(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】距離計測装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240122BHJP
G01S 7/4863 20200101ALI20240122BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20240122BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S7/4863
G01S17/10
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
(21)【出願番号】P 2020157625
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122673(JP,A)
【文献】特開2019-191126(JP,A)
【文献】特表2018-537680(JP,A)
【文献】特開2017-208595(JP,A)
【文献】特開2010-107448(JP,A)
【文献】特開2019-144186(JP,A)
【文献】特開2019-184545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0249998(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0146067(US,A1)
【文献】国際公開第2017/110415(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を出射する光源
を含み、前記光信号
の出射方向を変えてスキャンさせる投光部と、
第1基板の上に2次元に配置された複数の第1画素を含む第1センサと、前記投光部から出射された前記光信号の反射光を前記第1センサに導く第1光学系と、を含む第1受光部と、
前記第1基板と異なる第2基板の上に2次元に配置された複数の第2画素を含む第2センサと、前記反射光を前記第2センサに導く第2光学系とを含む第2受光部と、
前記光源が前記光信号を出射した第1時刻と、前記第1センサが前記反射光を検出した第2時刻とを用いて第1距離値を算出し、前記第1時刻と、前記第2センサが前記反射光を検出した第3時刻とを用いて第2距離値を算出する計測部と、
前記光源に前記光信号を間欠的に出射させ
、前記光信号を用いたスキャンを実行し、
前記第1センサの前記複数の第1画素のうち
第1受光領域に含まれる少なくとも1つの第1画素
から受光結果を出力するよう設定し、
前記第2センサの前記複数の第2画素のうち
第2受光領域に含まれる少なくとも1つの第2画素
から受光結果を出力するよう設定し、前記光信号
の出射方向に応じて、前記第1受光領域の位置と前記第2受光領域の位置とを決定する制御部と、
を備え
、
前記第1光学系の焦点距離が、前記第2光学系の焦点距離よりも長い、
距離計測装置。
【請求項2】
前記第1光学系の絞り値が、前記第2光学系の絞り値よりも小さい、
請求項
1に記載の距離計測装置。
【請求項3】
前記計測部が、前記第1距離値と前記第2距離値との両方が第1閾値を上回った場合に、前記光信号に関連付けられた測距結果として前記第1距離値を出力する、
請求項
1又は請求項
2に記載の距離計測装置。
【請求項4】
前記計測部が、前記第1距離値と前記第2距離値との両方が第2閾値を
下回った場合に、前記光信号に関連付けられた測距結果として前記第
2距離値を出力する、
請求項
1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項5】
前記計測部が、前記第1センサが前記反射光を検出できず且つ前記第2センサが前記反射光を検出できた場合に、前記第1距離値の値を前記第2距離値にする、
請求項
1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項6】
前記投光部は、前記光信号の出射方向を変えるように構成されたミラーをさらに含み、
前記ミラーが第1の状態である場合に、前記光源から出射された前記光信号の照射面の全てが前記ミラーの反射面に含まれ、前記ミラーが第2の状態である場合に、前記光源から出射された前記光信号の照射面の一部が前記ミラーから外れる、
請求項
1乃至請求項
5のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項7】
前記スキャンにおいて、間欠的に出射される複数の前記光信号は、第1光信号と第2光信号とを含み、前記第2光信号の出射位置は、前記第1光信号の出射位置と隣り合い、
前記計測部が、
前記第1光信号の第1反射光を前記第1センサが検出した結果に基づいて第3距離値を算出し、前記第1反射光を前記第2センサが検出した結果に基づいて第4距離値を算出し、
前記第2光信号の第2反射光を前記第1センサが検出した結果に基づいて第5距離値を算出し、前記第2反射光を前記第2センサが検出した結果に基づいて第6距離値を算出し、
前記第5距離値と前記第3距離値との差に基づいて前記第3距離値の第1信頼度を算出し、
前記第6距離値と前記第4距離値との差に基づいて前記第4距離値の第2信頼度を算出し、
前記第1信頼度と前記第2信頼度とに基づいて前記第1光信号に対応する距離値の信頼度を決定する、
請求項
1乃至請求項
6のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項8】
前記計測部が、前記第3距離値と前記第4距離値とが略等しい場合に、前記第1光信号に対応する前記距離値の信頼度を加算する、
請求項
7に記載の距離計測装置。
【請求項9】
前記計測部が、前記第3距離値と前記第4距離値とのそれぞれが第3閾値を下回る場合に、前記第1信頼度を減算する、
請求項
7に記載の距離計測装置。
【請求項10】
前記制御部が、前記スキャンにより得られた前記第1センサの受光結果と前記第2センサの受光結果とに基づいて、前記スキャンの後のスキャンにおけるスキャン位置を変更する、
請求項1乃至請求項
9のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項11】
前記制御部が、前記スキャンにより得られた前記第1センサの受光結果と前記第2センサの受光結果とに基づいて、前記スキャンの後のスキャンにおける前記第1受光領域の位置と前記第2受光領域の位置とを変更する、
請求項1乃至請求項
9のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第2受光領域に含まれた複数の第2画素のそれぞれの出力に基づいて算出された複数の距離データと前記第1距離値とを比較し、前記複数の距離データのうち前記第1距離値と略同じ数値を有する距離データに関連付けられた第2画素の位置が、前記第2受光領域の中央に近づくように前記変更を実行する、
請求項
11に記載の距離計測装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第1受光領域に含まれた複数の第1画素のそれぞれの出力に基づいて算出された第1光量分布と、前記第2受光領域に含まれた複数の第2画素のそれぞれの出力に基づいて算出された第2光量分布とを比較し、前記第1光量分布と前記第2光量分布との相関が大きくなるように前記変更を実行する、
請求項
11に記載の距離計測装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記第1受光領域に含まれた複数の第1画素のそれぞれの出力に基づいて算出された第1速度分布と、前記第2受光領域に含まれた複数の第2画素のそれぞれの出力に基づいて算出された第2速度分布とを比較し、前記第1速度分布と前記第2速度分布との相関が大きくなるように前記変更を実行する、
請求項
11に記載の距離計測装置。
【請求項15】
前記スキャンの経路は、望遠部と、前記望遠部を挟む第1及び第2広角部とを含み、
前記望遠部は、前記第1受光部の視野角に含まれ、
前記望遠部と前記第1及び第2広角部とは、前記第2受光部の視野角に含まれ、
前記望遠部のスキャン時に前記光信号が出射される間隔が、前記第1及び第2広角部のスキャン時に前記光信号が出射される間隔よりも短い、
請求項1乃至請求項
14のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項16】
前記スキャンの経路は、望遠部と、前記望遠部を挟む第1及び第2広角部とを含み、
前記望遠部は、前記第1受光部の視野角に含まれ、
前記望遠部と前記第1及び第2広角部とは、前記第2受光部の視野角に含まれ、
前記第1及び第2広角部のスキャン時の前記光信号のパルス幅が、前記望遠部のスキャン時の前記光信号のパルス幅よりも短い、
請求項1乃至請求項
14のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項17】
前記第1画素のサイズが、前記第2画素のサイズよりも小さい、
請求項1乃至請求項
16のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項18】
前記第1画素が、少なくとも1つの第1アバランシェフォトダイオードを含み、
前記第2画素が、少なくとも1つの第2アバランシェフォトダイオードを含み、
前記第2アバランシェフォトダイオードのサイズが、前記第1アバランシェフォトダイオードのサイズよりも小さい、
請求項1乃至請求項
17のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項19】
前記光源が、第1方向に並んだ複数のレーザダイオードを含み、
前記複数のレーザダイオードは、第1の周期において順に光信号を出射する少なくとも1つの第1レーザダイオードと、前記第1の周期以上長い第2の周期において順に光信号を出射する少なくとも1つの第2レーザダイオードとを含み、
前記制御部は、前記第1の周期において前記少なくとも1つの第1レーザダイオードにより順に出射される前記複数の光信号に合わせて前記第1センサに前記第1受光領域を設定し、前記第2の周期において前記少なくとも1つの第2レーザダイオードにより順に出射される前記複数の光信号に合わせて前記第2センサに前記第2受光領域を設定する、
請求項1乃至請求項
18のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる距離計測装置が知られている。LiDARは、レーザ光を対象物に照射し、対象物から反射された反射光の強度をセンサ(光検出器)によって検出する。そして、LiDARは、センサから出力される光強度信号に基づいて、LiDARから対象物までの距離を計測する。LiDARで使用されるセンサは多々有るが、今後有望なものとして、2次元に配列された複数のシリコンフォトマルチプライヤを備える二次元センサ(2Dセンサ)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
距離計測装置における近距離における計測範囲を拡大し、遠距離の計測性能を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の距離計測装置は、投光部と、第1受光部と、第2受光部と、計測部と、制御部とを含む。投光部は、光信号を出射する光源と、光信号を反射するミラーとを含む。第1受光部は、第1センサと第1光学系とを含む。第1センサは、第1基板の上に2次元に配置された複数の第1画素を含む。第1光学系は、投光部から出射された光信号の反射光を第1センサに導く。第2受光部は、第2センサと第2光学系とを含む。第2センサは、第1基板と異なる第2基板の上に2次元に配置された複数の第2画素を含む。第2光学系は、反射光を第2センサに導く第2光学系を含む。計測部は、光源が光信号を出射した第1時刻と、第1センサが反射光を検出した第2時刻とを用いて第1距離値を算出し、第1時刻と、第2センサが反射光を検出した第3時刻とを用いて第2距離値を算出する。制御部は、光源に光信号を間欠的に出射させ、ミラーを制御することによって光信号を用いたスキャンを実行する。制御部は、複数の第1画素のうち少なくとも1つの第1画素を選択的にオンさせた第1受光領域を第1センサに設定する。制御部は、複数の第2画素のうち少なくとも1つの第2画素を選択的にオンさせた第2受光領域を第2センサに設定する。制御部は、光信号が出射された時のミラーの状態に応じて、第1受光領域の位置と第2受光領域の位置とを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る距離計測装置の全体構成の一例を示す概略図。
【
図2】第1実施形態に係る距離計測装置の測距方法の概要を示す概略図。
【
図3】第1実施形態に係る距離計測装置の備える出射部及び受光部の構成の一例を示す概略図。
【
図4】第1実施形態に係る距離計測装置における光検出器の平面レイアウトの一例を示す平面図。
【
図5】第1実施形態に係る距離計測装置におけるSPADユニットの回路構成の一例を示す回路図。
【
図6】第1実施形態に係る距離計測装置におけるアバランシェフォトダイオードの構造の一例と単一光子アバランシェダイオードの動作原理とを示す概略図。
【
図7】第1実施形態に係る距離計測装置における光検出器の受光領域に設定されたアクティブ領域の一例を示す平面図。
【
図8】第1実施形態に係る距離計測装置における光検出器の出力部の構成の一例を示すブロック図。
【
図9】第1実施形態に係る距離計測装置における計測部の構成の一例を示すブロック図。
【
図10】第1実施形態に係る距離計測装置における受光部の受光結果の一例を示すタイムチャート。
【
図11】第1実施形態に係る距離計測装置における計測部の積算処理の一例を示すタイムチャート。
【
図12】第1実施形態に係る距離計測装置における出射部のスキャン方法の一例を示すテーブル。
【
図13】第1実施形態に係る距離計測装置における出射部のスキャン方法の一例を示す模式図。
【
図14】第1実施形態に係る距離計測装置における受光部の動作の一例を示す概略図。
【
図15】第1実施形態に係る距離計測装置における受光領域と光検出器に照射される反射光との一例を示す概略図。
【
図16】第1実施形態に係る距離計測装置における受光領域と光検出器に照射される反射光との一例を示す概略図。
【
図17】第1実施形態に係る距離計測装置における受光領域と光検出器に照射される反射光との一例を示す概略図。
【
図18】第1実施形態の第1変形例に係る距離計測装置における出射部のスキャン方法の一例を示す模式図。
【
図19】第1実施形態の第2変形例に係る距離計測装置における出射部のスキャン方法の一例を示す模式図。
【
図20】第2実施形態に係る距離計測装置における計測部の構成の一例を示すブロック図。
【
図21】第2実施形態に係る距離計測装置のスキャン領域内で信頼度の算出に使用される領域の一例を示す概略図。
【
図22】第2実施形態に係る距離計測装置の第1平均化アルゴリズムに基づく信頼度の算出フローの一例を示す概略図。
【
図23】第2実施形態に係る距離計測装置の第2平均化アルゴリズムに基づく信頼度の算出フローの一例を示す概略図。
【
図24】第2実施形態に係る距離計測装置の計測動作の一例を示すフローチャート。
【
図25】第2実施形態の第1変形例に係る距離計測装置の計測動作の一例を示すフローチャート。
【
図26】第2実施形態の第2変形例に係る距離計測装置の計測動作の一例を示すフローチャート。
【
図27】第3実施形態に係る距離計測装置の調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図28】第3実施形態に係る距離計測装置の調整動作の具体例を示す概略図。
【
図29】第3実施形態の第1変形例に係る距離計測装置の調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図30】第3実施形態の第1変形例に係る距離計測装置の調整動作の具体例を示す概略図。
【
図31】第3実施形態の第2変形例に係る距離計測装置の調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図32】第3実施形態に第2変形例に係る距離計測装置の調整動作の具体例を示す概略図。
【
図33】第3実施形態の第3変形例に係る距離計測装置の調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図34】第3実施形態に第3変形例に係る距離計測装置の調整動作の具体例を示す概略図。
【
図35】第3実施形態の第4変形例に係る距離計測装置の調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図36】第3実施形態に第4変形例に係る距離計測装置の調整動作の具体例を示す概略図。
【
図37】第4実施形態に係る距離計測装置におけるミラーの構成の一例を示す概略図。
【
図38】第5実施形態に係る距離計測装置における出射部のスキャン方法の一例を示すタイムチャート。
【
図39】第5実施形態の変形例に係る距離計測装置における出射部のスキャン方法の一例を示す概略図。
【
図40】光検出ユニットの第1構成例における2つの光検出器の画素の構成の一例を示す平面図。
【
図41】光検出ユニットの第2構成例における2つの光検出器の画素の構成の一例を示す平面図。
【
図42】光検出ユニットの第3構成例における2つの光検出ユニットの構成の一例を示す概略図。
【
図43】光検出ユニットの第4構成例における2つの光検出ユニットの構成の一例を示す概略図。
【
図44】光検出ユニットの第5構成例における2つの光検出ユニットの構成の一例を示す概略図。
【
図45】光検出ユニットの第6構成例における2つの光検出ユニットの構成の一例を示す概略図。
【
図46】光検出ユニットの第6構成例における2つの光検出ユニットの構成の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。図面に示された“X方向”及び“Y方向”は、互いに交差する方向に対応している。本発明の技術思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。尚、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。参照符号を構成する文字の後の数字は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。
【0008】
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る距離計測装置1は、例えば当該距離計測装置1と対象物TGと間の距離を計測することが可能なLiDAR(Light Detection and Ranging)の一種である。以下に、第1実施形態に係る距離計測装置1について説明する。
【0009】
[1-1]構成
[1-1-1]距離計測装置1の全体構成
図1は、第1実施形態に係る距離計測装置1の全体構成の一例を示す概略図である。
図1に示すように、本例では、距離計測装置1の前方に、測距の対象物TGとして車両が配置されている。そして、第1実施形態に係る距離計測装置1は、制御部10、出射部20、受光部30、及び計測部40を備えている。
【0010】
制御部10は、距離計測装置1の全体の動作を制御する。制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、発振器を含んでいる(図示せず)。ROMは、距離計測装置1の動作に使用されるプログラム等を記憶している。CPUは、ROMに格納されたプログラムに従って、出射部20、受光部30、及び計測部40を制御する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。発振器は、間欠的なパルス信号の生成に使用される。制御部10は、様々なデータ処理や、演算処理を実行することも可能である。
【0011】
出射部20は、レーザ光を間欠的に生成及び出射する。生成及び出射されたレーザ光は、対象物TGに照射され、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離の計測に使用される。本明細書では、出射部20から出射されたレーザ光のことを、“出射光L1”と呼ぶ。対象物TGによって反射された出射光L1のことを、“反射光L2”と呼ぶ。尚、出射部20は、投光部と呼ばれても良い。
【0012】
受光部30は、距離計測装置1に入射した光を検出して、受光結果を計測部40に転送する。言い換えると、受光部30は、距離計測装置1に入射した光を電気信号に変換して、変換した電気信号を計測部40に転送する。受光部30は、距離計測装置1に間欠的に入射する反射光L2の検出に使用される。
【0013】
計測部40は、受光部30から転送された受光結果に基づいて、受光部30が反射光L2を検出した時刻を計測する。そして、計測部40は、出射部20から出射光L1が出射された時刻と、受光部30が反射光L2を検出した時刻とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。出射部20から出射光L1が出射された時刻は、例えば制御部10から通知される。
【0014】
図2は、第1実施形態に係る距離計測装置1の測距方法の概要を示す概略図である。入力電圧の波形は、出射部20に含まれた光源に供給される電圧の時間変化を示している。受光結果の波形は、受光部30が検出した光に基づいた電気信号の強度の時間変化を示している。
図2に示すように、出射部20の光源にパルス信号が供給されると、パルス信号の立ち上がりに基づいて出射光L1が生成及び出射される。そして、当該出射光L1が対象物TGに照射され、受光部30が、対象物TGから反射した反射光L2を検出する。
【0015】
計測部40は、出射部20から出射光L1が出射された出射時刻T1と、受光部30が反射光L2を検出した受光時刻T2との差に基づいて、出射光L1の飛行時間(ToF:Time of Flight)を算出する。そして、計測部40は、出射光L1の飛行時間とレーザ光の速度とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測(測距)する。このような距離計測装置1の測距方法は、“ToF方式”とも呼ばれる。計測部40は、距離計測装置1が出射及び受光する出射光L1及び反射光L2の組毎に、測距結果を出力する。
【0016】
尚、計測部40は、少なくとも出射光L1の出射に関する時間に基づいて出射時刻T1を決定し、反射光L2の受光に関する時間に基づいて受光時刻T2を決定していれば良い。例えば、計測部40は、出射時刻T1及び受光時刻T2を、信号の立ち上がり時間に基づいて決定しても良いし、信号のピーク時刻に基づいて決定しても良い。制御部10は、出射部20、受光部30、及び計測部40毎に設けられても良い。計測部40の処理が制御部10によって実行されても良い。距離計測装置1は、計測部40の測距結果に基づいた画像を生成する画像処理部を有していても良い。このような画像は、距離計測装置1を搭載した車両等の制御プログラムによって参照される。
【0017】
[1-1-2]出射部20の構成
図3は、第1実施形態に係る距離計測装置1の備える出射部20及び受光部30の構成の一例を示す概略図である。
図3に示すように、第1実施形態における出射部20は、駆動回路21及び22、光源23、光学系24、及びミラー25を含む。
【0018】
駆動回路21は、制御部10の発振器から入力されたパルス信号に応じて駆動電流を生成する。そして、駆動回路21は、生成した駆動電流を光源23に供給する。つまり、駆動回路21は、光源23の電流供給源として機能する。
【0019】
駆動回路22は、制御部10による制御に応じて駆動電流を生成する。そして、駆動回路22は、生成した駆動電流をミラー25に供給する。つまり、駆動回路22は、ミラー25の電源回路として機能する。
【0020】
光源23は、レーザダイオード等のレーザ光源である。光源23は、駆動回路21から供給された間欠的な駆動電流(パルス信号)に基づいて、レーザ光(出射光L1)を間欠的に出射する。光源23により出射されたレーザ光は、光学系24に入射する。
【0021】
光学系24は、複数のレンズや光学素子を含み得る。光学系24は、光源23により出射される出射光L1の光路上に配置される。例えば、光学系24は、入射した出射光L1をコリメートして、コリメートした出射光L1をミラー25に導光する。光学系24は、ビームシェイパや、ビームスプリッタ等を含んでいても良い。
【0022】
ミラー25は、駆動回路22から供給される駆動電流に基づいて駆動し、当該ミラー25に入射した出射光L1を反射する。例えば、ミラー25の反射面は、互いに交差する2つの軸を中心として回転或いは揺動可能に構成される。ミラー25によって反射された出射光L1が、距離計測装置1の外部の対象物TGに照射される。
【0023】
第1実施形態に係る距離計測装置1において、制御部10は、ミラー25を制御して出射光L1の出射方向を変更することによって、測距したい領域をスキャンする。出射部20は、レーザ光を用いたスキャンをすることが可能な構成を有していれば良く、その他の構成であっても良い。例えば、出射部20は、ミラー25によって反射されたレーザ光の光路上に配置された光学系をさらに備えていても良い。
【0024】
本明細書では、距離計測装置1によって測距される領域のことを、“スキャン領域SA”と呼ぶ。距離計測装置1は、スキャン領域SA内で複数点の計測動作を実行し、様々な対象物TGとの距離を計測する。また、1回のスキャンに対応する複数点の測距結果の組のことを“フレーム”と呼ぶ。距離計測装置1は、スキャンを連続的に実行することによって、距離計測装置1の前方の対象物TGとの距離を逐次取得することが出来る。
【0025】
[1-1-3]受光部30の構成
引き続き
図3を参照して、第1実施形態における受光部30の構成について説明する。
図3に示すように、第1実施形態における受光部30は、2つの光検出ユニットPU1及びPU2を含む。光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれは、距離計測装置1に入射した反射光L2を検出する。光検出ユニットPU1は、バンドパスフィルタ(BPF)31A、光学系32A、及び光検出器33Aを含む。光検出ユニットPU2は、BPF31B、光学系32B、及び光検出器33Bを含む。
【0026】
BPF31A及び31Bのそれぞれは、当該BPFを通過する光の特定の周波数帯を通過させるフィルタである。距離計測装置1に入射した反射光L2は、BPF31Aを通過して光学系32Aに入射し、BPF31Bを通過して光学系32Bに入射する。BPF31A及び31Bのそれぞれの設計は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0027】
光学系32Aは、複数のレンズを含み得る。光学系32Aは、BPF31Aを通過した反射光L2を光検出器33Aに集める。光学系32Aの設計は、遠距離の対象物TGに対して最適化される。例えば、光学系32Aの焦点距離が、遠距離(無限遠)に設計される。本明細書では、光学系32Aが望遠レンズと類似した設計を有する。このため、光検出ユニットPU1のことを、“望遠側の光検出ユニットPU”とも呼ぶ。
【0028】
光学系32Bは、複数のレンズを含み得る。光学系32Bは、BPF31Bを通過した反射光L2を光検出器33Bに集める。光学系32Bの設計は、近距離の対象物TGに対して最適化される。例えば、光学系32Bの焦点距離は、光学系32Aよりも近距離に設計され、光学系32Bの視野角は、光学系32Aよりも広く設計される。本明細書では、光学系32Bが広角レンズと類似した設計を有する。このため、光検出ユニットPU2のことを、“広角側の光検出ユニットPU”とも呼ぶ。
【0029】
光検出器33A及び33Bのそれぞれは、例えば、半導体を用いた光電子増倍素子を含み、当該光検出器33に入射した光を電気信号に変換する。光検出器33A及び33Bの受光結果は、計測部40に出力される。光検出器33Aは、BPF31A及び光学系32Aを通過した反射光L2を検出する。光検出器33Bは、BPF31B及び光学系32Bを通過した反射光L2を検出する。光検出器33A及び33Bのそれぞれの設計は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0030】
第1実施形態に係る距離計測装置1において、受光部30の光学系32A及び32Bのそれぞれの光軸は、出射部20の光学系24の光軸と異なっている。つまり、距離計測装置1は、出射部20及び受光部30の間で非同軸の光学系を有している。尚、受光部30は、互いに異なる距離に最適化された少なくとも2つの光検出ユニットPUを備えていれば良く、その他の構成であっても良い。
【0031】
(光検出器33の構成)
図4は、第1実施形態に係る距離計測装置1における光検出器33の平面レイアウトの一例を示す平面図である。
図4に示すように、第1実施形態における光検出器33は、2Dセンサであり、受光領域DAを含む。
【0032】
受光領域DAは、距離計測装置1に入射した光の検出に使用される領域である。受光領域DAは、複数の画素PXを含む。画素PXは、光検出器33から出力される受光結果の最小単位に対応している。複数の画素PXは、例えば、半導体基板の上に2次元に配置される、言い換えると、複数の画素PXは、半導体基板の上に、XY平面に沿ったマトリクス状に配置される。XY平面は、X方向とY方向とによって形成される平面であり、光検出器33の受光領域DAが形成される基板の表面と平行である。複数の画素PXのそれぞれには、X方向に対応する座標と、Y方向に対応する座標とが割り当てられる。
【0033】
複数の画素PXの各々は、少なくとも1つのSPADユニットSUを含む。SPADユニットSUは、光電子増倍素子を含む。光電子増倍素子としては、例えば、単一光子アバランシェダイオード(SPAD:Single-Photon Avalanche Diode)が使用される。画素PXが複数のSPADユニットSUを含む場合、複数のSPADユニットSUは、例えばXY平面に沿ったマトリクス状に配置される。複数のSPADを含む画素PXは、シリコン光増倍素子(SiPM:Silicon Photomultiplier)とも呼ばれる。
【0034】
尚、光検出器33Aの受光領域DAの大きさ(センササイズ)と、光検出器33Bの受光領域DAの大きさ(センササイズ)とは、同じであっても良いし、異なっていても良い。光検出器33に含まれた画素PXの数と、画素PXに含まれたSPADユニットSUの数とのそれぞれは、任意の数に設計され得る。画素PXの形状とSPADユニットSUの形状とのそれぞれは、任意の形状に設計され得る。画素PXの形状とSPADユニットSUの形状とのそれぞれは、単一の形状で設けられていなくても良い。画素PXにおいて、X方向に並んだSPADユニットSUの数と、Y方向に並んだSPADユニットSUの数とは、異なっていても良い。画素PXの形状は、画素PXに含まれたSPADユニットSUの数や配置等に応じて設計され得る。
【0035】
(SPADユニットSUの回路構成)
図5は、第1実施形態に係る距離計測装置1におけるSPADユニットSUの回路構成の一例を示す回路図である。
図5に示すように、第1実施形態におけるSPADユニットSUは、少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqの組と、高電圧ノードNhvと、低電圧ノードNlvと、P型トランジスタToutとを含む。アバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqの組の数は、SPADユニットSUが含むSPADの数に対応している。
【0036】
アバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqの組は、高電圧ノードNhvと低電圧ノードNlvとの間に直列に接続される。具体的には、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードが、低電圧ノードNlvに接続される。アバランシェフォトダイオードAPDのカソードが、クエンチ抵抗Rqの一端に接続される。クエンチ抵抗Rqの他端が、高電圧ノードNhvに接続される。距離計測装置1の計測動作において、高電圧ノードNhvに印加される電圧は、低電圧ノードNlvに印加される電圧よりも高い。つまり、アバランシェフォトダイオードAPDには、逆バイアスが印加される。
【0037】
高電圧ノードNhvは、SPADユニットSUの出力ノードに対応している。高電圧ノードNhvには、P型トランジスタToutのドレインが接続される。P型トランジスタToutのゲートには、制御信号Soutが入力される。制御信号Soutの電圧が“L”レベルである場合、P型トランジスタToutのソースから、高電圧ノードNhvの電圧に基づいた出力信号IOUTが出力される。出力信号IOUTは、SPADユニットSUの受光結果に対応している。制御信号Soutの電圧が“H”レベルである場合、P型トランジスタToutが、SPADユニットSUによる受光結果の出力を遮断する。制御部10は、複数の画素PX毎に、制御信号Soutを制御することが出来る。
【0038】
尚、SPADユニットSUは、その他の回路構成であっても良い。例えば、高電圧ノードNhvにN型トランジスタのドレインを接続し、そのゲートに制御信号Soutを接続し、そのソースを適当な低い電位に接続しても良い。そして、P型トランジスタToutによる出力信号IOUTの出力が遮断されている場合に、当該N型トランジスタを介して電流が排出されても良い。例えば、クエンチ抵抗Rqが、トランジスタに置き換えられても良い。クエンチ抵抗Rqと異なるクエンチ用のトランジスタが、高電圧ノードNhvに接続されても良い。高電圧ノードNhv(出力ノード)の配置は、アバランシェフォトダイオードAPDによる受光結果を出力可能であれば、その他の配置であっても良い。P型トランジスタToutは、直列に接続された複数のトランジスタによって構成されても良い。トランジスタToutは、N型トランジスタであっても良い。トランジスタToutは、出力信号IOUTを選択的に出力可能であれば、その他のスイッチ素子であっても良い。画素PXが複数のSPADユニットSUを有する場合、当該画素PXの出力信号は、例えば、その画素PXに属するSPADユニットSUの出力信号IOUTの合計に対応する。
【0039】
(アバランシェフォトダイオードAPDの構造)
図6は、第1実施形態に係る距離計測装置1におけるアバランシェフォトダイオードAPDの構造の一例と単一光子アバランシェダイオードSPADの動作原理とを示す概略図である。
図6に示すように、第1実施形態におけるアバランシェフォトダイオードAPDは、基板50、P型半導体層51及び52、及びN型半導体層53を含む。
【0040】
基板50は、例えばP型の半導体基板である。基板50の上に、P型半導体層51、P型半導体層52、及びN型半導体層53が、この順番に積層されている。例えば、P型半導体層51は、P型半導体層52よりも厚く形成される。P型半導体層52にドープされたP型不純物の濃度は、P型半導体層51にドープされたP型不純物の濃度よりも高い。P型半導体層52とN型半導体層53との接触部分には、PN接合が形成される。これにより、P型半導体層52及びN型半導体層53が、アバランシェフォトダイオードAPDのアノード及びカソードとしてそれぞれ使用される。
【0041】
第1実施形態におけるアバランシェフォトダイオードAPDは、ガイガーモードで使用される。そして、当該アバランシェフォトダイオードAPDを用いたSPADは、フォトン単位の光を検出して、電気信号に変換する。以下に、
図6に示されたアバランシェフォトダイオードAPDを用いたSPADの動作原理について説明する。本例では、基板50側が、SPADユニットSUの低電圧ノードNlvに対応している。N型半導体層53側が、SPADユニットSUの高電圧ノードNhvに対応している。
【0042】
アバランシェフォトダイオードAPDに高い逆バイアスが印加されると、P型半導体層52とN型半導体層53との間に強い電界が発生する(
図6(1))。すると、P型半導体層52とN型半導体層53とのPN接合部分からP型半導体層51の領域に亘って、空乏層が形成される(
図6(2))。このとき、アバランシェフォトダイオードAPDが、光を検出可能な状態(以下、アクティブ状態と呼ぶ)になる。アクティブ状態のアバランシェフォトダイオードAPDに光が照射されると、光エネルギーの一部が空乏層に到達する(
図6(3))。すると、空乏層に、電子と正孔の対、すなわちキャリアが発生する(
図6(4))。空乏層に発生したキャリアは、PN接合の近傍の強い電界によりドリフトする(
図6(5))。具体的には、発生したキャリアのうち正孔が、基板50側に向かって加速され、発生したキャリアのうち電子が、N型半導体層53側に向かって加速される。
【0043】
N型半導体層53側に向かって加速された電子は、PN接合の近傍の強い電界の下で、原子と衝突する。すると、原子に衝突した電子が、当該原子をイオン化させて、新たな電子と正孔の対を発生させる。このような電子と正孔の対の発生は、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧が、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧を超えている場合に繰り返される(
図6(6)アバランシェ降伏)。アバランシェ降伏が発生すると、アバランシェフォトダイオードAPDが放電する(
図6(7)ガイガー放電)。
【0044】
アバランシェフォトダイオードAPDから出力された電流は、例えばクエンチ抵抗Rqに流れる。すると、SPADユニットSUの出力ノードにおいて、電圧降下が発生する(
図6(8)クエンチング)。クエンチングによって、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧がブレークダウン電圧未満になると、ガイガー放電が停止する。それから、アバランシェフォトダイオードAPDに対するリカバリ電流が流入され、PN接合における容量の充電が行われる。ガイガー放電が止まった暫く後に、アバランシェフォトダイオードAPDが、光を検出可能な状態に戻る。
【0045】
尚、SPADユニットSUが含むアバランシェフォトダイオードAPDは、その他の構造であっても良い。例えば、P型半導体層52が省略されても良い。P型半導体層51、P型半導体層52、及びN型半導体層53のそれぞれの厚さは、アバランシェフォトダイオードAPDの設計に応じて変更され得る。アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合は、基板50と基板50の上の半導体層との接触部分に形成されても良い。アバランシェフォトダイオードAPDは、
図6に示されたP型半導体層とN型半導体層とが入れ替えられた構造を有していても良い。
【0046】
(光検出器33のアクティブ領域AA)
第1実施形態に係る距離計測装置1に入射する反射光L2は、例えば、出射光L1のスキャン位置と光学系32の設計とに基づいて、受光領域DAの一部に照射される。そして、制御部10は、各画素PXに含まれたSPADユニットSUを、反射光L2の照射位置に基づいて、アクティブ状態又は非アクティブ状態にする。
【0047】
尚、本明細書では、光を検出可能な状態に制御されたSPADユニットSUを含む画素PXのことを、オン状態の画素PXと呼ぶ。光を検出不可能な状態に制御されたSPADユニットSUを含む画素PXのことを、オフ状態の画素PXと呼ぶ。制御部10が、受光領域DAに設定する少なくとも1つのオン状態の画素PXを含む領域のことを、“アクティブ領域AA”と呼ぶ。
【0048】
図7は、第1実施形態に係る距離計測装置1における光検出器33の受光領域DAに設定されたアクティブ領域AAの一例を示す平面図である。
図7に示すように、距離計測装置1の計測動作において、制御部10は、出射光L1毎に、受光領域DAのX座標Cx及びY座標Cyを、光検出器33に通知する。そして、光検出器33が、制御部10によって指定されたX座標Cx及びY座標Cyに基づいて、受光領域DA内にアクティブ領域AAを設定する。
【0049】
X座標Cx及びY座標Cyは、例えば、当該出射光L1が出射されたタイミングのミラー25の傾きに関連付けられ、アクティブ領域AAの左上の画素PXの座標を示している。アクティブ領域AAは、例えば、X座標Cx及びY座標Cyを基準として、X方向及びY方向にそれぞれ4画素及び3画素の広がりを有する領域に設定される。言い換えると、本例では、アクティブ領域AAが、4×3画素を含む矩形領域に設定される。このように、受光領域DA内にアクティブ領域AAが設定されると、反射光L2が照射されると推測される領域の画素PXのみが、受光結果を出力する。
【0050】
これにより、アクティブ領域AA外の画素PXからのノイズが、光検出器33の受光結果から除去され、受光結果のS/N比(Signal to Noise Ratio)が高くなる。また、アクティブ領域AA外の画素PXに対する電圧の印加が適宜省略されるため、光検出器33の消費電力が抑制される。尚、アクティブ領域AAの位置は、少なくとも制御部10によって指定された座標に基づいて設定されていれば良い。アクティブ領域AAの形状は、制御部10によって指定された座標に応じて変更されても良い。
【0051】
(光検出器33の出力部)
図8は、第1実施形態に係る距離計測装置1における光検出器33の出力部の構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、第1実施形態に係る距離計測装置1において、光検出器33は、アクティブ領域AA内の複数の画素PXから取得された受光結果(出力信号IOUT)を計測部40に転送する前に、当該出力信号IOUTに対して所定の信号処理を実行する出力部を有する。例えば、光検出器33の出力部は、スイッチ部SW及び信号処理部SPを含む。
【0052】
スイッチ部SWは、複数のスイッチ回路を含む。スイッチ部SWは、アクティブ領域AAの位置を示すX座標Cx及びY座標Cyに基づいて、複数のスイッチ回路を適宜繋ぎ替える。このようなスイッチ部SWによって、光検出器33において画素PXの出力に使用される信号線の本数が、削減され得る。また、スイッチ部SWは、受光領域DAから出力された複数の出力信号IOUTの順序を整列する。例えば、受光領域DAからアクティブ領域AA内の12個の画素PXに対応する出力信号IOUTa1~12が出力される場合、スイッチ部SWは、入力された出力信号IOUTa1~12を整列して、整列された出力信号IOUTb1~12を信号処理部SPに出力する。アクティブ領域AA内の各画素PXの出力順番は、例えば
図8の下部に示された順番に変更される。
【0053】
信号処理部SPは、スイッチ部SWから入力された複数の出力信号IOUTを用いて、様々な信号処理を実行する。信号処理部SPは、例えば増幅回路のようなアナログ回路、アナログ-デジタル変換器(ADC)、時間-デジタル変換器(TDC)、加算器のようなロジック回路を含み得る。例えば、信号処理部SPは、入力された出力信号IOUTb1~12のそれぞれにアナログ-デジタル変換を実行して、光検出器33の受光結果に基づくデジタル信号を生成する。そして、信号処理部SPは、受光結果に基づくデジタル信号を、計測部40に転送する。このように、スイッチ部SWによって整列された出力信号IOUTb1~12が入力されることによって、信号処理部SPは、アクティブ領域AA内における相対的な位置に関する順番を変更せずに、信号処理を実行することが出来る。
【0054】
尚、受光領域DA、スイッチ部SW、及び信号処理部SPは、互いに異なる基板上に形成されても良い。スイッチ部SWと信号処理部SPとは、一体で設けられても良い。信号処理部SPは、ADCとTDCとの両方を含んでいても良い。信号処理部SPがADC及びTDCを含む場合に、アクティブ領域AA内の複数の画素PXが、ADCによってデジタル信号に変換される画素PXのグループと、TDCによってデジタル信号に変換される画素PXのグループとに分類されても良い。アクティブ領域AA内の画素PXの出力信号は、アクティブ領域AA内の画素の配置に応じて統合されても良い。
【0055】
[1-1-4]計測部40の構成
図9は、第1実施形態に係る距離計測装置1における計測部40の構成の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、第1実施形態における計測部40は、例えば、取得部41、積算部42、及び距離計測部43を含む。
【0056】
取得部41は、測距に関するデータを制御部10及び受光部30から取得し、取得したデータを一時的に記憶する。具体的には、取得部41は、制御部10から出射光L1の出射時刻T1に関するデータを取得し、受光部30から光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの受光結果に関するデータを取得する。そして、取得部41は、出射時刻T1に関するデータを距離計測部43に転送し、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの受光結果に関するデータを積算部42に転送する。
【0057】
積算部42は、受光結果に関するデータの積算処理を実行する。具体的には、積算部42は、光検出ユニットPU1から転送された複数の画素PXの受光結果を積算することによって第1積算データを生成し、光検出ユニットPU2から転送された複数の画素PXの受光結果を積算することによって第2積算データを生成する。そして、積算部42は、第1積算データと第2積算データとのそれぞれを距離計測部43に転送する。
【0058】
距離計測部43は、取得部41及び積算部42から転送されたデータに基づいて、距離を計測する。具体的には、距離計測部43は、積算部42から転送された第1及び第2積算データに基づいて、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれにおける反射光L2の受光時刻T2を算出する。そして、距離計測部43は、出射時刻T1と光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの受光時刻T2とを用いて、光検出ユニットPU毎に、ToF方式に基づいた距離を計測する。計測結果は、例えば画像処理部に転送される。計測結果は、制御部10によって参照されても良い。
【0059】
[1-2]動作
[1-2-1]計測動作の概要
図10は、第1実施形態に係る距離計測装置1における受光部30の受光結果の一例を示すタイムチャートである。
図10のタイムチャートの縦軸は、画素PXの出力信号に基づく輝度を示している。
図10に示すように、距離計測装置1が出射光L1毎に実行する計測動作の各々は、例えば、サンプリング期間及びブランキング期間を含む。
【0060】
サンプリング期間は、光検出器33の信号処理部SPが受光結果に対する信号処理を実行する期間である。サンプリング期間において、信号処理部SPは、受光領域DAから出力された電気信号を、所定のサンプリング間隔でデジタル信号に変換する。本例では、時刻t0~t32がサンプリング期間に対応し、信号処理部SPが、時刻t1~t32のそれぞれにおいて、受光領域DAから出力された電気信号をデジタル信号に変換する。尚、サンプリング期間やサンプリング間隔の長さは、任意の長さに設定され得る。
【0061】
ブランキング期間は、現在の出射光L1に対するサンプリング期間と、次の出射光L1に対するサンプリング期間との間に設定された期間である。ブランキング期間では、例えば信号処理部SPによる信号処理が省略される。本例では、時刻t32~t33が、ブランキング期間に対応している。距離計測装置1の計測動作において、ブランキング期間は適宜省略されても良い。また、出射光L1毎に設定されるアクティブ領域AAの位置が重なっていない場合に、連続した出射光L1のサンプリング期間が重なっていても良い。
【0062】
図11は、第1実施形態に係る距離計測装置1における計測部40の積算処理の一例を示すタイムチャートである。
図11に示された2つのタイムチャートの縦軸は、受光結果に基づいたデジタル信号の輝度を示している。
図11(1)は、アクティブ領域AA内の各画素PXの出力(受光結果)の一例を示している。
図11(2)は、アクティブ領域AA内の複数の画素PXの出力の積算結果の一例を示している。
【0063】
図11(1)に示すように、各画素PXの出力は、反射光L2に基づくピーク部分と、ノイズとを含む。距離計測装置1には、何らかの物体により散乱された太陽光等の環境光が入射することがあり、環境光が、受光結果にランダムなノイズとして表れる。つまり、ノイズの発生箇所は、画素PX毎にばらついている。一方で、反射光L2に基づくピーク部分は、通常、ノイズよりも高い輝度を有している。画素PX毎の出力は、ダイナミックレンジが狭いため、ノイズと反射光L2によるピーク部分との差異は小さい。
【0064】
図11(2)に示すように、アクティブ領域AA内の複数の画素PXの出力に対して積算処理が実行されると、各出力の特徴的な部分が強調される。具体的には、対象物TGからの反射光L2が、ほぼ同じタイミングでサンプリングされる。このため、反射光L2が検出された部分の信号の強度が、積算処理によって増加する。一方で、ランダムなノイズは、再現性がない。つまり、ランダムなノイズは、積算処理によって強調され辛い。
【0065】
これにより、積算処理を介した受光結果では、ランダムなノイズが、対象物TGからの反射光L2に対して相対的に低減される。言い換えると、反射光L2の受光結果におけるデジタル信号のS/N比が、積算処理によって改善される。そして、距離計測部43は、S/N比が改善されたデジタル信号に基づいて、反射光L2の受光時刻T2を計測する。その結果、距離計測装置1は、受光時刻T2の計測精度を向上させることが出来る。
【0066】
[1-2-2]スキャン方法
図12は、第1実施形態に係る距離計測装置1における距離計測装置1のスキャン方法の一例を示すテーブルである。
図12に示されたテーブルは、スキャン方法の名称とスキャン方法の具体例との3種類の組み合わせを示している。
図12において、符号“L1”は、関連付けられたスキャン方法における出射光L1の形状及び出射タイミングを示している。“スキャン位置”の矢印は、スキャン領域SA内で、複数の出射光L1が順に照射される経路を模式的に示している。“左方向”及び“右方向”は、紙面上の左方向及び右方向をそれぞれ示している。
【0067】
図12(1)に示されたスキャン方法では、例えばドット状の照射面を有する出射光L1が使用される。そして、距離計測装置1は、左右方向のスキャンを繰り返し実行する。具体的には、距離計測装置1が、右方向にスキャンした後に、折り返して左方向にスキャンして、再び
右方向にスキャンした後に、再び折り返して
左方向にスキャンする。このようなスキャン方法は、“ラスタスキャン”と呼ばれている。ラスタスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、例えば2軸のミラーを使用すること等が考えられる。
【0068】
図12(2)に示されたスキャン方法では、縦方向に細長い形状の照射面を有する出射光L1が使用される。この場合、出射部20が、例えばコリメータレンズ及びシリンドリカルレンズを有している。そして、距離計測装置1が、縦一列に複数の画素PXを同時に照射して、右方向にスキャンする。このようなスキャン方法は、“マルチチャネルスキャン”と呼ばれている。マルチチャネルスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、ポリゴンミラー、回転ミラーや1軸のMEMSミラーを使用することが考えられる。マルチチャネルスキャンは、ミラー25を使用せずに、距離計測装置1自身を回転させることによって実現されても良い。マルチチャネルスキャンは、一度のレーザ出射で複数の画素PXを同時に照射することができる。このため、マルチチャネルスキャンが使用されることによって、ラスタスキャンよりも、高解像及び/或いは高フレームレートが可能とされる。
【0069】
図12(3)に示されたスキャン方法では、縦方向に細長い形状の照射面を有する出射光L1が使用される。この場合、出射部20が、例えば異方性のある非球面コリメータレンズを有している。そして、距離計測装置1が、縦一列に複数の画素を同時に照射して、右方向にスキャンした後に、垂直位置がずらされたスキャンを繰り返し実行する。このようなスキャン方法は、“マルチチャネルラスタスキャン”と呼ばれている。マルチチャネルラスタスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、異なるチルト角を有するポリゴンミラー、回転ミラー及び2軸のミラー等を使用すること等が考えられる。マルチチャネルラスタスキャンを実現する別の手段としては、
図13に示された構成が考えられる。
【0070】
図13は、第1実施形態に係る距離計測装置1における出射部20のスキャン方法の一例を示す模式図である。
図13(a)に示すように、本例では、光源23が、マルチチャネルレーザーダイオードMCLDを含み、光学系24が、コリメータレンズCL及びシリンドリカルレンズSLを含む。例えば、マルチチャネルレーザダイオードMCLDは、1方向(縦方向)に並んだレーザダイオードLD1~LD4を含む。レーザダイオードLD1~LD4は、独立に制御され得る。レーザダイオードLD1~LD4のそれぞれから出射されたレーザ光は、コリメータレンズCL及びシリンドリカルレンズSLを順に通過する。
【0071】
そして、制御部10は、マルチチャネルラスタスキャン時に、レーザダイオードLD1~LD4を順次点灯させる。言い換えると、制御部10が、複数チャネルレーザダイオードMCLDのチャネルを順次変えつつ点灯させる。具体的には、
図13(b)に示すように、制御部10は、時間t1~t4に、それぞれレーザダイオードLD1~LD4を点灯させる。そして、制御部は、マルチチャネルラスタスキャンにおいて、時間t1~t4と同様の制御を繰り返す。このようなマルチチャネルラスタスキャンも、一度のレーザ出射で複数の画素PXを同時に照射できるため、ラスタスキャンよりも、高解像及び/或いは高フレームレートが可能となる。逆に、ある程度の高解像及び高フレームレートを得るためには、ラスタスキャン或いはマルチチャネルラスタスキャンが使用されることが好ましい。
【0072】
以上で説明されたスキャン方法は、あくまで一例である。
図12(1)~(3)に示されたスキャン方法は、機械的な方法に対応している。距離計測装置1は、別のスキャン方法として、OPA方法(Optical Phased Array)を使用しても良い。1回のスキャンにおける直線経路の数やスキャン方向は、その他の設定であっても良い。第1実施形態に係る距離計測装置1による動作及び効果は、出射光L1のスキャン方法に依存しない。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、機械的な方法とOPA方法とのいずれを用いて、スキャンを実行しても良い。以下では、複数チャネルのレーザダイオードを用いたマルチチャネルラスタを使用する場合について説明する。
【0073】
図14は、第1実施形態に係る距離計測装置1における受光部30の動作の一例を示す概略図である。
図14は、出射部20に含まれた光源23、光学系24、及びミラー25と、受光部30に含まれた光検出ユニットPU1及びPU2とを簡略化して示している。
【0074】
図14の左側に示すように、出射部20は、ミラー25の角度を変更して出射光L1を出射することによって、所望の領域をスキャン(走査)する。簡潔に述べると、出射部20では、光源23から出射された出射光L1が、光学系24を通過してミラー25に照射される。そして、ミラー25に照射された出射光L1が、ミラー25の角度に応じた方向に反射される。制御部10は、間欠的に出射される出射光L1毎に入射角が変わるように、ミラー25を制御する。
【0075】
図14の右側に示すように、受光部30では、図示が省略された対象物TGからの反射光L2が、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれに入射する。
【0076】
望遠側の光検出ユニットPU1に入射した反射光L2は、BPF31A及び光学系32Aを通過して、光検出器33Aの受光領域DAに照射される。光検出器33Aの受光領域DAに設定されるアクティブ領域AAは、ミラー25の状態と同期して、受光領域DA内を移動(すなわち走査)する。光検出器33Aのアクティブ領域AAの位置は、光学系32Aの設計と出射部20のスキャン位置とに応じて設定される。これにより、光検出器33Aのアクティブ領域AAが、反射光L2を受光可能な位置に適宜設定される。
【0077】
広角側の光検出ユニットPU2に入射した反射光L2は、BPF31B及び光学系32Bを通過して、光検出器33Bの受光領域DAに照射される。光検出器33Bの受光領域DAに設定されるアクティブ領域AAは、ミラー25の状態と同期して、受光領域DA内を移動(すなわち走査)する。光検出器33Bのアクティブ領域AAの位置は、光学系32Bの設計と出射部20のスキャン位置とに応じて設定される。これにより、光検出器33Bのアクティブ領域AAが、反射光L2を受光可能な位置に適宜設定される。
【0078】
望遠側の光検出ユニットPU1におけるアクティブ領域AAのスキャン設定と、広角側の光検出ユニットPU2におけるアクティブ領域AAのスキャン設定とは、同じであっても良いし、異なっていても良い。アクティブ領域AAのスキャン設定は、少なくとも、関連付けられた光学系32に合わせて設定されていれば良い。
【0079】
[1-2-3]計測動作の具体例
各受光領域DAに照射される反射光L2の形状及び位置は、出射光L1が照射された対象物TGの位置に応じて変化し得る。以下に、
図15、
図16及び
図17を用いて、距離計測装置1が対象物TGから受ける反射光L2の状態のバリエーションと、当該状態に対応した計測動作の一例とについて説明する。
図15、
図16及び
図17のそれぞれは、第1実施形態に係る距離計測装置1における受光領域DAと光検出器33に照射される反射光L2との一例を示す概略図である。
【0080】
図15は、距離計測装置1が遠距離の対象物TGからの反射光L2を受けた状態に対応している。
図15に示すように、遠距離の対象物TGからの反射光L2は、望遠側の光検出器33Aにおいてフォーカスが合った状態になり、広角側の光検出器33Bにおいてフォーカスが外れた状態(デフォーカス状態)になる。デフォーカスが発生すると、受光領域DAに対する反射光L2の照射領域が広がる。デフォーカス状態における単位面積当たりの光強度は、フォーカスが合っている場合よりも低くなる。
【0081】
この状態では、望遠側の光検出器33Aと、広角側の光検出器33Bとの両方で、反射光L2が検出され得る。しかしながら、広角側の光検出器33Bでは、デフォーカスが発生していることから、反射光L2に対応する光強度のピークの検出精度が低下する。このため、受光部30が遠距離の対象物TGからの反射光L2を受けた場合、望遠側の光検出器33Aの受光結果に基づいた測距結果の信頼性が、広角側の光検出器33Bの受光結果に基づいた測距結果の信頼性よりも高くなる。例えば、距離計測装置1は、望遠側の光検出器33Aと広角側の光検出器33Bとのそれぞれで所定の距離よりも遠い測距結果が計測された場合に、望遠側の光検出器33Aに対応する測距結果を優先しても良い。
【0082】
図16は、距離計測装置1が近距離の対象物TGからの反射光L2を受けた状態に対応している。
図16に示すように、近距離の対象物TGからの反射光L2は、広角側の光検出器33Bにおいてフォーカスが合った状態になり、望遠側の光検出器33Aにおいてデフォーカス状態になる。
【0083】
この状態では、望遠側の光検出器33Aと、広角側の光検出器33Bとの両方で、反射光L2が検出され得る。しかしながら、望遠側の光検出器33Aでは、デフォーカスが発生していることから、反射光L2に対応する光強度のピークの検出精度が低下する。このため、受光部30が近距離の対象物TGからの反射光L2を受けた場合、広角側の光検出器33Bの受光結果に基づいた測距結果の信頼性が、望遠側の光検出器33Aの受光結果に基づいた測距結果の信頼性よりも高くなる。例えば、距離計測装置1は、望遠側の光検出器33Aと広角側の光検出器33Bとのそれぞれで所定の距離よりも近い測距結果が計測された場合に、広角側の光検出器33Bに対応する測距結果を優先しても良い。
【0084】
図17は、距離計測装置1が至近距離の対象物TGからの反射光L2を受けた状態に対応している。
図17に示すように、至近距離の対象物TGからの反射光L2は、広角側の光検出器33Bにおいてフォーカスが合った状態になり、望遠側の光検出器33Aにおいてデフォーカス状態になる。また、受光部30が至近距離の対象物TGからの反射光L2を受光する場合、非同軸の光学系により生じる視差が大きくなる傾向がある。広角側の光検出器33Bでは、近距離の対象物TGに最適化された光学系32Bが使用されるため、視差が抑制される。一方で、望遠側の光検出器33Aでは、遠距離の対象物TGに最適化された光学系32Aが使用されるため、視差が大きくなる。
【0085】
この状態では、広角側の光検出器33Bでは、反射光L2がアクティブ領域AAに照射される。一方で、望遠側の光検出器33Aでは、反射光L2が受光領域DAを外れることがある。このとき、距離計測装置1は、望遠側の光検出器33Aにおいて反射光L2に対応する光強度のピークが検出できない。しかしながら、距離計測装置1は、広角側の光検出器33Bにおいて、反射光L2に対応する光強度のピークを検出し得る。このような場合に、距離計測装置1は、広角側の光検出器33Bに対応する測距結果を、望遠側の光検出器33Aに対応する測距結果に追加しても良い。言い換えると、距離計測装置1は、一方の光検出器33において測距結果が得られなかった場合に、他方の光検出器33における測距結果を、一方の光検出器33における測距結果として取り扱っても良い。
【0086】
[1-3]第1実施形態の効果
以上で説明された第1実施形態に係る距離計測装置1に依れば、至近距離から遠距離に亘って、信頼度の高い測距結果を得ることが出来る。以下に、第1実施形態の効果の詳細について、距離計測装置の課題と併せて説明する。2Dセンサを用いた距離計測装置は、例えば以下に示された(a)~(d)の課題を有している。
【0087】
(a)従来の2Dセンサを用いた距離計測装置では、遠距離に位置する対象の測距と、水平方向視野(FoV:Field of View)FoVHを広くすることを両立することが難しかった。長距離物体の測距のためには、受光光学系の有効口径Dを大きくする必要が有る(例えば、≧20mm)。しかし、有効口径Dと水平方向視野FoVHとの間には、トレードオフ関係がある。水平方向センササイズをDAX”、受光光学系のF値を“fn”とすると、このトレードオフ関係は、“FoVH ≒ DAX / (D * fn) [rad]”となる。DAXには、製造上或いはコスト制約により、許容できる大きさに限度がある(例えば、≦20mm)。また、F値fnも、通常あまり小さくすることが出来ない(例えば、fn≧1.4)。従って、例えば“FoVH ≦ ~1/1.4[rad] ≒ 41°”であり、且つ有効口径が“D≧20mm”の場合に、水平方向視野FoVHは、これ以上大きくならない。逆に、FoVHを大きくすると、有効口径Dを大きくすることが出来ず、長距離の測距が難しくなる。
【0088】
さらに、遠距離に位置する物体は、小さく見えるため、水平角度分解能AoVHを小さくする必要がある(例えば、≦0.05°)。水平方向画素サイズを“PX”とすると、FoVHは、“FoVH = AoVH * DAX /PX”となる。水平方向画素サイズ“PX”には、現状、十分な“PX”のダイナミックレンジを得るために、あまり小さくは出来ない(例えば、≧30um)。この理由により、例えば、“FoVH ≦ ~33°”という制約が生じ得る。
【0089】
尚、反射光L2を受ける光学系の焦点距離fは、水平方向角度分解能AoVHと水平方向画素サイズ“PX”との間に、“PX= f * tan(AoVH)”の関係がある。また、効口径Dは、焦点距離fとF値fnについて、“f = D * fn”の関係がある。これらから、“PX = D * fn * tan(AoVH)”が導出され、この式と“FoVH = AoVH * DAX /PX”から、“FoVH = AoVH * DAX / (D * fn * tan(AoVH)) ≒ DAX / (D * fn) [rad]” という、前述の式が導出される(“tan(AoVH) ≒ AoVH”の近似は、AoVHが小さい場合に成立する)。
【0090】
車両の進行方向に対する測距は、角度分解能が細かく、且つ遠距離の対象物TGを検出できることが好ましい。一方で、距離計測装置のコストを抑制するためには、1つの距離計測装置で十分なFoVHが確保されることが好ましい。
【0091】
(b)反射光L2を受ける光学系の焦点距離が無限遠に設定された場合、強いデフォーカスが、近距離の対象物TGからの反射光L2を受けた際に生じ得る。このような強いデフォーカスが発生すると、対象物TGからの反射光が、複数の画素PXに対して同時に入射し得る。マルチチャネルスキャン或いはマルチチャネルラスタスキャンの場合は、複数画素を同時に測距するが、そのうちの1点(甲とする)の反射光の輝度値が、他(乙とする)と比べ高いことがよくある。画素の距離計測は、一般に、その時系列輝度データにおいて、輝度の最も高いものに基づいてなされる。このため、画素乙の距離が、画素甲の位置からの反射光に基づいてなされ、誤測距が発生し、画素甲とほぼ同じ値となり得る。すると、縦方向について、複数の画素の距離値がほぼ等しくなり、平坦な測距結果が出力されて解像感が低下する場合がある。この場合、距離計測装置は、画素乙の受光結果のピークの検出が困難になり、正確な受光時刻T2が分からなくなる。つまり、デフォーカスの発生は、ToFによる計測において、誤測距と解像度の低下の原因になり得る。
【0092】
(c)反射光L2を受ける光学系は、反射光L2の光エネルギーの取り込み量を多くするために、明るく設計されることが好ましい。しかしながら、光学系の絞り値(F値)が小さく設計された場合、近距離の対象物TGからの反射光L2においてデフォーカスが発生し、近距離の対象物TGの測距精度が低下するおそれがある。一方で、光学系のF値が大きく設計された場合、反射光L2の光量が不足することによって、遠距離の対象物TGの測距が困難になるおそれがある。このように、反射光L2を受ける光学系は、遠距離と近距離との両方の測距において高い信頼性を確保することが困難である。
【0093】
(d)距離計測装置のコストは、レーザ光の出射部及び受光部を非同軸の光学系で設計し、且つ2Dセンサを使用することによって、同軸光学系と比べミラーのサイズを小さく出来るため、抑制することが出来る。しかし、非同軸の光学系は、対象物TGの位置に応じた反射光L2の視差を有している。非同軸の光学系における視差は、対象物TGとの距離が近くなるほど大きくなる傾向を有する。このため、距離計測装置は、大きな視差が発生した場合に、反射光L2が受光領域を外れることによって、対象物TGの検出が出来なくなるおそれがある。この問題は、視差の方向の視野角FoVが小さい場合に著しく、FoVを大きくすることにより改善できるが、(a)に示した通り、長距離測距を行うためには視野角を大きくすることは出来ない。これに対して、視差を考慮したセンササイズや受光領域が設定されることが好ましいが、このような対処は、光検出器のコストや消費電力の増大に繋がり、さらに距離がある程度以上近い場合は、対処自体が困難になる。
【0094】
以上で説明された課題(a)~(d)に対して、第1実施形態に係る距離計測装置1は、1つの投光系を含む出射部20と、互いに異なる対象物TGの測距に最適化された複数の光検出ユニットPU1及びPU2を含む受光部30とを備えている。第1実施形態に係る距離計測装置1では、光検出ユニットPU1及びPU2との両方が、共通の出射部20から出射された出射光L1に基づく反射光L2を受ける。そして、距離計測装置1は、光検出ユニットPU1の受光結果に基づいた測距と、光検出ユニットPU2の受光結果に基づいた測距とをそれぞれ実行する。
【0095】
より具体的には、光検出ユニットPU1は、遠距離の対象物TGの測距に最適化された光学系32Aと、出射部20のスキャンに合わせてアクティブ領域AAの位置を変更することが可能な光検出器33Aとを備えている。光学系32A及び光検出器33Aの組は、望遠側の対象物TGの測距を想定して、狭いFoVと大きな有効口径Dを有するように設計される。一方で、光検出ユニットPU2は、近距離の対象物TGの測距に最適化された光学系32Bと、出射部20のスキャンに合わせてアクティブ領域AAの位置を変更することが可能な光検出器33Bとを備えている。光学系32B及び光検出器33Bの組は、広角側の対象物TGの測距を想定して、広いFoVを有するように設計される。一般に、車の様に走行する観測系では、走行方向に近い狭い水平視野角に対して長距離の測距が必要であり、その外の方向については、長距離測距の必要性が相対的に低い。光学系32A及び光検出器33Aの組は、走行方向に近い狭い視野角に対して長距離の測距機能を提供し、光学系32B及び光検出器33Bの組は、その外の方向について広角の測距機能を提供している。つまり、第1実施形態に係る距離計測装置1は、水平方向について、課題(a)を解決している。
【0096】
共通の投光系が使用されるため、狭いFoVを有する光検出ユニットPU1の角度分解能は、広いFoVを有する光検出ユニットPU2の角度分解能よりも高くなる(小さくなる)。また、望遠側の光検出ユニットPU1の光学系32Aは、焦点距離が大きく、且つF値が小さく設計され得る。このため、光検出ユニットPU1は、遠距離の対象物TGの計測精度を向上させることが出来る。一方で、広角側の光検出ユニットPU2の光学系32Bは、FoVが広く、且つ視差が小さく設計され得る。これにより、第1実施形態に係る距離計測装置1は、課題(d)の問題に対処している。また、光検出ユニットPU2の光学系32Bは、焦点距離が小さく、且つF値が大きく設計され得る。これにより、光検出ユニットPU2は、近距離の対象物TGのデフォーカスを小さくすることが出来、デフォーカスに起因した誤測距或いは解像度の問題を軽減している。これにより、第1実施形態に係る距離計測装置1は、課題(b)の問題に対処している。また、望遠側の光検出ユニットPU1の光学系32Aは、F値が小さく設計され、光検出ユニットPU2の光学系32Bは、F値が大きく設計され得る。これにより、第1実施形態に係る距離計測装置1は、課題(c)の問題に対処している。
【0097】
さらに、第1実施形態に係る距離計測装置1は、望遠側の光検出ユニットPU1においてデフォーカスの影響による課題(b)の問題が発生した場合にも、広角側の光検出ユニットPU2による測距結果によって、光検出ユニットPU1の測距結果を補完することが出来る。言い換えると、第1実施形態に係る距離計測装置1は、デフォーカスによって生じた他の画素PXによる誤った測距結果の採用を回避することが出来る。そして、距離計測装置1は、光検出ユニットPU1の測距結果と、光検出ユニットPU2の測距結果との間で、対象物TGの距離に応じて互いの測距結果を補完することも出来る。
【0098】
以上で説明されたように、第1実施形態に係る距離計測装置1は、望遠側に要求される細かい分解能と、広角側に要求される広い視野角とを両立することが出来、且つ至近距離から遠距離に亘って、信頼度の高い測距結果を得ることが出来る。また、第1実施形態に係る距離計測装置1は、複数の光検出ユニットPU1及びPU2に対して共通の出射部20を使用するため、距離計測装置1のコストが削減され得る。
【0099】
尚、第1実施形態に係る距離計測装置1は、光検出ユニットPU1の測距結果と光検出ユニットPU2の測距結果とを1つに纏めて出力しても良い。言い換えると、距離計測装置1は、スキャン領域SA内の1回のスキャンに基づく光検出ユニットPU1及びPU2の測距結果を、所定の条件に基づいて統合して出力しても良い。例えば、距離計測装置1は、後述される信頼度に基づいて、当該フレームの計測動作における測距結果を光検出ユニットPU1及びPU2のいずれかの測距結果から選択することが出来る。
【0100】
[1-3]第1実施形態の変形例
第1実施形態に係る距離計測装置1は、種々の変形が可能である。以下に、第1実施形態の第1及び第2変形例について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0101】
(第1実施形態の第1変形例)
図18は、第1実施形態の第1変形例に係る距離計測装置1Aにおける出射部20のスキャン方法の一例を示す模式図である。第1実施形態の第1変形例では、第1実施形態と同じく、複数チャネルのレーザダイオードが縦に配置されたマルチチャネルラスタの走査が実行される。しかし、第1実施形態の第1変形例では、
図18(b)に示された時間t1と時間t4に示した通り、一度に複数のチャネルが点灯される場合がある。
【0102】
ここで、第1実施形態の第1変形例における制御部10は、時間t1~t4の各々の状態で、縦位置は変えずに、水平方向(レーザダイオードLD1~LD4が並んだ方向と交差する方向)に位置を変えて走査を実行する。例えば、制御部10は、距離計測装置1のスキャン領域の左から右に向かって走査を行う。そして、制御部10は、水平方向の1回の走査が完了したら、次の時間の状態で、水平方向に位置を変えて走査を実行する。具体的には、制御部10は、時間t1の状態で水平方向に走査し、時刻t1の状態の走査が完了した後に、時間t2の状態で水平方向に走査する。同様に、制御部10は、時間t3及びt4のそれぞれの状態の走査を順に実行し、時間t4の走査が完了したら、時刻t1の状態に戻して、同様の走査を実行する。
【0103】
例えば、1つチャネル(レーザダイオードLD)の出射は、4度の垂直出射角を有する。
図18(b)で太線のハッチングで示されたレーザダイオードLD2及びLD3によるレーザ出射は、時間t1と時間t2との組と、時間t3と時間t4との組にて1つの周期をなしている。具体的には、時間t1及びt3に、レーザダイオードLD3がレーザ光を出射し、時間t2及びt4に、レーザダイオードLD2がレーザ光を出射する。レーザダイオードLD2及びLD3の組による垂直出射角は、例えば8度となる。この垂直出射角8度が、望遠側の垂直視野角FoVV(VA1)に対応し、上述した1つの周期(例えば、時刻t1~t2)が望遠側のフレームレートに対応する。
【0104】
一方、
図18(b)で細線のハッチングで示されたレーザダイオードLDの出射は、別の周期をなしている。具体的には、時間t1~t4で1つの周期が形成され、時刻t1~t4にそれぞれレーザダイオードLD1~LD4がレーザ光を出射する。すなわち、時刻t2におけるレーザダイオードLD2のレーザ光の出射は、望遠側と広角側との両方で利用される。レーザダイオードLD1~LD4の組による垂直出射角は、例えば16度となる。この垂直出射角16度が広角側の垂直視野角FoVV(VA2)に対応し、上述した時刻t1~t4の周期が広角側のフレームレートに対応する。広角側の垂直視野角は、望遠側の垂直視野角の2倍であり、望遠側のフレームレートは、広角側のフレームレートの2倍となっている。そして、望遠側の光検出ユニットPU1は、その垂直視野角が、対応する垂直出射角に合うように調整される。また、広角側の光検出ユニットPU2は、その垂直視野角が、対応する垂直出射角に合うように調整される。
【0105】
尚、第1実施形態の第1変形例において、マルチチャネルレーザダイオードMCLDは、第1の周期(望遠側のフレームレート)において順に光信号を出射する少なくとも1つの第1レーザダイオードLDと、第1の周期よりも長い第2の周期(広角側のフレームレート)において、順に光信号を出射する少なくとも1つの第2レーザダイオードとを含む。第1レーザダイオードと第2レーザダイオードとの一部は、重複していてもよい。また、制御部10は、第1の周期において少なくとも1つの第1レーザダイオードにより順に出射される複数の光信号に合わせて光検出器33Aに第1受光領域(アクティブ領域AA)を設定し、第2の周期において少なくとも1つの第2レーザダイオードにより順に出射される複数の光信号に合わせて光検出器33Bに第2受光領域(アクティブ領域AA)を設定する。
【0106】
次に、第1実施形態の第1変形例の効果について述べる。垂直方向の走査が異なるチルト角を有するポリゴンミラーで行われる場合、望遠側と広角側の垂直視野角FoVVは、チルト角により決まっているため、同じにならざるを得ない。光検出ユニットPU1とPU2が等方的な光学系を有する場合、光検出ユニットPU1のセンサの垂直サイズは、例えば、2倍の縦横比を有する必要があり、大きくなる。例えば、望遠側の焦点距離が広角側の2倍であり、広角側の視野角が望遠側のそれの2倍である場合、光検出ユニットPU1のセンサの水平サイズは、光検出ユニットPU2のセンサの水平サイズと等しくなる。そして、光検出ユニットPU1のセンサの垂直サイズは、光検出ユニットPU2のセンサの垂直サイズの2倍になってしまい、光検出ユニットPU1のセンサのコストが大きくなる。光検出ユニットPU1或いはPU2が異方性のある光学系を有することで、このセンサのコストを低減することは可能である。しかし、異方性の実現のために、シリンドリカルレンズを追加するなどの対処が必要となり、そちらのコストに加えて光検出ユニットのサイズが増大し、組立の工数が増大する。異なるチルト角を有するポリゴンミラーに関わらず、ミラーにより垂直走査をする方法(例えば2軸のミラー)全般にて、同じ問題が発生する。
【0107】
それに対して、第1実施形態の第1変形例では、望遠側と広角側の垂直視野角FoVVを独立に設定することが可能である。例えば、広角側の垂直視野角を、望遠側の2倍にすることにより、光検出ユニットの光学系が等方的であっても、望遠側の光検出ユニットPU1のセンサの垂直サイズを、広角側の光検出ユニットPU2のセンサの垂直サイズと等しくすることができ、コストと装置のサイズを小さく抑えることが出来る。また、望遠側の視野角の中では(走行方向に近い方向では)、対象物が想定的に速く移動するが、望遠側のフレームレートが高いために、距離計測装置1Aは、短時間で対象物を捕捉できるという長所も有する。尚、
図18では、レーザのチャネル(レーザダイオードLD)の数を4個としたが、それに特定されず、チャネルの数はもっと多くても、少なくても良い。また、望遠側の走査するチャネル数は、
図18では2個であるが、望遠側の走査に使用されるチャネルの数は2個よりも多くても良いし、1個(走査しない)でも良い。
【0108】
また、第1実施形態の第1変形例の場合では、ミラーによる垂直走査が必要なく、例えば、ポリゴンミラーのチルト構造や、2軸のミラーが必要でなくなる。チルト構造は、ポリゴンミラーの製造コストを大きくし、それを提供するサプライヤの数も限られることから、高価である。2軸のMEMSミラーは、特に、車載応用では、製造が難しい。第1実施形態の第1変形例は、この様な、コストと部品調達の問題を解決し得る。非同軸光学系では、同軸光学系よりも、ミラーの様な走査系に厳しい走査精度が求められるため、垂直走査の必要ないことは、これら部品の調達の問題を大きく緩和し得る。
【0109】
(第1実施形態の第2変形例)
図19は、第1実施形態の第2変形例に係る距離計測装置1Bにおける出射部20のスキャン方法の一例を示す模式図である。第1実施形態の第2変形例では、第1実施形態と同じく、複数チャネルのレーザダイオードが縦に配置されたマルチチャネルラスタの走査が実行される。
図19に示すように、第1実施形態の第2変形例では、出射部の光源23と光学系24を、望遠側と広角側に対応して、2つ有する。具体的には、マルチチャネルレーザダイオードMCLDのうちレーザダイオードLD2が、縦方向に並んだ複数のレーザダイオードLD2a、LD2b、LD2c及びLD2dにより構成されている。そして、レーザダイオードLD1~LD4の組が、広角側に対応して使用され、レーザダイオードLD2a~LD2dの組が、望遠側に対応して使用される。
【0110】
そして、例えば、望遠側の各チャネル(レーザダイオードLD2a~LD2d)の垂直出射角を1度、広角側の各チャネル(レーザダイオードLD1~LD4)の垂直出射角を4度とする。さらに、広角側の下から1個目のチャネル(レーザダイオードLD2)の出射角と、望遠側の全垂直出射角(レーザダイオードLD2a~LD2d)とが合うように設計される。
図19の黒印が望遠側の垂直走査を表し、細線のハッチングが広角側の走査を表す。ここで、時間t2においては、望遠側のチャネル(レーザダイオードLD2a~LD2d)が全て点灯し、広角側の垂直視野角をカバーしている。第1実施形態の第2変形例では、望遠側と広角側のフレームレートは同じである。尚、全ての時間帯において、広角側の下から2個目のチャネル(レーザダイオードLD2b)が、点灯されても良い。
【0111】
次に、第1実施形態の第2変形例の効果について述べる。まず、第1実施形態の第2変形例に係る距離計測装置1Bは、第1実施形態の第1変形例と比べて、望遠側の各チャネルの垂直視野角を小さく、例えば、4分の1にすることが出来る。従って、第1実施形態の第2変形例では、第1実施形態の第1変形例に対して、光学的なノイズNが4分の1にされ得、光学的SNが2分の1にされ得る。更に、第1実施形態の第2変形例では、広角側の下から2個目のチャネルが点灯されることにより、望遠側の信号Sを、例えば1/4だけ大きくすることが出来、先の効果と合わせて、光学的SNが5分の2にされ得る。これらのことは、望遠側の測距距離や測距精度が大きく改善することを意味する。
【0112】
また、第1実施形態の第2変形例では、第1実施形態の第1変形例と比べて、望遠側の全体垂直視野角を小さく、例えば、2分の1にすることが出来る。この望遠側の全体垂直視野角は、例えば、広角側の垂直視野角の4分の1に相当する。光検出ユニットPU1及びPU2が等方的な光学系を有し、且つ、同じセンササイズを有する場合、第1実施形態の第2変型例は、広角側の水平視野角も望遠側に比べて大きく、例えば、4倍にすることが出来る。従って、第1実施形態の第2変形例は、望遠側における長距離性能を高めるか、或いは、広角側のFoVを大きくすることが出来、第1実施形態の効果をより顕著にすることが出来る。尚、第1実施形態の距離計測装置1にて、サイズとコストにおいて重きをなす、ポリゴンミラーなどの走査系は、望遠側と広角側にて共通であり、サイズとコストにおける長所を有している。
【0113】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る距離計測装置2は、第1実施形態に係る距離計測装置1と異なる計測部40を備える。第2実施形態に係る距離計測装置2のその他の構成は、第1実施形態に係る距離計測装置1と同様である。そして、第2実施形態に係る距離計測装置2は、信頼度に基づいて、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの測距結果を確定させる。ここで、信頼度は、複数ある測距結果から選択をする場合に、その選択を決める数値である。例えば、測距結果を2つ選ぶ場合に、信頼度の最も大きいもの2つが選択される。以下に、第2実施形態に係る距離計測装置2について、第1実施形態に係る距離計測装置1と異なる点を説明する。
【0114】
平均化処理を行わない場合の、信頼度の例は、測距データの輝度そのものである(これを“R0”と呼ぶ)。例えば、輝度とは、AD変換後の時系列データのピーク位置で、対象物からの反射光の到着時刻を測距する場合、そのピークの高さである。この輝度R0は、平均化処理を行わない場合、信号Sの大きさを表しており、その結果の確からしさを示している。尚、単純な輝度には、環境光によるノイズNも上乗せされている。このため、環境光の平均値を求め、輝度から環境光の平均値を差し引いたものが、信頼度の指標として、より正しいものとなる。従って、正確には、単純な輝度マイナス環境光の平均値を、輝度R0とする。
【0115】
平均化処理を行う場合は、その画素の輝度R0は、正しく確からしさを表さない。それは、平均化により、他の画素の輝度データも加算されているからである。そこで、加算される他の画素の輝度も考慮した、信頼度の簡易な求め方について、以下に詳述する。
【0116】
[2-1]計測部40の構成
図20は、第2実施形態に係る距離計測装置2における計測部40の構成の一例を示すブロック図である。
図20に示すように、第2実施形態における計測部40は、例えば、取得部41、積算部42、距離計測部43、及び信頼度生成部44を含む。つまり、第2実施形態に係る計測部40は、第1実施形態における計測部40に、信頼度生成部44が追加された構成を有する。
【0117】
信頼度生成部44は、積算部42から転送された積算結果を記憶する。そして、信頼度生成部44は、第1照射方向に照射された出射光L1の反射光L2に基づく積算データの確からしさに基づいて、積算データの重み値を生成、或いは取得する。本明細書では、“重み値”が、信頼度に対応している。
【0118】
また、積算部42は、第1積算データと、第2積算データとを距離計測部43に転送する。距離計測部43は、第1積算データに、重み付けされた第2積算データを累積させることによって、第3積算データを取得する。そして、距離計測部43が、第3積算データに基づいて算出した受光時刻T2と、取得部41から受け取った出射時刻T1と、信頼度生成部44の生成した信頼度を用いて、光検出ユニットPU毎に、対象物TGとの距離を計測する。
【0119】
[2-2]平均化の方法、信頼度の算出方法及び使用方法
以下に、第2実施形態に係る距離計測装置2における信頼度の算出方法及び使用方法について説明する。尚、以下に説明される信頼度の算出方法及び使用方法は、あくまで一例である。距離計測装置2は、何らかのアルゴリズムに基づいて信頼度を算出し、算出した信頼度を活用していれば良い。
【0120】
[2-2-1]平均化および信頼度の算出に使用される領域
図21は、第2実施形態に係る距離計測装置2のスキャン領域SA内で信頼度の算出に使用される領域の一例を示す概略図である。
図21に示すように、スキャン領域SAは、領域AR~IRを含んでいる。領域AR~IRのそれぞれは、出射光L1が照射される領域に対応している。以下では、出射光L1が照射されることにより1つの測距結果が得られる領域のことを、“測定点”とも呼ぶ。
【0121】
また、スキャン領域SAに、位置の異なる対象物TG1及びTG2が含まれている。具体的には、領域AR、BR、CR、ER、FR及びIRが、対象物TG1を主に含んでいる。領域DR、GR及びHRが、対象物TG2を主に含んでいる。例えば、ラスタスキャンが実行される場合、領域AR~IRは、互いに異なる出射光L1によって照射される。マルチチャネルスキャンが実行される場合、縦に並んだ複数の領域(例えば領域AR、DR及びGR)が、1回の出射光L1で同時に照射される。
【0122】
領域ERからの反射光L2の受光結果に対して平均化及び信頼度生成がなされる場合、領域ERには、積算を実行する対象として、例えば領域AR、BR、CR、DR、FR、GR、HR及びIRが関連付けられる。この場合、距離計測部43が、領域ERに対応する積算データに、重み付けされた領域AR、BR、CR、DR、FR、GR、HR及びIRのそれぞれの積算データを累積する。
【0123】
本例では、領域ERから取得される積算データとの類似性が、領域AR、BR、CR、ER及びIRのそれぞれの積算データにおいて高く、領域DR、GR及びHRのそれぞれから取得される積算データにおいて低い。この場合、信頼度生成部44は、領域ERから取得される積算データに、領域AR、BR、CR、ER及びIRのそれぞれから取得される積算データの重み付けを大きくして、領域DR、GR及びHRのそれぞれから取得される積算データの重み付けを小さくする。そして、距離計測部43が、領域ERから取得される積算データに、領域内の他の領域から取得される積算データを、その重みが閾値を超えている場合に累積する。
【0124】
[2-2-2]平均化と信頼度推定
平均化アルゴリズムは、信号の強度と背景光情報とを使用してターゲットの反射データを認識することによって、積算データを選択的に蓄積する。以下に、平均化アルゴリズムに基づく平均化と、その後の信頼度の算出フローの一例について説明する。
【0125】
図22は、第2実施形態に係る距離計測装置2の平均化と信頼度の算出フローの一例を示す概略図である。
図22に示すように、受光部30が反射光L2を受けると、信号処理部SPがAD変換を実行する(S10)。AD変換により得られたデジタルデータは計測部40に転送され、積算部42が測定点毎の積算データを出力する。そして、信頼度生成部44が、平均化アルゴリズムに基づいた平均化処理を実行する(S11)。
【0126】
平均化アルゴリズムにおいて、積算部42は、現在のフレームの積算データから、ピークの候補を抽出する。本例では、積算部42が、現在のフレームの累積結果の出力候補として、2つのピークP1及びP2を選択している。そして、信頼度生成部44は、平均化アルゴリズムを介した積算データに対して、後述するR2に基づく信頼度R2を算出する(S12)。それから、距離計測部43は、積算データに付加された信頼度R2に基づいて、出力候補のピークを選択、或いは棄却する(S13)。
【0127】
信頼度に関連する数式について、以下に説明する。
【0128】
【0129】
数式(1)は、閾値kを用いて、2点の距離データが同じか否かを決める関数である。“i”は、測距するターゲットの測定点の識別子(ID)を示している。“j”は、領域内のターゲット以外の測定点のIDを示している。p(i,j)は、例えば、距離値Diと距離値Djとの距離が“k”以内であれば“1”を示し、“k”より大きければ“0”を示す。距離値Diは、ターゲットの測定点の測距結果に対応している。距離値Djは、クラスタ内のターゲット以外の測定点の測距結果に対応している。“k”は、0を超える数値であり、例えば2メートルである。
【0130】
【0131】
数式(2)は、クラスタのサイズを示す関数である。Niは、ターゲットの測定点から所定範囲A内の測定点のうち、ターゲットの測定点の距離値Diとの差が所定の“k”以内である距離値Djを有する測定点の数を示している。
【0132】
【0133】
数式(3)は、信頼度R2を与える関数である。信頼度R2iは、ターゲットの測定点から所定範囲A内の他の測定点のうち、ターゲットの測定点と距離の等しいと考えられる測定点の、信号値Ljの2乗平均に基づく値である。信号値Ljは、ターゲットの測定点の距離値Diとの差が閾値k以内である距離値Djを有する測定点に対応している。
【0134】
以上で説明された数式(1)~(3)に基づいて、信頼度生成部44は、ターゲットの測定点における信頼度R2を算出する。本例では、ピークP1の信頼度R2が“122”になり、ピークP2の信頼度R2が“101”になっている。この場合、距離計測部43は、信頼度R2がピークP2よりも高いピークP1を、受光時刻T2の計測に採用する。第2実施形態に係る距離計測装置2は、このような信頼度R2を、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの受光結果に対して算出し得る。
【0135】
[2-2-3]フレーム間平均化アルゴリズム
フレーム間平均化アルゴリズムは、前のフレームで測定された距離と動きに応じて検索ウインドウを定義して、現在のフレームのウインドウ内で検出された戻り値(ピーク)から追加の出力候補を選択する。そして、フレーム間平均化アルゴリズムでは、前のフレームからの情報を含めるように拡張された信頼度R3に従ってピークが選択される。以下に、フレーム間平均化アルゴリズムに基づく信頼度の算出フローの一例について説明する。
【0136】
図23は、第2実施形態に係る距離計測装置2のフレーム間平均化アルゴリズムに基づく信頼度の算出フローの一例を示す概略図である。
図23に示すように、受光部30が反射光L2を受けると、信号処理部SPがAD変換を実行する(S20)。AD変換により得られたデジタルデータは計測部40に転送され、積算部42が、複数フレーム分の測定点毎の積算データを記憶する。そして、信頼度生成部44が、フレーム間平均化アルゴリズムに基づいた平均化処理を実行する(S21)。
【0137】
フレーム間平均化アルゴリズムにおいて、距離計測部43は、現在のフレームの積算データで、先の平均化アルゴリズムと同様に、ピークの候補を抽出する。本例では、距離計測部43が、現在のフレームの累積結果の出力候補として2つのピークP1及びP2を選択している。さらに、距離計測部43は、前のフレームで検出されたピークに基づいて検索ウインドウW1~W3を定義する。
【0138】
例えば、距離計測部43は、現在のフレームにおいて、検索ウインドウW1~W3内で検出されたピークP3及びP4を追加する。それから、信頼度生成部44は、フレーム間平均化アルゴリズムを介した積算データに対して、後述するR3に基づく信頼度を算出する(S22)。その後、距離計測部43は、積算データに付与された信頼度と閾値に基づいて、距離データを選択・棄却する(S23)。
【0139】
フレーム間平均化アルゴリズムに関連する数式について、以下に説明する。
【0140】
【0141】
数式(4)は、信頼度R3を算出するための関数である。“i”は、ターゲットの測定点のIDを示している。“a”は、現在のフレームにおいて抽出されたピークのIDを示している。R2i,a
2は、第1平均化アルゴリズムにおける信頼度R2に対応している。つまり、R2i,a
2は、現在のフレームの測距結果が信頼性に与える純粋な重み値を示している。RPi,a
2は、前のフレームの測距結果に基づいて追加された重み値を示している。
【0142】
【0143】
数式(5)は、2つの距離値が同じであるかどうかを判断するための関数である。“ks(D1)”は、フレーム間平均化アルゴリズムにおける閾値に対応しており、D1の関数である。Ps(D1,D2)は、例えば、距離値D1と距離値D2との距離が“ks(D1)”以内であれば“1”を示し、“ks(D1)”より大きければ“0”を示す。
【0144】
【0145】
数式(6)は、フレーム間平均化アルゴリズムにおける信頼度R2を算出するための関数である。“N”は、現在のフレームのIDを示している。つまり、“N-1”は、1つ前のフレームのIDを示し、“N-2”は、2つ前のフレームのIDを示している。“Ss(j)”は、現在のフレームにおいて抽出されたピークのセットを示している。“b”は、1つ前のフレームにおいて抽出されたピークのIDを示している。
【0146】
つまり、L(j,b,N)は、現在のフレームにおける、1つ前のフレームで抽出されたピークのIDの輝度を示している。“D(i,a,N)”は、現在のフレームにおいて抽出されたピークのうちターゲットの測定点に対応する距離値を示している。“D(j,b,N)”は、現在のフレームにおいて抽出されたピークのうち1つ前のフレームにおいて信頼度の高いピークの距離値を示している。
【0147】
【0148】
数式(7)は、検索ウインドウを定義するための関数である。検索ウインドウは、連続した2つのフレームで取得された距離値の変化量ΔDによって決定される。例えば、ΔDは、前のフレームと2つ前のフレームとの距離値の差を表している。つまり、ΔDは、対象物TGの動き(速度)を表している。速度が小さいほど、検索ウインドウが狭くなり、環境光の影響が抑制される。
【0149】
【0150】
数式(8)は、検索ウインドウの設定条件を示す関数である。ks(D1)は、ターゲットの測定点における距離値に基づいて算出された閾値である。C1×ΔD2は、領域内の他の測定点における距離値が、所定の定数C1で倍された数値である。
【0151】
【0152】
数式(9)は、前のフレームの測距結果に基づいて追加される重み値を算出するための関数である。“B”は、1つ前のフレームにおける領域内の複数の測定点を示している。b’は、2つ前のフレームにおいて抽出された信頼度の高いピークのIDを示している。つまり、“D(j,b',N-2)”は、2つ前のフレームにおいて、抽出されたピークのうち信頼度の高いピークの距離値を示している。
【0153】
以上で説明された数式(4)~(9)に基づいて、信頼度生成部44は、ターゲットの測定点における信頼度R3を算出する。本例では、ピークP1~P4の信頼度R3が、それぞれ“122”、“101”、“120”、及び“156”になっている。この場合、距離計測部43は、信頼度R2が他のピークよりも高いピークP4を、受光時刻T2の計測に採用する。第2実施形態に係る距離計測装置2は、このような信頼度R3を、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの受光結果に対して算出し得る。
【0154】
[2-2-4]信頼度を用いた計測動作
図24は、第2実施形態に係る距離計測装置2の計測動作の一例を示すフローチャートである。
図24に示すように、第
2実施形態に係る距離計測装置
2は、連続的なスキャン(計測動作)を実行する(開始)。
【0155】
計測動作が開始すると、信頼度生成部44は、ターゲットの測定点における光検出器33Aの信頼度RAと、光検出器33Bの信頼度RBとを算出する(S30)。信頼度RAは、光検出器33Aによる受光結果に基づいて算出される信頼度である。信頼度RBは、光検出器33Bによる受光結果に基づいて算出される信頼度である。
【0156】
次に、信頼度生成部44は、ターゲットの測定点で、“Rx=RA+RB×C2”を算出する(S31)。Rxは、光検出ユニットPU1及びPU2で統合された信頼度である。C2は、所定の定数である。言い換えると、信頼度生成部44は、光検出ユニットPU1の信頼度RAに対して、光検出ユニットPU2の信頼度RBを定数倍して加算する。
【0157】
それから、距離計測部43が、算出された信頼度Rxに基づいて、ターゲットの測距結果を確定させる(S32)。例えば、距離計測部43は、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの積算データにから抽出された複数のピークから、信頼度Rxが最も高いピークを採用する。そして、距離計測部43は、採用したピークに基づいて受光時刻T2を計測し、測距結果を確定させる。
【0158】
尚、本例で使用される定数C2は、光検出ユニットPU1の設計と、光検出ユニットPU2の設計とに応じて設定される。例えば、光検出ユニットPU1よりも光検出ユニットPU2の信頼度の方が高い場合には、定数C2が1を超えた数値に設定される。また、近距離の対象物TGの検出が、遠距離の対象物TGの検出よりも重要である場合には、広角側の光検出ユニットPU2の信頼度による重み付けが大きくなるように、定数C2が大きな数値に設定される。
【0159】
[2-3]第2実施形態の効果
以上で説明されたように、第2実施形態に係る距離計測装置2は、受光結果から得られる積算データに信頼度を付与する。そして、距離計測装置2は、信頼度に基づいて測距結果を確定させる。信頼度が使用されることによって、望遠側と広角側から得られる複数の距離データの中から、定量的に正しくS/Nが配慮され、データが選択・棄却される。
【0160】
その結果、第2実施形態に係る距離計測装置2は、受光時刻T2の計測に誤ったピークを選択することを抑制することが出来る。従って、距離計測装置2は、測距の成功率を高め、測距精度を向上させることが出来る。また、遠距離の対象物TGの測距は、環境光等のノイズの影響が大きい。このため、距離計測装置2は、信頼度に基づいた測距により、測距可能な距離を伸ばすことも出来る。
【0161】
また、光検出ユニットPU1及びPU2の間に、例えば、増幅率の違いの様なパラメタの違いがある場合に、それらの出力データの輝度データをそのまま比較できない場合がある。しかし、その場合、本実施形態の定数C2が用いられることにより、輝度の補正がなされ、正しく比較できるようになる。その結果、距離計測装置2は、信頼度の比較も可能になる。これにより、距離計測装置2は、測距成功率を高める等、測距性能を改善することが出来る。
【0162】
さらに、第2実施形態に係る距離計測装置2は、光検出ユニットPU1に対応する測距結果と、光検出ユニットPU2に対応する測距結果とを、それぞれの信頼度に基づいて統合し得る。これにより、第2実施形態に係る距離計測装置2は、第1実施形態よりも取り扱うデータ量を減らすことが出来る。例えば、データ量の削減は、距離計測装置2が備えるRAM等の容量を削減することが出来、距離計測装置2のコスト削減に有効である。また、光検出ユニットPU1及びPU2で測距結果が統合されることは、距離計測装置2の測距結果を取り扱う装置に対する負荷を抑制することも出来る。
【0163】
[2-4]第2実施形態の変形例
第2実施形態に係る距離計測装置2は、種々の変形が可能である。以下に、第2実施形態の第1及び第2変形例について、第2実施形態と異なる点を説明する。
【0164】
(第2実施形態の第1変形例)
図25は、第2実施形態の第1変形例に係る距離計測装置2Aの計測動作の一例を示すフローチャートである。
図25に示すように、第2実施形態の第1変形例に係る距離計測装置2Aは、連続的な計測動作を実行する(開始)。
【0165】
計測動作が開始すると、信頼度生成部44が、ターゲットの測定点における光検出器33Aの信頼度RAと、光検出器33Bの信頼度RBとを算出する(S30)。次に、距離計測部43が、各測定点における距離を算出する(S40)。そして、距離計測部43が、光検出器33A及び33Bで略同一の距離データが含まれている場合に、それらの信頼度を加算する(S41)。それから、距離計測部43が、加算された信頼度に基づいて、測距結果を確定させる(S42)。距離計測装置2Aは、これらの処理が完了すると(終了)、続く測定点において、同様の処理を実行する。
【0166】
光検出器33A及び33Bのそれぞれで同じ誤検出をする可能性は低く、光検出器33A及び33Bで略同一の距離データが計測されることは、正確な測距結果を示している可能性が高い。そこで、第2実施形態に係る第1変形例に係る距離計測装置2Aは、暫定的に計測された測距データに基づいて、距離データの信頼度を更新する。例えば、第2実施形態に係る第1変形例に係る距離計測装置2Aは、距離の近いデータを同一とみなして、それらの信頼度を加算する。
【0167】
これにより、第2実施形態の第1変形例に係る距離計測装置2Aは、測距結果の信頼性を向上させることが出来る。尚、第2実施形態の第1変形例において、信頼度の加算は、平均化アルゴリズム及びフレーム間平均化アルゴリズムの使用時に実行されても良い。
【0168】
(第2実施形態の第2変形例)
図26は、第2実施形態の第2変形例に係る距離計測装置2Bの計測動作の一例を示すフローチャートである。
図26に示すように、第2実施形態の第2変形例に係る距離計測装置2Bは、連続的な計測動作を実行する(開始)。
【0169】
計測動作が開始すると、信頼度生成部44が、ターゲットの測定点における光検出器33Aの信頼度RAと、光検出器33Bの信頼度RBとを算出する(S30)。次に、距離計測部43が、各測定点における距離を算出する(S50)。
【0170】
そして、距離計測部43が、算出された測距データが近距離に該当するか否かを確認する(S51)。近距離に該当する場合(S51、YES)、距離計測部43が、望遠側の光検出器33Aの信頼度RAに、1より小さい定数C2を乗算するか、或いは定数を減算して(S52)、S53の処理に移行する。一方で、近距離に該当しない場合(S51、NO)、距離計測部43は、S52の処理を実行することなく、S53の処理に移行する。このように、信頼度RAは、測距結果に基づいて更新され得る。S53の処理では、距離計測部43が、適宜更新された信頼度に基づいて、測距結果を確定させる(S53)。距離計測装置2Bは、これらの処理が完了すると(終了)、続く測定点において、同様の処理を実行する。
【0171】
光検出器33A及び33Bのいずれかで近距離の測距結果が得られた場合、望遠側の光検出ユニットPU1では、デフォーカスが発生している場合がある。つまり、このような場合に、光検出ユニットPU1による測距結果の確からしさが、光検出ユニットPU2による測距結果よりも相対的に低くなる。
【0172】
そこで、第2実施形態に係る第2変形例に係る距離計測装置2Bは、暫定的に計測された測距データに基づいて、距離データの信頼度を更新する。例えば、距離計測装置2Bは、近距離の測距データが得られた場合に、望遠側の光検出ユニットPU1による測距データの信頼度を下げる。そして、更新された信頼度に基づいて、望遠側の光検出ユニットPU1の測距データと広角側の光検出ユニットPU2の測距データとの統合を実行する。
【0173】
これにより、距離計測装置2Bは、近距離の対象物TGに対する測距結果の信頼性を向上させることが出来る。尚、第2実施形態の第2変形例において、信頼度の更新は、平均化アルゴリズムの使用時に実行されても良い。
【0174】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る距離計測装置3は、第1実施形態に係る距離計測装置1と同様の構成を備える。そして、第3実施形態に係る距離計測装置3は、受光結果に基づいて、アクティブ領域AAの位置を調整する。以下に、第3実施形態に係る距離計測装置3について、第1実施形態に係る距離計測装置1と異なる点を説明する。
【0175】
[3-1]距離計測装置3の調整動作
図27は、第3実施形態に係る距離計測装置3の調整動作の一例を示すフローチャートである。
図27に示すように、第3実施形態に係る距離計測装置3は、連続的なスキャン(計測動作)を実行している際に、定期的に調整動作を実行する(開始)。
【0176】
調整動作が開始すると、距離計測部43が、各測定点における光検出器33Aの測定結果を算出する(S60)。また、距離計測部43が、光検出器33Bの測距結果を算出し、光検出器33Bの測距結果を画素PX単位で確認する(S61)。そして、制御部10が、光検出器33A及び33Bで略同一の距離データが含まれているか否かを確認する(S62)。S62における距離データの確認では、例えば同じフレーム内且つ同じ出射光L1に基づいた測距結果が使用される。
【0177】
略同一の距離データが含まれている場合(S62、YES)、制御部10が、略同一の距離データが検出された座標に基づいて、これ以降のスキャンで設定される光検出器33Bのアクティブ領域AAの位置を調整する。一方で、略同一の距離データが含まれていない場合(S62、NO)、又はS63の処理が完了した場合に、距離計測装置3は、調整動作を終了する(終了)。尚、調整動作が実行されるトリガーは、その他の設定であっても良い。例えば、距離計測装置3は、起動時に調整動作を実行しても良いし、他の機器からの指示に基づいて調整動作を実行しても良い。
【0178】
図28は、第3実施形態に係る距離計測装置3の調整動作の具体例を示す概略図である。
図28に示すように、光検出ユニットPU1の光検出器33Aに設定されたアクティブ領域AAでは、距離値D1が計測されている。一方で、光検出ユニットPU2の光検出器33Bに設定されたアクティブ領域AAでは、X方向に並んだ画素PX1、PX2及びPX3に対応して、それぞれ距離値D1、D2及びD3が計測されている。つまり、光検出器33Bの画素PX1で計測された距離が、光検出器33Aで計測された距離と一致している。この場合、制御部10は、次のフレームのスキャン時に、光検出器33Bのアクティブ領域AAを、画素PX1側にスライドさせる。
【0179】
言い換えると、第3実施形態に係る距離計測装置3の調整動作では、制御部10が、光検出器33Bのアクティブ領域AAに含まれた複数の画素PXのそれぞれの出力に基づいて算出された複数の距離データと、光検出器33Aのアクティブ領域AAの出力に基づいて算出された距離値とを比較する。そして、制御部10が、光検出器33Bに対応する複数の距離データのうち光検出器33Bの距離値と略同じ数値を有する距離データに関連付けられた画素PXの位置が、光検出器33Bのアクティブ領域AAの中央に近づくように、その後のスキャンにおける光検出器33Bのアクティブ領域AAの位置を調整する。
【0180】
以上で説明された調整動作では、その考え方を判り易くするために、処理内容が簡単化されている。実際の調整動作は、以下のように実行され得る。
【0181】
光検出ユニットPU1及びPU2の受光位置は、各々、定まった周期的走査を行う。周期的走査とは、例えば、出射系が回転ミラーの場合は定速移動であり、出射系がMEMSのようなデバイスである場合は正弦関数に基づく移動である。調整されるべきパラメタは、その時間オフセットである。また、動作を安定させるためには、急峻な調整は望ましくない。このため、長時間の観測の結果に基づいて、光検出ユニットPU1及びPU2の受光位置の修正が加えられる。例えば、上述されたような画素PX単位の確認を計測の度に行うことを1フレーム続けて、光検出ユニットPU2の画素PX1が一致し、且つ画素PX2が一致しない数がカウントされる。その数が、所定の閾値以上の場合に、初めて、時間オフセットが1画素分小さく設定される。尚、後述する第3実施形態の変形例においても同様に、実際には、長時間の観測の結果、所定の閾値を超えた場合に修正が実行されるが、その説明は省略することとする。
【0182】
[3-2]第3実施形態の効果
以上で説明されたように、第3実施形態に係る距離計測装置3は、光検出器33Bにおけるアクティブ領域AAの位置を、光検出器33Aで検出された測距結果との相関が大きくなるように調整する。これにより、第3実施形態に係る距離計測装置3では、光検出器33Aのアクティブ領域AAに含まれる画素PXと、光検出器33Bのアクティブ領域AAに含まれる画素PXとの対応関係が、定期的に校正される。
【0183】
これにより、第3実施形態に係る距離計測装置3は、光検出ユニットPU1における反射光L2の受光精度と、光検出ユニットPU2における反射光L2の受光精度とのそれぞれを向上させることが出来、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの出力に基づく測距結果を近づけることが出来る。その結果、第3実施形態に係る距離計測装置3は、光検出ユニットPU1における測距結果と、光検出ユニットPU2における測距結果とを1つのデータとして取り扱うことが可能となる。つまり、距離計測装置3は、光検出ユニットPU1及びPU2の測距結果の統合を容易にすることが出来る。言い換えると、光検出ユニットPU1及びPU2が常に同じ方向を向き、画素の対応関係が取れている。このため、距離計測装置3は、光検出ユニットPU1及びPU2の両方の結果を保存することなく、リアルタイムで処理すること(例えば、加算や比較、さらには時系列積算)が可能である。また、距離計測装置3は、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの測距結果を互いに補完することが出来る。
【0184】
[3-3]第3実施形態の変形例
第3実施形態に係る距離計測装置3は、種々の変形が可能である。以下に、第3実施形態の第1~第4変形例について、第3実施形態と異なる点を説明する。尚、以下の説明において、“左右”は、X方向に沿った一方側及び他方側にそれぞれ対応している。“上下”は、Y方向に沿った一方側及び他方側にそれぞれ対応している。
【0185】
(第3実施形態の第1変形例)
図29は、第3実施形態の第1変形例に係る距離計測装置3Aの調整動作の一例を示すフローチャートである。
図29に示すように、第3実施形態の第1変形例に係る距離計測装置3Aは、例えば連続的なスキャン(計測動作)を実行している際に、定期的に調整動作を実行する(開始)。
【0186】
調整動作が開始すると、制御部10が、各測定点における光検出器33A及び33Bのそれぞれのアクティブ領域AA内の測定結果を画素PX単位で確認する(S70)。そして、制御部10が、光検出器33A及び33Bのそれぞれのアクティブ領域AAで、左右の光量差が所定の閾値よりも大きいか否かを確認する(S71)。S71の処理では、例えば、アクティブ領域AA内で左側に設けられた画素PXにおける光量と、アクティブ領域AA内で右側に設けられた画素PXにおける光量とが比較される。
【0187】
左右の光量差が所定の閾値以下である場合(S71、NO)、制御部10は、調整動作を終了する(終了)。一方で、左右の光量差が所定の閾値よりも大きい場合(S71、YES)、制御部10が、左右で光量が大きい方向に、これ以降のスキャンで設定される出射部20のスキャン位置を調整する。S72の処理が完了すると、距離計測装置3Aは、調整動作を終了する(終了)。尚、スキャン位置が変更されるタイミングは、少なくとも調整動作の後であれば良い。
【0188】
図30は、第3実施形態の第1変形例に係る距離計測装置3Aの調整動作の具体例を示す概略図である。
図30(1)は、調整動作の前に各受光領域DAに入射する反射光L2とアクティブ領域AAの位置とを示している。
図30(2)は、調整動作の後に各受光領域DAに入射する反射光L2とアクティブ領域AAの位置とを示している。
【0189】
図30(1)に示すように、調整動作の前では、光検出器33Aのアクティブ領域AAに照射される反射光L2と、光検出器33Bのアクティブ領域AAに照射される反射光L2とのそれぞれが、紙面の右側にずれている。この場合、アクティブ領域AAは、紙面の右側において受ける光量が多く、紙面の左側において受ける光量が少なくなる。
【0190】
図30(2)に示すように、第3実施形態の第1変形例における調整動作の後では、例えば出射部20のミラー25の角度が調整されることによって、反射光L2の入射位置が調整される。本例では、光検出器33Aのアクティブ領域AAに照射される反射光L2と、光検出器33Bのアクティブ領域AAに照射される反射光L2とのそれぞれが、調整動作の前と比べて、紙面の左側にずれている。その結果、光検出器33Aのアクティブ領域AAにおける反射光L2の左右の光量が均一になり、光検出器33
Bのアクティブ領域AAにおける反射光L2の左右の光量が均一になっている。
【0191】
これにより、第3実施形態の第1変形例に係る距離計測装置3Aは、反射光L2をアクティブ領域AAの中央付近で受けることが出来、反射光L2の受光精度を向上させることが出来る。従って、距離計測装置3Aは、測距結果の信頼性を向上させることが出来る。
【0192】
尚、第3実施形態の第1変形例では、スキャン位置の調整量が、左右の光量差の大きさに応じて変更されても良い。また、出射部20のスキャン位置が、上下の光量差に基づいて調整されても良い。この場合、距離計測装置3Aの制御部10が、上下の光量差と所定の閾値とを比較し、上下で光量が大きい方向に、出射部20のスキャン位置を調整する。制御部10は、スキャン位置の上下の位置調整と、スキャン位置の左右の位置調整とを纏めて実行しても良いし、個別に実行しても良い。
【0193】
(第3実施形態の第2変形例)
図31は、第3実施形態の第2変形例に係る距離計測装置3Bの調整動作の一例を示すフローチャートである。
図31に示すように、第3実施形態の第2変形例に係る距離計測装置3Bは、例えば連続的なスキャン(計測動作)を実行している際に、定期的に調整動作を実行する(開始)。第3実施形態の第2変形例における調整動作は、第3実施形態の第1変形例でS72の処理がS73に置き換えられた構成を有している。
【0194】
つまり、左右の光量差が所定の閾値よりも大きい場合(S71、YES)、距離計測装置3Bは、S72の処理を実行する。S72の処理では、制御部10が、左右で光量が大きい方向に、光検出器33A及び33Bのそれぞれのアクティブ領域AAの位置を調整する。距離計測装置3Bは、左右の光量差が所定の閾値以下である場合(S71、NO)、又はS73の処理が完了した場合に、調整動作を終了する(終了)。
【0195】
図32は、第3実施形態に第2変形例に係る距離計測装置3Bの調整動作の具体例を示す概略図である。
図32に示すように、
図32(1)は、調整動作の前に各受光領域DAに入射する反射光L2とアクティブ領域AAの位置とを示している。
図32(2)は、調整動作の後に各受光領域DAに入射する反射光L2とアクティブ領域AAの位置とを示している。
【0196】
図32(1)に示すように、調整動作の前では、光検出器33Aのアクティブ領域AAに照射される反射光L2と、光検出器33Bのアクティブ領域AAに照射される反射光L2とのそれぞれが、紙面の右側にずれている。この場合、アクティブ領域AAは、紙面の右側において受ける光量が多く、紙面の左側において受ける光量が少なくなる。
【0197】
図32(2)に示すように、第3実施形態の第2変形例における調整動作の後では、制御部10によって、光検出器33A及び33Bのそれぞれのアクティブ領域AAの位置が調整される。本例では、光検出器33Aのアクティブ領域AAの位置と、光検出器33Bのアクティブ領域AAの位置とのそれぞれが、調整動作の前と比べて、紙面の右側にずれている。その結果、光検出器33Aのアクティブ領域AAにおける反射光L2の左右の光量が均一になり、光検出器33Aのアクティブ領域AAにおける反射光L2の左右の光量が均一になっている。
【0198】
これにより、第3実施形態の第2変形例に係る距離計測装置3Bは、反射光L2をアクティブ領域AAの中央付近で受けることが出来、反射光L2の受光精度を向上させることが出来る。つまり、距離計測装置3Bは、測距結果の信頼性を向上させることが出来る。
【0199】
尚、第3実施形態の第2変形例では、アクティブ領域AAの位置の調整量が、左右の光量差の大きさに応じて変更されても良い。また、光検出器33A及び33Bのそれぞれのアクティブ領域AAの位置が、上下の光量差に基づいて調整されても良い。この場合、距離計測装置3Bの制御部10が、上下の光量差と所定の閾値とを比較し、上下で光量が大きい方向に、光検出器33A及び33Bのそれぞれのアクティブ領域AAの位置を調整する。制御部10は、アクティブ領域AAの上下の位置調整と、アクティブ領域AAの左右の位置調整とを纏めて実行しても良いし、個別に実行しても良い。
【0200】
(第3実施形態の第3変形例)
図33は、第3実施形態の第3変形例に係る距離計測装置3Cの調整動作の一例を示すフローチャートである。
図33に示すように、第3実施形態の第3変形例に係る距離計測装置3Cは、例えば連続的なスキャン(計測動作)を実行している際に、定期的に調整動作を実行する(開始)。
【0201】
調整動作が開始すると、制御部10が、各測定点における光検出器33A及び33Bのそれぞれの光量の分布を算出する(S80)。そして、制御部10が、算出された光量の分布の相関を確認する(S81)。S81の処理では、例えば、アクティブ領域AA内の中心を通過し且つX方向に並んだ画素PXの光量の分布が確認される。そして、制御部10が、光検出器33Aにおける画素PXの光量の分布と、光検出器33Bにおける画素PXの光量の分布との相関を確認する。
【0202】
光検出器33A及び33Bの光量の分布の相関が所定の値よりも大きい場合(S83、NO)、距離計測装置3Cは、調整動作を終了する(終了)。一方で、光検出器33A及び33Bの光量の分布の相関が所定の値以下である場合(S82、YES)、制御部10が、光検出器33A及び33Bの間で光量の分布の相関が大きくなるように、これ以降のスキャンで設定される光検出器33Bのアクティブ領域AAの位置を調整する(S83)。S83の処理が完了すると、距離計測装置3Cは、調整動作を終了する(終了)。
【0203】
図34は、第3実施形態に第3変形例に係る距離計測装置3Cの調整動作の具体例を示す概略図である。
図34は、光検出器33A及び33Bの概略図と、各アクティブ領域AAの測距結果に基づく光量の分布の一例とを示している。
【0204】
図34に示すように、第3実施形態の第3変形例において、制御部10は、例えばX方向に沿って、アクティブ領域AA内の光量の分布を算出する。本例では、光検出器33Aのアクティブ領域AAにおける光量の分布が、画素PX2にピークを有し、光検出器33Bのアクティブ領域AAにおける光量の分布が、画素PX3にピークを有している。この場合、制御部10は、次のフレームのスキャン時に、光検出器33Bのアクティブ領域AAを画素PX1側にスライドさせる。
【0205】
これにより、第3実施形態の第3変形例に係る距離計測装置3Cは、反射光L2をアクティブ領域AAの中央付近で受けることが出来、反射光L2の受光精度を向上させることが出来る。つまり、距離計測装置3Cは、測距結果の信頼性を向上させることが出来る。尚、第3実施形態の第3変形例において、光量の分布の相関の算出には、様々な関数が使用され得る。第3実施形態の第3変形例では、Y方向に沿った光量の分布の相関が確認されても良く、アクティブ領域AAの位置がY方向に沿って調整されても良い。
【0206】
(第3実施形態の第4変形例)
図35は、第3実施形態の第4変形例に係る距離計測装置3Dの調整動作の一例を示すフローチャートである。
図35に示すように、第3実施形態の第4変形例に係る距離計測装置3Dは、例えば連続的なスキャン(計測動作)を実行している際に、定期的に調整動作を実行する(開始)。
【0207】
調整動作が開始すると、制御部10が、各測定点における光検出器33A及び33Bのそれぞれの速度の分布を算出する(S90)。そして、制御部10が、算出された速度の分布の相関を確認する(S91)。S91の処理では、例えば、アクティブ領域AA内の中心を通過し且つX方向に並んだ画素PXで検出された物体の速度の分布が確認される。そして、制御部10が、光検出器33Aにおける画素PXの速度の分布と、光検出器33Bにおける画素PXの速度の分布との相関を確認する。
【0208】
光検出器33A及び33Bの速度の分布の相関が所定の値よりも大きい場合(S92、NO)、距離計測装置3Dは、調整動作を終了する(終了)。一方で、光検出器33A及び33Bの速度の分布の相関が所定の値以下である場合(S92、YES)、制御部10が、光検出器33A及び33Bの間で速度の分布の相関が大きくなるように、これ以降のスキャンで設定される光検出器33Bのアクティブ領域AAの位置を調整する(S93)。S93の処理が完了すると、距離計測装置3Dは、調整動作を終了する(終了)。
【0209】
図36は、第3実施形態に第4変形例に係る距離計測装置3Dの調整動作の具体例を示す概略図である。
図36は、光検出器33A及び33Bの概略図と、各アクティブ領域AAの測距結果に基づく速度の分布の一例とを示している。
【0210】
図36に示すように、第3実施形態の第4変形例において、制御部10は、例えばX方向に沿って、アクティブ領域AA内の速度の分布を算出する。本例では、光検出器33Aのアクティブ領域AAにおける速度の分布が、画素PX2にピークを有し、光検出器33Bのアクティブ領域AAにおける速度の分布が、画素PX3にピークを有している。この場合、制御部10は、次のフレームのスキャン時に、光検出器33Bのアクティブ領域AAを画素PX1側にスライドさせる。
【0211】
これにより、第3実施形態の第4変形例に係る距離計測装置3Dは、反射光L2をアクティブ領域AAの中央付近で受けることが出来、反射光L2の受光精度を向上させることが出来る。つまり、距離計測装置3Dは、測距結果の信頼性を向上させることが出来る。尚、第3実施形態の第4変形例において、速度の分布の相関の算出には、様々な関数が使用され得る。第3実施形態の第4変形例では、Y方向に沿った速度の分布の相関が確認されても良く、アクティブ領域AAの位置がY方向に沿って調整されても良い。
【0212】
尚、距離計測装置3では、出射光L1のスキャンに基づくアクティブ領域AAの位置の変化が、時刻の関数(例えば、線形や正弦波)としてプログラミングされる。第3実施形態及び第3実施形態の各変形例で説明された調整動作は、このアクティブ領域AAの微調整に関する。距離計測装置3では、複数の光検出ユニットPU1及びPU2でFoVが異なるため、反射光L2の受光位置が受光領域DAから外れる場合がある。この場合、距離計測装置3は、調整動作(アクティブ領域AAの調整機能)を停止しても良い。
【0213】
[4]第4実施形態
第4実施形態に係る距離計測装置4は、第1実施形態に係る距離計測装置1におけるミラー25の構成例に関する。以下に、第4実施形態に係る距離計測装置4について、第1実施形態に係る距離計測装置1と異なる点を説明する。
【0214】
[4-1]ミラー25の構成
図37は、第4実施形態に係る距離計測装置4におけるミラー25の構成の一例を示す概略図である。
図37(1)及び(2)は、ミラー25に対するレーザ光の入射角が互いに異なる状態を示している。第4実施形態におけるミラー25は、レーザ光(出射光L1)の入射角度に応じて、出射光L1の一部を反射しない構成を有する。
【0215】
図37(1)は、ミラー25に対するレーザ光の入射角が小さい場合に対応している。
図37(1)に示すように、ミラー25に対する出射光L1の入射角が小さい場合、出射光L1の照射部IPの全てが、ミラー25の反射領域内に含まれている。この場合、ミラー25が、光エネルギーの損失を最小限にした状態で、出射光L1を所定の方向に反射する。
【0216】
図37(2)は、ミラー25に対するレーザ光の入射角が、
図37(1)よりも大きい場合に対応している。一方で、
図37(2)に示すように、ミラー25に対する出射光L1の入射角が大きい場合、出射光L1の照射部IPの一部が、ミラー25の反射領域から外れている。この場合、ミラー25が、光エネルギーの一部を損失させた状態で、出射光L1を所定の方向に反射する。
【0217】
そして、第4実施形態に係る距離計測装置4では、ミラー25に対する出射光L1の入射角が小さい状態が、望遠側の対象物TGの測距に関連付けられる。ミラー25に対する出射光L1の入射角が大きい状態が、広角側の対象物TGの測距に関連付けられる。つまり、望遠側の対象物TGの測距では、出射光L1の光エネルギーの損失が抑制される。広角側の対象物TGの測距では、出射光L1の光エネルギーの一部が損失した状態になる。第4実施形態に係る距離計測装置4のその他の構成及び動作は、第1実施形態に係る距離計測装置1と同様である。
【0218】
[4-2]第4実施形態の効果
対象物TGの測距に必要な出射光L1の光エネルギーは、距離に応じて変化する。例えば、対象物TGとの距離が長くなるほど、出射光L1の光エネルギーが減衰する。このため、計測可能な距離を長くするためには、出射部20による出射光L1の出力が、可能な範囲で大きく設計されることが好ましい。
【0219】
また、距離計測装置が車両に搭載される場合、スキャン領域SAは、遠距離の測距が必要な望遠側の領域と、近距離の測距で十分な広角側の領域とを含んでいる。望遠側の領域に対応するスキャンは、例えば、ミラー25に対する出射光L1の入射角が小さい状態を使用する。広角側の領域に対応するスキャンは、例えば、ミラー25に対する出射光L1の入射角が大きい状態を使用する。
【0220】
これに対して、第4実施形態に係る距離計測装置4は、小さい面積のミラー25を備えている。第4実施形態におけるミラー25のサイズは、望遠側の測距時における出射光L1がミラー25の反射面に照射される範囲に合わせて設計される。具体的には、第4実施形態におけるミラー25の反射面が、望遠側の測距時において、出射光L1の照射面を全て含むように設計される。一方で、第4実施形態におけるミラー25では、出射光L1の入射角度に応じて、出射光L1の照射面の一部が前記ミラー25の反射面からはみ出す場合がある。
【0221】
第4実施形態に係る距離計測装置4では、望遠側の測距時に、ミラー25の反射に伴う出射光L1の損失が抑制され、遠距離の測距が可能となる。一方で、広角側の測距時に、出射光L1の一部がミラー25に照射されず、出射光L1の光エネルギーの損失が発生する。しかしながら、広角側は、計測が必要な距離が望遠側よりも短いため、測距に必要な出射光L1のエネルギーが望遠側よりも小さい。このため、距離計測装置4は、出射光L1の損失が発生した場合にも、広角側における近距離の対象物TGを問題なく計測することが出来る。
【0222】
また、第4実施形態に係る距離計測装置4は、ミラー25に対する入射角を、広範囲で利用する。このため、第4実施形態に係る距離計測装置4は、ミラー25の回転に伴うブランキング期間を小さくすることが出来る。尚、制御部10は、望遠側の測距時のスキャン速度が、広角側の測距時のスキャン速度よりも遅くなるようにミラー25を制御しても良い。これにより、距離計測装置4は、望遠側の測距時における角度分解能を向上させることが出来、距離計測装置4における測距結果の信頼性を向上させることが出来る。
【0223】
[5]第5実施形態
第5実施形態に係る距離計測装置5は、第1実施形態に係る距離計測装置1と同様の構成を備える。そして、第5実施形態に係る距離計測装置5は、第1実施形態と異なるスキャン方法を使用する。以下に、第5実施形態に係る距離計測装置5について、第1実施形態に係る距離計測装置1と異なる点を説明する。
【0224】
[5-1]出射部20の動作
図38は、第5実施形態に係る距離計測装置5における出射部20のスキャン方法の一例を示すタイムチャートである。
図38において、チャートの縦軸は、光源23に対する出力パワーを示している。広角部WP1、望遠部TP、及び広角部WP2の組は、スキャン領域SAの左端から右端に向かった一回のスキャン領域に含まれている。
【0225】
尚、本例では、望遠側の光検出ユニットPU1のFoVが望遠部TPに合わせて設計され、光検出ユニットPU1の焦点距離が、遠距離の測距に最適化される。広角側の光検出ユニットPU2のFoVが、広角部WP1、望遠部TP、及び広角部WP2に合わせて設計され、光検出ユニットPU2の焦点距離が、近距離の測距に最適化される。
【0226】
図38に示すように、制御部10は、広角部WP1及びWP2にそれぞれ対応する2つの期間で、光源23に対して、広い間隔でパルス信号を間欠的に入力している。一方で、制御部10は、望遠部TPに対応する期間で、光源23に対して、狭い間隔でパルス信号を間欠的に入力している。つまり、出射光L1の出射間隔は、広角部WP1及びWP2では粗く、望遠部TPでは密である。このように、第5実施形態に係る距離計測装置5は、出射光L1の出射間隔を、スキャン位置(スキャン角度)に従って変化させる。
【0227】
[5-2]第5実施形態の効果
非同軸の光学系と2Dセンサとを利用した距離計測装置では、出射光L1毎の測距時間の重なりが許容される。そこで、第5実施形態に係る距離計測装置5は、出射光L1の出射間隔を変更することによって、スキャン位置毎に必要な測距解像度を実現する。
【0228】
例えば、距離計測装置1が車載される場合、前方の対象物TGが、狭い範囲且つ高解像度で検出することが好ましい。一方で、スキャン領域SA内で、路面から外れる領域における解像度は、前方よりも低くても十分である場合がある。また、計測動作で処理することが可能な単位時間当たりの出射光L1の数には、レーザのdutyの様に上限値に対する、制約が存在する。
【0229】
そこで、第5実施形態に係る距離計測装置5は、望遠部TPにおける出射光L1の数を、広角部WP1及びWP2における出射光L1の数よりも多く設定する。このように、望遠部TPにおける出射光L1の数を増やすことによって、距離計測装置5は、望遠部TPにおける角度分解能を小さくすることが出来る。また、広角部WP1及びWP2におけるパルス間隔を大きくすることによって、距離計測装置5は、出射光L1の処理数の制約を守りつつ、望遠部TPの角度分解能を高めることが出来る。
【0230】
また、望遠部TPにおいて、複数の出射の結果が平均化されることにより、S/N比が向上し、測距可能距離や距離精度が改善され得る。さらに、距離計測装置5は、第2実施形態にて説明した平均化アルゴリズム(SAT: Smart Accumulation Technique)を用いた場合に、解像度を低減することなく、測距可能距離を改善することが出来る。
【0231】
[5-3]第5実施形態の変形例
第5実施形態に係る距離計測装置5は、種々の変形が可能である。以下に、第5実施形態の変形例について、第5実施形態と異なる点を説明する。
【0232】
図39は、第5実施形態の変形例に係る距離計測装置5Aにおける出射部20のスキャン方法の一例を示す概略図である。
図39に示すように、第5実施形態の変形例に係る距離計測装置5Aは、広角部WP1及びWP2におけるパルス幅を、望遠部TPにおけるパルス幅よりも細く設定する。出射光L1のパルス幅は、太くなるほど、出射光L1のエネルギーが大きくなる。このため、太いパルス幅に基づく出射光L1は、遠距離の対象物TGの測距に好ましい。一方で、出射光L1のパルス幅が太い場合、測距における時間的ジッタが大きくなる。また、光検出器33の受光結果が飽和し易くなる。
【0233】
このため、第5実施形態の変形例に係る距離計測装置5Aは、広角部WP1及びWP2における出射光L1の光エネルギーを、望遠部TPにおける出射光L1の光エネルギーよりも小さくする。これにより、第5実施形態の変形例に係る距離計測装置5Aは、広角側の対象物TGの測距において、近距離の測距におけるジッタを減少させ、近距離の計測精度を向上させることが出来る。また、距離計測装置5Aは、受光結果の飽和を抑制することが出来、その点においても、距離精度を改善することが出来る。
【0234】
[6]光検出ユニットPUの構成例
第1実施形態で説明された光検出ユニットPUの構成は、その他の構成であっても良い。以下に、光検出ユニットPUのその他の構成例について説明する。
【0235】
例えば、BPF31A及び31Bは、光検出器33A及び33Bに入射する反射光L2の周波数を最適化するために、異なる特性を有していても良い。例えば、BPF31A及び31Bのそれぞれの周波数帯域は、距離計測装置1の使用温度に基づいて、高く又は低く設計されても良い。これにより、距離計測装置1は、温度変化に対して強い特性を有することが出来る。また、BPF31A及び31Bのそれぞれの周波数帯域は、ダイナミックレンジを拡大するために、広く又は狭く設計されても良い。これにより、光検出器33A及び33Bの受光結果の飽和を抑制することが出来る。
【0236】
光検出器33Aの大きさ及び形状と、光検出器33Bの大きさ及び形状とは、異なっていても良い。言い換えると、光検出ユニットPU1で使用されるセンサのサイズ及び形状と、光検出ユニットPU2で使用されるセンサのサイズ及び形状とは、異なっていても良い。距離計測装置1は、光検出ユニットPU1及びPU2の間で異なるサイズのセンサを使用することによって、光検出ユニットPU1による測距結果の解像度と、光検出ユニットPU2による測距結果の解像度とを最適化することが出来る。
【0237】
以下に、図面を参照して、光検出ユニットPUの第1~第7構成例について、第1実施形態で説明された光検出ユニットPUと異なる点を説明する。
【0238】
(第1構成例)
図40は、光検出ユニットPUの第1構成例における2つの光検出器33A及び33Bの画素PXの構成の一例を示す平面図である。
図40に示すように、光検出器33Aが、4つのSPADユニットSUを含む画素PXaを備えている。光検出器33Bが、9つのSPADユニットSUを含む画素PXaを備えている。
【0239】
このように、光検出器33Aが含む1つの画素PXの大きさと、光検出器33Bが含む1つの画素PXの大きさとが、異なっていても良い。言い換えると、光検出器33A内の画素PXが含むSPADユニットSUの数と、光検出器33B内の画素PXが含むSPADユニットSUの数とが、異なっていても良い。尚、画素PXaが含むSPADユニットSUの数と、画素PXbが含むSPADユニットSUの数とのそれぞれは、光学系32A及び32Bの設計に応じて適宜設計され得る。
【0240】
例えば、距離計測装置1が車両に搭載される場合、近距離の対象物TGの測距が、遠距離の対象物TGの測距よりも高精度であることが好ましい。この場合、画素PXbが含むSPADユニットSUの数が、画素PXaが含むSPADユニットSUよりも多くなるように設計される。これにより、広角側の光検出器33Bのダイナミックレンジが、望遠側の光検出器33Aのダイナミックレンジよりも広くなる。その結果、光検出ユニットPUの第1構成例は、近距離の対象物TGからの反射光L2を受ける際の受光結果の飽和を抑制することが出来、近距離の計測精度を向上させることが出来る。
【0241】
(第2構成例)
図41は、光検出ユニットPUの第2構成例における2つの光検出器33A及び33Bの画素PXの構成の一例を示す平面図である。
図41に示すように、画素PXaが、4つのSPADユニットSUaを含み、画素PXbが9つのSPADユニットSUbを含んでいる。合計の面積は、4つのSPADユニットSUaの組と、4つのSPADユニットSUbの組とで、略等しい。つまり、SPADユニットSUaのサイズが、SPADユニットSUbのサイズよりも大きい。この例では、光検出器33Bのダイナミックレンジは、光検出器33Aのダイナミックレンジよりも高い。一方、光検出器33Aの感度(PDE:Photon Detection Efficiency)は、光検出器33Bの感度(PDE)よりも若干高い。
【0242】
このように、光検出器33Aが含む1つのSPADの大きさと、光検出器33Bが含む1つのSPADの大きさとが、異なっていても良い。言い換えると、光検出器33A内の画素PXaが含むSPADユニットSUaのサイズと、光検出器33B内の画素PXbが含むSPADユニットSUbのサイズとが、異なっていても良い。尚、光検出器33Aの画素PXaと画素PXbとは、同じサイズであっても良いし、異なるサイズであっても良い。SPADユニットSUaのサイズと、SPADユニットSUbのサイズとのそれぞれは、光学系32A及び32Bの設計に応じて適宜設計され得る。
【0243】
光検出ユニットPUの第2構成例は、第1構成例と同様に、光検出器33毎のダイナミックレンジを最適化することが出来る。その結果、光検出ユニットPUの第2構成例は、近距離の対象物TGからの反射光L2を受ける際の受光結果の飽和を抑制することが出来、近距離の計測精度を向上させることが出来る。その一方で、光検出ユニットPUの第2構成例は、感度の高さにより、より遠距離の測距も同時に可能となる。
【0244】
(第3構成例)
図42は、光検出ユニットPUの第3構成例における2つの光検出ユニットPU1及びPU2の構成の一例を示す概略図である。
図42に示すように、広角側の光検出ユニットPU2の光軸が、望遠側の光検出ユニットPU1の光軸よりも、投光系方向に角度“θ”だけ傾いて設けられている。投光系方向は、受光部30から出射部20に向かう方向に対応している。非同軸の光学系に基づく視差は、近距離の対象について、“θ”の傾きに応じて小さくなる。
【0245】
このように、光検出ユニットPU1の光軸の傾きと、光検出ユニットPU2の光軸の傾きとは、異なっていても良い。光検出ユニットPUの第3構成例は、光軸の傾きによって、視差を緩和することが出来る。その結果、光検出ユニットPUの第3構成例は、近距離の対象物TGの検出確率及び計測精度を向上させることが出来る。
【0246】
(第4構成例)
図43は、光検出ユニットPUの第4構成例における2つの光検出ユニットPU1及びPU2の構成の一例を示す概略図である。
図43に示すように、望遠側の光検出ユニットPU1の光学系32Aが、移動可能な4つのレンズを備えている。広角側の光検出ユニットPU2の光学系32Bが、移動可能な2つのレンズを備えている。
【0247】
このように、光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれは、光学ズームを備えていても良い。尚、光学系32A及び32Bのそれぞれが備えるレンズの枚数は、その他の枚数であっても良い。各光学系32では、凹レンズや凸レンズ等、複数種類のレンズが組み合わせられても良い。焦点距離が長く設定された光検出ユニットPUは、測距可能な距離を長くすることが出来る。焦点距離が短く設定された光検出ユニットPUは、視差を小さくすることが出来る。光検出ユニットPU1及びPU2のそれぞれの光学ズームは、状況に応じて制御され得る。
【0248】
例えば、距離計測装置1が車載される場合、制御部10は、車両の速度の増加と共に、焦点距離を長く且つFoVを狭く設定することによって、前方の車両(対象物TG)の検出精度を向上させることが出来る。また、制御部10は、車両の速度の減少と共に、焦点距離を短く且つFoVを広く設定することによって、車両の近くの人物等の検出精度を向上させることが出来る。このように、光検出ユニットPUの第4構成例は、シーン毎に最適な焦点距離が設定され得るため、距離計測装置1の信頼性を向上させることが出来る。
【0249】
(第5構成例)
図44は、光検出ユニットPUの第5構成例における2つの光検出ユニットPU1及びPU2の構成の一例を示す概略図である。
図44に示すように、光検出ユニットPU1の光学系32Aが、シリンドリカルレンズSL1及びSL2を含んでいる。また、出射部20のミラー25がチルト付きのポリゴンミラーであり、2次元のスキャンが想定されている。このように、光検出ユニットPU毎に、レンズの異方性が変更されても良い。
【0250】
例えば、望遠側の光検出ユニットPU1の水平視野角(X方向におけるFoV)が、広角側の光検出ユニットPU2の水平視野角の1/6であり、且つX方向のサイズが光検出器33A及び33Bで同じであるものと仮定する。本仮定で、等方的な光学系32A及び32Bが使用された場合、望遠側の光検出ユニットPU1の光検出器33Aの垂直側のセンササイズ(Y方向のセンササイズ)が、広角側の光検出ユニットPU2の光検出器33Bの垂直側のセンササイズの6倍になる。
【0251】
これに対して、光検出ユニットPUの第5構成例では、光学系32Aが、垂直に狭いサイズで結像するように、シリンドリカルレンズSL1及びSL2を含んでいる。シリンドリカルレンズSL1及びSL2は、それぞれ凹形状及び凸形状を有している。これにより、センサの垂直方向(例えばY方向)のFoVが、光検出ユニットPU1及びPU2の間で同様になるように調整される。その結果、光検出ユニットPUの第5構成例は、光検出器33Bのセンササイズを小さくすることが出来る。すなわち、光検出ユニットPUの第5構成例は、光検出器33A及び33Bのサイズを最適化することが出来る。
【0252】
ところで、ここに記した垂直方向におけるFoV、或いはセンササイズの問題は、第1実施形態の第1変形例に記した、複数チャネルのレーザダイオードを縦に配置したマルチチャネルラスタの走査方法によっても対処される。第5構成例は、上述された問題に対する、第1実施形態の第1変形例とは別の解決方法である。これら2つの方法は組合わせてもよく、望遠側と広角側のFoVが更に大きく変えられてもよい。
【0253】
(第6構成例)
図45及び
図46のそれぞれは、光検出ユニットPUの第6構成例における2つの光検出ユニットPU1及びPU2の構成の一例を示す概略図である。
図45に示すように、光学系32A及び32Bが、光検出ユニットPU1及びPU2の間で一体に設けられたレンズを含んでいる。このようなレンズは、例えばプラスチックなどで形成される。そして、光検出器33A及び33Bとの間には、遮光部が設けられる。遮光部は、光検出ユニットPU1及びPU2の間の、光の入射を抑制する。これにより、光検出ユニットPUの第6構成例は、受光部30のコストを抑制することが出来る。
【0254】
図46に示すように、光検出ユニットPUの第6構成例と、第5構成例とが、組み合わされても良い。言い換えると、光検出ユニットPUの第6構成例において、光検出ユニットPU1及びPU2のいずれかが、異方性の光学系を有していても良い。本例では、広角側の光検出ユニットPU2の光学系32Bに、シリンドリカルレンズSL1(例えば凸型)及びSL2(例えば凹型)が追加されている。その結果、光検出ユニットPUの第6構成例と第5構成例との組み合わせは、光検出器33A及び33Bのサイズを最適化することが出来る。
【0255】
[7]その他
上記実施形態では、制御部10が、出射光L1の出射時刻T1を計測部40に通知する場合について例示したが、これに限定されない。出射時刻T1は、出射光L1が出射部20内で分光され、分光された出射光L1が受光部30に設けられたセンサによって検出された時刻に基づいて設定されても良い。この場合、出射時刻T1は、受光部30から計測部40に通知される。
【0256】
上記実施形態及び変形例は、組み合わせることが可能である。例えば、第2実施形態は、第3~第5実施形態とのいずれとも組み合わされ得る。第3実施形態は、第4及び第5実施形態のいずれとも組み合わされ得る。さらに、3つ以上の実施形態が組み合わされても良い。複数の実施形態が組み合わされた距離計測装置1は、組み合わされた実施形態のそれぞれの効果を得ることが出来る。
【0257】
第1実施形態において、受光部30が、互いに異なる距離に最適化された3つ以上の光検出ユニットPUを備えていても良い。受光部30が3つ以上の光検出ユニットPUを備える場合、例えば、1つ目の光検出ユニットPUが遠距離に最適化され、2つ目の光検出ユニットPUが近距離に最適化され、3つ目の光検出ユニットPUが至近距離に最適化される。これにより、距離計測装置1は、視差やデフォーカスが発生しやすい至近距離~近距離の計測精度を向上させることが出来る。3つ以上の光検出ユニットPUを備える場合においても、距離計測装置1は、第2~第5実施形態や、光検出ユニットPUの各構成例のそれぞれと組み合わされ得る。
【0258】
距離計測装置1の各構成の分類は、その他の分類であっても良い。計測部40は、上記実施形態で説明された動作を実現することが可能であれば、その他の分類であっても良い。制御部10に含まれたCPUは、その他の回路であっても良い。例えば、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)等が使用されても良い。また、各実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されても良い。ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していても良いし、どちらか一方のみであっても良い。各実施形態において、動作の説明に用いたフローチャートでは、処理の順番が可能な範囲で入れ替えられても良いし、その他の処理が追加されても良い。
【0259】
本明細書において“アクティブ領域AA”は、受光領域と呼ばれても良い。制御部10の制御に基づきパルス信号が入力された光源23が出射する出射光L1が、パルス信号と呼ばれても良い。“パルス幅”は、例えば、対象のパルス信号の半値幅で算出される。“出射部20”は、“投光部”と呼ばれても良い。
【0260】
本明細書において、“光検出器33の受光結果”は、反射光L2の受光結果を含むデジタル信号と呼ばれても良い。“デジタル信号の底部”は、当該デジタル信号に含まれたフロアノイズのことを示している。“底部の値”は、例えば、1回の計測時間における輝度の時間平均値である。“1回の計測時間”は、1回のサンプリング期間に対応している。“底部から突出している部分の値”は、例えば、反射光L2の受光結果を含むデジタル信号のうち反射光L2の受光結果に対応する突出部の輝度のことを示している。“信号のピーク”は、受光結果を含むデジタル信号の底部からの突出部において、最も高い輝度の部分のことを示している。
【0261】
本明細書において“H”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオン状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオフ状態になる電圧である。“L”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオフ状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオン状態になる電圧である。
【0262】
本明細書において“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。また、明細書において“オン状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧以上の電圧が印加されていることを示している。“オフ状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧未満の電圧が印加されていることを示し、例えばトランジスタのリーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。
【0263】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0264】
1~5…距離計測装置、10…制御部、20…出射部、21…駆動回路、22…駆動回路、23…光源、24…光学系、25…ミラー、30…受光部、31…バンドパスフィルタ、32…光学系、33…光検出器、40…計測部、41…取得部、42…積算部、43…距離計測部、44…信頼度生成部、50…基板、51…P型半導体層、52…P型半導体層、53…N型半導体層、IOUT…出力信号、L1…出射光、L2…反射光、PU…光検出ユニット、PX…画素、SL…シリンドリカルレンズ、T1…出射時刻、T2…受光時刻