(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】過冷却解除装置、蓄熱装置及び動力装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/02 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
F28D20/02 F
F28D20/02 D
(21)【出願番号】P 2021506235
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004971
(87)【国際公開番号】W WO2020189089
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2019053121
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 隆一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 恒
(72)【発明者】
【氏名】仲村 達也
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158306(JP,A)
【文献】実開平03-096335(JP,U)
【文献】実開平02-042045(JP,U)
【文献】特開2010-105570(JP,A)
【文献】特開平01-274803(JP,A)
【文献】特開2014-009818(JP,A)
【文献】米国特許第04379448(US,A)
【文献】米国特許第04860729(US,A)
【文献】特開昭64-046582(JP,A)
【文献】国際公開第2007/023795(WO,A1)
【文献】特開2000-081290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
表面に凹部を有する第1部材と、
前記表面に対向し、前記凹部を覆う第2部材と、
を備え、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第2部材を前記第1部材の前記表面に密着させる荷重を加え
、前記凹部に固体の前記蓄熱材が保持された状態で、前記過冷却状態が維持され
、
前記第2部材を前記表面から離間させて、前記凹部に保持された固体の前記蓄熱材と、前記凹部の外部に存在する液体の前記蓄熱材との接触が許容されることにより、前記過冷却状態が解除される、過冷却解除装置。
【請求項2】
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
表面に凹部を有する第1部材と、
前記表面に対向し、前記凹部を覆う第2部材と、
を備え、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第2部材を前記第1部材の前記表面に密着させる荷重を加え、前記凹部に固体の前記蓄熱材が保持された状態で、前記過冷却状態が維持され、
前記荷重を減少させ、前記凹部に保持された固体の前記蓄熱材と、前記凹部の外部に存在する液体の前記蓄熱材との接触が許容されることにより、前記過冷却状態が解除される、過冷却解除装置。
【請求項3】
前記第1部材の前記表面が平坦面であり、
前記第2部材は、前記第1部材の前記表面に向かい合う平坦面を有し、
前記第1部材の前記平坦面に前記第2部材の前記平坦面が面接触したときに前記第1部材の前記凹部が前記第2部材によって覆われる、請求項1
又は2に記載の過冷却解除装置。
【請求項4】
前記凹部が溝の形状を有し、
前記凹部の一端面が前記第1部材の外部に露出している、請求項1
から3のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項5】
前記凹部の他端面が前記第1部材の前記外部に露出している、請求項
4に記載の過冷却解除装置。
【請求項6】
前記第1部材は、前記第1部材の厚さ方向に延びる貫通孔を有し、
前記凹部の他端面は、前記貫通孔を通じて前記第1部材の前記外部に露出している、請求項
4又は
5に記載の過冷却解除装置。
【請求項7】
前記過冷却状態を維持すべきときに、前記第2部材が前記第1部材の前記凹部を覆うことによって、前記凹部に保持された前記蓄熱材と前記凹部の外部に存在する前記蓄熱材との接触が制限され
る、請求項1から
6のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項8】
弾性変形可能な第3部材をさらに備え、
前記第1部材と前記第3部材との間に前記第2部材が位置している、又は、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材が位置している、請求項1から
7のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項9】
前記第1部材又は前記第2部材に対向する表面を有し、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に荷重を加えるピストンをさらに備えた、請求項1から
8のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項10】
前記ピストンに接続され、前記ピストンを前記第1部材又は前記第2部材に対して接近させる方向、及び、前記第1部材又は前記第2部材から離間させる方向に変位させるアクチュエータをさらに備えた、請求項
9に記載の過冷却解除装置。
【請求項11】
前記第1部材及び前記第2部材を収容するシリンダをさらに備えた、請求項1から
10のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1項に記載の過冷却解除装置と、
水和塩、糖アルコール及び包接水和物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む蓄熱材と、
前記蓄熱材を収容する容器と、
を備えた、蓄熱装置。
【請求項13】
請求項
12に記載された蓄熱装置と、
前記蓄熱装置から放出された熱を受け取る動力機関と、
を備えた、動力装置。
【請求項14】
前記ピストンを収容し、ねじ部を有するシリンダをさらに備え、
前記ピストンは、前記シリンダに収容されたときに、前記シリンダの前記ねじ部と螺合するねじ部を有し、
前記アクチュエータがモータであり、
前記モータは、前記ピストンを回転させて、前記ピストンを前記第1部材又は前記第2部材に対して接近させる前記方向、及び、前記第1部材又は前記第2部材から離間させる前記方向に変位させる、請求項
10に記載の過冷却解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過冷却解除装置、蓄熱装置及び動力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄熱材が液相と固相との間で相転移することによって、蓄熱及び放熱を行う蓄熱装置が知られている。蓄熱装置は、過冷却された蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置を備えている。過冷却解除装置を備えた蓄熱装置は、例えば、ガソリンエンジン、電動機などの動力機関を備えた動力装置に利用される。
【0003】
特許文献1には、蓄熱材に電気的な刺激を与えることによって、過冷却状態の蓄熱材を結晶化させる蓄熱装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、可撓性を有する板部材の変形動作を利用して、過冷却状態の蓄熱材を結晶化させる発核装置が記載されている。板部材には、溝が設けられている。溝の内部には、蓄熱材の主成分である水和塩の無水物が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-146173号公報
【文献】特開2015-102288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の過冷却解除装置は、蓄熱材の過冷却状態を解除できないことがある。
【0007】
本開示は、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる、信頼性の高い過冷却解除装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様にかかる過冷却解除装置は、
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
表面に凹部を有する第1部材と、
前記表面に対向し、前記凹部を覆う第2部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる、信頼性の高い過冷却解除装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1にかかる過冷却解除装置の概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した過冷却解除装置の一部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した過冷却解除装置が備える第1部材の斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態2にかかる過冷却解除装置の概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した過冷却解除装置の一部を示す分解斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、
図5に示した過冷却解除装置が備える第3部材の変形例を示す斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、第3部材の別の変形例を示す斜視図である。
【
図7C】
図7Cは、第3部材のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態3にかかる過冷却解除装置の概略断面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した過冷却解除装置の一部を示す分解斜視図である。
【
図11】
図11は、本開示の過冷却解除装置を用いた蓄熱装置の概略断面図である。
【
図13】
図13は、本開示の蓄熱装置を用いた動力装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
蓄熱材を加熱して、蓄熱を行う場合、蓄熱材の温度は、蓄熱材の融点を大きく上回ることがある。蓄熱材は、例えば、蓄熱材の融点よりも40℃以上高い温度まで加熱されることがある。従来の過冷却解除装置では、高い温度を経由して冷却された蓄熱材の過冷却状態を解除できないことがある。
【0012】
本開示の第1態様にかかる過冷却解除装置は、
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
表面に凹部を有する第1部材と、
前記表面に対向し、前記凹部を覆う第2部材と、
を備える。
【0013】
第1態様によれば、過冷却状態の蓄熱材に過冷却解除装置を接触させると、その刺激によって蓄熱材の結晶化が進行する。これにより、蓄熱材の結晶が第1部材の凹部に収容される。凹部が第2部材に覆われていれば、蓄熱材を加熱しても、凹部に存在する蓄熱材は、結晶として凹部に残る。蓄熱材が過冷却された状態で第2部材を第1部材の表面から離間させると、過冷却状態の蓄熱材が凹部に侵入し、凹部に残った蓄熱材の結晶と接触する。これにより、蓄熱材の過冷却状態が解除され、蓄熱材が固化する。過冷却解除装置によれば、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0014】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様にかかる過冷却解除装置では、前記第2部材は、前記第1部材に密着することができてもよい。第2態様によれば、過冷却解除装置は、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0015】
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様にかかる過冷却解除装置は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に荷重を加えて前記第1部材と前記第2部材とを互いに密着させてもよい。第3態様によれば、過冷却解除装置の動作の再現性が向上する。
【0016】
本開示の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置では、前記第1部材の前記表面が平坦面であってもよく、前記第2部材は、前記第1部材の前記表面に向かい合う平坦面を有していてもよく、前記第1部材の前記平坦面に前記第2部材の前記平坦面が面接触したときに前記第1部材の前記凹部が前記第2部材によって覆われてもよい。第4態様によれば、過冷却解除装置は、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0017】
本開示の第5態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置では、前記凹部が溝の形状を有していてもよく、前記凹部の一端面が前記第1部材の外部に露出していてもよい。第5態様によれば、蓄熱材が過冷却された状態で第2部材を第1部材の表面から離間させると、過冷却状態の蓄熱材が凹部に速やかに侵入する。そのため、過冷却解除装置は、蓄熱材の過冷却状態を速やかに解除できる。
【0018】
本開示の第6態様において、例えば、第5態様にかかる過冷却解除装置では、前記凹部の他端面が前記第1部材の前記外部に露出していてもよい。第6態様によれば、過冷却解除装置は、蓄熱材の過冷却状態をより速やかに解除できる。
【0019】
本開示の第7態様において、例えば、第5又は第6態様にかかる過冷却解除装置では、前記第1部材は、前記第1部材の厚さ方向に延びる貫通孔を有していてもよく、前記凹部の他端面は、前記貫通孔を通じて前記第1部材の前記外部に露出していてもよい。第7態様によれば、過冷却解除装置は、蓄熱材の過冷却状態を容易に解除できる。
【0020】
本開示の第8態様において、例えば、第1から第7態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置では、前記過冷却状態を維持すべきときに、前記第2部材が前記第1部材の前記凹部を覆うことによって、前記凹部に保持された前記蓄熱材と前記凹部の外部に存在する前記蓄熱材との接触が制限されてもよく、前記過冷却状態を解除すべきときに、前記第1部材に対して前記第2部材が変位することによって、前記凹部に保持された前記蓄熱材と前記凹部の外部に存在する前記蓄熱材との接触が許容されてもよい。第8態様によれば、過冷却解除装置は、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0021】
本開示の第9態様において、例えば、第1から第8態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置は、弾性変形可能な第3部材をさらに備えていてもよく、前記第1部材と前記第3部材との間に前記第2部材が位置していてもよい、又は、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材が位置していてもよい。第9態様によれば、第3部材は、例えば、第1部材又は第2部材と接触した状態で圧縮されることによって弾性変形する。弾性変形した第3部材は、第1部材又は第2部材に対して、荷重を均一に加えることができる。これにより、第2部材を第1部材の表面に容易に密着させることができる。そのため、蓄熱材を加熱したときに、凹部に収容された蓄熱材が結晶として凹部に残りやすい。蓄熱材が結晶として凹部に残りやすいため、過冷却解除装置は、より高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0022】
本開示の第10態様において、例えば、第1から第9態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置は、前記第1部材又は前記第2部材に対向する表面を有し、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に荷重を加えるピストンをさらに備えていてもよい。第10態様によれば、ピストンによって、第1部材及び第2部材の少なくとも一方に荷重を加えることができる。これにより、第1部材と第2部材とを互いに密着させることができる。ピストンによれば、過冷却解除装置の動作の再現性が向上する。
【0023】
本開示の第11態様において、例えば、第10態様にかかる過冷却解除装置は、前記ピストンに接続され、前記ピストンを前記第1部材又は前記第2部材に対して接近させる方向、及び、前記第1部材又は前記第2部材から離間させる方向に変位させるアクチュエータをさらに備えていてもよい。第11態様によれば、アクチュエータによって、ピストンを変位させることができる。これにより、第1部材及び第2部材の少なくとも一方に荷重を加えることができる。
【0024】
本開示の第12態様において、例えば、第1から第11態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置は、前記第1部材及び前記第2部材を収容するシリンダをさらに備えていてもよい。第12態様によれば、過冷却解除装置の動作の再現性が向上する。
【0025】
本開示の第13態様にかかる蓄熱装置は、
第1から第12態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置と、
水和塩、糖アルコール及び包接水和物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む蓄熱材と、
前記蓄熱材を収容する容器と、
を備える。
【0026】
第13態様によれば、蓄熱装置は、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。そのため、所望のタイミングで、蓄熱材を放熱させることができる。
【0027】
本開示の第14態様にかかる動力装置は、
第13態様にかかる蓄熱装置と、
前記蓄熱装置から放出された熱を受け取る動力機関と、
を備える。
【0028】
第14態様によれば、動力機関は、暖機運転を行うときの燃料の消費又は電力の消費を抑制することができる。
【0029】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は例示に過ぎず、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0030】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の過冷却解除装置100の概略断面図である。
図1に示すように、過冷却解除装置100は、第1部材10及び第2部材20を備えている。本実施形態において、方向Xは、第2部材20から第1部材10に向かう方向である。過冷却解除装置100では、第1部材10及び第2部材20の間に、蓄熱材の結晶を収容することができる。第1部材10と第2部材20との間に蓄熱材の結晶を保持しつつ第2部材20を第1部材10に密着させると、第1部材10と第2部材20との間への液体の蓄熱材の侵入が制限される。そのため、蓄熱材に熱を蓄えるための蓄熱工程を経ても、第1部材10と第2部材20との間に蓄熱材の結晶が残りやすい。蓄熱工程を経て、蓄熱材は、液相かつ過冷却状態を保つことによって熱を蓄える。第1部材10と第2部材20との間への液体の蓄熱材の侵入を制限することによって、蓄熱材が過冷却状態に維持される。蓄熱材が過冷却された状態で第2部材20を第1部材10の表面から離間させると、過冷却状態の蓄熱材が第1部材10及び第2部材20の間に残っている蓄熱材の結晶と接触する。これにより、蓄熱材の過冷却状態が解除され、蓄熱材が固化する。
【0031】
図2は、過冷却解除装置100の一部を示す分解斜視図である。
図3は、第1部材10の斜視図である。
図1から
図3に示すように、第1部材10の形状は、例えば、板状である。第1部材10は、例えば、平面視で円の形状を有する。第1部材10は、平面視で矩形の形状を有していてもよい。
【0032】
図3に示すように、第1部材10は、その表面11に凹部13を有する。凹部13が第1部材10の表面11に形成されている。表面11は、例えば、第1部材10の主面であり、第1部材10の最も広い面積を有する面である。表面11は、例えば、平坦面である。凹部13は、例えば、溝の形状を有する。凹部13は、第1部材10の厚さ方向に直交する方向に延びている。凹部13が延びている方向に直交する凹部13の断面の形状は、矩形であってもよく、V字状であってもよく、U字状であってもよい。
【0033】
凹部13の一端面14は、第1部材10の外部に露出している。詳細には、凹部13の一端面14は、第1部材10の外周面16を通じて第1部材10の外部に露出している。凹部13の一端面14は、表面11の端部に位置する。凹部13の他端面15も第1部材10の外部に露出している。
図3では、凹部13の他端面15は、後述する貫通孔12を通じて第1部材10の外部に露出している。凹部13は、第1部材10の外周面16から、貫通孔12によって規定された第1部材10の内周面17まで延びている。凹部13は、外周面16から内周面17までまっすぐに延びていてもよい。
【0034】
第1部材10は、複数の凹部13を有していてもよい。凹部13の数は、特に限定されず、例えば、1以上30以下である。本実施形態では、第1部材10は、複数の凹部13a,13b,13c及び13dを有する。複数の凹部13a,13b,13c及び13dは、外周面16によって規定された仮想円の周方向に沿って並んでいる。複数の凹部13a,13b,13c及び13dは、上記の周方向に沿って等間隔で並んでいてもよい。複数の凹部13a,13b,13c及び13dのそれぞれは、互いに独立している。
【0035】
第1部材10の凹部13の幅の最大値は、特に限定されず、例えば、5μm以上200μm以下である。上記の凹部13の幅の最大値は、30μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。本明細書において、「凹部13の幅」は、凹部13が延びている方向に直交する凹部13の断面の幅を意味する。凹部13の長さの最大値は、特に限定されず、例えば、1mm以上4mm以下である。凹部13の深さの最大値は、特に限定されず、例えば、5μm以上200μm以下である。凹部13の深さの最大値は、10μm以上であってもよい。凹部13が延びている方向に直交する凹部13の断面の面積の最大値は、特に限定されず、例えば、120μm2以上24000μm2以下である。
【0036】
第1部材10は、貫通孔12を有する。貫通孔12は、第1部材10の厚さ方向に延びている。貫通孔12は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔12は、例えば、第1部材10の表面11の重心付近に位置する。第1部材10の外周面16によって規定された仮想円の中心は、第1部材10の内周面17によって規定された仮想円の中心と一致してもよい。第1部材10は、貫通孔12によって、平面視でリングの形状を有している。貫通孔12の直径は、例えば、1mm以上5mm以下である。
【0037】
図1及び
図2に示すように、第2部材20の形状は、例えば、板状である。第2部材20は、例えば、平面視で円の形状を有する。第2部材20は、平面視で矩形の形状を有していてもよい。第2部材20は、第1部材10の表面11に対向し、凹部13を覆う。第2部材20は、凹部13全体を覆ってもよく、凹部13を部分的に覆ってもよい。第2部材20が凹部13を部分的に覆っている場合、第2部材20によって覆われていない凹部13の部分は、例えば、後述する第1シャフト41の端面45によって覆われる。第2部材20は、例えば、表面21によって凹部13を覆うことができる。表面21は、例えば、第2部材20の主面であり、第1部材10の表面11に向かい合う平坦面である。第2部材20の表面21は、例えば、第1部材10の表面11に密着することができる。第1部材10の表面11及び第2部材20の表面21がいずれも平坦面であるとき、第2部材20の表面21は、例えば、第1部材10の表面11に面接触することができる。例えば、第1部材10の表面11に第2部材20の表面21が面接触したときに、凹部13が第2部材20によって覆われる。第2部材20の表面21には、凹部及び凸部が形成されていない。ただし、第2部材20が凹部13を覆うことができる限り、表面21には、凹部又は凸部が形成されていてもよい。
【0038】
第2部材20は、貫通孔22を有していてもよい。貫通孔22は、第2部材20の厚さ方向に延びている。貫通孔22は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔22は、例えば、第2部材20の表面21の重心付近に位置する。第2部材20は、貫通孔22によって、平面視でリングの形状を有している。貫通孔22は、例えば、第1部材10の貫通孔12と重なっている。貫通孔22の直径は、第1部材10の貫通孔12の直径と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
過冷却解除装置100は、複数の第1部材10及び複数の第2部材20を備えていてもよい。第1部材10の数及び第2部材20の数のそれぞれは、特に限定されず、例えば、1以上10以下である。過冷却解除装置100が複数の第1部材10及び複数の第2部材20を備えているとき、複数の第1部材10及び複数の第2部材20は、例えば、方向Xに交互に並んでいる。
【0040】
図1に示すように、過冷却解除装置100は、第4部材40及び第5部材50をさらに備えていてもよい。
図4は、
図1の過冷却解除装置100の分解図である。
図4に示すように、第4部材40は、第1シャフト41、モータ42、ギヤ43及び第2シャフト44を有する。第1シャフト41は、第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に荷重を加えるピストンとして機能する。詳細には、第1シャフト41の一端は、ギヤ43を介してモータ42に接続されている。第1シャフト41の他端は、第2シャフト44に接続されている。第1シャフト41の端面45が第2シャフト44の端面と接している。端面45は、第1部材10又は第2部材20に対向する第1シャフト41の表面である。
【0041】
モータ42は、第1シャフト41を変位させるアクチュエータとして機能する。後述のとおり、モータ42によれば、第1シャフト41を第1部材10又は第2部材20に対して接近させる方向、及び、第1部材10又は第2部材20から離間させる方向に変位させることができる。詳細には、モータ42は、第1シャフト41にトルクを印加し、第1シャフト41を回転させることができる。
【0042】
ギヤ43は、第1シャフト41に印加されるべきトルクを調節する。第1シャフト41に印加されるべきトルクは、特に限定されず、0.05N・m以上3.0N・m以下であってもよく、0.2N・m以上3.0N・m以下であってもよい。第2シャフト44及び第1シャフト41のそれぞれは、方向Xに延びている。第2シャフト44の端面の直径は、第1シャフト41の端面45の直径よりも小さい。そのため、第1シャフト41の端面45の一部が第4部材40の外部に露出している。
【0043】
図1及び
図2に示すように、第2シャフト44は、第1部材10の貫通孔12及び第2部材20の貫通孔22のそれぞれに挿入されている。これにより、第1部材10及び第2部材20が第4部材40によって固定される。第1シャフト41の端面45は、例えば、第2部材20の表面21に対向する第2部材20の表面23を覆う。第1シャフト41の端面45は、第2部材20の表面23全体を覆ってもよく、第2部材20の表面23を部分的に覆ってもよい。第2部材20が第1部材10の凹部13を部分的に覆っている場合に、第1シャフト41の端面45は、第2部材20によって覆われていない凹部13の部分を覆っていてもよい。第1シャフト41の端面45は、第2部材20の表面23に接することができる。
【0044】
図1及び
図4に示すように、第1シャフト41の側面には、雄ねじ部46が形成されている。雄ねじ部46は、後述する第5部材50の雌ねじ部53にねじ込まれている。雄ねじ部46及び雌ねじ部53によって、第1シャフト41は、方向Xに前進及び後退することができる。詳細には、モータ42によって、第1シャフト41を時計回り方向に回転させると、雄ねじ部46が雌ねじ部53にさらにねじ込まれ、第1シャフト41が方向Xに移動する。第1シャフト41の端面45が第2部材20の表面23に接しているとき、第1シャフト41が方向Xに移動することによって、第2部材20に方向Xの荷重を加えることができる。第2部材20に荷重が加わると、第2部材20の表面21が第1部材10の表面11に密着する。第1部材10の表面11及び第2部材20の表面21がいずれも平坦面であるとき、第2部材20に荷重が加わることによって、第2部材20の表面21が第1部材10の表面11に面接触する。一方、モータ42によって、第1シャフト41を反時計回り方向に回転させると、雄ねじ部46が緩み、第1シャフト41が方向Xの反対方向に移動する。これにより、第2部材20に加わっていた荷重が取り除かれる。
【0045】
図1では、第2部材20は、第1部材10と第1シャフト41との間に配置されている。ただし、第2部材20が第1部材10の凹部13を覆う限り、第2部材20の位置と第1部材10の位置とは、互いに入れ替わっていてもよい。すなわち、第1部材10が第2部材20と第1シャフト41との間に配置されていてもよい。このとき、第4部材40は、第1部材10から第2部材20に向かう方向に、第1部材10に荷重を加えることができる。このように、過冷却解除装置100は、第4部材40によって、第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に荷重を加えて第1部材10と第2部材20とを互いに密着させることができる。第4部材40と、第1部材10又は第2部材20との間には、後述する第3部材などの他の部材が配置されていることがある。この場合、第4部材40は、他の部材を介して、第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に荷重を加えることができる。
【0046】
第1シャフト41の端面45が第1部材10の表面11に対向し、第1部材10の凹部13を覆うことができれば、第1シャフト41が第2部材として機能することもできる。第1シャフト41が第2部材として機能する場合、過冷却解除装置100は、第2部材20を有していなくてもよい。
【0047】
図1及び
図4は、第5部材50の断面を示している。第5部材50は、第1部材10及び第2部材20を収容するシリンダとして機能する。
図4に示すように、第5部材50は、本体部56を有する。本体部56は、例えば、筒状であり、方向Xに延びている。本体部56は、第1部材10、第2部材20及び第4部材40を収容する。詳細には、本体部56は、第4部材40の第1シャフト41及び第2シャフト44を収容する。
【0048】
本体部56は、支持部51、貫通孔52、雌ねじ部53及び開口部55を有する。支持部51は、例えば、本体部56の内部において、方向Xに直交する平面である。支持部51は、第1部材10及び第2部材20を支持する。詳細には、第1部材10及び第2部材20は、支持部51と第1シャフト41との間に挟み込まれている。支持部51は、例えば、第1部材10と接している。
【0049】
貫通孔52は、方向Xにおいて、支持部51から本体部56の一端まで延びている。貫通孔52は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔52は、例えば、第1部材10の貫通孔12と重なっている。貫通孔52の直径は、第1部材10の貫通孔12の直径と同じであってもよく、異なっていてもよい。貫通孔52には、第4部材40の第2シャフト44が挿入されている。
【0050】
開口部55は、本体部56の側面に形成されている。開口部55は、方向Xに延びている。開口部55によって、支持部51が第5部材50の外部に露出している。開口部55によって、本体部56に収容された第1部材10及び第2部材20が過冷却解除装置100の外部に露出している。開口部55の数は、特に限定されず、例えば、1以上10以下である。
図2に示すように、本実施形態の過冷却解除装置100において、第5部材50は、2つの開口部55a及び55bを有している。開口部55aは、開口部55bに対向している。なお、
図2では、説明のため、第5部材50の本体部56の一部が省略されている。
【0051】
図1及び
図4に示すように、雌ねじ部53は、本体部56の内側に形成されている。雌ねじ部53は、例えば、本体部56の他端に接している。上述のとおり、雌ねじ部53には、第1シャフト41の雄ねじ部46がねじ込まれている。
【0052】
第5部材50は、固定部54をさらに有していてもよい。固定部54によって、過冷却解除装置100を蓄熱装置に固定することができる。固定部54は、例えば、ねじ、ボルトなどの締結具をねじ込むことができる開口を有している。
【0053】
図1に示すように、過冷却解除装置100は、連結部57をさらに備えていてもよい。連結部57は、例えば、第4部材40においてモータ42を第1シャフト41に連結する。モータ42は、連結部57を通じて、第1シャフト41を回転駆動させてもよい。
【0054】
第1部材10、第2部材20、第1シャフト41、第2シャフト44及び第5部材50の材料としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。金属としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。金属は、合金であってもよい。合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼などが挙げられる。樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。
【0055】
次に、過冷却解除装置100の使用方法を説明する。
【0056】
まず、以下の方法によって、過冷却解除装置100の準備を行う。まず、過冷却解除装置100の先端部分を過冷却状態の蓄熱材に接触させる。詳細には、過冷却状態の蓄熱材が第5部材50の開口部55を通じて第5部材50の本体部56の内部に侵入するように、過冷却解除装置100を蓄熱材に浸漬させる。過冷却解除装置100を蓄熱材に接触させると、その刺激によって蓄熱材の結晶化が進行する。蓄熱材の結晶化を促進させるために、蓄熱材と接触する過冷却解除装置100の部分に、蓄熱材の結晶をあらかじめ付着させていてもよい。蓄熱材の結晶化が進行することによって、蓄熱材の結晶が第1部材10の凹部13に収容される。
【0057】
次に、モータ42を作動させ、第1シャフト41を方向Xに移動させる。これにより、第2部材20に対して方向Xに荷重が加わり、第2部材20の表面21が第1部材10の表面11に接近し、密着する。すなわち、第1部材10の凹部13が第2部材20によって覆われる。このとき、凹部13と第2部材20の表面21とによって囲まれた狭い空間に固体状態の蓄熱材が収容される。第2部材20の表面21と第1部材10の表面11との間にも、微量の蓄熱材が存在してもよい。以上の操作によって、過冷却解除装置100の準備が終了する。
【0058】
次に、上記の操作を行った過冷却解除装置100を用いて、蓄熱材の過冷却状態を解除する方法を説明する。まず、蓄熱材を加熱する。蓄熱材の温度が蓄熱材の融点を上回ると、蓄熱材が融解する。このとき、第1部材10の凹部13は、第2部材20に覆われている。そのため、凹部13に保持された蓄熱材と凹部13の外部に存在する蓄熱材との接触が制限される。これにより、凹部13に収容された蓄熱材が融解しにくい。すなわち、蓄熱材を加熱しても、凹部13に収容された蓄熱材は、結晶として凹部13に残りやすい。
【0059】
次に、蓄熱材を冷却する。これにより、蓄熱材の温度が蓄熱材の融点を下回り、蓄熱材が過冷却される。このとき、第2部材20が第1部材10の凹部13を覆っているため、凹部13に保持された蓄熱材と凹部13の外部に存在する蓄熱材との接触が制限されている。これにより、蓄熱材の過冷却状態が維持される。次に、所望のタイミングでモータ42を作動させ、第1シャフト41を方向Xの反対方向に移動させる。これにより、第2部材20に加えられた荷重が取り除かれ、第2部材20の表面21が第1部材10の表面11からわずかに離間する。言い換えると、第1部材10に対して第2部材20が変位する。このとき、第2部材20の表面21と第1部材10の表面11との間に、過冷却状態の蓄熱材が侵入する。過冷却状態の蓄熱材は、凹部13に残った蓄熱材の結晶と接触する。すなわち、凹部13に保持された蓄熱材と凹部13の外部に存在する蓄熱材との接触が許容される。これにより、蓄熱材の過冷却状態が解除され、蓄熱材が固化する。
【0060】
本実施形態の過冷却解除装置100では、第1部材10の凹部13の両端面が第1部材10の外部に露出している。さらに、第1部材10及び第5部材50のそれぞれが貫通孔12及び52を有している。そのため、過冷却状態の蓄熱材が凹部13に速やかに侵入することができる。本実施形態の過冷却解除装置100の構造は、蓄熱材の過冷却状態を解除することに適している。本実施形態の過冷却解除装置100によれば、蓄熱材が高い温度を経由して冷却された場合であっても、凹部13に蓄熱材の結晶が残りやすいため、蓄熱材の過冷却状態を高い確率で解除できる。このように、本実施形態の過冷却解除装置100は、高い信頼性で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0061】
(実施形態2)
図5は、本実施形態2にかかる過冷却解除装置110の概略断面図である。
図6は、過冷却解除装置110の一部を示す分解斜視図である。
図5及び6に示すように、過冷却解除装置110は、弾性変形可能な第3部材30をさらに備えている。以上を除き、過冷却解除装置110の構造は、実施形態1の過冷却解除装置100の構造と同じである。したがって、実施形態1の過冷却解除装置100と本実施形態の過冷却解除装置110とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。すなわち、以下の各実施形態に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用されうる。さらに、技術的に矛盾しない限り、各実施形態は、相互に組み合わされてもよい。
【0062】
第3部材30が弾性変形可能である限り、第3部材30の形状は、特に限定されず、例えば板状である。以下では、一例として、第3部材30の形状が平板状である場合について説明する。第3部材30は、例えば、平面視で円の形状を有する。第3部材30は、平面視で矩形の形状を有していてもよい。
【0063】
過冷却解除装置110において、第1部材10と第3部材30との間に第2部材20が位置している、又は、第2部材20と第3部材30との間に第1部材10が位置している。
図6では、第1部材10、第2部材20及び第3部材30がこの順番で並んでいる。詳細には、第3部材30は、第1シャフト41と第2部材20との間に配置されている。ただし、第3部材30は、第1部材10と支持部51との間に配置されていてもよい。上述のとおり、第2部材20が第1部材10の凹部13を覆う限り、第2部材20の位置と第1部材10の位置とは、互いに入れ替わっていてもよい。この場合、第3部材30は、第1シャフト41と第1部材10との間に配置されていてもよく、第2部材20と支持部51との間に配置されていてもよい。過冷却解除装置110が複数の第1部材10及び複数の第2部材20を備えている場合、第3部材30は、1組の第1部材10及び第2部材20と、他の1組の第1部材10及び第2部材20との間に配置されていてもよい。
【0064】
第3部材30は、貫通孔32を有していてもよい。貫通孔32は、第3部材30の厚さ方向に延びている。貫通孔32は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔32は、例えば、第3部材30の主面である表面31の重心付近に位置する。第3部材30は、貫通孔32によって、平面視でリングの形状を有している。貫通孔32は、例えば、第1部材10の貫通孔12及び第2部材20の貫通孔22の少なくとも一方と重なっている。貫通孔32の直径は、第1部材10の貫通孔12の直径、又は、第2部材20の貫通孔22の直径と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
第3部材30は、例えば、第3部材30の厚さ方向に圧縮されることによって弾性変形することができる。第3部材30は、例えば、フックの法則に従う弾性を有する材料で作られた部材である。第3部材30の材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。第3部材30は、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよく、シリコーン樹脂を含んでいてもよい。シリコーン樹脂は、シリコーンゴムであってもよい。第3部材30が弾性変形可能である限り、第3部材30は、金属を含んでいてもよい。
【0066】
過冷却解除装置110は、複数の第3部材30を備えていてもよい。一例として、過冷却解除装置110が2つの第3部材30を備えていてもよい。2つの第3部材30のうちの1つの第3部材30が第1シャフト41と第2部材20との間に配置され、他の第3部材30が第1部材10と支持部51との間に配置されていてもよい。第3部材30の数は、第1部材10の数及び第2部材20の数に応じて調節することができ、例えば1以上10以下である。
【0067】
第3部材30は、例えば、第1部材10又は第2部材20と接触した状態で圧縮されることによって弾性変形する。例えば、過冷却解除装置110では、第1シャフト41を方向Xに移動させると、第3部材30は、第1シャフト41及び第2部材20に挟み込まれて、その厚さ方向に圧縮される。これにより、第3部材30が弾性変形する。弾性変形した第3部材30は、第1部材10又は第2部材20に対して、荷重を均一に加えることができる。これにより、第2部材20を第1部材10の表面11に容易に密着させることができる。すなわち、凹部13に保持された蓄熱材と凹部13の外部に存在する蓄熱材との接触を十分に制限することができる。第3部材30によれば、蓄熱材を加熱したときに、凹部13に収容された蓄熱材が結晶として凹部13に残りやすい。そのため、過冷却解除装置110は、より高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0068】
第3部材30によれば、比較的小さい荷重によって第2部材20を第1部材10の表面11に密着させることもできる。第1部材10又は第2部材20に加えるべき荷重が減少すれば、過冷却解除装置110を構成する部材の耐久性が向上する傾向がある。
【0069】
(実施形態2の変形例)
図7Aは、過冷却解除装置110が備える第3部材30の変形例を示す斜視図である。
図7Aに示すように、第3部材30の形状は、波板状であってもよい。波板状の第3部材30は、例えば、複数の山部35及び複数の谷部36を有する。山部35の数及び谷部36の数のそれぞれは、特に限定されず、例えば、3以上10以下である。本実施形態では、第3部材30は、3つの山部35a,35b及び35cと、3つの谷部36a,36b及び36cとを有する。複数の山部35a,35b及び35cと、複数の谷部36a,36b及び36cとは、例えば、第3部材30の外周面37によって規定された仮想円の周方向に沿って等間隔で交互に並んでいる。複数の山部35a,35b及び35cの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。複数の谷部36a,36b及び36cの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0070】
波板状の第3部材30の材料としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。第3部材30の耐久性を向上させる観点から、波板状の第3部材30は、金属製であってもよい。波板状の第3部材30に含まれる金属としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタンなどが挙げられる。波板状の第3部材30に含まれる金属は、合金であってもよい。波板状の第3部材30に含まれる合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼などが挙げられる。波板状の第3部材30は、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよく、シリコーン樹脂を含んでいてもよい。
【0071】
波板状の第3部材30が厚さ方向に圧縮されると、山部35及び谷部36の高さが低減するように、第3部材30が弾性変形する。弾性変形した第3部材30は、山部35又は谷部36によって、第1部材10又は第2部材20に対して、荷重を均一に加えることができる。波板状の第3部材30において、山部35の数及び谷部36の数が多ければ多いほど、第1部材10又は第2部材20に対して、荷重をより均一に加えることができる傾向がある。第1部材10又は第2部材20に対して荷重を均一に加えることによって、第2部材20を第1部材10の表面11に容易に密着させることができる。
【0072】
(第2実施形態の別の変形例)
図7Bは、第3部材30の別の変形例を示す斜視図である。
図7Bに示すように、第3部材30は、4つの山部35a,35b,35c及び35dと、4つの谷部36a,36b,36c及び36dとを有する。複数の山部35a,35b,35c及び35dと、複数の谷部36a,36b,36c及び36dとは、例えば、第3部材30の外周面37によって規定された仮想円の周方向に沿って等間隔で交互に並んでいる。複数の山部35a,35b,35c及び35dの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。複数の谷部36a,36b,36c及び36dの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
(第2実施形態のさらに別の変形例)
図7Cは、第3部材30のさらに別の変形例を示す斜視図である。
図7Cに示すように、第3部材30は、5つの山部35a,35b,35c,35d及び35eと、5つの谷部36a,36b,36c,36d及び36eとを有する。複数の山部35a,35b,35c,35d及び35eと、複数の谷部36a,36b,36c,36d及び36eとは、例えば、第3部材30の外周面37によって規定された仮想円の周方向に沿って等間隔で交互に並んでいる。複数の山部35a,35b,35c,35d及び35eの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。複数の谷部36a,36b,36c,36d及び36eの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0074】
第3部材30が弾性変形可能である限り、第3部材30の形状は、
図6及び
図7Aから7Cに示された平板状及び波板状に限定されない。第3部材30の形状は、例えば、JIS B1251:2018で規定されているばね座金の形状を有していてもよく、皿ばね座金の形状を有していてもよい。
【0075】
(実施形態3)
図8は、本実施形態3の過冷却解除装置120の概略断面図である。
図9は、過冷却解除装置120の一部を示す分解斜視図である。
図10は、過冷却解除装置120が備える第1部材10の斜視図である。
図8から
図10に示すように、過冷却解除装置120の第1部材10及び第2部材20のそれぞれは、貫通孔を有していない。第4部材40は、第2シャフトを有していない。第5部材50の本体部56は、貫通孔を有していない。第5部材50の本体部56は、3つの開口部55a,55b及び55cを有する。以上を除き、過冷却解除装置120の構造は、実施形態1の過冷却解除装置100の構造と同じである。
【0076】
図10に示すように、第1部材10の凹部13の一端面14及び他端面15のそれぞれは、第1部材10の外周面16を通じて第1部材10の外部に露出している。凹部13の一端面14及び他端面15のそれぞれは、表面11の端部に位置する。凹部13は、第1部材10の外周面16によって規定された仮想円の中心を経由して延びている。凹部13は、上記の仮想円の中心を経由してまっすぐに延びていてもよい。
【0077】
本実施形態では、第1部材10は、2つの凹部13a及び13bを有する。凹部13aは、凹部13bに交差している。2つの凹部13a及び13bのそれぞれは、外周面16によって規定された仮想円の中心から放射状に延びている。
【0078】
上述のとおり、第5部材50の本体部56は、3つの開口部55a,55b及び55cを有する。このような本体部56の構造によれば、第1部材10及び第2部材20が支持部51から移動して本体部56から脱落することを抑制できる。
【0079】
(蓄熱装置の実施形態)
図11は、本実施形態の蓄熱装置200の概略断面図である。
図12は、
図11に示した蓄熱装置200のXII-XII線に沿った概略断面図である。
図11に示すように、蓄熱装置200は、過冷却解除装置100、蓄熱材60及び容器65を備えている。過冷却解除装置100は、蓄熱材60に接触するように配置されている。詳細には、過冷却解除装置100は、容器65の上方から容器65の内部に挿入されている。過冷却解除装置100の先端部分が蓄熱材60に接触している。過冷却解除装置100は、容器65の外部において、第5部材50の固定部54によって容器65に固定されている。例えば、固定部54及び容器65のそれぞれに開口が設けられており、これらの開口に締結具がねじ込まれることによって、過冷却解除装置100が容器65に固定されている。蓄熱装置200が備える過冷却解除装置100の数は、特に限定されず、例えば、1以上5以下である。本実施形態では、蓄熱装置200は、2つの過冷却解除装置100を備えている。
【0080】
蓄熱材60は、物質の相変化を利用して熱を蓄える潜熱蓄熱材でありうる。蓄熱材60は、例えば、液相と固相との間で相転移することによって、蓄熱及び放熱することができる。蓄熱材60は、例えば、水和塩、糖アルコール及び包接水和物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。蓄熱材60は、水和塩、糖アルコール又は包接水和物を主成分として含んでいてもよい。「主成分」とは、蓄熱材60に重量比で最も多く含まれた成分を意味する。
【0081】
水和塩としては、例えば、酢酸ナトリウム三水和物、硫酸ナトリウム十水和物、硫酸水素ナトリウム一水和物、塩素酸リチウム三水和物、過塩素酸リチウム三水和物、フッ化カリウム二水和物、フッ化カリウム四水和物、塩化カルシウム二水和物、塩化カルシウム四水和物、塩化カルシウム六水和物、硝酸リチウム三水和物、硫酸ナトリウム十水和物、炭酸ナトリウム七水和物、炭酸ナトリウム十水和物、臭化カルシウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物、リン酸水素二ナトリウム十二水和物、塩化鉄四水和物、塩化鉄六水和物、チオ硫酸ナトリウム五水和物、硫酸マグネシウム七水和物、酢酸リチウム二水和物、水酸化ナトリウム一水和物、水酸化バリウム一水和物、水酸化バリウム八水和物、硫酸アンモニウムアルミニウム六水和物、ピロリン酸ナトリウム十水和物、リン酸三ナトリウム六水和物、リン酸三ナトリウム八水和物及びリン酸三ナトリウム十二水和物が挙げられる。
【0082】
糖アルコールとしては、例えば、グリセリン、キシリトール、ソルビトール及びエリトリトールが挙げられる。包接水和物としては、例えば、テトラヒドロフランクラスレートハイドレート、トリメチルアミンセミクラスレートハイドレート、二酸化硫黄クラスレートハイドレート、テトラブチルアンモニウムホルメートハイドレート、酢酸テトラブチルアンモニウムハイドレート、臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)ハイドレート、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl)ハイドレート及びフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)ハイドレートが挙げられる。
【0083】
蓄熱材60は、水和塩、糖アルコール及び包接水和物以外に、安定剤などの添加剤、水などをさらに含んでいてもよい。
【0084】
容器65は、蓄熱材60を収容している。
図11及び12に示すように、容器65の形状は、例えば、円柱状である。容器65の形状は、楕円柱状であってもよく、角柱状であってもよい。容器65の容積に対する蓄熱材60の体積の比率は、特に限定されず、例えば、70vol%以上80vol%以下である。容器65の材料は、特に限定されず、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。金属としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。金属は、合金であってもよい。合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼などが挙げられる。樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。
【0085】
図11及び12に示すように、蓄熱装置200は、配管70をさらに備える。配管70は、容器65の内部において、蓄熱材60に接触している。配管70は、例えば、容器65の1対の端面の一方から他方に向かう方向に延びており、容器65を貫通している。配管70は、熱媒体75の流路である。配管70は、蓄熱材60と熱媒体75とを隔てる隔壁として機能する。配管70は、伝熱性を有する材料でできている。
【0086】
熱媒体75は、蓄熱材60に熱を付与する又は蓄熱材60から熱を回収する。熱媒体75としては、例えば、水、不凍液及びオイルが挙げられる。不凍液は、例えば、エチレングリコール水溶液である。オイルは、潤滑油であってもよい。熱媒体75によれば、容器65の外部において、蓄熱材60から回収された熱を利用することができる。
【0087】
蓄熱装置200は、複数の配管70を備えていてもよい。配管70の数は、特に限定されず、例えば、1以上100以下である。
図12に示すように、本実施形態では、蓄熱装置200は、8つの配管70を備えている。
【0088】
蓄熱装置200が複数の配管70を備えているとき、複数の配管70内のそれぞれを流れる複数の熱媒体75は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、
図11において、配管70a内を流れる熱媒体75aが不凍液であり、配管70b内を流れる熱媒体75bがオイルであってもよい。
【0089】
(動力装置の実施形態)
図13は、本実施形態の動力装置300の概略構成図である。
図13に示すように、動力装置300は、蓄熱装置200及び動力機関80を備えている。蓄熱装置200は、配管70a及び70bを備える。配管70a内を不凍液が流れている。配管70b内をオイルが流れている。動力機関80は、例えば、内燃機関である。内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、蒸気機関、電動機などが挙げられる。動力機関80の内部では、オイル及び不凍液が循環している。動力装置300は、例えば、自動車、2輪車などの車両である。自動車としては、ガソリン自動車、ディーゼル自動車、電気自動車などが挙げられる。
【0090】
動力機関80は、オイルパン84及びポンプ85を有する。オイルパン84は、オイルを収容する。ポンプ85は、動力機関80の内部を循環するオイルを昇圧し、オイルの流量を調節する。
【0091】
動力装置300は、オイル排出経路90をさらに備えている。オイル排出経路90は、動力機関80から排出されたオイルを蓄熱装置200に送るための経路である。オイル排出経路90は、動力機関80のオイル出口に接続された一端と蓄熱装置200の配管70bの入口に接続された他端とを有する。
【0092】
動力装置300は、オイル供給経路91をさらに備えている。オイル供給経路91は、動力機関80にオイルを供給するための経路である。オイル供給経路91は、蓄熱装置200の配管70bの出口に接続された一端と動力機関80のオイル入口に接続された他端とを有する。
【0093】
動力装置300は、バイパス経路92をさらに備えている。バイパス経路92は、オイル排出経路90から分岐している。バイパス経路92は、オイル供給経路91に接続されている。バイパス経路92には、熱交換器83が配置されている。熱交換器83は、バイパス経路92を流れるオイルと、後述する不凍液供給経路96を流れる不凍液との間で熱交換を生じさせる液-液熱交換器である。熱交換器83の具体例は、プレート式熱交換器である。
【0094】
動力装置300は、不凍液排出経路95をさらに備えている。不凍液排出経路95は、動力機関80から排出された不凍液を蓄熱装置200に送るための経路である。不凍液排出経路95は、動力機関80の不凍液出口に接続された一端と蓄熱装置200の配管70aの入口に接続された他端とを有する。
【0095】
動力装置300は、不凍液供給経路96をさらに備えている。不凍液供給経路96は、動力機関80に不凍液を供給するための経路である。不凍液供給経路96は、蓄熱装置200の配管70aの出口に接続された一端と動力機関80の不凍液入口に接続された他端とを有する。不凍液供給経路96には、熱交換器83及びポンプ82が配置されている。ポンプ82は、不凍液供給経路96内の不凍液を昇圧し、不凍液の流量を調節する。
【0096】
動力装置300は、バイパス経路98及び99をさらに備えている。バイパス経路98は、分岐点93から分岐点94まで延びている。分岐点93は、不凍液排出経路95に位置する。分岐点94は、不凍液供給経路96における熱交換器83とポンプ82との間に位置する。バイパス経路98には、ラジエータ81が配置されている。ラジエータ81は、バイパス経路98内を流れる不凍液を冷却する。
【0097】
バイパス経路99は、分岐点97から熱交換器83まで延びている。分岐点97は、不凍液排出経路95における分岐点93と蓄熱装置200との間に位置する。バイパス経路99は、熱交換器83において、不凍液供給経路96と合流する。
【0098】
動力機関80を運転していると、動力機関80の温度が上昇する。これにより、動力機関80の内部を循環している不凍液及びオイルの温度も上昇する。動力機関80の内部を循環している不凍液の一部は、不凍液排出経路95を通じて動力機関80から排出される。不凍液排出経路95を流れる不凍液は、蓄熱装置200に送られる。蓄熱装置200の配管70aを流れる不凍液は、蓄熱装置200の蓄熱材60に熱を付与する。これにより、蓄熱材60を加熱することができる。蓄熱装置200から排出された不凍液は、不凍液供給経路96を通じて、動力機関80に供給される。
【0099】
動力機関80から排出された不凍液は、バイパス経路98又は99に送られてもよい。バイパス経路98に送られた不凍液は、ラジエータ81によって冷却される。冷却された不凍液は、不凍液供給経路96を通じて、動力機関80に供給される。
【0100】
動力機関80の内部を循環しているオイルの一部は、オイル排出経路90を通じて動力機関80から排出される。オイル排出経路90を流れるオイルは、バイパス経路92を通じて、熱交換器83に送られる。熱交換器83において、オイルの温度は、不凍液の温度よりも高い。そのため、熱交換器83におけるオイルと不凍液との熱交換によって、オイルが冷却される。熱交換器83で冷却されたオイルは、オイル供給経路91を通じて、動力機関80に供給される。
【0101】
動力機関80の運転を停止すると、動力機関80とともに、オイル及び不凍液の温度が低下する。さらに、蓄熱材60の温度も低下する。蓄熱材60の温度が蓄熱材60の融点を下回り、蓄熱材60が過冷却される。
【0102】
動力機関80の運転を再び開始するとき、蓄熱装置200の過冷却解除装置100の動作によって、蓄熱材60の過冷却状態が解除される。これにより、蓄熱材60が放熱する。配管70aを流れる不凍液及び配管70bを流れるオイルは、蓄熱材60から放出された熱を回収する。加熱された不凍液は、不凍液供給経路96を通じて動力機関80に供給される。加熱されたオイルは、オイル供給経路91を通じて動力機関80に供給される。これにより、動力機関80は、蓄熱装置200から放出された熱を受け取ることができる。動力装置300によれば、動力機関80を効率的に加熱することができる。そのため、動力機関80の暖機運転の時間を短縮できる。暖機運転を行うときの燃料の消費又は電力の消費を抑制することができる。特に、本実施形態の動力装置300によれば、外部環境の温度が-20℃を下回る寒冷地において、暖機運転を行うときの燃料の消費又は電力の消費を大幅に抑制することができる。
【実施例】
【0103】
本開示を実施例に基づき、具体的に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0104】
(実施例1)
実施例1では、第1から第5部材を備える過冷却解除装置を準備した。実施例1の過冷却解除装置において、第1部材は、平面視でリングの形状を有していた。第1部材の外径は、7mmであった。第1部材は、その表面に複数の凹部を有していた。凹部の数及び凹部の形状は、
図3に示した第1部材と同じであった。第2部材は、平面視でリングの形状を有していた。第2部材の外径は、7mmであった。第3部材は、波板状の形状を有していた。第3部材の形状は、
図7Aに示した第3部材と同じであった。第3部材の外径は、7mmであった。第3部材は、ステンレス鋼でできていた。第4部材及び第5部材の形状は、それぞれ、
図1に示した第4部材及び第5部材と同じであった。第1から第5部材の配置は、
図5に示した配置と同じであった。
【0105】
(実施例2)
第3部材として、平板状の形状を有し、かつシリコーンゴムでできた第3部材を用いたことを除き、実施例1と同じ構成を有する実施例2の過冷却解除装置を準備した。実施例2の過冷却解除装置において、第3部材の形状は、
図6に示した第3部材と同じであった。
【0106】
(実施例3)
第3部材を備えていないことを除き、実施例1と同じ構成を有する実施例3の過冷却解除装置を準備した。
【0107】
[過冷却解除試験の準備]
実施例1から3の過冷却解除装置のそれぞれについて、以下の方法で過冷却解除試験の準備を行った。まず、60mLのスクリュー管内に蓄熱材52.3gを添加した。蓄熱材は、酢酸ナトリウム三水和物を主成分として含んでいた。次に、75℃に設定した恒温槽内でスクリュー管を加熱することによって、蓄熱材を完全に融解させた。次に、20℃に設定した恒温槽を用いて、蓄熱材を冷却した。これにより、過冷却状態の蓄熱材が得られた。
【0108】
次に、蓄熱材と接触する過冷却解除装置の部分に、酢酸ナトリウム三水和物の種結晶をあらかじめ付着させた。次に、過冷却解除装置の先端部分をスクリュー管の開口部に挿入した。過冷却解除装置をスクリュー管に挿入してから、スクリュー管を密閉した。過冷却解除装置の先端部分と過冷却状態の蓄熱材とを接触させることによって、蓄熱材の結晶化が進行した。これにより、蓄熱材の結晶が第1部材の凹部に収容された。次に、第4部材の第1シャフトを時計回りに回転させることによって、第1シャフトを第2部材から第1部材に向かう方向に移動させた。これにより、第2部材に対して、第2部材から第1部材に向かう方向に荷重が加わった。第2部材が第1部材に密着し、第1部材の凹部が第2部材によって覆われた。以上の操作によって、過冷却解除試験の準備が終了した。
【0109】
[過冷却解除試験]
次に、実施例1から3の過冷却解除装置のそれぞれについて、以下の方法で過冷却解除試験を行った。まず、90℃に設定した恒温槽内で、スクリュー管を1時間加熱した。次に、20℃に設定した恒温槽を用いて、蓄熱材を冷却した。これにより、過冷却状態の蓄熱材が得られた。次に、過冷却解除装置の第4部材の第1シャフトを反時計回りに回転させることによって、第1シャフトを第1部材から第2部材に向かう方向に移動させた。これにより、第2部材に加えられた荷重が取り除かれ、第1部材に対して第2部材が変位した。このとき、蓄熱材の結晶化が進行するかどうかを確認した。
【0110】
蓄熱材の過冷却状態が解除され、蓄熱材の結晶化が進行した場合、第4部材の第1シャフトを第2部材から第1部材に向かう方向に再び移動させた。これにより、第2部材を第1部材に密着させた。次に、上述の方法によって、過冷却解除試験を繰り返した。
【0111】
蓄熱材の過冷却状態が解除されず、蓄熱材の結晶化が進行しなかった場合、スクリュー管から過冷却解除装置を取り外した。次に、酢酸ナトリウム三水和物の結晶を用いて、過冷却解除装置に付着した蓄熱材を結晶化させた。この過冷却解除装置をスクリュー管に再び挿入し、スクリュー管を密閉した。過冷却解除装置の先端部分と過冷却状態の蓄熱材とを接触させることによって、蓄熱材の結晶化を進行させた。次に、第4部材の第1シャフトを第2部材から第1部材に向かう方向に移動させ、第2部材を第1部材に密着させた。次に、上述の方法によって、過冷却解除試験を繰り返した。
【0112】
以上の操作によって、過冷却解除試験を10回以上繰り返した。得られた結果に基づいて、過冷却解除率を算出した。過冷却解除率は、試験回数に対する、蓄熱材の過冷却状態が解除された回数の比率を意味する。
【0113】
【0114】
表1からわかるとおり、第1部材及び第2部材を備えた実施例1から3の過冷却解除装置は、高い過冷却解除率を示した。特に、第3部材を備えた実施例1及び2の過冷却解除装置を用いた場合、蓄熱材の過冷却状態をより確実に解除することができた。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本開示の過冷却解除装置は、所望のタイミングで蓄熱材の過冷却状態を解除し、蓄熱材を放熱させることができる。本開示の蓄熱装置は、内燃機関の廃熱、燃焼式ボイラーの廃熱などを熱源として機器の暖機を行うことに適している。本開示の動力装置によれば、エネルギー資源の有効利用が可能である。本明細書に開示された技術は、ガソリン自動車、空調機、給湯器、電気自動車(EV)用の冷却システム、住宅の床暖房システムにも適用できる。