時に配管1の第1配管1Aの内壁を押圧して、ヘッド回転装置12を第1配管1Aに支持し固定する。これにより、ヘッド11のウォータジェットノズル17からの超高圧水Wの噴射による噴射反力によっても、ヘッド回転装置12の振動(振れ)を抑制することが可能になる。
【0021】
押込み用ケーブル14は、ヘッド回転装置12におけるヘッド11と反対側の端部に、ばね26を介して接続される。この押込み用ケーブル14は、ヘッド11、ヘッド回転装置12及び固定用バルーン15を配管1の第1配管1A内に押し込むためのものであり、その押込み力に抗する剛性を備える。また、この押込み用ケーブル14内には高圧水ホース20のほか、モータ22への給電用のモータケーブル27、カメラ16との信号を送受信するためのカメラケーブル28が収納されている。
【0022】
また、上記ばね26は、押込み用ケーブル14を用いてヘッド11、ヘッド回転装置12及び固定用バルーン15を第1配管1A内に押し込む際に、第1配管1Aの曲り等の変形に追従して撓むことで、上述の押込み操作を容易化する。
【0023】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)~(4)を奏する。
(1)ヘッド11には、配管1に孔2を開けるための超高圧水Wを噴射可能なウォータジェットノズル17がカメラ16と共に設けられ、ヘッド回転装置12によりヘッド11を回転軸O回りに回転させた状態でウォータジェットノズル17から超高圧水Wを噴射させることで、カメラ16からの映像を利用して、配管1の第2配管1Bに孔2をあけることができる。これにより、カメラ16により第1配管1A及び第2配管1Bの内部の映像を取得できるばかりか、あけられた孔2内をヘッド11が通過することで、ヘッド11のカメラ16により第2配管1Bの外部の映像を取得できる。この結果、これらの映像を用いて配管1(第1配管1A、第2配管1B)の内外を良好に検査点検することができる。
【0024】
(2)配管押込み装置10のヘッド11には、配管1の内外の映像を取得して配管1の内外を検査点検可能なカメラ16と共に、配管1に孔2をあけるための超高圧水Wを噴射可能なウォータジェットノズル17が設けられている。このため、配管1への孔2あけと配管1の内外の検査点検とを、同一の配管押込み装置10により実施できる。この結果、配管1への孔2あけ用の装置と、配管1の内外を検査点検する装置とをそれぞれ個別に用いて作業する場合に比べて、作業の効率化を実現でき、作業時間を短縮できる。
【0025】
(3)ヘッド11に設けられて超高圧水Wを噴射するウォータジェットノズル17が、ヘッド11の回転軸Oに対して所定角度θだけ傾斜して設定され、ヘッド11の回転時にウォータジェットノズル17から噴射される超高圧水Wにより、ヘッド11が通過可能な直径の孔2を第2配管1Bにあけることができる。このため、ヘッド11が第2配管1Bにあけられた孔2内を通過して、このヘッド11のカメラ16が第2配管1Bの外部の映像を取得することで、このカメラ16の映像を用いて第2配管1Bの外部を正確に検査点検することができる。
【0026】
(4)配管押込み装置10におけるヘッド回転装置12の外周に設けられた固定用バルーン15が、膨張により第1配管1Aの内壁を押圧することで、ヘッド回転装置12を第1配管1Aに支持して固定するので、ヘッド11のウォータジェットノズル17から超高圧水Wを噴射して第2配管1Bに孔2をあける際に、超高圧水Wの噴射反力による配管押込み装置10の上下左右の振動(振れ)を抑制できる。この結果、ウォータジェットノズル17からの超高圧水Wの噴射により、第2配管1Bに意図したサイズ(直径)の孔2を確実にあけることができる。
【0027】
[B]第2実施形態(図4
図4は、第2実施形態に係る配管押込み装置を示す側面図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0028】
本第2実施形態の配管押込み装置30が第1実施形態と異なる点は、固定装置31が、配管押込み装置30のヘッド回転装置12の外周に所定間隔を隔てて複数設置された固定用アーム32であり、それぞれの固定用アーム32が、伸長または収縮可能で、伸長時に配管1の第1配管1Aの内壁を押圧可能に構成された点である。
【0029】
つまり、固定用アーム32は、2本のアーム部材33A及び33Bが、交差位置に設けられた支点34により軸支され、一方のアーム部材33Aの基端部が支点35によりヘッド回転装置12に回転自在に枢支され、他方のアーム部材33Bの基端部がスライダ36を用いて、ヘッド回転装置12の軸方向に移動自在にヘッド回転装置12に支持される。また、アーム部材33A及び33Bの先端部には、押圧パッド 37が設けられている。
【0030】
固定用アーム32のアーム部材33Bのスライダ36を、例えばコントロールワイヤまたは直動アクチュエータによりヘッド回転装置12の軸方向に移動させることで、固定用アーム32を第1配管1Aの内壁へ向かって伸長、または第1配管1Aの内壁から遠ざかる方向に収縮させることが可能になる。固定用アーム32を伸長させることで、その押圧パッド37が第1配管1Aの内壁を押圧し、これにより、配管押込み装置30のヘッド回転装置12を第1配管1Aに支持し固定することが可能になる。
【0031】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態の配管押込み装置30においても、第1実施形態の効果(1)~(4)と同様な効果を奏する。
【0032】
[C]第3実施形態(図5
図5は、第3実施形態に係る配管押込み設備を示す側面図である。本第3実施形態において第1及び第2実施形態と同様な部分については、第1及び第2実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0033】
本第3実施形態の配管押込み設備40は、第1実施形態の配管押込み装置10または第2実施形態の配管押込み装置30(例えば配管押込み装置10)を配管1の第1配管1Aに押し込む動作と引き戻す動作を、押込み機構部41、引戻し機構部42及びガイド機構部43を用いて機械的に実施させるものである。
【0034】
配管押込み装置10、30の押込み用ケーブル14は、引戻し機構部42を構成するドラム45に巻き回されており、このドラム45から引き出された部分が、押込み機構部41を構成する一対の押込みローラ44に挟持されると共に、ガイド機構部43を構成する複数のガイドローラ46により案内される。
【0035】
一対の押込みローラ44は、配管押込み装置10、30の押込み用ケーブル14の軸方向に沿って複数台設けられ、押込み用ケーブル14を挟持した状態で回転(正転)駆動することで、押込み用ケーブル14に接続された配管押込み装置10、30のヘッド11、ヘッド回転装置12及び固定装置13(例えば固定用バルーン15)を、第1配管1Aに対する押込み方向に移動させる。また、ドラム45は、配管押込み装置10、30の押込み用ケーブル14を巻き回した状態で回転(正転)駆動することで、配管押込み装置10、30のヘッド11、ヘッド回転装置12及び固定装置13(例えば固定用バルーン15)を、第1配管1Aに対する引戻し方向(上記押込み方向と反対方向)に移動させる。
【0036】
ここで、押込みローラ44は、ドラム45によるヘッド11及びヘッド回転装置12等の引戻し方向への移動時に、この移動をアシストするために、押込み用ケーブル14をドラム45への引戻し方向に移動させるべく逆転する。また、ドラム45は、押込みローラ44によるヘッド11及びヘッド回転装置12等の押込み方向への移動時に、この移動をアシストするために、押込み用ケーブル14をドラム45から引き出す方向(押込み方向と同方向)に移動させるべく逆転する。
【0037】
ガイドローラ46は、押込みローラ44により配管押込み装置10、30が第1配管1Aへの押込み方向に移動される際に、配管押込み装置10、30(ヘッド11、ヘッド回転装置12、固定装置13及び押込み用ケーブル14)の移動を案内し、また、ドラム45により配管押込み装置10、30が第1配管1から引戻し方向に移動される際に、配管押込み装置10、30(ヘッド11、ヘッド回転装置12、固定装置13及び押込み用ケーブル14)の移動を案内する。
【0038】
配管押込み装置10、30は、押込みローラ44及びドラム45により第1配管1Aに押し込まれ移動する間に、ヘッド11のカメラ16が第1配管11A及び第2配管1B内の映像を取得し、必要に応じてウォータジェットノズル17から超高圧水Wを噴射して第2配管1Bに孔2をあけ、この孔2内をヘッド11が通過することで、ヘッド11のカメラ16が第2配管1B外の映像を取得する。これらの作業終了後に、配管押込み装置10、30は、ドラム45及び押込みローラ44により押込み用ケーブル14が巻き取られて引き戻される。
【0039】
このうち、配管押込み設備40が行なう配管押込み装置10、30による第2配管1Bへの孔あけ動作と第2配管1B外の検査動作について、図6図9、及び図10のフローチャートを用いて詳説する。なお、図6図9における配管1(第1配管1A及び第2配管1B)は、管軸に沿う断面状態を示している。
【0040】
図6に示すように、配管押込み設備40は、検査対象とする配管1における第1配管1Aの近傍に設置され、この配管押込み設備40の配管押込み装置10、30が上記第1配管1Aの入口3の手前または第1配管1A内に設置される(S1)。
【0041】
次に、配管押込み設備40は、図7に示すように、押込みローラ44を回転(正転)駆動させつつ、ドラム45を押込み用ケーブル14の引き出し方向に回転(逆転)駆動させることで、ヘッド11、ヘッド回転装置12及び固定装置13(例えば固定用バルーン15)を第1配管1A内の所定調査位置に押し込んでいく(S2)。このヘッド11及びヘッド回転装置12等の押込み動作に不具合が生じた場合などの状況に合わせて、配管押込み設備40は、押込みローラ44を逆転させ且つドラム45を正転させて、ヘッド11及びヘッド回転装置12等を一旦引き戻し、再度押込みローラ44を正転させ且つドラム45を逆転させて、押込み量を調整しながらヘッド11及びヘッド回転装置12等を第1配管11Aに押し込む(S3)。
【0042】
図8に示すように、配管押込み設備40は、ヘッド11及びヘッド回転装置12等が第2配管1Bにおける孔あけ位置に到達したときに、押込みローラ44及びドラム45によるヘッド11及びヘッド回転装置12等の押込み動作を停止する(S4)。この停止後、配管押込み設備40は、固定用バルーン15を膨張させて第1配管11Aの内壁に押圧し、ヘッド回転装置12を第1配管1Aに固定する(S5)。次に、配管押込み設備40は、ヘッド回転装置12によりヘッド11を回転させつつ、ヘッド11のウォータジェットノズル17から超高圧水Wを噴射させて、第2配管1Bに孔をあける(S6)。
【0043】
次に、配管押込み設備40は、図9に示すように、固定用バルーン15を若干縮小させて、この固定用バルーン15と第1配管1Aの内壁との間の摩擦力を減少させる(S7)。この状態で、配管押込み設備40は、押込みローラ44を正転させ且つドラム45を逆転させてヘッド11及びヘッド回転装置12等を押し込み、第2配管1Bにあけられた孔2内にヘッド11を通過させて、このヘッド11のカメラ16を孔2から第2配管1B外へ飛び出させる(S8)。配管押込み設備40は、このカメラ16により第2配管1B外の映像を取得させて、第2配管1B外を検査点検する(S8)。
【0044】
以上のように構成された本第3実施形態は、第1及び第2実施形態の配管押込み装置10、30を有することから、第1及び第2実施形態の効果(1)~(4)と同様な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
【0045】
(5)押込み機構部41の押込みローラ44が配管押込み装置10、30の押込み用ケーブル14を挟持して駆動し、引戻し機構部42のドラム45と相俟って、配管押込み装置10、30を第1配管1Aに対し押込み方向に移動させ、また、ドラム45が配管押込み装置10、30の押込み用ケーブル14を巻き回して駆動し、押込みローラ44と相俟って、配管押込み装置10、30を第1配管1Aに対して引戻し方向に移動させるので、配管押込み装置10、30を遠隔地まで移動させることができる。従って、遠隔地が放射線環境下のように人が近づけない環境であっても、配管押込み装置10、30に、遠隔地における配管1の内部を検査させることができると共に、配管1に孔2をあけさせて、この孔2を利用して配管1の外部を検査点検させることができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0047】
例えば、上記実施形態について第2配管1Bを一般的な配管の例で説明したが、この第2配管1Bとして、原子炉圧力容器内面に設置された給水スパージャまたは炉心スプレイスパージャに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…配管、2…孔、10…配管押込み装置、11…ヘッド、12…ヘッド回転装置、13…固定装置、14…押込み用ケーブル、15…固定用バルーン、16…カメラ(映像取得装置)、17…ウォータジェットノズル、21…スイベルジョイント、22…モータ、25…回転機構、30…配管押込み装置、31…固定装置、32…固定用アーム、40…配管押込み設備、41…押込み機構部、42…引戻し機構部、44…押込みローラ、45…ドラム、O…回転軸、W…超高圧水、θ…所定角度
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10