(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】固体廃棄物の処理方法、および、固体廃棄物処理装置
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20240122BHJP
C04B 28/26 20060101ALI20240122BHJP
C04B 12/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G21F9/36 511F
C04B28/26
C04B12/04
(21)【出願番号】P 2020148788
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤山 類
(72)【発明者】
【氏名】川内 加苗
(72)【発明者】
【氏名】湯原 勝
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-21808(JP,A)
【文献】特開2012-167927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程
を含み、
前記充填材は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体である、
固体廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記充填材は、含水率が4wt%以下である、
請求項1に記載の固体廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記充填材において、前記放射性廃棄物は、粉体である、
請求項1または2に記載の固体廃棄物の処理方法。
【請求項4】
固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填するための充填部
を有し、
前記充填部は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体を前記充填材として充填するように構成されている、
固体廃棄物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体廃棄物の処理方法、および、固体廃棄物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所および再処理施設などの原子力施設においては、放射性核種の濃度が低い低レベルの放射性廃棄物が発生する。このような放射性廃棄物については、種類や放射能濃度に応じた方法で埋設処分される。
【0003】
放射性核種の濃度が高い放射性廃棄物(たとえば、炉内で使用された制御棒、チャンネルボックス、ハル、長期間の中性子照射により放射化した放射化金属、原子炉などの炉水浄化系で発生する使用済み樹脂)については、中深度(地表面から50~100m程度)の地下に埋設処分することが検討されている。日本原子力学会の規定している学会標準では、廃棄体容器に放射性廃棄物を収納した後、廃棄体容器を密封することで、処分することが想定されている(非特許文献1)。
【0004】
上記のような固体廃棄物においては、付着や含有している水分が放射線分解されて、水素が発生する。このため、放射性廃棄物を入れた容器を密封する場合には、容器内の空隙に応じて、水素ガス発生量の上限を設ける必要がある。そして、容器内に収容される固体廃棄物や充填材などの内容物について、水分量を一定量以下に制限する必要がある。
【0005】
なお、水素ガスに起因した爆発を防ぐためには、水の放射線分解により生じる水素ガス濃度が爆発下限値(酸素存在下での水素の爆発下限値は約4vol%)未満になるように管理する必要がある。そのため、容器に収納可能な廃棄物の容量は、廃棄物の放射能量だけでなく水分量によっても制限される。固体廃棄物は、水分量を低減するために、容器に収納する前に乾燥などの前処理が施される。廃棄体容器内に充填される充填材(固型化材料)は、含水率(付着及び含水の水分の割合)が極力低いものが望ましく、結晶水成分などのように長期に放射線が照射される場合でも水素発生の可能性がないものが更に望ましい。
【0006】
原子力施設内の焼却施設で発生する焼却灰は、処分方法などが未定のため、一時的に保管されている。焼却灰や濃縮廃液の乾燥粉体のような粉状の放射性廃棄物は、粒径が非常に小さく、充填時や充填効率の向上を目的とした振動時には、飛散して粉塵爆発が生ずる可能性がある。このように、粉状の放射性廃棄物は、取り扱いが容易でない。このため、バインダー材料と粉状の放射性廃棄物とを混合することで作成された固化体を粉砕等することで造粒体(粉体)とし、固体廃棄物を収納した廃棄体の空隙へ、その造粒体を充填材として充填する。
【0007】
バインダー材料として熱硬化性樹脂などの有機物を用いた場合には、放射線分解によってガスが発生するので、適していない。
【0008】
無機物のバインダー材料としては、セメント、粘土、ジオポリマー材料などが考えられる。
【0009】
バインダー材料としてセメントを用いた場合には、セメントの硬化反応によってCSHゲルなどの水和鉱物が生成するので、乾燥処理による自由水の除去後も結晶水の形態で水が多量に残存すると考えられる。結晶水成分の放射線に対する安定性に関しては、短期的な評価では水素発生に影響しないことが報告されている(非特許文献2参照)。しかし、処分を想定した長期評価に関して、知見がなく。バインダー材料には、出来る限り、乾燥処理後に水素発生の可能性の要因を含まない方がよいと考えられる。
【0010】
粘土をバインダー材料とした場合、乾燥処理温度を上げて粘土を焼成することで一定の機械的強度が得られる。しかし、充填時の衝撃に耐えるため、バインダー成分を増加させる必要があり、充填材中に占める放射性廃棄物の割合が低下する。
【0011】
ジオポリマー材料は、セメントなどの水硬性材料と異なり、アルカリ刺激剤による加水分解を経て、縮合重合反応が生じることによって、固化体であるジオポリマーを形成すると考えられる。ジオポリマー材料の固化体であるジオポリマーは、骨格構造に水を含んでおらず、自由水を乾燥処理により除去することが可能である。そのため、ジオポリマー材料をバインダー材料として用いた場合には、乾燥処理による材料の劣化が少なく、水素発生量の低減が可能である。
【0012】
また、ジオポリマー材料と放射性廃棄物との混合物を加熱することで、水分を除去しながら固化を行う関連技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】AESJ-SC-F014:2015「余裕深度処分対象廃棄体の製作要件及び検査方法」ISBN978-4-89047-383-0
【文献】高橋他,「水素ガス発生に及ぼすセメント水和物試料中における水分の存在状態の影響」電力中央研究所報告L(11020), 1-18, 巻頭1-3, 2013-03
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の関連技術においては、水分を十分に除去することが容易でない。具体的には、容器と固化体とが接触する底部や、固化体の中心部などにおいては、蒸発水が固化体の外部へ蒸発しにくいため、十分に脱水することが困難である。
【0016】
このような事情により、従来においては、水素発生の可能性の要因を十分に除くことが容易でなく、かつ、廃棄物の減容性を向上させることが困難である。
【0017】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、水素発生の可能性の要因を十分に除去可能であって、廃棄物の減容性を向上可能な、固体廃棄物の処理方法、および、固体廃棄物処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
実施系形態の固体廃棄物の処理方法は、固体廃棄物を収納した廃棄体容器の内部に充填材を充填する充填工程を含む。ここで、充填材は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水素発生の可能性の要因を十分に除去可能であって、廃棄物の減容性を向上可能な、固体廃棄物の処理方法、および、固体廃棄物処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係る固体廃棄物処理装置200を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る固体廃棄物の処理方法を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る固体廃棄物の処理方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、モルタルを充填材として用いた場合に予測される水素ガス発生量の予測結果を示す図である。
【
図5】
図5は、バインダーがモルタルである充填材を用いた比較例に関して、密閉容器である廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素発生量(積算水素発生量)を計算した結果を示す図である。
【
図6】
図6は、バインダーがジオポリマー材料である充填材を用いた比較例に関して、密閉容器である廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素発生量(積算水素発生量)を計算した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[A]固体廃棄物処理装置
まず、実施形態に係る固体廃棄物処理装置200について、
図1を用いて説明する。
【0022】
図1は、実施形態に係る固体廃棄物処理装置200を模式的に示す図である。
【0023】
図1に示すように、固体廃棄物処理装置200は、充填部201を有する。充填部201は、固体廃棄物10を収納した廃棄体容器100の内部に充填材20を充填するために設けられている。
【0024】
具体的には、充填部201は、充填材20を貯蔵するタンクを含み、充填材供給ラインL201を介して、充填材20が廃棄体容器100の供給口110から廃棄体容器100の内部へ供給されるように構成されている。
【0025】
[B]固体廃棄物の処理方法。
本実施形態の固体廃棄物の処理方法について、
図2と
図3とを用いて説明する。
【0026】
図2および
図3は、実施形態に係る固体廃棄物の処理方法を説明するための図である。
【0027】
[B-1]固体廃棄物10の収納
固体廃棄物10の処理を実行する際には、まず、
図2に示すように、廃棄体容器100の内部に固体廃棄物10を収納する(固体廃棄物収納工程)。
【0028】
ここでは、固体廃棄物10は、たとえば、粉体状でない、放射化された金属である。
【0029】
[B-2]充填材20の充填
つぎに、
図3に示すように、充填材20の充填を実行する(充填工程)。
【0030】
ここでは、固体廃棄物10を収納した廃棄体容器100の内部に充填材20を充填する。充填材20の充填は、
図1に示した固体廃棄物処理装置200を用いて実行される。
【0031】
充填材20は、ジオポリマー材料をバインダーとして用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体(造粒体)である。充填材20は、ジオポリマー材料の重量部と放射性廃棄物の重量部とを、たとえば、下記に示す重量比で混合して固化させた固化体を粉砕することで作製される。
【0032】
ジオポリマー材料の重量部:放射性廃棄物の重量部=8:2~2:8
【0033】
充填材20において、放射性廃棄物は、たとえば、粉体である。具体的には、放射性廃棄物は、硫黄を含有する化合物の粉体、イオン交換樹脂の乾燥物、イオン交換樹脂の無機粉体、飛灰または主灰である焼却灰、濃縮廃液の乾燥粉体の少なくとも1つである。
【0034】
ジオポリマー材料は、たとえば、アルミナシリカ粉末などの基材(固化材)と、アルカリ刺激剤とを含むスラリーである。アルミナシリカ粉末などの基材は、ケイ素元素とアルミニウム元素とを含む。アルカリ刺激剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ケイ酸カリウム溶液、ケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)などである。
【0035】
充填材20は、放射性廃棄物とジオポリマー材料とを混合して固化させたジオポリマー固化体を、たとえば、粉砕することで造粒される。
【0036】
充填材20の充填が完了した後には、廃棄体容器100は、密封される。
【0037】
[C]作用・効果
以上のように、本実施形態において、固体廃棄物10を収納した廃棄体容器100の内部に充填する充填材20は、ジオポリマー材料を用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体である。
【0038】
ジオポリマー材料の固化体であるジオポリマーは、骨格構造中に結晶水を含まず、乾燥処理によって、自由水の脱水が可能である。このため、本実施形態では、水素発生の要因を効果的に低減可能である。また、本実施形態では、粉体の粒径を調整可能であるので、水分量が制限されている廃棄体容器100の内部における充填率を向上可能である。
【0039】
また、本実施形態では、充填材20は、焼却灰のような粉体とジオポリマー材料とを混合することで作製されている。焼却灰のような粉体は、充填時や、充填効率の向上を目的とした振動時に飛散するが、本実施形態では、ジオポリマー材料を用いて作製された充填材20に含まれている。このため、本実施形態では、飛散等を防止することができる。
【0040】
また、本実施形態において、充填材20は、含水率が4wt%以下(4重量%以下)であることが好ましい。これにより、本実施形態では、廃棄体容器100の内部の容積のうち、充填材20が8vol%以上(8体積%以上)を占めるように、充填材20の充填を実行可能である。この理由等に関して、以下より詳細に説明する。
【0041】
(比較例)
まず、上記の実施形態の場合と異なり、充填材のバインダーとしてモルタルを用いた比較例に関して、廃棄体容器内の水素濃度を、爆発限界である水素ガス体積分率で4vol%未満にすることが可能な充填材の含水率について説明する。
【0042】
ここでは、一辺が1.6mである立方体形状であって収容空間の容積が約2200Lである廃棄体容器(壁厚が約15cm)の内部に、40年間、余裕深度処分対象の廃棄物を保管したときに、水素ガスが体積分率で4vol%に達する場合の充填材の含水率を、許容含水率として試算した。
【0043】
許容含水率については、下記の式(A1)から算出されるガス発生速度Vに基づいて試算した。また、60Coの減衰を1年単位での放射能減衰と仮定して計算した。
【0044】
【0045】
式(A1)における各因子は、下記の通りである。また、式(A1)中の「6.25×1018(eV/kg Gy)」は、単位Gyから単位eV/kgへ変換するための変換係数である。
・V:ガス発生速度(l/y)
・G:H2のG値(/100eV)
・Da:吸収線量率(Gy/y)
・W:水の質量(kg)
・Na:アボガドロ定数(/mol)
【0046】
水の放射線分解に寄与する主な核種を60Coとしたとき、式(A1)は、下記式(A2)に置換可能である。
【0047】
【0048】
式(A2)における各因子は、下記の通りである。
【0049】
・R:廃棄体中の60Coの放射能(Bq)、
・E:60Co壊変当たりのエネルギー(eV)
・T:年間秒数(s/y)
・K:水に吸収されるエネルギーの比率(-)
【0050】
水に吸収されるエネルギー比率Kは、廃棄体容器内の固体(水を含む)と水の質量比で分配されると仮定すると、以下の式(A3)で示される。
【0051】
【0052】
式(A3)における各因子は、下記の通りである。
【0053】
・Sv:固体体積(l)、
・Sd:固体の密度(kg/l)
【0054】
また、廃棄体内の体積分率の評価式については、下記の式(A4)で示される。
【0055】
【0056】
式(A4)における各因子は、下記の通りである。
・D:水素の体積分率(%)、
・A:廃棄体容器の上部空隙の体積(l)、
・L:ガス発生量(l)
【0057】
試算の際に用いた各パラメータの値は、下記の通りである。ここでは、充填材の含水率が4wt%であって、充填材の充填率が1vol%である場合を示している。
【0058】
・G=0.45(/100eV)
・E=2.5×106(eV)
・T=3.15×107(s/y)
・Sd=4.5(kg/l)
・Sv=682(l)
・R=1.3×1015(Bq)
・A=1518(l)
【0059】
G値については、乾燥処理による自由水の低減後も水素発生の可能性の要因が残るので、0.45/100eV(100eV当たりの水素分子生成量)を用いる。Sdは、固体廃棄物の密度を4.6(kg/l)と仮定し、充填材の嵩密度を2.4(kg/l)と仮定し、廃棄体容器内の固体の平均密度を収納割合から算出した値である。Svは、660L(容器中の30vol%)の固体廃棄物と22L(容器中の1vol%)の充填材とを合計した体積の値である。また、Rは、60Coの放射濃濃度を4.3×1014(Bq/t)とし、廃棄体容器内の固体廃棄物の収納量に応じて算出した値である。
【0060】
図4は、モルタルを充填材として用いた場合に予測される水素ガス発生量の予測結果を示す図である。
【0061】
図4に示すように、
60Coの半減期(5.27年)を考慮すると、水素ガス発生量の割合が40年間で約100%に達している。この結果から、40年間の水素発生量が4vol%の体積分率に達するときの含水率を許容含水率として設定した。
【0062】
図5は、バインダーがモルタルである充填材を用いた比較例に関して、密閉容器である廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素発生量(積算水素発生量)を計算した結果を示す図である。
【0063】
充填材を廃棄体容器の全容積に対して1vol%(22L)収容すると共に、固体廃棄物を廃棄体容器の全容積に対して30vol%(660L)収納した場合には、廃棄体容器の内部において空隙の容積は、1518Lである。1518Lの空隙において、4vol%は、60.72Lである。それゆえ、水素発生量を、この値未満に制限する必要がある。なお、固体廃棄物への付着水分は、0.44kgと仮定しており、水素発生量の試算の際には、この水分量を含んで評価している。
【0064】
図5に示す結果から判るように、充填材のバインダーがモルタルであって、充填材の充填率が1vol%である比較例では、充填材の含水率が4wt%以下であるとき、水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になる。このため、充填材の含水率は、4wt%以下とすることが望ましい。
【0065】
(実施例)
つぎに、上記の実施形態の場合と同様に、ジオポリマー材料をバインダーとして用いて放射性廃棄物を固化することで形成された固化体の粉体(造粒体)を充填材として使用する場合に関して、試算した結果を説明する。
【0066】
試算の際に用いた各パラメータの値は、下記の通りである。ここでは、充填材の含水率が4wt%であって、充填材の充填率が8vol%である場合を示している。
【0067】
・G=0.05(/100eV) (充填材に起因して発生する水素の水素発生量を評価する際に使用)
・G=0.45(/100eV) (付着水に起因して発生する水素の水素発生量を評価する際に使用)
・E=2.5×106(eV)
・T=3.15×107(s/y)
・Sd=3.8(kg/l)
・Sv=836(l)
・R=1.3×1015(Bq)
・A=1364(l)
【0068】
ジオポリマーは、骨格構造中にセメントのような結晶水を含まず、乾燥処理による自由水の脱水が可能であり、乾燥後に水素発生の可能性の要因はないと考えられる。そこで、本実施例では、充填材に起因して発生する水素の水素発生量を評価する際には、G値として、0.05(/100eV)を用いる。また、固体廃棄物への付着水に起因する発生する水素の水素発生量を評価する際には、G値として、0.45/100eVを用いる。Sdは、固体廃棄物の密度を4.6(kg/l)と仮定し、充填材の嵩密度を1.0(kg/l)と仮定し、廃棄体容器内の固体の平均密度を収納割合から算出した値である。Svは、660L(容器中の30vol%)の固体廃棄物と176L(容器中の8vol%)の充填材とを合計した体積の値である。また、Rは、60Coの放射濃濃度を4.3×1014(Bq/t)とし、廃棄体容器内の固体廃棄物の収納量に応じて算出した値である。なお、G値は、文献「湯原他 日本原子力学会2017年秋の大会予稿3A11(2017)」に記載のセメントに比べ一桁低い値を用いている。
【0069】
図6は、バインダーがジオポリマー材料である充填材を用いた比較例に関して、密閉容器である廃棄体容器の内部において時間に応じて発生する水素発生量(積算水素発生量)を計算した結果を示す図である。
【0070】
図6において、54.56Lは、空隙の容積A(1364L)の4vol%(水素発生量)に相当する値である。
図6に示す結果から判るように、充填材のバインダーがジオポリマー材料である実施例では、充填材の充填率が8vol%であっても、充填材の含水率が4wt%以下であるとき、水素発生量が空隙体積分率の4vol%未満になる。
【0071】
実施例では、比較例の場合と異なり、充填材にジオポリマー材料を用いている。このため、実施例では、充填材に起因した発生する水素の量が、比較例の場合よりも少ない。その結果、廃棄体容器の内部に形成されている収容空間において充填材が占める体積分率について、比較例では1vol%であるのに対して、実施例では8vol%程度まで増加させることができる。また、実施例では、含水率を4%よりも更に低下させることで、充填材が占める体積分率を更に増加させることができる。
【0072】
以上のように、実施例では、水素発生の可能性の要因を十分に除くことができるので、廃棄物の減容性を向上させることができる。
【0073】
<その他>
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することができる。本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10:固体廃棄物、20:充填材、100:廃棄体容器、110:供給口、200:固体廃棄物処理装置、201:充填部、L201:充填材供給ライン