(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】安定したアルカリアミド溶液及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07F 1/02 20060101AFI20240122BHJP
C07C 15/46 20060101ALI20240122BHJP
C07C 211/06 20060101ALI20240122BHJP
C07D 211/92 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C07F1/02
C07C15/46
C07C211/06
C07D211/92
(21)【出願番号】P 2021500709
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2019067477
(87)【国際公開番号】W WO2020011567
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】102018211495.1
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517346602
【氏名又は名称】アルベマール・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダビドウスキ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルク,アニカ
(72)【発明者】
【氏名】リシュカ,ウベ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,テレーザ
(72)【発明者】
【氏名】クレーゼナー,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ビーテルマン,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】リットマイアー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュニッパーリング,シュテファン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-076885(JP,A)
【文献】特表昭61-502609(JP,A)
【文献】独国特許発明第19605571(DE,C1)
【文献】米国特許第05679850(US,A)
【文献】中国特許出願公開第101486721(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07C
C07D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属アミドMNR
1R
2の溶液であって、ここで、Mが、Li、Na、K、Rb及びCsから選択されるアルカリ金属であり;R
1及びR
2が、互いに独立して、1~8個のC原子を有する直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基であるか、または一緒になって、シクロアルキルラジカルであり、前記アルカリ金属アミドが
4-メチルテトラヒドロピラン中に、または
4-メチルテトラヒドロピランを含む溶媒混合物中に存在することを特徴とする、前記溶液。
【請求項2】
Mがリチウムであり、かつR
1及びR
2がイソプロピルであることを特徴とする、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記溶媒混合物が、4-メチルテトラヒドロピランに加えて、室温で液体であり、かつアルカリ金属アミドと4-メチルテトラヒドロピランとの間のモル比が1:0.5~1:3の間である、少なくとも1つの炭化水素を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の溶液。
【請求項4】
アルカリ金属アミドMNR
1R
2の調製方法であって、ここで、Mが、Li、Na、K、Rb及びCsから選択されるアルカリ金属であり;R
1及びR
2が、互いに独立して、1~8個のC原子を有する直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基であるか、または一緒になって、シクロアルキルラジカルであり、前記調製が、
4-メチルテトラヒドロピランまたは
4-メチルテトラヒドロピランを含む混合物である、溶媒中で行われることを特徴とし、アルカリ金属アミドと
4-メチルテトラヒドロピランとの間のモル比が、少なくとも0.5:1である、前記方法。
【請求項5】
R
1及びR
2が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、オクチル
、2-エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及び3~12個のC原子を有する一般的なシクロアルキルラジカルからなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
R
1及びR
2がNと一緒になって環状アミンを形成することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
溶媒が、
4-メチルテトラヒドロピランと少なくとも1つの液体炭化水素との混合物を含むことを特徴とする、請求項4~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
脂肪族、脂環式または芳香族化合物が、前記炭化水素として、単独でまたは混合物として、使用されることを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
使用される前記炭化水素が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クメン及び/又は前述の2以上の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ金属が粉末形態で、または顆粒として、粒子サイズがそれぞれ<100μmまたは<10mmで使用されることを特徴とする、請求項4~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
アルカリ金属と
4-メチルテトラヒドロピランとの間の前記モル比が1:0.5~1:3の間であることを特徴とする、請求項4~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
α-アリールオレフィン及び4~12個のC原子を有する1,3-ジエンからなる群より選択される少なくとも1つの水素受容体Aが
製造の間に存在することを特徴とする、請求項4~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水素受容体Aが、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン及び1,3-シクロヘキサジエンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
使用されるアミンの量に基づいて、前記水素受容体が0.3~0.6:1の範囲のモル比で使用され、かつ反応温度が0~200℃の間であることを特徴とする、請求項
12または
13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
反応温度が、20℃~110℃の間であることを特徴とする、請求項4~
14のいずれか1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行技術
エーテルベースの溶媒は、産業界で使用される最も重要なプロセス溶媒の1つである。それらは、その優れた溶解力及びドナー効果に起因して、多くの有機反応の溶媒として使用される。
【背景技術】
【0002】
ジエチルエーテルに加えて、環状テトラヒドロフランは、塩類、塩基性及び有機金属試薬を使用する反応のための最も重要な非プロトン性ドナー溶媒の1つとしての地位を確立している。環状テトラヒドロフランは、溶解性が良く、ほとんど不活性であると考えられている。ただし、より強力な求核試薬を使用する場合は、エーテル開裂が予想されるはずである。従って、THF中のブチルリチウムなどの強い求核性有機金属化合物の溶液は安定していない(M.Schlosser,Organometallics in Synthesis,John Wiley,1994,130、またはR.B.Bates,J.Org.Chem.,37(4),1972,560を参照のこと)。リチウムジイソプロピルアミド(LDA)のように求核性が弱い金属アミド塩基でさえ、とりわけ以下の、THF開裂下で分解するため、溶液としての貯蔵寿命は限られている:
【化1】
23℃及び40℃の保管温度では、それらは、1日あたり0.1または0.3%の割合で分解する(“Lithium & Magnesium Amides”,Technical Brochure of Albemarle 10/2016を参照のこと)。
【0003】
アルカリ金属などの卑金属もエーテル溶媒と反応し得ることも公知である。リチウム/THF系は熱力学的に安定ではないが、危険な分解反応を起こす傾向があることが公知である。2001年、スイスの会社で、リチウム残留物とTHFの制御不能な分解反応が原因で重大な事故が発生した(Annual Report 2001 of the Safety Inspectorate of the Canton of Basel-Landschaft,2002/40-10,pages 12-14を参照のこと)。DSC(動的示差走査熱量測定)試験によって、リチウム粉末及びTHFからなるシステムが、100~120℃(「Tonset」)のリチウム濃度に応じて発熱反応することが示されている。このプロセスで放出される分解エネルギーは、60~80kJ/molリチウムの範囲である(Lithium Topics,September 2002,Technical Information of Chemetall GmbHを参照のこと)。一般的な安全基準によれば(J.Barton,R.Roberts,Chemical Reaction Hazards,Institution of Chemical Engineers,1997,ISBN 0 95295 341 0、またはTh.Grewer’s,Thermal Hazards of Chemical Reactions,Industrial Safety Series,Vol.4,Elsevier 1994,ISBN 0-444-89722-4を参照のこと)、合成温度はTonsetの値-100K、この場合は0-20℃を超えてはならない。工業規模では、これらの低温には、冷却のために高いエネルギー入力を必要とし、投与及び反応時間が長くなり、それに応じて高い製造コストが発生する。
【0004】
解決すべき課題
本発明によって解決されるべき問題は、アルカリアミド溶液、特にドナー溶媒中のアルカリ金属ジアルキルアミド、及び強塩基性試薬の安全かつ安価な調製のための方法を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
課題の解決
この問題は、アルカリ金属アミドMNR1R2の溶液によって解決され、ここで、Mは、Li、Na、K、Rb、Csから選択されるアルカリ金属であり;R1及びR2は、1~8個のC原子を有する独立して直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基であるか、またはそれらは一緒になってシクロアルキルラジカルであり、このアルカリ金属アミドは、メチルテトラヒドロピラン中に、またはメチルテトラヒドロピラン含有溶媒混合物中に存在する。
【0006】
好ましくは、Mはリチウムであり、R1及びR2はイソプロピル基である。従って、強塩基性試薬はリチウムジイソプロピルアミド(LDA)である。
【0007】
溶媒混合物は、4-メチルテトラヒドロピランに加えて、室温で液体である少なくとも1つの炭化水素を含み、アルカリ金属アミドLDAと4-メチルテトラヒドロピランとの間のモル比が好ましくは1:0.5~1:3の間であることが特に好ましい。
【0008】
本発明によれば、調製は、メチルテトラヒドロピラン中で、またはメチルテトラヒドロピランを含む溶媒混合物中で行われ、すなわち、THFの代わりに、同様に良好な溶解性を有するが、アルカリ金属及び金属ジアルキルアミドに対する安定性が著しく改善された溶媒が使用される。金属ジアルキルアミドとメチルテトラヒドロピランとの間のモル比は、少なくとも0.5:1、好ましくは少なくとも1:1である。メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、特に好ましくは4-メチルテトラヒドロピラン(4-MTHP)がそのような溶媒として使用される。4-MTHPは105℃で沸騰し、水への溶解度は極めて低くなる(1.5%)。水混和性THFと比較して、水溶性が低いことで、相分離プロセスによる製品の分離が容易になり、廃水量の削減が可能になる。4-MTHPは、μ=約1.864D(Kurarayからの製品情報、17.08.2017)でμ=1.75Dのテトラヒドロフランよりもわずかに高い双極子モーメントを保有している(D.R.Lide,Handbook of Organic Solvents,CRC Press Boca Raton,1995,ISNN:0-8493-8930-5を参照のこと)。
【0009】
驚くべきことに、メチルテトラヒドロピラン、特に4-MTHPは、アルカリ金属及びアルカリアミド塩基に対する熱安定性が大幅に改善されていることがわかった。メチルテトラヒドロピランは、少なくとも同等の極性を有し、従って、THFと同様に強い供与性を有し、同じ構造要素、すなわち、原則として塩基に感受性であるCO結合を環系内に含むので、この効果は当業者に驚きをもたらす。
【0010】
R1及びR2は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、2-エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルからなる群より選択される。環状アミドは、好ましくは金属ピペリジド、特に金属2,2,6,6-テトラメチルピペリジドである。金属は、リチウム及びナトリウムから選択されることが好ましい。
【0011】
好ましい実施形態では、メチルテトラヒドロピランのみ、特に4-メチルテトラヒドロピランのみが溶媒として使用される。
【0012】
少なくとも1つのメチルテトラヒドロピラン及び少なくとも1つの炭化水素溶媒の混合物が、溶媒として特に好ましい。
【0013】
好ましくは、脂肪族、脂環式または芳香族化合物は、炭化水素として、単独で、またはいくつかの炭化水素の混合物として、使用される。
【0014】
使用される炭化水素は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、及び/またはクメンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である。
【0015】
いくつかの炭化水素の混合物として、市販の製品、すなわちボイリングカット(boiling cut)が使用されることが好ましい。
【0016】
さらに、水素受容体が合成に使用される場合、本発明によるアルカリアミド溶液は、合成化学量論によって決定される量で、この水素受容体の部分的に水素化された形態を含む。水素化水素受容体は、例えば、スチレンを使用する場合はエチルベンゼン、イソプレンを使用する場合は2-メチル-2-ブテンである。
【0017】
アルカリ金属は、好ましくは、粉末形態で、または顆粒として、粒子サイズがそれぞれ<100μmまたは<10mmで使用される。
【0018】
さらに、アルカリ金属とメチルテトラヒドロピランとの間のモル比は、好ましくは1:0.5~1:3である。
【0019】
α-アリールオレフィンまたは4~12個のC原子を有する1,3-ジエンからなる群より選択される少なくとも1つの水素受容体Aを合成反応中に添加することが有利である。
【0020】
特に好ましい水素受容体Aは、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレンまたは1,3-シクロヘキサジエンからなる群より選択され、使用されるアミンの量に基づいて、0.3~0.6:1のモル比で使用されることが好ましい。
【0021】
反応温度が0~200℃、好ましくは20~110℃の間であるプロセスが特に好ましい。
【0022】
改善された安定性特性は、例としてエーテル溶媒/リチウム金属システムを使用して初めて実証される。
【0023】
この目的のために、Systag/Switzerland社のRADEXシステムを使用して熱化学的検討を実行した。粒子サイズが100μm未満のリチウム金属粉末0.09gとエーテル溶媒1.8gの混合物を、アルゴンブランケットガス下でスチールのオートクレーブに充填し、最終温度250℃まで加熱した。LiとTHFの混合物は約80℃の温度(ピーク温度150℃、分解熱-150J/g)から強く発熱分解するが、4-MTHPとの混合物の場合は発熱は観察されない。代わりに、約190℃の炉内温度で弱い吸熱が記録され、これは、金属リチウムの溶融に起因する可能性があり得る。これは、リチウム金属/4-MTHPシステムがはるかに安定しているため、リチウム及びその他のアルカリ金属を使用した場合に、それに応じてより高いプロセス温度が可能になることを意味する。
【0024】
驚くべきことに、アルカリ金属アミドと検討中のエーテルとの混合物の場合にも同様の効果が観察された。2つのエーテル中のリチウムジイソプロピルアミド(LDA)の溶液の対応する測定結果は、表1にまとめている。THF溶液の場合(比較試験)、2つの連続した発熱事象が観察され、4-MTHP溶液の場合は発熱分解ステップは1つだけ観察される。4-MTHPでの分解反応(T
ONSET)の開始は、約90Kより高い温度にシフトしていることがわかる。さらに、分解熱は有意に低くなる。
【表1】
改善された熱安定性は、穏やかな温度上昇で保管温度にも影響する。これを表2に示す:
【表2】
【0025】
LDAの例に示されている効果は、他のアルカリ金属アミドMNR1R2にも移行可能である。好ましいアルカリ金属は、M=リチウム、ナトリウム、またはカリウムである。
【0026】
アルカリアミドは、THFの使用から公知であるプロセスと同様の方法で生成される(US4,595,779を参照のこと):以下に従って、溶媒もしくはメチルテトラヒドロピランを含む溶媒混合物中でのアルカリ金属と二級アミンとの直接反応によるか:
M + H-NR1R2 → MNR1R2 + 1/2H2
または、好ましくは、以下に従って水素受容体Aの存在下でアルカリ金属及び二級アミンから:
2M + 2H-NR1R2 + A → 2MNR1R2 + AH2
ここで、MはLi、Na、K、Rb、Csから選択されるアルカリ金属であり;R1及びR2は、独立して、1~8個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基であるか、または一緒になってシクロアルキルラジカルを表す。水素受容体Aは、4~12個のC原子を有するα-アリールオレフィンまたは1,3-ジエンを表す。R1及びR2は特に好ましくは、そして互いに独立して:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、2-エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルである。環状アミンとして、ピペリジン及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが好ましい。好ましい水素受容体は、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、及び1,3-シクロヘキサジエンである。水素受容体は、使用されるアミンの量に対して0.3~0.6:1のモル比で使用されることが好ましい。アルカリ金属は、粉末形態で、または顆粒として、粒子サイズがそれぞれ<100μmまたは<10mmで使用することが好ましい。純粋なメチルテトラヒドロピラン、好ましくは純粋な4-メチルテトラヒドロピランを溶媒として使用してもよい。しかしながら、好ましくは、室温で液体である炭化水素とメチルテトラヒドロピランとの混合物を使用する。炭化水素は、純粋な形態または混合物のいずれかで、脂肪族化合物であっても、脂環式化合物であってもまたは芳香族化合物であってもよい。特に好ましい脂肪族化合物は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びデカンであり、好ましい脂環式化合物は、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンであり、好ましい芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン及びクメンである。メチルテトラヒドロピランと炭化水素との混合比は、10:1~1:10の間であり得る(数字は重量比を表す)。アルカリ金属とメチルテトラヒドロピランとの間のモル比は、好ましくは1:0.5~1:3である。
【0027】
メチルテトラヒドロピランの使用に関連する溶媒との望ましくない反応に関して改善された熱安定性及び安全性に起因して、この反応はまた、液体アルカリ金属を使用してより高い温度で実行してもよい。後者のプロセスは、低融点のアルカリ金属であるナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムに特に好ましい。
【0028】
反応温度は一般に0~200℃、好ましくは20~110℃である。
【0029】
メチルテトラヒドロピランを含む溶媒または炭化水素溶媒混合物中の本発明によるプロセスによって調製されるアルカリ金属アミド溶液は、好ましくは少なくとも0.3mol/kg、特に好ましくは少なくとも0.5mol/kgの濃度を有する。アルカリ金属アミドとメチルテトラヒドロピランとの間のモル比は、好ましくは1:0.5~1:3の間である。少なくとも1つのメチルテトラヒドロピランと少なくとも1つの炭化水素との混合物中のリチウムジイソプロピルアミド(LDA)の溶液が特に好ましい。
【0030】
本発明に従って製造されたプロセス生成物は、例えば選択的エノール化のための有機合成の塩基として使用される。
【0031】
本発明は、実施例及び2つの図を使用してより詳細に説明される。
【0032】
図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】0.09gのLi粉末及び1.8gのTHFの混合物の熱的挙動(Radex試験)を示す。
【
図2】0.09gのLi粉末及び1.8gの4-MTHPの混合物の熱的挙動(Radex試験)を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0034】
実施例1:
4-メチルテトラヒドロピラン/ヘプタン/エチルベンゼン中のリチウムジイソプロピルアミド(LDA)の20%溶液の調製
【0035】
107gのヘプタン(異性体混合物「Iparsol 7」、DHC GmbHから入手可能)、79gの4-MTHP(供給業者Kuraray)、3.45gのリチウム顆粒(エッジ長約3mm、Albemarleから入手可能)及び50.4gのジイソプロピルアミン(供給業者Merck)を、不活性、すなわちブランケットガスアルゴンで満たされた乾燥500mlガラス反応器に入れ、25℃で1時間撹拌した。次にそれを30℃まで加熱し、26.2gのスチレンを3時間以内に滴下漏斗から加えた。添加中、その混合物はわずかに茶色がかって変色した。
【0036】
投与終了後、濁った反応混合物をさらに30分間撹拌し、次にガラスフリットを通して濾過した。その結果は、251gの透明な黄色がかった生成物溶液であった。活性塩基濃度(温度計法)は1.82mmol/gであり、19.5重量%のLDA濃度となった。