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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】鉄含有組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/26 20060101AFI20240122BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240122BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 3/12 20060101ALI20240122BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20240122BHJP
【FI】
A61K33/26
A61K31/20
A61K47/14
A61K9/48
A61K9/08
A61P7/06
A61P3/12
A23L33/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021513270
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2019073637
(87)【国際公開番号】W WO2020049074
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】18192831.8
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521093462
【氏名又は名称】レナファルマ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ハイダー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ゲーセル,ペーター
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0032002(US,A1)
【文献】特表2007-509976(JP,A)
【文献】特表2013-537804(JP,A)
【文献】微量栄養素研究,2002年,第19集,p.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)C8~C24脂肪酸の鉄塩、および
(ii)モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物
を含む組成物であって、
組成物の総重量の少なくとも0.5%の鉄をC8~C24脂肪酸の鉄塩の形態で含む、前記組成物
【請求項2】
鉄塩がC12~C18脂肪酸の鉄塩である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
脂肪酸が飽和脂肪酸である、請求項1またはに記載の組成物。
【請求項4】
モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物が、1つまたは複数のC8~C24脂肪酸のモノおよび/またはジグリセリドを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物が、モノおよび/もしくはジグリセリドのモノエステル化クエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのモノエステル化クエン酸エステルの混合物を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
構成成分(ii)と構成成分(i)の重量比が、20:1~1:1である、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(iii)脂肪酸もしくはその塩、または脂肪酸もしくは脂肪酸塩の混合物
を更に含む、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
構成成分(iii)が、1つまたは複数のC8~C24脂肪酸またはその塩を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
構成成分(i)と構成成分(iii)の重量比が、20:1~1:20である、請求項7または8に記載の組成物
【請求項10】
療法における使用のための、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
鉄欠乏症または鉄欠乏に関連する障害の治療または予防における使用のための、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
経口投与のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
治療有効量の請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物と、任意選択で薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬製剤。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物が、製剤の1~99重量%を構成する、請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
経口投与のための、請求項13または14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
硬カプセル、軟カプセル、または液体の形態の、請求項13から15のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項17】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を含む、栄養補助食品。
【請求項18】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品添加物。
【請求項19】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を含む、食料品。
【請求項20】
鉄含有組成物の調製方法であって、
- C8~C24脂肪酸の鉄塩、モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物、および任意選択で脂肪酸または脂肪酸の塩を混合する工程;
- 水および任意選択で塩基性化剤を添加する工程;ならびに
- 混合物を処理して、分散体を得る工程;
による、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄含有組成物、ならびに例えば、療法における、特に鉄欠乏症および鉄欠乏性貧血の治療または予防におけるその使用に関する。より詳細には、本発明は、鉄欠乏症の治療または予防における経口使用に適した鉄含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄(Fe)は、動物の身体の全ての細胞に存在する元素であり、酸素の輸送、電子伝達およびDNAの合成など、いくつかの重要な機能を有する。
生理学的に、鉄は、主に糞便および尿を介した排出により、同様に例えば月経期の妊娠可能な女性などにおける血液の損失により身体から失われる。身体からの鉄の損失を補うのに不十分な鉄の摂取は、結果的に鉄欠乏症の発生をもたらし、修正されないと、最初にいわゆる潜在性鉄欠乏症(latent iron deficiency)(LID)、続いて鉄欠乏性赤血球生成(iron-deficient erythropoiesis)(IDE)、最後に鉄欠乏性貧血をもたらす。
【0003】
鉄の生理的損失に加えて、様々な病態が、過剰な血液損失および/または鉄の吸収困難のいずれかに起因して鉄欠乏症および鉄欠乏性貧血と関連する。胃腸からの損失の原因は、炎症性腸疾患、悪性腫瘍、または胃潰瘍などの疾患による胃腸出血でありうる。鉄の吸収不良は、鉄の吸収困難に起因して起こることがあり、セリアック病、クローン病、または胃の外科手術後において起こりうる。
【0004】
鉄欠乏性貧血の一部の症状は、全身の脱力感(general weakness)、めまい、重度の疲労感(extreme fatigue)、急速な心拍(fast heartbeat)、正常より蒼白な皮膚、胸痛、頭痛などである。貧血が未治療のまま放置されると、心不全、その後の酸素の欠如を補うための心臓の肥大などの心臓に関連する追加の合併症が起こりうる。小児および乳幼児において、鉄欠乏症は、発育遅延および不可逆的認知障害を引き起こすことがある。
【0005】
妊娠期間中の鉄欠乏症は、早産および胎盤機能不全のリスクの増加を含む、妊娠合併症のリスクを増加する。鉄欠乏症の妊婦の胎児は、子宮内胎児死亡のリスクの増加、ならびに人生後半での統合失調症のリスクの増加を有する。
【0006】
他より鉄欠乏症にかかる頻度の多い人口群には、妊娠可能または妊娠中の女性、食欲不振症の人、高齢者、菜食主義者、および供血者が含まれる。更に、鉄欠乏症は、炎症性腸疾患、がん、例えば、胃腸系のがん、慢性腎疾患、激しい子宮出血、および分娩後などの、様々な障害および状態に一般的に関連する。多くの発展途上国では、鉄欠乏症は、様々な寄生虫感染、例えばマラリアまたは蠕虫感染の後に続くこともある。
【0007】
鉄欠乏性貧血を含む鉄欠乏症の治療は、通常、多くの場合に鉄含有薬剤を非経口または経腸、例えば経口投与のいずれかにより使用して、鉄の摂取を増加することを伴う。鉄調合剤の最も一般的な形態は、液体または固体のいずれかの形態(例えば、錠剤およびカプセル剤)の経口調合剤である。最も一般的な鉄薬剤は、例えば、硫酸鉄などの鉄塩を含有する経口投与用の錠剤である。しかし、多くの経口鉄薬剤は、嘔気、便秘または下痢などの副作用によって制限されており、低い患者服薬遵守を生じうる。加えて、鉄の取り込みは多くの場合に非常に低く、多くの場合に10%未満であり、時には投与された鉄のわずか1%が吸収され、特に重篤な貧血の場合になどの急速な増加が望ましい状況下では、鉄の血中レベルの許容されないほどゆっくりとした増加速度を生じうる。低い吸収速度は、鉄調節タンパク質のヘプシジンが腸の鉄取り込みを阻害する炎症の存在下で、特に一般的である。
【0008】
ゆっくりとした応答および/または不十分な耐性の場合、鉄は、例えば、静脈内注射または注入により非経口的に投与される必要がありうる。そのような投与は、鉄欠乏症と戦うには多くの場合に効率的であるが、より高価であること、鉄の投与に医療関係者を要すること、および投与様式に典型的に関連して経験する不快感が妨げになっている。患者が治療を受けるのに通院する必要もあり、このことは時間がかかり、仕事を休むことになりうる。
【0009】
したがって、好ましくは、副作用が低減され、炎症の存在に無関係に身体への取り込みが高く、好ましくは経口投与されうる、更なる鉄含有調合剤の医学的必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様は、(i)C8~C24脂肪酸塩のFe塩と、(ii)モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物とを含む組成物である。
【0011】
一部の実施例では、(i)C8~C24脂肪酸塩のFe塩、(ii)モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物、ならびに(iii)C8~C24脂肪酸塩またはその塩を含む組成物が提供される。
【0012】
更なる態様は、療法において、例えば、鉄欠乏症または鉄欠乏に関連する障害の治療において使用される、本明細書に開示されている組成物である。
更なる態様は、鉄欠乏症または鉄欠乏に関連する障害の予防に使用される、本明細書に開示されている組成物である。
【0013】
更なる態様は、治療有効量の本明細書に開示されている組成物、および任意選択で薬学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤である。
更なる態様は、食品添加物としての、または食品添加物の調製における、または食料品の調製における、本明細書に開示されている組成物の使用である。
【0014】
更なる態様は、本明細書に開示されている組成物を含む食品添加物または食料品である。
更なる態様は、鉄含有組成物の調製方法であって、鉄塩、例えば、Fe(III)塩、モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物、および任意選択で1つまたは複数の脂肪酸を混合すること、水および塩基性化剤を添加すること、ならびに混合物を処理して、安定した分散体を得ることによる方法である。
【0015】
また、本明細書に提供されるものは、鉄欠乏症、または鉄欠乏に関連する、もしくは鉄欠乏により引き起こされる疾患もしくは障害の治療方法であって、治療有効量の本明細書に開示されている組成物または製剤を、そのような治療の必要な温血動物、例えば哺乳動物、特にヒトに投与することによる方法である。
【0016】
本明細書に更に提供されるものは、鉄欠乏症、または鉄欠乏に関連する、もしくは鉄欠乏により引き起こされる疾患もしくは障害の治療のための医薬の製造における、本明細書に開示されている組成物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】明視野顕微鏡法を使用して得た、実施例1の分散体における粒子のサイズ分布曲線である。
図2】Caco-2細胞の鉄取り込みを示す棒グラフであり、50μMのFeを含有するアスコルビン酸第一鉄(Fe-AA)からの、ならびに50μMのFe(Citrem St 50uM)および100μMのFe(Citrem St 100uM)をそれぞれ含有する、実施例1に記載されているように調製された2つの本発明の分散体からのタンパク質の総濃度(ng Fe/mgタンパク質)に正規化されている。
図3】アスコルビン酸第一鉄(FeSO:AAの1:1)([21mMの59Fe]、100μl)または実施例4([21mMの59Fe]、100μl)の胃管栄養法を受けたマウス(n=6)の4時間後の正常または鉄欠乏症マウスの十二指腸および屠殺体において測定した、吸収59Fe由来の放射能により決定した線量%(CPM)を示す棒グラフである。(p≦0.05)が一元配置ANOVA、テューキーの検定は統計的に有意である。
図4】アスコルビン酸第一鉄(FeSO:AAの1:1)([21mMの59Fe]、100μl)の胃管栄養法を受けたマウスの4時間後の正常食餌マウス(鉄欠乏症なし)の肝臓、脾臓、腎臓および屠殺体において測定した、吸収59Fe由来の放射能により決定した線量%(CPM)を示す棒グラフである。
図5】実施例4の製剤([21mMの59Fe]、100μl)の胃管栄養法を受けたマウスの4時間後の正常食餌マウス(鉄欠乏症なし)の肝臓、脾臓、腎臓および屠殺体において測定した、吸収59Fe由来の放射能により決定した線量%(CPM)を示す棒グラフである。
図6】アスコルビン酸第一鉄(FeSO:AAの1:1)([21mMの59Fe]、100μl)の胃管栄養法を受けたマウスの4時間後の鉄欠乏症マウスの肝臓、脾臓、腎臓および屠殺体において測定した、吸収59Fe由来の放射能により決定した線量%(CPM)を示す棒グラフである。
図7】実施例4の製剤([21mMの59Fe]、100μl)の胃管栄養法を受けたマウスの4時間後の鉄欠乏マウスの肝臓、脾臓、腎臓および屠殺体において測定した、吸収59Fe由来の放射能により決定した線量%(CPM)を示す棒グラフである。
図8】ヘモグロビン充足実験の設計を示すスキームである。
図9図8に概説された実験後に測定されたCD1マウスのHb(g/dL)を示す棒グラフである。n=6匹のマウスであり、ANOVA一元配置検定を使用した対照群との比較においてp<0.05である。
図10】(1)正常マウス、(2)貧血マウス、(3)FeSO(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウス、および(4)実施例1の製剤(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウスの肝臓における、nmol/mgのタンパク質で表したマロンジアルデヒド(MDA)の濃度を示す棒グラフであり、n=1群当り6匹である。ANOVA一元配置検定を使用して、群間に統計的な差はなかった。
図11】(1)正常マウス、(2)貧血マウス、(3)FeSO(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウス、および(4)実施例1の製剤(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウスの十二指腸粘膜における、nmol/mgのタンパク質で表したマロンジアルデヒド(MDA)の濃度を示す棒グラフであり、n=1群当り6匹である。ANOVA一元配置検定を使用して、群間に統計的な差はなかった。
図12】(1)正常マウス、(2)貧血マウス、(3)FeSO(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウス、および(4)実施例1の製剤(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウスの肝臓において、50mgの肝臓湿組織(wet tissue)をELISAにより測定して低減されたGSH(mg/L)濃度を示す棒グラフである。n=1群当り6匹である。肝臓組織にANOVA一元配置検定を使用して、群間に統計的な差はなかった。
図13】(1)正常マウス、(2)貧血マウス、(3)FeSO(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウス、および(4)実施例1の製剤(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウスの十二指腸粘膜において、20mgの十二指腸粘膜をELISAにより測定して低減されたGSH(mg/L)濃度を示す棒グラフである。n=1群当り6匹である。未治療群と比較してFeSO治療マウス群のみが十二指腸において高いレベルのGSHを表した(P≦0.05、ANOVA一元配置検定)。
図14】(1)正常マウス、(2)貧血マウス、(3)FeSO(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウス、および(4)実施例1の製剤(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウスの肝臓における、カタラーゼ活性をU/mLで示す棒グラフである。n=1群当り6匹である。肝臓組織にANOVA一元配置検定を使用して、群間に統計的な差はなかった。
図15】(1)正常マウス、(2)貧血マウス、(3)FeSO(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウス、および(4)実施例1の製剤(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウスの十二指腸粘膜における、カタラーゼ活性をU/mLで示す棒グラフである。n=1群当り6匹である。肝臓組織にANOVA一元配置検定を使用して、群間に統計的な差はなかった。
図16】(1)正常マウス、(2)貧血マウス、(3)FeSO(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウス、および(4)実施例1の製剤(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウスの肝臓における非ヘミ鉄レベルのボックスプロットである。肝臓における非ヘミ鉄のレベルは、鉄欠乏症群と比較して、実施例1で治療した群において有意に(p≦0.05、ANOVA一元配置検定)高く、対照群と類似していた。n=6匹/群である。
図17】(1)正常マウス、(2)貧血マウス、(3)FeSO(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウス、および(4)実施例1の製剤(20mMのFe、100μL、10日間)で治療した貧血マウスの血漿における血漿中のフェリチン濃度をng/mLで表す棒グラフである。フェリチンのレベルは、FeSOで治療した群より実施例1の製剤で処理した群において高かった(p≦0.05、ANOVA一元配置検定)。n=5匹/群である。
図18】Caco-2細胞の鉄取り込みを示す棒グラフであり、実施例1、実施例2、および実施例5のそれぞれに記載されているように調製された、3つの異なる本発明の分散体からのタンパク質の総濃度(ng Fe/mgタンパク質)に正規化されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本明細書で使用されるとき、不定冠詞「a」および「an」、ならびに定冠詞「the」は、特に文脈から明白に示されない限り、単数の指示対象と同様に複数の指示対象も含む。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「投与」、「投与すること」などは、対象(例えば、哺乳動物、好ましくは、ヒト)への薬、薬物、または治療薬の投与、分配、または適用を意味する。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「有効」は、療法に使用されるときに妥当な利益/危険比に相当して、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、またはアレルギー応答)を有することなく望ましい治療応答を生じるのに十分な(本発明の組成物の)量を指す。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される」は、通常の使用において一般に安全および非毒性である、すなわち、妥当な利益/危険比に相当して、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、またはアレルギー応答)を有することなく、ヒトおよび/または動物における使用に適しているものを指す。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「賦形剤」は、薬剤の活性成分と共に処方され、長期安定化のため、固体製剤を増量するため、担体および/または希釈剤として作用するため、最終剤形の活性成分に、例えば、吸収を促進する、粘度を減少する、または溶解度を増強することにより、治療の増強を付与するため、などの目的で含まれる物質である。賦形剤は、また、例えば、粉末流動性を促進すること、または非粘性を提供することにより、製造方法に有用でありうる。賦形剤の例は、接着防止剤(antiadherent)、結合剤、コーティング、色素、崩壊剤、香味料、流動促進剤、滑沢剤、防腐剤、吸着剤、甘味料およびビヒクル(担体)である。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「症状」には、疾患または症状に関連する任意の臨床的または検査室的出現が含まれ、対象が知覚または観察できるものに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「治療すること」、「治療」などには、治療対象において、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、状態、障害もしくは疾患が起こるのを予防すること、および/または状態、障害もしくは疾患を改善する、逆転する、もしくは治癒することが含まれる。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「対象」または「患者」は、哺乳動物および鳥類から選択される温血動物(ヒトを含む)を指す。
「哺乳動物」は、好ましくはヒトを指すが、非ヒト動物、例えば、愛玩動物(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(例えば、ウシ、ブタおよびヒツジ)、ウマなども含まれる。
【0025】
「トリ」は、任意の種類のトリ、例えば、メンドリ、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒルなどの家禽、または籠で飼われるトリ、例えば、インコ、オウムなどを指す。
本明細書で使用されるとき、用語「持続放出」は、血中(例えば、血漿中)濃度(レベル)が長期間にわたって、例えば24時間まで、またはそれよりも長くにわたって治療範囲内であるが、毒性レベルを下回るように維持される速度での経口剤形からの活性成分の放出を指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「遅延放出」は、対象による摂取時に直ぐに起こらないが、投与量が対象の身体中の標的部位、例えば腸に到達するまで遅延される、経口剤形からの活性成分の放出を指す。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「モノグリセリド」(または、「モノアシルグリセロール」)は、下記式の化合物を指し、
【0028】
【化1】
【0029】
式中、Rはアシル基R’-C(O)-であり、R’は、飽和または不飽和脂肪族基である。
本明細書で使用されるとき、「飽和モノまたはジグリセリド」は、本明細書上記に定義されたモノまたはジグリセリドを指し、各R’は、飽和脂肪族部分である。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「不飽和モノまたはジグリセリド」は、本明細書上記に定義されたモノまたはジグリセリドを指し、少なくとも1つのR’は、不飽和脂肪族部分である。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「ジグリセリド」(または、「ジアシルグリセロール」)は、下記式の化合物を指し、
【0032】
【化2】
【0033】
式中、各Rは、独立して選択されたアシル基R’-C(O)であり、各R’は、飽和および不飽和脂肪族部分から独立して選択された脂肪族基である。
本明細書で使用されるとき、「飽和脂肪族部分」は、式C2n+1の分岐鎖または非分岐鎖ヒドロカルビル基を指し、式中、nは、例えば5~25の整数であってもよい。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「R’-C(O)-」は下記式の部分である。
【0035】
【化3】
【0036】
本明細書で使用されるとき、「飽和脂肪族部分」は、式C2n+1の分岐鎖または非分岐鎖ヒドロカルビル基を指し、式中、nは、例えば5~25の整数であってもよい。
本明細書で使用されるとき、「不飽和脂肪族部分」は、n個の炭素原子およびp個の二重結合を含有する式C2(n-p)+1の分岐鎖または非分岐鎖ヒドロカルビル基を指し、式中、nは、例えば5~25の整数であってもよく、pは、例えば1~3の整数であってもよく、任意の2個の二重結合は、少なくとも1個のメチレン基(-CH-)で分離されている。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「クエン酸エステル」は、モノエステル化、ジエステル化、またはトリエステル化クエン酸を指し、例えば下記式である。
【0038】
【化4】
【0039】
クエン酸に関して本明細書で使用されるとき、「モノエステル化」は、1個のカルボン酸官能基のみがエステル化されているクエン酸分子、すなわち、式(a)または(b)のクエン酸分子を意味する。
【0040】
【化5】
【0041】
本明細書で使用されるとき、「モノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物」には、1つまたは複数のモノおよび/またはジグリセリドのモノ、ジおよびトリエステル化クエン酸エステルの混合物、例えば、市販のCitremが含まれる。
【0042】
用語「塩基性化剤」は、本明細書で使用されるとき、水溶液のpHを上昇させることができる薬剤を指し、例えば、金属水酸化物および炭酸塩から、例えば、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムから選択される薬剤である。
【0043】
本明細書で使用されるとき、特に示されない限りまたは文脈から明白ではない限り、用語「Feイオン」は、酸化状態(II)(すなわち、Fe2+)または(III)(すなわち、Fe3+)、好ましくは酸化状態(III)の元素鉄(Fe)のイオンを指す。
【0044】
様々な出版物への参照が本明細書において行われており、これらの出版物の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
第1の態様は、(i)Feイオンと、(ii)モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物とを含む組成物に関する。
【0045】
構成成分(i)
構成成分(i)は、C8~C24脂肪酸のFe塩を含む。好ましくは、Fe(鉄)はFe(III)であるが、一部の鉄は、Fe(II)としても存在しうる。一部の実施形態において、鉄はFe(III)として存在する。一部の実施形態において、鉄はFe(III)およびFe(II)として存在する。
【0046】
C8~C24脂肪酸のFe塩は、脂肪酸の鉄塩であり、例えば、C8~C22脂肪酸、もしくはC8~C20脂肪酸、もしくはC8~C18脂肪酸、もしくはC10~C18脂肪酸、もしくはC12~C18脂肪酸、もしくはC14~C8脂肪酸の鉄塩、またはこれらの塩のいずれかの水和物である。C8~C24脂肪酸は、通常、食用脂肪酸である。
【0047】
一部の実施形態において、構成成分(i)は、C10~C24脂肪酸、またはC10~C22脂肪酸、またはC10~C20脂肪酸、またはC10~C18脂肪酸の鉄塩である。一部の実施形態において、構成成分(i)は、C12~C24脂肪酸、またはC12~C22脂肪酸、またはC12~C20脂肪酸、またはC12~C18脂肪酸の鉄塩である。一部の実施形態において、構成成分(i)は、C14~C24脂肪酸、またはC14~C22脂肪酸、またはC14~C20脂肪酸、またはC14~C18脂肪酸の鉄塩である。一部の実施形態において、構成成分(i)は、C16~C24脂肪酸、またはC16~C22脂肪酸、またはC16~C20脂肪酸、または例えば18脂肪酸の鉄塩である。これらの実施形態の一部において、脂肪酸は飽和されている。
【0048】
一部の実施形態において、構成成分(i)は、脂肪酸の鉄塩を含み、脂肪酸の塩は表1および表2に記述されている。脂肪酸の鉄塩は、市販されている、または例えば、米国特許第5,434,277号または米国特許第7,705,169号に開示されている方法のいずれかに従って調製されうる。一部の実施形態において、構成成分(i)は、ステアリン酸鉄、例えばFeO(ステアリン酸塩)を含む。
【0049】
一部の特定の実施形態において、C8~C24脂肪酸鉄塩は、式(A)の炭素を含む。
【0050】
【化6】
【0051】
式中、各Rは、独立して選択された脂肪族部分であり、少なくとも1つのR、好ましくは各Rは、C8~C24脂肪酸の脂肪族鎖に対応する。例えば、一部の特定の実施形態において、式(A)の鉄塩は、各Rが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸の脂肪族鎖から選択される塩である。これらの実施形態の一部において、各Rは、ラウリン酸の脂肪族(C11)鎖から選択される。これらの一部の他の実施形態において、各Rは、ミリスチン酸の脂肪族(C13)鎖から選択される。これらの一部の他の実施形態において、各Rは、パルミチン酸の脂肪族(C15)鎖から選択される。これらの一部の他の実施形態において、各Rは、ステアリン酸の脂肪族(C17)鎖から選択される。
【0052】
式(A)の錯陽イオンは、一般分子式FeO(RC(O)O)(HO) により表されうることが留意される。したがって、式(A)の陽イオンを含有する塩は、式[FeO(RC(O)O)(HO) n-の塩と書くこともでき、式中、nは、少なくとも1の整数であり、例えば、nは1または2であり、Ln-は、n個の陰電荷を担持する部分である。
【0053】
一部の実施形態において、Ln-は、脱保護C8~C24脂肪酸、RCOOであり、すなわち、塩は、分子式[FeO(RC(O)O)(HO)C(O)O(代替的書式:RC(O)O[FeO(RC(O)O)(HO)])により表すことができる錯塩である。
【0054】
これらの一部の実施形態において、Rおよび各Rは、本明細書上記に記述されたC8~C24脂肪酸に対応する脂肪族部分であり、例えば、Rおよび各Rは、C8~C20脂肪酸、またはC10~C20脂肪酸、またはC12~C20脂肪酸、例えばC8~C18脂肪酸に対応する脂肪族部分である。一部の実施形態において、脂肪酸は飽和されている。一部の実施形態において、全てのRは同じであり、Rは、Rと同じである、または異なっている。一部の実施形態において、Rおよび全てのRは、同じである。
【0055】
一部の実施形態において、Rおよび各Rは、表1または2に示されている任意の酸から独立して選択される脂肪酸の脂肪族部分に対応し、例えば、全てラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸に対応する。一部の実施形態において、Rおよび全てのRは、ステアリン酸に対応する(すなわち、Rおよび各Rは、n-ヘプタデシルである)。一部の実施形態において、Rおよび全てのRは、ステアリン酸に対応する(すなわち、Rおよび各Rは、n-ヘプタデシルである)。一部の実施形態において、Rおよび全てのRは、ラウリン酸に対応する(すなわち、Rおよび各Rは、n-ウンデシルである)。
【0056】
一部の他の実施形態において、Ln-はSO 2-であり、すなわち、塩は、分子式[FeO(RC(O)O)(HO) SO 2-(または[FeO(RC(O)O)(HO)SO)により表すことができる。
【0057】
式[FeO(RC(O)O)(HO) n-の塩において、各Rは、本明細書上記に記述されたC8~C24脂肪酸の脂肪族鎖に対応する独立して選択された部分である。一部の実施形態において、全てのRは、同じである。
【0058】
一部の更なる実施形態において、構成成分(i)は、式[FeO(RC(O)O)(HO) n-の塩の水和物、例えば、1または2個の水分子を含む水和物として提供される。したがって、C8~C24脂肪酸の鉄塩への任意の参照は、本明細において特に指定のない限り、または文脈から明白ではない限り、その水和物への参照でもあることが理解されるべきである。
【0059】
構成成分(ii)
構成成分(ii)は、モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物を含む。一部の実施形態において、構成成分(ii)は、モノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物であり、例えば、Citremと参照される種類の市販の混合物である。
【0060】
本明細下記では、「モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物」を、「クエン酸エステル構成成分」または「構成成分(ii)」と集合的に呼ぶことができる。本明細書に使用されるとき、モノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステルは、式(I)により表すことができる。
【0061】
【化7】
【0062】
式中、R、R、およびRのうちの1つは、クエン酸部分を表し、他の2つは、水素(H)または式R’-C(O)-の脂肪酸部分を表す。Rが(モノエステル化)クエン酸部分である式(I)の化合物を例示する(非限定)例が、式(I’)により表されている。
【0063】
【化8】
【0064】
式中、RおよびRは、Hおよび脂肪酸残基R’-C(O)-から独立して選択される。
誤解を避けるため、RおよびR(または、RおよびR)は、両方とも、脂肪酸R’-C(O)OHの残基R’-C(O)-であり、これらの残基は、異なっていても、同じであってもよいことが、ジグリセリドにおいて指摘される。
【0065】
脂肪酸R’-C(O)OH(脂肪酸残基R’-C(O)-に対応する)は、任意の起源のもの、例えば、植物油由来のものであってもよく、例えば、飽和、一不飽和、二不飽和、または三不飽和ものであってもよく、通常は食用脂肪酸である。一部の実施形態において、脂肪酸は、不飽和、例えば、一不飽和、二不飽和または三不飽和のものである。一部の実施形態において、脂肪酸は二不飽和のものである。一部の他の実施形態において、脂肪酸は一不飽和のものである。脂肪酸は、好ましくは、非分岐鎖(直鎖)を有し、例えば、8~24個の炭素原子を含有する。一部の実施形態において、脂肪酸における炭素原子の数は、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも14個、または少なくとも16個である。一部の実施形態において、脂肪酸における炭素原子の数は、最大で24個、最大で22個、最大で20個、または最大で18個である。一部の実施形態において、飽和酸は、表1に示されている脂肪酸のいずれか1つから選択され、C:Dは、脂肪酸の炭素原子の総量と、炭素-炭素二重結合の数との比である。
【0066】
【表1】
【0067】
一部の実施形態において、飽和脂肪酸R’-C(O)OHは、8~24個の炭素原子、または8~22個の炭素原子、または8~20個の炭素原子、または8~18個の炭素原子、または8~16個の炭素原子、または8~14個の炭素原子を有する脂肪酸から選択される。一部の実施形態において、飽和酸は、10~24個の炭素原子、または10~22個の炭素原子、または10~20個の炭素原子、または10~18個の炭素原子、または10~16個の炭素原子、または10~14個の炭素原子を有する脂肪酸から選択される。一部の実施形態において、飽和酸R’-C(O)OHは、12~24個の炭素原子、または12~22個の炭素原子、または12~20個の炭素原子、または12~18個の炭素原子、または12~16個の炭素原子を有する脂肪酸から選択される。一部の実施形態において、飽和酸R’-C(O)OHは、14~24個の炭素原子、または14~22個の炭素原子、または14~20個の炭素原子、または14~18個の炭素原子を有する脂肪酸から選択される。
【0068】
脂肪酸残基R’-C(O)-を形成しうる不飽和脂肪酸の一部の例は、表2に示されており、C:Dは、脂肪酸の炭素原子の総量と、炭素-炭素二重結合の数との比である。
【0069】
【表2】
【0070】
一部の実施形態において、不飽和脂肪酸R’-C(O)OHは、10~24個、例えば、10~22個、または10~20個、または10~18個の範囲の炭素原子の数を有する。一部の実施形態において、不飽和脂肪酸は、12~24個、例えば、12~22個、または12~20個、または12~18個の範囲の炭素原子の数を有する。一部の実施形態において、不飽和脂肪酸は、14~24個、例えば、14~22個、または14~20個、または14~18個の範囲の炭素原子の数を有する。一部実施形態において、不飽和脂肪酸は、16~24個の炭素原子、または16~22個の炭素原子、例えば16~20個の炭素原子、例えば16または18個の炭素原子を有する。
【0071】
一部の実施形態において、不飽和脂肪酸は、本明細書上記に示された炭素原子の数、および1~5個の炭素-炭素二重結合、例えば、1~4個の炭素-炭素二重結合、または1~3個の炭素-炭素二重結合、例えば、1または2個の炭素-炭素二重結合を有する。一部の実施形態において、不飽和脂肪酸は、一不飽和のものである(すなわち、1個の炭素-炭素二重結合を有する)。一部の実施形態において、不飽和脂肪酸は、二不飽和のものである(すなわち、2個の炭素-炭素二重結合を有する)。一部の実施形態において、脂肪酸は、C18脂肪酸、例えば、C18一または二不飽和脂肪酸、特にC18一不飽和脂肪酸である。一部の特定の実施形態において、脂肪酸は、C14~C24一または二不飽和脂肪酸、例えば、C14~C22一もしくは二不飽和脂肪酸、またはC16~C22一もしくは二不飽和脂肪酸、例えば、C16~C20一または二不飽和脂肪酸である。
【0072】
モノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステル(Citrem、E番号:E472c;FDA-CFR番号:172.832)は、食品産業において添加物および乳化剤として使用され、毒性が非常に低い食品物質(food substance)と考慮されている。故に、Citremは、食品への直接的な添加に「一般に安全であると考慮される」(GRAS)(Food Funct.2015,5,1409および本明細書における引用参考文献)に記載されていた。Citremは、特に食品加工産業への様々な供給会社から購入することができ、例えば、Acatris(www.acatris.com)またはDanisco(www.danisco.com)である。
【0073】
モノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステルを調製および特徴決定する一般的な方法は、よく知られており、早くも1960年5月24日発行の米国特許第2,938,027号に記載されていた。
【0074】
一実施形態によると、本明細書に開示されている組成物は、Citremと一般に呼ばれている種類の、モノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物を含む。本発明の組成物は、特に、モノおよび/またはジグリセリドのモノエステル化クエン酸を含む。しかし、クエン酸のジおよびトリエステルも本発明の組成物に存在しうることが留意されるべきである。好ましくは、構成成分(ii)は、大きな部分のモノエステル化クエン酸を含み、すなわち、モノエステル化クエン酸分子の割合(部分)は、ジエステル化クエン酸分子の部分より多く、トリエステル化クエン酸分子の部分より多い。一部の実施形態において、少なくとも35重量%の構成成分(ii)がモノエステル化クエン酸(モノエステル化酸の混合物を含む)である。一部の実施形態において、少なくとも50重量%の構成成分(ii)がモノエステル化クエン酸である。一部の実施形態において、少なくとも60重量%の構成成分(ii)がモノエステル化クエン酸である。一部の実施形態において、少なくとも70重量%の構成成分(ii)がモノエステル化クエン酸である。一部の実施形態において、少なくとも80重量%の構成成分(ii)がモノエステル化クエン酸である。一部の実施形態において、少なくとも90重量%の構成成分(ii)がモノエステル化クエン酸である。一部の実施形態において、少なくとも95重量%の構成成分(ii)がモノエステル化クエン酸である。
【0075】
通常、構成成分(ii)は、モノおよびジグリセリドの様々なクエン酸エステルのブレンド(混合物)を含む。一部の好ましい実施形態において、ブレンドは、主に、モノおよび/またはジグリセリドのモノエステル化クエン酸エステルを含む。一部の実施形態において、モノおよび/またはジグリセリドの脂肪酸部分は、本明細書上記に記述された不飽和脂肪酸に由来する。例えば、一部の実施形態において、構成成分(ii)は、食用一不飽和C8~C24脂肪酸、例えば、食用一不飽和C16~C20脂肪酸のモノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステルの大きな部分を含む。本発明の組成物に適切に存在しうるモノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステルの例は、ジオレオイルグリセロールシトレートである。
【0076】
構成成分(iii)
一部の実施形態では、上記に記載された構成成分(i)および(ii)に加えて、脂肪酸または脂肪酸の混合物である構成成分(iii)を含む組成物が提供される。脂肪酸構成成分(iii)は、1つまたは複数の脂肪酸、例えば、本明細書上記(表1および2を参照すること)に記述された1つまたは複数の脂肪酸を含んでもよい。好ましくは、構成成分(iii)は、本明細書上記に定義された飽和脂肪酸、例えば、10~24個の炭素原子、または12~24個の炭素原子、または14~24個の炭素原子、例えば、16~22個の炭素原子、または16~20個の炭素原子を含有するものを含む。一部の実施形態において、脂肪酸構成成分(iii)は、ステアリン酸である。一部の実施形態において、脂肪酸構成成分(iii)は、ステアリン酸を含む。一部の実施形態において、脂肪酸構成成分(iii)は、脂肪酸の混合物、例えば、本明細書上記に定義された脂肪酸の混合物、例えば、飽和脂肪酸の混合物、または飽和および不飽和脂肪酸の混合物を含む。一部の実施形態において、脂肪酸の構成成分は、少なくとも2つの異なる脂肪酸、例えば、本明細書上記(表1および2を参照すること)に記述されたものから選択される少なくとも2つの異なる脂肪酸を含む。
【0077】
一部の実施形態において、脂肪酸構成成分(iii)は、10~24個の炭素原子、または12~24個の炭素原子、または14~24個の炭素原子、例えば、14~22個の炭素原子、または14~20個の炭素原子をそれぞれ含有する、少なくとも2つの異なる脂肪酸を含む。一部の実施形態において、脂肪酸構成成分(iii)は、ステアリン酸、および少なくとも1つの更なる脂肪酸、例えば、8~24個の炭素原子、または8~22個の炭素原子、また8~20個の炭素原子、例えば、8~18個の炭素原子、または8~16個の炭素原子、または8~14個の炭素原子を含有する脂肪酸を含む。これらの一部の実施形態において、更なる脂肪酸は、飽和脂肪酸、例えば、ミリスチン酸である。
【0078】
例えば、一部の実施形態において、構成成分(iii)は、ステアリン酸などの第1の脂肪酸、および第2の脂肪酸、例えば本明細書上記に定義された第2の脂肪酸などの第2の飽和脂肪酸、例えば、ミリスチン酸を、20:1~1:20、10:1~1:10、または5:1~1:5、4:1~1:4、3:1~1:3、2:1~1:2、1.5:1~1:1.5、例えば、約1:1の第1の脂肪酸と第2の脂肪酸とのモル比で含む。
【0079】
本発明の組成物における構成成分(ii)と(iii)の特定の重量比は、例えば、50:1~1:1の範囲内で変わりうる。一部の実施形態において、本発明の組成物は、構成成分(ii)および構成成分(iii)を、20:1~1:1、例えば、10:1~1:1、8:1~1:1、6:1~1:1、または5:1~1:1の構成成分(ii)と(iii)の重量比で含む。一部の実施形態において、本発明の組成物は、構成成分(ii)および構成成分(iii)を、20:1~2:1、10:1~2:1、8:1~2:1、6:1~2:1、または5:1~2:1の構成成分(ii)と(iii)の重量比で含む。一部の実施形態において、本発明の組成物は、構成成分(ii)および構成成分(iii)を、20:1~3:1、10:1~3:1、8:1~3:1、6:1~3:1、または5:1~3:1の構成成分(ii)と(iii)の重量比で含む。一部の実施形態において、本発明の組成物は、構成成分(ii)および構成成分(iii)を、20:1~4:1、10:1~4:1、8:1~4:1、6:1~4:1、または5:1~4:1の構成成分(ii)と(iii)の重量比で含む。
【0080】
一部の実施形態において、例えば、構成成分(i)が脂肪酸の鉄塩、または脂肪酸の鉄塩の混合物を含む実施形態において、本発明の組成物は、構成成分(ii)および構成成分(i)を、例えば、20:1~1:1、10:1~1:1、8:1~1:1、6:1~1:1、または5:1~1:1の構成成分(ii)と(i)の重量比で含むことができる。一部の実施形態において、本発明の組成物は、構成成分(ii)および構成成分(i)を、20:1~2:1、10:1~2:1、8:1~2:1、6:1~2:1、または5:1~2:1の構成成分(ii)と(i)の重量比で含む。一部の実施形態において、本発明の組成物は、構成成分(ii)および構成成分(i)を、20:1~3:1、10:1~3:1、8:1~3:1、6:1~3:1、または5:1~3:1の構成成分(ii)と(i)の重量比で含む。一部の実施形態において、本発明の組成物は、構成成分(ii)および構成成分(i)を、20:1~4:1、10:1~4:1、8:1~4:1、6:1~4:1、または5:1~4:1の構成成分(ii)と(i)の重量比で含む。
【0081】
一部の実施形態において、例えば、構成成分(i)が脂肪酸の鉄塩、または脂肪酸の鉄塩の混合物を含む実施形態において、構成成分(i)と構成成分(iii)の重量比は、20:1~1:20、10:1~1:10、5:1~1:5、4:1~1:4、3:1~1:3、または2:1~1:2、または1.5:1~1:1.5の範囲でありうる。
【0082】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、約5~50重量%の構成成分(i)、約50~95重量%の構成成分(ii)、および約20重量%までの構成成分(iii)から構成される。一部の実施形態において、組成物は、5~20重量の構成成分(i)、60~95重量%の構成成分(ii)および20重量%までの構成成分(iii)から、例えば、約5~20重量の構成成分(i)、約60~90重量%の構成成分(ii)および約5~20重量%の構成成分(iii)から、または約10~20重量の構成成分(i)、約60~80重量%の構成成分(ii)および約10~20重量の構成成分(iii)から構成される。一部の実施形態において、本発明の組成物は、約15~20重量%の構成成分(i)、約60~70重量%の構成成分(ii)、および約15~20重量%の構成成分(iii)から構成される。
【0083】
本発明の組成物の成分は、例えば本発明の組成物の1日摂取に対応する意図された量で摂取用(食用)に許容される化合物から選択されることが指摘される。組成物には療法における使用が意図される実施形態において、組成物の成分は、薬学的に許容される化合物から選択される。
【0084】
調製方法
また、本明細書に提供されるものは、鉄含有組成物の調製方法であって、
- 本明細書に定義されている鉄塩、モノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステル、またはモノおよび/もしくはジグリセリドのクエン酸エステルの混合物、および任意選択で1つまたは複数の脂肪酸または脂肪酸塩を混合すること、
- 任意選択で、好ましくは少量の水を添加すること、および任意選択で塩基性化剤を添加すること、ならびに
- 混合物を処理して、分散体を得ること、
による方法である。
【0085】
塩基性化剤は、例えば、炭酸塩、例えば炭酸カリウム(KCO)などの金属炭酸塩、または水相にヒドロキシルイオンを提供することができる任意の他の構成成分である。
混合物を処理して、安定した分散体を得ることは、例えば、1回または複数回の超音波処理、例えば、水を添加する前の1回または複数回の超音波処理、ならびに水および塩基性化剤を添加した後の1回または複数回の超音波処理を含んでもよい。
【0086】
安定した分散体を形成するのを助けるために、1つまたは複数の乳化剤を使用することも考慮される。適切な乳化剤、例えば、8~20、例えば8~15のHLB値を有する乳化剤を選択することは、十分に当業者の知識の範囲内であると考慮される。
【0087】
一部の実施形態において、本方法は、本明細書に定義されている鉄塩、ならびにモノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステル、例えばモノまたはジグリセリドのモノエステル化クエン酸エステルを混合すること、任意選択で混合物を超音波による処理(超音波処理)に付すこと、任意選択で混合物を、例えば40℃~80℃、または50℃~70℃の温度で加熱に付すこと、続いて少量の水および塩基性化剤、例えば、KCOなどの炭酸塩を添加すること、任意選択で続いて更なる超音波処理にかけることを含む。一部の好ましい実施形態において、飽和脂肪酸などの脂肪酸、例えば、ステアリン酸は、例えば1回目の超音波処理の前に混合物に添加される。
【0088】
鉄塩は、本明細書に記述されているC8~C24脂肪酸の塩である。一部の実施形態において、鉄塩は、C8~C18脂肪酸、またはC8~C16脂肪酸、またはC8~C14脂肪酸、例えば、本明細書上記(例えば、表1および2を参照すること)に記述された任意の脂肪酸から選択される脂肪酸の鉄塩である。
【0089】
鉄塩は、好ましくはFe(III)塩である。一部の実施形態において、鉄塩は脂肪酸のFe(II)塩、例えば、C8~C18脂肪酸、またはC8~C16脂肪酸、またはC8~C14脂肪酸、例えば、本明細書上記(例えば、表1および2を参照すること)に記述された任意の脂肪酸から選択される脂肪酸のFe(II)塩である。
【0090】
一部の実施形態において、構成成分(i)は、1つまたは複数の脂肪酸のFe(II)および/またはFe(III)塩、例えば、1つまたは複数のC8~C18脂肪酸、またはC8~C16脂肪酸、またはC8~C14脂肪酸、例えば、本明細書上記(例えば、表1および2を参照すること)に記述された1つまたは複数の脂肪酸のFe(II)および/またはFe(III)塩である。
【0091】
モノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステルの構成成分は、市販のCitremのいずれかであってもよく、あるいはグリセロールを、クエン酸および1つもしくは複数の脂肪酸でエステル化することにより、またはモノおよびジグリセリドの混合物をクエン酸と反応させることにより調製してもよい。したがって、本明細書において参照されるモノおよび/またはジグリセリドのクエン酸エステルは、通常、様々な反応生成物の混合物であり、そのような反応物には、例えば、様々な位置異性体が含まれることが認識されているはずである。
【0092】
本発明の組成物は、経口投与されてもよく、医薬製剤、栄養補助食品、液体または固体食品組成物、飲料製剤などに含まれてもよく、例えば、適切なビヒクル、例えば水または粘稠性液相、例えばゲル中の本発明の組成物の分散体であってもよい。一部の実施形態において、製剤は乾燥形態により、例えば、カプセルに充填されていても、食品に組み込まれていてもよい散剤として提供される。一部の実施形態において、製剤は、適切なビヒクル、例えば水または粘稠性液相、例えばゲル中の本発明の組成物の分散体として提供される。一部の実施形態において、製剤は、顆粒の散剤として提供される。
【0093】
医薬製剤
本明細書に提供されるものは、本発明の組成物を含む医薬製剤、好ましくは、本発明の分散体、および任意選択で1種または複数の薬学的に許容される賦形剤、例えば、防腐剤、粘性剤、乳化剤、増粘剤なども、および任意選択で1つまたは複数の更なる活性成分も含有する、経口投与用の製剤、例えば、液体製剤、または経口投与用のゲルカプセル剤、例えば、硬カプセル剤または軟弾性(ゼラチン)カプセル剤である。
【0094】
一部の実施形態において、製剤は、適切なビヒクル、例えば水または粘稠性液相、例えばゲル中の本発明の組成物の分散体として提供される。一部の実施形態において、製剤は乾燥形態により、例えば、カプセルに充填されていてもよい散剤として提供される。
【0095】
製剤に使用されうる乳化剤は、例えば、アカシア、トラガカント、アルギン酸塩、キサンタン、ペクチンおよびレシチンなどの天然源由来のものでありうる。粘性剤は、例えば、アカシア、トラガカント、アルギン酸塩、キサンタン、ペクチンなどの親水性コロイド、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース、または例えばカーボマーポリマーであってもよい。防腐剤は、例えば、アスコルビン酸、安息香酸、またはp-ヒドロキシ安息香酸のエステルであってもよい。
【0096】
例えば、製剤は、本発明の組成物を、製剤の1~99重量%、例えば、5~95重量%、または10~90重量%、または20~80重量%の量で含み、残りは、1種または複数の賦形剤を含むことができる。
【0097】
一部の実施形態において、本明細書に提供される製剤は、鉄を、本明細書に定義されている鉄塩の形態によって、製剤の総重量に基づいて、約0.05重量%、約0.1重量%、例えば、約0.2重量%、約0.5重量%、約1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、約2重量%、約3重量%、または約5重量%の量で含むことができる。一部の実施形態において、製剤は、鉄を、製剤の総重量に基づいて、約0.05~5重量%、0.1~5重量%、0.2~5重量%、0.5~5重量%、1.0~5重量%、1.2~5重量%、1.3~5重量%、1.4~5重量%、1.5~5重量%、2~5重量%、または3~5重量%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、製剤は、鉄を、製剤の総重量に基づいて、約0.05~3重量%、0.1~3重量%、0.2~3重量%、0.5~3重量%、1.0~3重量%、1.2~3重量%、1.3~3重量%、1.4~3重量%、1.5~3重量%、または2~3重量%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、製剤は、鉄を、製剤の総重量に基づいて、約0.05~2重量%、0.1~2重量%、0.2~2重量%、0.5~2重量%、1.0~2重量%、1.2~2重量%、1.3~2重量%、1.4~2重量%、または1.5~2重量%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、製剤は、鉄を、製剤の総重量に基づいて、約0.05~1.5重量%、0.1~1.5重量%、0.2~1.5重量%、0.5~1.5重量%、1.0~1.5重量%、1.2~1.5重量%、1.3~1.5重量%、または1.4~1.5重量%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、製剤は、鉄を、製剤の総重量に基づいて、約0.05~1.3重量%、0.1~1.3重量%、0.2~1.3重量%、0.5~1.3重量%、1.0~1.3重量%、または1.2~1.3重量%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、製剤は、鉄を、製剤の総重量に基づいて、約0.05~1.2重量%、0.1~1.2重量%、0.2~1.2重量%、0.5~1.2重量%、または1.0~1.2重量%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、製剤は、鉄を、製剤の総重量に基づいて、約0.05~1重量%、0.1~1重量%、0.2~1重量%、または0.5~1重量%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、製剤は、鉄を、製剤の総重量に基づいて、約0.05~0.5重量%、0.1~0.5重量%、または0.2~0.5重量%の範囲の量で含む。
【0098】
好ましくは、本発明の医薬製剤は、例えば、腸溶性表面コーティングを有する遅延放出製剤である。一部の実施形態において、製剤は、腸内への活性成分の放出を可能にする腸溶性コーティングを有するカプセル剤である。一部の実施形態において、本発明の製剤は、例えば、WO2014/140991、または米国第9,775,814号もしくは米国特許第5,330,759号に記載されている腸溶性軟カプセル剤を含む。
【0099】
一部の実施形態において、本発明の医薬製剤は、持続放出製剤である。例えば、持続放出フィルムコーティングカプセル剤は、WO2017/075215に記載されている。一部の実施形態において、本発明の医薬製剤は、腸内での持続放出を可能にする遅延放出製剤である。
【0100】
医薬製剤の使用および製造についての更なる情報は、例えば、Remington:The ScienceおよびPractice of Pharmacy(第22版),Pharmaceutical Press,2013に記載されている。
【0101】
本発明の製剤は、例えば、妊娠可能な女性、妊娠中の女性、小児、成人、青少年、高齢者などにおいて、鉄欠乏症、または貧血などの鉄欠乏に関連する障害もしくは疾患の治療に有利に使用される。治療は、本明細書に開示されている医薬製剤を、例えば、1日に1回もしくは2回、連続的に、または例えば1か月から12か月、もしくは1か月から6か月の期間にわたって、または所望の血中鉄レベルが治療対象において達成されるまで投与することを含むことができる。適切な1日用量は、10~70mgの鉄、10~50mgの鉄、10~40mgの鉄、10~30mgの鉄、または10~20mgの鉄を含むことができる。治療は、例えば、鉄欠乏症にかかりやすい人、例えば、妊娠可能な女性もしくは妊娠中の女性、菜食主義者、がん、特に胃腸系のがん、炎症性腸疾患、食欲不振、または慢性炎症などの疾患を患っている人において、ならびに高齢者、または例えば抑うつによる食欲喪失を患っている人において、予防的なものでもありうる。
【0102】
一部の実施形態において、本発明の組成物を含む栄養補助食品が提供される。栄養補助食品の製剤および投与形態は、一般に、医薬製剤について本明細書上記に記載されたものと同じであってもよい。例えば、栄養補助食品は、硬もしくは軟ゲルカプセル剤の形態、または液体ビヒクル中の分散体の形態で、フラスコにより、投薬用スプーンまたは類似のもの、および適切な投薬指示書を伴って提供されうる。本明細書に提供される栄養補助食品または医薬製剤は、1つまたは複数の更なる生物活性剤および/または治療活性剤、例えば、ビタミンA、B、C、D、E、またはKなどのビタミン、Ca、Mg、K、またはSeなどのミネラル、レスベラトロール、リコペン、スピルリナ属抽出物、フィトールなどの植物抽出物などを追加的に含むことができる。
【0103】
食品における使用
更なる態様は、食品添加物としての、または食品添加物の調製における、または食料品の調製における、本明細書に開示されている組成物の使用である。例えば、本明細書に開示されている組成物を、食品、例えば、液体もしくはゼリー状の組成物、または飲料用もしくは食用調合物などの粘稠性液体に、任意の他の適切な添加物、例えば、増粘剤、乳化剤、甘味料、着色料、香味剤などと一緒に組み込むことができる。したがって、更なる態様は、本明細書に開示されている組成物を含む食品添加物または食料品、例えば、高齢者、乳幼児、妊娠中の女性、疾患状態を患っている人など、鉄の補給を特に必要とする対象に栄養を与えることが意図される食品である。
【0104】
本発明は、以下の非限定実施例によって例示される。
【実施例
【0105】
Feステアリン酸塩の調製
塩を、AbrahamsonおよびLukaski(J.Inorg.Biochem.54(1994)115-130)に報告された合成方法に従って調製し、以下の通りである。ステアリン酸(0.6g)を30mlのエタノールに溶解し、フラスコ中に一晩保存した。翌日、1mlの水に溶解したNaOHのペレット(2.13mM)を加えた。フラスコを軽く加熱した後、10mlの水をステアリン酸溶液に加えた。別のフラスコにおいて、FeSO(316.9mg)を10mlの水および50mlのエタノールに溶解し、窒素パージ下で混合し、穏やかに加熱した。ステアリン酸の溶液を、10mlのアリコートにより5分間隔で硫酸第一鉄溶液に加えた。10ミリリットルの水を使用して、微量の残存ステアリン酸を反応混合物の中にすすぎ入れた。反応混合物は、ステアリン酸の添加後に、より暗色に変わった。加熱を40分後に止め、1時間後に窒素パージを停止した。混合物を室温で一晩放置した。翌日、溶液を濾過し、微量を20mlの水で洗浄した。最後に、濾過溶液を6時間にわたって真空下に置いて乾燥した。ステアリン酸鉄の最終重量は0.632g(調製1)であった。調製を同一の様式で繰り返して調製2を得て、追加の最終精製も繰り返し、得られた調製物を酢酸エチルに70℃で溶解し、溶液を冷まして、沈殿物を形成させ、沈殿物を遠心分離により分離し、得られた生成物を真空下で一晩乾燥して、式[FeOSt(HO)SO(HO)を有する調製物3を得た。
【0106】
【表3】
【0107】
59Feステアリン酸塩の調製
ステアリン酸(0.3g)を、500μlの2.13mM NaOHと混合した15mlのエタノールに溶解した。硫酸第一鉄の標識化は、158.5mgのFeOSを5mlの水に溶解し、2μlの鉄-59(0.5MBq)および25mlのエタノールを添加することによって達成した。続くステップは、鉄ステアリン酸塩の調製と同じであった。ステアリン酸混合物を加熱し、窒素パージに付した。熱を反応の40分後に取り外し、窒素パージを更に20分間続けた。フラスコを室温で一晩放置した。濾過溶液を真空下で6時間乾燥して、最終重量0.326gの鉄-59ステアリン酸塩を生じた。
【0108】
Feラウリン酸塩の調製
ラウリン酸(0.42g)を30mlのエタノールに溶解し、フラスコ中に一晩保存した。翌日、1mlの水に溶解したNaOHのペレット(2.13mL)を加えた。フラスコを軽く加熱した後、10mlの水をラウリン酸溶液に加えた。別のフラスコにおいて、FeSO(316.9mg)を10mlの水および50mlのエタノールに溶解し、窒素パージ下で混合し、穏やかに加熱した。ラウリン酸の溶液を、10mlのアリコートにより5分間隔で硫酸第一鉄溶液に加えた。10ミリリットルの水を使用して、微量の残存ラウリン酸を反応混合物の中にすすぎ入れた。反応混合物は、ラウリン酸の添加後に、より暗色に変わった。加熱を40分後に止め、1時間後に窒素パージを停止した。混合物を室温で一晩放置した。翌日、溶液を濾過し、微量を20mlの水で洗浄し、濾過溶液を6時間にわたって真空下において乾燥した。ラウリン酸鉄の最終重量は0.39gであった
実施例1
分散体は、20mgFeステアリン酸塩、80mgのCitrem(実質的に不飽和モノおよびジグリセリドのクエン酸エステルの混合物)、および20mgのステアリン酸を使用して調製した。全ての化合物を混合し、65℃で30分間超音波処理した。超音波処理した後、1mlの水および5mgのKCOを加えた。更に超音波処理を30分間実行し、混合物を渦巻混合し、65℃で合計30分間最終超音波処理に曝露した。得られた分散体の安定性を、調製したまま、および4℃または室温で(暗黒中に)保存した後、目視観察により観察した。保存中に沈降があったが、比較的安定した分散体が、単に30秒間渦巻混合することによって再び形成された。顕微鏡下では、ほぼ全てのミセル粒子が1μMより小さいことが見出され、分散体は、4℃または室温のいずれかによる4週間の保存後に比較的無変化のままであった。
【0109】
実施例2
ステアリン酸鉄(1.8重量%)、ステアリン酸(1.8重量%)およびCitrem(7.1重量%)を混合し、混合物を、30分毎にボルテックスしながら、オーブンにより140℃で2時間加熱して溶解させた。加熱時間の終了時に、75℃の水(88.9重量%)中のKCO(0.4重量%)の水溶液を加え、混合物を浴中において75℃で超音波処理した。混合物を室温に冷まし、その間、15分毎にボルテックス混合した。
【0110】
実施例3
分散体は、20mgのステアリン酸鉄、80mgのCitrem(実質的に不飽和モノおよびジグリセリドのクエン酸エステルの混合物)、および22.7mgのステアリン酸カリウムを使用して調製した。全ての化合物を混合し、65℃で30分間超音波処理した。超音波処理した後、1mlの水を加えた。更に超音波処理を30分間実行し、混合物を渦巻混合し、65℃で合計30分間最終超音波処理に曝露した。
【0111】
この分散体のサイズ分布を、Morphology 4(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)により調査した。明視野照明を、70.0±0.2%に校正した光強度で分散体粒子の顕微鏡可視化に使用した。試料を、20×対物レンズを使用してスキャンした。スキャン面積は、4.5mm×4.5mmであった。試料をHOで8.5%に希釈し、5μLをスライド上に置いた。機器は、約90,000の粒子画像を解析し、90%のサイズが2.42μM未満の直径であった(図1および表5)。
【0112】
【表4】
【0113】
実施例4
実施例1の手順を、Feステアリン酸塩の代わりに59Feステアリン酸塩を使用して繰り返した。安定した分散体を得た。
【0114】
実施例5
実施例1の手順を、Feステアリン酸塩の代わりにFeラウリン酸塩(20mg)、80mgのCitremおよび20mgのステアリン酸を使用して繰り返した。安定した分散体を得た。
【0115】
生物学的アッセイ
ヒト腸Caco-2細胞による鉄の取り込み
ヒト腸Caco-2細胞(40~50継代)を、4500mg/Lのグルコース、L-グルタミンおよび重炭酸ナトリウムを有し、ピルビン酸ナトリウムを有さないダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM)において培養した。ウシ胎児血清(10%)、L-グルタミン(1%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(1%)、および最小非必須アミノ酸(1%)も添加した。細胞を、75cmのフラスコ中において、5%COおよび95%空気の加湿雰囲気下、37℃で増殖させた。フラスコ中で培養密度になった後、Caco-2細胞を6個のウエルプレートに接種した。プレート中の培地を2日毎に交換し、約14日後、Caco-2細胞は完全に分化し、鉄輸送タンパク質を発現するはずであった。培養の14日後、Caco-2細胞を、無血清最少必須イーグル培地で一晩飢餓させた。翌日、細胞をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で洗浄し、実施例1に記載されたように調製した分散体を、鉄濃度の50μMもしくは100μMのいずれかで、または陽性対照として50μMのアスコルビン酸第一鉄(1:20、FeSOおよびNaアスコルビン酸塩)をHBSS緩衝液中に2時間補充した。インキュベーションの時間の後、培地をEppendorf管で収集し、ガンマカウンターでモニターした。Caco-2細胞を冷リン酸緩衝食塩水、pH7.4で洗浄し、0.5mlのNaOH(0.1N)を加えた。細胞を15分間放置して溶解を達成させ、Eppendorf管で採取し、ガンマカウンターでモニターした。その後、総タンパク質の濃度をBradford方法により測定した。
【0116】
アスコルビン酸第一鉄から、および本発明の製剤からのCaco-2細胞の鉄取り込みを、タンパク質の総濃度に正規化して、図2に表す。
マウスにおける鉄のin vivo吸収-59Fe吸収研究
貧血マウスを、Latunde-Dada et al,J.Nutr.144(2014)1896-902の方法を使用して発生させた。マウス(3週齢)を4群に分け(n=6匹)、2群には正常鉄食餌(48mg鉄/Kg)を、他の2群には鉄欠乏食餌(3mg鉄/kg)を6週間にわたって摂取させた。実験の前に、ヘモグロビンレベルを測定して、正常群と鉄欠乏群の差を確認した。59Fe標識鉄による治療の前日に、全てのマウスには一晩食餌を与えず、水を自由に入手させた。正常(非貧血)および鉄欠乏(貧血)マウスに、100μlの実施例4の製剤または59FeSOアスコルビン酸(1:1)([Fe]=21mM)のいずれかを胃管栄養補給した。経口胃管栄養法の4時間後、マウスを殺処分し、組織を収集した。結果を図3に表す。
【0117】
硫酸第一鉄/アスコルビン酸を用いると、貧血マウスにおいて鉄の吸収に著しい増強があり(図3)、低鉄食餌が実際に動物を貧血にすることが確認された(正常動物12.6±4%対貧血動物47.2±13.4%)。有意なことに、顕著に高い鉄吸収(約2倍)が、硫酸第一鉄で治療された正常動物(12.6%)と比較して、本発明の組成物で治療された正常動物(28.05±4%)に観察された。加えて、実施例4の製剤で治療された貧血マウスの鉄吸収は、実施例4の製剤で治療された正常マウスより高かった(39±6.4%)。
【0118】
組織分布
59Fe取り込み研究における組織を、鉄分布の調査に使用した(図4~7)。正常な動物において、大部分の鉄は、「屠殺体」の中(恐らく、血液およびリンパ液の中)にある。しかし、実施例4の製剤が鉄源として使用される場合は、より多くのFeが、肝臓、脾臓、および腎臓に中にある。鉄欠乏マウスでは、FeSOが鉄源として使用される場合、より多くのFe分布が肝臓にあったが、2つの供給源の全体的な分布は類似していた。
【0119】
経口鉄による治療後の貧血マウスにおけるヘモグロビンレベル
この研究の手順には、十分に確立された技術(Kajarabille et al,Brit.J.Nutrition,117(2017)767-774)を採用した(図8)。貧血動物(12.8±2.4g/dL)と正常動物(19.55±2.4g/dL)のヘモグロビンレベルに変化があった(図9)。FeSOおよび実施例1の製剤は、両方とも正常マウスに対して貧血マウスにおいてヘモグロビンレベルを増加させた。図9に示されているように、実験の開始時(0日目)では、全ての群は対照群と比較して低いヘモグロビンレベルを有した。FeSOまたは実施例1の製剤(Fe、21mM、100μl)のいずれかによる10日間の胃管栄養法の後、両方の群は、Hbレベルを回復し、貧血群のみが正常(対照)群と異なる値を有した。
【0120】
ヘモグロビン充足研究
雄CD1マウス(3週齢)に、改変AIN-76A精製齧歯類食餌(TD.80396、Harlan Teklad)に基づいた低鉄食餌の3mg Fe/Kg食餌を3週間(すなわち、6週齢になるまで)摂取させることにより、Fe欠乏症にした。別の群のマウスには、正常な鉄豊富食餌(48mg Fe/Kg食餌)(TD.80394、Harlan Teklad)を与え、対照として機能させた。食餌は同一組成のものであったが、鉄豊富食餌はクエン酸第二鉄として添加された鉄を含有した。この後、血液を尾から抜き取って、マウスの初期Hb濃度を決定した。次いで、Fe欠乏マウスを類似したHb濃度に基づいて治療群に分けた。1つの群のマウスでは、鉄補給なしの低Fe食餌(低鉄食餌)を維持し、他の2つの群では、FeSOまたは実施例1の分散体による150mgのFeを10日間にわたって毎日胃管栄養補給した。10日後、マウスを計量し、マウスに麻酔をかけ、血液試料を、Hb、血清中鉄および血清中フェリチンの決定のために採取した。次いで、マウスを麻酔により殺処分し、続いて首を脱臼させ、脾臓、十二指腸、腎臓および肝臓試料を切り取り、液体窒素で瞬時に冷凍し、更に分析するまで-70℃で保存した。
【0121】
毒性研究
貧血CD1マウスを、実施例1の製剤(20mMのFe、100μL)の経口胃管栄養法に10日間付した。最終用量の後、マウスには、殺処分および組織を収集する前に、18時間にわたって水を自由に入手させた。組織を、様々な毒物学的調査に付すまで-70℃で保存した。4群の動物、すなわち、非貧血マウス、貧血マウス、FeSOで治療した貧血マウス、および実施例1で治療した貧血マウスであった。試験を以下のパラメーターに関して行った。
【0122】
1.脂質過酸化(MDA測定)
2.GSHレベル
3.カタラーゼレベル
4.非ヘミ鉄レベル
5.血漿中フェリチンレベル
方法論
十二指腸の収集は、幽門の後ろの最初の5cmを取り出すことによって達成した。切片を横断開放し、粘膜をガラススライドの使用により取り出した。
【0123】
脂質過酸化
脂質過酸化は、Cohesion BiosciencesからのMDAマイクロプレートアッセイキット(カタログ番号CAK1011)を使用して、エンドポイント生成物であるマロンジアルデヒド(MDA)の検出によって測定した。肝臓組織(70mg)または十二指腸粘膜(20mg)を計量し、キットの製造会社の使用説明書に従って、アッセイ緩衝液で均質化した。全ての試料をアッセイの間中ずっと氷で保持した。色素試薬(チオバルビツール酸)を、アッセイを実施する30分前に室温にした。吸光度を、プレートリーダーを使用して532および600nmで測定した。抽出物のタンパク質濃度をBradfordアッセイプロトコールで分析し、MDA値を、タンパク質含有量に対して正規化した。
【0124】
GSHレベル
還元型GSHを、MyBiosource社からのELISAキット(カタログ番号MBS026635)により測定した。アッセイは、製造会社の使用説明書に従って実施した。マウスの組織をPBSですすぎ洗いして、過剰な血液を取り除き、計量し(肝臓50mgまたは十二指腸粘膜20mg)、氷上でガラスホモジナイザーによりPBS(pH7.4)で均質化し3000rmpにより4℃で20分間遠心分離した。遠心分離した後、試料を室温にして、上清を注意深く収集した。全ての試薬を、使用する20分間前に室温にした。標準曲線を、GSH抗体-GSH抗原相互作用およびホースラディッシュペルオキシダーゼ比色検出システムに基づいて作成した。光学密度(OD)を、停止液を添加した後の10分以内にマイクロプレートリーダーを450nmで使用して決定した。
【0125】
カタラーゼレベル
カタラーゼ酵素の活性を、Catalase Kit(Arborアッセイ社、カタログ番号K033-H1)を使用して検出した。マウスの組織をPBSですすぎ洗い、過剰な血液を取り除き、計量した(肝臓100mgまたは十二指腸粘膜20mg)。試料調製およびアッセイの手順を、製造会社の使用説明書に従って実施した。組織試料をガラスホモジナイザーにより氷冷アッセイ培地で均質化し、10,000×gにより4℃で15分間遠心分離した。上清を収集して、アッセイを続けた。カタラーゼ過酸化水素酵素による標準を、再構成した30分以内に測定した。生成された色反応を、プレートリーダーを使用して450nmで読み取った。
【0126】
非ヘミ鉄レベル
非ヘミ鉄を、Simpson&Peters(Br J Nutr.1990;63:79-89)により改変したFoy et al.(Analytical Biochem.1967;18:559-563)の方法に従ってアッセイした。肝臓組織を氷冷PBSで洗浄し、計量し(70mg)、ガラスDounceホモジナイザーにより0.15MのNaCl-HEPES緩衝液(pH7.4)で均質化(1:5のw:v)した。100μlの得られた抽出物を200μlのTCA-ピロリン酸ナトリウムと共に沸騰させ、10分間沸騰させて、10,000RPMで遠心分離し、上清を収集し、沸騰抽出および遠心分離を2回繰り返した。全上清収集物から、200μLを、100μLの0.23Mアスコルビン酸、80μLの10mMフェロジン、および420μLの2.0Mナトリウム緩衝酢酸塩(pH4.8)と混合した。全ての試料をブランクに対して562nmで測定し、基準値と比較した。
【0127】
フェリチンレベル
このアッセイでは、血漿試料に存在するフェリチンが、ポリスチレンマイクロタイターウエルの表面に吸着している抗フェリチン抗体と反応する。アッセイは、Abcam社により提供されたキット(カタログ番号ab157713フェリチン、マウスELISAキット)により実施した。血漿試料を、キットから提供されたアッセイ希釈剤で1:40に希釈した。複合体に結合した酵素の量を、発色基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)の添加により測定した。比色反応を、プレートリーダーにより450nmで測定した。試験試料中のフェリチンの量は、フェリチンの既知濃度による標準曲線から補間した。
【0128】
結果
肝臓および十二指腸におけるMDAレベルを、図10および11にそれぞれ報告する。正常マウス比較すると、鉄欠乏マウスにおいて両方の組織に存在するMDAレベルにわずかな減少がある(N.S.)。このことは、恐らく、低レベルの非ヘミ鉄(不安定な鉄プール)に関連している。しかし、この差は、FeSOまたは実施例1のいずれかにより治療されたマウスにおいて更に増加している(N.S.)。図10および11に見られるように、実施例1は、最低レベルのMDAに関連する。明らかに、実施例1の存在下ではMDAに増加はない。
【0129】
動物の異なる群における還元型グルタチオン(GSH)のレベルを、図12および13に示す。治療を受けた貧血マウスにおいてレベルが増加する傾向があり、事実、差は十二指腸ではFeSOで有意である。このことは、治療動物において増強された不安定鉄プールに関連する可能性がある。GSHは、実施例1の存在下で低減されず、レベルは、FeSOにより治療された動物と実施例1により治療された動物で類似している。
【0130】
カタラーゼ(図14および15)では、この研究から明白な結論導き出すことができない。結果にはばらつきがあり、そのため、平均値は互いに有意に異なっていなかった。
本発明の組成物を受けた動物の肝臓における非ヘミ鉄レベルは、正常な肝臓、貧血肝臓、およびFeSOにより治療された貧血肝臓において見出されたレベルより実質的に高かった。測定値を表6に示し、図16に例示する。
【0131】
【表5】
【0132】
これは素晴らしい結果であり、本発明の組成物が、事実、内因性肝臓プロセスに鉄を供与するのに有効であることを示している。この知見は、実施例1が最高レベルを生成した血漿中フェリチンレベル(図17)により確認され、未治療マウスと類似しており、一方、鉄欠乏マウスおよびFeSOにより治療されたマウスの血漿中フェリチンレベルは、両方とも正常マウスより低かった。血漿中フェリチンレベルは、肝臓の鉄の状態を反映している。
【0133】
本発明の異なる組成物からのヒト腸Caco-2細胞による鉄の取り込み
本明細書上記に記載されたCaco-2アッセイを、それぞれが鉄を100μMの濃度で含有する実施例1、実施例2および実施例5の分散体をそれぞれ鉄の供給源として使用して繰り返した。結果を図18に表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18