(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】人物検知システム、及び人物検知システムを装備した車両
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240122BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
G06T7/00 660Z
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020210558
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016249(JP,A)
【文献】特開2020-010154(JP,A)
【文献】特開2018-193204(JP,A)
【文献】特開2006-270274(JP,A)
【文献】特開2014-116654(JP,A)
【文献】特開2020-181344(JP,A)
【文献】特開2016-062428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 1/00
G08G 1/16
G08B 13/196
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを用いた人物検知システムであって、
人物に付与される認識支援物と、
前記カメラによる撮影画像から人物を認識する人物認識ユニットと、
前記人物認識ユニットからの認識結果に基づいて人物検知情報を出力する検知情報出力部とを備え、
前記人物認識ユニットは、
妨害物の隙間から前記撮影画像に写り込んでいる前記認識支援物
の少なくとも一部を認識対象として前記撮影画像から
前記妨害物によって部分的に隠された人物を認識する特殊認識部を含む人物検知システム。
【請求項2】
前記カメラは農場で、草刈り、薬剤散布、荷物搬送の少なくともいずれか一つを行う作業車に設けられており、
前記人物認識ユニットは前記カメラによる前記撮影画像から前記農場における人物を認識する請求項1に記載の人物検知システム。
【請求項3】
前記認識支援物は、前記人物が着用する特定模様を有する衣服である請求項1
または2に記載の人物検知システム。
【請求項4】
前記認識支援物は、1つ以上の発光体である請求項1
から3のいずれか一項に記載の人物検知システム。
【請求項5】
前記人物から送られてくる認識用信号に基づいて前記人物の存在を認識して人物存在情報を出力する補助認識部がさらに備えられ、
前記人物認識ユニットは、前記補助認識部による前記人物存在情報を人物認識に利用する請求項1から
4のいずれか一項に記載の人物検知システム。
【請求項6】
前記認識用信号は、前記人物に付与された信号発生装置から送信される請求項
5に記載の人物検知システム。
【請求項7】
前記認識用信号は、前記補助認識部に備えられた信号発生装置から送信された信号が前記人物によって反射された反射信号である請求項
5に記載の人物検知システム。
【請求項8】
前記信号発生装置によって発生する信号は音波信号または電波信号であり、前記補助認識部は、前記音波信号または前記電波信号の信号伝播時間に基づいて、前記人物と前記補助認識部との間の距離を算出する機能を有する請求項
7に記載の人物検知システム。
【請求項9】
前記補助認識部には、前記認識用信号の受信指向性がそれぞれ異なる複数の受信部が備えられており、前記補助認識部は、前記受信部の受信強度に基づいて、認識された前記人物に対する検知方位を算出する機能を有する請求項
8に記載の人物検知システム。
【請求項10】
前記人物認識ユニットには、前記補助認識部で算出された前記検知方位に基づいて、前記撮影画像における認識対象領域を絞り込む認識管理部が備えられている請求項
9に記載の人物検知システム。
【請求項11】
前記人物認識ユニットは、前記認識支援物を認識対象とせずに前記撮影画像から人物を認識する標準認識部を含む請求項1から
10のいずれか一項に記載の人物検知システム。
【請求項12】
カメラを用いた人物検知システムを装備した車両であって、
前記人物検知システムは、
人物に付与される認識支援物と、
前記カメラによる撮影画像から人物を認識する人物認識ユニットと、
前記人物認識ユニットからの認識結果に基づいて人物検知情報を出力する検知情報出力部とを備え、
前記人物認識ユニットは、前記認識支援物を認識対象として前記撮影画像から人物を認識する特殊認識部を含んでおり、
テザーと、
車両の状態を示す状態情報を生成する状態情報生成部と、
前記テザーの一端と接続され、前記テザーの張力を調節する車載張力調節器と、
前記テザーの他端と接続され、車両外部の作業者によって保持される外部操作器と、
前記状態情報に対応する張力変動のための張力調節信号を生成して、前記車載張力調節器に与える信号変換器と、
を備える車両。
【請求項13】
前記外部操作器には、前記テザーの張力を調節する外部張力調節器が備えられ、前記信号変換器は、前記外部張力調節器による前記テザーの張力変動を車両制御信号に変換する請求項1
2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラによる撮影画像から人物を検知する人物検知システム、及びこの人物検知システムを装備した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場の農作物を収穫する収穫機に装備された障害物検出ユニットが開示されている。この障害物検出ユニットは、収穫機の前方を撮影するカメラからの撮影画像を、深層学習アルゴリズムを用いて認識処理し、圃場内の人物などの障害物を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1による障害物検出ユニットでは、その検出対象領域は米や麦の圃場であり、カメラの視野には人物の撮影を邪魔する邪魔物が入ることは少ない。しかしながら、森林や果樹園などで作業する作業車では、走行車両の前方に作業員など人物が進入してきても、カメラと人物との間に樹木の幹、枝、葉が入り込んでしまう。このため、撮影画像に人物の一部しか写り込まず、撮影画像から人物が認識できないという問題が生じる。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、撮影画像に人物の一部しか写り込まないような状況であっても、適切に人物の検知が可能となる、人物検知システム、及びこの人物検知システムを装備した車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による、カメラを用いた人物検知システムは、人物に付与される認識支援物と、前記カメラによる撮影画像から人物を認識する人物認識ユニットと、前記人物認識ユニットからの認識結果に基づいて人物検知情報を出力する検知情報出力部とを備え、前記人物認識ユニットは、妨害物の隙間から前記撮影画像に写り込んでいる前記認識支援物の少なくとも一部を認識対象として前記撮影画像から前記妨害物によって部分的に隠された人物を認識する特殊認識部を含む。
【0007】
この構成では、特殊認識部によって認識されやすい認識支援物が人物に付与されているので、進入してきた人物とカメラとの間に撮影を妨害するような樹木があったしても、そのような妨害物の隙間から少なくとも認識支援物の一部が撮影画像に写り込んでいる限り、当該人物の認識が可能となる。また、前記カメラは農場で、草刈り、薬剤散布、荷物搬送の少なくともいずれか一つを行う作業車に設けられており、前記人物認識ユニットは前記カメラによる前記撮影画像から前記農場における人物を認識すると好適である。
【0008】
好適な認識支援物の一例は、前記人物が着用する特定模様を有する衣服である。ここでの特定模様とは、周囲の色彩と区別のしやすい色彩(単色であっても複数色でもよい)、想定される撮影妨害物と区別しやすい模様(市松模様などの格子縞)などを意味する。作業者などの人物(走行車両に近づく可能性のある人物)の認識度は向上するが、そのような特定模様を有する衣服やタスキなどを身に着けるだけなので、その人物の運動性は、実質的に低下しない。
【0009】
好適な認識支援物の別例は、1つ以上の発光体である。人物が認識しやすい特定の光を発光する発光体を身に着ければ、その光が撮影画像に写し込まれることにより、人物の存在を認識することができる。特に、光の特性から、樹木等の撮影妨害物との乱反射効果や回析効果などによって、撮影画像にその光が写し込まれた場合、人物が全く撮影画像に写し込まれていなくとも、その人物の認識が可能となる利点が得られる。発光体は、衣服など人が身に着けているもの、タスキやベルトなどの人が身に着けやすいものなどに取り付けると、好都合である。
【0010】
さらに本発明では、前記人物から送られてくる認識用信号に基づいて前記人物の存在を認識して人物存在情報を出力する補助認識部がさらに備えられ、前記人物認識ユニットは、前記補助認識部による前記人物存在情報を人物認識に利用する構成も提案される。この構成では、認識対象となる人物から送られてくる認識用信号を受信することで、補助認識部は、人物の存在を認識することができる。補助認識部が人物の存在を認識したことを示す人物存在情報を人物認識ユニットに与えることで、人物認識ユニットは、人物が車両の近くに存在していることが把握できるので、信頼度の低い人物認識であっても当該人物認識を確定することできる。人物認識ユニットは、補助認識部からの人物存在情報をそのまま人物の認識結果として検知情報出力部に与えることも可能である。さらには、補助認識部が、人物存在情報を最終認識結果として、検知情報出力部に与えてもよい。
【0011】
実施形態の1つでは、信号発生装置が補助認識部に備えられ、認識用信号は、信号発生装置から送信された信号が人物によって反射された反射信号であり、当該反射信号は、補助認識部に備えられた受信部によって受信される。この実施形態において、認識用信号として、超音波などの音波、またはデータ通信に用いられている電波などが用いられると、その伝播時間から補助認識部と人物との間の距離を測定することができる。このため、好適な実施形態では、前記信号発生装置によって発生する信号は音波信号または電波信号であり、前記補助認識部は、前記音波信号または前記電波信号の信号伝播時間に基づいて、前記人物と前記補助認識部との間の距離を算出する機能を有する。補助認識部から人物認識ユニットに与えられる人物存在情報に、その存在が認識された人物までの距離が含まれていると、人物認識ユニットは、人物認識のための距離ゾーンを絞り込むことができる。
【0012】
さらに、好適な実施形態では、前記補助認識部には、前記認識用信号の受信指向性がそれぞれ異なる複数の受信部が備えられており、前記補助認識部は、前記受信部の受信強度に基づいて、認識された前記人物に対する検知方位を算出する機能を有する。これにより、補助認識部が生成する人物存在情報に、その存在が認識された人物の存在方位が含まれることになり、人物存在情報の価値が高まる。例えば、前記人物認識ユニットには、前記補助認識部で算出された前記検知方位に基づいて、前記撮影画像における認識対象領域を絞り込む認識管理部が備えられるように構成すれば、人物認識ユニットにおける人物認識の認識精度と認識速度を向上させることができる。
【0013】
認識用信号が人物に付与された信号発生装置から送信される実施形態では、補助認識部は、この認識用信号を受信することができる受信部を備える。つまり、補助認識部は、人物から送信される認識用信号を受信することにより、当該人物の存在を認識する。
【0014】
人物認識ユニットの人物認識の対象となる領域に撮影の邪魔になる樹木などの撮影妨害物がない場合、公知な人物認証アルゴリズムを利用することで、高精度で迅速な人物認識が可能となる。このため、このような公知な人物認証アルゴリズムを採用した標準認識部が、上記の特殊認識部以外に備えられていると好都合である。この標準認識部は、撮影妨害物がない場合には、認識支援物が付与されていない人物を認証することができるので、この標準認識部を備えた人物検知システムは、撮影妨害物が存在しなければ、不測に進入してきた認識支援物無しの人物も検知することができる。このため、本発明の人物検知システムでは、前記人物認識ユニットは、前記認識支援物を認識対象とせずに前記撮影画像から人物を認識する標準認識部を含むことが好ましい。その際、使用する認識部として、標準認識部と特殊認識部とのいずれかが切り替えられるように構成するとよい。あるいは、各認識部から認識度(認識確率)を出力される場合には、認識度の高い方が選べるようにしてもよいし、どちらかの認識結果が優先的に採用されるようにしてもよい。
【0015】
本発明による人物検知システムは、車両、特に、農場や森林や果樹園で作業する無人自走式車両に装備されることが好ましい。そのような無人自走式車両の実施形態の1つでは、カメラを用いた人物検知システムを装備しており、前記人物検知システムは、人物に付与される認識支援物と、前記カメラによる撮影画像から人物を認識する人物認識ユニットと、前記人物認識ユニットからの認識結果に基づいて人物検知情報を出力する検知情報出力部とを備え、前記人物認識ユニットは、前記認識支援物を認識対象として前記撮影画像から人物を認識する特殊認識部を含み、テザーと、車両の状態を示す状態情報を生成する状態情報生成部と、前記テザーの一端と接続され、前記テザーの張力を調節する車載張力調節器と、前記テザーの他端と接続され、車両外部の作業者によって保持される外部操作器と、前記状態情報に対応する張力変動のための張力調節信号を生成して、前記車載張力調節器に与える信号変換器とが備えられている。この構成では、特殊認識部によって認識されやすい認識支援物が人物に付与されているので、進入してきた人物とカメラとの間に撮影を妨害するような樹木があったしても、そのような妨害物の隙間から少なくとも認識支援物の一部が撮影画像に写り込んでいる限り、当該人物の認識が可能となる。また、外部操作器を手にする作業者に、テザーの張力変化を通じて、車両状態や車両で生成された情報の伝達が可能となる。車両の状態には、車両の速度や傾斜角などが含まれ、車両で生成された情報には、この車両に装備されている人物検知システムによる人物検知情報が含まれる。
【0016】
さらに好適な実施形態では、前記外部操作器には、前記テザーの張力を調節する外部張力調節器が備えられ、前記信号変換器は、前記外部張力調節器による前記テザーの張力変動を車両制御信号に変換する。これにより、この無人自走式車両から離れて歩いている作業者が、テザーを通じて車両停止や車両操舵など車両制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】人物検知システムを装備した走行車両である作業車が果樹園を走行する様子を示す模式図である。
【
図4】人物検知システムを含む作業車の制御系を示す機能ブロック図である。
【
図5】人物検知システムにおけるデータの流れを説明する模式図である。
【
図6】別実施形態での人物検知システムを含む作業車の制御系を示す機能ブロック図である。
【
図7】別実施形態での人物検知システムにおけるデータの流れを説明する模式図である。
【
図8】テザーを用いた作業者と作業車との間の情報伝達を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明に係る人物検知システムを装備した車両の実施形態として、農場や果樹園や森林等で走行する自走式の作業車を取り上げる。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図2と
図3とに示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。また、
図3に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、
図2に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0019】
図1に示すように、この作業車1は、農場や果樹園や森林等で、周辺監視、草刈り、薬剤散布、荷物搬送などの作業を行うべく走行する。
【0020】
〔作業車の全体構成〕
図2及び
図3に示すように、本実施形態における作業車1は、車体10と、左右の前脚装置2と、左右の後脚装置3と、を備えている。車体10は、箱状の外形を有している。前脚装置2は、車体10の前端部における下端部から前下方へ延びる状態で設けられている。後脚装置3は、車体10の後端部における下端部から後下方へ延びる状態で設けられている。前脚装置2は、車体10の前部を支持している。また、後脚装置3は、車体10の後部を支持している。
【0021】
図2及び
図3では、車体10の上面部の前端には、車両前方の周辺領域を撮影するカメラ7が設けられている。もちろん、車両の全周囲を撮影領域とする場合には、さらに、車体10の上面部の左部、右部、後端にカメラ7が設けられる。
【0022】
前脚装置2は、前アーム21、前車輪22、前モータ23を有している。前アーム21は、車体10の前端部における下端部から前下方へ延びる長尺の部材である。前車輪22及び前モータ23は、前アーム21の下端部に設けられている。即ち、前車輪22及び前モータ23は、前脚装置2の下部に設けられている。なお、本実施形態において、前モータ23は、油圧モータである。
【0023】
前車輪22は、前アーム21よりも車体左右方向内側に位置している。また、前モータ23は、前アーム21よりも車体左右方向外側に位置している。そして、前モータ23の駆動力が前車輪22に伝達されることにより、前車輪22が駆動する。
【0024】
後脚装置3は、後アーム31、後車輪32、後モータ33を有している。後アーム31は、車体10の後端部における下端部から後下方へ延びる長尺の部材である。後車輪32及び後モータ33は、後アーム31の下端部に設けられている。即ち、後車輪32及び後モータ33は、後脚装置3の下部に設けられている。なお、本実施形態において、後モータ33は、油圧モータである。
【0025】
後車輪32は、後アーム31よりも車体左右方向内側に位置している。また、後モータ33は、後アーム31よりも車体左右方向外側に位置している。そして、後モータ33の駆動力が後車輪32に伝達されることにより、後車輪32が駆動する。
【0026】
図2及び
図3に示すように、前アーム21の上端部は、車体10に接続している。即ち、前脚装置2の上部は、車体10に接続している。前アーム21は、機体左右方向に沿う第1軸芯P1周りに、車体10に対して揺動可能である。また、前車輪22及び前モータ23は、前アーム21と一体的に、第1軸芯P1周りに揺動する。
【0027】
後アーム31の上端部は、車体10に接続している。即ち、後脚装置3の上部は、車体10に接続している。後アーム31は、機体左右方向に沿う第2軸芯P2周りに、車体10に対して揺動可能である。また、後車輪32及び後モータ33は、後アーム31と一体的に、第2軸芯P2周りに揺動する。
【0028】
また、本実施形態において、前モータ23及び後モータ33は、何れも、正転駆動と逆転駆動とが可能である。前モータ23及び後モータ33が正転駆動することにより、作業車1は前進走行する。前モータ23及び後モータ33が逆転駆動することにより、作業車1は後進走行する。また、前モータ23及び後モータ33の駆動が停止することにより、作業車1は停車する。
【0029】
〔制御系に関する構成〕
図4は、本発明に関係する制御機能部を示す制御機能ブロック図である。この制御系の中核要素である制御ユニット6は、電子回路及びコンピュータシステムから構成されており、入力処理部6Aと出力処理部6Bとを備えている。入力処理部6Aは、作業車1の各部に配置されたセンサやスイッチなどからなる走行状態検出センサ群41や、車体10の姿勢を検知する姿勢検出センサ群42などから入力される信号を処理して、制御ユニット6の各機能部に転送する。出力処理部6Bは、制御ユニット6の各機能部で生成された信号を処理して、走行制御部6Cや報知デバイス44に出力する。
図5には、この制御系におけるデータの流れが示されている。
【0030】
制御ユニット6には、人物認識ユニット5、補助認識部5A、検知情報出力部61、走行指令生成部62が含まれている。
【0031】
人物認識ユニット5は、標準的な人物認識を行う標準認識部51と、以下に述べる特殊な人物認識を行う特殊認識部52とを備え、カメラ7による撮影画像から人物を認識する。標準認識部51は、顔認証などで広く流用されている機械学習されたニューラルネットワーク認識機能を有しており、カメラ7から取得した撮影画像から人物検知を行う。特殊認識部52は、標準認識部51では困難である、樹木の幹、枝、葉、果実などによって部分的に隠された人物を良好に認識するために、予め人物に付与されている認識支援物4を人物認識の対象として、カメラ7による撮影画像から人物を認識する。
【0032】
認識対象となる人物に付与する認識支援物4として、人物が着用する特定模様を有する衣服、1つ以上の発光体、1つ以上の反射体などが用いられる。特定模様としては、黄色と黒色の市松模様や果樹の色の補色からなる模様などが採用される。発光体としては、LEDが用いられる。反射体としては、大きな乱反射率を有する反射シールや反射テープなどが用いられる。認識支援物4としての反射シールや反射テープは、衣服等に張り付けることができる。バッテリが必要なLEDは、複数のLEDとバッテリを含む給電回路とを縫い付けたベストや帯が、認識支援物4であり、人物に着用される。
【0033】
標準認識部51は、認識支援物4を認識対象とせずに撮影画像から人物を認識するが、特殊認識部52は、認識支援物4を認識対象としており、この認識支援物4を撮影画像から認識することにより、結果的に撮影画像から人物を認識するように構成されている。一般的には、特殊認識部52の方が標準認識部51より認識度は高くなるが、樹木の幹や枝などから顔だけが出ているような状況では、標準認識部51のほうが標準認識部51より認識度は高くなる。標準認識部51と特殊認識部52の両方が人物認識した場合にどちらの認識結果を採用するは、予め設定可能である。もちろん、両方の人物認識を人物認識ユニットの最終認識結果として出力してもよい。特殊認識部52と標準認識部51との認識結果に信頼度が付与されている場合は、信頼度の高い認識結果を採用してもよい。
【0034】
認識管理部53は、特殊認識部52と標準認識部51との認識結果から、人物認識ユニット5の認識結果としての最終認識結果を選択する機能を有する。検知情報出力部61は、人物認識ユニット5からの最終認識結果に基づいて人物検知情報を出力する。
【0035】
この実施形態では、補助認識部5Aがさらに備えられている。この補助認識部5Aは、人物から送られてくる認識用信号に基づいて人物の存在を認識し、人物存在情報を出力する。ここでの、認識用信号は、補助認識部5Aから送信された信号(探索信号)が人物によって反射された反射信号である。
【0036】
補助認識部5Aは、方位/距離算出部55と、信号発生装置として機能する内部信号発生装置56とを有し、内部信号発生装置56には送信部56aと受信部56bとが設けられている。具体的には、内部信号発生装置56によって取り扱われる信号は、送信部56aによって送信され、受信部56bによって受信される、音波信号または電波信号である。電波信号としては、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)信号やUWB(Ultra Wide Band)信号、などが挙げられる。方位/距離算出部55は、音波信号または電波信号の信号伝播時間に基づいて、前記人物と前記補助認識部との間の距離を算出する機能を有する。さらに、受信部56bは、ダイバーシティ技術を備えており、認識用信号としての音波信号または電波信号に対する受信指向性がそれぞれ異なる複数のアンテナを備えている。これにより、方位/距離算出部55は、受信部56bの各アンテナの受信強度に基づいて、認識された人物に対する検知方位(人物存在方向)を算出する機能も有する。
【0037】
方位/距離算出部55によって算出された認識人物の検知方位及び距離は、人物存在情報として人物認識ユニット5に送られる。人物認識ユニット5は、受け取った人物存在情報を、撮影画像における人物認識のための認識対象領域を絞り込むために利用する。具体的には、認識管理部53は、認識人物の検知方位及び距離(検知方位だけでもよい)に基づいて撮影画像における認識対象領域を絞り込み、絞り込まれた認識対象領域以外での標準認識部51や特殊認識部52による人物認識結果は無視するか、その信頼度を低下させる。
【0038】
人物認識ユニット5からの最終認識結果に基づいて、検知情報出力部61で生成された人物検知情報の出力先は、人物検知情報の種類によって異なる。人物検知情報が警告データであれば、出力処理部6Bを介して、ブザーやスピーカなどの報知デバイス44に送られる。警告音は、ブザー音や合成音声である。人物検知情報が人物検知メッセージであれば、外部通信部63を通じて、作業車1から離れている作業者が携帯する携帯通信端末200に送られる。もちろん、警告データは、携帯通信端末200に送られてもよい。
【0039】
さらに、検知された人物が作業車1の進行方向に位置している場合、作業車1は停車または減速するために、検知情報出力部61は、そのような走行制御を要求する緊急指令を走行指令生成部62に送る。走行指令生成部62は、緊急指令に応答して、作業車1の停車や減速を命じる走行指令を生成し、走行制御部6Cに送る。走行制御部6Cは、走行指令に基づいて、出力処理部6Bを通じて、車両走行機器群7Aを制御する。
【0040】
走行制御部6Cは、走行指令に基づいて、左前モータ23a、右前モータ23b、左後モータ33a、右後モータ33bをそれぞれ独立して制御することができる。左前モータ23a及び左後モータ33aの速度と、右前モータ23b及び右後モータ33bの速度とに、差を与えることにより、作業車1の操舵を行うことができる。もちろん、前車輪22や後車輪32の操舵輪として構成することも可能である。
【0041】
この作業車1は、予め設定された目標走行経路と自車位置と走行状態検出センサ群41からの信号とに基づいて自動走行する自動走行モードと、リモコン8を用いた遠隔手動走行モードとを有する。自動走行モードでは、走行指令生成部62は、自動走行プログラムに基づいて、走行指令を生成して、走行制御部6Cに与える。遠隔手動走行モードでは、リモコン通信部80で受信したリモコン操作信号に基づいて、走行指令を生成して、走行制御部6Cに与える。
【0042】
次に、
図6と
図7とを用いて、人物検知システムの別実施形態を説明する。
図6は、別実施形態での人物検知システムを含む作業車1の制御系を示す機能ブロック図である。
図6による人物検知システムにおけるデータの流れを説明する模式図である。この実施形態では、補助認識部5Aが必要とする認識用信号を発する信号発生装置は外部信号発生装置57であり、人物に携帯されている。作業車1に備えられている内部信号発生装置56では、送信部56aが省略され、受信部56bだけが備えられ、認識対象となる人物に携帯された外部信号発生装置57では、受信部56bに受信される認識用信号を送信する送信部57aが備えられている。外部信号発生装置57は、専用の認識用信号発生器でもよいし、携帯電話でもよい。携帯電話を外部信号発生装置57として利用する場合には、携帯電話に認識用信号発生用アプリがインストールされる。
【0043】
人物に携帯されている外部信号発生装置57の送信部57aから、所定の繰り返し周波数で送信されている認識用信号は、補助認識部5Aの受信部56bに受信される。受信部56bによって認識用信号が受信された後は、補助認識部5A及び人物認識ユニット5において、先の実施形態と同様な処理が行われる。
【0044】
図8は、作業者と、この作業車1の動きを監視している作業者との間の情報伝達がテザー装置9を用いて行われるシステムを模式的に示している。テザー装置9を介して作業者に伝達する情報を生成するため、作業車1には、車両状態を示す状態情報を生成する状態情報生成部58が備えられている。この状態情報には、車体10の傾斜、車速、燃料残量(バッテリ残量)、人物認識ユニット5による人物検知、などが含まれている。
【0045】
テザー装置9は、テザー90と車載張力調節器91と外部操作器93とから構成されている。車載張力調節器91は、テザー90の一端と接続されている。外部操作器93は、作業車1から離れている作業者の手に握られており、テザー90の他端と接続されている。車載張力調節器91には、信号変換器92が備えられている。この信号変換器92は、状態情報生成部58によって生成された状態情報に対応するテザー90の張力変動を作り出すための張力調節信号を生成する。車載張力調節器91は、張力調節信号に基づき、非図示のアクチュエータを用いて、テザー90の張力を調節する。調節された張力変動は、外部操作器93に伝達される。外部操作器93は、触覚アクチュエータとしての機能を有しており、伝達され張力変動に応じた触感を作業者に与える。
【0046】
さらに、この外部操作器93には、作業者の操作に基づいて、テザー90の張力を調節する外部張力調節器94が備えられている。外部張力調節器94によるテザー90の張力変動は、車載張力調節器91に伝達され、信号変換器92を通じて車両制御信号に変換され、作業車1の制御系に送られる。これにより、作業車1から離れている作業者は、作業車1の停車や減速、さらには操舵を行うことができる。
【0047】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態において、人物検知システムが装備された走行車両として、自走式の作業車1を例示したが、特別な作業を行わずに監視だけを行う車両であってもよい。また、自走式でなく、作業者によって運転される自動車、作業者によって移動される人為移動車であってもよい。さらには、この人物検知システムは、人に携帯される機器に装備されてもよい。
【0048】
(2)カメラ7の撮影視野が周辺領域の監視に不十分な場合は、撮影視野が異なる複数のカメラ7が備えられるか、1台のカメラ7の撮影方向を変更するカメラ雲台が備えられる。この場合、カメラ7は、所定タイミングで、異なる撮影視野を有する複数の撮影画像を撮影する。
【0049】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、カメラを用いた人物検知システム、及びその人物検知システムを装備した走行車両に適用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 :作業車
2 :前脚装置
3 :後脚装置
4 :認識支援物
5 :人物認識ユニット
5A :補助認識部
6 :制御ユニット
6A :入力処理部
6B :出力処理部
6C :走行制御部
7 :カメラ
7A :車両走行機器群
8 :リモコン
9 :テザー装置
10 :車体
21 :前アーム
22 :前車輪
23 :前モータ
23a :左前モータ
23b :右前モータ
31 :後アーム
32 :後車輪
33 :後モータ
33a :左後モータ
33b :右後モータ
41 :走行状態検出センサ群
42 :姿勢検出センサ群
44 :報知デバイス
51 :標準認識部
52 :特殊認識部
53 :認識管理部
55 :距離算出部
56 :内部信号発生装置
56a :送信部
56b :受信部
57 :外部信号発生装置
57a :送信部
58 :状態情報生成部
61 :検知情報出力部
62 :走行指令生成部
63 :外部通信部
80 :リモコン通信部
90 :テザー
91 :車載張力調節器
92 :信号変換器
93 :外部操作器
94 :外部張力調節器
200 :携帯通信端末
P1 :第1軸芯
P2 :第2軸芯