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▶ コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】湿気硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20240122BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20240122BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C08G18/38 093
C08G18/22
C09J175/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020533623
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084860
(87)【国際公開番号】W WO2019121351
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】17209987.1
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】シーブズ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテンプフル,フロリアン・ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ラース,ハンス-ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】バウムバッハ,ベアテ
(72)【発明者】
【氏名】ナトク,ウテ
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506917(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102004012876(DE,A1)
【文献】特開2004-339511(JP,A)
【文献】特開平09-031151(JP,A)
【文献】特表2015-513319(JP,A)
【文献】特表2013-513678(JP,A)
【文献】特開2008-056849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0034627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒成分の存在下で、
少なくとも1つのNCO基を含む化合物と、
少なくとも1つのツェレビチノフ活性H原子を含む化合物とを反応させて
(少なくとも1つのNCO基を含む前記化合物および/または少なくとも1つのツェレビチノフ活性H原子を含む前記化合物は、少なくとも1つのアルコキシシラン基を含む)、
アルコキシシラン含有ポリウレタンを得る
工程を含む、アルコキシシラン含有ポリウレタンの製造方法において、
前記触媒成分が、イッテルビウム(III)と少なくとも1つのβ-ジケトネート配位子との錯体を含有し、前記β-ジケトネート配位子が、hacac(アセチルアセトン)、hacac-F (パーフルオロアセチルアセトン)、hbfa(ベンゾイル-2-フラノイルメタン)、hbpp(1,3-ビス(3-ピリジル)-1,3-プロパンジオン)、Hbtfac(ベンゾイルトリフルオロアセトン)、hbzac(ベンゾイルアセトン)、hdbbm(ジ(4-ブロモ)ベンゾイルメタン)、hdcm(d,d-ジカンホリルメタン)、hdmbm(4,4’-ジメトキシジベンゾイルメタン)、hdmh(2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオン)、hdnm(ジナフトイルメタン)、hdpm(ジピバロイルメタン)、hdppm(ジ(パーフルオロ-2-プロポキシプロピオニル)メタン)、hdtp(1,3-ジ(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン)、hfacam(3-(トリフルオロアセチル)-d-カンファー)、hfdh(6,6,6-トリフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン)、hfhd(1,1,1,2,2,6,6,7,7,7-デカフルオロ-3,5-ヘプタンジオン)、hfod(6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-オクタンジオン)、hftac(2-フリルトリフルオロアセトン)、hhfac(ヘキサフルオロアセチルアセトン)、hhfbc(3-(ヘプタフルオロブチリル)-d-カンファー)、hhfth(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオン)、hmfa(4-メチルベンゾイル-2-フラノイルメタン)、hmhd(6-メチル-2,4-ヘプタンジオン)、hntac(2-ナフトイルトリフルオロアセトン)、hpop(3-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-2,4-ペンタンジオン)、hppa(3-フェニル-2,4-ペンタンジオン)、hpta(=htpm)(ピバロイルトリフルオロアセトン)、hptp(1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン)、H(t-cam)(3-(tert-ブチルヒドロキシメチレン)-d-カンファー)、htfac(トリフルオロアセチルアセトン)、htfn(1,1,1,2,2,3,3,7,7,8,8,9,9,9-テトラデカフルオロ-4,6-ノナンジオン)、hthd(=hdpm、htmhd)(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)、htnb(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-ナフチル)-1,3-ブタンジオン)、htmod(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-オクタンジオン)、htrimh(2,2,6-トリメチル-3,5-ヘプタンジオン)、htod(2,2,7-トリメチル-3,5-オクタンジオン)、htta(2-テノイルトリフルオロアセトン)またはそれらの任意の所望の混合物の脱プロトン化によって得ることができ、
前記触媒成分が有機スズ化合物を含まない
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
イッテルビウム(III)と少なくとも1つのβ-ジケトネート配位子との前記錯体がYb(acac)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルコキシシラン含有ポリマーであって、前記ポリマーが、請求項1または2に記載の方法によって得ることができるポリウレタンであり、前記ポリマーが、イッテルビウム(III)と少なくとも1つのβ-ジケトネート配位子との錯体を含有し、前記β-ジケトネート配位子が、hacac(アセチルアセトン)、hacac-F(パーフルオロアセチルアセトン)、hbfa(ベンゾイル-2-フラノイルメタン)、hbpp(1,3-ビス(3-ピリジル)-1,3-プロパンジオン)、Hbtfac(ベンゾイルトリフルオロアセトン)、hbzac(ベンゾイルアセトン)、hdbbm(ジ(4-ブロモ)ベンゾイルメタン)、hdcm(d,d-ジカンホリルメタン)、hdmbm(4,4’-ジメトキシジベンゾイルメタン)、hdmh(2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオン)、hdnm(ジナフトイルメタン)、hdpm(ジピバロイルメタン)、hdppm(ジ(パーフルオロ-2-プロポキシプロピオニル)メタン)、hdtp(1,3-ジ(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン)、hfacam(3-(トリフルオロアセチル)-d-カンファー)、hfdh(6,6,6-トリフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン)、hfhd(1,1,1,2,2,6,6,7,7,7-デカフルオロ-3,5-ヘプタンジオン)、hfod(6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-オクタンジオン)、hftac(2-フリルトリフルオロアセトン)、hhfac(ヘキサフルオロアセチルアセトン)、hhfbc(3-(ヘプタフルオロブチリル)-d-カンファー)、hhfth(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオン)、hmfa(4-メチルベンゾイル-2-フラノイルメタン)、hmhd(6-メチル-2,4-ヘプタンジオン)、hntac(2-ナフトイルトリフルオロアセトン)、hpop(3-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-2,4-ペンタンジオン)、hppa(3-フェニル-2,4-ペンタンジオン)、hpta(=htpm)(ピバロイルトリフルオロアセトン)、hptp(1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン)、H(t-cam)(3-(tert-ブチルヒドロキシメチレン)-d-カンファー)、htfac(トリフルオロアセチルアセトン)、htfn(1,1,1,2,2,3,3,7,7,8,8,9,9,9-テトラデカフルオロ-4,6-ノナンジオン)、hthd(=hdpm、htmhd)(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)、htnb(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-ナフチル)-1,3-ブタンジオン)、htmod(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-オクタンジオン)、htrimh(2,2,6-トリメチル-3,5-ヘプタンジオン)、htod(2,2,7-トリメチル-3,5-オクタンジオン)、htta(2-テノイルトリフルオロアセトン)またはそれらの任意の所望の混合物の脱プロトン化によって得ることができ、
前記ポリマーは有機スズ化合物を含まないことを特徴とするアルコキシシラン含有ポリマー。
【請求項4】
請求項に記載のポリマーとシロキサン縮合触媒とを接触させる工程を含むことを特徴とする、硬化性ポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記ポリマーをさらに水と接触させることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
請求項またはに記載の方法によって得ることができることを特徴とする硬化性ポリマー。
【請求項7】
請求項に記載の硬化性ポリマーを硬化させることによって得ることができることを特徴とする硬化したポリマー。
【請求項8】
前記硬化したポリマーが、比較ポリマーと比較して以下の特性のうちの少なくとも1つを有し、それぞれのサンプルが、測定前に23℃および相対湿度50%で14日間保存されており:
ショアA硬度(DIN 53505):前記比較ポリマーの90%以下;
破断点伸びのパーセンテージ値(DIN EN 53504、引張速度:200mm/分、S2試験片):前記比較ポリマーのパーセンテージ値の101%以上;
割線モジュラス(EN ISO 8339、100%伸び):前記比較ポリマーの90%以下;
前記比較ポリマーが、前記硬化したポリマーと同じ方法で製造されたが、請求項1または2に記載の方法の前記触媒成分中のイッテルビウム(III)と少なくとも1つのβ-ジケトネート配位子との前記錯体の代わりに、同じモル量のジブチルスズジラウレートを用いて製造されたことを特徴とする、請求項に記載の硬化したポリマー。
【請求項9】
シーラント、接着剤またはコーティング材料としての、請求項に記載の硬化性ポリマーの使用および/または請求項またはに記載の硬化したポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒成分の存在下で、少なくとも1つのNCO基を含む化合物と、少なくとも1つのツェレビチノフ活性H原子を含む化合物とを反応させて(少なくとも1つのNCO基を含む化合物および/または少なくとも1つのツェレビチノフ活性H原子を含む化合物は、少なくとも1つのアルコキシシラン基を含む)、アルコキシシラン含有ポリウレタンを得る工程を含む、アルコキシシラン含有ポリウレタンの製造方法に関する。本発明はさらに、アルコキシシラン含有ポリマー、硬化性ポリマーの製造方法、硬化性ポリマー、硬化したポリマー、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン官能性ポリマーをベースとする湿気硬化性組成物が知られており、例えば建築では、弾性シーラントまたは弾性寄木張り床用接着剤として大量に使用されている。
【0003】
シラン官能性ポリマーは、それらのシラン基反応性の点で異なる3つの異なるクラスに分けることができ、これはそれから製造される湿気硬化性組成物の硬化速度に反映される。
【0004】
末端二重結合を有するポリマー、例えば、ポリ(メタ)アクリレートポリマーまたはポリエーテルポリマーのヒドロシリル化により製造されるポリマーが知られている。それらは、例えば、米国特許第3,971,751号および米国特許第6,207,766号に記載されている。これらは、低い反応性、および実用的な硬化時間を有する湿気硬化性組成物の製造という欠点を有するため、多くの場合、毒物学的に懸念され、かつ市場での受け入れがますます減少しているスズ含有硬化触媒を製造に加える必要がある。
【0005】
いわゆるγシラン基がウレタン基または尿素基を介してポリマー主鎖に結合されているポリマーは著しく反応性が高く、多くの場合、あるとしてもごく少量のスズ含有触媒を用いることにより、実用的な硬化時間を有する湿気硬化性組成物の製造が可能である。
【0006】
第3のクラスは、いわゆるαシラン基がウレタン基または尿素基を介してポリマー主鎖に結合され、場合によっては特定の硬化触媒を用いることなく急速に硬化するポリマーのクラスである。これらのクラスの欠点は、それらの高い反応性のために、それらが不安定であり、高価であり、可用性が低いことである
市販のシラン末端ポリウレタンプレポリマーの製造は、NCO基とツェレビチノフ活性H原子との反応の触媒作用を含む。通常、ジブチルスズジラウレート(DBTL)がこれに使用される。ただし、DBTLの毒物学的特性により、代替の触媒が必要である。
【0007】
DBTLは、シラン官能性ポリマーをベースとする硬化性組成物の製造にも使用される。ここでも、DBTLの毒物学的特性のために代替の触媒が必要である。
【0008】
国際公開第2013/165552号は、反応性シラン基を含む湿気硬化性組成物のための可能な硬化触媒としてのイッテルビウムの特定のポリアクリレートの使用を記載しているが、具体的な例を欠いている。
【0009】
米国特許第7060778号は、脂肪族オリゴカーボネートポリオールのエステル交換のための触媒としてYb(acac)を記載している。ドイツ特許第102004012876号は、NCO/OH反応の触媒としてYb(acac)を記載している。
【0010】
多くの金属触媒、特に有機スズ触媒のもう1つの欠点は、例えば、建築用シーラントとして使用されるシラン官能性ポリマーをベースとする硬化性組成物では、硬化後に割線モジュラスが著しく増加するため、低弾性率シーラントに関するISO 11600の要件(ISO 8339に準拠して23℃での割線モジュラス0.4MPa以下)を満たすことができないか、基準を満たすために大量の可塑剤が必要であり、ひいては、接合基材のエッジゾーンへの可塑剤の移動による接合エッジ汚染のリスクが増大することである(Praxishandbuch Dichtstoffe,IVK,4 Auflage,p139f)。
【0011】
欧州特許第2952533号は、a)少なくとも1つのシラン官能性ポリマーと、b)シラン官能性ポリマーを架橋するための少なくとも1つの触媒とを含む湿気硬化性シーラントを開示しており、このシーラントは、有機スズ化合物を含まず、硬化状態では、ISO 8339に準拠して決定される100%伸び時および23℃での0.4MPa未満の割線モジュラスと、ISO 7389に準拠して決定される100%伸び時の70%超の弾性とを有する。この文献によれば、このシーラントは、特に、DIN EN ISO 11600に準拠したクラス25LMの建築用シーラントとして、特にファサード用シーラントとして好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第3,971,751号
【文献】米国特許第6,207,766号
【文献】国際公開第2013/165552号
【文献】米国特許第7060778号
【文献】ドイツ特許第102004012876号
【文献】欧州特許第2952533号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Praxishandbuch Dichtstoffe,IVK,4 Auflage,p139f
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、従来技術の欠点を克服し、有機スズ化合物を本質的に加えることなく完全に硬化し、硬化状態で割線モジュラスが低い、シラン官能性ポリマーをベースとする湿気反応性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項8に記載のアルコキシシラン含有ポリウレタン、請求項10に記載の硬化性ポリマーの製造方法、請求項12に記載の硬化性ポリマー、請求項13に記載の硬化したポリマーおよび請求項15に記載の使用により、本発明により達成される。従属請求項および明細書に有利な展開が記載されている。文脈からその逆が明らかでない限り、それらは所望により組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
アルコキシシラン含有ポリウレタンの製造方法は、触媒成分の存在下で、少なくとも1つのNCO基を含む化合物と、少なくとも1つのツェレビチノフ活性H原子を含む化合物とを反応させて(少なくとも1つのNCO基を含む化合物および/または少なくとも1つのツェレビチノフ活性H原子を含む化合物は、少なくとも1つのアルコキシシラン基を含む)、アルコキシシラン含有ポリウレタンを得る工程を含む。触媒成分は、ランタノイドと少なくとも1つのβ-ジケトネート配位子との錯体を含有し、触媒成分は有機スズ化合物を含まない。
【0017】
ランタノイドのβ-ジケトネート錯体はウレタン化触媒として使用することができ、同様に触媒として作用するか、少なくとも後続のシラン架橋に悪影響を及ぼさないために、アルコキシシラン含有ポリウレタン中に留まることができることが見出された。
【0018】
したがって、本発明によるこの方法は、DBTLベースのウレタン化触媒の毒物学的不利を受け入れる必要なく、コーティング組成物、接着剤、エラストマーおよびシーリング組成物のための前駆体を製造することを可能にする。
【0019】
用語「硬化性」は、一般に、外部条件の影響下、特に環境中に存在する湿気の影響下および/または意図的に供給された条件下で、組成物が、比較的柔らかい、塑性変形可能であってもよい状態から比較的硬い状態に移行することができることを意味する。架橋は、一般に、上記の湿気に加えて、化学的および/または物理的影響を通じて、すなわち、例えば、熱、光または他の電磁放射の形でのエネルギーの供給によるだけでなく、組成物を空気または反応性成分と単に接触させることにより達成され得る。
【0020】
アシルオキシシランもまた、本発明によるアルコキシシランという用語に含まれる。
【0021】
方法の一実施形態では、ポリウレタンをもたらす反応は、50℃以上(好ましくは60℃以上)の温度で、10分以上(好ましくは100分以上500分以下)の持続時間にわたって少なくとも周期的に行われる。
【0022】
本発明の文脈では、触媒成分が有機スズ化合物を含まないということは、ポリウレタンをもたらす反応混合物中および得られたポリウレタン中の有機スズ化合物の含有量が、アルコキシシラン含有ポリウレタンの総重量に基づいて0.06重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であると定義される。
【0023】
有機スズ化合物の含有量の定量的決定は、n-ヘキサンによるサンプル(任意)の抽出、テトラエチルホウ酸ナトリウムによる誘導体化(任意)、およびガスクロマトグラフィーによって行われ、原子発光による検出が好ましい。詳細は、例えば、Almut Liebich,Technische Universitat Berlin 2005による「Bestimmung von Organozinnverbindungen in Sedimenten mittels GC-AED - Entwicklung von Extraktions-und Derivatisierungsmethoden」(http://dx.doi.org/10.14279/depositonce-1164)の論文中で定義され得る。
【0024】
したがって、特にDBTL(ジブチルスズジラウレート)などの有機スズベースの触媒は反応に使用されない。有機スズ化合物は一般に、共有Sn-C結合を含むあらゆる化合物を含むと定義され得る。
【0025】
これには、本発明による方法のための反応混合物に、ポリウレタンプレポリマーなどの何らかの前駆体からの有機スズ触媒または残留物を導入しないことも含まれる。
【0026】
反応に使用される成分の総重量に基づくランタノイド-β-ジケトネート錯体の含有量は、例えば、0.0001重量%以上1重量%以下であってよい。好ましい含有量は、0.002重量%以上0.05重量%以下、さらに好ましくは0.005重量%以上0.1重量%以下である。
【0027】
β-ジケトネート錯体中の好適なランタノイドは、特に、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムまたはそれらの混合物の酸化状態(III)のイオンである。この方法の一実施形態では、ランタノイドはイッテルビウム(III)である。
【0028】
この方法のさらなる実施形態では、β-ジケトネート配位子は、hacac(アセチルアセトン)、hacac-F(パーフルオロアセチルアセトン)、hbfa(ベンゾイル-2-フラノイルメタン)、hbpp(1,3-ビス(3-ピリジル)1,3-プロパンジオン)、Hbtfac(ベンゾイルトリフルオロアセトン)、hbzac(ベンゾイルアセトン)、hdbbm(ジ(4-ブロモ)ベンゾイルメタン)、hdcm(d,d-ジカンホリルメタン)、hdmbm(4,4’-ジメトキシジベンゾイルメタン)、hdmh(2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオン)、hdnm(ジナフトイルメタン)、hdpm(ジピバロイルメタン)、hdppm(ジ(パーフルオロ-2-プロポキシプロピオニル)メタン)、hdtp(1,3-ジ(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン)、hfacam(3-(トリフルオロアセチル)-d-カンファー)、hfdh(6,6,6-トリフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン)、hfhd(1,1,1,2,2,6,6,7,7,7-デカフルオロ-3,5-ヘプタンジオン)、hfod(6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-オクタンジオン)、hftac(2-フリルトリフルオロアセトン)、hhfac(ヘキサフルオロアセチルアセトン)、hhfbc(3-(ヘプタフルオロブチリル)-d-カンファー)、hhfth(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオン)、hmfa(4-メチルベンゾイル-2-フラノイルメタン)、hmhd(6-メチル-2,4-ヘプタンジオン)、hntac(2-ナフトイルトリフルオロアセトン)、hpop(3-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-2,4-ペンタンジオン)、hppa(3-フェニル-2,4-ペンタンジオン)、hpta(=htpm)(ピバロイルトリフルオロアセトン)、hptp(1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン)、H(t-cam)(3-(tert-ブチルヒドロキシメチレン)-d-カンファー)、htfac(トリフルオロアセチルアセトン)、htfn(1,1,1,2,2,3,3,7,7,8,8,9,9,9-テトラデカフルオロ-4,6-ノナンジオン)、hthd(=hdpm、htmhd)(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)、htnb(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-ナフチル)-1,3-ブタンジオン)、htmod(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-オクタンジオン)、htrimh(2,2,6-トリメチル-3,5-ヘプタンジオン)、htod(2,2,7-トリメチル-3,5-オクタンジオン)、htta(2-テノイルトリフルオロアセトン)またはそれらの任意の所望の混合物の脱プロトン化によって得ることができる。Hacacが好ましい。
【0029】
方法のさらなる実施形態では、ランタノイドと少なくとも1つのβ-ジケトネート配位子との錯体はYb(acac)である。
【0030】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1つのNCO基を含む化合物は少なくとも1つのアルコキシシラン基を含み、少なくとも1つのツェレビチノフ活性H原子を含む化合物はアルコキシシラン基を含まない。このようなイソシアナトアルコキシシランの好適な例には、イソシアナトメチルトリメトキシシラン、イソシアナトメチルトリエトキシシラン、イソシアナトメチルトリイソプロポキシシラン、2-イソシアナトエチルトリメトキシシラン、2-イソシアナトエチルトリエトキシシラン、2-イソシアナトエチルトリイソプロポキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルジメチルエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリプロポキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリブトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジブトキシシラン、3-イソシアナトプロピルフェニルジメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルフェニルジエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、2-イソシアナトイソプロピルトリメトキシシラン、4-イソシアナトブチルトリメトキシシラン、4-イソシアナトブチルトリエトキシシラン、4-イソシアナトブチルトリイソプロポキシシラン、4-イソシアナトブチルメチルジメトキシシラン、4-イソシアナトブチルメチルジエトキシシラン、4-イソシアナトブチルエチルジメトキシシラン、4-イソシアナトブチルエチルジエトキシシラン、4-イソシアナトブチルジメチルメトキシシラン、4-イソシアナトブチルフェニルジメトキシシラン、4-イソシアナトブチルフェニルジエトキシシラン、4-イソシアナト(3-メチルブチル)トリメトキシシラン、4-イソシアナト(3-メチルブチル)トリエトキシシラン、4-イソシアナト(3-メチルブチル)メチルジメトキシシラン、4-イソシアナト(3-メチルブチル)メチルジエトキシシランおよび11-イソシアナトウンデシルトリメトキシシラン、またはそのようなイソシアナトアルコキシシランの任意の所望の混合物が挙げられる。
【0031】
考えられるツェレビチノフ活性化合物には、例えば、ポリエーテルポリオール(特にポリプロピレングリコール)、ポリエステルポリオールおよびOH末端ポリウレタンプレポリマーが含まれる。
【0032】
得られる反応生成物は、特に構造(I)を有し得、
【化1】
【0033】
式中、
は、1~6個の炭素原子を有するアルキレンラジカルを表し、
は、メチルラジカルまたはエチルラジカルを表し、
mは、0または1または2を表す。
【0034】
mが0を表す場合が好ましい。
【0035】
は、好ましくは、1,3-プロピレン基および/またはメチレン基(-CH-)を表す。
【0036】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1つのNCO基を含む化合物はアルコキシシラン基を含まず、少なくとも1つのツェレビチノフ活性H原子を含む化合物は、少なくともアルコキシシラン基を含む。
【0037】
好適なモノマージイソシアネートは、特に、モノマージイソシアネート、例えば特に1,4-ジイソシアナトブタン(BDI)、1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-および1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナト-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-2-メチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-4-メチルシクロヘキサン、1-イソ-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’,5,5’-テトラメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-2,2’,5,5’-テトラメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、1,8-ジイソシアナト-p-メンタン、1,3-ジイソシアナトアダマンタン、1,3-ジメチル-5,7-ジイソシアナトアダマンタン、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート;XDI)、1,3-および1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)、ビス(4-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)フェニル)カーボネート、2,4-および2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレンならびにそれらの混合物である。例えば、ビウレット、ウレタンまたはイソシアヌレート構造を有するものなどのジイソシアネートから製造されたポリイソシアネートも、NCO含有化合物として可能である。
【0038】
好ましい実施形態では、ジイソシアネートは、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)またはそれらの混合物から選択される。
【0039】
このような反応生成物は、例えば、イソシアネート含有ポリエーテル、特に、ポリエーテルポリオールと超化学量論量(superstoichiometric amount)のポリイソシアネートとの反応から得られるNCO末端ウレタンポリエーテルと、アミノシラン、ヒドロキシシランまたはメルカプトシランとの反応から得ることができる。そのようなシラン官能性ポリマーは、特に式(II)の構造を含み、
【化2】
【0040】
式中、
Xは、OまたはSまたはNRを表し、式中、Rは、水素原子、または環状比率(cyclic proportion)を含んでもよく、アルコキシシリル基もしくは1つ以上のエーテル基もしくはカルボン酸エステル基を含んでもよい、1~20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを表し、
は、環状および/または芳香族比率(aromatic proportion)を含んでもよく、1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい、1~18個の炭素原子を有する二価の炭化水素ラジカルを表し、
は、エーテル基を含んでもよい、1~5個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表し、
nは、0または1または2を表す。
【0041】
nが0を表す場合が好ましい。
【0042】
が1,3-プロピレンまたは1,4-ブチレンまたは3,3-ジメチル-1,4-ブチレンを表し、XがNRを表す場合が好ましく、Rは、好ましくは式
【化3】
【0043】
のラジカルを表す。
【0044】
XがOを表し、Rが式
【化4】
【0045】
または
【化5】
【0046】
のラジカルを表す場合がさらに好ましく、
ここで、このラジカルは、Xがシクロヘキシル環に直接結合され、YがOまたはNRを表し、RおよびRが互いにそれぞれ独立して、エーテル酸素またはチオエーテル硫黄もしくは第三級アミン窒素の形でヘテロ原子を含み得るか、Y(またはN)とともに環、特にモルホリン環を形成し得る、1~18個の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルを表すように構成される。
【0047】
この方法のさらなる実施形態では、少なくとも1つのツェレビチノフ活性H原子を含む化合物は、少なくとも1つの第一級または第二級アミノ基を含む。それは、好ましくはN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジエチルエステルまたはそれらの混合物である。また、メトキシ基の代わりにエトキシ基を含むか、その逆であるか、アシルオキシ基を含む対応する化合物も好適である。
【0048】
本発明はさらに、アルコキシシラン含有ポリマーに関し、ポリマーは、ランタノイドと少なくとも1つのβ-ジケトネート配位子との錯体を含有し、ポリマーは有機スズ化合物を含まない。ランタノイド、β-ジケトネート配位子、および有機スズ化合物の不在に関しては、NCO基とツェレビチノフ活性H原子との反応を含む本発明の方法に関して上記と同じ考察が適用される。簡潔にするために、それらは繰り返されない。好ましいランタノイド錯体は同様にYb(acac)であることのみに留意すべきである。
【0049】
シラン官能性ポリマーとしても知られるアルコキシシラン含有ポリマーは、好ましくは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレートもしくはポリエーテルまたはこれらのポリマーのハイブリッドである。それらのシラン基は、鎖または末端の側方位置にあってもよい。シラン官能性ポリマーが、ポリオレフィンまたはポリエステルまたはポリメタクリレートまたはポリエーテルまたはこれらのポリマーのハイブリッドである場合が特に好ましい。
【0050】
例えば、シラン官能性ポリマーは、シラン含有ポリエーテルであってよい。シラン含有ポリエーテルは、好ましくは大部分のオキシアルキレン単位、特に1,2-オキシプロピレン単位を含む。シラン基は、好ましくはジアルコキシシラン基および/またはトリアルコキシシラン基、特にジメトキシメチルシラン基またはトリメトキシシラン基またはトリエトキシシラン基である。
【0051】
シラン官能性ポリマーは、好ましくは、イソシアネート基を含まない。
【0052】
平均して、シラン官能性ポリマーは、好ましくは1分子当たり1.3~4、特に1.5~3、特に好ましくは1.7~2.8のシラン基を有する。
【0053】
シラン官能性ポリマーは、好ましくは、1000~30000g/mol、特に2000~20000g/molの範囲の平均分子量を有する。
【0054】
シラン官能性ポリマーは、好ましくは室温で液体である。シラン官能性ポリマーは、特に好ましくは低粘度である。20℃での粘度は、特に1~200Pa s、好ましくは2~100Pa s、特に好ましくは5~50Pa sの範囲である。
【0055】
シラン官能性ポリマーは、好ましくは、
・アリル含有ポリエーテルとヒドロシランとの、特にジイソシアネートによる鎖延長を伴ってもよい反応から得られるシラン含有ポリエーテル;
・アルキレンオキシドとエポキシシランとの、特にジイソシアネートによる鎖延長を伴ってもよい共重合から得られるシラン含有ポリエーテル;
・ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの、ジイソシアネートによる鎖延長を伴ってもよい反応から得られるシラン含有ポリエーテル;および
・イソシアネート含有ウレタンポリエーテルとアミノシランまたはヒドロキシシランまたはメルカプトシランとの反応から得られるシラン含有ポリエーテルからなる群から選択される。
【0056】
これらのシラン官能性ポリマーは、特に容易に得ることができる。
【0057】
これらの中で好ましいのは、アリル含有ポリエーテルとヒドロシランとの反応から得られるシラン含有ポリエーテルである。これらのシラン官能性ポリマーは、特に低い粘度を有し、特に不活性である。
【0058】
また、これらの中で好ましいのは、ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られるシラン含有ポリエーテルである。これらのシラン官能性ポリマーは特に容易に得ることができ、非常に低い粘度を有し、かなり不活性である。
【0059】
市販のシラン官能性ポリマー、特に、MS Polymer(商標)(Kaneka Corp.製、特にS203H、S303H、S227、S810、MA903またはS943タイプ);MS Polymer(商標)もしくはSilyl(商標)(Kaneka Corp.製、特にSAT010、SAT030、SAT200、SAX350、SAX400、SAX725、MAX450、MAX602またはMAX951タイプ);Excestar(登録商標)(Asahi Glass Co.Ltd.、特にS2410、S2420、S3430またはS3630タイプ);SPUR+(登録商標)(Momentive Performance Materials製、特に101 OLM、1015LMまたは1050MMタイプ);Vorasil(商標)(Dow Chemical Co.製、特に602または604タイプ);Desmoseal(登録商標)(Bayer MaterialScience AG製、特にS XP 2458、XP 2636、S XP 2749、S XP 2774またはS XP 2821タイプ);TEGOPAC(登録商標)(Evonik Industries AG製、特にSeal 100、Bond 150またはBond 250タイプ);またはGeniosil(登録商標)STP(Wacker Chemie AG製、特にE15またはE35、E10およびE-30タイプ)の商品名の下に入手可能な製品も適している。
【0060】
アリル含有ポリエーテルとヒドロシランとの、例えばジイソシアネートによる鎖延長を伴ってもよい反応から得られるシラン官能性ポリマーは、特に式(III)の構造を有し、
【化6】
【0061】
式中、
は、メチルラジカルまたはエチルラジカルを表し、
oは、0または1または2を表す。
【0062】
oが0または1、特に1を表し、Rがメチルラジカルを表す場合が好ましい。
【0063】
アルキレンオキシドとエポキシシランとの、例えばジイソシアネートによる鎖延長を伴ってもよい共重合から得られるシラン官能性ポリマーは、特に式(IV)の構造を有し、
【化7】
【0064】
式中、
は、メチルラジカルまたはエチルラジカルを表し、
pは、0または1または2を表し、
好ましくは0を表す。
【0065】
このポリマーの一実施形態では、ポリマーは、本明細書中上記に記載される方法によって得ることができるポリウレタンである。
【0066】
一実施形態では、ポリウレタンの粘度(プレート-コーン回転粘度計、23℃、ISO 3219:1994)は、触媒成分中に、ランタノイドと少なくとも1つのβ-ジケトネート配位子との錯体の代わりにジブチルスズジラウレートを用いて、同じ製造方法によって製造された比較ポリウレタンの粘度の115%以下である。
【0067】
本発明のさらなる態様は、硬化性ポリマーの製造方法であり、方法は、上記のポリマーとシロキサン縮合触媒とを接触させる工程を含む。好適なシロキサン縮合触媒は、任意の所望の非有機スズ触媒を含む。
【0068】
シラン官能性ポリマーの架橋に特に好ましい触媒は、少なくとも1つのアミジノ基を含むものである。これらは特に式(V)の化合物である:
【化8】
【0069】
ラジカルR10は、水素原子、1~10個の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカル、またはR13とともに、1~10個の炭素原子を有する置換されていてもよい二価の炭化水素ラジカルを表す。
【0070】
ラジカルR11は、水素原子、1~12個の炭素原子を有し、環状比率または芳香族比率を含んでもよく、1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい一価の炭化水素ラジカル、アミノ基、またはR12とともに、1~10個の炭素原子を有する置換されていてもよい二価の炭化水素ラジカルを表す。
【0071】
ラジカルR12は、水素原子、1~12個の炭素原子を有し、環状比率または芳香族比率を含んでもよく、1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい一価の炭化水素ラジカル、またはR11とともに、1~10個の炭素原子を有する置換されていてもよい二価の炭化水素ラジカルを表す。
【0072】
ラジカルR13は、水素原子、1~10個の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカル、またはR10とともに、1~10個の炭素原子を有する置換されていてもよい二価の炭化水素ラジカルを表す。
【0073】
ヘテロ原子を有するラジカルR11および/またはR12は、シラン基を有するアルキルラジカル、例えばアルキルトリアルコキシシランラジカルなどである。
【0074】
少なくとも1つのアミジノ基を含む化合物は、好ましくは、グアニジン、イミダゾール、イミダゾリン、二環式アミジンまたはこれらの化合物の誘導体である。このような誘導体は、例えば、置換イミダゾールまたはイミダゾリン、特にシラン含有イミダゾールまたはイミダゾリンである。
【0075】
少なくとも1つのアミジノ基を有する好ましい化合物は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、6-(ジブチルアミノ)-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N-メチルトリアザビシクロデセン、テトラメチルグアニジン、2-グアニジノベンズイミダゾール、アセチルアセトングアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DTG)、1,3-ジフェニルグアニジン、o-トリルビグアニジン、2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジンまたはN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールである。
【0076】
シロキサン縮合触媒の比率は、全組成物の好ましくは0.01重量%~3重量%、特に0.03重量%~2重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%である。0.5重量%を超える比率では、硬化した組成物からの化合物のスウェッティングが起こる可能性があり、これは特定の用途(外観、汚れやすい用途など)にとって不利である。
【0077】
アミジンが二環式アミジンである場合、特に、二環式構成成分中に9、10、11または12個の炭素原子を有する場合が好ましい。これらの化合物の利点は、それらが比較的高い反応性を有し、したがってその含有量を比較的低く保ち得ることである。これにより、硬化した組成物からのこれらの化合物のスウェッティングを低減することが可能になる。
【0078】
同様に、シロキサン縮合触媒として好適なのは、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)などのアミノ含有触媒である。
【0079】
同様にシロキサン縮合触媒として好適なのは、それらが接着性シランとしても使用されることから、モノマーのアミノ含有シランである。
【0080】
この方法の一実施形態では、ポリマーはさらに水と接触する。
【0081】
本発明はさらに、本発明による上記の方法により得ることができる硬化性ポリマーに関する。硬化性ポリマーは、好ましくは、助剤および添加物質とともに硬化性配合物の構成成分である。硬化性ポリマーは、例えば、全組成物に基づいて、10重量%~80重量%の量、特に15重量%~50重量%、好ましくは20重量%~40重量%の量で使用される。このような配合物は以下の成分を含有し得、ここで、Yb(acac)は、硬化性ポリマーを製造するための反応に由来し得る:
a)10重量%~50重量%のアルコキシシラン含有ポリマー;
b)イッテルビウム(III)アセチルアセトネート0.0001重量%~0.1重量%;
c)スズまたはスズイオンも有機スズ化合物も含有しない化合物から選択される、シラン官能性ポリマーの架橋のための、0.001重量%~3重量%の少なくとも1つの触媒;
d)助剤および添加物質。
【0082】
特に以下の助剤および添加物質が適している:
・無機および有機フィラー、特に、脂肪酸、特にステアリン酸によって被覆されていてもよい天然、粉砕もしくは沈殿炭酸カルシウム、重晶石、タルク、石英粉、石英砂、ドロマイト、珪灰石、カオリン、焼成カオリン、雲母、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、熱分解プロセスからの高分散シリカを含むシリカ、工業的に製造されたカーボンブラック、グラファイト、金属粉末、例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀もしくは鋼、PVC粉末または無機もしくは有機材料の中空球。
【0083】
・接着促進剤および/または架橋剤、特にシラン、例えば特にアミノシラン、例えば特に3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-N’-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、またはシリコン、N-フェニル-、N-シクロヘキシル-もしくはN-アルキルアミノシラン上のメトキシ基の代わりにエトキシ基もしくはイソプロポキシ基を有するそれらの類似体、また、メルカプトシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリロイルシラン、アンヒドリドシラン、カルバマトシラン、アルキルシラン、ビニルシランもしくはイミノシラン、もしくはこれらのシランのオリゴマー形態、または第一級アミノシランとエポキシシランもしくは(メタ)アクリロイルシランもしくはアンヒドリドシランとの付加体。3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-N’-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、またはこれらのシランのメトキシ基もしくはオリゴマー形態の代わりにエトキシ基を有する対応するシランが特に適している。
【0084】
・可塑剤、特にカルボン酸エステル、例えばフタレート、特にフタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニルもしくはフタル酸ジイソデシル、アジペート、特にアジピン酸ジオクチル、アゼレート、セバケート、ポリオール、特にポリオキシアルキレンポリオールもしくはポリエステルポリオール、グリコールエーテル、グリコールエステル、有機リン酸エステルもしくはスルホン酸エステル、ポリブテン、または天然油脂もしくは油由来の脂肪酸メチルもしくはエチルエステル、いわゆる「バイオディーゼル」、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキル、例えば1,2-シクロヘキサンカルボン酸ジイソノニル。
【0085】
・場合により溶剤。
【0086】
・乾燥剤、特にテトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランもしくはビニルトリエトキシシラン、もしくはシラン基のα位に官能基を有するオルガノアルコキシシラン、特にN-(メチルジメトキシシリルメチル)-O-メチルカルバメート、(メタクリロキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン、オルトギ酸エステルまたは酸化カルシウムまたはモレキュラーシーブ。
【0087】
・酸化、熱、光または紫外線に対する安定剤。
【0088】
・顔料、特に二酸化チタンまたは酸化鉄。
【0089】
・特にレオロジー改質剤、特に増粘剤
・フィロシリケート、例えばベントナイト、ヒマシ油の誘導体、水素化ヒマシ油、ポリアミド、ポリウレタン、尿素化合物、焼成シリカ、セルロースエーテル、または疎水的に改質されたポリオキシエチレン。
【0090】
・繊維、特にガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維またはプラスチック繊維、例えばポリアミド繊維またはポリエチレン繊維。
【0091】
・染料。
【0092】
・天然樹脂、脂肪または油、例えばロジン、セラック、アマニ油、ヒマシ油または大豆油。
【0093】
・非反応性ポリマー、例えば特に、特にエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレートを含む群からの不飽和モノマーのホモ-またはコポリマー、特にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン、
・エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)またはアタクチックポリ-α-オレフィン(APAO)。
【0094】
・難燃性物質、特に上記のフィラー水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウム、または特に有機リン酸エステル、例えば特にトリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(クロロイソプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェート、イソプロピル化度の異なるモノ-、ビス-もしくはトリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)またはアンモニウムポリホスフェート。
【0095】
・界面活性物質、特に湿潤剤、レベリング剤、脱泡剤または消泡剤。
【0096】
・殺生物剤、特に殺藻剤、殺真菌剤、または真菌の成長を阻害する物質。
【0097】
または、湿気硬化性組成物に一般的に使用される追加の物質。
【0098】
組成物に組み込む前に、化学的または物理的手段によって特定の構成成分を乾燥させることが有利な場合がある。
【0099】
好ましい実施形態では、組成物は重金属含有有機化合物を含まない。組成物は特に有機スズ化合物を含まない。
【0100】
組成物は、好ましくは、湿気のない状態で製造および保存される。組成物は、典型的には、好適な包装または構成、例えば特にドラム、バッグまたはカートリッジ内で、湿気がない状態で保存安定性である。
【0101】
組成物は、一成分組成物の形態であっても、二成分組成物の形態であってもよい。
【0102】
本明細書では、「一成分」は、全組成物の構成成分が同じ容器内で一緒に混合されて保存され、湿気硬化性である組成物を指すと理解されるべきである。本明細書では、「二成分」は、組成物の構成成分が、別個の容器内に保存される2つの異なる成分中にある組成物を意味すると理解されるべきである。組成物の塗布の直前または塗布中に、2つの成分を互いに混合して、混合された組成物を硬化させ、硬化は、湿気の作用によってのみ達成されるか完了する。
【0103】
少なくとも1つの物体または物品に組成物を塗布する間、存在するシラン基および存在する任意の追加の湿気反応性基が湿気と接触し、それにより組成物を硬化させる。硬化は、温度、接触のタイプ、湿気の量、および任意の触媒の存在に応じて、様々な速度で生じる。大気湿度によって硬化する場合、組成物の表面に最初にスキンが形成される。いわゆるスキン形成時間は、硬化速度の指標である。
【0104】
本発明のさらなる態様は、本明細書中上記に記載の硬化性ポリマーの硬化により得ることができる硬化したポリマーである。
【0105】
このポリマーは、硬化状態では、高度な弾性特性、特に、高強度および高伸長性を示し、また、極めて多種多様な基材上で良好な耐熱性および良好な接着特性を示す。これにより、このポリマーは、特に繊維複合材料、ポッティングコンパウンド、シーラント、接着剤、被覆剤、建築および産業用途のためのコーティング剤または塗料として、例えば、電気絶縁コンパウンド、フィラーコンパウンド、ジョイントシーラント、溶接またはフランジ付きシームシーラント、寄木用接着剤、組立て接着剤、車体用接着剤、窓用接着剤、サンドイッチ要素用接着剤、床用被覆剤、床コーティング剤、バルコニー用コーティング剤、屋上用コーティング剤、コンクリート保護用コーティング剤、駐車場用コーティング剤、または腐食に対する保護コーティング剤として、シーラント、塗料、ラッカーもしくはプライマーとして、多様な用途に適したものとなる。このポリマーは、接着剤またはシーラントまたはコーティング剤として、特に、建築または産業用途でのジョイントシーリングまたは弾性接着接合に特に適している。
【0106】
硬化したポリマーの一実施形態では、硬化したポリマーは、比較ポリマーと比較して以下の特性のうちの少なくとも1つを有し、それぞれのサンプルは、測定前に23℃および相対湿度50%で14日間保存しており:
(ショアA硬度(DIN 53505):比較ポリマーの90%以下(好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下);
破断点伸びのパーセンテージ値(DIN EN 53504、引張速度:200mm/分、S2試験片):比較ポリマーのパーセンテージ値の101%以上(好ましくは105%以上、さらに好ましくは110%以上);
割線モジュラス(EN ISO 8339、100%伸び):比較ポリマーの90%以下(好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下);)
比較ポリマーは、硬化したポリマーと同じ方法で製造したが、本明細書中上記に記載の方法の触媒成分中にランタノイドと少なくとも1つのβ-ジケトネート配位子との錯体の代わりに、同じモル量のジブチルスズジラウレートを用いて製造した。
【0107】
本発明はさらに、シーラント、接着剤またはコーティング材料としての本明細書中上記に記載の硬化性ポリマーの使用および/または本明細書中上記に記載の硬化したポリマーの使用に関する。
【0108】
硬化性ポリマーは、接着剤またはシーラントとして使用するために、好ましくは、擬塑性特性を有するペースト状の粘稠度を有する。このようなペースト状の接着剤またはシーラントは、場合により塗布ロボットを使用して、特に手動で操作されるか圧縮空気を使用する市販のカートリッジから、または搬送ポンプもしくは押出機を使用するドラムもしくはホブボック(hobbock)から、基材に塗布される。
【0109】
2つの同一または2つの異なる基材を結合またはシールすることが可能である。好適な基材には、特に以下のものが挙げられる:
・ガラス、ガラスセラミック、スクリーン印刷されたセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、石膏または天然石、例えば、花崗岩または大理石;
・金属もしくは合金、例えば、アルミニウム、鉄、鋼もしくは非鉄金属、または表面被覆された金属もしくは合金、例えば、亜鉛めっき金属もしくはクロムめっき金属;
・革、布、紙、木、樹脂、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂もしくはエポキシ樹脂により接合された木質系材料、樹脂-布複合材、または追加のいわゆるポリマー複合材;
・プラスチック、特に非可塑化もしくは可塑化PVC、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、PMMA、エポキシ樹脂、PUR、POM、PO、PE、PP、EPMまたはEPDM(ここで、プラスチックは、プラズマ、コロナまたは火炎処理を使用して表面処理されていてもよい);
・繊維強化プラスチック、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)またはシート成形コンパウンド(SMC);
・被覆基材、例えば、粉末により被覆された金属または合金;
・塗料またはワニス、特に自動車用トップコート。
【0110】
所望により、接着剤またはシーラントを塗布する前に、特に物理的および/または化学的洗浄プロセス、または接着促進剤、接着促進剤溶液もしくはプライマーの塗布を介して、基材を前処理してもよい。
【0111】
2つの基材の結合またはシールの後、接着またはシールされた物品が得られる。そのような物品は、建造物、特に高層もしくは低層の建造物、もしくは工業製品もしくは消費材、特に窓、家庭用器具もしくは交通機関、例えば、特に、自動車、バス、重量物運搬車、鉄道車両、船、飛行機もしくはヘリコプターまたはそれらの付属品であり得る。
【0112】
湿気硬化性組成物は、好ましくは、本明細書中上記に記載されるような、フィラー、架橋剤、可塑剤、溶剤、触媒、接着促進剤、乾燥剤、安定剤、顔料およびレオロジー添加剤から選択される少なくとも1つの追加の構成成分を含有する。湿気硬化性組成物は、好ましくは5重量%~95重量%の範囲、特に10重量%~50重量%の範囲のシラン官能性ポリマーの含有量を有する。
【0113】
[実施例]
本発明は、実施例を参照して以下にさらに詳細に説明されるが、それらに限定されない。
【0114】
方法および材料
ショア硬度、破断点伸び、引張強度、100%伸び時の引張応力および弾性の決定
カートリッジ内での製造から測定して7日間保存した後、ドクターブレードを使用してポリエチレンフィルムに湿気硬化性組成物を塗布して、2mmの均一な層厚を有する膜を得、23℃および相対湿度50%で14日間硬化させ、7日後に膜をフィルムから取り外し、裏返した。次に、得られた膜の特性を以下の方法により決定した。
【0115】
DIN ISO 7619-1の仕様に準拠して、膜に対してショアA硬度の試験を行った。ショアA硬度を決定するために、3つの膜を互いに重ね合わせて6mmの層厚を確保した。
【0116】
成形パンチを使用して、上記のように製造された膜からスタンピングされたS2ダンベルに関するDIN 53 504の仕様に従った引張試験によって、破断点伸び、引張強度、および100%伸び時の引張応力を決定した。試験速度は200mm/分であった。
【0117】
アルミニウム試験片(保存方法B)に関するISO 7389に準拠して、弾性を決定した。
【0118】
粘度は、7日または60日の保存後に決定し、DIN EN ISO 3219/B3の仕様に準拠して40/sの剪断速度で行った。
【0119】
湿気硬化性組成物のスキン形成時間は、製造後7日で決定した。ドクターブレード(200μm)を使用して、あらかじめ酢酸エチルで洗浄されたガラス板に接着剤のフィルムを塗布し、直ちに乾燥レコーダー(BK 3乾燥レコーダーBYK-Gardner)に入れる。針に10gの荷重をかけ、35cmの距離を24時間かけて移動させる。23℃および相対湿度50%の気候制御室に乾燥レコーダーを設置した。フィルムからの針の恒久的な痕跡の消失時間をスキン形成時間として指定した。
【0120】
実験実施時の周囲温度23℃をRT(室温)とする。
【0121】
製造の7日後に、層厚計を用いてその最低点で測定され、窪みの先頭にマーキングを有するくさび形溝を有するテフロン型内で、湿気硬化性組成物の完全硬化を決定した。シーラント/接着剤を溝に過剰に充填し、気泡を回避した。カードまたはへらを使用して、はみ出したシーラント/接着剤を取り除いた。試験は、標準的な気候条件(23℃/50%相対大気湿度)の下、気候制御室内で行った。窪みの先頭のマーキングから、硬化していない材料が型に残るまで、1日後または3日後にシーラント/接着剤層を注意深く取り除いた。この点の端に印を付け、取り除いたシーラント/接着剤を再び型に入れ、適所に軽く押した。定規を用いて、窪みの先頭のマーキングと、このマーキングとの間の距離を測定した(シーラント/接着剤の硬化済みの長さに対応する)。以下の式に従って、完全硬化Dを計算する:D=(l ・ d)/L(l=シーラント/接着剤の硬化済みの長さ[mm]、L=溝の長さ[mm]およびd=溝の最大深さ[mm])。
【0122】
24時間の硬化後の2mm膜の粘着性を軽い指圧により評価した。フィルムがべた付き感をまだ有するかどうかを評価した。
【0123】
硬化性組成物の配合では、助剤および添加物質は以下のように定義される:
【表1】
【0124】
アルコキシシラン含有ポリウレタンの製造
[実施例1-1]
(発明)
OH価13のプロピレングリコール(Covestro Germany AG;Leverkusen DEのAcclaim(登録商標)Polyol 8200 N)1174.0gを、Mesamoll(登録商標)(Lanxess AG,Leverkusen,DE)147.2 gおよびイソホロンジイソシアネート63.5gと、60℃で80ppmのイッテルビウム(III)アセチルアセトネートを加え理論上のNCO含有量0.84%が達成されるまで予備重合した。次いで、ジエチルN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アスパルテート(EP-A 596360、例5に従って製造)102.1gを迅速に滴下し、イソシアネートのバンドがIRスペクトルで見えなくなるまで混合物を撹拌した。アルコキシシラン末端基を含む得られたポリウレタンプレポリマーは、21100mPasの粘度を有した。
【0125】
[実施例1-2]
(比較例)
80ppmのイッテルビウム(III)アセチルアセトネートの代わりに40ppmのジブチルスズジラウレートを使用したことを除いて、実施例1に記載の手順を繰り返した。アルコキシシラン末端基を含む得られたポリウレタンプレポリマーは、23500mPasの粘度を有した。
【0126】
[実施例1-3]
(発明)
OH価4.9のポリプロピレングリコール(EP-A 0654302の例7に従って製造した)1200.0gを80℃で6時間真空乾燥した。60℃に冷却した後、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Geniosil(登録商標)GF40、Wacker AG,Burghausen)24.36gおよび100ppmのイッテルビウム(III)アセチルアセトネートを加え、理論上のNCO含有量0.05%が達成されるまで反応を予備重合した。次いで、メタノール0.4gを加えて、過剰なNCO基を吸収させた。イソシアネートのバンドがIRスペクトルで見えなくなるまで、混合物を撹拌した。アルコキシシラン末端基を含む得られたポリウレタンプレポリマーは、69400mPas(23℃)の粘度を有した。
【0127】
[実施例1-4]
(比較例)
100ppmのイッテルビウム(III)アセチルアセトネートの代わりに50ppmのジブチルスズジラウレートを使用したことを除いて、実施例3に記載の手順を繰り返した。アルコキシシラン末端基を含む得られたポリウレタンプレポリマーは、62200mPasの粘度を有した。
【0128】
[実施例1-5]
(比較例)
100ppmのイッテルビウム(III)アセチルアセトネートの代わりに100ppmのK-Kat XK-614(スズを含まない、亜鉛ベースのウレタン化触媒、King Industries)を使用したことを除いて、実施例3に記載の手順を繰り返した。アルコキシシラン末端基を含む得られたポリウレタンプレポリマーは、70300mPasの粘度を有した。
【0129】
湿気硬化性組成物の配合
以下の手順に従って、湿気硬化性組成物を製造した:バタフライスターラー(200回転/分)およびディゾルバーディスク(2500回転/分)を備えた実験室ディゾルバー内で、静的真空下および冷却下で15分間かけて、接着促進剤を除いて表1に列挙された全成分を分散させた。ここで、静的真空とは、装置が200mbar(動的真空)の圧力まで排気され、次いで真空ポンプへの接続が切断されることを意味すると理解されるべきである。製造全体を通じて65℃を超えないように冷却を選択した。次いで、接着促進剤を加え、混合物を静的真空下でさらに10分間分散させた。
【0130】
配合に関する以下のデータは重量部単位である。
【0131】
:比較例
【表2】
【表3】
【0132】
本発明による組成物は、ジブチルスズジラウレートにより触媒されたアルコキシシラン含有ポリウレタンに基づくものと比較して、完全硬化について同等の値を示すことが見出された。フィルム乾燥は、いずれの場合も60分未満の範囲であった。比較例2-5の組成物(アルコキシシラン含有ポリウレタンのZn触媒作用)は、高いフィルム乾燥時間、および24時間後の残留粘着性から明らかなように、ゆっくりとしか硬化しない。
【0133】
2mmの厚さを有する膜を配合物から引き出し、機械的試験に供した。
【表4】
【0134】
本発明による硬化した組成物は、DBTLが使用されたそれぞれの比較例と比較して、100%伸び時に顕著に低減された割線モジュラスを達成し、これは低モジュラス建築用シーラントとしての使用に特に有利であることが見出された。スズを含まない、亜鉛化合物をベースとする配合物(2-6)は、スズを含有する、亜鉛化合物をベースとする配合物(2-5)と比較して、ショア硬度、および100%伸び時の割線モジュラスについて比較的高い値を示している。