(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】エキスパンダを備えた拡張ガスタービンプロセス
(51)【国際特許分類】
F02C 3/045 20060101AFI20240122BHJP
F02C 3/30 20060101ALI20240122BHJP
F02C 6/08 20060101ALI20240122BHJP
F02C 7/08 20060101ALI20240122BHJP
F02C 7/143 20060101ALI20240122BHJP
F02C 7/224 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
F02C3/045
F02C3/30 B
F02C6/08
F02C7/08 B
F02C7/143
F02C7/224
(21)【出願番号】P 2020565310
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2019061483
(87)【国際公開番号】W WO2019223985
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-12-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】102018207961.7
(32)【優先日】2018-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】グレーバー,カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ユレツェク,ウーヴェ
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0001948(US,A1)
【文献】特開平3-54327(JP,A)
【文献】特開2003-184569(JP,A)
【文献】特開2003-293789(JP,A)
【文献】特開2011-231765(JP,A)
【文献】特開平6-212910(JP,A)
【文献】特開2002-201959(JP,A)
【文献】特開昭60-17232(JP,A)
【文献】特開2016-3656(JP,A)
【文献】特開平6-294328(JP,A)
【文献】特開平5-179904(JP,A)
【文献】特開2015-183597(JP,A)
【文献】特表2009-540180(JP,A)
【文献】特開2003-106163(JP,A)
【文献】特開2003-74374(JP,A)
【文献】特表平8-510311(JP,A)
【文献】特開平8-218894(JP,A)
【文献】特開昭61-265328(JP,A)
【文献】実公昭45-12641(JP,Y1)
【文献】実開昭60-8432(JP,U)
【文献】国際公開第2016/148008(WO,A1)
【文献】米国特許第2172708(US,A)
【文献】英国特許出願公開第2357552(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00- 1/10
F02C 3/00- 3/36
F02C 6/00- 6/20
F02C 7/00- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(2)、燃焼室(3)およびタービン(4)を備え、さらに前記圧縮機(2)を前記燃焼室(3)に接続する圧縮機空気導管(5)と、前記圧縮機空気導管(5)に接続される第1の熱交換器(7)と、前記第1の熱交換器(7)と前記燃焼室(3)の間の前記圧縮機空気導管(5)に配置される第1のエキスパンダ(8)とを備えた発電プラント(1)であって、
前記第1の熱交換器(7)がさらに前記タービン(4)から分岐する排気導管(6)に接続され、前記タービン(4)、前記第1のエキスパンダ(8)および前記圧縮機(2)が一つの共通軸線上に配置されており、前記第1のエキスパンダ(8)および前記圧縮機(2)
が一つのトランスミッションを介して連結されていることを特徴とする発電プラント(1)。
【請求項2】
前記圧縮機(2)が多段中間冷却形圧縮機(2)であり、圧縮機段(9)間に第2の熱交換器(10)が圧縮機中間冷却器(11)として配置されている、請求項1に記載の発電プラント(1)。
【請求項3】
前記第1の熱交換器(7)が2つの熱交換器モジュール(13)を備え、この2つの熱交換器モジュール(13)がそれぞれ前記圧縮機空気導管(5)および前記排気導管(6)において直列に配置され、前記熱交換器モジュール(13)間に水噴射器(14)が前記圧縮機空気導管(5)内に配置されている、請求項1または2に記載の発電プラント(1)。
【請求項4】
前記第2の熱交換器(10)が地域熱供給回路(15)に接続されている、請求項2に記載の発電プラント(1)。
【請求項5】
燃料予熱のため、第3の熱交換器(17)が前記熱交換器モジュール(13)間の前記排気導管(6)に配置されている、請求項3に記載の発電プラント(1)。
【請求項6】
第4の熱交換器(18)が前記圧縮機(2)への給気導管(19)に配置されるとともに、発電プラント(1)の冷却回路(20)に接続されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の発電プラント(1)。
【請求項7】
さらに熱駆動冷却器(21)を備え、その低温の出口側(25)が前記圧縮機中間冷却器(11)の少なくとも一部の入口(26)に接続されている、請求項2または請求項2を引用する請求項3に記載の発電プラント(1)。
【請求項8】
前記熱駆動冷却器(21)が少なくとも1つの蒸気噴射ノズル(27)を備えている、請求項7に記載の発電プラント(1)。
【請求項9】
前記熱駆動冷却器(21)が2つの蒸気噴射ノズル(27)を備え、前記蒸気噴射ノズル(27)は混合流出口(28)が一緒になるように互いに接続されており、蒸発器(29)が前記蒸気噴射ノズル(27)のそれぞれの吸入端子(30)に前置接続され、一方の蒸発器(29)の水出口(31)が他方の蒸発器(29)の水入口(32)に接続されている、請求項8に記載の発電プラント(1)。
【請求項10】
第8の熱交換器(42)が排気の流れ方向に前記第1の熱交換器(7)の熱交換器モジュール(13)の後で前記排気導管(6)に接続されるとともに、入力側で前記圧縮機中間冷却器(11)と、出力側で前記蒸発器(29)の1つとに接続されている、請求項9に記載の発電プラント(1)。
【請求項11】
前記第8の熱交換器(42)が前記第1の熱交換器(7)の熱交換器モジュール(13)の間で前記排気導管(6)に接続され、入口側で前記圧縮機中間冷却器(11)の戻り口(24)と前記蒸発器(29)の戻り口に接続され、出力側でも前記蒸発器の戻り口に接続されている、請求項10に記載の発電プラント。
【請求項12】
第2のエキスパンダ(45)が前記第1のエキスパンダ(8)の下流に配置され、入口側で前記圧縮機空気導管(5)に前記第1のエキスパンダ(8)の後ろの位置で接続され、出口側で前記排気導管(6)に開口している、請求項1から3のいずれか1項に記載の発電プラント(1)。
【請求項13】
圧縮機(2)、燃焼室(3)およびタービン(4)を備えた
、請求項1に記載の発電プラント(1)の運転方法であって、
前記圧縮機(2)の出口圧力が必要なタービン入口圧力より高くなるように選択され、さらに圧縮機空気が、熱交換で材料技術的に最大の許容出口温度まで予熱され、膨張され、燃焼されるようになっており、
前記圧縮機空気が前記発電プラント(1)の排気との熱交換で予熱されるとともに、燃焼前の前記圧縮機空気の膨張が前記圧縮機の駆動に利用されることを特徴とする発電プラントの運転方法。
【請求項14】
前記圧縮機空気は膨張によってタービン圧力レベルおよび前記燃焼室(3)の最大許容温度まで低減される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
排気および圧縮機中間冷却器(11)からの廃熱が前記圧縮機(2)の中間冷却を改善する目的で、熱駆動冷却器(21)を駆動するために利用される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
水が排気と圧縮機空気との熱交換により加熱され、次いで少なくとも部分的に蒸発され、さらに加熱された水が蒸発される少なくとも1つの蒸発器に少なくとも1つの蒸気噴射ノズルが蒸気を吸い出すために接続され、蒸発中に冷却された水が前記圧縮機中間冷却器の少なくとも一部に供給されることにより水が冷却される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの国で市場の要求が変化しているため、設備効率の最大化は、将来的には必ずしも成功を約束されているとは思われない。ドイツまたはヨーロッパ市場の現状を考慮すると、回生エネルギー発電の拡大の増加により従来の発電所の運転時間が大幅に少なくなり、新規発電所の建設にあたって膨大なコスト圧力が予期されることを前提とすることができる。
【0003】
設備の複雑性の低減とこれに伴うコストの減少、さらにはまさに低温状態からの迅速な起動能力の改善は、たとえこれが設備効率の悪化をもたらすとしても、この関係において非常に有望なアプローチであると思われる。
【0004】
これまでのところ、上述した問題提起に対して、本当に説得力のある回答はない。勿論迅速起動能力を保証するガスエンジンベースの発電所に代わるものがあるが、このような設備に対する投資コストは、これまでしばしば好まれてきたコンバインドサイクル発電(GuD=ガスおよび蒸気発電)と比較して比較的高く、また、効率は著しく低い。
【0005】
コンバインドサイクル発電設備では、発電所のuD部分、すなわち蒸気タービン部分を省略することにより、設備の複雑さの低減を達成することができる。しかし、蒸気サイクルのない単純なガスタービンプロセスは、プロセスの経済的には表せない明らかな劣化をもたらす。中間冷却型圧縮による復熱ジュールプロセスは、プロセスが最適に設計されてもコンバインドサイクルの基準プロセスと比較して効率のある程度の低下をもたらす。複雑さが大幅に低減されるため、大幅なコスト削減が可能に見える。このコンセプトの経済性は、将来の市場の要求に際して現行のコンバインドサイクルのコンセプトやガスエンジン発電に対して明らかにポジティブであろうと期待される。この経済性の向上は、ガスタービンプロセスの拡張が単純なガスタービンプロセスと同様の開始時間を有し、従ってコンバインドサイクルプロセスよりも著しく速いという事実によるものでもある。さらに、システムが相応に設計されている場合、起動に先立って設備コンポーネントのそれなりの冷却を伴う長い停止があるかどうかは、起動時間およびコンポーネントの耐用年数には関係ない。特に、より長い停止状態(コールドスタート条件)の後、拡張ガスタービンプロセスは、コンバインドサイクルプロセスと比較して、その特に良好なクイックスタート能力を示すので有利である。また、部分負荷挙動に関しては、効率と負荷変化率の向上が期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述の拡張ガスタービンプロセスを備えた発電プラントをさらに改善することにある。本発明の別の課題は、そのような発電プラントの運転方法を相応に改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧縮機と、燃焼室と、タービンとを備えたこのような発電プラントにおいて、発電プラントはさらに圧縮機を燃焼室に接続する圧縮機空気導管と、圧縮機導管およびタービンから分岐する排気導管に接続される第1の熱交換器とを備え、第1のエキスパンダが第1の熱交換器と燃焼室との間の圧縮機空気導管に配置され、第1のエキスパンダと圧縮機とが一つの共通軸線上に配置されることにより、発電プラントに向けられた課題を解決する。ここで「一つの共通軸線上に配置される」とは、エキスパンダおよび圧縮機が少なくとも共通のトランスミッションを介して連結され得ることを意味することもできる。
【0008】
拡張されたガスタービンプロセスに重要なことは、復熱の統合が燃焼室セクションに入る前の最大許容空気温度によって制限されることである。これはプロセス効率の悪化につながる。エキスパンダを備えた拡張ガスタービンプロセスの提案は、まさにここから始まる。全ての燃焼温度ひいてはガスタービン出力で最大の復熱を達成するためには、前置接続された圧縮機の自由設計では、出口圧力は必要なタービン入口圧力より高くなるように選択される(生産ラインにより規定)。これにより得られる圧力勾配は、燃焼前の空気側の付加的な膨張に利用される。この場合復熱器内の圧縮空気は排気ガスの流れによって最大許容出口温度まで予熱され、次いで第1のエキスパンダに送られる。タービン圧力レベルへの膨張のため、燃焼室セクションの最大許容値まで温度が下がり、同時に付加的に出力の放出が生じる。圧縮機のまだ残っている駆動軸は、第1のエキスパンダとの連結に使用できる。
【0009】
有利な実施形態では、圧縮機は圧縮機段間に第2の熱交換器が圧縮機中間冷却器として配置される多段中間冷却形圧縮機である。これにより圧縮のための経費を軽減できる。
【0010】
拡張ガスタービンプロセスに対するこれらの変更は次のような利点をもたらす。
1)最大のプロセス効率(拡張ガスタービンプロセスと比較して+1.5%ポイント)を伴う最大復熱と、拡張ガスタービンプロセスと比較して4~7%の最大出力、
2)既存のガスタービン生産ラインへの柔軟な対応、
3)第1のエキスパンダを最適な回転数を有するギアド圧縮機に機械的に接続することによって簡単に一体化すること。
【0011】
これらの改善には、高温空気タービンおよび接続パイプラインの僅かな追加コストが見込まれるにすぎない。運用上の柔軟性は損なわれることはないであろう。
【0012】
また、第1の熱交換器が2つの熱交換器モジュールを備え、その両方が圧縮機空気導管および排気導管内に直列配置され、熱交換器モジュール間に水噴射装置が圧縮機空気導管内に配置されると有利である。これは伝達可能な熱量に対してもその後の燃焼に対しても有利である。
【0013】
本発明の有利な実施形態では、圧縮機段の間に配置された第2の熱交換器は、地域熱供給回路に接続される。このようにすれば、圧縮空気を中間冷却し、同時に水を地域熱供給回路のため再加熱することができる。
【0014】
燃料予熱のため、第3の熱交換器が熱交換器モジュール間の排気導管内に配置されると有利である。燃料予熱に際して燃料の顕熱が増加するため、燃料の必要量が減少する。
【0015】
また、第4の熱交換器が圧縮機への空気導管に配置され、発電プラントの冷却回路に接続されると有利である。空気導管に第4の熱交換器を配置することにより、既に空気を圧縮する前に空気を比較的高い温度レベルにすることができ、これはその後の熱利用に有益である。
【0016】
地域熱供給回路への熱の統合を伴う発電プラントに対する本発明の別の実施形態では、発電プラントは、熱駆動される冷却器をさらに含み、その高温入力側は蒸気発生器を介して排気導管および圧縮機中間冷却器の戻り口に接続され、その低温出力側を圧縮機中間冷却器の少なくとも一部の入口に接続される。この変形態様は、圧縮空気の中間冷却が改善されるという大きな利点を有する。
【0017】
この場合冷却器が少なくとも1つの蒸気噴射ノズルを有すると有利である。可動部品と駆動装置がないため、このような蒸気噴射冷却器は特に単純で堅牢であり、通常他の冷却システムよりも安価である。
【0018】
この場合特に有利なのは、冷却器が2つの蒸気噴射ノズルを有し、それらの混合流出口が合流するようにし、蒸発器(フラッシュ・エバポレータ)が蒸気噴射ノズルのそれぞれの吸引端子に前置接続され、一方の蒸発器の水出口が他方の蒸発器の水入口に接続されるように相互接続されることである。このようにすれば、使用水の特に良好な冷却を達成することができ、従って、これに対応して圧縮空気の良好な冷却も達成することができる。
【0019】
発電プラントの有利な実施形態では、第8の熱交換器が排気の流れ方向に第1の熱交換器の熱交換器モジュールの後で排気導管に接続され、入口側で圧縮機中間冷却器の戻り口に、出口側で蒸発器の一方に接続される。これにより排気ガスの残留熱を熱駆動冷却器に使用することができる。
【0020】
さらなる有利な発電プラントでは、第8の熱交換器は第1の熱交換器の熱交換器モジュール間で排気導管に接続され、入口側で圧縮機中間冷却器の戻り口に接続され、この戻り口に出口側でも接続される。このような第8の熱交換器の配置により、排気導管の下流配置よりも高い蒸気圧レベルが可能となり、蒸気噴射冷却器(熱作動冷却器)の効率アップにつながる。さらに高温復熱は、中間接続された外部の熱交換器により圧縮空気出口温度のより良い部分負荷特性をもたらす。
【0021】
さらに、第2の別のエキスパンダが第1のエキスパンダの下流に配置され、入口側が第1のエキスパンダの後方の位置で圧縮機空気導管に接続され、出口側で排気導管に開口するようにすると有利である。これにより発電プラントの効率が改善される。特にこれにより、「乾燥」プロセス、すなわち水-蒸気サイクルを伴わないプロセスの最大効率ポテンシャルを達成することができる。第2のエキスパンダのタービン設計は、480℃未満の空気入口における温度に対して行うことができる。というのも回路が直列接続として設計されているからであり、すなわち第2のエキスパンダは並列に接続されておらず、第1のエキスパンダの後に直列に接続されている。最後に、(第1のエキスパンダと同様に)トランスミッションを介して第2のエキスパンダを空気圧縮機に接続することにより、費用対効果の高い設計が達成される。
【0022】
方法に関する課題は、圧縮機、燃焼室およびタービンを備えた発電プラントを運転する方法であって、いわゆる圧縮空気エネルギー貯蔵(Compressed Air Energy Storage)システム、すなわち空気も圧縮されるが再び膨張され、その際両工程が時間的に分離され、対応する圧縮空気貯蔵器が介在されるシステムとは異なり、圧縮機の出口圧力が所要のタービン入口圧力よりも高くなるように選択され、圧縮機空気が燃焼前に膨張されて圧縮機を駆動するように用いられることによって解決される。本発明では、圧縮空気は、後の使用のために一時的に貯蔵されるのではなく、圧縮直後のガスタービンプロセスで使用される。
【0023】
圧縮機空気が、膨張される前に、発電プラントの排気との熱交換で材料技術的に最大許容出口温度に予熱され、その結果エキスパンダの出口空気が燃焼室入口に対して過度に熱くならないようにすると有利である。
【0024】
さらに、圧縮機空気をタービン圧力レベルまで膨張させて、燃焼室に許容される最高温度まで下げれば有利である。これにより、圧縮空気中の余剰エネルギーを活用すると同時に、燃焼のための空気パラメータを最適に設定することができる。
【0025】
さらに、排気および圧縮機中間冷却器からの廃熱が、圧縮機の中間冷却を改善する目的で熱利用冷却器を駆動するために使用されると有利である。
【0026】
特に、水が排気および圧縮空気と熱交換して加熱され、次いで少なくとも部分的に蒸発され、さらに、加熱水が蒸発される少なくとも1つの蒸発器に少なくとも1つの蒸気噴射ノズルを蒸気の吸い上げのために接続し、蒸発時に冷却された水が圧縮機中間冷却器の少なくとも一部に供給されることにより、水が冷却されるようにすると、有利である。
【0027】
本発明の実施例を図面を参照して詳述する。図は概略表示であり、実寸通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来技術による拡張ガスタービンプロセスを示す。
【
図2】本発明による第1のエキスパンダを備えた拡張ガスタービンプロセスを示す。
【
図3】単段低圧蒸気、蒸気噴射ノズル及び噴射凝縮器を備えた拡張ガスタービンプロセスを示す。
【
図4】熱駆動冷却器のための
図3の実施例とは異なるように配置された熱交換器を備えた拡張ガスタービンプロセスを示す。
【
図5】2段低圧蒸気と噴射凝縮器を備えた拡張ガスタービンプロセスを示す。
【
図6】2段低圧蒸気と低圧蒸発器を備えた拡張ガスタービンプロセスを示す。
【
図7】噴射凝縮器の代わりに表面凝縮器を備えた
図4と同様の拡張ガスタービンプロセスを示す。
【
図8】第2のエキスパンダを備えた拡張ガスタービンプロセスを示す。
【0029】
図1は従来技術による拡張ガスタービンプロセスを概略的かつ例示的に示す図である。発電プラント1は、圧縮機2と、燃焼室3と、タービン4とを備える。圧縮機空気導管5は、圧縮機2を燃焼室3に接続する。第1の熱交換器7は、圧縮機空気導管5と、タービン4から分岐された排気導管6に接続される。
図1において、第1の熱交換器7は2つの熱交換器モジュール13を備え、これらのモジュールはそれぞれ圧縮機空気導管5および排気導管6に直列に配置され、水噴射器14が熱交換器モジュール13間の圧縮機空気導管5に配置されている。
【0030】
圧縮機2は多段中間冷却圧縮機2であり、圧縮機段9間には第2の熱交換器10が圧縮機中間冷却器11として配置されている。
【0031】
さらに、圧縮機2は圧縮機段9の間に燃焼室3および/またはタービン4を冷却するためのタップ33を有する。
【0032】
最後に、
図1の発電プラント1はトランスミッション35を介してタービン4に接続される発電機34を備える。
【0033】
図2は、本発明による第1のエキスパンダ8を備えた拡張ガスタービンプロセスを示す。第1のエキスパンダ8は、圧縮機空気導管5内の第1の熱交換器7と燃焼室3との間に配置されており、共通のトランスミッション12を介して圧縮機2に連結することができる。
【0034】
圧縮時に発生する熱をより良好に利用するために、第2の熱交換器10は地域熱供給回路15に接続されている。地域熱供給回路15への熱の供給は、以下のように行われる。地域熱供給回路15からの低温戻り水流は分流される。第1の部分流は圧縮機2の中間冷却器11のために第2の熱交換器10に供給され、第2の部分流は排気導管6に配置された第5の熱交換器36に供給される。加熱後2つの部分流はまとめられて第6の熱交換器37に導かれ、この熱交換器37は同様に第5の熱交換器36の上流の排気導管6内に排気ガスの流れ方向に配置される。そこでさらに加熱された水流は、地域熱供給回路15に再び導かれる。
【0035】
地域熱供給が不要な場合には、圧縮時に発生する熱は、例えばフィンファン冷却器や冷却塔を介して環境に放出される。この目的のために、
図2の発電プラント1には第7の熱交換器39を備えたバイパス導管が設けられている。
【0036】
図2はまた、排気導管6内の熱交換器モジュール13の間に配置される燃料予熱用の第3の熱交換器17を示す。
【0037】
さらに、第4の熱交換器18も圧縮機2への給気導管19に配置され、発電プラント1の冷却回路20に接続される。
【0038】
図3の実施形態は熱駆動冷却器21を備え、これはその入力側22で第8の熱交換器42を介して排気導管6と、圧縮機中間冷却器11の戻り回路24とに接続されている。
【0039】
圧縮機中間冷却器11の戻り回路24からの水流は分流される。第1の部分流は、熱交換器42を通過し、排気導管6から熱を吸収する。加熱後この部分流は、蒸発器29(フラッシュ・エバポレータ)に供給され、そこで発生する蒸気は蒸気噴射ノズル27の駆動材端子43に供給され、残りの水は圧縮機中間冷却器11の戻り回路24からの水の第2の部分流に供給される。この再結合された流れは、第7の熱交換器39で冷却された後に再び分流され、第1の部分流は、最後の圧縮機段9に供給される空気を冷却し、第2の部分流は蒸発器29(フラッシュ・エバポレータ)に供給される。発生蒸気は蒸気噴射ノズル27の吸入端子30に供給され、残りの水は圧縮機中間冷却器11の流入口に供給され、最後の圧縮機段9を除いて残りの圧縮機段9の全てに冷却水を供給する。
【0040】
蒸気噴射ノズル27の混合流出口から出る蒸気は、噴射冷却器を有する噴射凝縮器40に送られる。得られた凝縮水は、第7の熱交換器39の前で圧縮機中間冷却器11からの水流と混合される。噴射凝縮器40に必要な水は、第7の熱交換器39後の導管から取られる。
【0041】
図4は、
図3の実施例に対して熱交換器42が熱交換器モジュール13の間で排気導管6におけるその配置に関して上方にシフトされる実施例を示す。
図3の実施例と比較してこの個所での排気温度が高いためより高い蒸気圧力レベルが可能であり、従って熱的に作動する蒸気噴流冷却器の効率が向上する。さらに、圧縮空気出口温度のより良い部分負荷制御特性が間に接続された外部の熱交換器を介しての高温復熱から生じる。
【0042】
冷却プロセスは必ずしも噴射蒸気で行う必要はない。吸収または吸着プロセスも同様に可能である。
【0043】
図5は2段の低圧蒸気と噴射凝縮器を備えた拡張ガスタービンプロセスを示す。冷却器21は2つの蒸気噴射ノズル27を備え、その混合流出口28は一緒にされ、蒸発器29が蒸気噴射ノズル27のそれぞれの吸引端子30に前置接続され、一方の蒸発器29の水出口31と、他方の蒸発器29の水入口32とが接続されるように相互接続される。このようにして圧縮機中間冷却器11のための水は、
図3の実施例におけるよりも強く冷却することができる。
【0044】
図6は、少なくとも部分的に蒸気が蒸発器29では生じないが、排気導管6に低圧蒸発器44が配置されたさらなる変形例を示す。
【0045】
さらに
図7は、
図4の噴射凝縮器40の代替としての表面凝縮器41を示す。その場合表面凝縮器41は、第7の熱交換器39と同様に、外部冷却によって供給されなければならないであろう。
【0046】
最後に
図8は第2のエキスパンダ
45を備えた本発明の実施形態を示し、これは第1のエキスパンダ8と同じ軸46上に配置され、入口側で第1のエキスパンダ8の後方の位置で
圧縮機空気導管5に接続され、出口側で排気導管6に開口する。軸46上の配置は必須ではない。第2のエキスパンダ
45は、トランスミッションに統合されている固有の軸にも取り付けることができる。
【0047】
エキスパンダ8、45の接続は直列回路として設計されており、すなわち第2のエキスパンダ45は、並列ではなく、第1のエキスパンダ8の後に直列に接続されている。
【0048】
また第2のエキスパンダ45は、第1のエキスパンダ8と同様に、トランスミッションを介して圧縮機2に接続されている。
【符号の説明】
【0049】
1 発電プラント
2 圧縮機
3 燃焼室
4 タービン
5 圧縮機空気導管
6 排気導管
7 第1の熱交換器
8 第1のエキスパンダ
9 圧縮機段
10 第2の熱交換器
11 圧縮機中間冷却器
12 トランスミッション
13 熱交換器モジュール
14 水噴射器
15 地域熱供給回路
17 第3の熱交換器
18 第4の熱交換器
19 給気導管
20 冷却回路
21 熱駆動冷却器
27 蒸気噴射ノズル
29 蒸発器
42 第8の熱交換器
45 第2のエキスパンダ