(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】ゲルタイプ熱界面材料
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240122BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/04
(21)【出願番号】P 2020543090
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(86)【国際出願番号】 US2019017743
(87)【国際公開番号】W WO2019160886
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-04
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】シェン、リン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、カイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、リーチャン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ヤークン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シン
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-144234(JP,A)
【文献】特開2012-201106(JP,A)
【文献】国際公開第2014/126141(WO,A1)
【文献】特開2006-274154(JP,A)
【文献】国際公開第2009/136542(WO,A1)
【文献】特開2009-138036(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033992(WO,A1)
【文献】特表2019-525979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09K 5/00- 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱界面材料であって、
50,000ダルトン未満の重量(M
w)平均分子量を有し、ビニル官能性シリコーン油を含む低分子量シリコーン油と、
1.0m
2/gを超える表面積を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、
少なくとも60,000ダルトンの重量(M
w)平均分子量を有し、ビニル官能性シリコーン油を含み、熱界面材料の総重量に基づいて0.1重量%~5重量%の量で含まれる、高分子量シリコーン油と、
ヒドロシリコーン油の形態の0.1重量%~1重量%の架橋剤と、
60℃~220℃の沸点温度を有する溶媒と、
を含み、
25℃及び10s
-1の剪断速度で150Pa・s~650Pa・sの粘度を有する、熱界面材料。
【請求項2】
2重量%~10重量%の前記低分子量シリコーン油と、
50重量%~95重量%の前記少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、
0.1重量%~5重量%の前記高分子量シリコーン油と、
0.1重量%~5重量%の前記溶媒と、
0.1重量%~5重量%のシランカップリング剤と、
ヒドロシリコーン油の形態の0.1重量%~1重量%の前記架橋剤と、
0.1重量%~5重量%の阻害剤と、
0.1重量%~5重量%の触媒と、
を含む、請求項
1に記載の熱界面材料。
【請求項3】
前記少なくとも1つの熱伝導性充填剤が酸化アルミニウムであり、溶媒は揮発性溶媒であり、シランカップリング剤がヘキサデシルトリメトキシシランであり、かつ触媒が付加白金触媒である、請求項
2に記載の熱界面材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、熱界面材料に関し、より具体的にはゲルタイプ熱界面材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱界面材料(Thermal interface materials、TIM)は、中央処理装置、ビデオグラフィックスアレイ、サーバー、ゲーム機、スマートフォン、LEDボード等の電子部品からの熱を放散するために広く使用されている。熱界面材料は、典型的には、過剰の熱を電子部品からヒートシンク等のヒートスプレッダに伝達するために用いられる。
【0003】
熱界面材料を含む典型的な電子回路パッケージ構造体10が
図1に示されている。電子回路パッケージ構造体10は、例示的に、電子チップ12等の発熱部品と、ヒートスプレッダ14及びヒートシンク16等の1つ以上の放熱部品とを含む。例示的なヒートスプレッダ14及びヒートシンクとしては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、又はニッケルメッキ銅等の金属、金属合金、又は金属メッキ基板が挙げられる。TIM18及びTIM20等のTIM材料は、発熱部品と1つ以上の放熱部品との間に熱的接続を提供する。電子回路パッケージ構造体10は、電子チップ12とヒートスプレッダ14とを接続する第1のTIM18を含む。TIM18は、典型的には、「TIM1」と呼ばれる。電子回路パッケージ構造体10は、ヒートスプレッダ14とヒートシンク16とを接続する第2のTIM20を含む。TIM20は、典型的には、「TIM2」と呼ばれる。別の実施形態では、電子回路パッケージ構造体10は、ヒートスプレッダ14を含まず、TIM(図示せず)は、電子チップ12をヒートシンク16に直接接続する。電子チップ12をヒートシンク16に直接接続するそのようなTIMは、典型的には、TIM1.5と呼ばれる。
【0004】
従来の熱界面材料としては、ギャップパッド等の部品が挙げられる。しかしながら、ギャップパッドは、非常に薄い厚さの要件を満たすことができないこと、自動化された製造に使用することが困難であること等のいくつかの欠点を有する。
【0005】
他の熱界面材料としては、ゲル生成物が挙げられる。ゲル生成物は、大規模生産のために自動的に分注され、所望の形状及び厚さに形成され得る。しかしながら、良好な流動特性を有する典型的なゲル製品は、潜在的に油漏れ(「漏出」としても知られている)を起す可能性がある。上記の改良が望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、コンピュータチップ等の発熱電子デバイスからヒートスプレッダ及びヒートシンク等の放熱構造体に熱を伝達するのに有用な熱界面材料を提供する。熱界面材料は、少なくとも1つのシリコーン油と、少なくとも1つの触媒と、比較的大きな表面積を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、溶媒と、少なくとも1つの阻害剤と、少なくとも1つの架橋剤と、を含む。少なくとも1つの熱伝導性充填剤は、TIMの油漏れを低減し、溶媒は、当該熱伝導性充填剤によって実現される油漏れの低減を無効にすることなくTIMの流速を増大させる。
【0007】
例示的な一実施形態では、熱界面材料が提供される。熱界面材料は、50,000ダルトン未満の重量(Mw)平均分子量を有する低分子量シリコーン油と、1.0m2/gを超える表面積を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、少なくとも60,000ダルトンの重量(Mw)平均分子量を有するビニル官能性シリコーン油を含む高分子量シリコーン油と、を含む。
【0008】
より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、1500Pa.sを超える粘度を有する。より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、60℃~220℃の沸点及び0.2cSt~50cStの粘度を有する溶媒を更に含む。より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、150Pa・s~650Pa・sの粘度を有する。より具体的な一実施形態では、少なくとも1つの熱伝導性充填剤は、第1の熱伝導性充填剤、第2の熱伝導性充填剤、及び第3の熱伝導性充填剤を含み、当該第1の熱伝導性充填剤は、0.1m2/g~1.0m2/gの表面積を有する金属酸化物であり、当該第2の熱伝導性充填剤は、0.5m2/g~2.0m2/gの表面積を有する金属酸化物であり、当該第3の熱伝導性充填剤は、5.0m2/g~10.0m2/gの表面積を有する金属酸化物である。より具体的な一実施形態では、第1の熱伝導性充填剤は、少なくとも10マイクロメートルの平均粒径を有し、第2の熱伝導性充填剤は、1マイクロメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有し、第3の熱伝導性充填剤は、1マイクロメートル未満の平均粒径を有する。
【0009】
より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、2重量%~10重量%の低分子量シリコーン油と、50重量%~95重量%の少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、0.1重量%~5重量%の高分子量シリコーン油と、0.1重量%~5重量%の溶媒と、0.1重量%~5重量%のカップリング剤と、0.1重量%~1重量%の架橋剤と、0.1重量%~5重量%の阻害剤と、0.1重量%~5重量%の触媒と、を含む。より具体的な一実施形態では、少なくとも1つの熱伝導性充填剤は、25重量%~50重量%の、0.1m2/g~1.0m2/gの表面積を有する第1の熱伝導性充填剤と、25重量%~50重量%の、0.5m2/g~2.0m2/gの表面積を有する第2の熱伝導性充填剤と、25重量%~50重量%の、5.0m2/g~10.0m2/gの表面積を有する第3の熱伝導性充填剤と、を含む。より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、150Pa・s~650Pa・sの粘度を有する。
【0010】
一実施形態では、熱界面材料が提供される。熱界面材料は、50,000ダルトン未満の重量(Mw)平均分子量を有する低分子量シリコーン油と、第1の熱伝導性充填剤、第2の熱伝導性充填剤、及び第3の熱伝導性充填剤であって、当該第1の熱伝導性充填剤が、0.1m2/g~1.0m2/gの表面積を有する金属酸化物であり、当該第2の熱伝導性充填剤が、0.5m2/g~2.0m2/gの表面積を有する金属酸化物であり、当該第3の熱伝導性充填剤が、5.0m2/g~10.0m2/gの表面積を有する金属酸化物である、第1の熱伝導性充填剤、第2の熱伝導性充填剤、及び第3の熱伝導性充填剤と、少なくとも60,000ダルトンの重量(Mw)平均分子量を有するビニル官能性シリコーン油を含む高分子量シリコーン油と、60℃~220℃の沸点及び0.2cSt~50cStの粘度を有する溶媒と、を含む。
【0011】
より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、2重量%~10重量%の低分子量シリコーン油と、25重量%~50重量%の、0.1m2/g~1.0m2/gの表面積を有する第1の熱伝導性充填剤と、25重量%~50重量%の、0.5m2/g~2.0m2/gの表面積を有する第2の熱伝導性充填剤と、25重量%~50重量%の、5.0m2/g~10.0m2/gの表面積を有する第3の熱伝導性充填剤と、0.1重量%~5重量%の高分子量シリコーン油と、0.1重量%~5重量%の溶媒と、0.1重量%~5重量%のカップリング剤と、0.1重量%~1重量%の架橋剤と、0.1重量%~5重量%の阻害剤と、0.1重量%~5重量%の触媒と、を含む。より具体的な一実施形態では、低分子量シリコーン油は、ビニル官能性シリコーン油を含み、高分子量シリコーン油は、2,000,000cStの絶対粘度を有するビニルシリコーン油である。より具体的な一実施形態では、第1の熱伝導性充填剤は、少なくとも10マイクロメートルの平均粒径を有し、第2の熱伝導性充填剤は、1マイクロメートル~10マイクロメートルの平均粒径を有し、第3の熱伝導性充填剤は、1マイクロメートル未満の平均粒径を有する。より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、1mm~5mmの漏出痕跡値と、20g/分~50g/分の流速とを有する。より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、150Pa・s~650Pa・sの粘度を有する。
【0012】
一実施形態では、電子部品が提供される。電子部品は、ヒートシンクと、電子チップと、当該ヒートシンクと電子チップとの間に配置された熱界面材料であって、50,000ダルトン未満の重量(Mw)平均分子量を有する低分子量シリコーン油と、1.0m2/gを超える表面積を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、少なくとも60,000ダルトンの重量(Mw)平均分子量を有するビニル官能性シリコーン油を含む高分子量シリコーン油と、を含む熱界面材料と、を含む。
【0013】
より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、1500Pa.sを超える粘度を有する。より具体的な一実施形態では、電子部品は、60℃~220℃の沸点及び0.2cSt~50cStの粘度を有する溶媒を更に含む。より具体的な一実施形態では、熱界面材料は、150Pa・s~650Pa・sの粘度を有する。より具体的な一実施形態では、少なくとも1つの熱伝導性充填剤は、第1の熱伝導性充填剤、第2の熱伝導性充填剤、及び第3の熱伝導性充填剤を含み、当該第1の熱伝導性充填剤は、0.1m2/g~1.0m2/gの表面積を有する金属酸化物であり、当該第2の熱伝導性充填剤は、0.5m2/g~2.0m2/gの表面積を有する金属酸化物であり、当該第3の熱伝導性充填剤は、5.0m2/g~10.0m2/gの表面積を有する金属酸化物である。
【0014】
より具体的な一実施形態では、電子部品は、ヒートシンクと電子チップとの間に配置されたヒートスプレッダであって、第1の表面層が、当該電子チップの表面と接触しており、第2の表面層が、当該ヒートスプレッダと接触している、ヒートスプレッダを更に含む。より具体的な一実施形態では、電子部品は、ヒートシンクと電子チップとの間に配置されたヒートスプレッダであって、第1の表面層が、当該ヒートスプレッダの表面と接触しており、第2の表面層が、当該ヒートシンクと接触している、ヒートスプレッダを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面と組み合わせて本発明の実施形態の以下の記載を参照することによって、本開示の上述及び他の特徴及び有利性、並びにそれらを達成する方法がより明らかになり、本発明それ自体がより良好に理解されるであろう。
【0016】
【
図1】典型的な電子回路パッケージ構造体を概略的に図示する。
【0017】
【
図2】油漏出試験に関連して比較例1に関し、油漏出試験後の比較例1から形成されたサンプルを示す。
【0018】
【
図3A】実施例1に関し、油漏出試験後の実施例1から形成されたサンプルを示す。
【0019】
【
図3B】実施例1に関し、油漏出試験後の実施例1から形成されたサンプルの裏側を示す。
【0020】
【
図4】本開示による熱界面材料の調製方法を示すフローチャートである。
【0021】
【
図5】本開示の実施形態によるディスペンサ装置を示す。
【0022】
対応する参照文字は、いくつかの図にわたって対応する部分を示す。本明細書に記載される例証は、本発明の例示的な実施態様を示すものであり、このような例証は、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.熱界面材料
本発明は、電子部品から離れて熱を伝達するのに有用な熱界面材料(TIM)に関する。例示的な一実施形態では、TIMは、少なくとも1つのシリコーン油、少なくとも1つの触媒、比較的大きな表面積を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤、溶媒、少なくとも1つの阻害剤、及び少なくとも1つの架橋剤を含む。少なくとも1つの熱伝導性充填剤は、TIMの油漏れを低減し、溶媒は、当該熱伝導性充填剤によって実現される油漏れの低減を無効にすることなくTIMの流速を増大させる。
1.シリコーン油
a.概要
【0024】
本開示は、少なくとも1つの低分子量シリコーン油と、少なくとも1つの高分子量シリコーン油と、を含む、TIM材料用のマトリックスを提供する。シリコーン油は、触媒によって架橋さる、ビニル、水素化物、ヒドロキシル、及びアクリレート官能基等の1つ以上の架橋性基を含む。一実施形態では、1つ以上のシリコーン油は、第1のシリコーン油と、第2のシリコーン油とを含み、第1のシリコーン油はビニル官能性シリコーン油であり、第2のシリコーン油は水素化物官能性シリコーン油である。シリコーン油は、熱伝導性充填剤を湿潤し、TIMのための分注可能な(dispensable)流体を形成する。
【0025】
例示的な一実施形態において、シリコーン油は、Shin-Etsuから入手可能なKEシリーズ製品、Bluestarから入手可能なSILBIONE(登録商標)、Wackerから入手可能なELASTOSIL(登録商標)、SilGel(登録商標)、SILPURAN(登録商標)、及びSEMICOSIL(登録商標)、Momentiveから入手可能なSilopren(登録商標)、Dow Corningから入手可能なDow Corning(登録商標)、Silastic(登録商標)、XIAMETER(登録商標)、Syl-off(登録商標)、及びSYLGARD(登録商標)、Square Siliconeから入手可能なSQUARE(登録商標)、AB specialty Siliconesから入手可能なAndril(登録商標)等のシリコーンゴムを含む。他のポリシロキサンは、Wacker、Shin-etets、Dowcoring、Momentive、Bluestar、RUNHE、AB Specialty Silicones、Gelest、及びUnited Chemical Technologiesから入手可能である。
b.低分子量シリコーン油
1.ビニル官能性シリコーン油
【0026】
TIMは、ゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)で測定して、低重量平均分子量のシリコーン油を含む。低分子量シリコーン油は、熱伝導性充填剤を濡らして、TIMのための分注可能な流体を形成する。例示的な低分子量シリコーン油は、以下に示す一般式を有するビニルシリコーン油を含み得る。
【化1】
【0027】
例示的な低分子量ビニルシリコーン油はまた、少量の白金触媒も含み得る。
【0028】
ビニル官能性シリコーン油は、Si-CH=CH2基を有する有機シリコーン成分を含む。例示的なビニル官能性シリコーン油としては、ビニル末端シリコーン油、Si-CH=CH2基がポリマー鎖にグラフトされたビニルグラフトシリコーン油、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
例示的なビニル末端シリコーン油としては、各々、Gelest,Inc.から入手可能なDMS-V00(186ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有する)、DMS-V03(約500ダルトンのMwを有する)、DMS-V05(約800ダルトンのMwを有する)、DMS-V21(約6,000ダルトンのMwを有する)、DMS-V22(約9,400ダルトンのMwを有する)、DMS-V25(約17,200ダルトンのMwを有する)、DMS-V25R(約17,200ダルトンのMwを有する)、DMS-V35(約49,500ダルトンのMwを有する)、DMS-V35R(約49,500ダルトンのMwを有する)等のビニル末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。例示的なビニル末端シリコーン油としては、各々、Gelest,Inc.から入手可能なPDV-0325(約15,500ダルトンのMwを有する)、PDV-0331(約27,000ダルトンのMwを有する)、PDV-0525(約14,000ダルトンのMwを有する)、PDV-1625(約9,500ダルトンのMwを有する)、PDV-1631(約19,000ダルトンのMwを有する)、PDV-2331(約12,500ダルトンのMwを有する)等のビニル末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。例示的なビニル末端シリコーン油としては、Gelest,Inc.から入手可能なPMV-9925(約2,000~3,000ダルトンのMwを有する)等のビニル末端ポリフェニルメチルシロキサンが挙げられる。例示的なビニル末端シリコーン油としては、Gelest,Inc.から入手可能なEDV-2025(約16,500~19,000ダルトンのMwを有する)等のビニル末端ジエチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0030】
例示的なビニルグラフトシリコーン油としては、双方、Gelest,Inc.から入手可能なVMS-005(約258~431ダルトンのMwを有する)、VMS-T11(約1,000~1,500ダルトンのMwを有する)等のビニルメチルシロキサンホモポリマーが挙げられる。例示的なビニルグラフトシリコーン油としては、トリメチルシロキシ末端シリコーン油、シラノール末端シリコーン油、及びビニル末端シリコーン油等のビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0031】
例示的な一実施形態では、ビニルグラフトシリコーン油は、VAT-4326(約10,000~12,000ダルトンのMwを有する)等のビニルメチルシロキサン-オクチルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンターポリマー、又はVBT-1323(約8,000~12,000ダルトンのMwを有する)等のビニルメチルシロキサン-メトキシポリエチレンオキシプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンターポリマー、又はビニルメチルシロキサン-フェニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサン(約2,500~3,000ダルトンのMwを有する)を含む、ビニルメチルシロキサンターポリマーであり、各々、Gelest,Inc.から入手可能である。
【0032】
例示的な一実施形態では、ビニル官能性シリコーン油は、ビニルT樹脂又はビニルQ樹脂を含む。
【0033】
例示的な一実施形態では、シリコーン油は、RUNHEのRH-Vi303、RH-Vi301等、AB Specialty SiliconesのAndril(登録商標)VS200、Andril(登録商標)VS1000等のビニル官能性油である。
【0034】
例示的な低分子量シリコーン油は、例えば、最低50ダルトン、500ダルトン、1000ダルトン、最高5000ダルトン、10,000ダルトン、50,000ダルトン、又は50ダルトン~50,000ダルトン、500ダルトン~50,000ダルトン、若しくは1,000ダルトン~50,000ダルトン等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の重量(Mw)平均分子量を有し得る。
【0035】
例示的な低分子量シリコーン油は、ASTM D445に従って測定したとき、例えば、最低0.5cSt、5cSt、100cSt、最高5,000cSt、10,000cSt、50,000cSt、又は0.5cSt~50,000cSt、5cSt~10,000cSt、若しくは100cSt~5,000cSt等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の絶対粘度を有し得る。例示的な一実施形態では、例示的な低分子量シリコーン油は、1,000cStの絶対粘度を有する低分子量ビニルシリコーン油である。例示的な別の実施形態では、例示的な低分子量シリコーン油は、1,500cStを超える絶対粘度を有する低分子量ビニルシリコーン油である。
【0036】
TIMは、TIMの総重量に基づいて、最低0.1重量%、0.5重量%、0.67重量%、1重量%、最高3重量%、5重量%、10重量%、20重量%、又は0.1重量%~15重量%、0.1重量%~10重量%、若しくは0.67重量%~10重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の1つ以上の低分子量シリコーン油を含む。
c.高分子量シリコーン油
【0037】
TIMは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定して、高分子量のシリコーン油を含む。高分子量シリコーン油は、熱サイクリング中のTIMの亀裂を防止する機能を有する。例示的な高分子量シリコーン油は、上記の低分子量シリコーン油と同様に、以下に示す一般式を有するビニルシリコーン油を含み得る。
【化2】
【0038】
ビニル官能性シリコーン油は、Si-CH=CH2基を有する有機シリコーン成分を含む。例示的なビニル官能性シリコーン油としては、ビニル末端シリコーン油、Si-CH=CH2基がポリマー鎖にグラフトされたビニルグラフトシリコーン油、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
例示的なビニル末端シリコーン油としては、各々、Gelest,Inc.から入手可能なDMS-V41(約62,700ダルトンのMwを有する)、DMS-V42(約72,000ダルトンのMwを有する)、DMS-V46(約117,000ダルトンのMwを有する)、DMS-V51(約140,000ダルトンのMwを有する)、及びDMS-V52(約155,000ダルトンのMwを有する)等のビニル末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0040】
例示的なビニルグラフトシリコーン油としては、トリメチルシロキシ末端シリコーン油、シラノール末端シリコーン油、及びビニル末端シリコーン油等のビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0041】
例示的な一実施形態では、ビニルグラフトシリコーン油は、ビニルメチルシロキサンターポリマーである。例示的な一実施形態では、ビニル官能性シリコーン油は、ビニルT樹脂又はビニルQ樹脂を含む。
【0042】
別の例示的な高分子量シリコーン油は、有機シリコーン成分及びSi-H基を有する水素化物官能性シリコーン油を含み得る。例示的な水素化物官能性シリコーン油としては、Si-H基がポリマー鎖にグラフトされている、水素化物末端シリコーン油、水素化物グラフトシリコーン油、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
例示的な一実施形態では、水素化物末端シリコーン油は、Gelest,Inc.から入手可能なDMS-H41(約62,700ダルトンのMwを有する)等の水素化物末端ポリジメチルシロキサンである。例示的な一実施形態では、水素化物末端シリコーン油は、トリメチルシロキシ末端又は水素化物末端等のメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーである。例示的なトリメチルシロキシ末端コポリマーとしては、Gelest,Inc.から入手可能なHMS-064(約60,000~65,000ダルトンのMwを有する)が挙げられる。
【0044】
例示的な低分子量シリコーン油は、例えば、最低100,000ダルトン、300,000ダルトン、500,000ダルトン、最高1,000,000ダルトン、10,000,000ダルトン、100,000,000ダルトン、又は100,000ダルトン~100,000,000ダルトン、若しくは300,000ダルトン~10,000,000ダルトン、若しくは500,000ダルトン~1,000,000ダルトン等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の重量(Mw)平均分子量を有し得る。
【0045】
例示的な高分子量シリコーン油は、ASTM D445に従って測定したとき、例えば、最低10,000cSt、20,000cSt、100,000cSt、最高1,000,000cSt、10,000,000cSt、100,000,000cSt、又は10,000cSt~100,000,000cSt、20,000cSt~10,000,000cSt、若しくは100,000cSt~1,000,000cSt等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の絶対粘度を有し得る。例示的な一実施形態では、例示的な高分子量シリコーン油は、2,000,000cStの動粘度を有する高分子量ビニルシリコーン油である。
【0046】
TIMは、TIMの総重量に基づいて、最低0.01重量%、0.1重量%、0.25重量%、0.5重量%、0.67重量%、0.75重量%、最高1重量%、1.5重量%、2重量%、5重量%、又は0.1重量%~5重量%、0.1重量%~1重量%、若しくは0.25重量%~0.67重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、1つ以上の高分子量シリコーン油を含み得る。例示的な一実施形態では、TIMは、約1.5重量%の量の高分子量シリコーン油を含む。
2.触媒
【0047】
TIMは、付加反応を触媒するための1つ以上の触媒を更に含む。例示的な触媒は、白金含有材料及びロジウム含有材料を含む。例示的な白金含有触媒は、以下に示す一般式を有し得る。
【化3】
【0048】
例示的な白金含有触媒としては、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体(Ashby Karstedt触媒)、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体(Ossko触媒)、白金ジビニルテトラメチルジシロキサンジメチルフマレート錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサンジメチルマレイン酸錯体等が挙げられる。白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体の例としては、SIP6829.2が挙げられ、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の例としては、SIP6830.3及びSIP6831.2が挙げられ、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体の例としては、SIP6833.2が挙げられ、これらは全て、Gelest,Inc.から入手可能である。白金含有材料触媒の更なる例示的な例としては、Wacker Chemie AGから入手可能なCatalyst OL、及びUnited Chemical Technologies Inc.から入手可能なPC065、PC072、PC073、PC074、PC075、PC076、PC085、PC086、PC087、PC088が挙げられる。
【0049】
例示的なロジウム含有材料としては、Gelest,Inc.から入手可能なトリス(ジブチルスルフィド)ロジウムトリクロライド(製品コードINRH078)が挙げられる。
【0050】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、白金触媒は、以下に示すように、ビニルシリコーン油及びヒドロシリコーン油と反応すると考えられる。
【化4】
【0051】
TIMは、シリコーン油の総重量に基づいて、例えば、最低5ppm、10ppm、15ppm、20ppm、最高25ppm、30ppm、40ppm、50ppm、100ppm、200ppm、500ppm、1000ppm、又は10ppm~30ppm、20ppm~100ppm、若しくは5ppm~500ppm等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、1つ以上の触媒を含み得る。
【0052】
例示的な一実施形態では、触媒は、1つ以上のシリコーン油との混合物として提供される。例示的な一実施形態では、白金含有材料触媒は、Shin-Etsuから入手可能なKE-1012-A、KE-1031-A、KE-109E-A、KE-1051J-A、KE-1800T-A、KE1204A、KE1218A等、Bluestarから入手可能なSILBIONE(登録商標)RT Gel 4725 SLD A等、Wackerから入手可能なSilGel(登録商標)612A、ELASTOSIL(登録商標)LR3153A、ELASTOSIL(登録商標)LR3003A、ELASTOSIL(登録商標)LR3005A、SEMICOSIL(登録商標)961A、SEMICOSIL(登録商標)927A、SEMICOSIL(登録商標)205A、SILPURAN(登録商標)2440等、Momentiveから入手可能なSilopren(登録商標)LSR 2010A等、Dow Corningから入手可能なXIAMETER(登録商標)RBL-9200A、XIAMETER(登録商標)RBL-2004A、XIAMETER(登録商標)RBL-9050A、XIAMETER(登録商標)RBL-1552A、Silastic(登録商標)FL30-9201A、Silastic(登録商標)9202A、Silastic(登録商標)9204A、Silastic(登録商標)9206A、SYLGARD(登録商標)184A、Dow Corning(登録商標)QP-1A、Dow corning(登録商標)C6A、Dow Corning(登録商標)CV9204A等の官能性シリコーン油に合わされる。
【0053】
TIMは、TIMの総重量に基づいて、例えば、最低0.01重量%、0.1重量%、0.2重量%、最高0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、又は0.01重量%~0.5重量%、0.01重量%~0.4重量%、若しくは0.01重量%~0.3重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、触媒を含み得る。例示的な一実施形態では、TIMは、約0.01重量%の量の触媒を含む。別の例示的な実施形態では、TIMは、約0.3重量%の量の触媒を含む。
【0054】
別の実施形態では、白金含有材料触媒は、高分子量ビニル官能性シリコーン油と合わされる。
3.熱伝導性充填剤
【0055】
TIMは、1つ以上の熱伝導性充填剤を含む。熱伝導性充填剤は、熱界面材料を介して熱を伝導するための熱伝導性材料を提供する。例示的な熱伝導性充填剤としては、金属、合金、非金属、金属酸化物及びセラミック、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。金属としては、アルミニウム、銅、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、インジウム、及び鉛が挙げられるが、それらに限定されない。非金属としては、カーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン、窒化ホウ素、及び窒化ケイ素が挙げられるが、それらに限定されない。金属酸化物又はセラミックとしては、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、及び酸化スズが挙げられるが、それらに限定されない。
【0056】
TIMは、TIMの総重量に基づいて、例えば、最低10重量%、20重量%、25重量%、50重量%、最高75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、97重量%、又は例えば10重量%~95重量%、20重量%~95重量%、若しくは25重量%~90重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、1つ以上の熱伝導性充填剤を含み得る。
【0057】
例示的な熱伝導性充填剤は、例えば、最低0.1マイクロメートル、1マイクロメートル、10マイクロメートル、最高50マイクロメートル、75マイクロメートル、100マイクロメートル、又は0.1マイクロメートル~100マイクロメートル、0.1マイクロメートル~75マイクロメートル、若しくは0.1マイクロメートル~50マイクロメートル等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の平均粒径を有し得る。
【0058】
例示的な熱伝導性充填剤は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)手順、ASTM C1274-2012、又はASTB922-2010によって測定したとき、最低0.10m2/g、0.50m2/g、1.0m2/g、最高5.0m2/g、7.0m2/g、8.5m2/g、10.0m2/g、又は0.1m2/g~0.5m2/g、0.10m2/g~10.0m2/g、若しくは0.10m2/g~8.5m2/g等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の表面積を有し得る。例示的な一実施形態では、例示的な熱伝導性充填剤は、0.15m2/gの表面積を有する。別の実施形態では、例示的な熱伝導性充填剤は、1.1m2/gの表面積を有する。更に別の例示的な実施形態では、例示的な熱伝導性充填剤は、7.6m2/gの表面積を有する。
【0059】
特定の理論に束縛されるものではないが、TIMで使用されるより高表面積の熱伝導性充填剤は、TIMの油漏出を制御すると考えられ、その理由は、このような高表面積の充填剤が熱ゲルの流速を低下させる(すなわち、より粘性にする)ためである。更に、より大きな表面積の充填剤は、油分子を吸収することができ、吸収に関与する分子間力のために、油はTIMから自由に流動することができず、それによって油漏出が低減される。更に、より小さな充填剤を使用すると、充填剤間の距離が短くなり、TIM内に毛管ネットワークが形成される。毛管ネットワークは油を吸収するので、油漏出が低減される。
【0060】
例示的な一実施形態では、TIMは、第1の熱伝導性充填剤、第2の熱伝導性充填剤、及び第3の熱伝導性充填剤を含んでいてよく、当該第1の熱伝導性充填剤は、最低0.1m2/g、0.2m2/g、0.5m2/g、最高0.6m2/g、0.8m2/g、1.0m2/g、又はこれらの間で規定される任意の範囲内の表面積を有し、当該第2の熱伝導性充填剤は、最低0.5m2/g、0.7m2/g、0.9m2/g、最高1.5m2/g、1.7m2/g、2.0m2/g、又はこれらの間で規定される任意の範囲内の表面積を有し、当該第3の熱伝導性充填剤は、最低5.0m2/g、6.0m2/g、7.0m2/g、最高8.0m2/g、9.0m2/g、10.0m2/g、又はこれらの間の任意の範囲内の表面積を有する。
【0061】
例示的な一実施形態では、TIMは、全TIM組成物に対して、例えば、最低20重量%、25重量%、30重量%、最高45重量%、50重量%、60重量%、又は20重量%~60重量%、25重量%~50重量%、若しくは30重量%~45重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、第1の熱伝導性充填剤を含む。第1の熱伝導性充填剤は、例えば、最低10マイクロメートル、35マイクロメートル、40マイクロメートル、最高45マイクロメートル、50マイクロメートル、60マイクロメートル、又は例えば10マイクロメートル~60マイクロメートル、10マイクロメートル~50マイクロメートル、若しくは10マイクロメートル~45マイクロメートル等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の平均粒径を有し得る。第1の熱伝導性充填剤は、例えば、最低0.1m2/g、0.2m2/g、0.5m2/g、最高0.6m2/g、0.8m2/g、1.0m2/g、又は0.1m2/g~1.0m2/g、0.1m2/g~0.8m2/g、又は0.1m2/g~0.6m2/g等、これらの間で規定される任意の範囲内の表面積を有する。
【0062】
例示的なTIMは、全TIM組成物に対して、例えば、最低20重量%、25重量%、30重量%、最高45重量%、50重量%、60重量%、又は20重量%~60重量%、25重量%~50重量%、若しくは25重量%~45重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、第2の熱伝導性充填剤を更に含み得る。第2の熱伝導性充填剤は、例えば、最低1マイクロメートル、3マイクロメートル、5マイクロメートル、最高10マイクロメートル、15マイクロメートル、20マイクロメートル、又は例えば、1マイクロメートル~20マイクロメートル、3マイクロメートル~15マイクロメートル、若しくは5マイクロメートル~15マイクロメートル等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の平均粒径を有し得る。第2の熱伝導性充填剤は、例えば、最低0.5m2/g、0.7m2/g、0.9m2/g、最高1.5m2/g、1.7m2/g、2.0m2/g、又は0.5m2/g~2.0m2/g、0.7m2/g~1.7m2/g、若しくは0.9m2/g~1.5m2/g等、これらの間で規定される任意の範囲内の表面積を有する。
【0063】
例示的なTIMは、全TIM組成物に対して、例えば、最低20重量%、25重量%、30重量%、最高45重量%、50重量%、60重量%、又は20重量%~60重量%、25重量%~50重量%、若しくは30重量%~45重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、第3の熱伝導性充填剤を更に含む。第3の熱伝導性充填剤は、例えば、最低0.1マイクロメートル、0.3マイクロメートル、0.5マイクロメートル、最高1マイクロメートル、1.5マイクロメートル、2マイクロメートル、又は0.1マイクロメートル~2マイクロメートル、0.3マイクロメートル~1.5マイクロメートル、若しくは0.5マイクロメートル~1マイクロメートル等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の平均粒径を有する。第3の熱伝導性充填剤は、例えば、最低5.0m2/g、6.0m2/g、7.0m2/g、最高8.0m2/g、9.0m2/g、10.0m2/g、又は5.0m2/g~10m2/g、6.0m2/g~9.0m2/g、若しくは7.0m2/g~8.0m2/g等、これらの間で規定される任意の範囲内の表面積を有する。
【0064】
例示的なTIMは、単一の熱伝導性充填剤を含んでいてもよく、当該単一の熱伝導性充填剤は、本明細書に記載の第1、第2、又は第3の熱伝導性充填剤のうちの1つである。別の例示的なTIMでは、TIMは、第1及び第2の熱伝導性充填剤を含み、当該第1の熱伝導性充填剤及び第2の熱伝導性充填剤は、本明細書に記載の第1の熱伝導充填剤及び第2の熱伝導充填剤、第1の熱伝導充填剤及び第3の熱伝導充填剤、又は第2の熱伝導充填剤及び第3の熱伝導充填剤である。更なる例示的なTIMでは、TIMは、本明細書に記載の第1の熱伝導性充填剤、第2の熱伝導充填剤、及び第3の熱伝導充填剤を含む。
【0065】
例示的な熱伝導性充填剤としては、アルミナ酸化物が挙げられる。
4.付加阻害剤
【0066】
TIMは、シリコーン油の架橋を阻害又は制限するための1つ以上の付加阻害剤を含む。付加阻害剤は、触媒と錯体を形成して、シリコーン油の反応を停止させる。付加阻害剤は、少なくとも1つのアルキニル化合物を含み、任意選択的に、付加阻害剤は、マルチビニル官能性ポリシロキサンを更に含む。
【0067】
例示的な付加阻害剤としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、2-エチニル-イソプロパノール、2-エチニル-ブタン-2-オール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール;トリメチル(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)シラン、ジメチル-ビス-(3-メチル-1-ブチンオキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、及び((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン等のシリル化アセチレンアルコール;マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジアチル、フマル酸ジアリル、及びマレイン酸ビス-2-メトキシ-1-メチルエチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノアリル、フマル酸2-メトキシ-1-メチルエチル等の不飽和カルボン酸エステル;アルコールがベンジルアルコール又は1-オクタノール及びエテニルシクロヘキシル-1-オールから選択される混合物等のフマル酸/アルコール混合物;2-イソブチル-1-ブテン-3-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3-メチル-3-ヘキセン-1-イン、1-エチニルシクロヘキセン、3-エチル-3-ブテン-1-イン、及び3-フェニル-3-ブテン-1-イン等の共役エンイン;I,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシクロシロキサン、及び共役エンインとビニルシクロシロキサンの混合物が挙げられる。例示的な一実施形態では、付加阻害剤は、2-メチル-3-ブチン-2-オール又は3-メチル-1-ペンチン-3-オールから選択される。
【0068】
いくつかの例示的な実施形態では、付加阻害剤は、マルチビニル官能性ポリシロキサンを更に含む。例示的なマルチビニル官能性ポリシロキサンは、Wacker Chemie AGから入手可能なPt Inhibitor 88の等のエチニルシクロヘキサノール中のビニル末端ポリジメチルシロキサンである。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、白金触媒は、以下に示すようにエチニルシクロヘキサノール及びビニル末端ポリジメチルシロキサンと錯体を形成すると考えられる。
【化5】
【0069】
錯体の形成は、室温での触媒活性を低下させ、したがってTIMの分注性及び濡れ性を維持すると考えられる。硬化工程のより高い温度で、Ptは錯体から放出され、ビニル官能性シリコーン油及び水素化物官能性シリコーン油のヒドロシリル化を助け、「架橋」をより制御する。
【0070】
いくつかの例示的な実施形態では、TIMは、TIMの総重量に基づいて、例えば、最低0.01重量%、0.02重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.15重量%、最高0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%、0.5重量%、1重量%、3重量%、5重量%、又は0.01重量%~1重量%、0.01重量%~0.5重量%、若しくは0.01重量%~3重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、1つ以上の付加阻害剤を含み得る。例示的な一実施形態では、TIMは、0.1重量%の量の付加阻害剤を含む。別の例示的な実施形態では、TIMは、0.01重量%の量の付加阻害剤を含む。
【0071】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、付加阻害剤が存在しない場合、ビニル官能性シリコーン油は、付加ヒドロシリル化機構に基づいて非常に迅速に水素化物官能性シリコーン油と反応して、典型的な方法によっては自動的に分注され得ない固相を形成する。
【0072】
例示的な一実施形態では、付加阻害剤は、Shin-Etsuから入手可能なKE-1056、KE-1151、KE-1820、KE-1825、KE-1830、KE-1831、KE-1833、KE-1842、KE-1884、KE-1885、KE-1886、FE-57、FE-61等、Dow Corningから入手可能なSyl-off(登録商標)7395、Syl-off(登録商標)7610、Syl-off(登録商標)7817、Syl-off(登録商標)7612、Syl-off(登録商標)7780等の官能性シリコーン油と合わされる。
5.カップリング剤
【0073】
例示的な実施形態では、熱ゲルは、2つの材料の界面における強力な結合を促進するために、充填剤及びシリコーン油のポリマーマトリックスの両方と相互作用するように機能する1つ以上のカップリング剤を含む。これは、充填剤粒子凝集体を分離し、充填剤粒子をポリマーマトリックス中に分散させ、熱伝導性充填剤をポリオールポリマーマトリックスにより良好に接着させるのに役立つ。例示的なカップリング剤としては、例えば、チタネートカップリング剤及びジルコネートカップリング剤を含むシランカップリング剤及び有機金属化合物が挙げられる。例示的なシランカップリング剤としては、脂肪族基を有するシランカップリング剤が挙げられる。例示的なカップリング剤としては、チタンIV 2,2(ビス2-プロペノールアトメチル)ブタノラート、トリス(ジオクチル)ピロホスファト-O;1モルのジイソオクチルホスファイトを有するチタンIV 2-プロパノラート、トリス(ジオクチル)-ピロホスファト-O)付加体、チタンIVビス(ジオクチル)ピロホスファト-O、オキソエチレンジオラート、(付加体)、ビス(ジオクチル)(水素)ホスファイト-O;チタンIVビス(ジオクチル)ピロホスファト-O、エチレンジオラート(付加体)、ビス(ジオクチル)水素ホスファイト、ジルコニウムIV 2,2(ビス2-プロペノールアトメチル)ブタノラート、トリス(ジオイソオクチル)ピロホスファト-O;ジルコニウムIV2,2-ビス(2-プロペノラトメチル)ブタノラート、シクロジ[2,2-(ビス2-プロペノラトメチル)ブタノラート]、ピロホスファト-O,O、及びヘキサデシルトリメトキシシランが挙げられる。別の例示的な実施形態では、カップリング剤は、Kenrich Chemical Companyから入手可能なKR-TTSである。
【0074】
いくつかの例示的な実施形態では、熱ゲルは、熱界面材料の総重量に基づいて、例えば、最低0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、最高0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、又は0.1重量%~2.0重量%、0.2重量%~1.5重量%、若しくは0.3重量%~0.5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、1つ以上のカップリング剤を含む。
6.架橋剤
【0075】
例示的な実施形態では、TIMは、シリコーン油間の架橋を可能にするために架橋剤を含む。例示的な架橋剤としては、ヒドロシリコーン油が挙げられる。例示的な架橋剤としては、Andisil XL-1B、Andisil XL-10、Andisil XL-11、Andisil XL 12、Andisil XL-13、及びAndisil XL-17が挙げられる。
【0076】
いくつかの例示的な実施形態では、TIMは、熱ゲルの総重量に基づいて、例えば、最低0.10重量%、0.20重量%、0.30重量%、最高0.4重量%、0.60重量%、0.70重量%、1.0重量%、又は0.10重量%~1.0重量%、0.20重量%~0.70重量%、若しくは0.30重量%~0.60重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、1つ以上の架橋剤を含む。
7.溶媒
【0077】
例示的な実施形態では、TIMは、TIMの流速を増大させるために溶媒を含む。例示的な溶媒としては、炭化水素溶媒、例えば、トルエン、キシレン、p-キシレン、m-キシレン、メシチレン、溶媒ナフサH、溶媒ナフサA、Isopar H、並びに他のパラフィン油及びイソパラフィン流体、アルカン、例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、ドデカン、2-メチルブタン、ヘキサデカン、トリデカン、ペンタデカン、シクロペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、石油エーテル、ハロゲン化炭化水素、例えば、塩素化炭化水素、ニトロ化炭化水素、ベンゼン、1,2-ジメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、ミネラルスピリット、ケロシン、イソブチルベンゼン、メチルナフタレン、エチルトルエン、リグロインが挙げられる。
【0078】
例示的な溶媒は、例えば、最低60℃、90℃、110℃、最高130℃、180℃、220℃、又は60℃~220℃、90℃~180℃、若しくは110℃~130℃等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の沸点温度を有する。
【0079】
例示的な溶媒は、例えば、最低0.2cSt、1cSt、2cSt、最高5cSt、10cSt、50cSt、又は0.2cSt~50cSt、1cSt~10cSt、若しくは2cSt~5cSt等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の粘度を有する。
【0080】
いくつかの例示的な実施形態では、熱界面材料は、配合物の総重量に基づいて、例えば、最低0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、最低5重量%、10重量%、20重量%、又は0.1重量%~20重量%、0.1重量%~10重量%、若しくは0.1重量%~5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の、1つ以上の溶媒を含み得る。
6.熱界面材料の例示的な配合物
【0081】
第1の非限定的な例示的実施形態では、TIMは、例えば、最低2重量%、3重量%、4重量%、最高8重量%、9重量%、10重量%、又は約2重量%~約10重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の第1の低分子量シリコーン油と、例えば、最低0.1重量%、1重量%、2重量%、最高3重量%、4重量%、5重量%、又は約0.1重量%~約5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の高分子量シリコーン油と、例えば、最低0.1重量%、1重量%、2重量%、最高3重量%、4重量%、5重量%、又は約0.1重量%~約5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量のカップリング剤と、例えば、最低0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、最高0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、又は約0.1重量%~約1重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の架橋剤と、例えば、最低0.1重量%、1重量%、2重量%、最高3重量%、4重量%、5重量%、又は約0.1重量%~約5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の触媒と、例えば、最低0.1重量%、1重量%、2重量%、最高3重量%、4重量%、5重量%、又は約0.1重量%~約5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の阻害剤と、例えば、最低25重量%、30重量%、35重量%、最高40重量%、45重量%、50重量%、又は約25重量%~約50重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の第1の熱伝導性充填剤と、例えば、最低25重量%、30重量%、35重量%、最高40重量%、45重量%、50重量%、又は約25重量%~約50重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の第2の熱伝導性充填剤と、例えば、最低25重量%、30重量%、35重量%、最高40重量%、45重量%、50重量%、又は約25重量%~約50重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の第3の熱伝導性充填剤と、例えば、最低0.1重量%、1重量%、2重量%、最高3重量%、4重量%、5重量%、又は約0.1重量%~約5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の溶媒と、を含む。
【0082】
第2の非限定的な例示的実施形態では、TIMは、例えば、最低0.1重量%、1重量%、2重量%、最高13重量%、14重量%、15重量%、又は約0.1重量%~約15重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の第1の低分子量シリコーン油と、例えば、最低0.1重量%、1重量%、2重量%、最高3重量%、4重量%、5重量%、又は約0.1重量%~約5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の高分子量シリコーン油と、例えば、最低25重量%、30重量%、35重量%、最高40重量%、45重量%、50重量%、又は約25重量%~約50重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の第1の熱伝導性充填剤と、例えば最低25重量%、30重量%、35重量%、最高40重量%、45重量%、50重量%、又は約25重量%~約50重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の第2の熱伝導性充填剤と、例えば最低25重量%、30重量%、35重量%、最高40重量%、45重量%、50重量%、又は約25重量%~約50重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の第3の熱伝導性充填剤と、例えば最低0.1重量%、1重量%、2重量%、最高3重量%、4重量%、5重量%、又は約0.1重量%~約5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の付加阻害剤と、例えば、最低0.1重量%、1重量%、2重量%、最高3重量%、4重量%、5重量%、又は約0.1重量%~約5重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の量の付加触媒と、例えば、架橋剤と、又は約0.1重量%~約1重量%等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内を含む。
7.熱界面材料の例示的な特性
【0083】
いくつかの例示的な実施形態では、上記のような熱界面材料は、TIMの流速を増大させるとともに、油漏出に対する優れた耐性を有する。油漏出は、TIMからの油漏れの距離であり、典型的には、熱界面材料の粘度に反比例すると理解される。すなわち、概してTIMの粘度が高いほど、TIMの油漏出が少なくなる。
【0084】
例示的な熱界面材料は、電子部品と共に使用するための固体パッドを形成するために硬化性である。例示的な熱界面材料は、室温で、例えば、最短1時間、5時間、24時間、最長2日、3日、5日、又は1時間~5日、5時間~3日、若しくは24時間~1日の間など、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の硬化時間を有する。より高い温度は、例示的な熱界面材料の硬化時間を加速させるであろう。例えば、周囲温度が100℃であるとき、例示的な熱界面材料の硬化時間は、1分~30分である。
【0085】
例示的な熱界面材料は、例えば、最低0.03mm、0.05mm、0.07mm、最高0.1mm、0.5mm、1mm、又は0.03mm~1mm、0.05mm~0.5mm、若しくは0.07~0.1mm等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の厚さを有する。
【0086】
上記のような溶媒を添加しない例示的な熱界面材料は、例えば、23℃及び10s-1の剪断速度で、最低1000Pa・s、1500Pa.s、2000Pa・s、最高2500Pa.s、3000Pa.s、3500Pa.s、又は1000Pa・s~3500Pa・s、1500Pa・s~3000Pa・s、若しくは2000Pa・s~2500Pa・s等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の粘度を有する。
【0087】
上記のような溶媒を添加した例示的な熱界面材料は、25℃及び10s-1の剪断速度で、最低150Pa・s、200Pa.s、250Pa・s、300Pa.s、最高500Pa.s、550Pa.s、600Pa.s、650Pa.s、又は150Pa・s~650Pa・s、若しくは200Pa・s~600Pa・s等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の粘度を有する。
【0088】
例示的なTIMは、例えば、最低0.25mm、0.50mm、1.0mm、最高1.25mm、1.40mm、1.50mm、又は0.25mm~1.50mm、0.50mm~1.40mm、若しくは1.0mm~1.25mm等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の漏出値を有する。
【0089】
例示的なTIMは、例えば、最低20g/分、25g/分、30g/分、最高35g/分、40g/分、50g/分、又は20g/分~50g/分、25g/分~40g/分、若しくは30g/分~35g/分等、前述の値のうちのいずれか2つの間で規定される任意の範囲内の流速を有する。
B.熱界面材料の形成方法
【0090】
いくつかの例示的な実施形態では、TIMは、溶媒を除く個々の成分をスピードミキサー内で合わせ、組成物を一緒にブレンドすることによって調製される。次いで、混合された組成物は、焼成することなく、基材に直接適用することができる。
【0091】
より具体的には、
図4を参照すると、TIM100の例示的な形成方法が示されている。工程102では、水冷却システム/反応容器を開き、高分子量シリコーン油、低分子シリコーン油、阻害剤、触媒、及び架橋剤を混合しながら添加する。例示的な実施形態では、混合物を毎分30回転(rpm)で10分間混合する。次いで、工程104では、第1の熱伝導性充填剤を混合しながら添加する。例示的な実施形態では、混合物を毎分10回転(rpm)で5分間混合する。工程106では、第2の熱伝導性充填剤を混合しながら添加する。例示的な実施形態では、混合物を毎分10回転(rpm)で10分間混合する。工程108では、第3の熱伝導性充填剤の一部分を混合しながら添加する。例示的な実施形態では、第3の熱伝導性充填剤の半分を添加し、混合物を毎分10回転(rpm)で10分間混合する。工程110では、第3の熱伝導性充填剤の残りの部分を混合しながら添加する。例示的な実施形態では、第3の熱伝導性充填剤の残り半分を添加し、混合物を毎分10回転(rpm)で10分間、及び54rpmで1時間混合する。
【0092】
工程112では、反応容器に溶媒を添加し、混合を継続する。例示的な実施形態では、第3の熱伝導性充填剤の半分を添加し、混合物を毎分10回転(rpm)で30分間混合する。工程114では、反応容器の真空を開始し、混合を継続する。例示的な実施形態では、混合物を毎分54回転(rpm)で30分間混合する。工程116では、真空を停止し、混合物を吐出器に移す。最後に、工程118では、真空を開始してTIM内の空気を除去し、次いで、真空を停止させ、得られた材料をシリンジ50内に圧入する(
図5)。
C.熱界面材料を利用する用途
【0093】
ここでも
図1を参照すると、いくつかの例示的な実施形態では、熱界面材料は、TIM18によって示されるように、電子部品12とヒートスプレッダ14との間にTIM18として位置決めされる。いくつかの例示的な実施形態では、熱界面材料は、TIM20によって示されるように、ヒートスプレッダ14とヒートシンク16との間にTIM2として配置される。いくつかの例示的な実施形態では、熱界面材料は、電子部品12とヒートシンク16との間にTIM1.5(図示せず)として配置される。
【実施例】
【0094】
実施例1
表1に提示される配合に従って熱界面材料(実施例1)を調製した。次いで、実施例1の特性を比較例1の特性と比較した(比較例1)。比較例1は、また、Al
2O
3充填剤を有し、完全には硬化していないシリコーン系TIMである。
【表1】
【0095】
実施例1では、低分子量(MW)シリコーン油は、ビニル官能基を有する低分子量液体シリコーン油であった。低MWシリコーン油の分子量は、50,000ダルトン未満であった。高MWシリコーン油は、100,000ダルトン超の分子量を有していた。使用したシランカップリング剤は、ヘキサデシルトリメトキシシランであった。
【0096】
更に、ヒドロシリコーン油を架橋剤として使用し、架橋剤は、AB Specialty silicones Nantong Co.,Ltd.から入手可能なAndisil XL 12であった。触媒は、Wacker Chemie AGから入手可能な付加白金触媒であり、付加阻害剤は、Wacker Chemie AGから入手可能なPt阻害剤88であった。熱伝導性充填剤Aは、約10マイクロメートルの粒径を有する酸化アルミニウム粒子を含んでいた。熱伝導性充填剤Bは、約5マイクロメートルの粒径を有する酸化アルミニウム粒子を含んでおり、熱伝導性充填剤Cは、約0.6マイクロメートルの粒径を有する酸化アルミニウム粒子を含んでいた。熱伝導性充填剤A~C中の全ての粒子の表面積は、約1.25m2/gであった。最後に、使用した溶媒は、Multisol limitedから入手可能なIsopar Hであった。
【0097】
実施例1の配合物を調製するために、揮発性溶媒を除く有機成分を合わせ、スピードミキサーでブレンドした。次いで、熱伝導性充填剤を添加し、その後、混合物をブレンドした。最後に、揮発性溶媒を添加し、もう1回ブレンドして、実施例1の配合物を得た。
【0098】
次いで、自動ディスペンサツール52に接続された10立方センチメートルのシリンジ50(
図5)に配合物を充填した。混合物は、ディスペンサツール52によって生成される空気圧によってシリンジ50からパージすることができる。ディスペンサツール52はまた、オリフィスの直径を制御する。実際には、ディスペンサツール52は、2つのパラメータ、すなわちオリフィスの直径及び空気圧を変化させることによって、シリンジ50からの混合物の分注速度を制御する。流速を試験するために、0.6Mpaの圧力下で配合物を分注した。
【0099】
TIMサンプルの流速を測定するために、ノズルのついていない30立方センチメートル(cc)のシリンジ50を使用し、0.6MPaの圧力下で1分間ディスペンサツール52を介してTIMサンプルを分注する。1分後、分注されたTIMサンプルを計量する。実施例1の配合物の測定された流速は、31g/分であった。
【0100】
次いで、配合物をゲルとしてA4枚葉の紙片に印刷した。配合物の寸法は、25.4mm×25.4mm×1.5mmであった。次いで、配合物からの油漏出がそれ以上配合物から離れて広がらなくなるまで、実施例1の配合物を室温下に置いた。次いで、配合物からの距離を測定して、油漏出痕跡の距離を求めた。
図3A及び
図3Bに示すように、実施例1の油漏出痕跡は、約1.2mmである。対照的に、
図2に示すように、比較例1の配合物は、3.5mmを超える漏出痕跡を有していた。
【0101】
特定の理論に束縛されるものではないが、より高表面積の充填剤を添加すると、TIMの漏出が低減すると考えられる。これらの充填剤はまた、TIMの流速を低下させる(すなわち、粘度を増加させる)。しかしながら、溶媒の添加は、TIMの流速を増大させてTIMの適用性を高める働きをする。加えて、添加される溶媒の量は最小であり(例えば、0.5重量%未満)、これにより、溶媒が、高表面積の充填剤をTIMに添加することによって実現される漏出の低減という有利な効果に影響を及ぼすことが防止される。
【0102】
更に、油漏出は遅いプロセスであり、少なくとも6時間後に観察することができる。対照的に、使用される溶媒の揮発性は高く(すなわち、溶媒は急速に蒸発し)、その結果、溶媒は、油漏出中に完全に蒸発する(例えば、約1又は2時間)。したがって、溶媒の添加は、TIMが分注されるときにTIMの流速を増大させるが、一旦分注され、一定の時間(例えば、約2時間)後に、溶媒はTIMから完全に蒸発し、TIMの油漏出特性に影響を与えることはできない。
【0103】
本明細書で使用するとき、「前述の値のうちの任意の2つの間で定義される任意の範囲内」という句は、それらの値が列挙のより低い部分にあるか又は列挙のより高い部分にあるかにかかわらず、任意の範囲がそのような句の前に列挙された値のうちの任意の2つから選択され得ることを意味する。例えば、1対の値は、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値及びより高い値から選択されてもよい。
【0104】
本発明は、例示的な設計を有するものとして説明したが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で更に修正することができる。したがって、本出願は、その一般的原理を利用した本発明のあらゆる変形、使用、又は適応を包含することが意図されている。更に、本出願は、本発明が関連し、添付の特許請求の範囲の範囲内に入る技術分野における既知の又は慣習的な実践に属する本開示からのそのような逸脱を包含することが意図されている。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]
熱界面材料であって、
50,000ダルトン未満の重量(Mw)平均分子量を有する低分子量シリコーン油と、
1.0m2/gを超える表面積を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、
少なくとも60,000ダルトンの重量(Mw)平均分子量を有するビニル官能性シリコーン油を含む高分子量シリコーン油と、
を含む、熱界面材料。
[2]
1500Pa・sを超える粘度を有する、[1]に記載の熱界面材料。
[3]
60℃~220℃の沸点及び0.2cSt~50cStの粘度を有する溶媒を更に含む、[1]に記載の熱界面材料。
[4]
150Pa・s~650Pa・sの粘度を有する、[3]に記載の熱界面材料。
[5]
2重量%~10重量%の前記低分子量シリコーン油と、
50重量%~95重量%の前記少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、
0.1重量%~5重量%の前記高分子量シリコーン油と、
0.1重量%~5重量%の溶媒と、
0.1重量%~5重量%のカップリング剤と、
0.1重量%~1重量%の架橋剤と、
0.1重量%~5重量%の阻害剤と、
0.1重量%~5重量%の触媒と、
を含む、[1]に記載の熱界面材料。
[6]
熱界面材料であって、
50,000ダルトン未満の重量(Mw)平均分子量を有する低分子量シリコーン油と、
第1の熱伝導性充填剤、第2の熱伝導性充填剤、及び第3の熱伝導性充填剤であって、前記第1の熱伝導性充填剤が、0.1m2/g~1.0m2/gの表面積を有する金属酸化物であり、前記第2の熱伝導性充填剤が、0.5m2/g~2.0m2/gの表面積を有する金属酸化物であり、前記第3の熱伝導性充填剤が、5.0m2/g~10.0m2/gの表面積を有する金属酸化物である、第1の熱伝導性充填剤、第2の熱伝導性充填剤、及び第3の熱伝導性充填剤と、
少なくとも60,000ダルトンの重量(Mw)平均分子量を有するビニル官能性シリコーン油を含む高分子量シリコーン油と、
60℃~220℃の沸点及び0.2cSt~50cStの粘度を有する溶媒と、を含む、熱界面材料。
[7]
2重量%~10重量%の前記低分子量シリコーン油と、
25重量%~50重量%の、0.1m2/g~1.0m2/gの表面積を有する第1の熱伝導性充填剤と、
25重量%~50重量%の、0.5m2/g~2.0m2/gの表面積を有する第2の熱伝導性充填剤と、
25重量%~50重量%の、5.0m2/g~10.0m2/gの表面積を有する第3の熱伝導性充填剤と、
0.1重量%~5重量%の前記高分子量シリコーン油と、
0.1重量%~5重量%の溶媒と、
0.1重量%~5重量%のカップリング剤と、
0.1重量%~1重量%の架橋剤と、
0.1重量%~5重量%の阻害剤と、
0.1重量%~5重量%の触媒と、
を含む、[6]に記載の熱界面材料。
[8]
前記低分子量シリコーン油が、ビニル官能性シリコーン油を含み、前記高分子量シリコーン油が、2,000,000cStの絶対粘度を有するビニルシリコーン油である、[6]に記載の熱界面材料。
[9]
1mm~5mmの漏出痕跡値と、20g/分~50g/分の流速とを有する、[6]に記載の熱界面材料。
[10]
電子部品であって、
ヒートシンクと、
電子チップと、
前記ヒートシンクと前記電子チップとの間に配置されている熱界面材料であって、
50,000ダルトン未満の重量(Mw)平均分子量を有する低分子量シリコーン油と、
1.0m2/gを超える表面積を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、
少なくとも60,000ダルトンの重量(Mw)平均分子量を有するビニル官能性シリコーン油を含む高分子量シリコーン油と、
を含む、熱界面材料と、
を含む、電子部品。