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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】バナジウムに基づく選択的触媒還元触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/888 20060101AFI20240122BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240122BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240122BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240122BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
B01J23/888 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 241
B01J35/04 301E
B01J35/04 301J
B01J37/02 301B
B01J37/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021505709
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070473
(87)【国際公開番号】W WO2020025604
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】18186280.6
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンネケス,エドガー フィクトール
(72)【発明者】
【氏名】パチェット,ジョセフ エー
(72)【発明者】
【氏名】コルデス,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ベアード,ケヴィン デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ヤン マルティン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/101449(WO,A1)
【文献】特表2015-530921(JP,A)
【文献】特開2008-296100(JP,A)
【文献】特開2004-138022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排ガスを処理するための選択的触媒還元触媒であって、
(i)流通基材であって、入口端、出口端、前記入口端から前記出口端へと延びる基材軸長さ、及び前記流通基材を通って延びる前記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材;
(ii)前記基材の前記内壁の表面上に配置されたコーティングであって、前記表面が、前記通路と前記内壁の間の界面を規定しており、前記コーティングが、チタニアを含む酸化物材料上に担持されたバナジウム酸化物を含み、及び更にバナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物を含む、コーティング、
を含み、且つ
バナジウム酸化物が、V として計算して、触媒中に、(lv1)/(g/in )の積載量で存在し、前記混合酸化物のバナジウムが、V として計算して、触媒中に、(lv2)/(g/in )の積載量で存在し、比(lv1):(lv2)が、0.1:1~3:1の範囲、であることを特徴とする選択的触媒還元触媒。
【請求項2】
前記酸化物材料が更に、1種以上の酸化物、好ましくはセリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ニオビウム酸化物、シリコン酸化物、及びタングステン酸化物の1種以上、より好ましくは、セリウム酸化物、シリコン酸化物、及びタングステン酸化物の1種以上、より好ましくは、シリコン酸化物、及びタングステン酸化物の1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の選択的触媒還元触媒。
【請求項3】
前記酸化物材料の75~100質量%、好ましくは80~99質量%、より好ましくは85~95質量%が、チタニアで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の選択的触媒還元触媒。
【請求項4】
前記混合酸化物が、バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物、好ましくは、鉄、エルビウム、ビスマス、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物、より好ましくは鉄及びアンチモンの1種以上との混合酸化物、より好ましくは鉄との混合酸化物であり、この場合、前記酸化物はバナジウムと鉄との混合酸化物であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の選択的触媒還元触媒。
【請求項5】
(lv1):(lv2)が、0.1:1~2:1の範囲、好ましくは0.2:1~1.5:1の範囲、より好ましくは、0.2:1~1.3:1の範囲であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の選択的触媒還元触媒。
【請求項6】
前記コーティング中に含まれるバナジウムの量が、バナジウムをVとして計算して、前記コーティングの合計質量に対して、2.5~8質量%の範囲、より好ましくは3~7質量%の範囲、より好ましくは3.5~6.5質量%の範囲であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の選択的触媒還元触媒。
【請求項7】
触媒中に、前記酸化物材料が、1~8g/inの範囲、好ましくは1.5~5g/inの範囲、より好ましくは2~4.5g/inの範囲、より好ましくは3~4.5g/inの範囲の積載量で存在することを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の選択的触媒還元触媒。
【請求項8】
前記コーティングが更に、酸化物バインダーを含み、該酸化物バインダーは好ましくは、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、及び混合酸化物であってZr、Al、Ti及びSiの2種以上を含む混合酸化物の1種以上を含み、前記酸化物バインダーはより好ましくは、アルミナ及びシリカの1種以上を含み、より好ましくはシリカを含み、より好ましくは、触媒中で、前記コーティングは前記酸化物バインダーを、0.02~0.5g/inの範囲の積載量、より好ましくは0.05~0.4g/inの範囲の積載量、より好ましくは0.1~0.3g/inの範囲の積載量で含むことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の選択的触媒還元触媒。
【請求項9】
触媒中で、前記コーティングは、1.5~10g/inの範囲の積載量、好ましくは2~8g/inの範囲の積載量、より好ましくは2.5~6.5g/inの範囲の積載量、より好ましくは、3.5~6g/inの範囲の積載量で存在することを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の選択的触媒還元触媒。
【請求項10】
(ii)に従うコーティングが、2つ以上のコートを含み、該2つ以上のコートは好ましくは、同じ化学組成を有することを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の選択的触媒還元触媒。
【請求項11】
選択的触媒還元触媒、好ましくは請求項1~10の何れか1項に記載の選択的触媒還元触媒を製造するための方法であって、
(a)流通基材であって、入口端、出口端、前記入口端から前記出口端へと延びる基材軸長さ、及び前記流通基材を通って延びる前記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材を準備する工程;
(b)バナジウム酸化物の溶液、チタニアを含む酸化物材料の粉、水、バナジウムと鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物の粉、及び好ましくは酸化物バインダーを含むスラリーを準備する工程;
(c)(b)で得られたスラリーを(a)に従う流通基材の内壁の表面上に配置し、スラリー処理された基材を得る工程であって、前記表面が、前記通路と前記内壁の間の界面を規定している工程;
(d)任意に、(c)で得られたスラリー処理された基材を乾燥する工程;
(e)(c)で得られたスラリー処理された基材、又は(d)で得られた乾燥された、スラリー処理された基材をか焼し、被覆された基材を得る工程;
及び任意に、
(c’)(b)で得られたスラリーを、(e)で得られた基材上に配置されたコーティングの表面に配置する工程;
(d’)任意に、(c’)で得られたスラリー処理された基材を乾燥させる工程;
(e’)(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材をか焼する工程;
を含み、(e)又は(e’)から選択的触媒還元触媒が得られることを特徴とする方法。
【請求項12】
工程(b)が、
(b.1)前記バナジウム酸化物の溶液、水、前記チタニアを含む酸化物材料の粉、及び好ましくは有機分散剤を混合してスラリーを得る工程;
(b.2)(b.1)で得られたスラリーの水相のpHを、6~8の範囲の値、好ましくは6.5~7.5の範囲の値に、及び好ましくは水酸化アンモニウム溶液を加えることによって調整する工程;
(b.3)バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物の粉を(b.2)で得られたスラリーに加える工程;
(b.4)好ましくは、酸化物バインダーを、(b.3)で得られた混合物に加え、最終的なスラリーを得る工程;
を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ディーゼルエンジンから排出される排ガス流を処理するための排ガス処理システムであって、請求項1~10の何れか1項に記載の、第1の選択的触媒還元触媒と、ディーゼル酸化触媒、アンモニア酸化触媒、第2の選択的触媒還元触媒、フィルター、好ましくは触媒化煤フィルターの1つ以上とを含むことを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項14】
窒素酸化物の選択的触媒還元を行うための方法であって、前記窒素酸化物が、排ガス流内に含まれており、及び
(1)排ガス流、好ましくはディーゼルエンジンからの排ガス流を供給する工程;
(2)(1)で供給された排ガス流を、請求項1~10の何れか1項に記載の選択的触媒還元触媒を通して通過させる工程;
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス処理用の選択的触媒還元触媒、及び上記触媒の製造方法に関する。本発明は更に、上述した方法によって得られた、又は得ることが可能な選択的触媒還元触媒、及び本発明の選択的触媒還元触媒を含む排ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バナジウムに基づく選択的触媒還元触媒は、NOx減少用に広く使用されている。バナジウムに基づく選択的触媒還元(SCR)触媒の不利な点の一つにNOオンリー条件下での低温脱NOx性能が挙げられ、これは最近のCuゼオライトに基づくSCR触媒が、しばしばより良好なNOx変換を提供している。例えば、特許文献1(EP1145762)には、チタニアに担持されたバナジア選択的触媒還元触媒を調製するための方法が開示されている。この方法は、メタバナジン酸アンモニウム溶液中にチタニアを分散させることを含んでいる。特許文献1(EP1145762)の触媒は、高い温度、すなわち550℃を超える温度でのみ高いNOx変換を示す。
【0003】
低温脱NOxは、如何なるNOx低減触媒にとっても最も重要な性能基準の一つであり、及び従って、この特性は最大限のものとされなければならない。低温脱NOxを増すバナジウムに基づくSCR触媒にとっての典型的な進路は、バナジア(vanadia)の積載量を増加させることである(ドライゲインの増加によるか、又はより高いバナジア濃度による)。前者には限界が有り、後者ではエイジングの間に熱安定性が低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】EP1145762
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、高いNOx変換を示す一方で、その熱安定性を維持するか、又は増加させる選択触媒還元触媒を提供することにあった。驚くべきことに、本発明に従うバナジウムベースの選択的触媒還元触媒は、高いNOx変換を達成する一方で、その熱安定性を維持するか、又は増加させることが可能であることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、ディーゼルエンジンの排ガスを処理するための選択的触媒還元触媒であって、
(i)流通基材であって、入口端、出口端、前記入口端から前記出口端へと延びる基材軸長さ、及び前記流通基材を通って延びる上記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材;
(ii)前記基材の前記内壁の表面上に配置されたコーティングであって、前記表面が、前記通路と前記内壁の間の界面(インターフェース)を規定しており、前記コーティングが、チタニアを含む酸化物材料上に担持されたバナジウム酸化物を含み、及び更にバナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物を含む、コーティング、
を含む選択的触媒還元触媒に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
好ましくは、酸化物材料上に担持されたバナジウム酸化物は、酸化バナジウム(II)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、及び酸化バナジウム(V)の1種以上であり、より好ましくは、酸化バナジウム(IV)、及び酸化バナジウム(V)の1種以上である。
【0008】
好ましくは、酸化物材料は更に、1種以上の酸化物、より好ましくはセリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ニオビウム酸化物、シリコン酸化物、及びタングステン酸化物の1種以上、より好ましくは、セリウム酸化物、シリコン酸化物、及びタングステン酸化物の1種以上、より好ましくは、シリコン酸化物、及びタングステン酸化物の1種以上を含む。
【0009】
より好ましくは、1種以上の酸化物、より好ましくはタングステン酸化物、又はより好ましくはタングステン酸化物及びシリコン酸化物は、チタニア上に含浸される。
【0010】
好ましくは、酸化物材料の75~100質量%、より好ましくは80~99質量%、より好ましくは85~95質量%が、チタニアで構成される。
【0011】
好ましくは、酸化物材料の98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%が、チタニアとタングステン酸化物で構成され、より好ましくは酸化物材料の80~99質量%、より好ましくは85~95質量%がチタニアで構成され、及び酸化物材料の1~20質量%、より好ましくは5~15質量%が、タングステン酸化物で構成される。
【0012】
この替わりに、酸化物材料の98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%が、チタニア、タングステン酸化物、及びシリコン酸化物から構成され、ここでより好ましくは、酸化物材料の80~98質量%、より好ましくは83~93質量%がチタニアで構成され、及び酸化物材料の1~20質量%、より好ましくは5~12質量%がタングステン酸化物で構成され、及び酸化物材料の1~15質量%、より好ましくは2~8質量%がシリコン酸化物で構成される。
【0013】
従って、本発明は好ましくは、ディーゼルエンジンの排ガスを処理するための選択的触媒還元触媒であって、
(i)流通基材であって、入口端、出口端、上記入口端から上記出口端へと延びる基材軸長さ、及び上記流通基材を通って延びる上記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材;
(ii)上記基材の上記内壁の表面上に配置されたコーティングであって、上記表面が、上記通路と上記内壁の間の界面(インターフェース)を規定しており、上記コーティングが、チタニアを含む酸化物材料上に担持されたバナジウム酸化物を含み、該バナジウム酸化物は、バナジウム(IV)酸化物及びバナジウム(V)酸化物の1種以上であり、及び上記酸化物材料の85~95質量%がチタニアで構成され、及び更に、バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物を含む、コーティング、
を含む選択的触媒還元触媒に関する。
【0014】
本発明に関し、好ましくはコーティングの80~95質量%、より好ましくは80~90質量%が酸化物材料で構成される。
【0015】
混合酸化物に関し、混合酸化物中のバナジウムは、バナジウム(IV)及びバナジウム(V)の1種以上であることが好ましい。
混合酸化物に関し、好ましくは混合酸化物は、バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上、より好ましくは鉄、エルビウム、ビスマス、及びアンチモンの1種以上、より好ましくは鉄及びアンチモンの1種以上との混合酸化物である。混合酸化物は、より好ましくは、バナジウム及び鉄の混合酸化物である。従って、コーティングがバナジウム及び鉄の混合酸化物を含むことが好ましい。
【0016】
好ましくは、バナジウム酸化物が、Vとして計算して、触媒中に、(lv1)/(g/in)の積載量で存在し、上記混合酸化物のバナジウムが、Vとして計算して、触媒中に、(lv2)/(g/in)の積載量で存在し、比(lv1):(lv2)が、0.1:1~3:1の範囲であり、より好ましくは0.1:1~2:1の範囲、より好ましくは0.2:1~1.5:1の範囲である。より好ましくは、比(lv1):(lv2)は、0.2:1~1.3:1の範囲である。
【0017】
従って、本発明は好ましくは、ディーゼルエンジンの排ガスを処理するための選択的触媒還元触媒であって、
(i)流通基材であって、入口端、出口端、上記入口端から上記出口端へと延びる基材軸長さ、及び上記流通基材を通って延びる上記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材;
(ii)上記基材の上記内壁の表面上に配置されたコーティングであって、上記表面が、上記通路と上記内壁の間の界面(インターフェース)を規定しており、上記コーティングが、チタニアを含む酸化物材料上に担持されたバナジウム酸化物を含み、及び更にバナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物を含み、
上記バナジウム酸化物が、Vとして計算して、触媒中に、(lv1)/(g/in)の積載量で存在し、上記混合酸化物のバナジウムが、Vとして計算して、触媒中に、(lv2)/(g/in)の積載量で存在し、比(lv1):(lv2)が、0.1:1~3:1の範囲、より好ましくは0.1:1~2:1の範囲である選択的触媒還元触媒に関する。
【0018】
本発明に従えば、好ましくは、バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物中で、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上の、バナジウムに対するモル比、X:Vは、1:1.5~1.5:1の範囲であり、より好ましくは1:1.2~1.2:1の範囲、より好ましくは1:1.1~1.1:1の範囲である。より好ましくは、バナジウム及び鉄の混合酸化物中で、鉄のバナジウムに対するモル比は、1:1.5~1.5:1の範囲、より好ましくは1:1.2~1.2:1の範囲、より好ましくは1:1.1~1.1:1の範囲である。
【0019】
好ましくは、コーティング中に含まれるバナジウムの量は、Vとして計算して、コーティングの合計質量に基づいて、2.5~8質量%の範囲、より好ましくは3~7質量%の範囲、より好ましくは3.5~6.5質量%の範囲である。本発明において、バナジウムの量は、バナジウム酸化物からのバナジウム、及び混合酸化物からのバナジウムの量を表している。
【0020】
本発明に従えば、好ましくは、触媒中に、バナジウム酸化物は、0.02~0.5g/inの範囲の積載量、より好ましくは0.03~0.2g/inの範囲、より好ましくは0.04~0.15g/inの範囲の積載量で存在する。
【0021】
好ましくは、酸化物材料は触媒中に、1~8g/inの範囲の積載量、より好ましくは1.5~5g/inの範囲の積載量、より好ましくは2~4.5g/inの範囲の積載量、より好ましくは3~4.5g/inの範囲の積載量で存在する。
【0022】
従ってより好ましくは、触媒中に、バナジウム酸化物は、0.02~0.5g/inの範囲の積載量で存在し、及び酸化物材料は、1.5~5g/inの範囲の積載量で存在する。
【0023】
好ましくは、触媒中に、混合酸化物は、0.05~1g/inの範囲の積載量で存在し、より好ましくは、0.08~0.7g/inの範囲の積載量で存在し、より好ましくは、0.1~0.5g/inの範囲の積載量で存在する。
【0024】
好ましくは、コーティングは更に、酸化物バインダーを含み、該酸化物バインダーはより好ましくは、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、及びZr、Al、Ti及びSiの2種以上を含む混合酸化物の1種以上を含む。上記酸化物バインダーはより好ましくは、アルミナ及びシリカの1種以上を含み、より好ましくはシリカを含む。より好ましくは、触媒中で、コーティングは酸化物バインダーを、0.02~0.5g/inの範囲の積載量、より好ましくは0.05~0.4g/inの範囲の積載量、より好ましくは0.1~0.3g/inの範囲の積載量で含む。
【0025】
好ましくは、コーティングの98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%が、バナジウム酸化物、チタニアを含む酸化物材料、バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物、及び好ましくは上記に定義した酸化物バインダーで構成される。より好ましくは、コーティングの98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%が、バナジウム酸化物、チタニアを含む酸化物材料、バナジウム及び鉄の混合酸化物及びシリカを含む酸化物バインダーで構成される。
【0026】
好ましくは、触媒中に、コーティングは、1.5~10g/inの範囲の積載量、より好ましくは2~8g/inの範囲の積載量、より好ましくは2.5~6.5g/inの範囲の積載量、より好ましくは3~6g/inの範囲の積載量、より好ましくは3.5~6g/inの範囲の積載量で存在する。
【0027】
好ましくは、99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%のバナジウム酸化物(酸化バナジウム)が、バナジウムと酸素で構成される。バナジウム酸化物がバナジウムと酸素で構成されることが好ましい。
【0028】
好ましくは、コーティングの0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%、より好ましくは0~0.00001質量%が、ゼオライト材料で構成される。より好ましくは、コーティングはゼオライト材料を含まない。
【0029】
好ましくは、コーティングの0~0.001質量%、より好ましくは0~0.0001質量%、より好ましくは0~0.00001質量%が、パラジウム及び白金で構成され、より好ましくはパラジウム、白金、及びロジウムで構成され、より好ましくはパラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウムで構成され、より好ましくは貴金属で構成される。より好ましくは、コーティングは貴金属を含まない。
【0030】
好ましくは、コーティングは、基材軸長さの95~100%、より好ましくは98~100%、より好ましくは99~100%を覆う。
【0031】
基材に関し、触媒の流通基材がセラミック又は金属性物質を含むことが好ましい。
【0032】
基材に関し、好ましくは、触媒の流通基材がセラミック物質を含み、セラミック物質から構成されることがより好ましく、ここでセラミック物質は、より好ましくは、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケートの1種以上を含み、より好ましくはこれら1種以上で構成され、より好ましくはコージライト、又はムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、より好ましくはスピネル、及びチタニア、より好ましくはシリコンカーバイド及びコージライトの1種以上、より好ましくはコージライトを含むか、これらで構成される。この替わりに、好ましくは、触媒の流通基材は、金属性物質を含み、より好ましくは金属性物質で構成され、ここで金属性物質は好ましくは酸素と、鉄、クロミウム、及びアルミニウムの1種以上とを含み、より好ましくはこれらから構成される。
【0033】
好ましくは、触媒の98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%が、流通基材及びコーティングで構成される。
【0034】
本願発明について、好ましくは、(ii)に従うコーティングは、2つ以上のコートを含み、より好ましくは2つのコートで構成される。より好ましくは、2つ以上のコートは、同じ化学組成を有する。
【0035】
本発明は更に、選択的触媒還元触媒、好ましくは本発明に従う選択的触媒還元触媒を製造するための方法であって、
(a)流通基材であって、入口端、出口端、前記入口端から前記出口端へと延びる基材軸長さ、及び前記流通基材を通って延びる前記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材を準備する工程;
(b)バナジウム酸化物の溶液、チタニアを含む酸化物材料の粉、水、バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物、及び好ましくは酸化物バインダー、より好ましくは上記に定義した酸化物バインダーを含むスラリーを準備する工程;
(c)(b)で得られたスラリーを(a)に従う流通基材の内壁の表面上に配置する工程であって、前記表面が、前記通路と前記内壁の間の界面(インターフェース)を規定しており、スラリー処理された基材を得る工程;
(d)任意に、(c)で得られたスラリー処理された基材を乾燥する工程;
(e)(c)で得られたスラリー処理された基材、又は(d)で得られた乾燥された、スラリー処理された基材をか焼し、被覆された基材を得る工程;
及び任意に、
(c’)(b)で得られたスラリーを、(e)で得られた基材上に配置されたコーティングの表面に配置する工程;
(d’)任意に、(c’)で得られたスラリー処理された基材を乾燥させる工程;
(e’)(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材をか焼する工程;
を含み、(e)又は(e’)から選択的触媒還元触媒が得られる方法に関する。
(b)に関し、好ましくは、工程(b)が、
(b.1)バナジウム酸化物の溶液、水、チタニアを含む酸化物材料の粉、及び好ましくは有機分散剤を混合してスラリーを得る工程;
(b.2)(b.1)で得られたスラリーの水相のpHを、6~8の範囲の値、好ましくは6.5~7.5の範囲の値に、及び好ましくは水酸化アンモニウム溶液を加えることによって調整する工程;
(b.3)バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物の粉を(b.2)で得られたスラリーに加える工程;
(b.4)より好ましくは、酸化物バインダーを、(b.3)で得られた混合物に加え、最終的なスラリーを得る工程;
を含む。
【0036】
工程(c)に関し、この工程では、スラリーを、好ましくは基材の軸長さの95~100%、より好ましくは98~100%、より好ましくは99~100%にわたって配置する。
【0037】
本発明に従えば、工程(c)に従うスラリーの配置は、好ましくは基材をスプレーがけ(噴霧)又は浸漬させることによって行われる。
【0038】
工程(d)に従えば、工程(c)で得られたスラリー処理された基材は気体雰囲気中で、90~160℃の範囲の温度で、より好ましくは110~130℃の温度範囲で乾燥される。
【0039】
工程(d)に従えば、好ましくは、工程(c)で得られたスラリー処理された基材は、気体雰囲気中で、10~30分の範囲の期間、乾燥される。
【0040】
好ましくは、工程(d)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材は水分含有量が、0~30%の範囲、より好ましくは5~25%の範囲、より好ましくは15~20%の範囲である。
【0041】
工程(d)に関し、気体雰囲気は、空気、リーン空気(lean air)及び酸素の1種以上、より好ましくは空気を含むことが好ましく、空気、リーン空気及び酸素の1種以上、より好ましくは空気であることがより好ましい。
【0042】
工程(e)に関し、工程(c)で得られたスラリー処理された基材、又は工程(d)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材は、好ましくは、気体雰囲気中で、300~600℃の範囲の温度、より好ましくは400~500℃の範囲の温度でか焼される。
【0043】
工程(e)に従えば、好ましくは、工程(c)で得られたスラリー処理された基材、又は工程(d)で得られた、その上に配置されたコーティングを有する基材は、2~6時間の範囲の期間、より好ましくは3~5時間の範囲の期間、気体雰囲気中でか焼される。
【0044】
工程(e)に関し、気体雰囲気が、空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気を含むことが好ましく、より好ましくは空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気である。
【0045】
従って、本願発明は好ましくは、選択的触媒還元触媒、好ましくは本発明に従う選択的触媒還元触媒を製造するための方法であって、
(a)流通基材であって、入口端、出口端、前記入口端から上記出口端へと延びる基材軸長さ、及び上記流通基材を通って延びる前記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材を準備する工程;
(b)バナジウム酸化物の溶液、チタニアを含む酸化物材料の粉、水、バナジウムと鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物、及び好ましくは酸化物バインダーを含むスラリーを準備する工程;
を含み、工程(b)が、
(b.1)バナジウム酸化物の溶液、水、チタニアを含む酸化物材料の粉、及び好ましくは有機分散剤を混合してスラリーを得る工程;
(b.2)(b.1)で得られたスラリーの水相のpHを、6~8の範囲の値、より好ましくは6.5~7.5の範囲の値に、及びより好ましくは水酸化アンモニウム溶液を加えることによって調整する工程;
(b.3)バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物の粉を(b.2)で得られたスラリーに加える工程;
(b.4)好ましくは、酸化物バインダーを、(b.3)で得られた混合物に加え、最終的なスラリーを得る工程;
を含み、更に上記方法は、
(c)(b.3)、より好ましくは(b.4)で得られたスラリーを、スプレーがけ(噴霧)、又は浸漬によって、(a)に従う流通基材の内壁の表面上に配置し、スラリー処理された基材を得る工程(ここで上記表面が、上記通路と上記内壁の間の界面を規定している);
(d)任意に、(c)で得られたスラリー処理された基材を乾燥する工程;
(e)(c)で得られたスラリー処理された基材、又は(d)で得られた乾燥された、スラリー処理された基材を、気体雰囲気中で、300~600℃の範囲の温度でか焼し、被覆された基材を得る工程;
及び任意に、
(c’)(b)で得られたスラリーを、(e)で得られた基材上に配置されたコーティングの表面に配置する工程;
(d’)任意に、(c’)で得られたスラリー処理された基材を乾燥させる工程;
(e’)(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材をか焼する工程;
を含み、(e)又は(e’)から選択的触媒還元触媒が得られる方法に関する。
【0046】
本願発明において、工程(c’)では、好ましくは基材軸長さの95~100%、好ましくは98~100%、より好ましくは99~100%にスラリーが配置されることを含む。
【0047】
本願発明に従えば、工程(c’)に従うスラリーの配置は、好ましくは、基材へのスプレーがけ(噴霧)又は基材を浸漬させることによって行われる。。
工程(d’)に従えば、好ましくは、工程(c’)で得られたスラリー処理された基材は、気体雰囲気中で、90~160℃の範囲の温度、より好ましくは110~150℃の範囲の温度で乾燥される。
【0048】
工程(d’)に従えば、好ましくは、工程(c’)で得られたスラリー処理された基材は、気体雰囲気中で、10~30分間の期間にわたり乾燥される。
【0049】
好ましくは、工程(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材は、水分含有量が0~30%の範囲、より好ましくは5~25%の範囲、より好ましくは15~20%の範囲である。
【0050】
工程(d’)に関し、気体雰囲気が、空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気を含むことが好ましく、より好ましくは空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気である。
【0051】
工程(e’)に従えば、好ましくは、工程(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は工程(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材は、気体雰囲気中で、300~600℃の範囲の温度、より好ましくは400~500℃の範囲の温度でか焼される。
【0052】
工程(e’)に従えば、好ましくは、工程(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は工程(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材は、2~6時間の範囲、より好ましくは3~5時間の範囲の期間、気体雰囲気内で、か焼される。
【0053】
工程(e’)に関し、気体雰囲気が、空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気を含むことが好ましく、より好ましくは空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気である。
【0054】
上記方法は、特に好ましくは、
(a)流通基材であって、入口端、出口端、上記入口端から上記出口端へと延びる基材軸長さ、及び上記流通基材を通って延びる上記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材を準備する工程;
(b)バナジウム酸化物の溶液、チタニアを含む酸化物材料の粉、水、バナジウムと鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物、及び好ましくは酸化物バインダー、より好ましくは上記に定義した酸化物バインダーを含むスラリーを準備する工程;
(c)(b)で得られたスラリーを(a)に従う流通基材の内壁の表面上に配置する工程であって、上記表面が、上記通路と上記内壁の間の界面(インターフェース)を規定しており、スラリー処理された基材を得る工程;
(d)任意に、(c)で得られたスラリー処理された基材を乾燥する工程;
(e)(c)で得られたスラリー処理された基材、又は(d)で得られた乾燥された、スラリー処理された基材をか焼し、被覆された基材を得る工程;
及び任意に、
(c’)(b)で得られたスラリーを、(e)で得られた基材上に配置されたコーティングの表面に配置する工程;
(d’)任意に、(c’)で得られたスラリー処理された基材を乾燥させる工程;
(e’)(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材をか焼する工程;
からなり、(e)又は(e’)から選択的触媒還元触媒が得られる。
【0055】
本発明は更に、選択的触媒還元触媒、好ましくは本発明に従う方法によって得ることができる、又は得られた、本発明に従う選択的触媒還元触媒に関する。
【0056】
本発明は更に、ディーゼルエンジンから排出される排ガス流を処理するためのガス処理システムであって、本発明に従う第1の選択的触媒還元触媒、及びディーゼル酸化触媒、アンモニア酸化触媒、第2の選択的触媒還元触媒、フィルター、好ましくは触媒化煤フィルターの1つ以上を含む排ガス処理システムに関する。
【0057】
本発明の第1の局面に従えば、好ましくは、本発明に従う第1の選択的触媒還元触媒が、入口端、出口端を含み、上記第1の選択的触媒還元触媒の入口端が、ディーゼルエンジンの下流で、及び流体的に連結されており、及び上記システムが更に、
入口端及び出口端を有するアンモニア酸化触媒;
入口端及び出口端を有するディーゼル酸化触媒;
入口端及び出口端を有するフィルター、好ましくは触媒化煤フィルターを含み、
第1の選択的触媒還元触媒の出口端が、アンモニア酸化触媒の入口端の上流に配置され、アンモニア酸化触媒の出口端が、ディーゼル酸化触媒の入口端の上流に配置され、及びディーゼル酸化触媒の出口端が、フィルターの入口端の上流に配置される。
【0058】
本発明の第1の局面に従えば、好ましくは、このシステムは更に、フィルターの出口端の下流に、入口端及び出口端を有する第2の選択的触媒還元触媒、より好ましくは本発明に従う選択的触媒還元触媒、及び入口端及び出口端を有する第2のアンモニア酸化触媒を含み、ここで、第2のアンモニア酸化触媒の入口端は、第2の選択的触媒還元触媒の出口端の下流に配置される。
【0059】
本発明の第2の局面に従えば、好ましくは、システムは、入口端及び出口端を通するディーゼル酸化触媒を含み、ディーゼル酸化触媒の入口端は、ディーゼルエンジンと、及び下流で流体的に結合しており、及び更に、入口端及び出口端を有するフィルター、好ましくは触媒化煤フィルター(ここで、フィルターの入口端は、ディーゼル酸化触媒の下流に配置される)を含み、ここで本発明に従う第1の選択的触媒還元触媒が、入口端及び出口端を有し、上記第1の選択的触媒還元触媒の入口端が、フィルターの出口端の下流に配置される。
【0060】
本発明の第2の局面に従えば、好ましくは、排ガス処理システムは更に、入口端及び出口端を有するアンモニア酸化触媒を含み、ここでアンモニア酸化触媒の入口端は、第1の選択的触媒還元触媒の出口端の下流に配置される。
【0061】
本発明において、好ましくは、上記システムは、1つ以上の流体注入器を含み、各流体注入器は、選択的触媒還元触媒の上流に配置されており、ここで流体はより好ましくは、尿素(urea)である。
【0062】
本発明は更に、本発明に従う選択的触媒還元触媒を、排ガス中に含まれる、より好ましくはディーゼルエンジンからの排ガス中に含まれる窒素酸化物の選択的触媒還元のために使用する方法に関する。
【0063】
本発明は更に、窒素酸化物の選択的触媒還元の方法であって、窒素酸化物は排ガス流中に含まれており、及び上記方法は、
(1)排ガス流を、好ましくはディーゼルエンジンから供給する工程;
(2)(1)で供給された排ガスを、本発明に従う選択的触媒還元触媒に通す工程、
を含む。
【0064】
本発明を、以下の実施形態及び記載した従属性(dependency)と参照性(back-reference)から得られる実施形態の組合せによって説明する。特に、実施形態の範囲が記載された各場合において、例えば、「実施形態1~4の何れか1つに記載の選択的触媒還元触媒」等の記載に関し、この範囲の各実施形態は、この技術分野の当業者にとって、明確に開示されていることを意味することが注記され、すなわちこの記載は、この技術分野の当業者にとって、「実施形態1、2、3及び4の何れか1つに記載の選択的触媒還元触媒」と同義であることが注記される。更に以下の実施形態の記載は、保護範囲を決定する請求項の記載ではないが、しかし本発明の一般的な及び好ましい局面に向けられた記載の適切な構成部分を表していることが、注記される。
【0065】
『実施形態1』
ディーゼルエンジンの排ガスを処理するための選択的触媒還元触媒であって、
(i)流通基材であって、入口端、出口端、上記入口端から上記出口端へと延びる基材軸長さ、及び上記流通基材を通って延びる上記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材;
(ii)上記基材の上記内壁の表面上に配置されたコーティングであって、上記表面が、上記通路と上記内壁の間の界面(インターフェース)を規定しており、上記コーティングが、チタニアを含む酸化物材料上に担持されたバナジウム酸化物を含み、及び更にバナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物を含む、コーティング、
を含む選択的触媒還元触媒。
【0066】
『実施形態2』
上記酸化物材料上に担持されたバナジウム酸化物が、酸化バナジウム(II)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、及び酸化バナジウム(V)の1種以上、好ましくは酸化バナジウム(IV)、及び酸化バナジウム(V)の1種以上である、実施形態1に記載の選択的触媒還元触媒。
【0067】
『実施形態3』
上記酸化物材料が更に、1種以上の酸化物、好ましくはセリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ニオビウム酸化物、シリコン酸化物、及びタングステン酸化物の1種以上、好ましくは、セリウム酸化物、シリコン酸化物、及びタングステン酸化物の1種以上、より好ましくは、シリコン酸化物、及びタングステン酸化物の1種以上を含む、実施形態1又は2に記載の選択的触媒還元触媒。
【0068】
『実施形態4』
1種以上の酸化物、好ましくはタングステン酸化物又は好ましくはタングステン酸化物及びシリコン酸化物が、チタニア上に含浸されている、実施形態3に記載の選択的触媒還元触媒。
【0069】
『実施形態5』
前記酸化物材料の75~100質量%、好ましくは80~99質量%、より好ましくは85~95質量%が、チタニアで構成されている実施形態1~4の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0070】
『実施形態6』
酸化物材料の98~100質量%、好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%が、チタニアとタングステン酸化物で構成され、より好ましくは酸化物材料の80~99質量%、より好ましくは85~95質量%がチタニアで構成され、及び酸化物材料の1~20質量%、より好ましくは5~15質量%が、タングステン酸化物で構成されている実施形態1~5の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0071】
『実施形態7』
酸化物材料の98~100質量%、好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%が、チタニア、タングステン酸化物、及びシリコン酸化物から構成され、ここでより好ましくは、酸化物材料の80~98質量%、より好ましくは83~93質量%がチタニアで構成され、及び酸化物材料の1~20質量%、より好ましくは5~12質量%がタングステン酸化物で構成され、及び酸化物材料の1~15質量%、より好ましくは2~8質量%がシリコン酸化物で構成されている実施形態1~5の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0072】
『実施形態8』
コーティングの80~95質量%、好ましくは80~90質量%が酸化物材料で構成されている実施形態1~7の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0073】
『実施形態9』
混合酸化物のバナジウムが、バナジウム(IV)及びバナジウム(V)の1種以上である実施形態1~8の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0074】
『実施形態10』
上記混合酸化物が、バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物、好ましくは、鉄、エルビウム、ビスマス、及びアンチモンの1種以上、より好ましくは鉄及びアンチモンの1種以上、より好ましくは鉄との混合酸化物である実施形態1~9の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0075】
『実施形態11』
上記コーティングが、バナジウムと鉄との混合酸化物を含む実施形態10に記載の選択的触媒還元触媒。
【0076】
『実施形態12』
バナジウム酸化物が、Vとして計算して、触媒中に、(lv1)/(g/in)の積載量で存在し、前記混合酸化物のバナジウムが、Vとして計算して、触媒中に、(lv2)/(g/in)の積載量で存在し、比(lv1):(lv2)が、0.1:1~3:1の範囲、好ましくは0.1:1~2:1の範囲、より好ましくは0.2:1~1.5:1の範囲、より好ましくは、0.2:1~1.3:1の範囲である実施形態1~11の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0077】
『実施形態13』
バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物中で、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上の、バナジウムに対するモル比、X:Vは、1:1.5~1.5:1の範囲であり、好ましくは1:1.2~1.2:1の範囲、より好ましくは1:1.1~1.1:1の範囲である実施形態1~12の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0078】
『実施形態14』
上記コーティング中に含まれるバナジウムの量が、バナジウムをVとして計算して、上記コーティングの合計質量に対して、2.5~8質量%の範囲、より好ましくは3~7質量%の範囲、より好ましくは3.5~6.5質量%である実施形態1~13の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0079】
『実施形態15』
触媒中に、バナジウム酸化物が、0.02~0.5g/inの範囲、好ましくは0.03~0.2g/inの範囲、より好ましくは0.04~0.15g/inの範囲で存在する実施形態1~14の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0080】
『実施形態16』
触媒中に、上記酸化物材料が、1~8g/inの範囲、好ましくは1.5~5g/inの範囲、より好ましくは2~4.5g/inの範囲、より好ましくは3~4.5g/inの範囲の積載量で存在する実施形態1~15の何れか1の実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0081】
『実施形態17』
触媒中に、混合酸化物は、0.05~1g/inの範囲の積載量で存在し、好ましくは、0.08~0.7g/inの範囲の積載量で存在し、より好ましくは、0.1~0.5g/inの範囲の積載量で存在する実施形態1~16の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0082】
『実施形態18』
上記コーティングが更に、酸化物バインダーを含み、該酸化物バインダーは好ましくは、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、及びZr、Al、Ti及びSiの2種以上を含む混合酸化物の1種以上を含み、前記酸化物バインダーはより好ましくは、アルミナ及びシリカの1種以上を含み、より好ましくはシリカを含む実施形態1~17の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0083】
『実施形態19』
触媒中で、コーティングは酸化物バインダーを、0.02~0.5g/inの範囲の積載量、好ましくは0.05~0.4g/inの範囲の積載量、より好ましくは0.1~0.3g/inの範囲の積載量で含む実施形態18に記載の選択的触媒還元触媒。
【0084】
『実施形態20』
コーティングの98~100質量%、好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%が、バナジウム酸化物で構成され、上記酸化物材料がチタニア、バナジウムと鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物、及び好ましくは実施形態18又は19に記載の酸化物バインダーを含む実施形態1~19の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0085】
『実施形態21』
触媒中で、前記コーティングは、1.5~10g/inの範囲の積載量、好ましくは2~8g/inの範囲の積載量、より好ましくは2.5~6.5g/inの範囲の積載量、より好ましくは、3~6g/inの範囲の積載量、より好ましくは、3.5~6g/inの範囲の積載量で存在する実施形態1~20の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0086】
『実施形態22』
99~100質量%、好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%のバナジウム酸化物が、バナジウムと酸素で構成される実施形態1~21の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0087】
『実施形態23』
バナジウム酸化物が、バナジウムと酸素から成る実施形態1~22の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0088】
『実施形態24』
コーティングの0~0.001質量%、好ましくは0~0.0001質量%、より好ましくは0~0.00001質量%が、ゼオライト材料で構成される実施形態1~23の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0089】
『実施形態25』
コーティングがゼオライト材料を含まない実施形態24に記載の選択的触媒還元触媒。
【0090】
『実施形態26』
コーティングの0~0.001質量%、好ましくは0~0.0001質量%、より好ましくは0~0.00001質量%が、パラジウム及び白金で構成され、好ましくはパラジウム、白金、及びロジウムで構成され、より好ましくはパラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、及びオスミウムで構成され、より好ましくは貴金属で構成される実施形態1~25の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0091】
『実施形態27』
コーティングは貴金属を含まない実施形態26に記載の選択的触媒還元触媒。
【0092】
『実施形態28』
コーティングが、基材軸長さの95~100%、好ましくは98~100%、より好ましくは99~100%を覆う実施形態1~27の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0093】
『実施形態29』
触媒の流通基材がセラミック又は金属性物質を含む実施形態1~28の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0094】
『実施形態30』
触媒の流通基材がセラミック物質を含み、好ましくはセラミック物質から成り、セラミック物質は、好ましくはアルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケートの1種以上を含み、より好ましくはこれら1種以上で構成され、好ましくはコージライト、又はムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、及びチタニア、より好ましくはシリコンカーバイド及びコージライトの1種以上、より好ましくはコージライトを含むか、これらで構成され、又は触媒の流通基材は、金属性物質を含み、より好ましくは金属性物質で構成され、ここで金属性物質は好ましくは酸素と、鉄、クロミウム、及びアルミニウムの1種以上とを含み、より好ましくはこれらから構成される実施形態1~29の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0095】
『実施形態31』
触媒の98~100質量%、好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%、より好ましくは99.9~100質量%が、流通基材及びコーティングで構成される実施形態1~30の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0096】
『実施形態32』
(ii)に従うコーティングが、2つ以上のコートを含み、好ましくは2つのコートから構成される実施形態1~31の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0097】
『実施形態33』
上記2つ以上のコートは、同じ化学組成を有する実施形態32に記載の選択的触媒還元触媒。
【0098】
『実施形態34』
選択的触媒還元触媒、好ましくは実施形態1~33の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒を製造するための方法であって、
(a)流通基材であって、入口端、出口端、上記入口端から上記出口端へと延びる基材軸長さ、及び上記流通基材を通って延びる前記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材を準備する工程;
(b)バナジウム酸化物の溶液、チタニアを含む酸化物材料の粉、水、バナジウムと鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物を含むスラリーを準備する工程;
(c)(b)で得られたスラリーを(a)に従う流通基材の内壁の表面上に配置する工程であって、上記表面が、前記通路と前記内壁の間の界面(インターフェース)を規定しており、スラリー処理された基材を得る工程;
(d)任意に、(c)で得られたスラリー処理された基材を乾燥する工程;
(e)(c)で得られたスラリー処理された基材、又は(d)で得られた乾燥された、スラリー処理された基材をか焼し、被覆された基材を得る工程;
及び任意に、
(c’)(b)で得られたスラリーを、(e)で得られた基材上に配置されたコーティングの表面に配置する工程;
(d’)任意に、(c’)で得られたスラリー処理された基材を乾燥させる工程;
(e’)(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材をか焼する工程;
を含み、(e)又は(e’)から選択的触媒還元触媒が得られる方法。
【0099】
『実施形態35』
工程(b)が、
(b.1)バナジウム酸化物の溶液、水、チタニアを含む酸化物材料の粉、及び好ましくは有機分散剤を混合してスラリーを得る工程;
(b.2)(b.1)で得られたスラリーの水相のpHを、6~8の範囲の値、好ましくは6.5~7.5の範囲の値に、及び好ましくは水酸化アンモニウム溶液を加えることによって調整する工程;
(b.3)バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物の粉を(b.2)で得られたスラリーに加える工程;
(b.4)好ましくは、酸化物バインダーを、(b.3)で得られた混合物に加え、最終的なスラリーを得る工程;
を含む実施形態34に記載の方法。
【0100】
『実施形態36』
工程(c)が、基材軸長さの95~100%、好ましくは98~100%、より好ましくは99~100%に渡り配置されることを含む実施形態34又は35に記載の方法。
【0101】
『実施形態37』
工程(c)に従うスラリーの配置が基材へのスプレーがけ(噴霧)、又は基材を浸漬させることによって行われる実施形態34~36の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0102】
『実施形態38』
工程(d)に従い、工程(c)で得られたスラリー処理された基材が、気体雰囲気中で、90~160℃の範囲の温度で、好ましくは110~130℃の温度範囲で乾燥される実施形態34~37の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0103】
『実施形態39』
工程(d)に従い、工程(c)で得られたスラリー処理された基材は、気体雰囲気中で、10~30分の範囲の期間、乾燥される実施形態34~38の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0104】
『実施形態40』
工程(d)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材は、水分含有量が、0~30%の範囲、好ましくは5~25%の範囲、より好ましくは15~20%の範囲である実施形態34~39の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0105】
『実施形態41』
気体雰囲気は、空気、リーン空気(lean air)及び酸素の1種以上、より好ましくは空気を含み、好ましくは空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気である実施形態38~40の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0106】
『実施形態42』
工程(e)に従い、工程(c)で得られたスラリー処理された基材、又は工程(d)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材は、気体雰囲気中で、300~600℃の範囲の温度、好ましくは400~500℃の範囲の温度でか焼される実施形態34~41の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0107】
『実施形態43』
工程(e)に従い、工程(c)で得られたスラリー処理された基材、又は工程(d)で得られた、その上に配置されたコーティングを有する基材は、2~6時間の範囲の期間、好ましくは3~5時間の範囲で気体雰囲気中でか焼される実施形態34~42の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0108】
『実施形態44』
気体雰囲気は、空気、リーン空気及び酸素の1種以上、より好ましくは空気を含み、好ましくは空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気である実施形態42又は43に記載の方法。
【0109】
『実施形態45』
工程(c’)が、基材軸長さの95~100%、好ましくは98~100%、より好ましくは99~100%にスラリーが配置されることを含む実施形態34~44の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0110】
『実施形態46』
工程(c’)に従うスラリーの配置は、基材をスプレーがけ(噴霧)又は浸漬させることによって行われる実施形態34~45の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0111】
『実施形態47』
工程(d’)に従い、工程(c’)で得られたスラリー処理された基材は、気体雰囲気中で、90~160℃の範囲の温度、好ましくは110~150℃の範囲の温度で乾燥される実施形態34~46の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0112】
『実施形態48』
工程(d’)に従い、工程(c’)で得られたスラリー処理された基材は、気体雰囲気中で、10~30分間の範囲の期間にわたり乾燥される実施形態34~47の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0113】
『実施形態49』
工程(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材は、水分含有量が0~30%の範囲、好ましくは5~25%の範囲、より好ましくは15~20%の範囲である実施形態34~48の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0114】
『実施形態50』
気体雰囲気は、空気、リーン空気及び酸素の1種以上、より好ましくは空気を含み、好ましくは空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気である実施形態47~49の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0115】
『実施形態51』
工程(e’)に従い、工程(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は工程(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材は、気体雰囲気中で、300~600℃の範囲の温度、好ましくは400~500℃の範囲の温度でか焼される実施形態34~50の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0116】
『実施形態52』
工程(e’)に従い、工程(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は工程(d’)で得られた、乾燥されたスラリー処理された基材は、2~6時間の範囲の期間、好ましくは3~5時間の範囲の期間、気体雰囲気中でか焼される実施形態34~51の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0117】
『実施形態53』
気体雰囲気が、空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気を含み、好ましくは空気、リーン空気、及び酸素の1種以上、より好ましくは空気である実施形態51又は52に記載の方法。
【0118】
『実施形態54』
(a)流通基材であって、入口端、出口端、上記入口端から上記出口端へと延びる基材軸長さ、及び上記流通基材を通って延びる上記流通基材の内壁によって規定される複数の通路を含む流通基材を準備する工程;
(b)バナジウム酸化物の溶液、チタニアを含む酸化物材料の粉、水、バナジウムと、鉄、エルビウム、ビスマス、セリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、スカンジウム、テルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、及びアンチモンの1種以上との混合酸化物の粉、及び好ましくは酸化物バインダーを含むスラリーを準備する工程;
(c)(b)で得られたスラリーを(a)に従う流通基材の内壁の表面上に配置する工程であって、上記表面が、上記通路と上記内壁の間の界面(インターフェース)を規定しており、スラリー処理された基材を得る工程;
(d)任意に、(c)で得られたスラリー処理された基材を乾燥する工程;
(e)(c)で得られたスラリー処理された基材、又は(d)で得られた乾燥された、スラリー処理された基材をか焼し、被覆された基材を得る工程;
及び任意に、
(c’)(b)で得られたスラリーを、(e)で得られた基材上に配置されたコーティングの表面に配置する工程;
(d’)任意に、(c’)で得られたスラリー処理された基材を乾燥させる工程;
(e’)(c’)で得られたスラリー処理された基材、又は(d’)で得られた乾燥されたスラリー処理された基材をか焼する工程;
から構成され、(e)又は(e’)から選択的触媒還元触媒が得られる実施形態34~53の何れか1つの実施形態に記載の方法。
【0119】
『実施形態55』
実施形態34~54の何れか1つの実施形態に記載の記載の方法によって得ることが可能な、又は得られた選択的触媒還元触媒、好ましくは実施形態1~33の何れか1つの実施形態に記載の選択的触媒還元触媒。
【0120】
『実施形態56』
ディーゼルエンジンから排出される排ガス流を処理するためのガス処理システムであって、実施形態1~33及び55の何れか1つの実施形態に記載の、第1の選択的触媒還元触媒、及びディーゼル酸化触媒、アンモニア酸化触媒、第2の選択的触媒還元触媒、フィルター、好ましくは触媒化煤フィルターの1つ以上を含む排ガス処理システム。
【0121】
『実施形態57』
実施形態1~33及び55の何れか1つの実施形態に従う第1の選択的触媒還元触媒が、入口端及び出口端を含み、上記第1の選択的触媒還元触媒の入口端が、ディーゼルエンジンの下流で、及び流体的に連結されており、及び上記システムが更に、
入口端及び出口端を有するアンモニア酸化触媒;
入口端及び出口端を有するディーゼル酸化触媒;
入口端及び出口端を有するフィルター、好ましくは触媒化煤フィルターを含み、
第1の選択的触媒還元触媒の出口端が、アンモニア酸化触媒の入口端の上流に配置され、アンモニア酸化触媒の出口端が、ディーゼル酸化触媒の入口端の上流に配置され、及びディーゼル酸化触媒の出口端が、フィルターの入口端の上流に配置される、実施形態56に記載の排ガス処理システム。
【0122】
『実施形態58』
フィルターの出口端の下流に、入口端及び出口端を有する第2の選択的触媒還元触媒、好ましくは実施形態1~33及び55の何れか1つの実施形態に従う選択的触媒還元触媒、及び入口端及び出口端を有する第2のアンモニア酸化触媒を含み、ここで、第2のアンモニア酸化触媒の入口端は、第2の選択的触媒還元触媒の出口端の下流に配置される実施形態57に記載の排ガス処理システム。
【0123】
『実施形態59』
入口端及び出口端を通するディーゼル酸化触媒を含み、ディーゼル酸化触媒の入口端は、ディーゼルエンジンと、及び下流で流体的に結合しており、及び更に、入口端及び出口端を有するフィルター、好ましくは触媒化煤フィルター(ここで、フィルターの入口端は、ディーゼル酸化触媒の下流に配置される)を含み、ここで実施形態1~33及び55の何れか1つの実施形態に従う第1の選択的触媒還元触媒が、入口端及び出口端を有し、上記第1の選択的触媒還元触媒の入口端が、フィルターの出口端の下流に配置される実施形態56に記載の排ガス処理システム。
【0124】
『実施形態60』
入口端及び出口端を有するアンモニア酸化触媒を含み、ここでアンモニア酸化触媒の入口端は、第1の選択的触媒還元触媒の出口端の下流に配置される実施形態59に記載の排ガス処理システム。
【0125】
『実施形態61』
1つ以上の流体注入器を更に含み、各流体注入器は、選択的触媒還元触媒の上流に配置されており、ここで流体はより好ましくは、尿素(urea)である実施形態56~60の何れか1つの実施形態に記載の排ガス処理システム。
【0126】
『実施形態62』
実施形態1~33及び55の何れか1つの実施形態に従う選択的触媒還元触媒を、排ガス中に含まれる、好ましくはディーゼルエンジンからの排ガス中に含まれる窒素酸化物の選択的触媒還元のために使用する方法。
【0127】
『実施形態63』
窒素酸化物の選択的触媒還元の方法であって、窒素酸化物は排ガス流中に含まれており、及び
(1)排ガス流を、好ましくはディーゼルエンジンから供給する工程;
(2)(1)で供給された排ガスを、実施形態1~33及び55の何れか1つの実施形態に従う選択的触媒還元触媒に通す工程、
を含む方法。
【0128】
本発明について、「内壁の表面」という用語は、壁の「むき出しの」又は「裸の」又は「ブランクな」表面、すなわち(表面を汚していても良い、不可避な不純物は別にして、)壁の材料から成る未処理の状態の壁の表面と理解されるべきである。
【0129】
更に、本発明について、「Xが、A、B及びCの1つ以上である」(ここで、Xは与えられた特徴であり、及びA、B及びCのそれぞれは、上記特徴の特定的な具現化構成である)という記載は、Xが、A、又はB、又はC、又はA及びB又はA及びC、又はB及びC、又はA及びB及びCという構成を開示しているものと理解される。この点に関し、この技術分野の当業者は、上述した抽象的な記載を具体例に変換することが可能であることが注記され、上記具体例は例えば、Xが化学的な元素であり、A、B及びCが具体的な元素、例えばLi、Na、及びKであり、又はXが温度であり、及びA、B及びCが具体的な温度、例えば10℃、20℃、及び30℃である場合である。この点において、この技術分野の当業者は、上記記載を、上記特徴の具体化をより非特定化したように拡張することが可能であり、例えば、「Xが、A及びBの1つ以上である」は、XがA、又はB、又はA及びBの何れかを開示しており、又は上記特徴の具体化をより特定化したように拡張することが可能であり、例えば「Xが、A、B、C及びDの1つ以上である」は、Xが、A、又はB、又はC、又はD、又はA及びB、又はA及びC、又はA及びD、又はB及びC、又はB及びD、又はC及びD、又はA及びB及びC、又はA及びB及びD、又はB及びC及びD、又はA及びB及びC及びDの何れかを開示していることが更に注記される。
【0130】
本発明を以下の参照例、比較例、及び実施例を使用して更に説明する。
【実施例
【0131】
参照例1:D90値の決定
Sympatec HELOS装置を使用して、粒子径分布を静的光散乱法によって決定したが、試料の光学濃度は、5~10%の範囲であった。
【0132】
参照例2:BET比表面積の測定
BET比表面積を、DIN66131又はDIN ISO9277に従い、液体窒素を使用して測定した。
【0133】
参照例3:共通の被覆方法
流通基材を1つ以上のコーティングで被覆するために、流通基材を与えられた一部分のスラリー中に、基材の特定の長さだけ垂直に浸漬した。この方法で、ウォッシュコートが流通基材の壁と接触した。試料を特定の期間、通常1~10秒スラリー中に維持した。スラリーを基材中に引き込むために、真空状態を施した。次に基材をスラリーから取り出し、そして反転させ、過剰なスラリーを基材から流出させ、そして次に圧縮空気を(スラリーが侵入する方向に対して)吹きかけることによって除去した。
【0134】
実施例1:バナジウムベースのSCR触媒(二重のバナジウム源)
固体含有量が11質量%の水性シュウ酸塩バナジウム(バナジウムオキサレート)混合物を蒸留水に加え、混合物の最終的な固体含有量を3質量%とした。使用したシュウ酸塩バナジウム混合物の量は、(シュウ酸塩バナジウムからの)バナジウム酸化物が、Vとして計算して、か焼した後の触媒中に、コーティングの1%の最終的な積載量の積載で存在するように計算した。この希釈したシュウ酸塩バナジウム混合物に、チタニア粉(TiO90質量%及び10質量%のWO、BET表面積が90m/g、Dv90が2~8.6マイクロメーター)を加え、か焼後の触媒中のチタニア+タングステン酸化物の最終的な積載量を3.88g/inとした。
【0135】
更に、固体含有量が39質量%及びpHが8の有機分散剤(アクリルポリマー)混合物を混合物中に加えた。分散剤混合物の量は、か焼後の触媒中のコーティングの合計質量の5質量%として計算された。得られた混合物を数分間にわたり攪拌し、及び水酸化アンモニウムを加えることによってpHを約7.0に調整した。更に、固体含有量が45.3質量%のスラリーを得るために、蒸留水を加えた。
【0136】
スラリーを5分間混合した後、鉄バナジウム酸塩(Fe:Vのモル比が1:1のFeVO)粉をスラリーに加えた。使用した鉄バナジウム酸塩の量は、(鉄バナジウム酸塩からの)バナジウムが、Vとして計算して、か焼後の触媒中のコーティングの、4%の最終積載の積載量で存在するように計算された(FeVOの積載量は、か焼後の触媒中コーティングの最終積載量の8.39%であった)。その後、水性コロイド状シリカ(固体含有量40質量%)を、か焼後の触媒中の最終的なSiO積載量が0.19g/inになる量で蒸留水と一緒にスラリーに加え、最終的なスラリー固体含有量を43質量%とした。
【0137】
参照例3に記載した方法に従う未被覆のハニカムコージライトモノリス基材(直径:26.67cm(10.5インチ)×長さ:15.24cm(6インチ)シリンダー形状基材であって、1平方センチメートル当たり、400/(2.54)のセルを有し、及び0.1ミリメートル(4mil)の壁厚を有するもの)の全長に亘って、最終的なスラリーの一部分を配置した。被覆した基材を110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であった。最終的なスラリーの残りの部分を、被覆した基材の全長に亘って配置し、110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であったが、触媒中のコーティングの最終積載量は4.5g/inで、これは3.88g/inのチタニア+タングステン酸化物、0.045g/inのバナジウム(シュウ酸塩バナジウムからのVとして計算)0.377g/inのFeVO(Vとして計算した0.18g/inのバナジウム)、0.19g/inのSiOを含んでいた。
【0138】
比較例1: バナジウムベースのSCR触媒(単一バナジウム源)
固体成分が39質量%及びpHが8の有機分散剤(アクリルポリマー)混合物を、蒸留水に加え、そして5分間混合した。分散剤混合物の量はか焼後の触媒中のコーティングの合計質量の5質量%として計算された。その後、チタニア粉(TiO90質量%及び10質量%のWO、BET表面積が90m/g、Dv90が2~8.6マイクロメーター)を混合物に加え、スラリーを形成するのに、か焼後の触媒中のチタニア+タングステン酸化物の最終的な積載量を3.84g/inとした。スラリーを更に数分間にわたり攪拌し、及び水酸化アンモニウム溶液を加えることによってpHを約7.0に調整した。一旦pHが約7になった時、鉄バナジウム酸塩(Fe:Vのモル比が1:1のFeVO)粉をスラリーに加えた。使用した鉄バナジウム酸塩(iron vanadate)の量は、(鉄バナジウム酸塩からの)バナジウム酸化物が、Vとして計算して、か焼後の触媒中のコーティングの、5%の最終積載の積載量で存在するように計算された(FeVOの積載量は、か焼後の触媒中コーティングの最終積載量の10.48%であった)。
【0139】
その後、最終的なSiO積載量が、か焼後の触媒中の最終的なチタニア+タングステン酸化物積載量の5%となるように、水性コロイド状シリカ(固体含有量40質量%)を追加的な蒸留水と一緒にスラリーに加え、43質量%の最終的なスラリー固体含有量を得た。pHをチェックし、及び水酸化アンモニウム溶液を加えることによって7.0に再調整した。
【0140】
参照例3に記載した方法に従う未被覆のハニカムコージライトモノリス基材(直径:26.67cm(10.5インチ)×長さ:15.24cm(6インチ)シリンダー形状基材であって、1平方センチメートル当たり、400/(2.54)のセルを有し、及び0.10ミリメートル(4mil)の壁厚を有するもの)の全長に亘って、最終的なスラリーの一部分を配置した。被覆した基材を110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であった。最終的なスラリーの残りの部分を、被覆した基材の全長に亘って配置し、110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であったが、コーティングの最終積載量は4.5g/inで、これは3.84g/inのチタニア+タングステン酸化物、0.47g/inのFeVO、0.19g/inのSiOを含んでいた。
【0141】
比較例2: バナジウムベースのSCR触媒(単一バナジウム源)
比較例2の触媒を、比較例1の触媒のように調製したが、異なる点は、鉄バナジウム酸塩の量は、FeVOの積載量が、か焼後の触媒中、コーティングの最終的な積載量の8.38%であるように計算されたことである(Vとして計算して、か焼後の触媒中のコーティングの最終的な積載量の4%の(鉄バナジウム酸塩からの)バナジウム積載量を含む)。従って、か焼後の触媒中のコーティングの最終的な積載量は、4.5g/inで、これは3.93g/inのチタニア+タングステン酸化物、0.38g/inのFeVO、0.196g/inのSiOを含んでいた。
【0142】
比較例3: バナジウムベースのSCR触媒(単一バナジウム源)
比較例3の触媒を、比較例1の触媒のように調製したが、異なる点は、鉄バナジウム酸塩の量は、FeVOの積載量が、か焼後の触媒中、コーティングの最終的な積載量の12.58%であるように計算されたことであり(Vとして計算して、か焼後の触媒中のコーティングの最終的な積載量の6%の(鉄バナジウム酸塩からの)バナジウム積載量を含む)、及び使用された水性コロイド状シリカは、最終的なSiO積載量が、か焼後の触媒中で7.5%のチタニア+タングステン酸化物積載量を示すように加えられたことである。従って、か焼後の触媒中のコーティングの最終的な積載量は、4.5g/inで、これは3.66g/inのチタニア+タングステン酸化物、0.57g/inのFeVO、0.27g/inのSiOを含んでいた。
【0143】
実施例2: 実施例1の触媒、及び比較例1~3の触媒の使用-脱NOx
実施例1の触媒、及び比較例1~3の触媒のNOx変換における性能を、新鮮な状態、及びエイジした条件(オーブン中、550℃で50時間エイジング)下で、種々の温度、すなわち200、240、375、450及び500℃で測定した(ガス時空速度(GHSV):200、240、375、450℃で40000h-1、及びGHSV:500℃で80000h-1)。試験の間、アドブルー溶液(ad-blue solution)(ISO22241に記載された32.5%ウレア及び67.5%脱イオン水の混合物)を、完全な混合及び均一な分布を流れ全体にわたって確保するのに十分なSCR触媒の上流側で、排ガス中に投入した。投入したアドブルーの量は、得られたNHモル流対計算したNOxモル流の標準化した理論混合比(NSR)に基づいて計算した。アドブルーの投入は、0.0から出発して、SCR触媒入口温度に基づき、段階的に調節した。500℃で、NSRを0.0~1.0~1.1に調節した。450℃、375℃、及び240℃で、NSRを0.0~0.4~0.6~0.8~1.0~1.1に調節した。200℃で、NSRを0.0~0.8~1.0~1.1に調節した。全ての場合において、次のロードポイント/温度に運ぶ前に、触媒をNHでパージした。最大脱NO値を以下の表1に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
表1から理解されるように、実施例1の触媒(二重源-5%バナジウム)は、低温で、200及び240℃で、新鮮な状態、及びエイジした条件下で、比較例1の触媒(単一源-4%バナジウム)と比較して、比較例2の触媒(単一源-5%バナジウム)と比較して、及び比較例3の触媒(単一源-6%バナジウム)と比較して、改良されたNOx変換を示した。更に、実施例1の触媒は、新鮮な状態、及びエイジした条件下で、より高い温度で良好なNOx変換(82~98%)を示し、上記性能は、従来技術を代表する比較例の触媒の性能に相当するものであった。従って、この実施例は、バナジウムの二重源を有するバナジウム含有選択的触媒還元触媒は、低温脱NOxの増加を可能にし、この一方で、高温すなわち、500℃以下での優れた性能を維持することを実証している。この実施例は更に、本発明の触媒は、従来技術を代表する触媒(比較例1~3)と比較して、改良された熱的安定性を有していることを実証している。
【0146】
実施例3:バナジウムベースのSCR触媒(二重のバナジウム源)
固体含有量が11質量%の水性シュウ酸塩バナジウム(バナジウムオキサレート)混合物を蒸留水に加え、混合物の最終的な固体含有量を3質量%とした。使用したシュウ酸塩バナジウムの量は、(シュウ酸塩バナジウムからの)バナジウム酸化物が、Vとして計算して、か焼した後の触媒中に、コーティングの2%の最終的な積載量の積載で存在するように計算した。このシュウ酸塩バナジウム混合物に、チタニア粉(TiO90質量%及び10質量%のWO、BET表面積が90m/g、Dv90が2~8.6マイクロメーター)を加え、か焼後の触媒中のチタニア+タングステン酸化物の最終的な積載量を3.84g/inとした。
【0147】
更に、固体含有量が39質量%及びpHが8の有機分散剤(アクリルポリマー)混合物を混合物中に加えた。分散剤混合物の量は、か焼後の触媒中のコーティングの合計質量の5質量%として計算された。得られた混合物を数分間にわたり攪拌し、及び水酸化アンモニウム溶液を加えることによってpHを約7.0に調整した。更に、固体含有量が45.3質量%のスラリーを得るために、蒸留水を加えた。
【0148】
スラリーを5分間混合した後、鉄バナジウム酸塩(Fe:Vのモル比が1:1のFeVO)粉をスラリーに加えた。使用した鉄バナジウム酸塩の量は、(鉄バナジウム酸塩からの)バナジウムが、Vとして計算して、か焼後の触媒中のコーティングの、4%の最終積載の積載量で存在するように計算された(FeVOの積載量は、か焼後の触媒中コーティングの最終積載量の8.39%であった)。その後、水性コロイド状シリカ(固体含有量40質量%)を、触媒中のか焼後の最終的なSiO積載量が0.19g/inになる量で追加的な蒸留水と一緒にスラリーに加え、最終的なスラリー固体含有量を43質量%とした。
【0149】
参照例3に記載した方法に従う未被覆のハニカムコージライトモノリス基材(直径:26.67cm(10.5インチ)×長さ:15.24cm(6インチ)シリンダー形状基材であって、1平方センチメートル当たり、400/(2.54)のセルを有し、及び0.10ミリメートル(4mil)の壁厚を有するもの)の全長に亘って、最終的なスラリーの一部分を配置した。被覆した基材を110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であった。最終的なスラリーの残りの部分を、被覆した基材の全長に亘って配置し、110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であったが、触媒中のコーティングの最終積載量は4.5g/inで、これは3.84g/inのチタニア+タングステン酸化物、0.09g/inのバナジウム(シュウ酸塩バナジウムからのVとして計算)0.38g/inのFeVO(Vとして計算した0.18g/inのバナジウムを含む)、0.19g/inのSiOを含んでいた。
【0150】
実施例4:バナジウムベースのSCR触媒(二重のバナジウム源)
固体含有量が11質量%の水性シュウ酸塩バナジウム混合物を蒸留水に加え、混合物の最終的な固体含有量を3.0質量%とした。使用したシュウ酸塩バナジウムの量は、(シュウ酸塩バナジウムからの)バナジウム酸化物が、Vとして計算して、か焼した後の触媒中に、コーティングの2.5%の最終的な積載量の積載で存在するように計算した。この希釈したシュウ酸塩バナジウム混合物に、チタニア粉(TiO90質量%及び10質量%のWO、BET表面積が90m/g、Dv90が2~8.6マイクロメーター)を加え、か焼後の触媒中のチタニア+タングステン酸化物の最終的な積載量を4.0g/inとした。
【0151】
更に、固体含有量が39質量%及びpHが8のアクリルベースの有機分散剤(アクリルポリマー)混合物を混合物中に加えた。分散剤混合物の量は、か焼後の触媒中のコーティングの最終積載量の5質量%として計算された。得られた混合物を数分間にわたり攪拌し、及び水酸化アンモニウム溶液を加えることによってpHを約7.0に調整した。更に、固体含有量が45質量%のスラリーを得るために、蒸留水を加えた。
【0152】
スラリーを5分間混合した後、鉄バナジウム酸塩(Fe:Vのモル比が1:1のFeVO)粉をスラリーに加えた。使用した鉄バナジウム酸塩の量は、(鉄バナジウム酸塩からの)バナジウムが、Vとして計算して、か焼後の触媒中のコーティングの、2%の最終積載の積載量で存在するように計算された(FeVOの積載量は、か焼後の触媒中コーティングの最終積載量の4.19%であった)。その後、水性コロイド状シリカ(固体含有量40質量%)を、触媒中のか焼後の最終的なSiO積載量が0.2g/inになる量で追加的な蒸留水と一緒にスラリーに加え、最終的なスラリー固体含有量を43質量%とした。
【0153】
参照例3に記載した方法に従う未被覆のハニカムコージライトモノリス基材(直径:26.67cm(10.5インチ)×長さ:15.24cm(6インチ)シリンダー形状基材であって、1平方センチメートル当たり、400/(2.54)のセルを有し、及び0.10ミリメートル(4mil)の壁厚を有するもの)の全長に亘って、最終的なスラリーの一部分を配置した。被覆した基材を110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であった。最終的なスラリーの残りの部分を、被覆した基材の全長に亘って配置し、110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であったが、触媒中のコーティングの最終積載量は4.5g/inで、これは4.00g/inのチタニア+タングステン酸化物、0.11g/inのバナジウム(シュウ酸塩バナジウムからのVとして計算)、0.19g/inのFeVO(Vとして計算した0.09g/inのバナジウムを含む)、0.2g/inのSiOを含んでいた。
【0154】
比較例4:本発明に従うものではないバナジウムベースのSCR触媒(単一バナジウム源)
固体含有量が11質量%の水性シュウ酸塩バナジウム混合物を蒸留水に加え、混合物の最終的な固体含有量を3.1質量%とした。使用したシュウ酸塩バナジウムの量は、バナジウム酸化物が、Vとして計算して、か焼した後の触媒中に、4%の最終的なコーティング積載量の積載で存在するように計算した。固体含有量が39質量%、及びpHが8のアクリルベースの有機分散剤(アクリルポリマー)混合物を加え、混合物とした。分散剤混合物の量は、か焼した後の触媒中コーティングの合計質量の5質量%として計算した。
【0155】
チタニア粉(TiO87質量%及び8質量%のWO及び5質量%のSiO、BET表面積が85m/g、Dv90が2.5マイクロメーター)を得られた混合物に加え、スラリーを形成した。か焼後の触媒中のチタニア+タングステン酸化物+シリカの最終的な積載量は、4.11g/inであった。スラリーのpHを、水酸化アンモニウム溶液を使用して約7.0に調整した。追加的な蒸留水を加え、スラリーの固体含有量を40.6質量%にした。第2の有機ベースの分散剤(有機ポリマー)混合物をスラリーに加えたが、このものは固体含有量が31質量%であった。この第2の分散剤混合物を、3.22質量%の触媒の合計での最終的な固体積載量で加えた。最後に、水性コロイド状シリカ(固体含有量40質量%)を、追加的な蒸留水と一緒にスラリーに加え、最終的なスラリー固体含有量を39質量%とした。使用したコロイド状シリカの量は、(コロイド状シリカからの)最終的なSiO積載量が、か焼後の触媒中のチタニア+タングステン酸化物+シリカの最終的な積載量の5%であるように計算された。得られたスラリーの水性相のpHをチェックし、及び水酸化アンモニウムを加えることによって、約7のpHに調節した。
【0156】
参照例3に記載した方法に従う未被覆のハニカムコージライトモノリス基材(直径:26.67cm(10.5インチ)×長さ:15.24cm(6インチ)シリンダー形状基材であって、1平方センチメートル当たり、400/(2.54)のセルを有し、及び0.10ミリメートル(4mil)の壁厚を有するもの)の全長に亘って、最終的なスラリーの一部分を配置した。被覆した基材を110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であった。最終的なスラリーの残りの部分を、被覆した基材の全長に亘って配置し、110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であったが、触媒中のコーティングの最終積載量は4.5g/inで、これは4.11g/inのチタニア担持WO及びSiO、0.18g/inのバナジウム(Vとして計算)、0.21g/inのSiO(コロイド状シリカからのもの)を含んでいた。
【0157】
実施例5:バナジウムベースのSCR触媒(二重のバナジウム源)
固体含有量が11質量%の水性シュウ酸塩バナジウム溶液を蒸留水に加え、混合物の最終的な固体含有量を3質量%とした。使用したシュウ酸塩バナジウムの量は、(シュウ酸塩バナジウムからの)バナジウム酸化物が、Vとして計算して、か焼した後の触媒中に、コーティングの2.5%の最終的な積載量の積載で存在するように計算した。この希釈したシュウ酸塩バナジウム混合物に、チタニア粉(TiO87質量%及び8質量%のWO及び5質量%のSiO、BET表面積が85m/g、Dv90が2.5マイクロメーター)を加え、か焼後の触媒中のチタニア+タングステン酸化物+シリカの最終的な積載量を3.82g/inとした。
【0158】
更に、固体含有量が39質量%のアクリルベースの有機分散剤(アクリルポリマー)混合物を得られた混合物中に加えた。分散剤混合物の量は、か焼後の触媒中のコーティングの合計質量の5質量%として計算された。得られた混合物を数分間にわたり攪拌し、及び水酸化アンモニウム溶液を加えることによってpHを約7.0に調整した。更に、固体含有量が40.4質量%のスラリーを得るために、蒸留水を加えた。
【0159】
スラリーを5分間混合した後、鉄バナジウム酸塩(Fe:Vのモル比が1:1のFeVO)粉をスラリーに加えた。使用した鉄バナジウム酸塩の量は、(鉄バナジウム酸塩からの)バナジウムが、Vとして計算して、か焼後の触媒中のコーティングの、4%の最終積載の積載量で存在するように計算された(FeVOの積載量は、FeVOとして計算して、か焼後の触媒中コーティングの最終積載量の8.39%であった)。その後、水性コロイド状シリカ(固体含有量40質量%)を、触媒中のか焼後の(コロイド状シリカからの)最終的なSiO積載量が0.19g/inになる量で、追加的な蒸留水と一緒にスラリーに加え、最終的なスラリー固体含有量を40質量%とした。
【0160】
参照例3に記載した方法に従う未被覆のハニカムコージライトモノリス基材(直径:26.67cm(10.5インチ)×長さ:15.24cm(6インチ)シリンダー形状基材であって、1平方センチメートル当たり、400/(2.54)のセルを有し、及び0.10ミリメートル(4mil)の壁厚を有するもの)の全長に亘って、最終的なスラリーの一部分を配置した。被覆した基材を110℃~130℃の温度で合計30分間、段階的に乾燥し(80%までの水を除去)、及び空気中で4時間か焼し、か焼中約30分は450℃であったが、触媒中のコーティングの最終積載量は4.5g/inで、これは3.82g/inのチタニア+タングステン酸化物+シリカ、0.11g/inのバナジウム(シュウ酸塩バナジウムからのVとして計算)、0.38g/inのFeVO(Vとして計算した0.18g/inのバナジウムを含む)、0.19g/inのSiO(コロイド状シリカからのもの)を含んでいた。
【0161】
実施例6 実施例3及び4の触媒及び比較例2、3及び4の触媒の使用-脱NOx
実施例3及び4及び比較例2、3及び4の新鮮(フレッシュ)な触媒のNOx変換における性能を異なる温度、すなわち200、240、375、450及び500℃で測定した(ガス時空速度(GHSV):200、240、375及び450℃で40000h-1、及びGHSV:500℃で80000h-1)。試験の間、アドブルー溶液(ISO22241に記載された32.5%ウレア及び67.5%脱イオン水の混合物)を、完全な混合及び均一な分布を流れ全体にわたって確保するのに十分なSCR触媒の上流側で、排ガス中に投入した。投入したアドブルーの量は、得られたNHモル流対計算したNOxモル流の標準化した理論混合比(NSR)に基づいて計算した。アドブルーの投入は、0.0から出発して、SCR触媒入口温度に基づき、段階的に調節した。500℃で、NSRを0.0~1.0~1.1に調節した。450℃、375℃、及び240℃で、NSRを0.0~0.4~0.6~0.8~1.0~1.1に調節した。200℃で、NSRを0.0~0.8~1.0~1.1に調節した。全ての場合において、次のロードポイント/温度に運ぶ前に、触媒をNHでパージした。最大脱NO値のみを以下の表2に示す。
【0162】
【表2】
【0163】
表1から理解されるように、比較例2(単一バナジウム源-5%バナジウム酸化物)、比較例3(単一バナジウム源-6%バナジウム酸化物)及び比較例4(単一バナジウム源-4%バナジウム酸化物)の触媒と比較して、実施例3の触媒(二重バナジウム源-6%バナジウム酸化物)及び実施例4の触媒(二重バナジウム源-4.5%バナジウム酸化物)は、低温、200及び240℃での改良されたNOx変換を示す。更に、実施例3及び4の触媒は、良好なNOx変換(89~98%)を示し、上記性能は、従来技術を代表する比較例の触媒のものに匹敵するか、それ以上であった。従って、この実施例は、バナジウムの二重源を有するバナジウム含有選択触媒還元触媒は、低温での脱NOxを増加することを可能とする一方で、より高い温度、すなわち500℃までの温度での優れた性能を維持することを実証している。