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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240122BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/26 C
E02F9/20 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021027584
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129045
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 健佑
(72)【発明者】
【氏名】鬼束 講介
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125625(JP,A)
【文献】特開平10-317428(JP,A)
【文献】特開2020-039239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からバッテリに電力を供給して前記バッテリを充電する充電器と、
前記バッテリから供給される電力によって駆動される電動モータと、
前記電動モータによって駆動される油圧ポンプ、および前記油圧ポンプによって圧油が供給される油圧アクチュエータを含む油圧系と、
前記電動モータの稼働状態を示す物理量を第1稼働情報として管理するとともに、前記バッテリの充電および放電を含む稼働状態を示す物理量を第2稼働情報として管理する制御部と、
前記第1稼働情報および前記第2稼働情報を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、前記第1稼働情報として前記電動モータの稼働時間を管理し、前記第2稼働情報として前記バッテリの稼働時間を管理する、電動式作業機械。
【請求項2】
前記バッテリの稼働時間は、前記バッテリの充電時間と放電時間との和である、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項3】
前記出力部は、前記第1稼働情報および前記第2稼働情報を表示する表示部を含む、請求項1または2に記載の電動式作業機械。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1稼働情報として管理する物理量、および前記第2稼働情報として管理する物理量の少なくとも一方が規定値に達したか否かを判断し、前記規定値に達した場合には、前記規定値に達したことを、前記表示部に表示させる、請求項3に記載の電動式作業機械。
【請求項5】
外部電源からバッテリに電力を供給して前記バッテリを充電する充電器と、
前記バッテリから供給される電力によって駆動される電動モータと、
前記電動モータによって駆動される油圧ポンプ、および前記油圧ポンプによって圧油が供給される油圧アクチュエータを含む油圧系と、
前記電動モータの稼働状態を示す物理量を第1稼働情報として管理するとともに、前記バッテリの充電および放電を含む稼働状態を示す物理量を第2稼働情報として管理する制御部と、
前記第1稼働情報および前記第2稼働情報を出力する出力部と、
前記電動モータの回転数を検知する回転数検知センサと、を備え、
前記制御部は、前記回転数検知センサで検知された前記電動モータの回転数が所定値を超えている状態での、前記電動モータの稼働状態を示す物理量を、前記第1稼働情報として管理する、電動式作業機械。
【請求項6】
外部電源からバッテリに電力を供給して前記バッテリを充電する充電器と、
前記バッテリから供給される電力によって駆動される電動モータと、
前記電動モータによって駆動される油圧ポンプ、および前記油圧ポンプによって圧油が供給される油圧アクチュエータを含む油圧系と、を備えた電動式作業機械であって、
前記電動モータの稼働状態を示す物理量を第1稼働情報として管理するとともに、前記バッテリの充電および放電を含む稼働状態を示す物理量を第2稼働情報として管理する制御部と、
前記第1稼働情報および前記第2稼働情報を出力する出力部と、を備え、
前記電動式作業機械の駆動モードは、
前記充電器によって前記バッテリを充電する充電モードと、
前記バッテリの電力によって前記電動モータを駆動するバッテリモードと、を含み、
前記バッテリの充電および放電を含む稼働状態を示す物理量は、前記充電器の稼働時間と、前記電動モータの稼働時間との和である、電動式作業機械。
【請求項7】
外部電源からバッテリに電力を供給して前記バッテリを充電する充電器と、
前記バッテリから供給される電力によって駆動される電動モータと、
前記電動モータによって駆動される油圧ポンプ、および前記油圧ポンプによって圧油が供給される油圧アクチュエータを含む油圧系と、
前記電動モータの稼働状態を示す物理量を第1稼働情報として管理するとともに、前記バッテリの充電および放電を含む稼働状態を示す物理量を第2稼働情報として管理する制御部と、
前記第1稼働情報および前記第2稼働情報を出力する出力部と、
前記バッテリから前記電動モータに電力を供給する第1電路と、
前記充電器と繋がり、前記第1電路と合流部で合流する第2電路と、
前記第1電路において、前記合流部と前記バッテリとの間に位置して、前記第1電路を接続状態と切断状態とで切り替えるリレーと、を備え、
前記バッテリの充電および放電を含む稼働状態を示す物理量は、前記リレーの接続時間である、電動式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械のメンテナンス時期告知装置が開示されている。例えば特許文献1の告知装置では、エンジンの実稼働時間がメンテナンス時期に達したことを、メンテナンス項目ごとに運転者または管理者に告知するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-262806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、エンジンの動力を利用して油圧アクチュエータを駆動する油圧ショベル以外に、バッテリの電力を利用して油圧アクチュエータを駆動する油圧ショベル(電動ショベル)も多く活用されている。電動ショベルでは、バッテリの電力により電動モータを駆動させて油圧ポンプを回転させ、これによって油圧アクチュエータに圧油を供給して油圧アクチュエータを駆動する。
【0005】
電動ショベルでは、上記のように電動モータによって油圧ポンプが駆動されるため、電動モータの稼働時間を油圧ポンプの稼働時間とみなすことができる。したがって、電動モータの稼働時間を管理することにより、油圧ポンプを含む油圧系のメンテナンスの時期を管理することができ、これによって油圧系のメンテナンスを適切なタイミングで行うことができる。
【0006】
一方、バッテリは、放電中、つまり、電動モータが稼働している間だけでなく、充電中においても劣化する。このため、バッテリについても、油圧系と同様に、電動モータの稼働時間に基づいてメンテナンスの時期を管理したのでは、バッテリの充電中の劣化も考慮した適切なタイミングでメンテナンスを行うことができない。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、油圧系およびバッテリのメンテナンスを、それぞれ適切なタイミングで行うことができる電動式作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る電動式作業機械は、外部電源からバッテリに電力を供給して前記バッテリを充電する充電器と、前記バッテリから供給される電力によって駆動される電動モータと、前記電動モータによって駆動される油圧ポンプ、および前記油圧ポンプによって圧油が供給される油圧アクチュエータを含む油圧系と、前記電動モータの稼働状態を示す物理量を第1稼働情報として管理するとともに、前記バッテリの充電および放電を含む稼働状態を示す物理量を第2稼働情報として管理する制御部と、前記第1稼働情報および前記第2稼働情報を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、油圧系およびバッテリのメンテナンスを、それぞれ適切なタイミングで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の一形態に係る電動式作業機械の一例である油圧ショベルの概略の構成を示す側面図である。
図2】上記油圧ショベルの制御系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。
図3】上記油圧ショベルの表示部における表示の一例を示す説明図である。
図4】上記表示部における表示の他の例を示す説明図である。
図5】充電モードおよびバッテリモードのそれぞれにおける、リレーの通電状態、電動モータの稼働状態、充電器の稼働状態、バッテリの稼働状態の一例を模式的に示す説明図である。
図6】充電モード、バッテリモードおよび電源併用モードのそれぞれにおける、リレーの通電状態、電動モータの稼働状態、充電器の稼働状態、バッテリの稼働状態の一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0012】
〔1.電動式作業機械〕
図1は、本実施形態の電動式作業機械の一例である電動ショベルを構成する油圧ショベル1の概略の構成を示す側面図である。油圧ショベル1は、下部走行体2と、作業機3と、上部旋回体4と、を備える。
【0013】
ここで、図1において、方向を以下のように定義する。まず、下部走行体2が直進する方向を前後方向とし、そのうちの一方側を「前」とし、他方側を「後」とする。図1では、例として、ブレード23に対して走行モータ22側を「前」として示す。また、前後方向に垂直な横方向を左右方向とする。このとき、操縦席41aに座ったオペレータ(操縦者、運転手)から見て左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。
【0014】
下部走行体2は、左右一対のクローラ21と、左右一対の走行モータ22と、を備える。各走行モータ22は、油圧モータである。左右の走行モータ22が、左右のクローラ21をそれぞれ駆動することにより、油圧ショベル1を前後進させることができる。下部走行体2には、整地作業を行うためのブレード23と、ブレードシリンダ23aとが設けられる。ブレードシリンダ23aは、ブレード23を上下方向に回動させる油圧シリンダである。
【0015】
作業機3は、ブーム31、アーム32、およびバケット33を備える。ブーム31、アーム32、およびバケット33を独立して駆動することにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0016】
ブーム31は、ブームシリンダ31aによって回動される。ブームシリンダ31aは、基端部が上部旋回体4の前部に支持され、伸縮自在に可動する。アーム32は、アームシリンダ32aによって回動される。アームシリンダ32aは、基端部がブーム31の先端部に支持され、伸縮自在に可動する。バケット33は、バケットシリンダ33aによって回動される。バケットシリンダ33aは、基端部がアーム32の先端部に支持され、伸縮自在に可動する。ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、およびバケットシリンダ33aは、油圧シリンダにより構成される。
【0017】
上部旋回体4は、下部走行体2に対して旋回ベアリング(不図示)を介して旋回可能に構成される。上部旋回体4には、操縦部41、旋回台42、旋回モータ43、機関室44等が配置される。上部旋回体4は、油圧モータである旋回モータ43の駆動により、旋回ベアリングを介して旋回する。
【0018】
上部旋回体4には、複数の油圧ポンプ71(図2参照)が配置される。各油圧ポンプ71は、機関室44の内部の電動モータ61(図2参照)によって駆動される。各油圧ポンプ71は、油圧モータ(例えば左右の走行モータ22、旋回モータ43)、および油圧シリンダ(例えばブレードシリンダ23a、ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、バケットシリンダ33a)に作動油(圧油)を供給する。任意の油圧ポンプ71から作動油が供給されて駆動される油圧モータおよび油圧シリンダを、まとめて油圧アクチュエータ73(図2参照)と呼ぶ。
【0019】
操縦部41には、操縦席41aが配置される。操縦席41aの周囲には、各種のレバー41bが配置される。オペレータが操縦席41aに着座してレバー41bを操作することにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。これにより、下部走行体2の走行、ブレード23による整地作業、作業機3による掘削作業、上部旋回体4の旋回、等を行うことができる。
【0020】
上部旋回体4には、バッテリ53が取り付けられる。バッテリ53は、例えば高電圧を出力するリチウムイオンバッテリで構成され、電動モータ61の駆動に用いられる。また、上部旋回体4には、不図示の給電口が設けられる。上記の給電口と外部電源51とは、給電ケーブル52を介して接続される。これにより、バッテリ53を充電することも可能である。
【0021】
なお、下部走行体2、作業機3および上部旋回体4をまとめて機体BAとしたとき、機体BAは、電力で駆動される機器と油圧機器とを併用して駆動されてもよい。つまり、機体BAは、油圧アクチュエータ73などの油圧機器の他に、電動走行モータ、電動シリンダ、電動旋回モータ等を含んでいてもよい。
【0022】
〔2.制御系および油圧系の構成〕
図2は、油圧ショベル1の制御系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。なお、図2において、破線の矢印は、検知信号の伝送路を示す。また、実線の矢印は、制御信号(指令)の伝送路を示す。油圧ショベル1は、電動モータ61を備える。電動モータ61は、バッテリ53から供給される電力によって駆動される。
【0023】
電動モータ61の回転数は、回転数検知センサ61aによって検知される。すなわち、油圧ショベル1は、電動モータ61の回転数を検知する回転数検知センサ61aを備える。回転数検知センサ61aによって検知された電動モータ61の回転数の情報は、後述するECU80に入力される。
【0024】
油圧ショベル1は、充電器62を備える。充電器62は、外部電源51から給電ケーブル52(図1参照)を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換する。充電器62から出力される直流電圧(電力)は、バッテリ53に供給される。外部電源51から充電器62を介してバッテリ53に電力が供給されることにより、バッテリ53が充電される。つまり、油圧ショベル1は、外部電源51からバッテリ53に電力を供給してバッテリ53を充電する充電器62を備える。
【0025】
油圧ショベル1は、インバータ63を備える。インバータ63は、バッテリ53から供給される直流電圧を、交流電圧に変換して電動モータ61に供給する。これにより、電動モータ61が回転する。インバータ63から電動モータ61への交流電圧(電流)の供給は、ECU80から出力される回転指令(制御信号)に基づいて行われる。
【0026】
バッテリ53から電動モータ61に供給される電力は、第1電路E1を通る。上記したインバータ63は、第1電路E1において、バッテリ53と電動モータ61との間に位置する。また、充電器62からバッテリ53に供給される電力は、第2電路E2を通る。第2電路E2は、第1電路E1において、バッテリ53とインバータ63との間に位置する合流部Ecにおいて合流する。したがって、充電器62から出力される電力は、第2電路E2および合流部Ecを介してバッテリ53に供給される。すなわち、油圧ショベル1は、バッテリ53から電動モータ51に電力を供給する第1電路E1と、充電器62と繋がり、第1電路E1と合流部Ecで合流する第2電路E2と、を備える。
【0027】
また、油圧ショベル1は、リレー64を備える。リレー64は、第1電路E1において、合流部Ecとバッテリ53との間に位置する。そして、リレー64は、ECU80の制御に基づいて、第1電路E1を(バッテリ53とインバータ63とを電気的に接続する)接続状態と(バッテリ53とインバータ63とを電気的に遮断する)切断状態とで切り替える。また、リレー64は、上記接続状態または上記切断状態を検知して、その検知信号をECU80に出力する。これにより、ECU80は、上記検知信号に基づいて、リレー64の接続時間または切断時間を管理することができる。
【0028】
また、油圧ショベル1は、油圧系70を備える。油圧系70は、油圧ポンプ71と、コントロールバルブ72と、油圧アクチュエータ73と、を含む。
【0029】
油圧ポンプ71は、電動モータ61の回転軸(出力軸)に接続され、電動モータ61の回転によって駆動される。油圧ポンプ71は例えば可変容量型ポンプであるが、固定容量型ポンプであってもよい。油圧ポンプ71は上述したように複数設けられるが、図2では例として、油圧ポンプ71を1つのみ図示している。油圧ポンプ71により、作動油タンク(図示せず)内の作動油が圧油として、コントロールバルブ72を介して油圧アクチュエータ73に供給される。これにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。コントロールバルブ72は、油圧ポンプ71から油圧アクチュエータ73に供給される圧油の流れ方向および流量を制御する方向切替弁であり、個々の油圧アクチュエータ73に対応して設けられる。
【0030】
このように、油圧ショベル1は、電動モータ61によって駆動される油圧ポンプ71、および油圧ポンプ71によって圧油が供給される油圧アクチュエータ73を含む油圧系70を備える。
【0031】
油圧ショベル1は、ECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)80をさらに備える。ECU80は、油圧ショベル1の各部を制御する制御部であり、例えばCPU(Central Processing Unit)、記憶部等を含んで構成される。ECU80は、電動モータ61の回転指令を生成してインバータ63に供給する。
【0032】
また、ECU80には、油圧ショベル1の各部からの検知信号が入力される。例えば、電動モータ61、充電器62、インバータ63およびバッテリ53には、自身の稼働状態を、異常の有無も含めて検知するセンサ(図示せず)がそれぞれ内蔵されており、これらのセンサからの検知信号がECU80に入力される。これにより、ECU80は、上記検知信号に基づいて、電動モータ61、充電器62、インバータ63およびバッテリ53の稼働状態をそれぞれ認識することができる。
【0033】
例えば、ECU80は、電動モータ61が内蔵するセンサからの検知信号に基づいて、電動モータ61が駆動されている時間を、電動モータ61の稼働時間として認識することができる。また、ECU80は、充電器62が内蔵するセンサからの検知信号に基づいて、充電器62が稼働している時間(例えばバッテリ53の充電時間)を認識することができる。さらに、ECU80は、バッテリ53が内蔵するセンサからの検知信号に基づいて、バッテリ53が稼働している時間(例えばバッテリ53の充電時間および放電時間)を認識することができ、また、バッテリ53の残量(充電量)を認識することもできる。
【0034】
ECU80は、第1稼働情報および第2稼働情報をECU80内の記憶部に記憶して管理する。第1稼働情報は、電動モータ61の稼働状態を示す物理量の情報であり、例えば、上述した電動モータ61の稼働時間を含む。なお、第1稼働情報は、回転数検知センサ61aで検知された、電動モータ61の回転数の情報を含んでいてもよい。一方、第2稼働情報は、バッテリ53の稼働状態を示す物理量の情報であり、例えば上述したバッテリ53の稼働時間(充電時間+放電時間)を含む。なお、第2稼働情報は、バッテリ53の残量を含んでいてもよい。
【0035】
このように、油圧ショベル1は、電動モータ61の出力信号に基づいて、電動モータ61の稼働状態を示す物理量を第1稼働情報として管理するとともに、バッテリ53の出力信号に基づいて、バッテリ53の充電および放電を含む稼働状態を示す物理量を第2稼働情報として管理する制御部としてのECU80を備える。
【0036】
油圧ショベル1は、出力部90をさらに備える。出力部90は、ECU80で管理されている第1稼働情報および第2稼働情報を出力する。このような出力部90は、表示部91と、通信部92と、を含む。
【0037】
表示部91は、例えば液晶表示装置で構成されており、ECU80の制御のもとで、第1稼働情報および第2稼働情報を表示する。すなわち、出力部90は、第1稼働情報および第2稼働情報を表示する表示部91を含む。通信部92は、外部の端末と通信するためのインターフェースであり、アンテナ、送受信回路などを含んで構成される。
【0038】
なお、図示はしないが、油圧ショベル1には、上記した作動油の温度を検知する作動油温度センサ、および電動モータ61等を冷却するための冷却系を流れる冷却水の温度を検知する冷却水温度センサが設けられる。
【0039】
図3は、表示部91における表示の一例を示している。同図に示すように、表示部91は、作動油温度センサで検知された作動油温度、バッテリ53の残量、冷却水温度センサで検知された冷却水の温度の各情報101~103をそれぞれ表示する。併せて、表示部91は、電動モータ61の稼働時間T1を第1稼働情報として、電動モータ61を示すアイコンM1とともに表示し、バッテリ53の稼働時間T2を第2稼働情報として、バッテリ53を示すアイコンM2とともに表示する。同図の例では、稼働時間T1が「300H」であることを示し、稼働時間T2が「500H」であることを示している。なお、「H」は時間(Hour)を示す(以下、同様)。
【0040】
本実施形態のように、ECU80が、電動モータ61の稼働状態を示す物理量(例えば電動モータ61の稼働時間T1)を第1稼働情報として管理するとともに、バッテリ53の充電および放電を含む稼働状態を示す物理量(例えば稼働時間T2=充電時間+放電時間)を第2稼働情報として管理する。この場合、出力部90が第1稼働情報を出力することにより、オペレータ等(オペレータ、周囲の作業者、システムの管理者など)は、出力された第1稼働情報に基づいて、油圧系70(例えば油圧ポンプ71)のメンテナンス(保守点検)を適切なタイミングで行うことができる。また、出力部90が第2稼働情報を出力することにより、オペレータ等は、第2稼働情報に基づき、バッテリ53の放電中の劣化のみならず、充電中の劣化も考慮した適切なタイミングで、つまり、油圧系70のメンテナンスのタイミングとは独立した適切なタイミングで、バッテリ53のメンテナンスを行うことができ、必要に応じてバッテリ53を交換することも可能となる。
【0041】
特に、電動モータ61の稼働状態を示す物理量は、電動モータ61の稼働時間T1を含む。油圧ポンプ71は電動モータ61によって駆動されるため、油圧ポンプ71を含む油圧系70の稼働時間は、電動モータ61の稼働時間とほぼ同じであると考えられる。したがって、ECU80が電動モータ61の稼働時間T1を第1稼働情報として管理することにより、出力部90が第1稼働情報を出力したときに、オペレータ等は、第1稼働情報、つまり、電動モータ61の稼働時間に基づいて、油圧系70のメンテナンスを適切なタイミングで行うことができる。
【0042】
また、バッテリ53の稼働状態を示す物理量は、バッテリ53の充電時間と放電時間との和を含む。この場合、出力部90が第2稼働情報を出力したときに、オペレータ等は、バッテリ53の充電時間と放電時間との和に基づいて、バッテリ53のメンテナンスを適切なタイミングで行うことができる。つまり、バッテリ53の放電中の劣化のみならず、充電中の劣化も考慮した適切なタイミングで、バッテリ53のメンテナンスを行うことができる。
【0043】
なお、バッテリ53の稼働状態を示す物理量は、上記したバッテリ53の充電時間と放電時間との和には限定されない。例えば、バッテリ53の所定期間での充電量を上記所定期間ごとに積算した総充電量(絶対値)と、バッテリ53の所定期間での放電量を上記所定期間ごとに積算した総放電量(絶対値)との和を、バッテリ53の稼働状態を示す物理量として扱ってもよい。この場合でも、出力部90が第2稼働情報を出力したときに、オペレータ等は、出力された第2稼働情報、つまり、バッテリ53の総充電量と総放電量との和に基づいて、バッテリ53の放電による劣化のみならず、充電による劣化も考慮した適切なタイミングで、バッテリ53のメンテナンスを行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では、出力部90は、第1稼働情報および第2稼働情報を表示する表示部91を含む。これにより、例えばオペレータは、表示部91に表示された第1稼働情報(例えば稼働時間T1)を見て、油圧系70のメンテナンスを行うタイミングを容易に判断することができるとともに、表示部91に表示された第2稼働情報(例えば稼働時間T2)を見て、バッテリ53のメンテナンスを行うタイミングを容易に判断することができる。
【0045】
また、本実施形態では、出力部90は通信部92を含む。この構成では、ECU80は、第1稼働情報および第2稼働情報を、通信部92を介して外部の端末に出力させて、上記端末を扱うシステムの管理者に、第1稼働情報および第2稼働情報を認識させることができる。これにより、上記管理者は、第1稼働情報に基づいて、油圧系70のメンテナンスのタイミングを適切に管理することができ、さらに第2稼働情報に基づいて、バッテリ53の放電および充電による劣化を考慮したメンテナンスのタイミングを適切に管理することができる。
【0046】
ところで、ECU80は、第1稼働情報として管理する物理量、および第2稼働情報として管理する物理量の少なくとも一方が規定値に達したか否かを判断し、規定値に達した場合には、規定値に達したことを表示部91に表示させてもよい。例えば、図4は、表示部91における表示の他の例を示している。同図では、電動モータ61の稼働時間T1が第1規定値(例えば600H)に達したときに、表示部91にて稼働時間T1を点滅表示させて、稼働時間T1が第1規定値に達したことを報知する例を示している。同図では、併せて、バッテリ53の稼働時間T2が第2規定値(例えば1000H)に達したときに、表示部91にて稼働時間T2を点滅表示させて、稼働時間T2が第2規定値に達したことを報知している。
【0047】
このように、ECU80が表示部91の表示を制御することにより、オペレータは、表示部91を見て、第1稼働情報または第2稼働情報として管理する物理量が規定値に達したことを直ちに把握して、油圧系70およびバッテリ53の少なくとも一方について、メンテナンスが必要な時期であることを容易に認識することができる。これにより、オペレータは、例えば油圧ポンプ71の点検、バッテリ53の交換などの適切なメンテナンスを迅速に行うことが可能となる。
【0048】
なお、図4では、電動モータ61の稼働時間T1および稼働時間T2が、それぞれの規定値(第1規定値、第2規定値)に同時に達した例を示しているが、必ずしも同時に達するとは限らない。つまり、ECU80は、稼働時間T1および稼働時間T2の少なくとも一方が規定値に達したときに、表示部91にて、規定値に達した稼働時間を点滅表示させることにより、規定値に達したことを報知すればよい。
【0049】
ところで、ECU80は、回転数検知センサ61aで検知された電動モータ61の回転数が所定値(例えば10回転/min)を超えている状態での、電動モータ61の稼働状態を示す物理量を、第1稼働情報として管理することが望ましい。この場合、ECU80は、図3および図4で示した表示部91の表示画面において、電動モータ61の稼働時間T1として、電動モータ61の回転数が所定値を超えている状態で電動モータ61が稼働している時間を表示させることになる。
【0050】
ECU80が上記のように第1稼働情報を管理することにより、例えば電動モータ61が上記所定値以下の回転数(例えば超低速)で回転しており、実質的に稼働しているとはみなせない状態での稼働時間を、電動モータ61の第1稼働情報から排除し、電動モータ61が上記所定値を超える回転数で実質的に回転しているとみなせる状態での稼働時間を、第1稼働情報として管理することができる。これにより、電動モータ61のメンテナンスの時期の、第1稼働情報に基づく管理精度を向上させることができる。
【0051】
〔3.バッテリの稼働状態を示す物理量の取得方法について〕
本実施形態の油圧ショベル1の駆動モードは、充電モードと、バッテリモードと、を含む。充電モードは、充電器62によってバッテリ53を充電する動作モードである。一方、バッテリモードは、バッテリ53の電力によって電動モータ61を駆動する動作モードである。
【0052】
図5は、充電モードとバッテリモードとのそれぞれにおける、リレー64の状態(接続状態/切断状態)、電動モータ61の稼働状態、充電器62の稼働状態、バッテリ53の稼働状態の一例を模式的に示している。油圧ショベル1が充電モードとバッテリモードとの2つの駆動モードで駆動される場合、充電モードでは、充電器62の稼働によってバッテリ53が充電されるため、充電器62の稼働時間(2)はバッテリ53の充電時間(3)と同じになる。一方、バッテリモードでは、電動モータ61の稼働によってバッテリ53が放電するため、電動モータ61の稼働時間(1)はバッテリ53の放電時間(4)と同じになる。したがって、バッテリ53の充電時間(3)と放電時間(4)との和は、充電器62の稼働時間(2)と電動モータ61の稼働時間(1)との和に等しい。つまり、バッテリ53の充電および放電を含む稼働状態を示す物理量(バッテリ53の充電時間(3)+バッテリ53の放電時間(4))は、充電器62の稼働時間(2)と、電動モータ61の稼働時間(1)との和である。
【0053】
したがって、上記のように油圧ショベル1が充電モードまたはバッテリモードで駆動される場合、ECU80は、充電器62の稼働時間(2)と電動モータ61の稼働時間(1)との和を管理することにより、バッテリ53の稼働状態を示す物理量(充電時間(3)+放電時間(4))を容易に取得して管理することができる。
【0054】
〔4.バッテリの稼働状態を示す物理量の他の取得方法について〕
油圧ショベル1の駆動モードは、上記した充電モードおよびバッテリモードに加えて、電源併用モードを含んでいてもよい。電源併用モードとは、外部電源51およびバッテリ53の少なくとも一方から供給される電力によって電動モータ61を駆動するモードである。
【0055】
図6は、充電モード、バッテリモード、電源併用モードのそれぞれにおける、リレー64の状態(接続状態/切断状態)、電動モータ61の稼働状態、充電器62の稼働状態、バッテリ53の稼働状態の一例を模式的に示している。油圧ショベル1が充電モード、バッテリモードおよび電源併用モードの3つの駆動モードで駆動される場合、バッテリ53の充電および放電を含む稼働状態を示す物理量(バッテリ53の充電時間(D)+バッテリ53の放電時間(E))は、充電器62の稼働時間(C)と、電動モータ61の稼働時間(B)との和にはならず、図5と同様の関係は得られない。
【0056】
しかし、充電モード、バッテリモード、電源併用モードでは、バッテリ53の充電または放電が行われるが、充電、放電のいずれも、リレー64が接続された状態で行われる。したがって、バッテリ53の充電時間(D)と放電時間(E)との和は、リレー64の接続時間(A)に等しい。つまり、バッテリ53の充電および放電を含む稼働状態を示す物理量(バッテリ53の充電時間(D)+バッテリ53の放電時間(E))は、リレー64の接続時間(A)である。
【0057】
したがって、上記のように油圧ショベル1が充電モード、バッテリモードまたは電源併用モードで駆動される場合、ECU80は、リレー64の接続時間(A)を管理することにより、バッテリ53の稼働状態を示す物理量(充電時間(D)+放電時間(E))を容易に取得して管理することができる。
【0058】
また、バッテリ53の充電時間(D)+放電時間(E)がリレー64の接続時間(A)と等しい関係は、図5においても言える。つまり、油圧ショベル1が充電モードとバッテリモードとの2つの駆動モードで駆動される場合、充電モードでも放電モードでも、リレー64は接続状態であるため、図5において、バッテリ53の充電時間(3)と放電時間(4)との和が、リレー64の接続時間(5)と等しくなる。したがって、ECU80がリレー64の接続時間を管理することにより、バッテリ53の稼働状態を示す物理量を容易に取得して管理することができる上述の効果は、図5のように、油圧ショベル1が2つの駆動モード(充電モードまたはバッテリモード)で駆動される場合でも得ることができる。
【0059】
以上では、電動式の作業機械として、建設機械である油圧ショベルを例に挙げて説明したが、作業機械は油圧ショベルに限定されず、ホイルローダなどの他の建設機械であってもよく、コンバイン、トラクタ等の農業機械であってもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えば建設機械、農業機械などの作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 油圧ショベル(電動式作業機械)
51 外部電源
53 バッテリ
61 電動モータ
62 充電器
61a 回転数検知センサ
64 リレー
70 油圧系
71 油圧ポンプ
73 油圧アクチュエータ
80 ECU(制御部)
90 出力部
91 表示部
E1 第1電路
E2 第2電路
Ec 合流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6