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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】建設機械のキャビン用ドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240122BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B60J5/00 C
B60J5/04 U
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020189494
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078660
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】有地 毅成
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-327463(JP,A)
【文献】特開2018-154984(JP,A)
【文献】中国実用新案第219154209(CN,U)
【文献】特開平08-244454(JP,A)
【文献】特開2007-022407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00- 5/14
E02F 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ材で構成されキャビン用ドアの外周を構成する外周フレームと、
前記外周フレームに囲まれるエリアを上下に分割するように前記外周フレームの2点間に掛け渡して設けられる中間フレームと、
前記外周フレーム及び前記中間フレームに囲まれて区画されるエリアのうち、前記中間フレームより上方の上部エリアに配設される上部窓部材と、
前記中間フレームより下方の下部エリアに配設される下部窓部材と、
前記外周フレームの下部及び前記中間フレーム間に掛け渡して設けられると共に、前記外周フレームの前部に固定される部品用パネルと、
前記部品用パネルに設けられキャビン用ドアを室外から開くためのアウターハンドルとを備えた
ことを特徴とする建設機械のキャビン用ドア構造。
【請求項2】
前記アウターハンドルは、前記部品用パネルの下部に設けられた請求項1に記載の建設機械のキャビン用ドア構造。
【請求項3】
前記部品用パネルには、キャビン用ドアを閉じた状態にロックするためのロック機構が設けられ、
前記アウターハンドルは、前記ロック機構にリンク機構を介して連結された
請求項1又は2に記載の建設機械のキャビン用ドア構造。
【請求項4】
前記下部エリアには、前記下部窓部材が前記部品用パネルより室外側に位置して配設され、
前記部品用パネルの室外側の側面には、前記アウターハンドルが設けられ、
前記下部窓部材には、前記アウターハンドルを嵌入させるための嵌入穴が形成された
請求項1から3のいずれか一項に記載の建設機械のキャビン用ドア構造。
【請求項5】
前記外周フレームの上部下縁及び前記中間フレームの上縁には、前記上部窓部材を嵌合させるための嵌合溝が形成され、
これら嵌合溝には、前記上部窓部材がスライド自在に設けられた
請求項1から4のいずれか一項に記載の建設機械のキャビン用ドア構造。
【請求項6】
前記外周フレームは複数の閉断面部を有し、前記閉断面部はキャビン用ドアの厚さ方向に並べて配置され、かつ、室外側の前記閉断面部は、室内側の前記閉断面部に対して前記外周フレームの外周側に位置をずらして配置され、
室外側の前記閉断面部には、窓部材を支持するための支持壁部が形成された
請求項1から5のいずれか一項に記載の建設機械のキャビン用ドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建設機械のキャビン用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械のキャビン用ドアとしては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
これによれば、特許文献2に記載のキャビン用ドアのようにアウターパネル及びインナーパネル間に窓部材及びロック機構等を挟んで固定するキャビン用ドアよりも、視野を広くすることができ、窓部材及びロック機構等を容易に組み付けることができる。そして、アウターパネル及びインナーパネルを成型するための金型を必要とせず、安価にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-244454号公報
【文献】特開2008-14027号公報
【文献】特開2006-256527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載のキャビン用ドアは、小型の建設機械に用いるものであり、中型又は大型の建設機械に適用することは困難である。
【0006】
具体的には、中型又は大型の建設機械はキャビンの高さが高く、オペレータがキャビンに乗り込むとき、特許文献1記載のキャビン用ドアでは、オペレータの手がアウターハンドルに届かない可能性がある。このため、中型又は大型の建設機械に適用されるキャビン用ドアのアウターハンドルは、下部に配置される必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のキャビン用ドアは、上下の窓の間に配置される内側連結フレームにアウターハンドルを配設する構造となっている。このため、内側連結フレームより下方のドアにアウターハンドルを配設することは困難である。また、特許文献2記載のキャビン用ドアと比較した場合、特許文献1記載のキャビン用ドアは、その構造上、剛性を確保することが困難である。
【0008】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、アウターハンドルを下部に配置でき、剛性を容易に確保できる建設機械のキャビン用ドア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一の態様によれば、
パイプ材で構成されキャビン用ドアの外周を構成する外周フレームと、
前記外周フレームに囲まれるエリアを上下に分割するように前記外周フレームの2点間に掛け渡して設けられる中間フレームと、
前記外周フレーム及び前記中間フレームに囲まれて区画されるエリアのうち、前記中間フレームより上方の上部エリアに配設される上部窓部材と、
前記中間フレームより下方の下部エリアに配設される下部窓部材と、
前記外周フレームの下部及び前記中間フレーム間に掛け渡して設けられると共に、前記外周フレームの前部に固定される部品用パネルと、
前記部品用パネルに設けられキャビン用ドアを室外から開くためのアウターハンドルとを備えた
ことを特徴とする建設機械のキャビン用ドア構造が提供される。
【0010】
好ましくは、前記アウターハンドルは、前記部品用パネルの下部に設けられる。
【0011】
好ましくは、前記部品用パネルには、キャビン用ドアを閉じた状態にロックするためのロック機構が設けられ、前記アウターハンドルは、前記ロック機構にリンク機構を介して連結される。
【0012】
好ましくは、前記下部エリアには、前記下部窓部材が前記部品用パネルより室外側に位置して配設され、前記部品用パネルの室外側の側面には、前記アウターハンドルが設けられ、前記下部窓部材には、前記アウターハンドルを嵌入させるための嵌入穴が形成される。
【0013】
好ましくは、前記外周フレームの上部下縁及び前記中間フレームの上縁には、前記上部窓部材を嵌合させるための嵌合溝が形成され、これら嵌合溝には、前記上部窓部材がスライド自在に設けられる。
【0014】
好ましくは、前記外周フレームは複数の閉断面部を有し、前記閉断面部はキャビン用ドアの厚さ方向に並べて配置され、かつ、室外側の前記閉断面部は、室内側の前記閉断面部に対して前記外周フレームの外周側に位置をずらして配置され、室外側の前記閉断面部には、窓部材を支持するための支持壁部が形成される。
【発明の効果】
【0015】
上記の態様によれば、アウターハンドルを下部に配置でき、剛性を容易に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施の形態に係るキャビン用ドアを室外側から視た斜視図である。
図2】キャビン用ドアを室内側から視た斜視図である。
図3】キャビン用ドアの分解斜視図である。
図4図3の要部拡大図である。
図5図1のA-A線矢視断面図である。
図6図1のB-B線矢視断面図である。
図7図1のC-C線矢視断面図である。
図8】キャビン用ドアが設けられたキャビンの上面図である。
図9図5の変形例を示す断面図である。
図10図6の変形例を示す断面図である。
図11図7の変形例を示す断面図である。
図12】キャビン用ドアの変形例を示す斜視図である。
図13】キャビン用ドアの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお、後述する実施の形態における前後左右上下の各方向は、キャビン用ドアが適用されるキャビンの各方向をいうものとする。ただし、本実施の形態における各方向は、説明の便宜のために用いるものであり、後述する部材間の相対的な位置関係を表す。
【0018】
図8に示すように、本実施の形態に係るキャビン用ドア1は、キャビンCの左壁LWに設けられる。よって、本実施の形態においてキャビン用ドアの右方は室内方向であり、左方は室外方向である。なお、キャビン用ドア1は、キャビンCの右壁RWに設けられるものであってもよいのは勿論である。この場合、左右方向に対する室内方向及び室外方向の関係は上述とは逆になる。
【0019】
図1図2及び図3に示すように、キャビン用ドア1は、その外周を構成する外周フレーム2と、外周フレーム2に囲まれるエリアを上下に分割するように外周フレーム2の2点間に掛け渡して設けられる中間フレーム3と、外周フレーム2及び中間フレーム3に囲まれて区画されるエリアのうち、中間フレーム3より上方の上部エリアUAに配設される上部窓部材16と、中間フレーム3より下方の下部エリアDAに配設される下部窓部材17とを備える。
【0020】
外周フレーム2は、強度及び加工性に優れたアルミニウム、アルミ合金等の金属を押出成形して成形される。これにより、外周フレーム2を簡易かつ安価に作製できる。外周フレーム2は、側面視矩形枠状に形成される。具体的には、外周フレーム2は、下部に形成され前後方向に延びる下部フレーム部5と、前部に形成され上下方向に延びる前部フレーム部6と、上部に形成され前後方向に延びる上部フレーム部7と、後部に形成され上下方向に延びる後部フレーム部8とを備える。前部フレーム部6は、下部より上部が後方に位置されるように傾斜されている。また、外周フレーム2は、適宜複数のパーツに分割した状態で製作されており、上部エリアUAに上部窓部材16を配設できると共に、下部エリアDAに下部窓部材17を配設できるようになっている。具体的には、外周フレーム2は、直線状に延びる部分で適宜分割した状態で製作され、外周フレーム2の上下前後の四隅は、円弧状に屈曲されている。なお、外周フレーム2は、上下前後の四隅で適宜分割した状態で製作されてもよい。この場合、外周フレーム2の上下前後の四隅は、突き合わせ溶接されるとよい。また、外周フレーム2の上下前後の四隅は、角状に屈曲された形状に形成されてもよい。後部フレーム部8には、オペレータが室内側からキャビン用ドア1を閉じるとき把持するための第1プルハンドル43が設けられる。第1プルハンドル43は、後述する第2プルハンドル44よりもキャビン用ドア1の回動中心に近いため、キャビン用ドア1が大きく開かれた場合であってもオペレータから大きく離間されることはなく、容易に把持できる。また、後部フレーム部8には、キャビン用ドア1をキャビンCのフレームFに開閉自在に取り付けるための蝶番9が設けられる。蝶番9は、後述する外側閉断面部10(図5参照)の左側(室外側)の側壁10aにボルトBとタップドブロックTとでも取り付けられる。タップドブロックTは、概ね直方体状に形成された金属ブロックに、ボルトTと螺合される雌ネジを形成して構成される。タップドブロックTは、外側閉断面部10内の所定位置に予め挿入されて固定されている。
【0021】
図5及び図6に示すように、外周フレーム2は複数(本実施の形態では2つ)の閉断面部10、11を有するパイプ材で構成される。これら閉断面部10、11は断面矩形に形成され、一体に連結される。これにより、外周フレーム2の強度が簡易な構造で高められる。
【0022】
また、これら閉断面部10、11は左右方向(キャビン用ドア1の厚さ方向)に並べて配置され、かつ、左方の閉断面部(以下、外側閉断面部)10は右方の閉断面部(以下、内側閉断面部)11に対して外周フレーム2の外周側に位置をずらして配置される。具体的には、図6に示す前部フレーム部6の水平断面において、外側閉断面部10は、内側閉断面部11の斜め前方に配置される。また、同水平断面において、外側閉断面部10及び内側閉断面部11は、前後方向に長い長方形状に形成される。また、同水平断面において、内側閉断面部11の前端に位置される外周壁11cは、外側閉断面部10の後端に位置される内周壁10dの延長線上に配置されている。そして、これら外周壁11cと内周壁10dは、内周壁10dを右方向に延長させた形状の連結壁13を介して一体に連結されている。これにより、内周壁10d、連結壁13及び外周壁11cで一枚の壁が構成され、この壁を共有するかたちで2つの閉断面部10、11が一体に連結されている。このため、内周壁10d、連結壁13及び外周壁11cで構成される壁で左右方向からの力を受けることができ、左右方向からの力に対する強度を高めることができる。
【0023】
そして、外周フレーム2の内周には、後述する嵌合溝14a、14bを区画して窓部材16、17を支持するための支持壁部15a、15bが全周に亘って形成されている。具体的には、支持壁部15a、15bは、外側閉断面部10の左右の側壁10a、10bを外周フレーム2の内周方向にそれぞれ延長させた形状となっている。かかる延長方向における2つの支持壁部15a、15bの長さL1は、同じに設定される。また、この長さL1は、前記延長方向における内側閉断面部11の左側の側壁11aの長さL2より短く設定される。嵌合溝14a、14bは、左右方向に隣接して2つ形成される。左側の嵌合溝14aは、2つの支持壁部15a、15b間に形成される。右側の嵌合溝14bは、内側閉断面部11の左側の側壁11a及びこの側壁11aと対向する支持壁部15b間に形成される。嵌合溝14a、14bは、後述する上部窓部材16及び下部窓部材17を嵌合させる。
【0024】
また、外側閉断面部10の右側の側壁10bには、ウエザーストリップ18が側壁10bに沿って環状に設けられる。ウエザーストリップ18は、キャビンC及びキャビン用ドア1間を止水するものであり、中空のゴムパイプで構成される。なお、ウエザーストリップ18は、これに限られない。ウエザーストリップ18は、キャビンC及びキャビン用ドア1間を止水できるものであれば、他の材料で形成されてもよく、中空でなくてもよい。
【0025】
外周フレーム2をこのように構成することにより、図8に示すように、キャビンC内のオペレータが視点Vから外周フレーム2を視たとき、支持壁部15a、15b及び外側閉断面部10は、内側閉断面部11の裏に隠れる。このため、外周フレーム2による死角を小さくすることができ、オペレータの視野θを広くすることができる。
【0026】
図7に示すように、中間フレーム3は、概ね断面矩形のパイプ材で構成され、強度及び加工性に優れたアルミ合金等の金属を押出成形して成形される。図1図2及び図3に示すように、中間フレーム3は、外周フレーム2の前部フレーム部6及び後部フレーム部8間に掛け渡して設けられる。また、中間フレーム3の室内側の側面には、オペレータが室内側からキャビン用ドア1を閉じるとき把持するための第2プルハンドル44が設けられる。第2プルハンドル44は、第1プルハンドル43よりもキャビン用ドア1の回動中心から離間する位置に配置される。これにより、キャビン用ドア1が小さく開かれているとき、オペレータの体に近接され、容易に把持できる。なお、第1プルハンドル43及び第2プルハンドル44は、これに限られない。例えば、図12に示すように、プルハンドル46は、第1プルハンドル43及び第2プルハンドル44を一体化させた形状のものであってもよい。具体的には、プルハンドル46は、中間フレーム3より上方の後部フレーム部8に取り付けられ後部フレーム部8から斜め右前方に延びる第1基部46aと、第1基部46aの先端から屈曲されて下方に延びる第1把持部46bと、第1把持部46bの下端から屈曲されて前方に延びる第2把持部46cと、第2把持部46cの前端から屈曲されて斜め左下方に延び中間フレーム3に取り付けられる第2基部46dとを備える。
【0027】
また、中間フレーム3は、前後方向に延びると共に、概ね水平に配置される。これにより、外周フレーム2によって囲まれるエリアは、中間フレーム3によって上下に分割される。また、図7に示すように、中間フレーム3の上端には、嵌合溝19a、19bを区画するための支持壁部20a、20b、20cが前後方向に延びると共に上方に延びて形成される。支持壁部20a、20b、20cは、中間フレーム3に左右方向に等間隔で3つ形成される。中間フレーム3の嵌合溝19a、19bは、これら3つの支持壁部20a、20b、20cのうち中央に位置される支持壁部20bを境としてその左側と右側に1つづつ形成される。中間フレーム3に形成される左側の嵌合溝19aは、外周フレーム2に形成される左側の嵌合溝14aと接続される。中間フレーム3に形成される右側の嵌合溝19bは、外周フレーム2に形成される右側の嵌合溝14bと接続される。また、中間フレーム3の下端には、上述と同様の支持壁部20a、20b、20c及び嵌合溝19a、19bが上下対称に形成される。
【0028】
図1図2及び図3に示すように、上部窓部材16は、2枚のスライドガラス16a、16bを備える。これらスライドガラス16a、16bは、透明な板ガラスで構成される。一方のスライドガラス(以下、外スライドガラス)16aは、上部フレーム部7の下縁に形成された左側の嵌合溝14aにスライド自在に嵌合されると共に、中間フレーム3の上縁に形成された左側の嵌合溝19aにスライド自在に嵌合される。他方のスライドガラス(以下、内スライドガラス)16bは、上部フレーム部7の下縁に形成された右側の嵌合溝14bにスライド自在に嵌合されると共に、中間フレーム3の上縁に形成された右側の嵌合溝19bにスライド自在に嵌合される。外スライドガラス16aは、上部エリアUAの前半部を開閉自在に閉じる。外スライドガラス16aは、上部エリアUAの前半部を閉じたとき、前部フレーム部6の外嵌合溝14aに嵌合される。内スライドガラス16bは、上部エリアUAの後半部を開閉自在に閉じる。内スライドガラス16bは、上部エリアUAの後半部を閉じたとき、後部フレーム部8の内嵌合溝14bに嵌合される。そして、外スライドガラス16aと内スライドガラス16bが共に閉じられたとき、外スライドガラス16aの後端部と、内スライドガラス16bの前端部は重なる。このように、外スライドガラス16aが上部エリアUAの前半部を閉じ、内スライドガラス16bが上部エリアUAの後半部を閉じる。このため、建設機械が前方に走行したときに外スライドガラス16aの後端部と内スライドガラス16bの前端部との隙間からキャビンC内に雨水が浸入することを抑制できる。
【0029】
下部窓部材17は、透明な一枚の板ガラスで構成される。図6及び図7に示すように、下部窓部材17は、前部フレーム部6、下部フレーム部5及び後部フレーム部8の外嵌合溝14aに嵌合されて固定されると共に、中間フレーム3の下縁に形成された外嵌合溝19aに嵌合されて固定される。これにより、下部窓部材17は、外周フレーム2及び中間フレーム3に全周を固定される。なお、上部エリアUAを区画する外周フレーム2の嵌合溝14a、14b内と、中間フレーム3の上側の嵌合溝19a、19b内には、図示しないグラスランチャンネルが設けられる。外周フレーム2の嵌合溝14a、14b内に設けられるグラスランチャンネルは、スライドガラス16a、16bを摺動自在にガイドすると共に、外周フレーム2及びスライドガラス16a、16b間を液密にシールする。中間フレーム3の嵌合溝19a、19b内に設けられるグラスランチャンネルは、スライドガラス16a、16bを摺動自在にガイドすると共に、中間フレーム3及びスライドガラス16a、16b間を液密にシールする。図3及び図7に示すように、下部窓部材17には、後述するアウターハンドル21を嵌入させるための嵌入穴22が左右方向に貫通して形成されると共に、嵌入穴22から室内側に侵入した水を排出するための排水穴23が左右方向に貫通して形成される。また、下部窓部材17の前部右側面には、後述する部品用パネル4がキャビンC外から見えないようにするための黒色セラミックス層24がプリントされている。黒色セラミックス層24の外周形状は、後述するパネル本体部25と概ね同じに設定される。
【0030】
ところで、特許文献1記載のキャビン用ドアは、上下の窓の間に配置される内側連結フレームにアウターハンドルを配設する構造となっている。このため、内側連結フレームより下方のドアにアウターハンドルを配設することは困難である。また、特許文献1記載のキャビン用ドアは、その構造上、剛性を確保することが困難である。
【0031】
そこで、本実施の形態に係るキャビン用ドア1は、外周フレーム2の下部及び中間フレーム3間に掛け渡して設けられると共に、外周フレーム2の前部に固定される部品用パネル4を備える。また、部品用パネル4には、キャビン用ドア1を室外から開くためのアウターハンドル21が設けられる。部品用パネル4は、外周フレーム2の下部フレーム部5及び前部フレーム部6と、中間フレーム3とに固定される。このため、部品用パネル4が補強材として機能し、キャビン用ドア1の剛性が簡易な構造で容易に確保される。また、部品用パネル4は、中間フレーム3及び下部フレーム部5間に掛け渡される。このため、部品用パネル4の下部にアウターハンドル21を設けることでキャビン用ドア1の下部にアウターハンドル21を容易に配設できる。
【0032】
部品用パネル4は、下部窓部材17たる板ガラスに沿って配置されるパネル本体部25と、中間フレーム3に締結される上部締結部26と、前部フレーム部6に締結される前部締結部27と、下部フレーム部5に締結される下部締結部28とを備える。
【0033】
パネル本体部25は概ね矩形板状に形成される。パネル本体部25には、後述するロック機構29を取り付けるための第1ブラケット30が室内側に突出して設けられると共に、後述するインナーハンドル31を取り付けるための第2ブラケット32が室内側に突出して設けられる。ロック機構29は、キャビン用ドア1を閉じた状態にロックするためのものであり、キャビンC側に設けられたストライカー(図示せず)に当たることでストライカーに対してロックされる。インナーハンドル31は、ロック機構29をキャビンC内から操作するためのハンドルであり、ロック機構29にリンク機構33を介して連結される。リンク機構33は、インナーハンドル31に一端を連結される第1プルロッド33aと、第1プルロッド33aの他端に連結される中間レバー33bとを備える。第1プルロッド33aは、インナーハンドル31が操作されたとき中間レバー33bの一端を上方に引くように構成されている。中間レバー33bは、一端が上方に引かれることで他端が下方に揺動される。ロック機構29は、中間レバー33bの他端が下方に揺動されることでロックを解除する。
【0034】
また、図3及び図4に示すように、パネル本体部25の下部には、図示しないボルトを挿通させるための貫通穴34が形成されている。このボルトはパネル本体部25にアウターハンドル21を締結する。アウターハンドル21は、ロック機構29にリンク機構33を介して連結されており、ロック機構29をキャビンC外から操作する。リンク機構33は、中間レバー33bに連結される第2プルロッド33cをさらに備える。第2プルロッド33cは、アウターハンドル21が操作されたとき中間レバー33bの他端を下方に引くように構成されている。パネル本体部25の室外側の側面には、アウターハンドル21が設けられる。具体的には、貫通孔34には、ボルトが室内側から挿入され、このボルトがアウターハンドル21に形成された雌ネジ(図示せず)に螺合される。アウターハンドル21は、下部窓部材17の嵌入穴22に嵌入された状態でパネル本体部25の室外側の側面に締結される。なお、アウターハンドル21は、ボルト以外の手段でパネル本体部25に取り付けられてもよい。例えば、アウターハンドル21は、ファスナークリップ等でパネル本体部25に取り付けられてもよい。
【0035】
また、アウターハンドル21には、そのハンドル操作を無効化するためのキーシリンダ21a(図1参照)が設けられている。キーシリンダ21aは、キー操作によりオン又はオフに切り替えられるように構成されている。キーシリンダ21aは、図3に示すロック機構29に第3プルロッド35を介して連結される。第3プルロッド35は、キーシリンダ21aがオフに切り替えられたとき、中間レバー33bからロック機構29への力の伝達が切断されるようにロック機構29を操作する。
【0036】
図3及び図4に示すように、パネル本体部25には、第2プルロッド33cに連結されるアウターハンドル21の部分を挿通させるための挿通穴36が形成されると共に、挿通穴36を覆う防水カバー37が設けられている。防水カバー37は、左端が開放された箱形に形成されており、左端がパネル本体部25に溶接等により液密に接合されている。防水カバー37の上面には、第2プルロッド33c及び第3プルロッド35を挿通させるための開口38が形成されている。また、防水カバー37の底部に隣接するパネル本体部25には、防水カバー37内に溜まった水を排出するための排出穴39が形成されている。図4及び図7に示すように、排出穴39は、下部窓部材17の排水穴23と連通されるように配置される。また、防水カバー37内の底部には、排出穴39に水を案内するための傾斜面40が形成されている。
【0037】
また、図3に示すように、パネル本体部25の後部には、オペレータの視野を広げるための切り欠き部41が形成されている。切り欠き部41は、パネル本体部25の上下方向の中央に形成されている。これにより、パネル本体部25の強度を確保しつつオペレータの視野を広げることができる。
【0038】
図3及び図7に示すように、上部締結部26は、パネル本体部25の上端から右方向に概ね直角に屈曲させて形成され右方向に延びる上部内延部26aと、上部内延部26aから上方向に概ね直角に屈曲させて形成され上方向に延びる上延部26bとを備える。上部内延部26aは、中間フレーム3の下端に沿うように形成される。上延部26bは、中間フレーム3の右側面に沿うように形成される。上延部26bには、ボルトBを挿通させるためのボルト穴26cが形成されている。上延部26bは、ボルト穴26cに挿通されるボルトBとタップドブロックTとで中間フレーム3に締結される。
【0039】
図4及び図6に示すように、前部締結部27は、パネル本体部25の前端から右方向に概ね直角に屈曲させて形成され右方向に延びる前部内延部27aと、前部内延部27aから前方向に概ね直角に屈曲させて形成され前方向に延びる前延部27bとを備える。前部内延部27aは、前部フレーム部6の後端面に沿うように形成される。前延部27bは、前部フレーム部6の右側面に沿うように形成される。前延部27bには、ボルトBを挿通させるためのボルト穴27cが形成されている。前延部27bは、ボルト穴27cに挿通されるボルトBとタップドブロックTとで前部フレーム部6に締結される。
【0040】
図4及び図7に示すように、下部締結部28は、パネル本体部25の下端から右方向に概ね直角に屈曲させて形成され右方向に延びる下部内延部28aと、下部内延部28aから下方向に概ね直角に屈曲させて形成され下方向に延びる下延部28bとを備える。下部内延部28aは、下部フレーム部5の上端面に沿うように形成される。下延部28bは、下部フレーム部5の右側面に沿うように形成される。下延部28bには、ボルトBを挿通させるためのボルト穴28cが形成されている。下延部28bは、ボルト穴28cに挿通されるボルトBとタップドブロックTとで下部フレーム部5に締結される。
【0041】
このように、上部内延部26a、前部内延部27a及び下部内延部28aがパネル本体部25に対して概ね直角に屈曲されているため、簡易な構造で部品用パネル4の強度を高めることができる。
【0042】
また、図3及び図6に示すように、部品用パネル4には、ロック機構29及びリンク機構33を覆い隠すためのカバー42が設けられる。カバー42は、図示しないファスナークリップで部品用パネル4に取り付けられる。
【0043】
次に本実施の形態の作用について述べる。
【0044】
キャビン用ドア1を製作する場合、押出成形にて外周フレーム2及び中間フレーム3を形成する。このとき、外周フレーム2を適宜複数のパーツに分割した状態で製作する。これにより、上部エリアUAに上部窓部材16を配設できると共に、下部エリアDAに下部窓部材17を配設することができる。具体的には、外周フレーム2を構成するパーツのうち、前部フレーム部6又は後部フレーム部8を構成するパーツに中間フレーム3の一端を取り付けて中間部品を形成し、この中間部品の上部エリアUAとなる部分に上部窓部材16を配設すると共に、下部エリアDAとなる部分に下部窓部材17を配設する。この後、前記中間部品に外周フレーム2を構成する他のパーツを取り付けて外周フレーム2を完成させる。
【0045】
この後、中間フレーム3、前部フレーム部6及び下部フレーム部5に部品用パネル4を取り付け、部品用パネル4にロック機構29、リンク機構33、インナーハンドル31及びアウターハンドル21を取り付ける。このとき、部品用パネル4の第1ブラケット30及び第2ブラケット32は露出されているため、ロック機構29、リンク機構33及びインナーハンドル31を容易に取り付けることができる。そして、部品用パネル4の第1ブラケット30及び第2ブラケット32は、室内側に突出されているため、リンク機構33及びインナーハンドル31を更に容易に取り付けることができる。
【0046】
この後、部品用パネル4にカバー42を取り付ける。これにより、ロック機構29及びリンク機構33を覆い隠すことができ、キャビンC内の美観を整えることができる。
【0047】
また、大型又は中型の建設機械のキャビンCにキャビン用ドア1を取り付けた場合、地面からキャビン用ドア1までの高さは人の背丈ほどの高さになる。このため、人の手が届くのは、キャビン用ドア1の下部までである。そこで、本実施の形態において、アウターハンドル21はキャビン用ドア1の下部に配置される。このため、オペレータが地上からキャビンCに乗り込む際、アウターハンドル21に容易に手が届き、キャビン用ドア1を容易に開けることができる。なお、キャビン用ドア1に対するアウターハンドル21の高さ方向の位置は、キャビン用ドア1が適用されるキャビンCの高さに応じて適宜最適となるように設定されるとよい。例えば、小型建設機械のキャビンCに適用されるキャビン用ドア1の場合、図13に示すように、アウターハンドル21は、中間フレーム3の下方、かつ、中間フレーム3に隣接する位置に配設されてもよい。
【0048】
そして、キャビンC内に乗り込んだオペレータが建設機械を操作する場合、上部窓部材16及び下部窓部材17越しに施工すべき地面等を見ることになる。このとき、外周フレーム2の外側閉断面部10は、内側閉断面部11に対して外周フレーム2の外周側に位置をずらして配置され、外側閉断面部10の内周縁には、支持壁部15a、15bが形成されている。このため、外側閉断面部10及び支持壁部15a、15bは、キャビンC内のオペレータから見たとき、内側閉断面部11の裏に隠れることとなり、視野を広くすることができる。
【0049】
また、キャビンCを高圧洗浄する場合には、下部窓部材17及びアウターハンドル21間の隙間から室内側に水が浸入することも考えられる。しかし、部品用パネル4には、防水カバー37が設けられており、防水カバー37の底部に隣接するパネル本体部25には、排水用の排出穴39が形成されている。このため、下部窓部材17及びアウターハンドル21間の隙間から室内側に浸入した水を排出穴39から室外に排出することができ、キャビンC内に水が浸入することを防止又は抑制することができる。
【0050】
このように、本実施の形態に係るキャビン用ドア構造は、下部フレーム部5及び中間フレーム3間に掛け渡して設けられると共に前部フレーム部6に固定される部品用パネル4を備え、部品用パネル4には、ロック機構29、リンク機構33、インナーハンドル31及びアウターハンドル21が設けられる。このため、アウターハンドル21をキャビン用ドア1の下部に配置でき、キャビン用ドア1の剛性を容易に確保できる。
【0051】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示は以下のような他の実施形態も可能である。
【0052】
例えば、図9図10及び図11に示すように、2つの閉断面部50、51は、左右方向において重なる位置に配置されるものであってもよい。これによれば、外周フレーム2の断面形状をシンプルにでき、外周フレーム2の押出加工が容易にできる。このため、外周フレーム2を安価に形成できる。
【符号の説明】
【0053】
1 キャビン用ドア
2 外周フレーム
3 中間フレーム
4 部品用パネル
16 上部窓部材
17 下部窓部材
21 アウターハンドル
UA 上部エリア
DA 下部エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13