(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】臭気抑制のための組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240122BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240122BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240122BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C08L23/00
C08J5/18 CES
C08K3/22
C08L23/26
(21)【出願番号】P 2020529496
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019048126
(87)【国際公開番号】W WO2020046808
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-12
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】クラソフスキー、アルカジー エル.
(72)【発明者】
【氏名】スン、クフ
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ケレン
(72)【発明者】
【氏名】マテウッチ、スコット ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、ホセ エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】ボーンカンプ、ジェフリー イー.
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-246053(JP,A)
【文献】特開2017-025190(JP,A)
【文献】国際公開第2006/011926(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0164467(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
C08J 5/18
C08K 3/22
C08L 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(A)85重量%~99.5重量%のオレフィン系
ポリマーと、
(B)15重量%~0.5重量%の臭気抑制剤であって、
(i)アイオノマー、
(ii)酸化亜鉛の粒子、
(iii)酸化銅の粒子、のブレンドを含む、臭気抑制剤と、を含み、
前記組成物が、ASTM D5504-12に準拠して測定された場合、45%超のメチルメルカプタン臭気抑制値を有する、組成物。
【請求項2】
前記オレフィン系ポリマーが、エチレン系ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エチレン系ポリマーが、0.5g/10分~15g/10分のメルトインデックス(I
2)および0.910g/cc~0.930g/ccの密度を有するエチレン/C
4~C
8α-オレフィンコポリマーである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アイオノマーが金属アイオノマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アイオノマーが亜鉛アイオノマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アイオノマーが、エチレン/メチルメタクリル酸、エチレン/ビニルアクリル酸
、エチレン/メタクリル酸、エチレン/n-ブチルアクリル酸および
エチレン/アクリル酸の群から選択されるポリマーの亜鉛塩である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸化亜鉛の粒子が、100nm~3000nmのD50粒子サイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記酸化銅の粒子が、酸化銅(I)および酸化銅(II)の群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記酸化銅の粒子が、100nm~3000nmのD50粒子サイズを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記アイオノマー(Bi)と、前記酸化亜鉛(Bii)と、前記酸化銅(Biii)との間の重量パーセント比が、150:100:1~2.9:2.5:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
組成物を含むフィルムであって、
前記組成物が、
(A)85重量%~99.5重量%のオレフィン系化合物と、
(B)15重量%~0.5重量%の臭気抑制剤であって、
(i)アイオノマー、
(ii)酸化亜鉛の粒子、
(iii)酸化銅の粒子、のブレンドを含む、臭気抑制剤と、を含み、
前記組成物が、ASTM D5504-12に準拠して測定された場合、45%超のメチルメルカプタン臭気抑制値を有する、フィルム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
オレフィン系ポリマーから作製された物品の多くの使用は、煩わしい悪臭に遭遇する。不愉快な臭気の共通源には、硫化水素(H2S)放出組成物およびメルカプタン含有組成物が含まれる。オレフィン系ポリマー物品から臭気を除去するか、または別の方法で臭気を抑制できることが望ましい多くの用途が存在する。そのため、多くの産業が、H2Sおよびメルカプタンのような硫黄ベースの付臭物質を気相から除去できる材料を求めている。一般的な例は、プラスチック製のゴミ袋ライナー(すなわち、オレフィン系ポリマー物品)の臭気を除去することができる能力である。
【0002】
酸化亜鉛(ZnO)の粒子などの金属酸化物、特に亜鉛塩は、H2Sおよびメルカプタンのような多くの臭気発生分子を摂取することが知られている。他の全ての要因が等しい場合、ZnO濃度および臭気抑制は直接関連していることが既知であり、すなわち、ZnO濃度が特定のオレフィン系ポリマー物品で増加するにつれて、臭気抑制の効果も増加する。
【0003】
金属酸化物(特にZnO)が増加すると臭気抑制が増大するが、オレフィン系ポリマー物品中に効果的に組み込むことができるZnOの量には限界が存在する。例えば、インフレーションフィルムゴミライナーの製造では、ZnO粒子の高充填により押出ダイのリップの蓄積が増加し、それによってフィルムの欠陥が発生する。また、ZnO粒子の高充填はヘイズを増加させ、オレフィン系ポリマーフィルムの透明性の劣化および/またはフィルムの色の劣化をもたらす。ZnO粒子の高充填は、衝撃強度およびフィルム引裂強度などの機械的特性にも悪影響を与える。それにより、加工パラメータおよび最終用途の機械的要件により、オレフィン系ポリマー組成物へのZnO粒子の充填に実際的な制限が課せられる。
【0004】
それ故、最終使用用途の加工性、所望の光学特性、および所望の機械的特性を維持するために、好適な金属および/または亜鉛添加量を同時に担持しながら、臭気抑制が改善されたオレフィン系ポリマー組成物の必要性が存在している。そのようなオレフィン系ポリマー組成物から作製された臭気抑制物品に対する必要性がさらに存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、組成物を提供する。一実施形態では、臭気制御用の組成物が提供され、(A)85重量%~99.5重量%のオレフィン系化合物と、(B)15重量%~0.5重量%の臭気抑制剤とを含む。臭気抑制剤は、(i)アイオノマー、(ii)酸化亜鉛の粒子、および(iii)酸化銅の粒子のブレンドを含む。組成物は、ASTM D5504-12に準拠して測定した場合、45%超のメチルメルカプタン臭気抑制値を有する。
【0006】
定義
元素周期表への任意の参照は、CRC Press,Inc.によって1990-1991に発行されたときのものである。この表における元素の族への参照は、族の番号付けの新しい表記法による。
【0007】
米国特許実務を目的として、任意の参照される特許、特許出願、または刊行物の内容は、特に定義の開示(本開示に具体的に提供される任意の定義に矛盾しない範囲で)、およびこの技術分野における一般的知識に関して、参照によりこれらの全体が組み込まれる(または、その同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0008】
本明細書に開示されている数値範囲は、下限値および上限値を含む、下限値から上限値のすべての値を含む。明示的な値(例えば、1または2、または3~5、または6、または7)を含有する範囲の場合、任意の2つの明示的な値の間のあらゆる部分範囲(例えば、上記の1~7の範囲には、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などのサブ範囲が含まれる)が含まれる。
【0009】
文脈から暗黙のうちに、または当該技術分野において慣習的にそうでないと述べられていない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づいており、全てのテスト方法は本開示の出願日現在のものである。
【0010】
「凝集物」とは、凝集しているか、そうでなければ一緒になって単一の塊を形成している複数の個々の固体微粒子である。
【0011】
本明細書で使用される「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーのブレンドである。そのようなブレンドは、混和性(分子レベルで相分離しない)であってもなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離してもしなくてもよい。このようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当該技術分野において既知の他の方法から決定される、1つ以上のドメイン構成を含んでいても、いなくてもよい。
【0012】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0013】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているかどうかに関わらず、いかなる追加の構成要素、ステップ、または手順の存在も除外することを意図しない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて主張されるすべての組成物は、そうでないと述べられていない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「本質的にからなる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、続く任意の記述の範囲から任意の他の成分、ステップ、または手順を除く。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていない任意の成分、ステップ、または手順を除く。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用は、複数形の使用を含み、その逆も同じである。
【0014】
「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント(重量%)超の重合エチレンモノマーを含有し、任意選択で少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。エチレン系ポリマーには、エチレンホモポリマー、およびエチレンコポリマー(エチレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が含まれる。用語「エチレン系ポリマー」および「ポリエチレン」は、互換的に使用され得る。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の非限定的な例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状ポリエチレンが挙げられる。直鎖状ポリエチレンの非限定的な例には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)とも呼ばれる)、実質的に直鎖状または直鎖状のプラストマー/エラストマー、および高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれる。概して、ポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒などの不均一触媒システム、4族遷移金属およびメタロセン、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロ原子アリールオキシエーテル、ホスフィンイミンなどの配位子構造を含む均一触媒システムを用いて、気相流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器で製造することができる。不均一触媒および/または均一触媒の組み合わせもまた、単一反応器または二重反応器構成のいずれにおいて使用され得る。
【0015】
「エチレンプラストマー/エラストマー」は、エチレンから誘導される単位および少なくとも1つのC3~C10α-オレフィンコモノマーから誘導される単位を含む均一な短鎖分岐分布を含有する、実質的に直鎖状または直鎖状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。エチレンプラストマー/エラストマーは、0.870g/cc~0.917g/ccの密度を有する。エチレンプラストマー/エラストマーの非限定的な例には、AFFINITY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)、EXACT(商標)プラストマー(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、Tafmer(商標)(Mitsuiから入手可能)、Nexlene(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)、ならびにLucene(商標)(LG Chem Ltd.から入手可能)が含まれる。
【0016】
「高密度ポリエチレン」(または「HDPE」)は、エチレンホモポリマー、または少なくとも1つのC4-C10α-オレフィンコモノマーもしくはC4-C8α-オレフィンコモノマーを有するエチレン/α-オレフィンコポリマーであり、0.940g/cc、もしくは0.945g/cc、もしくは0.950g/cc、0.953g/cc~0.955g/cc、もしくは0.960g/cc、もしくは0.965g/cc、もしくは0.970g/cc、もしくは0.975g/cc、もしくは0.980g/ccの密度を有する。HDPEは、単峰性コポリマーまたは多峰性コポリマーであり得る。「単峰性エチレンコポリマー」は、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において1つの明確なピークを有するエチレン/C4~C10α-オレフィンコポリマーである。「多峰性エチレンコポリマー」は、分子量分布を示すGPC中に少なくとも2つの異なるピークを有するエチレン/C4~C10α-オレフィンコポリマーである。多峰性には、2つのピークを有するコポリマー(二峰性)、ならびに3つ以上のピークを有するコポリマーが含まれる。HDPEの非限定的な例には、DOW(商標)高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE(商標)強化ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、CONTINUUM(商標)二峰性ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、LUPOLEN(商標)(Lyondell Basellから入手可能)、ならびにBorealis、Ineos、およびExxonMobilからのHDPE製品が含まれる。
【0017】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーである。この総称は、2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられるコポリマー、および3つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
【0018】
「直鎖状低密度ポリエチレン(または「LLDPE」)」は、エチレンから誘導される単位および少なくとも1つのC3~C10α-オレフィン、またはC4~C8α-オレフィンコモノマーから誘導される単位を含む不均一な短鎖分岐分布を含有する、直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、たとえあったとしても少しの長鎖分岐を特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc~0.940g/cc未満の密度を有する。LLDPEの非限定的な例には、TUFLIN(商標)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、およびMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)が含まれる。
【0019】
「低密度ポリエチレン」(または「LDPE」)は、エチレンホモポリマー、または0.915g/cc~0.940g/cc未満の密度を有し、かつ広いMWDを含有する長鎖分岐を含む少なくとも1つのC3~C10α-オレフィンまたはC4~C8α-オレフィンを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーからなる。LDPEは、典型的には、高圧フリーラジカル重合(フリーラジカル開始剤を有する管状反応器またはオートクレーブ)によって生産される。LDPEの非限定的な例には、MarFlex(商標)(Chevron Phillips)、LUPOLEN(商標)(LyondellBasell)、ならびにBorealis、Ineos、ExxonMobilなどからのLDPE製品が含まれる。
【0020】
「多成分エチレン系コポリマー」(または「EPE」)は、エチレンから誘導される単位、および特許文献米国特許第6,111,023号、同第5,677,383号、および同第6,984,695号などに記載の、少なくとも1つのC3~C10α-オレフィン、またはC4~C8α-オレフィンコモノマーから誘導される単位を含む。EPE樹脂は、0.905g/cc~0.962g/ccの密度を有する。EPE樹脂の非限定的な例には、ELITE(商標)強化ポリエチレン(The Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE AT(商標)先端技術樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、SURPASS(商標)ポリエチレン(PE)樹脂(Nova Chemicalsから入手可能)、およびSMART(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)が含まれる。
【0021】
「オレフィン系ポリマー」または「ポリオレフィン」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合オレフィンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択的に少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。オレフィン系ポリマーの非限定的な例には、エチレン系ポリマーまたはプロピレン系ポリマーが含まれる。
【0022】
「ポリマー」は、同一の種類または異なる種類であるかに関わらず、重合形態でポリマーを構成する複数のおよび/もしくは繰り返しの「単位」または「mer単位」を提供するモノマーを重合することによって調製される化合物である。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すために通常用いられるホモポリマーという用語、および少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために通常用いられるコポリマーという用語を包含する。それはまた、例えば、ランダム、ブロックなどのすべての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれエチレンまたはプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製された上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマーまたはモノマータイプに「基づいて」、特定のモノマー含有量を「含有する」などと言及されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残留物を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意する。一般的に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づいていると言及される。
【0023】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合プロピレンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択で、少なくとも1つのコモノマーを含み得る。プロピレン系ポリマーには、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンコポリマー(プロピレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)が含まれる。「プロピレン系ポリマー」および「ポリプロピレン」という用語は、互換的に使用され得る。好適なプロピレンコポリマーの非限定的な例には、プロピレンインパクトコポリマーおよびプロピレンランダムコポリマーが含まれる。
【0024】
「超低密度(Ultra low density)ポリエチレン」(または「ULDPE」)および「超低密度(very low density)ポリエチレン」(または「VLDPE」)の各々は、エチレンに由来する単位と少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位とを含む、不均質な短鎖分岐分布を含有する直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。ULDPEおよびVLDPEはそれぞれ、0.885g/cc~0.915g/ccの密度を有する。ULDPEおよびVLDPEの非限定的な例には、ATTANE(商標)超低密度(ultra low density)ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)およびFLEXOMER(商標)超低密度(very low density)ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)が含まれる。
【0025】
試験方法
D10、D50、およびD90の粒子サイズは、Coulter Corporationから入手可能なCoulter LS230レーザー光散乱粒径測定器を使用して測定する。D10粒子サイズは、粉末の質量の10%がこの値未満の直径を有する粒子からなる粒径である。D50粒子サイズは、粉末の質量の50%がこの値未満の直径を有する粒子からなり、粉末の質量の50%が、その値より大きい直径を有する粒子からなる粒径である。D90粒子サイズは、粉末の質量の90%がこの値未満の直径を有する粒子からなる粒径である。平均体積平均粒子サイズは、Coulter Corporationから入手可能なCoulter LS230レーザー光散乱粒径測定器を使用して測定する。粒子サイズ分布を、等式Aに従って計算する。
【数1】
【0026】
ダーツ衝撃強度は、ASTM D1709に従って測定され、結果はグラム(g)で報告される。
【0027】
密度は、ASTM D792の方法Bに従って測定する。結果は、1立方センチメートルあたりのグラム(g/cc)で記録される。
【0028】
示差走査熱量測定(DSC)。示差走査熱量測定(DSC)を使用して、広範囲の温度にわたるポリマーの溶融、結晶化、およびガラス転移挙動を測定することができる。例えば、RCS(冷蔵冷却システム)およびオートサンプラーを備えるTA Instruments Q1000 DSCを使用して、この分析を実施する。試験中、50ml/分の窒素パージガス流量を使用する。各試料を、約175℃で融解プレスして薄膜にし、次いで融解した試料を室温(約25℃)に空冷する。冷却されたポリマーから3~10mg、直径6mmの試験片を抜き取り、重量を測定し、軽い(約50mg)アルミニウムパンに入れ、圧着して閉じる。次いで、その熱的特性を決定するために分析を行う。
【0029】
試料の熱挙動は、試料温度を昇降して熱流量対温度プロファイルを作成することにより決定する。まず、試料を180℃に急速に加熱し、3分間等温に保持して熱履歴を除去する。次に、試料を10℃/分の冷却速度で-40℃に冷却し、3分間、-40℃の等温に保持する。次いで、試料を10℃/分の加熱速度で180℃に加熱する(これが「第2の加熱」上昇である)。冷却曲線および第2の加熱曲線を記録する。結晶化の開始から-20℃までのベースラインエンドポイントを設定することによって、冷却曲線を分析する。-20℃から融解終了までのベースラインエンドポイントを設定することによって、加熱曲線を分析する。決定した値は、外挿された融解の開始Tmであり、および外挿された結晶化の開始Tcである。(1グラムあたりのジュール単位の)融解熱(Hf)、および以下の等式を使用して計算されたポリエチレン試料の結晶化度%:結晶化度%=((Hf)/292J/g)x100。ガラス転移温度Tgは、Bernhard Wunderlich,The Basis of Thermal Analysis,in Thermal Characterization of Polymeric Materials 92,278-279(Edith A.Turi ed.,2d ed.1997)に記載のように、試料の半分で液体熱容量が増加したDSC加熱曲線から決定する。ガラス転移領域の下および上からベースラインを引き、Tg領域を通して外挿する。試料の熱容量がこれらのベースラインの中間となる温度が、Tgである。
【0030】
エルメンドルフ引裂(または引裂)は、ASTM D1922-15、機械方向(MD)に従って測定され、結果はグラム力(gf)で報告される。
【0031】
ASTM D1238(230℃/2.16kg)に従ってg/10分でのメルトフローレート(MFR)を測定する。
【0032】
g/10分でのメルトインデックス(MI)(I2)は、ASTM D1238(190℃/2.16kg)に従って測定される。
【0033】
臭気抑制/臭気抑制値。
臭気抑制は、揮発性の硫黄含有化合物の量を中和するか、または別の方法で低減する組成物の能力である。本開示において、メチルメルカプタンの臭気抑制は、ASTM D5504-12に準拠して、Agilent Sulfur化学発光検出器(GC-SCD)を備えたガスクロマトグラフィーで測定される。DOWLEX 2085G、エチレン/オクテンLLDPE、から形成されたフィルムをTedlar(登録商標)バッグ(ポリフッ化ビニル)に入れることにより、対照試料を調製する。続いて、対照用のTedlar(登録商標)バッグに、900mLのヘリウムガスおよび既知量のメチルメルカプタンを充填し、Tedlar(登録商標)バッグを閉じる。試験試料は、それぞれの試験組成物から形成されたフィルム、各試験フィルムをそれぞれのTedlar(登録商標)バッグに入れることにより調製される。続いて、各Tedlar(登録商標)バッグに、900mLのヘリウムガスおよび既知量のメチルメルカプタンを充填し、Tedlar(登録商標)バッグを閉じる。臭気抑制能力を評価するために、所定の時間間隔で各バッグから試料をGC-SCD上に注入する。
【0034】
参照試料および試験試料を2日後に分析した。参照試料は、各試験試料のメチルメルカプタン濃度を計算するための較正基準として使用した。
【0035】
A.試料の調製
5ppmvのメチルメルカプタンを含む対照試料および各試験試料を、SKC 1L試料バッグ(SKCTedlar(登録商標)試料バッグ、1リットル、Cat No.232-01)中で調製した。フィルムのない参照試料は、較正基準としてTedlar(登録商標)バッグ中で調製した。
1.1.0gのフィルムを細片(約1cm×30cm)に切断する。
2.試料バッグからバルブを外し、先端が綿のアプリケーターのハンドルでバルブ開口部を介してフィルム細片をバッグに挿入し、バルブを試料バッグに戻し、バルブを締めてバッグを密閉する前に、バッグから空気を絞り出す。
3.バッグに0.90Lのヘリウムガス(AirGas、Ultra Grade Helium)を充填する。
4.気密ガラスシリンジを使用して、50mLの100ppmvメチルメルカプタンをバッグに注入する。
【0036】
臭気抑制値試験は、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、およびブチルメルカプタンを含む他の付臭物質に対しても実行できる。
【0037】
B.GC-SCDの条件
1 ガスクロマトグラフ:スプリット/スプリットレス注入ポートを備えたAgilent Model 7890、Agilent Technologies、2850 Centerville Road、Wilmington、DE 19808から入手可能。
2.検出器:Agilent化学発光硫黄(SCD)、Model G6644A。
3.クロマトグラフィーデータシステム:Agilent OpenLABソフトウェア。
4.カラム:Agilent J&W DB-1 30m×0.32mm ID、5μmフィルム厚。
5.キャリアガス:水素、定流量モード、2.0mL/分。
6.注入口:スプリット、温度:250℃、スプリット比:100:1。
7.注入体積:Valco Six Port Valveによる500μL、ループサイズ:500μL。
8.オーブン温度:1分間30℃保持、15℃/分~140℃、1分間保持。
9.SCD検出器の条件:
温度250℃
水素流量38.3mL/分
酸化剤流量:59.9sccm。
圧力:400トール。
臭気抑制値(OSV)は、次の式で計算されるメチルメルカプタンの除去%である。
【数2】
ピーク面積はGC-SCDの応答である。
【0038】
OSV計算の非限定的な例を示す。2日間における、参照試料のメチルメルカプタンのGC-SCDピーク面積は28240298である一方で、試験試料IE1のメチルメルカプタンのGC-SCDピーク面積は5667327である(単位はAgilent OpenLABソフトウェアのpA*sである)。試験試料IE1の臭気抑制値は、(((28240298-5667327)/28240298)*100=80である。OSVの式に示すように、メチルメルカプタンの濃度およびメチルメルカプタンのGC-SCDピーク面積の両方を使用してOSVを計算できる。
【0039】
多孔度および表面積。ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)多孔度および表面積分析は、Micromeriticsの加速表面積および圧入法機器(ASAP 2420)を用いて実施される。試料は、分析前に真空下で、105℃でガス抜きされる。
【0040】
ASAP 2420機器は、注入試料の静的(容量)測定法を採用しており、液体窒素温度で固体に物理的に吸着(物理吸着)することができる気体の量を測定する。多点BET測定のために、窒素吸収量を、予め選択された相対圧力点で、一定温度で測定する。相対圧力は、77ケルビン(K)の分析温度での窒素の蒸気圧に対して加えられた窒素の圧力の比である。多孔度の結果は、1グラムあたりの立方メートル、またはm3/gで報告される。表面積の結果は、1グラムあたりの平方メートル、またはm2/gで報告される。
【0041】
亜鉛/銅の全量組成物中に存在する亜鉛および/または銅の全量は、ASTM D6247に準拠して、X線蛍光分光法(XRS)を用いて測定される。結果は100万分率、またはppmで報告される。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示は、組成物を提供する。一実施形態では、臭気を抑制するための組成物が提供され、(A)85重量%~99.5重量%のオレフィン系ポリマーと、(B)15重量%~0.5重量%の臭気抑制剤とを含む。臭気抑制剤は、(Bi)アイオノマー、(Bii)酸化亜鉛の粒子、および(Biii)酸化銅の粒子からなるブレンドである。組成物は、ASTM D5504-12に準拠して測定した場合、45%超のメチルメルカプタン臭気抑制値を有する。
【0043】
A.オレフィン系ポリマー
本組成物は、オレフィン系ポリマーを含む。オレフィン系ポリマーは、プロピレン系ポリマーまたはエチレン系ポリマーであり得る。プロピレン系ポリマーの非限定的な例には、プロピレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、およびそれらの組み合わせが含まれる。一実施形態では、プロピレン系ポリマーは、プロピレン/α-オレフィンコポリマーである。好適なα‐オレフィンの非限定的な例には、C2およびC4~C20α-オレフィン、またはC4~C10α-オレフィン、またはC4~C8α-オレフィンが含まれる。代表的なα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンが挙げられる。
【0044】
一実施形態では、プロピレン/α‐オレフィンコポリマーは、プロピレン/エチレンコポリマーの重量に基づいて、プロピレン由来の単位を50重量%超、または51重量%、または55重量%、または60重量%~70重量%、または80重量%、または90重量%、または95重量%、またはプロピレン由来の単位を99重量%含有するプロピレン/エチレンコポリマーである。プロピレン/エチレンコポリマーは、プロピレン/エチレンコポリマーの重量に基づいて、エチレン由来の単位の逆数の量か、または50重量%未満、もしくは49重量%、もしくは45重量%、もしくは40重量%~30重量%、もしくは20重量%、もしくは10重量%、もしくは5重量%、もしくは1重量%のエチレン由来の単位を含む。
【0045】
一実施形態では、オレフィン系ポリマーは、エチレン系ポリマーである。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーまたはエチレン/α-オレフィンコポリマーであり得る。
【0046】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン/α-オレフィンコポリマーである。好適なα‐オレフィンの非限定的な例には、C3~C20α-オレフィン、またはC4~C10α-オレフィン、またはC4~C8α-オレフィンが含まれる。代表的なα-オレフィンには、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンが含まれる。
【0047】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンコポリマーは、エチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマーであるLLDPEである。LLDPEは、以下の特性のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
【0048】
(i)0.910g/cc~0.930g/cc、または0.915g/cc~0.926g/ccの密度、および/または
【0049】
(ii)0.5g/10分、または1.0g/10分、または2.0g/10分~3.0g/10分、または4.0g/10分、または5.0g/10分のメルトインデックス。
【0050】
B.臭気抑制剤
本組成物は臭気抑制剤を含む。臭気抑制剤は、(Bi)アイオノマー、(Bii)酸化亜鉛の粒子、および(Biii)酸化銅の粒子からなる。
【0051】
(Bi)アイオノマー
本組成物はアイオノマーを含む。本明細書で使用される「アイオノマー」は、イオン含有ポリマーである。「イオン」は、正または負のいずれかの電荷を有する原子である。アイオノマーは、過半数の重量パーセント(通常は85%~90%)の非イオン性(非極性)の繰り返しモノマー単位、および少数の重量パーセント(通常は10%~15%)のイオン性または極性(すなわち、正に帯電または負に帯電された)である繰り返しコモノマー単位を有する。イオン基の正電荷は、イオン基の負電荷を引き付け、イオン結合を作る。アイオノマー樹脂は、「可逆的架橋」挙動として知られている、すなわち、アイオノマーが加熱されると、ポリマー鎖の移動度が増加し、正電荷と負電荷が互いに引き離されるため、イオン結合が損なわれないままではいられない、という挙動を示す。
【0052】
アイオノマーが誘導されるモノマーおよびコモノマーの非限定的な例には、少なくとも1つのアルファ-オレフィンと、少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボン酸および/または無水物とのコポリマーが含まれる。好適なアルファ-オレフィンの非限定的な例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、および3-メチルブテンが含まれる。好適なカルボン酸および無水物の非限定的な例には、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、および無水マレイン酸が含まれる。
【0053】
一実施形態では、アイオノマーは、エチレンとメタクリル酸とのコポリマーである。
【0054】
一実施形態では、アイオノマーは、エチレンとアクリル酸とのコポリマーである。
【0055】
一実施形態では、アイオノマーは金属アイオノマーである。本明細書で使用される「金属アイオノマー」は、アルファ-オレフィンと、エチレン性不飽和カルボン酸および/または無水物とのコポリマーの金属塩をベースとするコポリマーを指す。金属アイオノマーは、金属イオンによって完全にまたは部分的に中和され得る。アイオノマーを中和するのに適した金属の非限定的な例には、アルカリ金属、すなわち、ナトリウム、リチウム、およびカリウムなどのカチオン、アルカリ土類金属、すなわちカルシウム、マグネシウムなどのカチオン、亜鉛などの遷移金属が含まれる。金属アイオノマーの非限定的な例は、Dow-DuPontから入手可能なエチレンおよびメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩であるSurlyn(登録商標)8660である。
【0056】
一実施形態では、金属アイオノマーは亜鉛アイオノマーである。本明細書で使用される「亜鉛アイオノマー」(または「ZnI/O」)という用語は、エチレンと、カルボン酸/または無水物を有するビニルコモノマーとのコポリマーの亜鉛塩をベースとするコポリマーを指す。酸基を有するビニルコモノマーを有する好適なコモノマーの非限定的な例には、メチル/メタクリル酸、ビニルアクリル酸、メタクリレート、n-ブチルアクリル酸、およびアクリル酸が含まれる。
【0057】
好適な亜鉛アイオノマーの非限定的な例にはエチレン/アクリル酸コモノマーの亜鉛塩、エチレン/メチル-メタクリル酸コポリマーの亜鉛塩、エチレン/ビニルアクリル酸コポリマーの亜鉛塩、エチレン/メタクリレートコポリマーの亜鉛塩、エチレン/n-ブチルアクリル酸コポリマーの亜鉛塩、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0058】
一実施形態では、亜鉛アイオノマーは、エチレン/アクリル酸コポリマーの亜鉛塩である。好適な亜鉛アイオノマーの非限定的な例には、Dow-DuPontから入手可能な、エチレンおよびメタクリル酸コポリマーの亜鉛塩であるSurlyn(登録商標)9150が含まれる。
【0059】
B(ii)酸化亜鉛の粒子
臭気抑制剤は、酸化亜鉛(または「ZnO」)の粒子を含む。ZnO粒子は、100nm~3000nmのD50粒子サイズ、1m2/g~10m2/g未満の表面積、および0.020m3/g未満の多孔度を有する。
【0060】
一実施形態では、ZnO粒子は、以下の特性(i)~(iii)のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
【0061】
(i)100nm、または200nm、または300nm、または400nm~500nm、または600nm、または700nm、または800nm、または900nm、または1000nm、または2000nm、または3000nmの粒子サイズD50、および/または
【0062】
(ii)1m2/g、または2m2/g、または3m2/g、または4m2/g~5m2/g、または6m2/g、または7m2/g、または8m2/g、または9m2/gの表面積、および/または
【0063】
(iii)0.005m3/g、または0.006m3/g、または0.008m3/g、または0.010m3/g~0.012m3/g、または0.013m3/g、または0.015m3、または0.020m3/g未満の多孔度。
【0064】
好適なZnO粒子の非限定的な例には、800HSA(酸化亜鉛、LLC)、ZnO微粉末(US Research Nanomaterials)、およびZoco102(Zochem、Inc.)が含まれる。
【0065】
(Biii)酸化銅の粒子
臭気抑制剤はまた、酸化銅の粒子を含む。酸化銅は、「Cu2O」(酸化銅I)もしくは「CuO」(酸化銅II)のいずれか、または両方の混合物であることができる。一実施形態では、酸化銅の粒子は、100nm~3000nmのD50粒子サイズ、1m2/g~10m2/g未満の表面積を有する。特定の理論に縛られることなく、酸化銅の粒子は、特に硫化水素とメルカプタンの硫黄捕捉剤として貢献すると考えられている。
【0066】
一実施形態では、酸化銅の粒子は、100nm、または200nm、または300nm、または400nm~500nm、または600nm、または700nm、または800nm、または900nm、または1000nm、または2000nm、または3000nmの粒子サイズD50を有する。好適な酸化銅の粒子の非限定的な例には、Reade Advanced Materialsから入手可能なCu2O 325メッシュ粉末およびCuO 325メッシュ粉末が含まれる。
【0067】
C.組成物
本組成物は、組成物の全重量に基づいて、(A)85重量%~99.5重量%のオレフィン系ポリマーと、(B)15重量%~0.5重量%の臭気抑制剤とを含む(以下、組成物1)。臭気抑制剤は、オレフィン系ポリマーマトリックス中に混合または別の方法でブレンドされ、(Bi)アイオノマー、(Bii)酸化亜鉛の粒子、および(Biii)酸化銅の粒子のブレンドである。組成物は、45%超の臭気抑制値を有する。一実施形態では、組成物は、46%、または49%、または50%、または60%、または70%~75%、または80%、または85%、または90%の臭気抑制値を有する。
【0068】
ZnI/O(Bi)は、成分(B)の全重量に基づいて、1~90重量%の量で成分(B)中に存在する。臭気抑制剤(B)の全重量に基づいて、ZnOのZnI/Oに対する比(以下、「ZnO対ZnI/O比」)は3:1~1:7である。ZnO対ZnI/O比は、3:1、または2:1、または1:1~1:2、または1:3、または1:4、または1:5、または1:6、または1:7であり得る。酸化銅の粒子(Biii)は、成分(B)の全重量に基づいて、0.01重量%~30重量%の量で成分(B)中に存在する。酸化銅の粒子は、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、または両方の混合物であることができる。一実施形態では、アイオノマー(Bi)と、酸化亜鉛(Bii)と、酸化銅(Biii)との間の重量パーセント比は、臭気抑制剤(B)の全重量に基づいて、150:100:1~2.9:2.5:1である(以下、組成物1)。
【0069】
一実施形態では、アイオノマー(Bi)と、酸化亜鉛(Bii)と、酸化銅(Biii)との間の重量パーセント比は、臭気抑制剤(B)の全重量に基づいて、100:75:1~3:2.5:1である。
【0070】
一実施形態では、本組成物は、85重量%、または90重量%~95重量%、または97重量%、99重量%、または99.4重量%、または99.5重量%のエチレン系ポリマーである成分(A)を含む。本組成物は、逆数の量の臭気抑制剤、成分(B)、または15重量%、もしくは10重量%~5重量%、もしくは3重量%、1重量%、もしくは0.6重量%、もしくは0.5重量%の臭気抑制剤を含み、ZnI/OとZnOとCu2Oとの比は12.5:12.5:1~2.5:2.5:1である。臭気抑制剤(B)は、本明細書において以前に開示されたような臭気抑制剤であり得る(以下、組成物2)。
【0071】
組成物(すなわち、組成物1および/または組成物2)は、46%、または50%、または60%、または70%~75%、または80%、または85%、または90%の臭気抑制値を有する。
【0072】
ZnOとアイオノマーの組み合わせは、メチルメルカプタンのOSVを改善する一方で、酸化銅、特にCu2Oを追加することで、OSV全体がさらに改善されることが確認されている。実際、出願人は驚くべきことに、(例えば、臭気抑制組成物(B)の全重量に基づいて)ZnO/アイオノマー臭気抑制剤組成物に0.01重量%~0.1重量%のCu2Oを添加することにより、酸化銅の粒子を含まないZnO/アイオノマー臭気抑制組成物と比較して、OSV性能を2倍以上にできることを発見した。
【0073】
D.ブレンド
酸化亜鉛の粒子および酸化銅の粒子が、(i)オレフィン系ポリマー(A)内に分散されるよう、および/または(i)アイオノマー(Bi)内に分散されるように、成分(A)および(B)を一緒に混合、または別の方法でブレンドして本組成物を形成する。
【0074】
一実施形態では、本組成物は、成分(B)が酸化亜鉛の粒子(Bii)および酸化銅の粒子(Biii)をアイオノマー(Bi)中に分散させることによって形成される臭気制御マスターバッチとして製造される。分散は、粒子(酸化亜鉛および酸化銅)をアイオノマー全体に均一に分散させるために、成分(Bi)、(Bii)、および(Biii)の物理的混合および/または溶融混合によって達成され得る。得られた成分(B)を、続いて、オレフィン系ポリマー、成分(A)と混合するか、または別の方法でブレンドする。成分(B)と成分(A)の混合は、物理的混合および/または溶融混合によって達成することができる(以下、臭気制御マスターバッチ1)。
【0075】
一実施形態では、本組成物は、酸化亜鉛の粒子(Bii)をアイオノマー(Bi)中に分散させることにより、臭気制御マスターバッチとして製造される。分散は、アイオノマー(Bi)全体に亜鉛粒子を一様に分散させるために、成分(Bi)および(Bii)の物理的混合および/または溶融混合によって達成され得る(「Bi-Biiブレンド」)。続いて、Bi-Biiブレンドおよび酸化銅の粒子を、物理的混合および/または溶融混合によってオレフィン系ポリマー成分(A)に添加して、オレフィン系ポリマー(A)、アイオノマー(Bi)、酸化亜鉛の粒子(Bii)、および酸化銅の粒子(Biii)の均質なブレンドの本組成物を形成する。(以下、臭気制御マスターバッチ2)
【0076】
一実施形態では、本組成物は、アイオノマー(Bi)、酸化亜鉛の粒子(Bii)、酸化銅の粒子(Biii)およびオレフィン系ポリマー(A)を混合することにより臭気制御マスターバッチとして製造される。混合は、アイオノマー(Bi)、酸化亜鉛の粒子(Bii)、および酸化銅の粒子(Biii)をオレフィン系ポリマー(A)全体に一様に分散させるために、成分(A)、(Bi)、(Bii)、および(Biii)の物理的混合および/または溶融混合によって達成され得る(以下、臭気制御マスターバッチ3)。
【0077】
一実施形態では、本組成物は、アイオノマー(Bi)、酸化亜鉛の粒子(Bii)およびオレフィン系ポリマー(A)を混合することにより、臭気制御マスターバッチとして製造される。混合は、(Bi)および(Bii)を(A)全体に一様に分散させるために、成分(Bi)、(Bii)および(A)の物理的混合および/または溶融混合によって達成され得る(以下、A-Bi-Biiブレンド)。酸化銅の粒子(Biii)は成分(A)と混合される。混合は、酸化銅の粒子(Biii)を(A)中に均一に分散させるために、物理的混合および/または溶融混合によって達成され得る(以下、A-Biiiブレンド)。次いで、A-Bi-BiiブレンドをA-Biiiブレンドと混合する。混合は、オレフィン系ポリマー(A)、アイオノマー(Bi)、酸化亜鉛の粒子(Bii)および酸化銅の粒子(Biii)からなる均質な組成物を形成するよう、物理的混合および/または溶融混合によって達成され得る(以下、臭気制御マスターバッチ4)。
【0078】
一実施形態では、臭気制御マスターバッチ(すなわち、臭気制御マスターバッチ1、2、3、または4のいずれか)は、20重量%~30重量%のアイオノマー、20重量%~30重量%の酸化亜鉛の粒子、5重量%~15重量%の酸化銅の粒子、および30重量%~60重量%のLLDPEを含み、成分の集合体は100重量%の臭気制御組成物になる。
【0079】
E.用途
本組成物は、ポリマー材料、特にオレフィン系ポリマーが、メルカプタン、H2S、ジスルフィド、またはアミンに曝露されるあらゆる用途に使用され得る。本組成物の好適な用途の非限定的な例には、ゴミライナー、衛生品、家禽用おむつ、オストミーバッグ、マットレス、マットレスカバー、家禽包装、自動車内装部品、カーペット繊維、およびカーペット裏地が含まれる。
【0080】
一実施形態では、組成物はフィルムに形成される。フィルムは、独立型の単層フィルムであり得る。あるいはまた、フィルムは多層フィルムの層であり得る。組成物は、例えば、組成物1または組成物2のような、成分(A)および臭気抑制剤(B)を含む、本明細書に開示される任意の組成物であり得る。フィルムは、臭気制御組成物である本組成物を含み、本組成物は(A)85重量%~99.5重量%のオレフィン系ポリマーと、(B)15重量%~0.5重量%の臭気抑制剤とからなる。臭気抑制剤は、(i)アイオノマー(例えば、亜鉛アイオノマー)、(ii)酸化亜鉛の粒子、および(iii)酸化銅(I)または酸化銅(II)の粒子からなるブレンドである。酸化亜鉛粒子は、100nm~3000nmのD50粒子サイズ、1m2/g~9m2/gの表面積、および0.020m3/g未満の多孔度を有する。組成物は、45%超のメチルメルカプタン臭気抑制値を有する。一実施形態では、フィルムは、46%、または50%、または60%、または70%~75%または80%、または85%、または90%の臭気抑制値を有する。
【0081】
一実施形態では、フィルムに形成された臭気制御組成物は、325メッシュであるCu2O粒子を含む。
【0082】
ここで、限定ではなく例として、本開示のいくつかの実施形態を、次の実施例で詳述する。
【実施例】
【0083】
実施例において使用する材料は、下記の表1に提供する。
【表1】
【0084】
1.フィルム
マスターバッチ処理。臭気抑制組成物を後続のフィルムライン中に容易に供給するために、2つのマスターバッチを調製した。マスターバッチは、汎用スクリューを使用して、Coperion ZSK 26二軸スクリュー押出機で調製した。材料の滞留時間は、スクリューの設計、20ポンド/時の送り速度、および1分当たり300回転(RPM)のスクリュー速度によって制御した。オイルは注入しなかった。サイドアームフィーダーはなかった。真空引きされなかった。配合した材料を、ストランドカットペレタイザーによって切断される前に、水浴を通して送った。収集後、ペレット化した材料をN2パージし、次にアルミニウムバッグに密封した。
【0085】
第1のマスターバッチ(MB1)の組成は、50重量%のLLDPE、1、25重量%のZnO、および25重量%のSurlyn 9150であった。第2のマスターバッチ(MB2)の組成は、90重量%のLLDPE 1および10重量%のCu
2Oであった。列挙されている各組成物の目標重量%を達成するために、適切な量の純粋なLLDPE 1、MB1、およびMB2を使用して、実施例および対抗例の調合物を生成した。
【表2】
【0086】
2.臭気抑制剤
比較試料(CS)および本発明の実施例(IE)の組成を表3に示す。
【0087】
の臭気抑制値(OSV)を以下の表3に示す。
参照試料の濃度は2日後に変化する可能性があり、試料の濃度は参照試料に対する相対的な変化と見なす必要があるため、較正基準として参照試料(CS1)を使用して2日後に濃度を測定した。
【表3】
【0088】
表3では、各試料の成分量は、100重量%の全試料組成物になる。CS3のOSV(28%)をCS1&2のOSV(それぞれ12%と2%)と比較することにより、臭気抑制技術のない組成物と比較して、ZnO/亜鉛アイオノマーの組み合わせがOSVの改善に効果的であることが容易に観察できる。しかしながら、Cu2Oが本臭気抑制剤の一部として非常に低い添加量(すなわち、IE2中、<10%の、ZnO、亜鉛アイオノマー、およびCu2Oの組み合わせ)しか添加されていないにもかかわらず、CS3のOSVが28%の場合(すなわち、亜鉛アイオノマーとZnOとを有し、Cu2Oが存在しない試料)と比較して、OSVを64%にさらに向上させることができることは驚くべきことである。IE3のOSV(49%)をCS3のOSV(28%)と比較することにより観察できるように、Cu2Oを添加することによって、予期せぬことに、Cu2Oが存在しないZnO/亜鉛アイオノマーの組み合わせよりもほぼ50%高いOSVを維持しながら、組成物中のZnO/亜鉛アイオノマー濃度を50%削減することができる。さらに、0.1重量%Cu2Oと組み合わせたこれらの材料のより高い添加量が、表3に示す本発明の実施例IE1(80%)およびIE2(64%)の最高のOSVを示すため、ZnO/亜鉛アイオノマーの組み合わせは、依然として、OSVに大きな影響を及ぼすことが観察される。
【0089】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の一部、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲の範囲に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 組成物であって、
(A)85重量%~99.5重量%のオレフィン系化合物と、
(B)15重量%~0.5重量%の臭気抑制剤であって、
(i)アイオノマー、
(ii)酸化亜鉛の粒子、
(iii)酸化銅の粒子、のブレンドを含む、臭気抑制剤と、を含み、
前記組成物が、ASTM D5504-12に準拠して測定された場合、45%超のメチルメルカプタン臭気抑制値を有する、組成物。
(2) 前記オレフィン系ポリマーが、エチレン系ポリマーである、上記(1)に記載の組成物。
(3) 前記エチレン系ポリマーが、0.5g/10分~15g/10分のメルトインデックス(I2)および0.910g/cc~0.930g/ccの密度を有するエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマーである、上記(2)に記載の組成物。
(4) 前記アイオノマーが金属アイオノマーである、上記(1)に記載の組成物。
(5) 前記アイオノマーが亜鉛アイオノマーである、上記(1)に記載の組成物。
(6) 前記アイオノマーが、エチレン/メチルメタクリル酸、エチレン/ビニルアクリル酸、エチレン/メタクリレート、エチレン/n-ブチルアクリル酸およびエチレンアクリル酸の群から選択されるポリマーの亜鉛塩である、上記(5)に記載の組成物。
(7) 前記酸化亜鉛の粒子が、100nm~3000nmのD50粒子サイズを有する、上記(1)に記載の組成物。
(8) 前記酸化銅の粒子が、酸化銅(I)および酸化銅(II)の群から選択される、上記(1)に記載の組成物。
(9) 前記酸化銅の粒子が、100nm~3000nmのD50粒子サイズを有する、上記(8)に記載の組成物。
(10)前記アイオノマー(Bi)と、前記酸化亜鉛(Bii)と、前記酸化銅(Biii)との間の重量パーセント比が、150:100:1~2.9:2.5:1である、上記(1)に記載の組成物。
(11)組成物を含むフィルムであって、
前記組成物が、
(A)85重量%~99.5重量%のオレフィン系化合物と、
(B)15重量%~0.5重量%の臭気抑制剤であって、
(i)アイオノマー、
(ii)酸化亜鉛の粒子、
(iii)酸化銅の粒子、のブレンドを含む、臭気抑制剤と、を含み、
前記組成物が、ASTM D5504-12に準拠して測定された場合、45%超のメチルメルカプタン臭気抑制値を有する、フィルム。