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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】スラリの希釈洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/39 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
B01D29/34 510Z
B01D29/34 510F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021049461
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022147967
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504298291
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 新平
(72)【発明者】
【氏名】早川 智基
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082028(JP,A)
【文献】特開2016-172198(JP,A)
【文献】特開2004-279483(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01118683(EP,A1)
【文献】特開2010-042368(JP,A)
【文献】特開2012-087039(JP,A)
【文献】特開平02-095404(JP,A)
【文献】米国特許第04889599(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/05
35/10-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物が溶解する原料スラリからなる被処理液をろ過装置に供給し、前記ろ過装置で被処理液を不純物が含有するろ液と不純物が減少した洗浄後スラリに分離し、前記洗浄後スラリと新たに加えた洗浄液からなる被処理液をろ過装置に供給して不純物を除去する希釈洗浄方法において、
前記ろ過装置で分離されたろ液に溶解する不純物が、理論勾配Aの延長線上に沿って減少する場合には、前記洗浄後スラリに所定の第1液量の洗浄液を加え、前記ろ液に溶解する不純物が、前記理論勾配Aの延長線上から外れて勾配Bに沿って減少する場合には、前記洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加え、
前記理論勾配Aと勾配Bは、横軸に前記ろ液の液量 [kg]をとり、縦軸に前記ろ液の導電率[μS/cm]を対数表示した片対数グラフの勾配であることを特徴とするスラリの希釈洗浄方法。
【請求項2】
前記勾配Bの傾き角度B1を、前記理論勾配Aの傾き角度A1で除算した割合が80%以下の場合には、前記洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加える請求項記載のスラリの希釈洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加えた後に、前記ろ液に溶解する不純物が増加した場合には、前記洗浄後スラリに第1液量よりも少ない所定の第3液量の洗浄液を加える請求項又は記載のスラリの希釈洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加えて所定の時間経過した後に、前記ろ液に溶解する不純物が増加した場合には、前記洗浄後スラリに第1液量よりも少ない所定の第3液量の洗浄液を加える請求項又は記載のスラリの希釈洗浄方法。
【請求項5】
前記ろ液に溶解する不純物が10%増加した場合には、前記洗浄後スラリに所定の第3液量の洗浄液を加える請求項又は記載のスラリの希釈洗浄方法。
【請求項6】
前記第3液量は、前記ろ液に溶解する不純物の減少に応じて減少させる請求項のいずれか1項に記載のスラリの希釈洗浄方法。
【請求項7】
前記ろ過装置は、複数のろ液室と複数の攪拌羽根を備え、前記ろ液室の表面にはスクリーン又はろ過膜が装着された請求項1~のいずれか1項に記載のスラリの希釈洗浄方法。
【請求項8】
前記ろ過装置の本体部の内周部にろ液室を固定し、前記本体部に架設された回転軸に攪拌羽根を固定し、前記回転軸を駆動装置で回動させた請求項記載のスラリの希釈洗浄方法。
【請求項9】
前記ろ過装置の本体部の内周部に攪拌羽根を固定し、前記本体部に架設された回転軸にろ液室を固定し、前記回転軸を駆動装置で回動させた請求項記載のスラリの希釈洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の凝集体や多孔性物質を粒子とする原料スラリを洗浄液を置換しながら希釈洗浄を行うスラリの希釈洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ液室と攪拌羽根を備えるろ過装置に供給される懸濁液の供給量に応じてろ過装置に供給する洗浄液の液量の増減を行いながら懸濁液に溶解する不純物を除去する希釈洗浄方法が知られている。(特許文献1)
【0003】
ろ液室と攪拌羽根を備えるろ過装置の攪拌羽根の回転数に応じてろ過装置から被処理物を排出する排出口の開度を増減しながら被処理物に溶解する不純物を除去する希釈洗浄方法が知られている。(特許文献2)
【0004】
ろ液室と攪拌羽根を備えるろ過装置のろ液室から排出される濃縮液の濃度に応じてろ過装置に供給する被処理液の供給量の増減を行いながら被処理液に溶解する不純物を除去する希釈洗浄方法が知られている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公昭60-31761号公報
【文献】特開平10-165721公報
【文献】特開2004-255283公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したいずれの希釈洗浄方法では、被処理物に溶解した不純物を除去するために多くの洗浄液を使用するという問題があった。また、この問題は、被処理物に溶解した不純物を限界まで除去する場合には、過剰に多くの洗浄液を使用する必要が有ることからより顕在化する問題であった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、凝集体や多孔性物質等の粒子を含む原料スラリに溶解する不純物を少ない洗浄液を置換しながら除去することができる希釈洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明及び作用効果は次のとおりである。
第1発明は、不純物が溶解する原料スラリからなる被処理液をろ過装置に供給し、前記ろ過装置で被処理液を不純物が含有するろ液と不純物が減少した洗浄後スラリに分離し、前記洗浄後スラリと新たに加えた洗浄液からなる被処理液をろ過装置に供給して不純物を除去する希釈洗浄方法において、
前記ろ過装置で分離されたろ液に溶解する不純物が、理論勾配Aの延長線上に沿って減少する場合には、前記洗浄後スラリに所定の第1液量の洗浄液を加え、前記ろ液に溶解する不純物が、前記理論勾配Aの延長線上から外れて勾配Bに沿って減少する場合には、前記洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加え、
前記理論勾配Aと勾配Bは、横軸に前記ろ液の液量 [kg]をとり、縦軸に前記ろ液の導電率[μS/cm]を対数表示した片対数グラフの勾配であることを特徴とする。
【0009】
(作用効果)
ろ過装置で分離されたろ液に溶解する不純物の含有量に応じて、洗浄後スラリに加える洗浄液の供給方法を変更するので、ろ液に溶解する不純物の含有量に応じて洗浄液の液量や供給時間を変えて希釈洗浄で必要な洗浄液を抑制するとともに洗浄廃液の量を抑制することができる。
【0010】
【0011】
液に溶解する不純物が、理論勾配Aの延長線上に沿って減少する場合には、洗浄後スラリに所定の第1液量の洗浄液を加え、ろ液に溶解する不純物が、理論勾配Aの延長線上から外れて勾配Bに沿って減少する場合には、洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を洗浄液として加えるので、希釈洗浄で必要な洗浄液および洗浄廃液をより抑制することができる。
【0012】
発明は、第記載の発明の構成において、前記勾配Bの傾き角度B1を、前記理論勾配Aの傾き角度A1で除算した割合が80%以下の場合には、前記洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加えることを特徴とする。
【0013】
(作用効果)
勾配Bの傾き角度B1を、理論勾配Aの傾き角度A1で除算した割合が80%以下の場合には、洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加えるので、洗浄液からろ液への切替えを確実に行うことができる。
【0014】
発明は、第又は記載の発明の構成において、前記洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加えた後に、前記ろ液に溶解する不純物が増加した場合には、前記洗浄後スラリに第1液量よりも少ない所定の第3液量の洗浄液を加えることを特徴とする。
【0015】
(作用効果)
洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加えた後に、ろ液に溶解する不純物が増加した場合には、洗浄後スラリに第1液量よりも少ない所定の第3液量の洗浄液を加えるので、希釈洗浄で必要な洗浄液をさらに抑制することができる。
【0016】
発明は、第又は記載の発明の構成において、前記洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加えて所定の時間経過した後に、前記ろ液に溶解する不純物が増加した場合には、前記洗浄後スラリに第1液量よりも少ない所定の第3液量の洗浄液を加えることを特徴とする。
【0017】
(作用効果)
洗浄後スラリに所定の第2液量のろ液を加えて所定の時間経過した後に、ろ液に溶解する不純物が増加した場合には、洗浄後スラリに第1液量よりも少ない所定の第3液量の洗浄液を加えるので、希釈洗浄で必要な洗浄液をさらに抑制することができ、また、洗浄後スラリ中の粒子中に包含されていた不純物を洗浄後スラリに溶出させることができる。
【0018】
発明は、第又は記載の発明の構成において、前記ろ液に溶解する不純物が10%増加した場合には、前記洗浄後スラリに所定の第3液量の洗浄液を加えることを特徴とする。
【0019】
(作用効果)
ろ液に溶解する不純物が10%増加した場合には、洗浄後スラリに所定の第3液量の洗浄液を加えるので、ろ液から洗浄液への切替えを確実に行うことができる。
【0020】
発明は、第のいずれか1項に記載の発明の構成において、前記第3液量は、前記ろ液に溶解する不純物の減少に応じて減少させることを特徴とする。
【0021】
(作用効果)
第3液量は、ろ液に溶解する不純物の減少に応じて減少させるので、希釈洗浄で必要な洗浄液をより一層抑制することができる。
【0022】
発明は、第1~のいずれか1項に記載の発明の構成において、前記ろ過装置は、複数のろ液室と複数の攪拌羽根を備え、前記ろ液室の表面にはスクリーン又はろ過膜が装着されたことを特徴とする。
【0023】
(作用効果)
ろ過装置は、複数のろ液室と複数の攪拌羽根を備え、ろ液室の表面には複数の開口部が形成されたスクリーン又はろ過膜が装着されたので、被洗浄液をろ液と洗浄後スラリに効率良く分離することができる。
【0024】
発明は、第記載の発明の構成において、前記ろ過装置の本体部の内周部にろ液室を固定し、前記本体部に架設された回転軸に攪拌羽根を固定し、前記回転軸を駆動装置で回動させたことを特徴とする。
【0025】
(作用効果)
ろ過装置の本体部の内周部にろ液室を固定し、本体部に架設された回転軸に攪拌羽根を固定し、回転軸を駆動装置で回動させたので、不純物をスクリーン又はろ過膜を介してろ液室に効率良く流通することができる。
【0026】
発明は、第記載の発明の構成において、前記ろ過装置の本体部の内周部に攪拌羽根を固定し、前記本体部に架設された回転軸にろ液室を固定し、前記回転軸を駆動装置で回動させたことを特徴とする。
【0027】
(作用効果)
ろ過装置の本体部の内周部に攪拌羽根を固定し、本体部に架設された回転軸にろ液室を固定し、回転軸を駆動装置で回動させたので、不純物をスクリーン又はろ過膜を介してろ液室に効率良く流通することができる。
【発明の効果】
【0028】
凝集体や多孔性物質等の粒子を含む原料スラリに溶解する不純物を少ない洗浄液を置換しながら除去することができる希釈洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】希釈洗浄システムの説明図である。
図2】コントローラの接続図である。
図3】希釈洗浄方法の説明図である。
図4】希釈洗浄した金属微粒子スラリに溶解する不純物のろ液導電率の変化の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<希釈洗浄システム>
図1に示すように、希釈洗浄システムは、原料スラリと洗浄液からなる被処理液を貯留するスラリタンク1と、スラリタンク1から供給されてくる被処理液中に溶解する不純物を除去するろ過装置2から構成されている。
【0031】
スラリタンク1の上部には、スラリタンク1に原料スラリを供給する供給口10と洗浄液を供給する供給口11が形成され、スラリタンク1の下部には、スラリタンク1に貯留された被処理液を外部に排出する排出口12が形成されている。
【0032】
スラリタンク1には、スラリタンク1に貯留された被処理液を攪拌して均一化する撹拌機13が設けられ、被処理液の液面高さを測定する液面高さセンサ14が設けられている。
【0033】
供給口10には、配管15を介して原料スラリが貯留されている原料スラリタンク3が接続され、配管15の中間部には開閉弁16が設けられている。
【0034】
供給口11には、配管17を介して洗浄液が貯留されている洗浄液タンク4が接続され配管17の中間部には開度調整弁18が設けられ、配管17における開度調整弁18よりも上流側には、配管17を流通する洗浄液の流量を測定する流量センサ19が設けられている。これにより、流量センサ19の測定値に応じて開度調整弁18を操作して配管17を流通する洗浄液の流量を調整することができる。また、後述するセンサ43の測定値に応じて流量センサ19を介して開度調整弁18を操作して配管17を流通する洗浄液の流量を調整することもできる。
【0035】
スラリタンク1の排出口12から排出された被処理液は、配管20を流通してろ過装置2の供給口31に供給される。配管20の中間部には、被処理液に所定の圧力を加えて圧送するスラリ供給ポンプ21が設けられ、配管20におけるスラリ供給ポンプ21よりも下流側には被処理液に加えられている圧力を測定する圧力センサ22が設けられている。
【0036】
ろ過装置2は、略円筒状に形成されている。ろ過装置2の本体部30の略円形状の左壁には、ろ過装置2に被処理液を供給する供給口31が形成され、本体部30の略円形状の右壁には、ろ過装置2で所定の量の不純物と処理液が除去され濃縮された被処理液(以下、「洗浄後スラリ」という。)を外部に排出する排出口32が形成されている。
【0037】
略円筒状の本体部30の内周部には、左右方向に所定の間隔を隔ててリング形状のろ液室33が形成されている。図1には、4個のろ液室33が形成された形態が図示されているが、ろ液室33の個数を3個以下に形成したり、5個以上に形成することもできる。
【0038】
ろ液室33の左部には、多数の所定の口径を有する開口部が形成されたスクリーン33Aが装着され、ろ液室33の右部には、多数の所定の口径を有する開口部が形成されたスクリーン33Bが装着されている。これにより、被処理液の原料スラリ中に溶解している所定の量の不純物と所定の量の洗浄液をスクリーン33A,33Bの開口部を介してろ液室33内に流通させて被処理液の原料スラリ中に溶解している不純物を除去して洗浄後スラリ中に溶解する不純物を除去することができる。
【0039】
スクリーン33A,33Bとしては、種々の形態のスクリーンを使用することができるが、所定の間隔に編まれた金網を積層にして一体構造にした焼結スクリーン、断面が逆三角形状に形成されたワイヤを等間隔に並設したウエッジワイヤスクリーンを使用するのが好ましい。これにより、スクリーン33Aにおける左側面である表面とスクリーン33Bにおける右側面である表面に堆積した原料スラリ中の粒子を効率良く除去することができる。また、スクリーンの他、精密ろ過膜、限外ろ過膜等のろ過膜を使用することができる。
【0040】
ろ液室33と液室33の間にはスラリ室35が形成されている。なお、最も左側に位置するスラリ室35は、本体部30の左壁とろ液室33の間に形成され、最も右側に位置するスラリ室35は、ろ液室33と本体部30の右壁の間に形成されている。図1には、5個のスラリ室35が形成された形態が図示されているが、ろ液室33の個数に応じてスラリ室35の個数を4個以下に形成したり、6個以上に形成することもできる。
【0041】
本体部30の左壁と右壁には、左右方向に延在する回転軸36が架設されており、回転軸36には、左右方向に所定の間隔を隔てて径方向に延在する攪拌羽根37が設けられている。また、回転軸36は、本体部30の左壁の左側に設けられたモータ等の駆動装置38によって回動させられる。これにより、被処理液の原料スラリ中に溶解している所定の量の不純物と所定の量の洗浄液をスクリーン33A,33Bの開口部を介して液室33内に効率良く流通させ、また、被処理液の原料スラリ中の粒子がスクリーン33A,33Bの表面に堆積するのを防止して、スクリーン33A,33Bの開口部の目詰まりを防止することができる。図1には、5個の攪拌羽根37が形成された形態が図示されているが、スラリ室35の個数に応じて攪拌羽根37の個数を4個以下に形成したり、6個以上に形成することもできる。
【0042】
なお、図1には、本体部30の内周部にろ液室33を形成し、回転軸36に攪拌羽根37を形成して、攪拌羽根37をスラリ室35で回動させるろ過装置2の形態を図示しているが、本体部30の内周部に攪拌羽根37を形成し、回転軸36にろ液室33を形成して、ろ液室33をスラリ室35で回動させるろ過装置2の形態に形成することもできる。
【0043】
ろ液室33には、ろ液排出部40が接続されている。ろ液排出部40は、それぞれのろ液室33の外周部に接続された配管41と、配管41に接続された配管42と、配管42に接続されたろ液タンク46から構成されている。
【0044】
配管42の中間部には、配管42を流通するろ液に溶解する不純物を測定するセンサ43が設けられている。
【0045】
センサ43としては、ろ液に溶解する不純物の量を測定または推定できるものであれば良く、ろ液の電導度を測定する電気電導度計、ろ液の酸、アルカリ濃度を測定するPH計、ろ液の糖類を測定するBrix計、ろ液の色素、芳香族、有機金属錯体等の吸光特性を測定する吸光光度計、ろ液の塩化物イオン、アンモニア等の特定イオンを測定するイオンメータ、ろ液の硝酸、過マンガン酸塩等の酸化剤とシュウ酸、二価鉄イオン等の還元剤の酸化還元性物質を測定する酸化還元電位(ORP)計、ろ液の溶存酸素を測定するDO(溶存酸素)計等を使用することができる。
【0046】
配管42におけるセンサ43よりも下流側には開閉弁44と開度調整弁45が設けられている。これにより、液面高さセンサ14の測定値に応じて開度調整弁45を操作して配管42を流通するろ液の流量を調整してスラリタンク1に貯留された被処理液の液面高さを所定の高さに維持することができる。
【0047】
ろ液タンク46の排出口には配管47が接続され、配管47の下流側には切換え弁48が設けられている。これにより、切換え弁48を操作してろ液タンク46に一時的に貯留されたろ液を、廃液として配管47を流通させて廃液タンク5に供給したり、ろ液を再利用するために配管49を流通させて再利用タンク6に供給することができる。
【0048】
配管42におけるセンサ43と開閉弁44の間の部位には、配管50が接続され、配管50の下流側部は、スラリタンク1の上部の供給口52に接続されている。また、配管50の中間部には開閉弁51が設けられている。これにより、開閉弁44を閉じ、開閉弁51を開いて配管42を流通するろ液をスラリタンク1に供給して洗浄液として再使用することもできる。
【0049】
本体部30の排出口32には、配管60を介して洗浄後スラリを貯留する洗浄後スラリタンク7が接続されている。
【0050】
配管60の中間部には、開度調整弁61が設けられている。これにより、圧力センサ22の測定値に応じて開度調整弁61を操作して配管60を流通する洗浄後スラリの流量を調整して被処理液に加えられた圧力を所定の圧力に維持することができる。
【0051】
配管60における開度調整弁61よりも下流側には切換え弁62が設けられている。これにより、センサ43の測定に応じて切換え弁62を操作して、洗浄後スラリに溶解する不純物が所定の量よりも少なくなった場合には、洗浄後スラリを配管60を流通させて洗浄後スラリタンク7に供給し、洗浄後スラリに溶解する不純物が所定の量以上の場合には、洗浄後スラリを配管63を流通させてスラリタンク1の上部の供給口64からスラリタンク1に戻すことができる。
【0052】
<コントローラ>
図2に示すように、コントローラ70の入力側には、スラリタンク1に貯留された被処理液の液面高さを測定する液面高さセンサ14と、配管17を流通する洗浄液の流量を測定する流量センサ19と、ろ過装置2に供給される被処理液に加えられている圧力を測定する圧力センサ22と、配管42を流通するろ液に溶解する不純物を測定するセンサ43が所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0053】
コントローラ70の出力側には、配管15に設けられた開閉弁16と、配管17に設けられた開度調整弁18と、配管20に設けられた被処理液に所定の圧力を加えて圧送するスラリ供給ポンプ21と、回転軸36を回動させる駆動装置38と、配管42に設けられた開閉弁44及び開度調整弁45と、配管47に設けられた切換え弁48と、配管50に設けられた開閉弁51と、配管60に設けられた開度調整弁61及び切換え弁62が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0054】
<希釈洗浄方法>
図3に示すように、ステップS1で、コントローラ70は、開閉弁16を所定の時間開いて原料スラリタンク3から所定の量の原料スラリである金属微粒子スラリをスラリタンク1に供給してステップS2に進む。なお、以下では、理解を容易にするために、図4に図示された金属微粒子スラリを希釈洗浄した結果を参酌しながら説明を行う。なお、図4は、横軸に洗浄ろ液量 [kg]をとり、縦軸にろ液導電率[μS/cm]を対数表示した片対数グラフである。
【0055】
ステップS2で、コントローラ70は、開度調整弁18を所定の時間操作して洗浄液タンク4から所定の量の洗浄液である水をスラリタンク1に供給してスラリ濃度が約12[wt%]の被処理液を生成してステップS3に進む。なお、希釈洗浄システムの運転開始時には、ステップS2は省略されて、原料スラリである金属微粒子スラリのみがろ液装置2に供給される。その後は、ステップS2で、ろ液装置2から排出されたろ液の排出量に相当する量の洗浄液である水がスラリタンク1に供給される。また、あらかじめ原料スラリタンク3に貯留されたスラリ濃度が約12[wt%]の被処理液をスラリタンク1に供給し、ステップS2を省略して、ステップS3に進んでもよい。
【0056】
ステップS3で、コントローラ70は、スラリ供給ポンプ21を所定の時間駆動して配管20を流通する被処理液に0.15[MPaG]の圧力を加えてステップS4に進む。
【0057】
ステップS4で、コントローラ70は、駆動装置38を所定の時間駆動して回転軸36を介して攪拌羽根37を回動させて、ろ過装置2に供給された被洗浄液に溶解する不純物である塩分と水をろ液としてろ液室33に装着されたスクリーン33A,33Bを介してろ液室33に流通させた後に配管41を介してろ過装置2の外部に排出させるとともに、塩分が除去され濃縮された被洗浄液を洗浄後スラリとして配管60を介してろ過装置2の外部に排出してステップS5に進む。なお、スクリーン33A,33Bのろ過面積は0.013[m]で、ろ材はポリエーテルサルホン製、ポアサイズ0.05[μm]である。
【0058】
ステップS5で、コントローラ70は、電気電導度計等のセンサ43で測定された配管42を流通するろ液のろ液導電率が、製品仕様である20[μS/cm]よりも大きいか否か判断し、ろ液のろ液導電率が20[μS/cm]よりも大きいと判断した場合には、ステップS6に進み、ろ液のろ液導電率が20[μS/cm]以下と判断した場合には、ステップS14に進む。
【0059】
ステップS6で、コントローラ70は、メモリに保存されているろ液のろ液導電率の理論勾配Aとセンサ43で測定されたろ液のろ液導電率に基づいて算出した勾配Bを比較して、理論勾配Aの延長線上に勾配Bが位置していると判断した場合にはステップS7に進み、理論勾配Aよりも延長線上に勾配Bが位置しない場合にはステップS9に進む。これにより、希釈洗浄されている金属微粒子スラリの状態に応じて希釈洗浄の方法を切替えることができて洗浄液タンク4からスラリタンク1に供給する水の液量を抑制することができる。なお、理論勾配Aよりも延長線上に勾配Bが位置せず、勾配Bの右下がり傾斜の傾き角度B1を理論勾配Aの右下がり傾斜の傾き角度A1で除算した割合が80%以下であった場合にはステップS9に進むのがより好ましい。
【0060】
ろ液のろ液導電率が理論勾配Aの延長線上にある領域は恒率洗浄域や希釈洗浄域といい、ろ液のろ液導電率が理論勾配Aの延長線上にない領域を減率洗浄域や浸みだし洗浄域という。図4では、洗浄ろ液量が略25[kg]以下の領域が恒率洗浄域であり、洗浄ろ液量が略25[kg]よりも多い領域が減率洗浄域になっている。
【0061】
勾配Bは、種々の方法で算出することできるが、現在のステップS6でセンサ43で測定されたろ液のろ液導電率に、現在のステップS6よりも以前のステップS6、例えば現在のステップS6よりも1回から9回以前のステップS6でセンサ43で測定されたろ液のろ液導電率加算した値を、現在のステップS6と現在のステップS6よりも1回から9回以前のステップS6で供給された水の合計液量で除算して算出することができる。また、傾き角度A1は、図4の上下方向に延在する仮想線と理論勾配Aの交差角度の小さい交差角度をいい、傾き角度B1は、図4の上下方向に延在する仮想線と勾配Bの交差角度の小さい交差角度をいう。
【0062】
ステップS7で、コントローラ70は、切換え弁62を所定時間操作して配管60に排出された洗浄後スラリを配管63を流通させて供給口64からスラリタンク1に供給してステップS8に進む。これにより、所定の量の塩分が除去された洗浄後スラリを金属微粒子スラリとして再使用して、金属微粒子スラリに溶解する塩分を確実に除去することができる。
【0063】
ステップS8で、コントローラ70は、液面高さセンサ14の測定値に応じて開度調整弁18を操作して洗浄液タンク4から水をスラリタンク1に供給してスラリ濃度が約12[wt%]の被処理液を生成してステップS3に戻る。これにより、図4に示すように、金属微粒子スラリでは、ろ液のろ液導電率を理論勾配Aの延長線上に沿って10000[μS/cm]から略300[μS/cm]に減少させることができている。
【0064】
ステップS9で、コントローラ70は、切換え弁62を所定時間操作して配管60に排出された洗浄後スラリを配管63を流通させて供給口64からスラリタンク1に供給してステップS10に進む。これにより、所定の量の塩分が除去された洗浄後スラリを金属微粒子スラリとして再使用して、金属微粒子スラリに溶解する塩分を確実に除去することができる。
【0065】
ステップS10で、コントローラ70は、開閉弁51を所定時間開くこと、および開度調整弁45の開度を調整することで配管42に排出されたろ液を配管50を流通させて供給口52からスラリタンク1に供給してステップS11に進む。これにより、配管42に排出されたろ液を洗浄液の一部または全部として再使用して、洗浄液タンク4からスラリタンク1に供給する水の液量を大幅に抑制することができる。
【0066】
ステップS11で、コントローラ70は、所定の時間待機した後に、ステップS12に進む。これにより、金属微粒子スラリ中の粒子に包含されていた塩分を水に溶出させることができる。
【0067】
ステップS12で、コントローラ70は、センサ43で測定されたろ液のろ液導電率が、前回のステップS12でセンサ43で測定されたろ液のろ液導電率よりも所定の割合で多くなっているが否か判断し、ろ液のろ液導電率が前回測定されたろ液のろ液導電率よりも所定の割合で多くなっている場合にはステップS13に進み、ろ液のろ液導電率が前回のステップS12でセンサ43で測定されたろ液のろ液導電率よりも所定の割合で多くなっていない場合にはステップS11に戻る。これにより、水に溶出した塩分を効率良く除去することができる。なお、センサ43で測定されたろ液のろ液導電率が、前回のステップS12でセンサ43で測定されたろ液導電率よりも10%増加した場合にはステップS13に進むのが好ましい。
【0068】
ステップS13で、コントローラ70は、センサ43で測定されたろ液のろ液導電率に応じて流量センサ19を介して開度調整弁18を所定時間操作して洗浄液タンク4から所定の量の水をスラリタンク1に供給してステップS3に戻る。なお、ステップS13で供給される水の液量は、ステップS2で供給される水の液量よりも少なく、センサ43で測定されたろ液のろ液導電率に応じて水の液量を連続的に、段階的に少なくしたり、メモリに保存された予め設定したパタンに基づいて少なくすることもできる。これにより、洗浄液タンク4からスラリタンク1に供給する水の液量を抑制することができる。また、図4に示すように、金属微粒子スラリでは、ろ液のろ液導電率を勾配Bに沿って略300[μS/cm]から20[μS/cm]以下に減少させることができている。
【0069】
ステップS14で、コントローラ70は、切換え弁62を操作して配管60に排出された洗浄後スラリを配管60を流通させて洗浄後スラリタンク7に供給してステップS1に戻る。これにより、金属微粒子スラリを希釈洗浄して液導電率が20[μS/cm]以下の金属微粒子スラリを生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、微粒子の凝集体や活性炭のような多孔性物質を粒子とする原料スラリを洗浄液を置換しながら希釈洗浄を行う希釈洗浄システムとその希釈洗浄方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
2 ろ過装置
30 本体部
33 ろ液室
33A スクリーン
33B スクリーン
36 回転軸
37 攪拌羽根
38 駆動装置
A 理論勾配
A1 傾き角度
B 勾配
B1 傾き角度
図1
図2
図3
図4