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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】予防用及び治療用の組み合わせワクチン
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240122BHJP
   C07K 14/025 20060101ALI20240122BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 15/37 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/025
C07K14/195
C12N15/62 Z
C12N15/37
C12N15/31
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/12
A61P35/00
A61P31/12
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020566723
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019064001
(87)【国際公開番号】W WO2019229142
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】18175218.9
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512113803
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】オトネロ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,シューアー
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/211886(WO,A1)
【文献】特表2004-525115(JP,A)
【文献】特表2008-500813(JP,A)
【文献】国際公開第2004/087767(WO,A1)
【文献】特表2007-522108(JP,A)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1991年,Vol.88,pp.5887-5891
【文献】Journal of Virology, 2018.February,2018年02月,Vol.92, Issue 4,e01930-17 (pp.1-18)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)B細胞エピトープ、(ii)T細胞エピトープ、及び(iii)足場ポリペプチドを含む免疫原性ポリペプチドであって、前記T細胞エピトープがMHCクラスIエピトープであり、前記足場ポリペプチドがチオレドキシンポリペプチドである、前記免疫原性ポリペプチド。
【請求項2】
前記B細胞エピトープ及び前記T細胞エピトープの少なくとも1つが、腫瘍抗原及び/又は感染性因子の抗原のエピトープである、請求項1に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項3】
前記B細胞エピトープ及び前記T細胞エピトープの両方が、パピローマウイルス(PV)ポリペプチドのエピトープである、請求項1又は2に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項4】
前記B細胞エピトープ及び前記T細胞エピトープが、非同一ポリペプチドに由来する、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項5】
前記T細胞エピトープが、E6又はE7ポリペプチドに由来するペプチドである、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項6】
前記B細胞エピトープが、パピローマウイルス(PV)のL2ポリペプチドにおいて、配列番号8のアミノ酸配列に対応する位置からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項7】
前記免疫原性ポリペプチドが、HPV 16、18、31、33、35、6、51、及び59からなる一覧から選択される少なくとも2つのHPVの遺伝子型からのPV L2 N末端ペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項8】
前記チオレドキシンが、好熱性古細菌のチオレドキシンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項9】
前記免疫原性ポリペプチドが、オリゴマー化ドメインをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項10】
前記免疫原性ポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列又は前記配列と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項11】
前記免疫原性ポリペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチド。
【請求項12】
医薬の製造のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチドの使用。
【請求項13】
細胞の不適切な増殖及び/又は感染性因子での感染の処置及び/又は予防に使用するための医薬の製造のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチドの使用。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項14に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチドを含む、宿主細胞。
【請求項17】
請求項14に記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ポリペプチドを収納箱に含む、キット。
【請求項20】
医薬の製造のための、請求項14に記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項21】
細胞の不適切な増殖及び/又は感染性因子での感染を処置及び/又は予防するために使用するための医薬の製造のための、請求項14に記載のポリヌクレオチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)B細胞エピトープ、(ii)T細胞エピトープ、及び(iii)足場ポリペプチドを含み、足場ポリペプチドがチオレドキシンポリペプチドである免疫原性ポリペプチドに関する。本発明はさらに、医薬において使用するための、並びに、細胞の不適切な増殖及び/又は感染性因子による感染、好ましくはHPV感染の処置及び/又は予防に使用するための前記免疫原性ポリペプチド、並びに、前記免疫原性ポリペプチドをコードするポリペプチド及びベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
子宮頸がんは、全世界の女性にとって2番目に高頻度のがんである。臨床試験及び分子試験により、高リスク型と呼ばれる特定の型のヒトパピローマウイルス(HPV)が、この疾患の病因因子であることが判明した。近年、メルク社(ガーダシルTM)及びグラクソ・スミスクライン社(サーバリックスTM)による、子宮頸癌の予防を目的とした2種類の抗HPVワクチンが認可されている(Schmiedeskamp et al, (2006), Ann Pharmacother, 40: 1344-1352)。両ワクチンは、抗原として、ウイルス様粒子(VLP)の形態のメジャーカプシドタンパク質L1に依存する(Roden et al., (2006), Nat Rev Cancer, 6: 753-763)。これらのワクチンは、そのL1-VLPが由来するHPV型から保護するが、最も密接に関連するHPV型以外のいずれに対しても概ね効力を有さない。HPV31型及び45型に対する部分的な交差防御に関するエビデンスが存在するものの、両ワクチンの主要な標的は、2つの最も顕著な高リスク型であるHPV16型及び18型である(Muller and Gissmann, (2007), Dis Markers, 23: 331-336;Huh and Roden, (2008), Gynecol Oncol, 109: S48-56においてレビューされている)。L1に基づくワクチンの交差防御能力は限定的であり、これが、改善したワクチン接種戦略の開発に向けられた努力が継続している主な理由であり、L1中和エピトープのHPV型特異性を反映しているようである(Giroglou et al., (2001), Vaccine, 19: 1783-1793)。
【0003】
その効力は異なるものの、マイナーカプシドタンパク質L2に対する抗体もまた、HPV感染を中和し、多くの場合、様々な非同族ビリオンを交差中和することが可能である(Kondo et al. (2007), Virology, 358: 266-272;Gambhira, R., (2007), J Virol, 81: 13927-13931)。L2のN末端領域は、標的細胞の表面上にある、今でも未同定の二次受容体と相互作用し(Yang et al. (2003), J Virol, 77: 3531-3541)、またこの相互作用は、抗L2抗体によりブロックされ得る。おそらく、最も顕著なN末端エピトープはアミノ酸(aa)17~36位の間に位置するエピトープであろう。これは、HPV16の中和及び防御的モノクローナル抗体(RG-1)の標的として、並びに、より長いバージョンのL2(アミノ酸(aa)1~88位、11~200位、又は完全長タンパク質)で免疫化されたウサギ及びヒトから得られた血清において見出される中和活性の主要な決定要素として同定された(Gambhira, 2007, 同上)。L2アミノ酸18位及び19位、又は、アミノ酸20位及び21位の変異により、L2の細胞表面への結合とウイルス感染の両方が破壊されることがわかっていたため(Yang, R. et al. (2003) J. Virol.77: 3531-3541)、RG-1抗体によって認識されるエピトープはHPV16 L2の表面結合モチーフと重複していると結論付けられた。
【0004】
ペプチドの免疫原性を増加させるための最近開発された代替戦略は、単一コピーの構造を制約する能力を有する足場タンパク質としてのチオレドキシン(Trx)の使用、並びに、その表面に露出した活性部位ループに挿入された多量体(タンデムに反復した)ペプチドエピトープの使用に依存する(Moretto et al. (2007), J Biol Chem, 282, 11436-11445)。この戦略もまた、免疫化のためのHPV L2ペプチドの提示に使用されている(WO 2010/070052)。チオレドキシン足場のその後の改善において、古細菌由来のTrxバリアントを用いることにより、抗宿主チオレドキシン抗体の誘導を有意に減少させることができることが見出された(Canali et al., (2014), Scientific Reports 4, Art. No 4729:1)。
【0005】
免疫系におけるB細胞の主要な役割は、その活性化に際して抗原特異的抗体を産生することである。活性化には、B細胞表面のB細胞レセプター(BCR)がその同族抗原(B細胞エピトープ)に結合することが必要である。このBCRの活性化によりB細胞が活性化され、成熟とクローン増殖が起こり、その後、このようにして産生された細胞の一部が、前記抗原に特異的な抗体を産生する形質細胞となる。
【0006】
適応免疫系におけるもう一つの重要な分岐はエピトープ特異的T細胞である。ヒトにおいては、これらの細胞はその表面にT細胞レセプターを有し、その認識ドメインは抗原ペプチド(T細胞エピトープ)と主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質との所定の複合体に特異的である。T細胞レセプターが同族の相互作用に従事すると、T細胞は活性化され、増殖し、免疫応答においてその促進性又は抑制性の仕事を行う。
【0007】
MHC分子には2つの型がある。MHCクラスIはあらゆるヒト細胞の表面に発現しており、細胞の細胞質に存在するタンパク質に由来するペプチドを基本的にはランダムに提示する。したがって、MHC分子は細胞のタンパク質レパートリーの連続的な概観を提供することができ、例えば細胞のウイルス感染や発がんの際に、正常でないタンパク質発現を認識させることができる。MHCクラスI分子-ペプチド複合体を認識するためには、T細胞レセプターは補助レセプター(co-receptor)としてCD8表面タンパク質を必要とする。このことから、CD8補助レセプターを発現するT細胞のサブクラスが存在し、CD8+ T細胞と名づけられた。唯一(exclusive)ではないが、その主な機能は、細胞内における病原性プロセス(例えば、ウイルス感染)の可能性を示すペプチドを提示する体細胞を排除することであり、このことから、細胞傷害性T細胞とも呼ばれる。
【0008】
MHCクラスIIはプロフェッショナルな抗原提示細胞(APC)においてのみ発現する。これらにおいては、主にエンドサイトーシスによってAPCに摂取されたタンパク質に由来するペプチドが提示される。MHCクラスIIの認識には補助レセプターCD4が必要であり、それはCD4+ T細胞の表面にのみ発現している。ヘルパーT細胞とも呼ばれるこれらのT細胞の主な役割は、CD8+ T細胞、マクロファージ、及びB細胞の活性化である。したがって、適切なエピトープがAPCに送達されると、MHCクラスIIを介してこれらのエピトープがヘルパーT細胞に提示され、今度はこれらのT細胞が活性化されることにより、免疫系の他方の分枝の活性化が導かれる。
【発明の概要】
【0009】
そのため、当該技術分野において、パピローマウイルス感染のような感染症の処置及び予防のための、並びに、がんの処置及び予防のための改善された免疫学的物質が依然として必要とされている。本発明の根底にある技術的課題は、前述の必要性に適合する手段及び方法の提供として理解され得る。この技術的課題は、特許請求の範囲及び下記の本明細書において特徴づけられる実施形態により解決される。
【0010】
したがって、本発明は、(i)T細胞エピトープ、(ii)B細胞エピトープ、及び(iii)足場ポリペプチドを含み、前記足場ポリペプチドがチオレドキシンポリペプチドである免疫原性ポリペプチドに関する。
【0011】
以下で使用される場合、用語「有する(have)」、「含む(comprise)」若しくは「含む(include)」、又はその任意の文法上の変化形は排他的でないように使用されることがある。したがって、これらの用語は、この文脈で記載される主体(entity)の中に、これらの用語により導入される特徴の他に、さらなる特徴が存在しない状況、及び、1以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指すことができる。一例として、表現「AはBを有する」、「AはBを含む(comprise)」及び「AはBを含む(include)」は、Bの他に、Aに他の要素が存在しない状況(すなわち、Aが、もっぱら及び排他的にBからなる状況)、並びに、Bの他に、主体Aに1以上のさらなる要素(例えば、要素C、要素C及び要素D、又はさらに多くの要素)が存在する状況のどちらも指すことができる。
【0012】
さらに、以下で使用される用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的には」又は類似の用語は、さらなる可能性を制限することなく、任意選択の特徴とともに使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は任意選択の特徴であり、いかなる方法で特許請求の範囲を制限することも意図しない。本発明は、当業者には認識されるように、代わりとなる特徴を使用することによって実施することができる。同様に、「本発明の実施形態において」又は同様の表現によって導入される特徴は、任意選択の特徴を意図しており、発明のさらなる実施形態についていかなる制限もなく、本発明の範囲についていかなる制限もなく、また、本発明の他の任意選択の特徴若しくは任意でない特徴と同様の方法で導入される特徴を組み合わせる可能性についていかなる制限もない。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「標準条件」は、特に記載がない場合、IUPAC標準周囲温度及び圧力(SATP)条件、すなわち、好ましくは25℃の温度及び100kPaの絶対圧力に関する。また、好ましくは、標準条件はpH7を含む。さらに、用語「約」は、特に指定がない場合、関連分野で一般に認められている技術的な正確さを有する表示値に関し、好ましくは表示値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。さらに、用語「本質的に」は、示された結果又は使用に影響を及ぼす逸脱がないことを示す。すなわち、可能性のある逸脱によって、示された結果が±20%以上、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%以上逸脱することはない。したがって、「から本質的になる」は、特定された成分を含むが、不純物として存在する物質、成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する避けられない物質、及び、本発明の技術的効果を達成すること以外の目的で添加された成分以外の他の成分を含まないことを意味する。例えば、句「から本質的になる」を用いて定義された組成物は、任意の既知の許容可能な添加剤、賦形剤、希釈剤、担体等を包含する。好ましくは、一組の成分から本質的になる組成物は、不特定の成分(複数可)を5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは1%未満、最も好ましくは0.1重量%未満含む。核酸配列の文脈において、用語「本質的に同一」は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性%の値を示す。理解される通り、本質的に同一という用語は100%の同一性を含む。上記の用語は、必要な変更を加えて、用語「本質的に相補的」に適用される。
【0014】
用語「免疫原性ポリペプチド」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で特定されるエレメントを含む、好ましくは非天然の、ポリペプチドに関する。本明細書中で言及される免疫原性ポリペプチドは、少なくともT細胞エピトープ、B細胞エピトープ、及び足場ポリペプチドを含み、これらは全て本明細書中の別の箇所において特定されている。本明細書中で以下に特定されるように、免疫原性ポリペプチドは、好ましくは免疫エンハンサー、オリゴマー化ドメイン等のように、さらなるドメインを含むことができる。好ましくは、前記ドメインは、非共有結合により連結され、大きくとも10-6 mol/l、より好ましくは大きくとも10-7 mol/l、最も好ましくは大きくとも10-8 mol/lの解離定数を有する。より好ましくは、少なくとも2つのドメインが、好ましくはペプチド結合により、共有結合している。最も好ましくは、免疫原性ポリペプチドの全てのドメインは、好ましくはペプチド結合によって共有結合的に連結されている。すなわち、好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、アミノ酸の連続鎖を有するポリペプチドである。したがって、好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、単一のオープンリーディングフレームによりコードされる。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、免疫原性であり、対象において体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘導し、より好ましくは、対象において体液性及び細胞性免疫応答を誘導するという生物学的機能を有する。最も好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、少なくとも1種、より好ましくは少なくとも3種、なおより好ましくは少なくとも8種、最も好ましくは少なくとも10種のHPVの遺伝子型に対して免疫を誘導するという生物学的機能を有する。好ましくは、免疫原性ポリペプチドにおいて、前記B細胞エピトープ及び前記T細胞エピトープの少なくとも1つは、腫瘍抗原のエピトープ及び/又は感染性因子の抗原のエピトープであり、より好ましくは、B細胞エピトープ及びT細胞エピトープの両方が、腫瘍抗原のエピトープ及び/又は感染性因子の抗原(複数可)のエピトープである。なおより好ましくは、前記B細胞エピトープ及び前記T細胞エピトープの少なくとも1つは、ウイルスポリペプチドのエピトープであり、最も好ましくは、B細胞エピトープ及びT細胞エピトープの両方が、ウイルスポリペプチドのエピトープである。好ましくは、免疫原性ポリペプチドのB細胞エピトープ及びT細胞エピトープは、非同一ポリペプチドに由来し、より好ましくは、非相同ポリペプチドに由来する。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、本明細書中で以下に特定されるように、HPV16のL2ポリペプチドのアミノ酸15位~50位に対応する多数のPV L2 N末端ペプチドを含む。より好ましくは、前記多数は、5~20個、好ましくは6~19個、最も好ましくは6~16個のPV L2 N末端ペプチドの数である。また好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、HPV 16、18、31、33、35、6、51、及び59からなる一覧から選択される少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも6つ、最も好ましくは全てのHPVの遺伝子型からのPV L2 N末端ペプチドを含む。また、好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、B細胞エピトープとして、前記PV L2 N末端ペプチドのそれぞれを3コピー、より好ましくは2コピー、最も好ましくは1コピー含む。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、本明細書の他の箇所で特定されるように、多数のB細胞エピトープを含むペプチド、好ましくはPV L2 N末端ペプチドを含み、ここで、好ましくは、多数のPV L2 N末端ペプチドを含む前記ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1と少なくとも80%同一の配列を有し;前記ペプチドは、好ましくは配列番号30の核酸配列によってコードされる。より好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、多数のPV L2 N末端ペプチドを含むペプチドを含み、ここで、多数のPV L2 N末端ペプチドを含む前記ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有する。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、多数のT細胞エピトープ、好ましくはE7ペプチドを含むペプチドを含み、本明細書の他の箇所で特定されているように、ここで、多数のE7ペプチドを含む前記ペプチドは、好ましくは、配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2と少なくとも80%同一の配列を有し;前記ペプチドは、好ましくは配列番号31の核酸配列によってコードされる。より好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、多数のE7ペプチドを含むペプチドを含み、ここで、多数のE7ペプチドを含む前記ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有する。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列又は前記配列と少なくとも80%同一の配列を含み;及び、配列番号2のアミノ酸配列、又は前記配列と少なくとも80%同一の配列を含む。より好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列、又は前記配列と少なくとも80%同一の配列を含み、特に配列番号3のアミノ酸配列を含む;前記ペプチドは、好ましくは配列番号32の核酸配列によってコードされる。なおより好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列、又は前記配列と少なくとも80%同一の配列を含み、特に配列番号4のアミノ酸配列を含む;前記免疫原性ペプチドは、好ましくは配列番号33の核酸配列によってコードされる。最も好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、(i)配列番号5のアミノ酸;(ii)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列;(iii)配列番号34によってコードされるポリペプチド配列、及び/又は(iv)配列番号34の配列と少なくとも70%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを含む。
【0015】
好ましくは、免疫原性ポリペプチドという用語には、本明細書に記載する特定の免疫原性ポリペプチドのバリアントが含まれる。本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチドバリアント」は、少なくとも本明細書おいて特定されるポリペプチドを含む任意の化学分子に関し、前記化学分子は、特定の活性を有するが、本明細書に示す前記ポリペプチドとは構造が異なる。好ましくは、ポリペプチドバリアントは、本明細書で特定されるポリペプチドに含まれる、25~500個、より好ましくは30~300個、最も好ましくは35~150個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドを含む。また、前述のポリペプチドのさらなるポリペプチドバリアントが包含される。そのようなポリペプチドバリアントは、特定のポリペプチドと同一の必須の生物学的活性を少なくとも有する。さらに、本発明に関して言及されるポリペプチドバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加により異なるアミノ酸配列を有し、ここで、バリアントのアミノ酸配列は依然として、好ましくは、特定のポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、又は99%同一であるべきことを理解されたい。2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、当技術分野で周知のアルゴリズムによって決定することができる。好ましくは、同一性の程度は、2つの最適にアラインされた配列を、比較ウィンドウにわたって比較することによって決定されるが、この比較ウィンドウ内のアミノ酸配列の断片は、最適アラインメントのために比較される配列と比べて、付加又は欠失(例えば、ギャップ又はオーバーハング)を含み得る。パーセンテージ%は、好ましくはペプチドの全長にわたって、マッチする位置の数を得るために、同一のアミノ酸残基が2つの配列にともに出現する位置の数を求め、そのマッチする位置の数を、比較するウィンドウ内の位置の総数で割り、結果の数値に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージ%を得ることによって計算される。比較のための配列の最適アラインメントは、SmithとWaterman(1981)の局所的相同性アルゴリズム、NeedlemanとWunschのアルゴリズム(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、PearsonとLipman(1988)の類似性探索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(ウィスコンシン遺伝学ソフトウェアパッケージ、Genetics Computer Group (GCG)、575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、及びTFASTA)、又は目視検査によって行われる。比較する2つの配列を特定したら、GAP及びBESTFITを使用して最適なアラインメントを決定し、それから同一性の程度を決定することが好ましい。ギャップウェイト(gap weight)に5.00、及びギャップウェイトレングス(gap weight length)に0.30のデフォルト値を用いることが好ましい。上記ポリペプチドバリアントは、アレルバリアント、又はその他の任意の種特異的ホモログ、パラログ、若しくはオルソログに由来し得る。さらに、本明細書において言及されるポリペプチドバリアントには、特定のポリペプチド又は前述のタイプのポリペプチドバリアントの断片を、これらの断片及び/又はバリアントが上記の生物活性を有する限り含める。そのような断片は、例えば、ポリペプチドの分解生成物又はスプライスバリアントであり得る、又はそれに由来し得る。リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、SUMO化、若しくはミリスチル化等の翻訳後修飾、非天然アミノ酸を含むこと、及び/又はペプチドミメティックであることによって異なるバリアントがさらに含まれる。さらに、本発明の免疫原性ポリペプチドバリアントは、好ましくは少なくとも1つのドメインが本明細書に記載するドメインのバリアントであるバリアントを含む。
【0016】
用語「エピトープ」は、免疫系に対して認識可能な抗原の(サブ)構造に関連することが当業者に認識されている。本明細書中で使用される場合、エピトープはアミノ酸の配列、好ましくはアミノ酸の連続配列、すなわちペプチドである。好ましくは、エピトープは、少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、最も好ましくは少なくとも6個のアミノ酸の長さを有する。また、好ましくは、エピトープは、多くとも50個、より好ましくは多くとも25個、さらにより好ましくは多くとも20個、最も好ましくは多くとも15個のアミノ酸の長さを有する。したがって、好ましくは、エピトープは3~50個、より好ましくは4~25個、さらにより好ましくは5~20個、最も好ましくは6~15個のアミノ酸の長さを有する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、用語「B細胞エピトープ」は、免疫系の抗体によって認識可能なペプチドに含まれるアミノ酸の連続配列に関する。したがって、好ましくは、B細胞エピトープは、対象において体液性(抗体)応答を誘導するペプチドである。B細胞エピトープを予測する方法は当業者に知られている(例えば、Larsen et al. (2006), Immunome Research 2:2から)。好ましくは、B細胞エピトープは、腫瘍抗原に由来するエピトープ、すなわち、本質的に、不適切に増殖する細胞(例えば腫瘍若しくはがん細胞)の細胞内又は細胞上にのみ発現するタンパク質に含まれるアミノ酸配列であり;したがって、好ましくは、B細胞エピトープは、本明細書中で以下に特定されるように、対象の正常細胞、すなわち前記対象の、不適切な増殖をしていない細胞上に、出現しない又は本質的に出現しないエピトープである。好ましくは、B細胞エピトープは、本明細書中で以下に特定されるように、腫瘍抗原及び/又は感染性因子の抗原のエピトープである。より好ましくは、B細胞エピトープは、感染性因子のエピトープであり、より好ましくはウイルスポリペプチド、最も好ましくはウイルス構造ポリペプチドであり;好ましくは、前記ウイルスポリペプチドは、パピローマウイルス(PV)ポリペプチドであり、より好ましくは、ヒトPV(HPV)、さらにより好ましくは、高リスクHPVの遺伝子型、最も好ましくは、高リスク粘膜性HPVの遺伝子型からのものである。好ましくは、B細胞エピトープは、HPV 16、18、31、33、35、6、51、及び59からなる一覧から選択されるHPVの遺伝子型の少なくとも1つに由来する。当業者には理解されるように、免疫原性ポリペプチドは、1つ以上のB細胞エピトープ、例えば、好ましくは2~20個、より好ましくは6~19個、最も好ましくは6~16個のB細胞エピトープを含み得る。このような場合、B細胞エピトープは、好ましくは、非同一ポリペプチド、より好ましくは相同ポリペプチドに由来し;このような場合、なお好ましくは、B細胞エピトープは、相同ポリペプチドの対応する領域に由来する。好ましくは、B細胞エピトープは、後期PVポリペプチド、好ましくはL1又はL2に由来するペプチドであり、より好ましくは、HPV16のL2ポリペプチドのアミノ酸15位~50位に対応するPV L2 N末端ペプチド(配列番号6)、又はHPV16のL2ポリペプチドのアミノ酸65位~89位に対応するPV L2 N末端ペプチド(配列番号7)であり、なお好ましくは、HPV16のL2ポリペプチドのアミノ酸20位~38位に対応するPV L2 N末端ペプチド(配列番号8)である。
【0018】
用語「相同ポリペプチド」は、進化的に関連し、したがってアミノ酸配列が類似しているポリペプチドに関連することが当業者に理解される。好ましくは、本明細書中で使用される場合、相同ポリペプチドという用語は、好ましくは上記で特定されるように、より好ましくはそれらの進化的関係にかかわらず、アミノ酸配列が、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であるポリペプチドについて使用される。
【0019】
用語「T細胞エピトープ」は、本明細書で使用される場合、細胞(MHC-I)又はプロフェッショナルな抗原提示細胞(MHC-II)の表面に提示される主要組織適合性複合体(MHC)クラスI又はクラスII分子に結合され得る、ペプチドに含まれるアミノ酸の連続配列に関する。MHC-I又はMHC-IIに提示される免疫原性ペプチドの予測の仕方(Nielsen et al., (2004), Bioinformatics, 20 (9), 1388-1397, Bordner (2010), PLoS ONE 5(12): e14383)、及び特定のペプチドの結合の評価の仕方(例えば、Bernardeau et al., (2011), J Immunol Methods, 371(1-2):97-105)は、当業者に知られている。好ましくは、T細胞エピトープはMHC-Iエピトープである。好ましくは、T細胞エピトープは、腫瘍抗原に由来するエピトープ、すなわち、本質的に、不適切に増殖する細胞(例えば腫瘍若しくはがん細胞)の細胞内又は細胞上にのみ発現するタンパク質に含まれるアミノ酸配列であり;したがって、好ましくは、T細胞エピトープは、対象の正常細胞、すなわち前記対象の、不適切な増殖をしていない細胞上に出現しない又は本質的に出現しないエピトープである。好ましくは、T細胞エピトープは、本明細書中で以下に特定されるように、腫瘍抗原及び/又は感染性因子の抗原のエピトープである。より好ましくは、T細胞エピトープは、感染性因子、特にウイルスポリペプチドのエピトープであり、より好ましくはパピローマウイルス(PV)ポリペプチドのエピトープであり、さらにより好ましくはヒトPV(HPV)、好ましくは高リスクHPVの遺伝子型、より好ましくは高リスク粘膜性HPVの遺伝子型からのものである。好ましくは、T細胞エピトープは、HPV 16、18、31、33、35、6、51、及び59からなる一覧から選択されるHPVの遺伝子型の少なくとも1つに由来する。好ましくは、T細胞エピトープは、PVの初期遺伝子に由来するペプチドであり、より好ましくはE6又はE7ポリペプチドから、最も好ましくはE7ポリペプチドからである。好ましくは、T細胞エピトープは、HPV16 E7のアミノ酸49位~57位のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を
有し、より好ましくは、前記T細胞エピトープはアミノ酸配列RAHYNIVTF(配列番号9)を有する。好ましくは、T細胞エピトープはそのN末端及び/又はC末端において、少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個のアミノ酸に隣接されており;より好ましくは、N末端隣接配列のアミノ酸配列はQAEPD(配列番号10)であり、及び/又はC末端隣接配列のアミノ酸配列はCCKCD(配列番号11)である。したがって、好ましくは、N末端及びC末端において隣接されたT細胞エピトープのアミノ酸配列は、QAEPDRAHYNIVTFCCKCD(配列番号12)である。当業者に理解されるように、免疫原性ポリペプチドは、1つ以上のT細胞エピトープ、例えば、好ましくは2~15個、より好ましくは2~10個、さらに好ましくは2~8個のT細胞エピトープ、最も好ましくは3個のT細胞エピトープを含み得る。このような場合、T細胞エピトープは、好ましくはMHC-I及びMHC-IIエピトープであり;より好ましくは、T細胞エピトープは、異なる遺伝子のMHCによって提示されるエピトープである。より好ましくは、T細胞エピトープは、異なるMHCアレル及び/又はサブタイプによって提示されるエピトープである。好ましくは、免疫原性ポリペプチドに含まれる全てのT細胞エピトープは、相同ポリペプチドに由来する。より好ましくは、免疫原性ポリペプチドに含まれる全てのT細胞エピトープは、同じポリペプチドに由来し、さらにより好ましくは、同一のT細胞エピトープを含み、最も好ましくは、同一のT細胞エピトープである。
【0020】
用語「足場ポリペプチド」は、当業者に公知であり、免疫原性ポリペプチドのエピトープの結合、好ましくは共有結合のための骨格を提供する全てのポリペプチドを含む。好ましくは、足場ポリペプチドは球状ポリペプチドである。また、好ましくは、天然の状態の、すなわち本明細書に特定されるエピトープの会合を伴わない足場ポリペプチドは、単量体ポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドである。足場ポリペプチドがオリゴマーポリペプチドの場合、好ましくはホモオリゴマーである。より好ましくは、天然の状態の足場ポリペプチドは単量体ポリペプチドである。エピトープは、原則として、足場ポリペプチドのN末端、C末端、及び/又は内部に結合し得る。
【0021】
本明細書中で使用される場合、足場ポリペプチドはチオレドキシンである。用語「チオレドキシン」は、本質的に全ての生物において保存されている小さなレドックスポリペプチドのファミリーに関連することが当業者に知られている。好ましくは、チオレドキシンは、哺乳動物の、より好ましくはヒト、細菌、又は古細菌のチオレドキシンである。より好ましくは、チオレドキシンは古細菌のチオレドキシンであり、好ましくは好熱性古細菌(アーケオン(archeon))、好ましくはパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)又はメタノサエタ・サーモフィラ(Methanosaeta thermophila)のものである。したがって、チオレドキシンは好ましくは配列番号13(ヒトのチオレドキシン)のアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号14の核酸配列によりコードされるか、若しくはそのバリアントである;又は、配列番号15(マウスのチオレドキシン)のアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号16の核酸配列によりコードされるか、若しくはそのバリアントである;又は、配列番号17(大腸菌のチオレドキシン)のアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号18の核酸配列によりコードされるか、若しくはそのバリアントである。さらに好ましくは、チオレドキシンは配列番号19(P.フリオサスのチオレドキシン)のアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号20の核酸配列によりコードされるか、若しくはそのバリアントである;又は、好ましくは、配列番号21(M.サーモフィラのチオレドキシン)のアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号22の核酸配列によりコードされるか、若しくはそのバリアントである。適切なチオレドキシンポリペプチドは、特にWO 2010/070052から知られている。当業者に理解されるように、本発明のチオレドキシンは、足場となるという生物学的活性を有するが、その酸化還元活性は必要とされない。したがって、本発明において、上記チオレドキシンの1つに対して少なくとも50%の配列同一性を有するチオレドキシンのバリアントが、免疫原性ポリペプチドにおける使用に適する。好ましくは、WO 2010/070052に詳細に記載されているように、多数のL2 N末端ペプチドがチオレドキシンの「提示部位」に挿入される。
【0022】
用語「リンカー」及び「リンカーペプチド」は、原則として当業者に知られている。適切なリンカーペプチドの選択の方法は当業者に知られている。好ましくは、リンカーは1~5個のアミノ酸を含み、これらは好ましくはグリシン(G)、プロリン(P)又はセリン(S)からなる群から選択される。特に好ましいリンカーペプチドは、アミノ酸配列GGP(配列番号23)を含む。しかしながら、GP(配列番号24)、GS(配列番号25)、GPGP(配列番号26)、GPGPG(配列番号27)、又はSGSG(配列番号28)等の他のリンカーも使用することができる。好ましくは、前記リンカーペプチドは、足場ポリペプチド(すなわち、本明細書中の別の箇所に記載されているようなチオレドキシンポリペプチド)と、B細胞エピトープ及び/又はT細胞エピトープとの接合部に位置する。また好ましくは、独立して選択されたリンカーが、B細胞エピトープとT細胞エピトープとの間に介在し得る。また好ましくは、1より多くのB細胞エピトープ及び/又はT細胞エピトープが免疫原性ポリペプチド中に存在する場合、独立して選択されたリンカーが、前記B細胞エピトープ及び/又はT細胞エピトープに介在することもできる。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「パピローマウイルス」(PV)は、哺乳動物、好ましくは家畜、より好ましくはウシ及びウマ、最も好ましくはヒトの、皮膚及び粘膜に感染するパピローマウイルス科(papillomaviridae)のウイルスからのDNAウイルスに関する。ヒトPV(HPV)の場合、110を超えるHPV遺伝子型が記載されている(de Villiers, E. M., C. Fauquet, T. R. Broker, H. U. Bernard, and H. zur Hausen. 2004. Classification of papillomaviruses. Virology 324:17-27)。約50のHPV遺伝子型が、粘膜に感染することが知られている。このような粘膜性の遺伝子型は、そのがんとの疫学的関連性に基づき3つの異なる群に分類される:「低リスク」ヒトパピローマウイルス(LR-HPV)、「高リスク」ヒトパピローマウイルス(HR-HPV)、及び「推定高リスク」ヒトパピローマウイルス(pHR-HPV)。また、HR-HPVは、外陰部、肛門、膣、陰茎、及び口腔咽頭のがん、並びに膣上皮内の新生物、肛門上皮内の新生物、外陰部上皮内の新生物、及び陰茎上皮内の新生物を引き起こし得ることも知られている。好ましくは、HPVは、粘膜性のHPVであり、より好ましくは、本発明のHPVは、高リスクHPV遺伝子型(HR-HPV)であり、子宮頸がん発症の主要原因である。好ましくは、HPVは、HPV 31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、73、及び82であり、より好ましくはHPV 6、16、18、31、33、35、39、45、51、56、59、及び82であり、最も好ましくはHPV 6、16、18、31、33、35、51、及び59である。
【0024】
用語「不適切な細胞増殖」は、対象における体細胞の異常な増殖に関し、その結果、体組織、体液の細胞組成の不均衡、及び/又は腫瘍形成が続いて起こり得る。不適切な細胞増殖は、感染性因子、好ましくはウイルス、より好ましくは発がん性ウイルス、より好ましくはパピローマウイルス、エプスタイン-バーウイルス、肝炎ウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス1、ヒトヘルペスウイルス8、より好ましくはパピローマウイルス(PV)、最も好ましくはヒトパピローマウイルス(HPV)によって誘導され得る。しかしながら、不適切な細胞増殖は、化合物(例えば発がん性物質)によって、又は内因性に(例えば自然変異によって)誘発され得る。好ましくは、不適切な細胞増殖は良性である、すなわち、好ましくは、対象の健康又は生命を脅かさない。好ましい良性の不適切な細胞増殖は、疣贅、外向発育型乳頭腫、コンジローマ、内反性乳頭腫、及び前がん性HPV誘発病変である。より好ましくは、不適切な細胞増殖は悪性である、すなわち、対象の健康又は生命を脅かす。したがって、好ましくは、悪性の不適切な細胞増殖はがんである。本明細書中で使用される場合、用語「がん」は、一群の体細胞(「がん細胞」)による制御不能な成長によって特徴付けられる、ヒトを含む動物の疾患に関する。この制御不能な成長は、周囲組織への侵入及び破壊、並びに、ことによると、体内の他の場所へのがん細胞の拡散を伴い得る。好ましくは、がんという用語には再発も含まれる。したがって、好ましくは、がんは固形がん、その転移、又は再発である。
【0025】
好ましくは、がんは、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、エイズ関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、びまん性星細胞腫、非定型奇形腫、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、脳幹グリオーマ、乳がん、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、小脳星状細胞腫、子宮頸がん、脊索腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、子宮内膜がん、上衣芽腫、上衣腫、食道がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、線維肉腫、胆嚢がん、胃がん、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部・視覚経路グリオーマ(hypothalamic and visual pathway glioma)、眼内メラノーマ、カポジ肉腫、喉頭がん、髄芽腫、髄上皮腫、メラノーマ、メルケル細胞がん、中皮腫、口腔がん(mouth cancer)、多発性内分泌腺腫症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、鼻腔・副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん(oral cancer)、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵がん、乳頭腫症、鼻腔・副鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、中枢神経原発性リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、セザリー症候群、小細胞肺がん、小腸がん、軟部肉腫、扁平上皮がん、頸部扁平上皮がん(squamous neck cancer)、精巣がん、咽頭がん、胸腺がん(thymic carcinoma)、胸腺腫(thymoma)、甲状腺がん、尿道がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(waldenstrom macroglobulinemia)、及びウィルムス腫瘍からなる一覧から選択される。より好ましくは、がんは、固形がん、その転移、又は再発である。最も好ましくは、がんはHPV陽性がん、好ましくはHPV陽性頭頸部がん及び/又は子宮頸がん(cervix carcinoma)の腫瘍である。したがって、好ましくは、がん細胞はパピローマウイルス陽性がん細胞であり、好ましくはヒトパピローマウイルス陽性がん細胞である。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「腫瘍抗原」は、不適切に増殖する細胞では検出可能であるが、正常な体細胞、特に同じ組織の周囲の細胞では検出されないか、又は、少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍低い程度で検出される、任意の抗原性化合物、好ましくはポリペプチド又はそのエピトープに関する。したがって、好ましくは、前記不適切に増殖する細胞を含む対象の残りの細胞と比較して、腫瘍抗原は、不適切に増殖する細胞に特異的であることが好ましい。好ましくは、腫瘍抗原は、腫瘍細胞に特異的な抗原であり、好ましくは、PV関連良性病変及び/又は本明細書中の以上に特定されるがん細胞に特異的である。
【0027】
用語「対象」は、本明細書中で使用される場合、動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、特に家畜(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ及びヤギ等)又は実験動物(ラット、マウス及びモルモット等)に関する。最も好ましくは、対象はヒトである。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「感染性因子」は、対象において伝達性疾患(transmissible disease)を引き起こす因子、好ましくは微生物に関する。好ましくは、感染性因子は細菌、真核生物感染性因子(例えばマラリア原虫属)又はウイルスであり、より好ましくはウイルス(例えばパピローマウイルス、肝炎ウイルス若しくはヒト免疫不全ウイルス(HIV))である。より好ましくは、感染性因子は、発がん性ウイルス、より好ましくは、パピローマウイルス、エプスタイン-バーウイルス、肝炎ウイルス、ヒトTリンパ球親和性ウイルス1、ヒトヘルペスウイルス8、より好ましくはパピローマウイルス(PV)、最も好ましくはヒトパピローマウイルス(HPV)である。好ましくは、感染性因子は慢性疾患を引き起こす因子である。より好ましくは、感染性因子は、慢性及び/又は持続性の感染を引き起こす因子である。
【0029】
好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、オリゴマー化ドメインをさらに含む。用語「オリゴマー化ドメイン」は、その従来の意味で使用され、前記ドメインを含むポリペプチドは、凝集する傾向を有するという特性を有するポリペプチドに関する。好ましくは、オリゴマー化ドメインの分離した分子としての解離定数は、せいぜい10-4mol/l、より好ましくはせいぜい10-5mol/l、最も好ましくはせいぜい10-6mol/lである。認識される通り、凝集する分子の数は、選択されたオリゴマー化ドメインの種類に特に依存する。適切なオリゴマー化ドメインは、当技術分野において公知である。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、(i)C4-結合タンパク質の、好ましくは哺乳動物のC4-結合タンパク質の、より好ましくはヒト又はマウスのC4-結合タンパク質の、最も好ましくはマウスのC4-結合タンパク質のオリゴマー化ドメイン;(ii)エンカプスリン(encapsulin)ポリペプチド、好ましくは好熱性古細菌からのエンカプスリンポリペプチド、より好ましくはパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)のエンカプスリンポリペプチド;(iii)フェリチンポリペプチド、好ましくは好熱性古細菌からのフェリチンポリペプチド、より好ましくはパイロコッカス・フリオサスのフェリチンポリペプチド;及び(iv)2つの異なるニワトリのC4-結合タンパク質のハイブリッドポリペプチド、好ましくは特にWO2007/062819 A2に記載されているようなIMX313ポリペプチド又はそのバリアント、最も好ましくはIMX313Tポリペプチド(配列番号29)、のうち少なくとも1つのオリゴマー化ドメインを含む。IMX313Tポリペプチドは、「OVX313ドメイン」とも呼ばれる。
【0030】
有利なことに、チオレドキシンを足場として、免疫原性ポリペプチド中でT細胞エピトープとB細胞エピトープとを組み合わせることにより、B細胞抗原に対する頑強な抗体応答だけでなく、T細胞抗原に対する改善されたT細胞応答をも誘導できることが、本発明の根底をなす研究において見出された。したがって、開示される免疫原性ポリペプチドは、対象における持続性の感染を除去するために使用することができると同時に、対象に新規な感染に対するワクチン接種をするために使用することができる。
【0031】
上記定義は、必要な変更を加えて下記に適用される。下記でさらになされる追加の定義及び説明もまた、必要な変更を加えて本明細書に記載されている全ての実施形態に適用される。
【0032】
本発明はさらに、医薬において使用するための本発明の免疫原性ポリペプチド、並びに、感染性因子、好ましくはHPVでの感染及び/又は細胞の不適切な増殖の処置及び/又は予防に使用するための本発明の免疫原性ポリペプチドに関する。
【0033】
用語「処置すること」及び「処置」は、本明細書中で言及される疾患若しくは障害、又はそれに伴う症状を顕著な程度まで改善することを指す。本明細書中で使用される場合、前記処置することは、本明細書中で言及される疾患又は障害に関する健康の回復全体をも含む。本明細書中でこの用語が使用される場合、処置することが、処置される全ての対象において効果的であるとは限らないことは理解されたい。しかしながら、用語は、好ましくは、本明細書中で言及される疾患又は障害を罹患している対象の統計的に有意な部分が、成功裏に処置され得ることが必要とされるべきである。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、当業者によって、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定等の様々な周知の統計学的評価ツールを使用して、さらなる困難性なく判定できる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.0001である。好ましくは、処置は、所与のコホート又は集団の対象の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%について有効であるべきである。好ましくは、がんを処置することは、対象における腫瘍負荷を減少させることである。当業者には理解されるように、例えばがんの処置の有効性は、例えばがんの病期及びがんの種類を含む様々な因子に依存する。好ましくは、処置することにより、不適切に増殖する細胞、好ましくは新生物細胞、より好ましくはがん細胞の、対象のT細胞による認識が引き起こされる。したがって、好ましくは、処置することは、腫瘍の成長の停止を引き起こす効果を有し、より好ましくは、腫瘍の退縮を引き起こし、より好ましくは、腫瘍を消散させる効果を有する。本明細書中で使用される場合、上記は、必要な変更を加えてHPV関連病変を処置することに関する。
【0034】
用語「予防すること」は、本明細書中で言及される疾患又は障害に関して、対象において所定の期間にわたり健康を維持することを指す。前記期間は、投与された薬物化合物の量及び本明細書中の別の箇所で議論される対象の個別の因子に依存し得ることを理解されたい。予防が、本発明に係る化合物によって処置された全ての対象において有効であるとは限らないことは理解されたい。しかしながら、この用語は、好ましくは、コホート又は集団の対象の統計的に有意な部分が、本明細書中で言及される疾患若しくは障害、又はそれに伴う症状の罹患を効果的に予防することを必要とする。好ましくは、対象のコホート又は集団は、この文脈において、通常、すなわち本発明による予防措置なしに、本明細書中で言及される疾患又は障害を発症するであろうと想定される。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、本明細書中の他の箇所で議論されている様々な周知の統計的評価ツールを使用して、当業者によってさらなる困難性なく決定することができる。したがって、好ましくは、感染性因子によって引き起こされる疾患の場合、予防はワクチン接種であり得る。したがって、好ましくは、予防することという用語は、少なくとも1つの感染性因子に対する免疫応答を引き出すために、本明細書中で特定される化合物を投与することに関する。したがって、ワクチン接種によって免疫系が刺激され、感染性因子での感染に対する免疫が確立又は改善される。好ましくは、本発明によるワクチン接種によって、感染性因子、好ましくはヒトパピローマウイルス遺伝子型による感染に対する免疫の確立又は改善が可能となる。本発明に係るワクチンは、特に本明細書中の別の箇所で特定されるさらなる成分を含み得るものと理解されたい。ワクチン接種が、ワクチン接種を受けた全ての対象において、顕著な免疫応答を引き出すとは限らないことは、当業者には理解されるであろう。また、ワクチン接種が、ワクチン接種を受けた全ての対象において、感染の防止に有効であるとは限らないことも理解されたい。しかしながら、この用語は、コホート又は集団の対象の部分、好ましくは統計的に有意な部分において、有効なワクチン接種がなされることを必要とする。感染性因子がHPVである場合、有効なワクチン接種とは、好ましくは、いくつかのHPV誘発性病変(例えば疣贅)の予防又は減少である。
【0035】
本発明はまた、本発明に係る免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、ポリヌクレオチドという用語は、好ましくは、具体的に示されるポリヌクレオチドのバリアントを含む。より好ましくは、ポリヌクレオチドという用語は、示された特定のポリヌクレオチドに関する。しかしながら、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドが、遺伝暗号の縮重によって様々なポリヌクレオチドによってもコードされ得ることは理解されたい。特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの選択の仕方、及び、前記ポリヌクレオチドの発現に使用される生物におけるコドン使用頻度にしたがった、ポリヌクレオチドに使用されるコドンの最適化の仕方も当業者によって知られている。したがって、本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチドバリアント」は、その配列が前述の特定の核酸配列から、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加、及び/又は欠失によって導き出され得ることを特徴とする核酸配列を含む、本明細書に関連するポリヌクレオチドのバリアントに関するが、このポリヌクレオチドバリアントはその特定のポリヌクレオチドについて特定された活性を有するべきである、つまり、本発明に係る免疫原性ペプチドをコードするべきである。さらに、本発明に関係して参照されるポリヌクレオチドバリアントが、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は付加に起因して異なる核酸配列を有するべきであることは理解されたい。好ましくは、前記ポリヌクレオチドバリアントは、特定のポリヌクレオチドのオルソログ、パラログ、又は別のホモログである。同様に好ましくは、前記ポリヌクレオチドバリアントは、特定のポリヌクレオチドの天然に存在するアレルである。ポリヌクレオチドバリアントはまた、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前述の特定のポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる核酸配列を含むポリヌクレオチドも包含する。これらのストリンジェントな条件は当業者に知られており、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)中でのハイブリダイゼーション条件、及びその後50~65℃、0.2×SSC、0.1% SDSでの1回以上の洗浄ステップである。当業者は承知しているように、これらのハイブリダイゼーション条件は、核酸の種類に応じて異なり、例えば有機溶媒が存在する場合、緩衝液の温度及び濃度について異なる。例えば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」下で、0.1×~5×SSCの濃度の水性バッファー(pH7.2)において、温度は核酸の種類に応じて42℃~58℃の間で異なる。有機溶媒、例えば50%ホルムアミドが上述の緩衝液中に存在する場合、標準条件下の温度は、約42℃である。DNA:DNAハイブリッド用のハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば0.1×SSCで20℃~45℃であり、好ましくは30℃と45℃の間である。DNA:RNAハイブリッド用のハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば0.1×SSCで30℃~55℃であり、好ましくは45℃と55℃の間である。上述のハイブリダイゼーション温度は、例えば、長さが約100 bp(=塩基対)でG+C含量が50%の核酸について、ホルムアミド非存在下で決定される。上で述べたテキスト、又は以下のテキスト等を参照することによって、必要なハイブリダイゼーション条件を決定する方法が当業者に知られている:Sambrook et al., "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory, 1989;Hames and Higgins編1985, "Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxford;Brown編1991, "Essential Molecular Biology: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxford。あるいは、ポリヌクレオチドバリアントは、混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づくDNA増幅等のPCRに基づく技術によって、すなわち本発明のポリペプチドの保存されたドメインに対する縮重プライマーを使用して取得可能である。ポリペプチドの保存されたドメインは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列又はポリペプチドのアミノ酸配列と、他の生物の配列との配列比較によって特定することができる。鋳型として、細菌、真菌、又は植物からの、好ましくは動物からのDNA若しくはcDNAを使用することができる。さらに、バリアントは、具体的に示される核酸配列に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。さらに、具体的に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドも包含される。同一性%の値は、アミノ酸又は核酸の配列全領域にわたり計算されることが好ましい。異なる配列を比較するために、様々なアルゴリズムに基づく一連のプログラムが当業者に利用可能である。この文脈において、NeedlemanとWunschのアルゴリズム又はSmithとWatermanのアルゴリズムは、特に信頼できる結果を与える。配列アラインメントを実行するために、PileUpプログラム(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higgins et al., CABIOS, 5 1989: 151-153)、又はGapプログラム及びBestFitプログラム[Needleman and Wunsch(J. Mol. Biol. 48;443-453 (1970))並びにSmith and Waterman(Adv. Appl. Math. 2;482-489 (1981))]が使用され、これらはGCGソフトウェアパケット(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991))の一部である。パーセント(%)単位で上記に挙げた配列同一性の値は、好ましくは、以下の設定を用いて、配列領域全体にわたりGAPプログラムを使用して決定されるべきであるが、この設定は、特に指示のない限り、配列アラインメントの標準設定として常に使用されるものとする;Gap Weight: 50、Length Weight: 3、Average Match: 10.000、及びAverage Mismatch: 0.000。
【0037】
具体的に示される核酸配列のいずれかの断片を含むポリヌクレオチドもまた、本発明のバリアントポリヌクレオチドとして包含される。断片は、特定されているような活性を依然として有する免疫原性ポリペプチドを依然としてコードするものとする。したがって、コードされる免疫原性ポリペプチドは、前記生物学的活性を付与する本発明の免疫原性ポリペプチドのドメインを含み得る、又はそのドメインからなり得る。本明細書中で意味するところの断片は、好ましくは、特定の核酸配列のいずれか1つの、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、若しくは少なくとも500個の連続したヌクレオチドを含み、又は、特定のアミノ酸配列のいずれか1つの、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも80、少なくとも100、若しくは少なくとも150個の連続したアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは、前述の核酸配列からなる、それから本質的になる、又はそれを含む。したがって、このポリヌクレオチドは、さらなる核酸配列も含有し得る。具体的には、本発明のポリヌクレオチドは、融合タンパク質をコードすることができ、ここで、融合タンパク質の一方のパートナーは、以上に記された核酸配列によりコードされる免疫原性ポリペプチドである。そのような融合タンパク質は、追加の部分として、発現をモニターするためのポリペプチド(例えば、緑色、黄色、青色、若しくは赤色の蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ等)、精製を目的としたときの補助的な指標として、若しくは検出可能なマーカーとして役立ち得る、いわゆる「タグ」、又は以上に記載されたような足場ポリペプチド(例えば、チオレドキシン)を含み得る。異なる目的のためのタグが、当技術分野において周知であり、本明細書中の他の箇所に記載されている。
【0039】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離されたポリヌクレオチドとして(すなわち、その天然の環境から単離された)、又は遺伝的に改変された形態で提供されるべきである。ポリヌクレオチドは、好ましくは、DNA(cDNAを含む)又はRNAである。この用語は、一本鎖並びに二本鎖ポリヌクレオチドを包含する。さらに、好ましくは、天然に存在する修飾ポリヌクレオチド(例えばグリコシル化若しくはメチル化されたポリヌクレオチド等)、又は人工的な修飾ポリヌクレオチド(例えばビオチン化されたポリヌクレオチド等)を含む、化学的に修飾されたポリヌクレオチドもまた含まれる。
【0040】
さらに、本発明は、本発明に係るポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0041】
用語「ベクター」には、好ましくは、ファージ、プラスミド、ウイルス、又はレトロウイルスベクターの他、人工染色体、例えば細菌若しくは酵母の人工染色体等が包含される。さらに、この用語は、ゲノムDNA内への標的化構築物のランダムな、又は部位指向的な組み込みを可能にする標的化構築物にも関する。そのような標的化構築物は、好ましくは、以下に詳細に記載するような相同又は非相同組み換えのために、十分な長さのDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、宿主内での増幅及び/又は選択のための選択可能なマーカーをさらに含む。ベクターは、当技術分野において周知の様々な技術により宿主細胞に組み込まれ得る。例えば、プラスミドベクターは、沈殿物(例えばリン酸カルシウムの沈殿物若しくは塩化ルビジウムの沈殿物等)、又は荷電脂質を含む複合体、又は炭素に基づくクラスター(例えばフラーレン等)の中で導入できる。あるいは、プラスミドベクターはヒートショック又はエレクトロポレーション技術により導入され得る。ベクターがウイルスである場合、ウイルスは、宿主細胞に適用される前に、適切なパッケージング細胞株を使用してin vitroで被包され得る。レトロウイルスベクターは、複製可能又は複製欠損であり得る。後者の場合、ウイルスの増幅は、一般的に補完宿主/細胞においてのみ起こる。好ましい実施形態では、ベクターは細菌ベクターであり、好ましくはp15A複製開始点を有する、及び/又はカナマイシン耐性遺伝子を担持する。
【0042】
より好ましくは、本発明のベクター内で、ポリヌクレオチドは、原核細胞若しくは真核細胞、又はその単離された分画内での発現を可能にする発現制御配列と機能的に連結している。前記ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへのポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞内での発現を確実にする調節エレメントは、当技術分野において周知である。調節エレメントは、好ましくは、転写の開始を確実にする調節配列、並びに、任意選択で、転写の終結及び転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。追加の調節エレメントは、転写エンハンサー並びに翻訳エンハンサーを含み得る。原核生物宿主細胞内での発現を可能にする可能性のある調節エレメントには、例えば、大腸菌ではlac、trp、又はtacプロモーターが含まれ、真核生物宿主細胞内での発現を可能にする調節エレメントの例として、酵母ではAOX1若しくはGAL1プロモーター、又は、哺乳動物細胞及びその他の動物細胞ではCMV-、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサー、若しくはグロビンイントロンが挙げられる。さらに、誘導可能な発現制御配列が、本発明に包含される発現ベクターで使用され得る。そのような誘導可能なベクターには、tet若しくはlacオペレーター配列、又は、ヒートショック若しくはその他の環境因子により誘導可能な配列が含まれ得る。適切な発現制御配列は、当技術分野において周知である。転写の開始に関与するエレメントの他に、そのような調節エレメントには、ポリヌクレオチドの下流における転写終結シグナル(例えばSV40-ポリA部位又はtk-ポリA部位等)も含まれ得る。この文脈において、適切な発現ベクター(例えば、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia社)、pBluescript(Stratagene社)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(InVitrogene社)、又はpSPORT1(GIBCO BRL社))は当技術分野において公知である。好ましくは、前記ベクターは、発現ベクター、及び遺伝子移入又は標的化ベクターである。ウイルス、例えばレトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、又はウシパピローマウイルスに由来する発現ベクターが、本発明のポリヌクレオチド又はベクターの標的細胞集団内への送達に使用され得る。当業者に周知の方法を使用して、組み換えウイルスベクターを構築することができる;例えば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.、及び、Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.(1994)に記載の技術を参照。好ましい実施形態では、ベクターは、誘導可能なプロモーター、好ましくはtacプロモーターの制御下に免疫原性ポリペプチドをコードする核酸配列を担持する細菌発現ベクターである。また好ましくは、前記ベクターは機能的なlacインヒビターをコードする発現可能な遺伝子をコードする遺伝子をさらに担持する。したがって、好ましい実施形態では、ベクターは細菌発現ベクターであり、好ましくはp15A複製開始点を有し、カナマイシン耐性遺伝子、機能的なlacインヒビターをコードする発現可能な遺伝子をコードする遺伝子、及びtacプロモーターの制御下に免疫原性ポリペプチドをコードする遺伝子を担持する。
【0043】
本発明は、本発明に係るポリヌクレオチド、及び/又は本発明に係るベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「宿主細胞」は、本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクターを受け入れ、好ましくはそれを維持することが可能な任意の細胞に関する。より好ましくは、宿主細胞は、前記ポリヌクレオチド及び/又はベクターにコードされた本発明の免疫原性ポリペプチドを発現することが可能である。好ましくは、細胞は、細菌細胞であり、より好ましくは当技術分野において公知の一般的な研究用細菌系統の細胞、最も好ましくはエッシェリヒア属(Escherichia)の株、特に大腸菌(E.coli)株である。また好ましくは、宿主細胞は、真核細胞、好ましくは酵母細胞(例えば、パン酵母系統の細胞)、又は動物細胞である。より好ましくは、宿主細胞は、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞、特にマウス若しくはラットの細胞である。最も好ましくは、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。
【0045】
本発明はさらに、本発明に係る免疫原性ポリペプチド、本発明に係るポリヌクレオチド、本発明に係るベクター、及び/又は本発明に係る宿主細胞と、医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物に関する。
【0046】
用語「医薬組成物」は、本明細書中で使用される場合、医薬的に許容可能な形態の本発明の1つ又は複数の化合物、及び医薬的に許容可能な担体を含む組成物に関する。本発明の化合物は、医薬的に許容可能な塩として製剤化することができる。許容される塩には、酢酸塩、メチルエステル、HCl、硫酸塩、塩化物等が含まれる。医薬組成物は、好ましくは、局所的又は全身的に投与される。適切な、薬物投与のために慣用的に使用されてきた投与経路は、経口、静脈内、又は非経口投与、並びに吸入である。好ましくは、本発明の医薬組成物は、非経口経路を介して、好ましくは皮下、筋肉内、又は腹腔内に投与される。対象がヒトである場合、投与は筋肉内であるのが好ましい。しかしながら、ポリヌクレオチド化合物は、ウイルスベクター、ウイルス、又はリポソームを使用することにより、遺伝子治療アプローチにおいて投与されてもよく、また局所的に、例えば、軟膏として投与されてもよい。さらに、化合物は、共通する医薬組成物内で、又は別個の医薬組成物として、他の薬物と組み合わせて投与することができ、ここで、前記別個の医薬組成物はキットの部分(キットオブパーツ)の形態で提供され得る。特に、本明細書中の別の箇所で特定されるように、アジュバントの共投与が想定される。好ましくは、免疫原性ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及び医薬組成物は、凍結乾燥形態で提供される。
【0047】
化合物は、好ましくは、慣用手順にしたがって、薬物を標準的な医薬担体と組み合わせることにより調製される慣用の剤形で投与される。この手順は、成分を、所望の調製物に適した混合、造粒、及び圧縮又は溶解することを含み得る。医薬的に許容可能な担体又は希釈剤の形態及び特徴が、それと組み合わされる活性成分の量、投与経路、及びその他の周知の変動要素によって規定されることが理解されるであろう。
【0048】
担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合するという意味で、及びその受容者に有害でないという意味で、許容可能でなければならない。採用される医薬担体は、例えば、固体、ゲル、又は液体のいずれかであることができる。固体担体の例としては、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等が挙げられる。液体担体の例としては、リン酸緩衝生理食塩水、シロップ、油(ピーナッツ油及びオリーブ油等)、水、エマルション、様々な種類の湿潤剤、滅菌溶液等が挙げられる。同様に、担体又は希釈剤には、当技術分野において周知の時間遅延材料(例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等)を、単独で、又はワックスと共に含めることができる。前記適切な担体には、上述の担体及び当技術分野で周知の他の担体を含む:例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照。
【0049】
希釈剤(複数可)は、免疫原性ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、又は宿主細胞、及び潜在的なさらなる医薬的な活性成分の生物学的活性に影響を及ぼさないように選択されるのが好ましい。このような希釈剤の例としては、蒸留水、生理食塩水、リンガー液、ブドウ糖液、及びハンクス液が挙げられる。また、医薬組成物又は製剤は、その他の担体、アジュバント、又は、無毒性の、非治療的な、非免疫原性の安定剤等も含み得る。
【0050】
治療上有効な用量は、本明細書中で言及される症状を予防、改善、又は処置する、本発明の医薬組成物に使用される化合物の量を指す。化合物の治療効果及び毒性は、細胞培養又は実験動物において、標準的な製薬手順により(例えばED50(集団の50%で治療上有効な用量)及び/又はLD50(集団の50%に対して致死的な用量)を決定することにより)決定することができる。治療効果と毒性作用の用量比が治療指数であり、それは比率LD50/ED50として表すことができる。
【0051】
投与レジメンは、好ましくは、関連のある臨床的因子を考慮して、また好ましくは、本明細書中の別の箇所に記載される方法のいずれか1つにしたがって、主治医によって決定される。医学分野でよく知られているように、任意の一人の患者への投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与時期及び投与経路、全身健康状態、及び同時に投与される他の薬物を含む、多くの因子に依存し得る。経過は、定期的な評価によってモニターすることができる。典型的な用量は、例えば、1~10000μgの範囲であり得る。しかしながら、特に前述の因子を考慮すれば、この例示的な範囲より下又は上の用量が想定される。一般的に、レジメンには、一次免疫化として、1μg~10mgの抗体の投与、その後の、同じ抗体の、好ましくは同じ用量での1回以上のブースト投与が含まれる。しかしながら、対象及び投与様式に応じて、物質の投与量は広範囲にわたって多様であることができ、体重1kg当たり約0.01mg~体重1kg当たり約1mgを提供するのが好ましい。本明細書中で言及される医薬組成物及び製剤は、本明細書中に記された疾患又は症状を処置又は予防するために、少なくとも1回投与される。しかしながら、前記医薬組成物は、1回より多く、例えば1回~4回、より好ましくは2又は3回投与することができる。
【0052】
特定の医薬組成物は、医薬分野でよく知られた方法で調製され、活性化合物として少なくとも1つの免疫原性ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、又は宿主細胞を、医薬的に許容可能な担体又は希釈剤と混合して、そうでなければ、それに伴って含む。それらの特定の医薬組成物を作製するために、活性化合物(複数可)は通常、担体又は希釈剤と混合されるか、或いはカプセル、サシェ、カシェ剤、薬包紙、又はその他の適切な容器若しくは送達媒体に封入又は被包される。その結果得られる製剤は、投与方法に適合し、すなわち錠剤、カプセル剤、坐剤、液剤、懸濁剤等の形態をとる。推奨投与量は、考慮される受容者に応じた用量調整を予期するために、処方説明書若しくは使用説明書において示されるべきである。
【0053】
本発明は、本発明に係る免疫原性ポリペプチド、本発明に係るポリヌクレオチド、本発明に係るベクター、及び/又は本発明に係る宿主細胞を収納箱(housing)の中に含むキットにさらに関する。
【0054】
本明細書中で使用される場合、用語「キット」は、本発明の前述の化合物、手段又は試薬の集合を指し、それらは一緒に被包されても、されなくてもよい。キットの成分は、別個のバイアルに含められてもよいし(すなわち、別個のキットの部分として)、単一のバイアルで提供されてもよい。さらに、本発明のキットは、好ましくは、本明細書において上記した方法を実施するために使用されるものであることを理解されたい。好ましくは、全ての成分が、上記の方法を実施するために、すぐに使用できる様式で提供されることが想定される。さらに、キットは、好ましくは、前記方法を行うための説明を含有する。説明は、紙又は電子的な形態でユーザーマニュアルによって提供することができる。さらに、マニュアルは、本発明のキットを使用して前記方法を行うための用量の説明及び/又は投与の説明を含むことができる。以上から理解されるように、ポリヌクレオチドを含むキットの記載は、好ましくは、必要な変更を加えて、対応するベクターを含むキットに関連する。
【0055】
好ましくは、キットは、本発明に係る免疫原性ポリペプチド及びアジュバントを含む。用語「アジュバント」は、本明細書において、当技術分野におけるその通常の意味で使用される。好ましくは、アジュバントは、(i)アラム(Alum)及びToll様受容体4(TLR4)アゴニスト、好ましくは合成モノホスホリルリピドA(MPLA)、並びに/又は(ii)スクアレンに基づく水中油型ナノエマルション、好ましくはAddaVaxTMを含む。また好ましくは、キットは、希釈剤及び/又は投与手段を含む。適切な希釈剤は本明細書において上に記載されている。投与手段は、免疫原性ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、及び/又は宿主細胞を対象に投与するのに適切な全ての手段である。投与手段には、化合物又は組成物の投与のための送達ユニット、及び、投与まで前記化合物又は組成物を貯蔵するための貯蔵ユニットが含まれ得る。しかしながら、本発明の手段は、そのような実施形態において別個のデバイスとして現れ、好ましくは、前記キット中に一緒に被包されることも考えられる。投与に好ましい手段は、専門的な技術者の特別な知識なしに適用できるものである。好ましい実施形態では、投与の手段は、本発明の化合物又は組成物を含む注射器、より好ましくは針がある注射器である。別の好ましい実施形態では、投与の手段は、化合物又は組成物を含む静脈内注入(IV)装置である。さらに別の好ましい実施形態では、投与手段は、本発明の化合物を含む吸入器であり、ここで、より好ましくは、前記化合物は、エアロゾルとして投与するために製剤化される。
【0056】
本発明はさらに、医薬において使用するための、並びに、感染性因子、好ましくはHPVでの感染及び/又は細胞の不適切な増殖の処置及び/又は予防に使用するための、本発明に係る免疫原性ポリペプチド、本発明に係るポリヌクレオチド、本発明に係るベクター、及び/又は本発明に係る宿主細胞を含む医薬組成物に関する。
【0057】
本発明は、さらに、感染性因子、好ましくはHPVでの感染及び/又は細胞の不適切な増殖を処置及び/又は予防する方法であって、本発明に係る免疫原性ポリペプチド、本発明に係るポリヌクレオチド、本発明に係るベクター、及び/又は本発明に係る医薬組成物と対象とを接触させることを含み、それによりHPV感染を処置及び/又は予防する方法に関する。
【0058】
本発明の処置及び/又は予防の方法は、好ましくはin vivoの方法である。さらに、この方法は、以上に明記したステップに加えてステップを含み得る。例えば、さらなるステップは、接触ステップ及び/又はさらなる処置ステップ(例えば、外科手術、照射、さらなる薬理学的処置)の前に、感染性因子での感染及び/又は細胞の不適切な増殖を診断することに関することができる。さらに、前記ステップの1つ以上が自動装置によって実施されてもよい。
【0059】
好ましくは、方法が施される対象は、少なくとも1つのPV関連病変を罹患している。また、好ましくは、前記対象はPVに感染するリスクのある対象であり、より好ましくは、前記対象は、せいぜい16歳、さらにより好ましくはせいぜい15歳、なおより好ましくはせいぜい14歳、なおより好ましくはせいぜい13歳、最も好ましくはせいぜい12歳のヒトである。しかしながら、PV感染状態が不明である対象にこの方法を施すことも想定される。
【0060】
さらに本発明は、本発明に係る免疫原性ポリペプチド、本発明に係るポリヌクレオチド、本発明に係るベクター、及び/又は本発明に係る医薬組成物と対象とを接触させることによって産生され、又は産生可能である、抗PV抗体及び/又は抗PV T細胞を含む組成物に関し、ここで、好ましくは、前記対象は非ヒトである。
【0061】
本発明の製造方法は、好ましくは、in vivoの方法である。さらに、この方法は、以上に明記したステップに加えてステップを含み得る。さらに、前記ステップの1つ以上が自動装置によって実施されてもよい。好ましくは、製造方法における使用に適した対象は、実験動物、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、ロバ、又はウマである。ある実施形態では、対象はヒトである。
【0062】
上記を踏まえ、下記の実施形態が好ましい:
1.(i)B細胞エピトープ、(ii)T細胞エピトープ、及び(iii)足場ポリペプチドを含む免疫原性ポリペプチドであって、前記足場ポリペプチドがチオレドキシンポリペプチドである、前記免疫原性ポリペプチド。
2.前記B細胞エピトープ及び前記T細胞エピトープの少なくとも1つが、腫瘍抗原及び/又は感染性因子の抗原のエピトープであり、好ましくは、B細胞エピトープ及びT細胞エピトープの両方が腫瘍抗原及び/又は感染性因子の抗原のエピトープである、実施形態1に記載の免疫原性ポリペプチド。
3.前記B細胞エピトープ及び前記T細胞エピトープの少なくとも1つが、ウイルスポリペプチドのエピトープであり、好ましくはB細胞エピトープ及びT細胞エピトープの両方がウイルスポリペプチドのエピトープである、実施形態1又は2に記載の免疫原性ポリペプチド。
4.前記B細胞エピトープ及び前記T細胞エピトープの少なくとも1つが、パピローマウイルス(PV)ポリペプチドのエピトープであり、好ましくは、B細胞エピトープ及びT細胞エピトープの両方がPVポリペプチドのエピトープである、実施形態1~3のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
5.前記B細胞エピトープ及び前記T細胞エピトープが、非同一ポリペプチドに由来し、より好ましくは非相同ポリペプチドに由来する、実施形態1~4のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【0063】
6.前記免疫原性ポリペプチドに含まれる全てのB細胞エピトープが、相同ポリペプチドに由来する、及び/又は、前記免疫原性ポリペプチドに含まれる全てのT細胞エピトープが、相同ポリペプチドに由来する、実施形態1~5のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
7.前記B細胞エピトープ及び/又は前記T細胞エピトープが、ヒトPV(HPV)、好ましくは高リスクHPVの遺伝子型、より好ましくは高リスク粘膜性HPVの遺伝子型に由来する、実施形態1~6のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
8.前記B細胞エピトープ及び/又は前記T細胞エピトープが、HPV 16、18、31、33、35、6、51、及び59からなる一覧から選択される少なくとも1つのHPVの遺伝子型に由来する、実施形態1~7のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
9.前記T細胞エピトープが、PVの初期遺伝子に由来するペプチドである、実施形態1~8のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
10.前記T細胞エピトープが、E6又はE7ポリペプチド、好ましくはE7ポリペプチドに由来するペプチドである、実施形態1~9のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【0064】
11.前記T細胞エピトープが、HPV16 E7のアミノ酸49~57位のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する、実施形態1~10のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
12.前記T細胞エピトープが、アミノ酸配列RAHYNIVTF(配列番号9)を有する、実施形態1~11のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
13.前記T細胞エピトープのN末端及び/又はC末端に少なくとも3、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5アミノ酸が隣接している、実施形態1~12のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
14.N末端隣接配列のアミノ酸配列がQAEPD(配列番号10)であり、及び/又は、C末端隣接配列のアミノ酸配列がCCKCD(配列番号11)である、実施形態13に記載の免疫原性ポリペプチド。
15.N末端及びC末端に隣接したT細胞エピトープのアミノ酸配列がQAEPDRAHYNIVTFCCKCD(配列番号12)である、実施形態13又は14に記載の免疫原性ポリペプチド。
【0065】
16.前記B細胞エピトープが、後期PVポリペプチド、好ましくはL1又はL2に由来するペプチドである、実施形態1~15のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
17.前記B細胞エピトープが、HPV16のL2ポリペプチドのアミノ酸15~50位に対応するPV L2 N末端ペプチドである、実施形態1~16のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
18.前記PV L2 N末端ペプチドが、HPV16のL2ポリペプチドのアミノ酸20~38位に対応するペプチドである、実施形態17に記載の免疫原性ポリペプチド。
19.前記免疫原性ポリペプチドが、HPV16のL2ポリペプチドのアミノ酸15~50位に対応する多数のPV L2 N末端ペプチドを含む、実施形態1~18のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
20.前記多数が、数にして5~20、好ましくは6~19、最も好ましくは6~16個のPV L2 N末端ペプチドである、実施形態1~19のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【0066】
21.前記免疫原性ポリペプチドが、HPV 16、18、31、33、35、6、51、及び59からなる一覧から選択される少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも6つ、最も好ましくは全てのHPVの遺伝子型からのPV L2 N末端ペプチドを含む、実施形態1~20のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
22.前記免疫原性ポリペプチドが、3コピー、より好ましくは2コピー、最も好ましくは1コピーの各前記PV L2 N末端ペプチドを含む、実施形態1~21のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
23.前記チオレドキシンが、ヒト、細菌、又は古細菌のチオレドキシンである、実施形態1~22のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
24.前記チオレドキシンが、好熱性古細菌、好ましくはパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)のチオレドキシンであり、好ましくは配列番号19の配列を有する、実施形態1~23のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
25.前記T細胞エピトープ及び/又は前記B細胞エピトープが、前記チオレドキシンの提示部位に含まれる、実施形態1~24のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【0067】
26.前記免疫原性ポリペプチドが、オリゴマー化ドメインをさらに含む、実施形態1~25のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
27.前記オリゴマー化ドメインが、
(i)2つの異なるニワトリC4結合タンパク質のハイブリッドポリペプチド、好ましくはIMX313Tポリペプチド;
(ii)エンカプスリン(encapsulin)ポリペプチド、好ましくは好熱性古細菌からのエンカプスリンポリペプチド、より好ましくはパイロコッカス・フリオサスのエンカプスリンポリペプチド;
(iii)フェリチン(ferritin)ポリペプチド、好ましくは好熱性古細菌からのフェリチンポリペプチド、より好ましくはパイロコッカス・フリオサスのフェリチンポリペプチド;及び、
(iv)C4結合タンパク質、好ましくは哺乳動物C4結合タンパク質、より好ましくはヒト又はマウスC4結合タンパク質、最も好ましくはマウスC4結合タンパク質のオリゴマー化ドメイン
のうち少なくとも1つである、実施形態26に記載の免疫原性ポリペプチド。
28.前記オリゴマー化ドメインが、配列番号29を含む、好ましくは配列番号29からなる、実施形態26又は27に記載の免疫原性ポリペプチド。
29.前記免疫原性ポリペプチドが、多数のPV L2 N末端ペプチドを含むペプチドを含み、前記多数のPV L2 N末端ペプチドを含むペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号1と少なくとも80%同一の配列を有する、実施形態1~28のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
30.前記免疫原性ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列又は前記配列と少なくとも80%同一の配列、及び、配列番号2のアミノ酸配列又は前記配列と少なくとも80%同一の配列を含む、実施形態1~29のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【0068】
31.前記免疫原性ポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列又は前記配列と少なくとも80%同一の配列を含む、実施形態1~30のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
32.前記免疫原性ポリペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列又は前記配列と少なくとも80%同一の配列を含む、実施形態1~31のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
33.前記免疫原性ポリペプチドが、
(i)配列番号5のアミノ酸配列;
(ii)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列;
(iii)配列番号34によってコードされるポリペプチド配列;及び/又は、
(iv)配列番号34の配列と少なくとも70%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド
を含む、実施形態1~32のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
34.医薬において使用するための、実施形態1~33のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
35.細胞の不適切な増殖及び/又は感染性因子での感染、好ましくはHPV感染の処置及び/又は予防に使用するための、実施形態1~33のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド。
【0069】
36.HPV感染の処置及び予防に使用するための、実施形態35に記載の使用のための免疫原性ポリペプチド。
37.実施形態1~33のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、好ましくは配列番号33の配列又はそれと少なくとも80%同一の配列を含み、より好ましくは配列番号34の配列又はそれと少なくとも80%同一の配列を含む、前記ポリヌクレオチド。
38.実施形態37に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
39.実施形態1~33のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド、実施形態37に記載のポリヌクレオチド、及び/又は実施形態38に記載のベクターを含む、宿主細胞。
40.実施形態1~33のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド、実施形態37に記載のポリヌクレオチド、及び/又は実施形態38に記載のベクターを含む、医薬組成物。
【0070】
41.実施形態1~33のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド、実施形態37に記載のポリヌクレオチド、実施形態39に記載の宿主細胞、及び/又は実施形態38に記載のベクターを収納箱(housing)に含む、キット。
42.医薬において使用するための、実施形態1~33のいずれかに記載のポリペプチド、実施形態37に記載のポリヌクレオチド、実施形態38に記載のベクター、実施形態39に記載の宿主細胞、及び/又は実施形態40に記載の医薬組成物
43.細胞の不適切な増殖及び/又は感染性因子での感染、好ましくはHPV感染の処置及び/又は予防に使用するための、実施形態1~33のいずれかに記載のポリペプチド、実施形態37に記載のポリヌクレオチド、実施形態38に記載のベクター、実施形態39に記載の宿主細胞、及び/又は実施形態40に記載の医薬組成物。
44.細胞の不適切な増殖及び/又は感染性因子での感染、好ましくはHPV感染を処置及び/又は予防する方法であって、実施形態1~33のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド、実施形態37に記載のポリヌクレオチド、実施形態38に記載のベクター、実施形態39に記載の宿主細胞、及び/又は実施形態40に記載の医薬組成物と、対象とを接触させることを含み、それによりHPV感染を処置及び/又は予防する、前記方法。
45.前記対象が、少なくとも1つのPV関連病変を罹患している、実施形態44に記載の方法。
【0071】
46.前記対象が、PVに感染するリスクのある対象である、実施形態44又は45に記載の方法。
47.前記対象がヒトであり、年齢がせいぜい16歳、好ましくはせいぜい15歳、より好ましくはせいぜい14歳、さらにより好ましくはせいぜい13歳、最も好ましくはせいぜい12歳である、実施形態44~46のいずれかに記載の方法。
48.実施形態1~33のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチド、実施形態37に記載のポリヌクレオチド、実施形態38に記載のベクター、実施形態39に記載の宿主細胞、及び/又は実施形態40に記載の医薬組成物と、対象とを接触させることによって産生され、又は産生可能である、抗PV抗体及び/又は抗PV T細胞を含む組成物であって、好ましくは前記対象が非ヒトである、前記組成物。
【0072】
本明細書で引用された全ての参考文献は、その開示内容全体及び本明細書において具体的に記載された開示内容に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本発明に係る免疫原性ポリペプチドの好ましい実施形態の模式図。
図2】実施例1のT細胞活性化アッセイにおける、100万個の細胞あたりのスポット形成単位数。A:PfTrx-(OVA257-264)3X-OVX313で免疫化したマウス、B:PfTrx-L2(20-38)8mer-(OVA257-264)3X-OVX313で免疫化したマウス、C:PfTrx-L2(20-38)8mer-OVX313で免疫化したマウス。
図3】実施例2において免疫化されたマウスの抗HPV16中和力価。抗原はA:PfTrx-L2(20-38)8mer-OVX313、B:PfTrx-L2(20-38)8mer-(OVA257-264)3X-OVX313)であった。
図4】実施例3において免疫化されたマウスの抗HPV18中和力価。抗原はA:PfTrx-L2(20-38)8mer-OVX313、B:PfTrx-L2(20-38)8mer-(OVA257-264)3X-OVX313)であった。
図5図3と同様だが、実施例4からの結果。すなわち、B群は、PfTrxL2(20-38)8mer-(flankE7(49-57))3X-OVX313)で免疫化された。
図6図4と同様だが、実施例4からの結果。すなわち、B群は、PfTrxL2(20-38)8mer-(flankE7(49-57))3X-OVX313)で免疫化された。
図7】実施例6のワクチン接種(A)及び非ワクチン接種(B)マウスにおける経時的な腫瘍成長。M1~M9はマウスの番号を示す。
図8】実施例7のワクチン接種(A)及び非ワクチン接種(B)マウスにおける経時的な腫瘍成長。M1~M12はマウスの番号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
下記の実施例は、本発明を説明するに過ぎない。実施例が、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでは一切ない。
【0075】
実施例1
6~8週齢のC57BL/6N雌マウス(各群6又は3匹)を、20μgのPfTrx-(OVA257-264)3X-OVX313;PfTrx-L2(20-38)8mer-(OVA257-264)3X-OVX313;又はPfTrx-L2(20-38)8mer-OVX313(+Addavax 50%(v/v))を尾の基部に皮下接種して免疫した。7日後、脾臓細胞を得た後、OVA257-264ペプチドによるin vitro刺激によってIFN-γElispotを行った。OVA257-264ペプチドは、アミノ酸257位~264位に対応するオボアルブミン由来のT細胞エピトープである。全て本明細書中の別の箇所に記載のように、OVX313はIMX313オリゴマー化ドメイン、PfTrxはパイロコッカス・フリオサスのチオレドキシン、L2(20-38)8merは配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドである。図2に示すように、B細胞及びT細胞エピトープの両方を含有する抗原は、B細胞エピトープのみと比較して、増加した抗OVA T細胞応答を刺激する。
【0076】
実施例2
6~8週齢のBALB/c雌マウス(各群10匹)を、免疫化の間隔を2週間として4回筋肉内接種により免疫した。20μgの量の異なる抗原(PfTrx-L2(20-38)8mer-OVX313又はPfTrx-L2(20-38)8mer-(OVA257-264)3X-OVX313)を、Addavax 50%(v/v)を免疫アジュバントとして共に使用した。最後の免疫化の1カ月後にマウスから血清を採取し、L1-PBNA(シュードビリオンに基づく中和アッセイ)を用いてHPV 16シュードビリオンに対して分析した。図3に示すように、B細胞エピトープ及びT細胞エピトープの両方を含有する抗原は、B細胞エピトープのみの抗原と比較して、同等の抗HPV16中和抗体力価を産生する。
【0077】
実施例3
6~8週齢のBALB/c雌マウス(各群10匹)を、免疫化の間隔を2週間として4回筋肉内接種により免疫した。20μgの量の異なる抗原(PfTrx-L2(20-38)8mer-OVX313又はPfTrx-L2(20-38)8mer-(OVA257-264)3X-OVX313)をAddavax50%(v/v)と共に使用した。最後の免疫化の1カ月後にマウスから血清を採取し、L1-PBNA(シュードビリオンに基づく中和アッセイ)を使用してHPV 18シュードビリオンに対して分析した。図4に示すように、B細胞及びオボアルブミンT細胞エピトープの両方を含有する抗原は、B細胞エピトープのみの抗原と比較して、同等の抗HPV18中和抗体力価を産生する。
【0078】
実施例4
6~8週齢のBALB/c雌マウス(各群10匹)を、免疫化の間隔を2週間として4回筋肉内接種により免疫した。20μgの量の異なる抗原(PfTrx-L2(20-38)8mer-OVX313又はPfTrxL2(20-38)8mer-(flankE749-57)3X-OVX313)を、Addavax 50%(v/v)と共に使用した。最後の免疫化の1か月後にマウスから血清を採取し、L1-PBNA(シュードビリオンに基づく中和アッセイ)を使用してHPV 16シュードビリオンに対して分析した。図5に示すように、B細胞及びE7 T細胞エピトープの両方を含有する抗原は、B細胞エピトープのみの抗原と比較して、同等の抗HPV16中和抗体力価を産生する。
【0079】
実施例5
6~8週齢のBALB/c雌マウス(各群10匹)に、免疫化の間隔を2週間として4回筋肉内接種により免疫した。20μgの量の異なる抗原(A.PfTrx-L2(20-38)8mer-OVX313;B.PfTrx- L2(20-38)8mer-(flank E749-57)3X -OVX313)を、Addavax 50%(v/v)と共に使用した。最後の免疫化の1か月後にマウスから血清を採取し、L1-PBNA(シュードビリオンに基づく中和アッセイ)を使用してHPV 18シュードビリオンに対して分析した。図6に示すように、B細胞及びE7 T細胞エピトープの両方を含有する抗原は、B細胞エピトープのみの抗原と比較して、同等の抗HPV18中和抗体力価を産生する。
【0080】
実施例6
18匹のC57BL/6Nマウスに0.2×106のTC-1腫瘍細胞(すなわち、HPV E6,E7及びc-Ha rasで形質転換した、C57BL/6マウスの肺上皮由来の細胞)を右側腹部に皮下注射した。23、27及び31日目に、腫瘍マウスの半数(18匹中9匹)に、20μg抗原PfTrx-L2(20-38)8mer-(flankE7(49-57))3X-OVX313(+Addavax 50%(v/v))を尾の基部に皮下接種して免疫した。他の9匹の腫瘍マウスにはワクチン接種しなかった。腫瘍サイズは3又は4日毎にキャリパーで測定した。腫瘍体積が1 cm3を超えた場合、又は腫瘍径が1.5cmを超えた場合にマウスを屠殺した。図7に示すように、ワクチン接種マウス(A)は、非ワクチン接種対照(B)と比較して、腫瘍成長の強い阻害を示す。
【0081】
実施例7
24匹のC57BL/6Nマウスに0.2×106のTC-1腫瘍細胞を右側腹部に皮下注射して免疫した。7日目及び12日目に、腫瘍マウスの半数(24匹中12匹)に、20μgの抗原PfTrx-L2(20-38)8mer-(flankE7(49-57))3X-OVX313(+Addavax 50%(v/v))を尾の基部に皮下接種した。他の12匹の腫瘍マウスにはワクチンを接種しなかった。腫瘍サイズは3又は4日毎にキャリパーで測定した。腫瘍体積が1 cm3を超えた場合、又は腫瘍径が1.5cmを超えた場合にマウスを屠殺した。図8に示すように、ワクチン接種マウス(A)は、非ワクチン接種対照(B)と比較して、腫瘍成長の強い阻害を示し、これは、2回のワクチン接種が強力な抗腫瘍反応を誘導するのに充分であることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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