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特許7423556システム冷却オーバーヘッドの観点からのプロセッサ電力最適化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】システム冷却オーバーヘッドの観点からのプロセッサ電力最適化
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
G06F1/20 D
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020572420
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019046164
(87)【国際公開番号】W WO2020046564
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】16/114,572
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593096712
【氏名又は名称】インテル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】インクリー,ベンソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシュワナタン,ラクシュミー
【審査官】白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161451(JP,A)
【文献】特開2012-069565(JP,A)
【文献】特開2010-000716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0323400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を管理するコンピューティングシステムであって、
冷却サブシステムと、
プロセッサと、
レジスタと、
前記プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいて前記プロセッサの効率的な温度を決定し、複数の他の温度と前記効率的な温度との間での一組の電力差を決定し、前記一組の電力差を前記レジスタに格納する電力制御ユニットと、
一組の命令を含むメモリであり、前記一組の命令は、前記プロセッサによって実行されるときに、当該コンピューティングシステムに、前記レジスタ内の前記一組の電力差に基づいて前記冷却サブシステムを制御させる、メモリと、
を有するコンピューティングシステム。
【請求項2】
前記効率的な温度は、前記プロセッサのリアルタイム最小電力消費に対応する、請求項1に記載のコンピューティングシステム。
【請求項3】
前記リアルタイムデータは、温度データ、電圧データ、電流データ、又は周波数データのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のコンピューティングシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のパーツ固有パラメータは、逆温度依存勾配、リーク特性、又は動的キャパシタンスのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のコンピューティングシステム。
【請求項5】
当該コンピューティングシステムは更に、1つ以上のヒューズを含み、該1つ以上のヒューズが前記1つ以上のパーツ固有パラメータを含み、前記電力制御ユニットは、該1つ以上のヒューズから前記1つ以上のパーツ固有パラメータを取り出す、請求項1に記載のコンピューティングシステム。
【請求項6】
前記レジスタは、前記プロセッサの内部レジスタである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンピューティングシステム。
【請求項7】
前記冷却サブシステムは、前記プロセッサのリアルタイム温度を上昇させるように制御される、請求項1に記載のコンピューティングシステム。
【請求項8】
電力を管理する半導体装置であって、
1つ以上の基板と、
前記1つ以上の基板に結合されたロジックであり、当該ロジックは、少なくとも部分的に、構成可能ロジック又は固定機能ハードウェアロジックのうちの一方以上にて実装され、当該ロジックは、前記1つ以上の基板に結合されて、
プロセッサの効率的な温度を、前記プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいて決定し、
複数の他の温度と前記効率的な温度との間での一組の電力差を決定し、
前記一組の電力差をレジスタに格納する、
ロジックと、
を有する半導体装置。
【請求項9】
前記効率的な温度は、前記プロセッサのリアルタイム最小電力消費に対応する、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記リアルタイムデータは、温度データ、電圧データ、電流データ、又は周波数データのうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記1つ以上のパーツ固有パラメータは、逆温度依存勾配、リーク特性、又は動的キャパシタンスのうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記1つ以上の基板に結合された前記ロジックは、前記1つ以上のパーツ固有パラメータを1つ以上のヒューズから取り出す、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記一組の電力差は、前記プロセッサの内部レジスタに格納される、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
一組の命令を有するコンピュータ読み取り可能記憶媒体であって、前記一組の命令は、コンピューティングシステムによって実行されるときに、該コンピューティングシステムに、
プロセッサの効率的な温度を、前記プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいて決定させ、
複数の他の温度と前記効率的な温度との間での一組の電力差を決定させ、
前記一組の電力差をレジスタに格納させる、
ンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【請求項15】
前記効率的な温度は、前記プロセッサのリアルタイム最小電力消費に対応する、請求項14に記載のコンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【請求項16】
前記リアルタイムデータは、温度データ、電圧データ、電流データ、又は周波数データのうちの1つ以上を含む、請求項14に記載のコンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【請求項17】
前記1つ以上のパーツ固有パラメータは、逆温度依存勾配、リーク特性、又は動的キャパシタンスのうちの1つ以上を含む、請求項14に記載のコンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【請求項18】
前記命令は、実行されるときに、前記コンピューティングシステムに、前記1つ以上のパーツ固有パラメータを1つ以上のヒューズから取り出させる、請求項14に記載のコンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【請求項19】
前記一組の電力差は、前記プロセッサの内部レジスタに格納される、請求項14乃至18のいずれか一項に記載のコンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【請求項20】
コンピューティングシステムの電力制御ユニットが実行する、電力を管理する方法であって、
プロセッサの効率的な温度を、前記プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいて決定し、
複数の他の温度と前記効率的な温度との間での一組の電力差を決定し、
前記一組の電力差をレジスタに格納する、
ことを有する方法。
【請求項21】
前記効率的な温度は、前記プロセッサのリアルタイム最小電力消費に対応する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記リアルタイムデータは、温度データ、電圧データ、電流データ、又は周波数データのうちの1つ以上を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上のパーツ固有パラメータは、逆温度依存勾配、リーク特性、又は動的キャパシタンスのうちの1つ以上を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上のパーツ固有パラメータを1つ以上のヒューズから取り出す、ことを更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記一組の電力差は、前記プロセッサの内部レジスタに格納される、請求項20乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概して、コンピュータプロセッサにおける電力マネジメントに関する。より具体的には、実施形態は、システム冷却オーバーヘッドの観点からのプロセッサ電力最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却システムは、コンピュータプロセッサの適正動作を確保するために、コンピュータプロセッサのジャンクション温度(例えば、最高内部トランジスタ動作温度)を低下させ得る。加えて、より低い温度でプロセッサのより高い動作周波数を維持するために、電圧補償技術が使用され得る。しかしながら、電圧補償技術はまた、より高い動的電力及びリーク電流をもたらし得るものであり、そして、それが、プロセッサ電力消費のかなりの増加を生み出す。従って、冷却コスト及び電気エネルギーコストが増加し得るとともに、プロセッサ性能が低下し得る。あるいは、ジャンクション温度が高すぎる場合、温度に伴ういっそう高いリーク電流が典型的に電気エネルギーコストを増加させることになる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
以下の明細書及び添付の特許請求の範囲を読むことによって、及び以下の図を参照することによって、実施形態の様々な利点が当業者に明らかになる。
図1】一実施形態に従ったレジスタの一例の説明図及び温度-電力消費カーブのプロットである。
図2】他の一実施形態に従った温度-電力消費カーブのプロットである。
図3A図3A及び3Bは、実施形態に従ったパーツ固有パラメータカーブの例のプロットである。
図3B図3A及び3Bは、実施形態に従ったパーツ固有パラメータカーブの例のプロットである。
図4】一実施形態に従ったプロセッサ電力を管理する方法の一例のフローチャートである。
図5】一実施形態に従ったコンピューティングシステムの一例のブロック図である。
図6】一実施形態に従った半導体装置の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
次に図1を参照するに、プロセッサの電力消費(例えば、浪費電力)が温度に対してプロットされているカーブ10のプロットが示されている。図示のカーブ10は、逆温度依存(inverse temperature dependency;ITD)関係を例示している。より具体的には、ITD関係は、より低い温度ではプロセッサのより高い動作周波数を維持するようにプロセッサ電圧が動的に増加される電圧補償技術から生じ得る。電圧補償はまた、より高い動的電力及びリーク電流をもたらし、そして、それがプロセッサ電力消費を増加させる。
【0005】
図示の例において、最も効率的な温度12は、プロセッサの最小電力消費に対応する。より詳細に説明されることになるように、複数の他の温度と最も効率的な温度12との間での一組の電力差(例えば、デルタ、節減)が決定されて、動的に更新されるレジスタ14に格納され、そして、それが、プロセッサに付随する冷却サブシステム(例えば、液冷技術)を制御するために使用され得る。従って、現在温度16(例えば、瞬間的なリアルタイム温度)が、最も効率的な温度12よりも冷たいが、より多くの電力消費(例えば、ΔP、又は図示の例では5W)をもたらす点(例えば、70℃)にある場合、プロセッサは“過冷却”条件/状態にあると見なされ得る。このような場合、冷却サブシステムが現在温度16で絞られる(スロットルされる)ことで、プロセッサのリアルタイム温度を最も効率的な温度12に向けて上昇させ得る。従って、この例示のソリューションは、プロセッサを動作させることに伴う電力並びに冷却システムを動作させることに伴う電力(例えば、冷却オーバーヘッド)における低減を可能にする。実際に、より高い“ターボ”周波数でプロセッサを動作させること、及び/又は所与のターボ周波数にプロセッサをいっそう長く居させることによって、性能上の利益が実現され得る。
【0006】
図2は、現在温度20が最も効率的な温度12にある他の一例のカーブ10を示している。このような場合、レジスタ14(図1)を用いて、より高い温度18に伴うプロセッサ電力増加が、冷却サブシステムを絞ることに伴う電力節減よりもなおも小さい場合に、より高い温度18を提案してもよい。システム冷却オーバーヘッドの観点からプロセッサ電力を最適化するために、他の冷却制御及び/又は技術も使用され得る。
【0007】
図3A及び3Bは、一組の電力差を決定するために、リアルタイムデータに加えて、例えば、逆温度依存(ITD)勾配、リーク特性、動的キャパシタンスなどのパーツ固有パラメータが使用され得ることを例示している。より具体的には、例えば、0.73Vのコア電圧、2.1GHzのコア周波数、及び2.1nFのコア動的キャパシタンスを持つ第1のプロセッサについての、第1組のパーツ固有パラメータカーブ22(22a-22c)が示されている。図示の例において、典型リークカーブ22bは、約60°という効率的な温度を持つ。このように、60°未満では、ITD電圧補償が適用されて、温度が低下するにつれて電力消費が増加する。60°より高い温度では、もはやITD電圧補償は適用されないが、増加するリーク電流に起因して電力が増加する。同様に、高リークカーブ22aは、約50°という効率的な温度を持ち、低リークカーブ22cは、約70°という効率的な温度を持つ。これらのカーブ22は、従って、所与のプロセッサ及びリーク特性(例えば、製造バラつきに応じて、高、典型、又は低)に対してITD勾配を決定するために使用され得る。
【0008】
さらに、例えば、0.75Vのコア電圧、2.10GHzのコア周波数、及び3.6nFのコア動的キャパシタンスを持つ第2のプロセッサについての、第2組のパーツ固有パラメータカーブ24(24a-24c)が示されている。図示の例において、高リークカーブ24aは、約55°という効率的な温度を持ち、典型リークカーブ24bは、約65°という効率的な温度を持ち、低リークカーブ42cは、約75°という効率的な温度を持つ。この場合も、これらのカーブ24は、従って、所与のプロセッサ及びリーク特性(例えば、製造バラつきに応じて、高、典型、又は低)に対してITD勾配を決定するために使用され得る。ここで使用されている値は、単に説明を容易にするためのものである。
【0009】
一例において、パーツ固有パラメータは、製造中又はアセンブリ中にプロセッサにヒューズ記録される。一組の電力差の決定は、パーツ固有パラメータに加えてリアルタイムデータ(例えば、温度データ、電圧データ、電流データ、周波数データなど)に基づいて行われ得る。これに関連し、プロセッサ及び冷却システムに対するリアルタイム制御を支援するために、レジスタが動的に更新され得る。
【0010】
図4は、プロセッサ電力を管理する方法26を示している。方法26は、例えばRAM、ROM、プログラマブルROM(PROM)、ファームウェア、フラッシュメモリなどの機械読み取り可能若しくはコンピュータ読み取り可能記憶媒体に格納されたロジック命令のセットとしての1つ以上のモジュールにて実装されてもよいし、例えばプログラマブルロジックアレイ(PLA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)などの構成可能ロジックにて実装されてもよいし、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)若しくはトランジスタ-トランジスタロジック(TTL)技術などの回路技術を用いた固定機能のハードウェアロジックにて実装されてもよいし、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0011】
例えば、方法26に示される処理を実行するためのコンピュータプログラムコードは、例えばJAVA(登録商標)、SMALLTALK(登録商標)、C++、若しくはこれらに類するものなどのオブジェクト指向プログラミング言語、及び“C”プログラミング言語若しくは類似のプログラミング言語などの従来からの手続き型プログラミング言語を含め、1つ以上のプログラミング言語の組み合わせで記述され得る。さらに、ロジック命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、機械命令、機械依存命令、マイクロコード、pCode、状態設定データ、集積回路の構成データ、電子回路及び/又はハードウェアに将来的なものである他の構造コンポーネント(例えば、ホストプロセッサ、中央処理ユニット/CPU、マイクロコントローラなど)をパーソナライズする状態情報を含んでもよい。
【0012】
図示の処理ブロック28は、プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいて、プロセッサの効率的な温度を決定することを提供する。効率的な温度は、例えば、プロセッサのリアルタイム最小電力消費に対応する最適温度とし得る。一例において、リアルタイムデータは、温度データ、電圧データ、電流データ、周波数データなど、又はこれらの何らかの組み合わせを含む。また、(1つ以上の)パーツ固有パラメータは、ITD勾配、リーク特性、動的キャパシタンスなど、又はこれらの何らかの組み合わせを含み得る。ブロック28は、これらパーツ固有パラメータを1つ以上のヒューズから取り出すことを含み得る。
【0013】
ブロック30にて、複数の他の温度と効率的な温度との間での一組の電力差が決定される。さらに、図示のブロック32が、一組の電力差をレジスタ(例えば、プロセッサの内部レジスタ)に格納することを提供する。ブロック34にて、レジスタ内の一組の電力差に基づいて、冷却サブシステムが制御され得る。一例において、ブロック34は、プロセッサのリアルタイム温度を(例えば、状況に応じて、効率的な温度まで、又は効率的な温度よりも高く)上昇させるように冷却サブシステムを制御する(例えば、絞る)ことを含む。一例において、システム冷却オーバーヘッドの観点から最適なプロセッサ電力を維持するために、方法26が動的に繰り返される。
【0014】
図5は、概して以下の機能を持つエレクトロニクス装置/システムの一部とし得るコンピューティングシステム36を示しており、すなわち、コンピューティング機能を持つ(例えば、携帯情報端末/PDA、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、コンバーチブルタブレット、サーバ)、通信機能を持つ(例えば、スマートフォン)、撮像機能を持つ(例えば、カメラ、ビデオカメラ)、メディア再生機能を持つ(例えば、スマートテレビジョン/TV)、ウェアラブル機能を持つ(例えば、時計、アイウェア、ヘッドウェア、フットウェア、ジュエリー)、車両機能を持つ(例えば、自動車、トラック、オートバイ)、ロボット機能を持つ(例えば、自律ロボット)、又はこれらの何らかの組み合わせを持つエレクトロニクス装置/システムの一部とし得るコンピューティングシステム36を示している。図示の例において、システム36は、グラフィックスプロセッサ38(例えば、グラフィックス処理ユニット/GPU)と、プロセッサコア42及びレジスタ44(例えば、追加のトランジスタを必要としないメールボックス実装)を有するホストプロセッサ40(例えば、中央処理ユニット/CPU)とを含んでいる。図示のホストプロセッサ40はまた、システムメモリ48に結合された集積メモリコントローラ(integrated memory controller;IMC)46を含んでいる。
【0015】
さらに、図示のシステム36は、SoC52(例えば、半導体ダイ)上に、ホストプロセッサ40と共に実装された入力出力(IO)モジュール50、及び上記グラフィックスプロセッサ38を含んでいる。一例において、IOモジュール50は、ディスプレイ54(例えば、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ/LCD、発光ダイオード/LEDディスプレイ)、ネットワークコントローラ56(例えば、有線及び/又は無線)、大容量ストレージ58(例えば、ハードディスクドライブ/HDD、光ディスク、ソリッドステートドライブ/SSD、フラッシュメモリ)、及び冷却サブシステム60(例えば、液冷技術を含む)と通信する。
【0016】
図示のIOモジュール50は、すでに説明した方法26(図4)の1つ以上の態様を実行するためのロジック64(例えば、ロジック命令、構成可能ロジック、固定機能ハードウェアロジックなど、又はこれらの何らかの組み合わせ)を持つ電力制御ユニット(power control unit;PCU)62を含んでいる。従って、ロジック64は、プロセッサコア42に関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいてプロセッサコア42の効率的な温度を決定し、複数の他の温度とこの効率的な温度との間での一組の電力差を決定し、該一組の電力差をレジスタ44に格納し得る。一例において、ロジック64は、ホストプロセッサ40上の1つ以上のヒューズ67からパーツ固有パラメータを取り出す。システムメモリ48及び/又は大容量ストレージ58は、命令65(例えば、システム熱マネジメントソフトウェア)を含むことができ、それが、例えばホストプロセッサ40及び/又はIOモジュール50によって実行されるときに、SoC52に、レジスタ44にアクセスさせ、レジスタ44内の一組の電力差に基づいて冷却サブシステム60を制御させる。
【0017】
従って、現在温度が、効率的な温度よりも冷たいが、より多くの電力消費をもたらす点にある場合、プロセッサコア42は“過冷却”条件/状態にあると見なされ得る。このような場合、冷却サブシステム60が現在温度で絞られることで、プロセッサコア42のリアルタイム温度をもっと効率的な温度に向けて上昇させ得る。従って、図示のシステム36は、プロセッサコア42を動作させることに伴う電力並びに冷却システム60を動作させることに伴う電力における低減を可能にする。実際に、より高い“ターボ”周波数でプロセッサコア42を動作させること、及び/又は所与のターボ周波数にプロセッサコア42をいっそう長く居させることによって、性能上の利益が実現され得る。
【0018】
また、現在温度が最も効率的な温度にある場合であっても、レジスタ44を使用して、より高い動作温度を提案及び/又は確立し得る。このようなアプローチは、付随するプロセッサ電力増加が冷却サブシステム60を絞ることに付随する電力節減よりなおも小さい場合に有益であり得る。システム冷却オーバーヘッドの観点からプロセッサ電力を最適化するために、他の冷却制御及び/又は技術も使用され得る。ロジック64がPCU62内に存在するとして示されているが、ロジック64は、SoC52内の別の場所に置かれてもよい。また、図示したソリューションは、コア/プロセッサが異なるITDプロファイル及び何百若しくは何千という数を持つマルチコア及び/又はマルチプロセッサアーキテクチャに適用され得る。これに関連して、各コア/プロセッサに、個々ベースでリアルタイムに電力デルタを追跡するレジスタが割り当てられ得る。代わりに、複数のプロセッサ/コアによってレジスタが共有されてもよい。
【0019】
図6は、半導体装置66を示している。装置66は、既に説明したSoC52(図5)に容易に取って代わられ得る。図示の装置66は、1つ以上の基板68(例えば、シリコン、サファイア、ガリウム砒素)と、(1つ以上の)基板68に結合されたロジック70(例えば、トランジスタアレイ及び他の集積回路/ICコンポーネント)とを含んでいる。ロジック70は、少なくとも部分的に、構成可能ロジック又は固定機能ハードウェアロジックにて実装され得る。一例において、ロジック70は、概して、既に説明した方法26(図4)の1つ以上の態様を実装する。従って、ロジック70は、プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいてプロセッサの効率的な温度を決定し、複数の他の温度とこの効率的な温度との間での一組の電力差を決定し、該一組の電力差をレジスタに格納し得る。
【0020】
さらに、ロジック70は、レジスタ内の一組の電力差に基づいて冷却サブシステムを制御し得る。一例において、ロジック70は、(1つ以上の)基板68内に位置する(例えば、埋め込まれた)トランジスタチャネル領域を含む。従って、ロジック70と(1つ以上の)基板68との間の界面は階段接合であるわけではないとし得る。ロジック70はまた、(1つ以上の)基板68の当初ウエハ上に成長されたエピタキシャル層を含むと見なされてもよい。
【0021】
付記及び例
例1は、冷却サブシステムと、プロセッサと、レジスタと、前記プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいて前記プロセッサの効率的な温度を決定し、複数の他の温度と前記効率的な温度との間での一組の電力差を決定し、前記一組の電力差を前記レジスタに格納する電力制御ユニットと、一組の命令を含むメモリであり、前記一組の命令は、前記プロセッサによって実行されるときに、当該コンピューティングシステムに、前記レジスタ内の前記一組の電力差に基づいて前記冷却サブシステムを制御させる、メモリと、を有する性能強化コンピューティングシステムを含み得る。
【0022】
例2は、前記効率的な温度は、前記プロセッサのリアルタイム最小電力消費に対応する、例1のコンピューティングシステムを含み得る。
【0023】
例3は、前記リアルタイムデータは、温度データ、電圧データ、電流データ、又は周波数データのうちの1つ以上を含む、例1のコンピューティングシステムを含み得る。
【0024】
例4は、前記1つ以上のパーツ固有パラメータは、逆温度依存勾配、リーク特性、又は動的キャパシタンスのうちの1つ以上を含む、例1のコンピューティングシステムを含み得る。
【0025】
例5は、1つ以上のヒューズを更に含み、該1つ以上のヒューズが前記1つ以上のパーツ固有パラメータを含み、前記電力制御ユニットは、該1つ以上のヒューズから前記1つ以上のパーツ固有パラメータを取り出す、例1のコンピューティングシステムを含み得る。
【0026】
例6は、前記レジスタは、前記プロセッサの内部レジスタである、例1のコンピューティングシステムを含み得る。
【0027】
例7は、前記冷却サブシステムは、前記プロセッサのリアルタイム温度を上昇させるように制御される、例1のコンピューティングシステムを含み得る。
【0028】
例8は、1つ以上の基板と、前記1つ以上の基板に結合されたロジックであり、当該ロジックは、少なくとも部分的に、構成可能ロジック又は固定機能ハードウェアロジックのうちの一方以上にて実装され、当該ロジックは、前記1つ以上の基板に結合されて、プロセッサの効率的な温度を、前記プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいて決定し、複数の他の温度と前記効率的な温度との間での一組の電力差を決定し、前記一組の電力差をレジスタに格納する、ロジックと、を有する半導体装置を含み得る。
【0029】
例9は、前記効率的な温度は、前記プロセッサのリアルタイム最小電力消費に対応する、例8の半導体装置を含み得る。
【0030】
例10は、前記リアルタイムデータは、温度データ、電圧データ、電流データ、又は周波数データのうちの1つ以上を含む、例8の半導体装置を含み得る。
【0031】
例11は、前記1つ以上のパーツ固有パラメータは、逆温度依存勾配、リーク特性、又は動的キャパシタンスのうちの1つ以上を含む、例8の半導体装置を含み得る。
【0032】
例12は、前記1つ以上の基板に結合された前記ロジックは、前記1つ以上のパーツ固有パラメータを1つ以上のヒューズから取り出す、例8の半導体装置を含み得る。
【0033】
例13は、前記一組の電力差は、前記プロセッサの内部レジスタに格納される、例8の半導体装置を含み得る。
【0034】
例14は、一組の命令を有する少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能記憶媒体をであって、前記一組の命令は、コンピューティングシステムによって実行されるときに、該コンピューティングシステムに、プロセッサの効率的な温度を、前記プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいて決定させ、複数の他の温度と前記効率的な温度との間での一組の電力差を決定させ、前記一組の電力差をレジスタに格納させる、少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含み得る。
【0035】
例15は、前記効率的な温度は、前記プロセッサのリアルタイム最小電力消費に対応する、例14の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含み得る。
【0036】
例16は、前記リアルタイムデータは、温度データ、電圧データ、電流データ、又は周波数データのうちの1つ以上を含む、例14の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含み得る。
【0037】
例17は、前記1つ以上のパーツ固有パラメータは、逆温度依存勾配、リーク特性、又は動的キャパシタンスのうちの1つ以上を含む、例14の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含み得る。
【0038】
例18は、前記命令は、実行されるときに、前記コンピューティングシステムに、前記1つ以上のパーツ固有パラメータを1つ以上のヒューズから取り出させる、例14の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含み得る。
【0039】
例19は、前記一組の電力差は、前記プロセッサの内部レジスタに格納される、例14の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含み得る。
【0040】
例20は、プロセッサの効率的な温度を、前記プロセッサに関連するリアルタイムデータ及び1つ以上のパーツ固有パラメータに基づいて決定し、複数の他の温度と前記効率的な温度との間での一組の電力差を決定し、前記一組の電力差をレジスタに格納する、ことを有する方法を含み得る。
【0041】
例21は、前記効率的な温度は、前記プロセッサのリアルタイム最小電力消費に対応する、例20の方法を含み得る。
【0042】
例22は、前記リアルタイムデータは、温度データ、電圧データ、電流データ、又は周波数データのうちの1つ以上を含む、例20の方法を含み得る。
【0043】
例23は、前記1つ以上のパーツ固有パラメータは、逆温度依存勾配、リーク特性、又は動的キャパシタンスのうちの1つ以上を含む、例20の方法を含み得る。
【0044】
例24は、前記1つ以上のパーツ固有パラメータを1つ以上のヒューズから取り出す、ことを更に含む例20の方法を含み得る。
【0045】
例25は、前記一組の電力差は、前記プロセッサの内部レジスタに格納される、例20の方法を含み得る。
【0046】
従って、ここに記載される技術は、システム管理コンポーネントが、プロセッサ冷却コストとプロセッサ電力消費との間でリアルタイム決定を行うことを可能にし得る。このようなアプローチは、システム冷却オーバーヘッドの観点からプロセッサ電力を最適化しながら、過冷却を回避することを可能にする。実際、ここに記載される技術は、より低い電力消費、より低い冷却コスト、及びより高い性能を同時に提供する。例えば、エンドユーザは、全体として最小の電力消費レベルでデータセンターを稼働させることができ得る。その結果、配電コスト及び冷却コストを低減させることができ、最大電力の余りが性能向上(例えば、ターボ運転による)のために利用可能となる。
【0047】
実施形態は、全てのタイプの半導体集積回路(“IC”)チップとの使用に適用可能である。それらのICチップの例は、以下に限られないが、プロセッサ、コントローラ、チップセットコンポーネント、プログラマブルロジックアレイ(PLA)、メモリチップ、ネットワークチップ、システム・オン・チップ(SoC)、SSD/NANDコントローラASIC、及びこれらに類するものを含む。また、一部の図では、信号導体ラインが線で表されている。一部は、より多くの構成信号パスを指し示すために異なっていることがあり、構成信号パスの番号を指し示すために数字ラベルを有することがあり、及び/又は、主な情報フロー方向を指し示すために1つ以上の端に矢印を持つことがある。しかしながら、これは限定的に解釈されるべきでない。むしろ、そのような付け加えられた詳細は、回路のより容易な理解を支援するために1つ以上の例示実施形態との関連で使用され得る。いずれの表現された信号ラインも、付け加えられた情報を持つか否かにかかわらず、実際には、複数方向に進み得る1つ以上の信号を有することができ、また、例えば、差動ペア、光ファイバライン、及び/又はシングルエンドのラインで実装されるデジタル又はアナログのラインといった、任意の好適タイプの信号スキームで実装されることができる。
【0048】
サイズ/モデル/値/範囲の例が与えられてきたかもしれないが、実施形態は同じに限定されるものではない。製造技術(例えば、フォトリソグラフィ)が時間とともに成熟するにつれて、より小さいサイズのデバイスが製造され得ることが期待される。また、ICチップ及び他のコンポーネントへの周知の電力/グランド接続は、図示及び説明を簡単にするために、また、実施形態の特定の態様を不明瞭にしないように、図中に示されていることもあれば、示されていないこともある。さらに、実施形態を不明瞭にすることがないように、構成をブロック図形式で示すことがあるが、これはまた、そのようなブロック図構成の実装に関する具体的事項が、その中に実施形態が実装されることになるコンピューティングシステムに大きく依存するという事実、すなわち、そのような具体的事項は当業者の活動の範囲内にあるという事実に鑑みてのことである。実施形態例を説明するために具体的詳細(例えば、回路)が記載される場合に、それらの具体的詳細を用いずに又はそれらの変形を用いて実施形態を実施することができることは、当業者には明らかなはずである。本明細書は、故に、限定するものでなく例示的なものとしてみなされるものである。
【0049】
用語“結合され”は、ここでは、問題としているコンポーネント間の、直接的又は間接的な、のいずれのタイプの関係も指すように使用され、また、電気的、機械的、流体的、光学的、電磁的、電気機械的、又は他の接続に適用され得る。また、用語“第1の”、“第2の”などは、ここでは、単に説明を容易にするために使用されることがあり、別のことが指し示されない限り、特定の時間的又は順序的な意義を持たない。
【0050】
この出願及び特許請求の範囲において使用されるとき、用語“のうちの1以上”によって繋げられたアイテムのリストは、列挙された項目の任意の組み合わせを意味し得る。例えば、“A、B又はCのうちの1以上”という言い回しは、A、B、C、AとB、AとC、BとC、又は、AとBとCを意味し得る。
【0051】
以上の説明から当業者が理解することには、実施形態の広範な技術は、多様な形態で実装されることができる。従って、実施形態をその特定の例との関連で説明してきたが、図面、明細書、及び以下の特許請求の範囲を学ぶことで当業者には他の変更が明らかになるのであるから、実施形態の真の範囲はそのように限定されるべきでない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6