(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】物質を分析するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/45 20060101AFI20240122BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G01N21/45 A
A61B5/1455
(21)【出願番号】P 2021523499
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019064356
(87)【国際公開番号】W WO2020094265
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/080665
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516378529
【氏名又は名称】ディアモンテク、アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】DiaMonTech AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】ウーベ、シュリーク
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリート、ノエル
(72)【発明者】
【氏名】トルステン、ルビンスキ
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-066252(JP,A)
【文献】特開2005-127748(JP,A)
【文献】特開2016-014630(JP,A)
【文献】国際公開第2017/097824(WO,A1)
【文献】特表2005-517895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
G01N 33/48 - G01N 33/98
A61B 5/00 - A61B 5/398
G01J 3/00 - G01J 5/90
G01K 1/00 - G01K 19/00
G01L 7/00 - G01L 27/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を分析するためのデバイスであって、
測定面(2)を有し
、直接的にもしくは媒
体を用いて前記測定面の測定用エリアにおいて前記物質(3)と少なくとも部分的に結合される、または直接的にもしくは
前記媒体を用いて前記物質と接触させられる測定体(1、1a)と、
異なる波長の光または励起ビームを生成することが可能な励起放射源であって、特にレーザ・デバイス(4)であり、特に量子カスケード・レーザ(QCL)、チューナブルQCLを有し、および/またはレーザ・アレイ、好ましくはQCLのアレイを有し、前記測定体(1、1a)が前記測定面(2)の領域において前記物質(3)と結合される、および/または接触している場合に前記物質(3)に向けられる、好ましくは赤外または中赤外スペクトル域における異なる波長
の励起ビーム(10)を生成する励起放射源と、
前記測定体(1、1a)に少なくとも部分的に一体化または接続された検出デバイス(5、6、7)であって、
検出光、好ましくはコヒーレント検出光(11)のための光源(5)、および
前記検出光源に接続されることが可能でありまたは接続され、前記検出光を導光し、屈折率が少なくとも一部の部分において温度および/または圧力に依存する第1の光導波路構造(6)であって、温度または圧力の変化に起因する前記光導波路構造(6)の少なくとも一部における検出光の位相シフトに前記検出光の光強度が依存する、少なくとも1つの部分(9)を有する、第1の光導波路構造(6)
を含む、検出デバイス(5、6、7)と
を有し、
前記第1の光導波路構造(6)が干渉計デバイスを含み、前記光導波路構造の前記少なくとも一部における前記位相シフトに前記検出光の前記光強度が依存する前記少なくとも1つの部分(9)が、前記干渉計デバイスを通過した後の前記検出光により到達される、前記干渉計デバイスの下流側の部分であり、
前記干渉計デバイスは、
前記検出光を部分ビームに分けるスプリッタ(6c)と、それぞれが前記部分ビームの1つを伝える測定アーム(12a)および基準アーム(12b)と、前記測定および基準アーム(12a、12b)をそれぞれ通過した後の前記部分ビームの再結合のためのカプラ(6d)とを有する干渉計(12)であって、前記測定アーム(12)の少なくとも一部の部分における前記屈折率が前記温度および/または圧力に依存することにより、前記測定アーム(12a)内に導光された前記検出光の一部分の位相シフト、および、前記再結合された検出光の強度の変化につながる、干渉計(12
)である、デバイス。
【請求項2】
前記測定面(2)の面法線の方向における前記第1の光導波路構造(6)の投影の少なくとも1つの部分が、前記測定面(2)と重なることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記励起ビーム(10)の強度を変調するために変調デバイス(8)が設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
温度または圧力の変化に起因する前記第1の光導波路構造の前記少なくとも一部における前記検出光の位相シフトに光強度が依存する前記第1の光導波路構造(6)の前記部分(9)における、光強度が、測定デバイス(7)によって、直接的または間接的に検出されることを特徴とする、請求項1、2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記干渉計(12)が、前記測定アームと結合される光学共振リング(13)をさらに有することを特徴とする、請求項1、2、3または4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の光導波路構造(6)、特に前記第1の光導波路構造の干渉計デバイスが、少なくとも一部の部分において前記測定体(1)に接続された、少なくとも1つの光ファイバ光導波路(14)を含むことを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の光導波路構造(6)の、特に前記第1の光導波路構造の干渉計デバイスの光導波路(15、16)が、前記測定体の基板(1a)に一体化される、または基板に接続されることを特徴とし、前記第1の光導波路構造(6)は、絶縁基板に接続されまたは絶縁基板に一体化された少なくとも1つのシリコン光導波路を有し、特に前記シリコン光導波路はまた、絶縁体、特にSiO2によって少なくとも部分的に覆われる、請求項1から
6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
特に前記測定体の前記測定面の領域または前記測定面(2)に隣接する領域において、前記励起ビーム(10)が、前記測定体(1、1a)の材料または前記測定面に隣接する領域を通過することを特徴とし、前記測定体または前記励起ビーム(10)によって貫通される領域は、前記励起ビームを透過させる、請求項1から
7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記励起ビーム(10)が、第2の光導波路構造(17)を用いて、前記測定体(1、1a)の内部でまたは前記測定体に沿って導光されることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記レーザ・デバイス(4)と分析対象の前記物質(3)との間の前記励起ビーム(10)が、前記測定体(1、1a)の連続的な開口部(18)を通過することを特徴とし、前記開口部は
、前記測定面の前方に距離を空けて終端する、または前記測定面(2)を貫通する、または前記測定面に直接隣接するおよび/もしくは隣り合う領域に配設される、請求項1から
9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記測定体(1、1a)が、平坦な物体として、特にプレートの形態の平行平面体として形成されることを特徴とし
、前記測定面(2)に垂直な方向における前記測定体の厚さは、前記測定面に平行な任意の方向における前記測定体の延長部の50%未満、特に25%未満、より特定的には10%未満である、請求項1から
10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記測定体(1,1a)が、前記レーザ・デバイス(4)により前記測定面(2)に照射される前記励起ビーム(10)を反射するためのミラー・デバイス(19)を含むまたは保持することを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記励起ビーム(10)が、前記測定面(2)に平行に、または前記測定面に対して30度未満、特に20度未満、より特定的には10度未満または5度未満の角度を付けて、前記測定体(1、1a)へと向けられ、前記励起ビームが前記測定面に向かって進路変更または偏向されることを特徴とし、前記励起ビームは特に、前記測定面を通過し、または前記測定体の前記測定面に形成された開口部(18)を通過する、請求項1から
12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記測定体(1、1a)において、前記測定面(2)から見て前記検出デバイス(5、6、7)の後方および/または隣に、特に前記第1の光導波路構造(6)の後方または隣に、特に前記第1の光導波路構造(6)に隣接しかつ熱的に接触するよう、少なくとも1つのヒートシンク(20)が、固体状態の物体または材料の形態で配設されることを特徴とし、特に、前記ヒートシンクの前記物体または前記材料の比熱容量および/または熱伝導率は、前記検出デバイス(5、6、7)の材料、および/または前記第1の光導波路構造および/もしくは前記第1の光導波路構造(6)の基板(1a)の材料、ならびに/または前記測定体(1、1a)を含む他の材料の、比熱容量および/または熱伝導率よりも大きく、および/または、
前記検出デバイスの一部、特に前記第1の光導波路構造(6)の一部、より特定的には干渉計の基準アームを、熱波および/または圧力波の効果から少なくとも部分的に遮蔽する障壁(30、40、41)が、前記測定体(1、1a)に設けられることを特徴とし、および/または、
前記検出デバイスの前記第1の光導波路構造(6)が
、干渉計の異なるアーム上に配設された少なくとも2つの測定部分(15a、16a)を含んでおり、少なくとも2つの測定部分(15a、16a)は、前記測定部分を通過する前記検出光に位相シフトが生じ、続いて圧力および/または温度の変化に応じてさらなる部分において前記検出光に結果としての強度変化が生じるように、屈折率
が圧力波および/または熱波の圧力および/または温度の変化に応じて変化することを特徴とし、前記2つの測定部分は、前記測定面(2)から
、前記励起ビームが貫通する前記測定面の領域から次々に
、互いに対して時間的にずれたまたは時間遅延のある時間間隔で、前記測定体を通して伝搬する圧力波および/または熱波により通過されるように前記測定体に配設される、請求項1から
13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイスのためのセンサであって、
測定面(2)を有し、温度波および/または圧力波を測定するための前記測定面の領域において物質(3)と少なくとも部分的に結合され、特に接触させられる測定体(1、1a)を有し、
前記測定体(1、1a)に少なくとも部分的に一体化されまたは接続された検出デバイス(5、6、7)であって、
コヒーレント検出光(11)のための光源(5)と、
前記検出光のための前記光源に接続されることが可能でありまたは接続され、前記検出光を導光し、屈折率が少なくとも部分的に温度および/または圧力に依存する第1の光導波路構造(6)と、
温度または圧力の変化に起因する前記第1の光導波路構造(6)の少なくとも一部における前記検出光の位相シフトに前記検出光の光強度が依存する少なくとも1つの部分(9)であって、前記第1の光導波路構造は、干渉計デバイスを有し、前記光導波路構造の前記少なくとも一部における前記位相シフトに前記検出光の前記光強度が依存する前記少なくとも1つの部分(9)が、前記干渉計デバイスを通過した後の前記検出光により到達される、前記干渉計デバイスの下流側の部分である、少なくとも1つの部分(9)と、
前記干渉計デバイス内または前記干渉計デバイスの光強度を検出するための測定デバイス(7)とを含む、検出デバイス(5、6、7)を有し、
前記干渉計デバイスは、
前記検出光を部分ビームに分けるスプリッタ(6c)と、それぞれが前記部分ビームの1つを伝える測定アーム(12a)および基準アーム(12b)と、前記測定および基準アーム(12a、12b)をそれぞれ通過した後の前記部分ビームの再結合のためのカプラ(6d)とを有する干渉計(12)であって、前記測定アーム(12)の少なくとも一部の部分における前記屈折率が前記温度および/または圧力に依存することにより、前記測定アーム(12a)内に導光された前記検出光の一部分の位相シフト、および、前記再結合された検出光の強度の変化につながる、干渉計(12
)である、センサ。
【請求項16】
請求項1から
14のいずれか一項に記載のデバイスを動作させるための方法であって、変調励起ビーム(10)が、分析対象の前記物質(3)上へと、特に前記測定体を通るように向けられ、時間的な光強度プロファイルもしくは波形または周期的な光強度変化が、前記検出デバイスにより検出されることを特徴とし、
前記時間的な光強度プロファイルもしくは波形または前記周期的な光強度変化は、前記第1の光導波路構造における前記光強度変化を測定することにより、または前記第1の光導波路構造から発せられた光の前記光強度を測定することにより、前記励起ビームの複数の波長について検出され、取得されたデータから分析対象の前記物質の吸収スペクトルを得る、方法。
【請求項17】
前記測定が、前記励起ビーム(10)の異なる変調周波数について実行され、補正された吸収スペクトルが、得られた吸収スペクトルの組み合わせから決定されることを特徴とする、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本財産権は、物質を分析するための装置および方法に関する。これらは、例えば動物またはヒトの組織、流体、特に体液の分析のために、および一実施形態においてはグルコース(glucose)または血糖の測定のために用いられてよい。
【背景技術】
【0002】
物質を分析するための、特に血糖を測定するための既知の方法が、例えば以下の文献に記載されている。
【0003】
1. Guoら:「Noninvasive glucose detection in human skin using wavelength modulated differential laser photothermal radiometry」、Biomedical Optics Express、Vol.3、2012、No.11、
2. Uemuraら:「Non-invasive blood glucose measurement by Fourier transform infrared spectroscopic analysis through the mucous membrane of the lip: application of a chalcogenide optical fiber System」、Front Med Biol Eng. 1999;9(2):137~153、
3. Farahiら:「Pump probe photothermal spectroscopy using quantum cascade lasers」、J. Phys. D. Appl. Phys. 45(2012)および
4. M. Fujinamiら:「Highly sensitive detection of molecules at the liquid/liquid interface using total internal reflection-optical beam deflection based on photothermal spectroscopy」、Rev. Sci. Instrum.、Vol.74、Number 1(2003)。
5. von Lilienfeld-Toal, H. Weidenmuller, M. Xhelaj, A. Mantele, W. A Novel Approach to Non-Invasive Glucose Measurement by Mid-Infrared Spectroscopy: The Combination of Quantum Cascade Lasers (QCL) and Photoacoustic Detection Vibrational Spectroscopy、38:209~215、2005。
6. Pleitez, M. von Lilienfeld-Toal, H. Mantele W. Infrared spectroscopic analysis of human interstitial fluid in vitro and in vivo using FT-IR spectroscopy and pulsed quantum cascade lasers (QCL): Establishing a new approach to non-invasive glucose measurement。 Spectrochimica Acta. Part A、Molecular and biomolecular spectroscopy、85:61~65、2012
7. Pleitez, M.ら、In Vivo Noninvasive Monitoring of Glucose Concentration in Human Epidermis by Mid-Infrared Pulsed Photoacoustic Spectroscopy Analytical Chemistry、85:1013~1020、2013。
8. Pleitez, M. Lieblein, T. Bauer, A. Hertzberg, O. von Lilienfeld-Toal, H. Mantele, W. Windowless ultrasound photoacoustic cell for in vivo mid-IR spectroscopy of human epidermis: Low interference by changes of air pressure, temperature, and humidity caused by skin contact opens the possibility for a non-invasive monitoring of glucose in the interstitial fluid。 Review of Scientific Instruments 84、2013
9. M. A. Pleitez Rafael、O. Hertzberg、A. Bauer、M. Seeger、T. Lieblein、H. von Lilienfeld-Toal、およびW. Mantele。 Photothermal deflectometry enhanced by total internal reflection enables non-invasive glucose monitoring in human epidermis。The Analyst、2014年11月。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特に簡単、正確かつ費用効果の高い方式で、物質、特に動物またはヒトの組織または組織の成分もしくは構成物質、あるいは流体を分析するために用いられることが可能な装置および方法を提供することにある。本発明の一態様はまた、装置の小型化の実現を伴う。
【0005】
加えて、ドイツ国特許文献DE 10 2014 108 424 B3が参照される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、とりわけ、請求項1に係る特徴を有する装置によって実現される。この装置の実施形態が、従属請求項に記載されている。加えて、本発明は、それに従属する従属請求項に係る対応する実施形態を伴う独立方法請求項に係る方法に関する。
【0007】
本特許出願は、出願時に明記されている請求項および例示的実施形態の対象に加えて、本説明の結びに列挙されているその他の態様も参照する。これらの態様は、個々にまたはまとめて、いずれの場合にも出願時に記載されている請求項の特徴と組み合わされることが可能である。これらの態様はまた、単独で取り入れられるか、互いにまたは本出願の特許請求の対象と組み合わされるかを問わず、独立した発明を構成する。本出願人は、今後においてこれらの発明を請求項の対象とする権利を保有する。これは、本出願の一部として、または後続の分割出願、継続出願(米国)、一部継続出願(米国)、もしくは本出願の優先権を主張する後続の出願の文脈の中で生じる場合がある。
【0008】
以下の説明に関して、「光」または「レーザ光」という用語は、可視域、近赤外域、中赤外域および遠赤外域、ならびにUV域における電磁波または電磁放射を意味する。
【0009】
以下の記載は、まず、出願時に列挙されている請求項の対象を扱う。
【0010】
この目的は、物質を分析するためのデバイスであって、以下、すなわち
- 測定面を有し、特に直接的にもしくは媒体、特に流体を用いて測定面の測定用エリアにおいて物質と少なくとも部分的に結合される、または直接的にもしくは媒体を用いて物質と接触させられる測定体と、
- 異なる波長の光または励起ビームを生成することが可能な励起放射源であって、特にレーザデバイスであり、特に量子カスケード・レーザ(QCL)、チューナブル(tuneable)QCLを有し、および/またはレーザ・アレイ、好ましくはQCLのアレイを有し、測定体が測定面の領域において物質と結合される、および/または接触している場合に物質に向けられる、好ましくは赤外スペクトル域における異なる波長を有する1つまたは複数の励起ビームを生成する励起放射源と、
- 測定体に少なくとも部分的に一体化または測定体に接続された検出デバイスであって、以下、すなわち
- 好ましくはコヒーレント検出光のための光源、および
- 検出光源に接続されることが可能でありまたは接続され、検出光を導光し、屈折率が少なくとも一部の部分において温度および/または圧力に依存する第1の光導波路構造であって、光強度が、温度または圧力の変化に起因する光導波路構造の少なくとも一部における検出光の位相シフトに依存する、少なくとも1つの部分を有する、第1の光導波路構造を含む、検出デバイスと
を有するデバイスによる、特許請求項1に係る発明の特徴によって実現される。
【0011】
これに関連して、検出光の位相シフトは、温度または圧力の変化の前またはそれがないときの検出光の位相位置に対する位相シフトを意味するものとして理解される。よって、光強度の変化から検出光の位相シフトが決定され、またこれから屈折率の変化が決定されることが可能である。屈折率の変化から、例えば熱波および/または圧力波の強度が決定されることが可能であり、そしてこれから、好適な実施形態においては、吸収強度が決定され、またこれから検出対象の物質の濃度が決定されることが可能である。検出光という用語は、可視光に加えて、赤外光もしくはUV光、または光導波路構造を通過させられることが可能な別の種類の電磁波も意味する場合がある。
【0012】
励起ビームを用いて物質にエネルギーが投入され、照射された光の波長および分析対象の物質中に存在する物質ならびにその共振または吸収周波数に応じて励起ビームが大きくまたは小さく吸収され、熱エネルギーが分子振動の形態で放出される。波長可変光源は、チューナブル・レーザまたはレーザ・アレイに加えて、例えばフィルタによって個々の波長が任意に選択されることが可能な広帯域光源といった、異なる種類の放射源により形成されてもよい。例えば、所望の波長域にわたる狭い帯域内でその放射が選択されることが可能な、赤外域の1つまたは複数の発光ダイオードが用いられることが可能である。ここでまた、光源または光路において変調が生じてよい。
【0013】
その強度に関して、加熱プロセスが励起ビームの変調に続き、分析対象の物質内、とりわけ測定体に向かってまたその内部を伝搬し、検出デバイスの第1の光導波路構造に影響を与える熱波および/または圧力波を生成する。測定体は、測定面のエリアにおいて物質と結合され、それにより、熱波および/または圧力波が物質から測定体へと通過することができる。結合は、物質と測定体との物理的接触によって直接的に生じてよく、例えば適当な固体または流体、気体もしくは液体の媒体を介在させることにより生じてもよい。このように、結合は、例えば物質から測定体への音響圧力波の放出において、また必要に応じて気体媒体を通る経路を介して生じてもよい。物質と測定体との間の媒体の適当な選定により、測定体への考えられる最良の結合を実現するようにインピーダンス整合が提供されることが可能である。
【0014】
励起ビームは、有利には、測定面と直接接触するまたはそれに結合されるエリアにおいて物質に入射される。励起ビームは、分析対象の物質と結合されるまたは接触する測定面のエリアのすぐ隣において物質に入射されてもよい。励起ビームは、体積(volume)を通して、測定体の開口部または穿孔を通して、または特にさらに少なくとも、測定体の材料の一部の部分を通して、あるいは測定体のすぐ近傍における測定体の外部境界を通過するように、伝導されてよい。開口部/穿孔が励起ビームのために測定体に設けられる場合、これは測定体を完全に通過してよく、または止まり穴として形成されてよく、この場合、測定面のエリアにおいて、例えば厚さ0.05mmから0.5mm、特に厚さ0.1mmから0.3mmの測定体の材料あるいは別の材料の被膜がその場に残っていてよい。
【0015】
第1の光導波路構造に対する熱波および/または圧力波の影響に起因して、第1の光導波路構造の少なくとも1つの部分における屈折率が変化させられ、検出光の位相シフトが生じさせられ、これは第1の光導波路構造の少なくとも1つの部分における光強度の測定可能な変化につながる。
【0016】
そのような位相シフトの検出のために、例えば干渉計式の方法およびデバイスが利用可能である。
【0017】
したがって、本発明はまた、熱波および/または圧力波の通過中における材料の温度増大の定量的測定のための干渉計式の測定方法または干渉計式の測定デバイスの使用に関する。
【0018】
測定体は、検出光源および第1の光導波路構造が取り付けられるまたは配設されることが可能な保持体によって形成されてよい。検出光源は、第1の光導波路構造の入射点の真正面に配設され、または光導波路を用いてそれに接続されてよい。検出光源は、集積半導体素子として光導波路構造に直接一体化され、例えば光導波路構造と同じ基板上に配設されてもよい。光導波路は、光ファイバケーブルとして、あるいは集積光導波路として実装されてよい。例えば、測定デバイス自体が、集積光導波路が配設されることが可能な基板を構成または包含してもよい。測定体の材料は、励起光に関して透過的または非透過的とされてよい。測定面は、分析対象の物質と結合されるまたは接触させられ得る測定体の外部境界面として定義されてよく、熱波および/または圧力波が物質から測定面を通って測定体へと移送されることが可能である。
【0019】
測定体の設計において、第1の光導波路構造は、測定体が測定面のエリアにおいて物質と結合されている/接触しているときに、励起光の吸収により生じさせられた圧力波または熱波により影響されるように、測定面に関して配設されることが規定されてよい。
【0020】
例えば、測定面の面法線の方向における第1の光導波路構造の投影の少なくとも1つの部分が、この測定面と重なることが規定されてよい。
【0021】
より一般的には、第1の光導波路構造の少なくとも1つの部分が、測定面から、特に励起ビームがそれを通過する測定面のエリアから直線方向に、波によって到達されることが可能であることが規定されてもよい。
【0022】
光導波路構造の少なくとも1つの部分、特に干渉計素子、より特定的には光導波路構造の干渉計の少なくとも1つのアームが、軸が測定面に垂直であり、励起ビームが測定面を貫通する点に先端が配置され、90°以下、好ましくは60°以下、特に20°以下の開き角度を有する仮想円錐内に配置されていると有利である。開き角度は、仮想円錐の円錐軸と包絡線(envelope line)との間の角度の2倍として定義される。
【0023】
加えて、第1の光導波路構造の少なくとも1つの部分は、測定面から2mm未満、好ましくは1ミリメートル未満、より好ましくは0.5mm未満だけ離れていることが規定されてよい。
【0024】
この目的は、測定体が測定面のエリアにおいて物質と接触して結合されたときに励起光の吸収により物質に誘起させられる熱波および/または温度波によって、第1の光導波路構造の少なくとも一部に検出光の測定可能な位相シフトが生じるように、第1の光導波路構造が測定面に対して配設されることを確実とすることである。
【0025】
測定面は、平面として設計されてよく、置かれる物体または目標物が良好に中心付けられまたは位置付けられることが可能な凹面または部分的な面を有してもよい。そして、測定面は、例えば部分的に円筒形のチャネルの形状またはドーム形状、特に曲率半径が例えば0.5cmから3cmの間、特に0.5cmから1.5cmの間である球状のドーム形状を有してよい。測定面が完全に平坦でない場合、測定面の陥凹部の中心における面法線または測定面に置かれる物体の平面の面法線のいずれかが、測定面の面法線であるとして理解されるであろう。面法線は、測定面の陥凹部を架け渡すことによりその延長部を形成する平面の面法線であるとして理解されてもよい。
【0026】
測定体には、測定面のエリアにおいて熱波および/または圧力波を可能な限り損失がないように伝導する材料で被膜が施されてもよい。例えば、この材料は、ゲル状または固体であってよく、また励起ビームを透過してもよく、または励起ビームが測定面を通過するエリアに開口部を有してよい。例えば、被膜は、厚さ1mm未満または0.5mm未満と幾分薄くてよく、または厚さ0.5mm超、特に1mm超、より特定的には2mm超と幾分厚くてよい。
【0027】
上記の曲面形状は、厚さの均一な被膜が設けられた状態で測定体の基板によって形成されてよく、または基板が平面を有してよく、この場合は曲面が被膜の厚さプロファイルによって実現されてよい。
【0028】
第1の光導波路構造は、測定体の、測定面とは反対の側に、または測定体の、測定面を向く側の面上に配設されてよい。この場合、測定体は、例えばエピタキシャル気相成長技術を用いて、測定面とは反対のまたは測定面の直下の側に光導波路が搭載される基板を形成してよい。
【0029】
第1の光導波路構造は、例えば熱波または圧力波の良好な供給および良好な放散を確実にするために、測定体または基板の内部に配設され、全ての側が測定体/基板の材料によって囲まれてもよい。この場合、第1の光導波路構造は、既知の製造プロセスを用いて基板内部に「埋め込まれ」てよく、すなわち、特に第1の光導波路構造の光導波路自体とは異なる屈折率を有する、異なる種類の材料によって全ての側が覆われる。光導波路は、それ自体がシリコンにより形成されている場合、例えばシリコン酸化物により覆われてよい。基板/測定体は、全体的または部分的にシリコンで作製されてもよい。集積光導波路は、例えばポリエチレンといったプラスチックまたは光透過性の結晶性材料で構築されてもよい。例えば、第1の光導波路構造は、測定面に平行に、および/または測定面に平行な平面内に配設されてよい。一般に、光学集積光導波路は、例えばいわゆるストリップまたはスロット導波路として、すなわち光波が導光される材料ストリップとして、または画定された境界材料からなる全反射境界の間における適切に形成された間隙もしくは介在空間(スロット)として設計されてよい。
【0030】
説明されている種類のデバイスにおいて、励起ビームの強度を変調するための変調デバイスが設けられてよい。
【0031】
この場合、励起ビームの強度は、機械的遮断(機械的チョッパ)に加えて、制御可能シャッタもしくは偏向ミラー・デバイス、または制御可能な伝導性を有する物体/層を用いることにより制御されてよい。加えて、変調は、励起光源/レーザ光源を制御することにより直接的に実現されてもよく、または、励起ビームを励起光源/レーザ・デバイスから分析対象の物質までのその経路上で全体的または部分的に遮断または偏向するシャッタまたは電子強度制御装置により実現されてもよい。これは、干渉計デバイスまたは電子制御可能なピエゾ結晶もしくは液晶により、または、励起光ビームに対する透過率または反射率を変化させる別の電子制御可能なデバイスにより実行されてもよい。そのようなデバイスは、レーザ設備の一体部分として、または測定体/基板に機能的に一体化された機能要素として設けられてよい。これが可能であるのは、集積化された光学系および電子系の三次元的な機能的構造が基板の単層または多層構造を用いて形成され得るためである。例えば光変調のための制御可能な偏向ミラーを形成するために、MEMS構造(微小電子機械構造)がこのように基板に一体化されてもよい。
【0032】
本明細書で提示される方法の1つの可能な態様は、応答信号の測定を物質表面(から間隔を空けて)よりも下方の選択された深さ範囲に集中させることである。パラメータdは、本方法を用いて測定される深さ範囲に対して最も大きな影響を有する。d=√(D/(π*f))として定義され、ここでDは試料(例えばここでは皮膚)の熱拡散率であり、fは励起ビームの変調周波数である。皮膚の熱拡散率のさらなる詳細については、以下の出版物が参照される。
【0033】
- U. Werner、K. Giese、 B. Sennhenn、K. Plamann、およびK. Kolmel、「Measurement of the thermal diffusivity of human epidermis by studying thermal wave propagation」、Phys. Med. Biol. 37(1)、21~35(1992)。
- A. M. Stoll、Heat Transfer in Biotechnology、Advances in Heat TransferのVol 4、J. P. HartnettおよびT. Irvin編(New York、Academic、1967)、p 117。
【0034】
本開示において、「応答信号」という同じ用語がいくつかの意味で用いられることに留意されたい。一方では、それは、励起ビームによる励起に対する物理的応答、すなわち音波、温度上昇、またはそれに類するものなどを説明する場合がある。他方では、それは、この物理的応答を表す光学的または電気的な信号、すなわち(光学的信号の一例としての)検出光の強度、または電気的信号である、強度の測定値を説明する場合もある。提示の簡潔性および統一性のために、「応答信号」という同じ用語が全体を通して用いられ、それが物理的応答(例えば圧力波または温度波)、その物理的応答の物理的結果(例えば検出光の位相シフト)、または関連する測定信号(例えば光センサにより測定される検出光の強度)のいずれを指すものであるかは、さらなる説明がなくとも文脈から明らかである。
【0035】
測定の質を向上する目的で物質の最上層から応答信号を排除するために、一実施形態において、最上層における測定結果が他の、より深い層と比較してより小さくまたはより遅く変化する場合、以前の測定と比較した測定値の変化が用いられてよい。これは、ヒトの皮膚の測定における実施形態に当てはまる場合があり、この場合、皮膚の最上層は実際にはより下の層との交換(exchange)が行われず、したがって生理学的パラメータがあまり変動しない。信号を皮膚最上層から除外するために、測定値の時間微分が応答信号に用いられてもよい。これにより、測定または少なくとも評価が、皮膚中の間質液に限定または集中させられることが可能である。
【0036】
この目的で、測定は、励起光源の異なる変調周波数で複数回取得されたスペクトルについての応答信号の取得、例えば同じ波長および異なる変調シーケンスについて応答信号の測定値を微分するまたはその商を形成する(forming)ことにより、異なる変調周波数についての結果を組み合わせることを含んでよい。そのような測定を行うために、励起ビームのための適切な制御デバイスおよび応答信号のスペクトルのための評価デバイスを有する装置も設けられるべきである。
【0037】
特に温度または圧力の変化に起因する第1の光導波路構造の少なくとも一部における検出光の位相シフトに光強度が依存する部分における、第1の光導波路構造における光強度の直接的または間接的な検出のために、測定デバイスが設けられてもよい。測定デバイスは、それ自体で、第1の光導波路構造における光強度または結合点において分離される検出光成分の強度を測定してよい。測定デバイスは、フォトダイオードなどの、基板に一体化された感光性半導体素子を含んでよい。これは、光強度が直接測定されることを可能とする。例えば第1の光導波路構造における温度または場の強さなどの他のパラメータを測定することにより、間接的な測定方法が提供されてよい。
【0038】
検出デバイスが、干渉計デバイス、特に干渉計および/または光導波路共振素子、特に共振リングもしくは共振プレートを含むことがさらに規定されてよい。干渉計、特にマッハ・ツェンダー干渉計が、検出光が干渉計の2つの別個のアームを経由させられる2つの部分ビームにビーム・スプリッタによって分割される干渉計デバイスとして設けられてよい。干渉計の2つのアームは、異なる度合いで温度波および/または圧力波の効果に曝され、測定アームは基準アームよりも強く温度波および/または圧力波の効果に曝され、または屈折率の変化に関する温度波および/または圧力波の影響が基準アームよりも測定アームにおいて強い。最良の場合には、基準アームは温度波および/または圧力波の効果の影響を全く受けず、一方で測定アームはその効果に完全に曝される。
【0039】
上述の変形例における光強度の直接的測定に加えて、測定されるパラメータが光強度に依存するという条件において、温度または場の強度などの別のパラメータを用いて検出光の強度が間接的に測定されてもよい。
【0040】
測定アームが温度波および/または圧力波の効果により強く曝されることを確実にするために、例えば、測定面の面法線の方向における第1の光導波路構造の測定アームの投影の少なくとも1つの部分がこの測定面と重なることが規定されてよい。
【0041】
加えて、測定を高効率にするために、第1の光導波路構造の測定アームの少なくとも1つの部分が、測定面から2mm未満、好ましくは1ミリメートル未満、より好ましくは0.5mm未満だけ離れていることが規定されてよい。本出願の他の箇所においてより詳細に説明されるように、基準アームは、測定アームよりも測定面から離れていてよい。
【0042】
この目的は、測定体が測定面のエリアにおいて物質と接触するときに励起光の吸収により物質に誘起させられる熱波および/または温度波によって、第1の光導波路構造の測定アームの少なくとも一部において検出光の測定可能な位相シフトが生じるように、第1の光導波路構造の測定アームが測定面に対して配設されることを確実とすることである。干渉計の測定アームおよび/または基準アームは、有利には、測定面に平行に向けられ、および/または測定面に平行な平面内に延在してよい。
【0043】
両アームからの光は、それらアームを通過した後に再結合され、その効果により強く曝されるアームにおける検出光の位相シフトに依存して、検出光の2つの相互に位相シフトされた部分ビームが互いに少なくとも部分的に打ち消し合う。このとき、位相シフトが180度を超え、極端な場合には各360度(2π)の全周期を複数回経ない限り、測定される光強度は最小化される。この場合、温度および/または圧力の増大の進行の過程において、絶対的な位相シフトを決定するために、2つの部分ビームの位相打ち消しにおいてゼロ交差がカウントされてもよい。しかしながら、多くの場合において、検出対象の温度および/または圧力の効果が小さいことに起因して、位相シフトが180度を超えることはない。このとき、結果として生じる光強度の変化が圧力/温度の変化に対して単調写像されるように、干渉計の動作点が設定されてよい。
【0044】
測定アームが基準アームよりも温度波および/または圧力波の効果に曝されること、または屈折率の変化に関する温度波および/または圧力波の影響が基準アームよりも測定アームにおいて強いことを確実にするために、以下の手段が取られてよい。
【0045】
それに一体化または接続されたリング共振器を有するまたは有しない測定アームは、基板と機械的に接触する。測定アームの光導波路は、嵌合結合(positive-fitting)および/または材料接合および/または摩擦結合(force-fitting)方式で基板に接続されてよい。それは、基板に押し付けられまたは締め付けられてもよい。
【0046】
干渉計デバイスが1つのみまたは複数のリング共振器または他の光導波路共振素子を含む場合、これらも基板と機械的に接触してよい。リング共振器または共振素子の光導波路も、嵌合結合および/または材料接合および/または摩擦結合の方式で基板に接続されてよい。これらは、基板に押し付けられまたは締め付けられてもよい。
【0047】
干渉計またはその測定アームの一方または両方は、1つまたは複数のリング共振器または他の共振素子と同様に、基板に一体化されてよく、例えば、一体化された製造プロセスにおいて基板と共に製造されてよい。
【0048】
とりわけ、基準アームの光導波路の少なくとも一部またはさらには光導波路全体が光ファイバケーブルで形成されることにより、基準アームに対する温度波および/または圧力波の効果の低減、または基準アームにおける光導波路または光路の屈折率に対する効果の低減が実現されることが可能であり、その場合、光ファイバケーブルは、一部の部分においてまたはその長さの大部分にわたってもしくは全体的に、基板の外側に配設され、特に基板から離隔される。光ファイバ光導波路は、基板の材料に接続されることなく、基板の材料の外側、例えば基板の凹部内を延在してもよい。
【0049】
基準アームの少なくとも一部は、第2の基板を通って、第2の基板上で、または少なくとも部分的に基板から分離または遮蔽または離隔された基板部分内または基板部分上で、測定アームと別個に延びていてもよい。
【0050】
この場合、基準アームまたは第2の基板または部分的基板は、空気の間隙または障壁によって少なくとも部分的に基板と分離されてよい。障壁のための考えられる物質は、基板材料よりも軟性または低剛性であり、例えばプラスチック、エラストマー、有機材料、織物、紙または発泡体からなるものであってよい。
【0051】
いずれの場合であっても、例えば、基準アームの光路長の少なくとも10%、特に少なくとも20%、より特定的には少なくとも30%が、測定アームと同じ基板の、または測定アームから少なくとも2mm、特に少なくとも5mm、より特定的には少なくとも8mmだけ離れた別の基板のエリアに配置されてよい。基準アームのこのエリアは、測定アームよりも測定面から離れていてよい。屈折アームの前記部分は、有利には、熱波および/または圧力波により到達されない、または少なくとも測定アームが配置されるエリアよりも受ける影響が小さいエリアに配置されてよい。
【0052】
測定アームおよび基準アームが少なくとも部分的に異なる材料で作製される場合、測定アームおよび基準アームに検出光を分けるためにビーム・スプリッタが設けられてよい。このビーム・スプリッタは、基板に一体化されてよく、またはそれと別個に設けられてよい。ビーム・スプリッタは、集積光導波路および光ファイバケーブルに、または2つの集積光導波路もしくは2つの光ファイバケーブルに検出光を分配するように設計されてよい。
【0053】
測定アームおよび基準アームの互いとの配置および距離に関わらず、測定アームおよび基準アームは、少なくとも部分的にまたは完全に異なる材料で作製されてよく、基準アームの材料は、その屈折率が測定アームの材料の屈折率よりも熱波および/または圧力波の効果によって小さく影響されるように選択される。これは、例えば測定アームおよび基準アームに異なる原材料を選択することにより、または測定アームおよび基準アームにおいて同じ原材料に異なるドーピングを行うことにより実現されてよい。基準アームの長さの少なくとも一部分において、検出光が流体、特に気体、例えば空気もしくは窒素、または透明な液体を通過させられることが規定されてもよい。
【0054】
リング共振器または他の光導波路共振素子が検出デバイスとして用いられる場合、これは、測定面に平行な平面内に配設されてよい。これは、リング共振器の全ての部分が、リング共振器に入射する測定面からの温度波および/または圧力波の効果に可能な限り均一に暴露されることを意味する。リング共振器または別の共振素子が、単独でまたは干渉計と組み合わされてのいずれかで、検出デバイスとして用いられる場合、単一のリング共振器または共振素子に代えて、複数の光学的にカスケード接続または並列接続されたリング共振器または共振素子が、必要とされる周波数応答を整形するために用いられてよい。温度制御により、またはリング共振器/共振素子にかかる機械的圧力を調整することにより、動作点が調整されてよい。動作点は、温度または圧力と共振リング/共振素子における光強度との間が単調依存となる最大の温度もしくは圧力感度または最大の測定範囲が得られるように設定されてよい。
【0055】
物質を分析するためのデバイスは、検出デバイスにより検出される検出光の強度の変化、およびこれから励起ビームの波長に応じた吸収強度を決定する評価デバイスを含んでよい。励起ビームの変調に起因して、検出光強度が、測定対象の熱波および/または圧力波の影響がある場合とない場合とで測定されてよく、これらの値の間の差または比または他の関係変数が評価されてよい。
【0056】
特に、光導波路共振素子が、熱波および/または圧力波により連続して到達されるように測定面に対して配設され向けられる測定部分を有する2つの測定アームを有する干渉計素子または干渉計として設けられる場合、評価デバイスは、検出光の強度の過程もしくは時間的プロファイル、すなわち屈折率を変化させることにより共振素子を離調する過程、または干渉計の2つの測定部分/測定アームにおける位相シフトの過程が、熱波および/もしくは圧力波または1つまたは複数の波面がそれを通過する間に記録されるように構成されてもよい。
【0057】
特に複数の測定部分を有する干渉計が用いられるときに、これらの両方が熱波および/または圧力波に曝される場合、検出光強度の変化が観測され得ないように位相シフトが補償されてよい。しかしながら、測定アーム/測定部分が波によって連続して到達されるように位置付けられる/向けられる場合、波が異なる測定部分に対して異なる効果を有する時間区分が存在するため、異なる測定部分に対する波の異なる時間的にずれた効果を反映する検出光の強度過程または時間的プロファイルが生じ、よって評価を可能とする。
【0058】
光導波路共振素子の場合、通過する波の振幅を反映する検出光の強度の時間的プロファイルが得られる。変調励起ビームと、結果として得られる、通過する熱波および/または圧力波との場合、検出光の強度の周期的変化の適当なパラメータ、例えば振幅が評価に用いられてよい。
【0059】
光導波路構造、特に第1の光導波路構造の干渉計デバイスが、少なくとも一部の部分において測定体に固定的に接続された少なくとも1つの光ファイバケーブルを含むことが規定されてもよい。
【0060】
光ファイバケーブルは、低コストで利用可能であり、その柔軟性に起因して既存の要求事項に容易に適応させられることが可能である。しかしながら、それは、圧力波および/または熱波に影響されるために、測定体と接触させられなければならない。この目的で、光導波路は、基板/測定体に接着接合され、または形状結合(form-fitting)または摩擦結合の方式でそれに接続されてよい。例えば、光ファイバケーブルは、基板の締め付けデバイスに搭載されてよい。
【0061】
第1の光導波路構造、特に第1の光導波路構造の干渉計デバイスの光導波路が、測定体の基板に一体化され、または基板に接続され、第1の光導波路構造が、特に、絶縁基板に接続されまたは絶縁基板に一体化された少なくとも1つのシリコン光導波路を有し、特にシリコン光導波路がまた、絶縁体、特にシリコン酸化物、例えばSiO2によって少なくとも部分的に覆われることが規定されてもよい。
【0062】
この場合、第1の光導波路構造は、例えば基板材料の選択的ドーピングによりまたは反応生成物からの酸化物層または他の層の形成により屈折率の異なるエリアが形成され得る、集積光学からの既知の手段を用いて基板上に構築されてよい。そのような集積光導波路構造は、シリコンウェハ内またはシリコンウェハ上に設けられてよい。光導波路構造がポリマー体に形成されてもよい。加えて、集積光導波路が、例えばGeO2-SiO2/SiO2、GaAsInP/InP.Ti:LiNbO3の材料の組み合わせを用いて形成されてよい。
【0063】
加えて、励起ビームが、特に測定体の測定面のエリアにおける測定体の材料または測定面の隣のエリアもしくは測定面にすぐ隣接するエリアを通過し、測定体または励起ビームによって貫通されるエリアが励起ビームを透過することが規定されてよい。
【0064】
測定体および特にまた測定体の被膜の透過性は、励起ビームまたは励起光ビームの波長域において提供される。透過性は完全には設けられなくてもよく、その場合、励起ビームの一定の吸収が考慮されなければならない。このとき、励起ビームによって貫通される測定体の層は、例えば測定面のエリアのみにおける薄い層として、可能な限り薄く、例えば1mmよりも薄くなるように設計されてよい。
【0065】
励起ビームが、第2の光導波路構造により、測定体内または測定体上を導光されることが規定されてもよい。このとき、第2の光導波路構造は、励起ビームの波長域における光または放射を可能な限り損失の少ないように導光することができるように設計される。励起ビームは、第2の光導波路構造の光導波路に結合され、測定面のエリアにおいてそれから分離され、検査対象の物質に向かって方向付けられる。ビーム整形光学素子、特に合焦またはコリメート素子が、入射点および/または分離点に設けられてよく、これは光導波路構造と別個に設けられまたは一体化されてよい。第1および第2の光導波路構造は、別個に設けられ、互いに分離および離隔されてよい。しかしながら、波動方程式の線形性に起因して、それらは何らの相互作用なしに互いに交差する場合もあり、その場合、励起ビームおよび検出光の両方によって通過される光導波路構造の領域が存在する。極端な場合には、第1および第2の光導波路構造は、同一であり、検出光に加えて励起光ビームについても必要な入射点および分離点を有してよい。励起光に対する光導波路構造における圧力および/または温度の変化の反応が検出され、評価時に考慮されることも考えられる。励起ビームを生成するためのレーザ・デバイスは、測定体に一体化されてよく、レーザ・デバイスの電子的素子の少なくとも1つまたは複数または全てが、測定体の基板上に、特に集積光学素子を支持もする同じ基板上に設けられてよい。レーザ・デバイスの電気的素子および集積光学素子は、合同の製造プロセスおよび/または一連の連続する製造段階において、1つまたは複数の接続された基板上に製造または配設されてよい。これは、非常に省スペースな配置を結果としてもたらす。この集積配置は、第2の光導波路構造が励起ビームを導光するために設けられるときと、励起ビームが測定体の開口部を通して分析対象の物質に向かって方向付けられる場合との両方で提供されてよい。
【0066】
レーザ・デバイスと分析対象の物質との間の励起ビームが、測定体の連続的(continuous)な開口部を通過し、開口部が、特に測定面の前方に距離を空けて終端する、または測定面を貫通する、または測定面に直接隣接するおよび/もしくはそれに隣り合う領域に配設されることが規定されてもよい。
【0067】
この場合、励起ビームは、開口部内を伝搬し、場合によっては、測定体の材料を通過することなく、測定体の、分析対象の物質を向く側において開口部から出る。開口部が完全に開通するわけではなく、測定面の前方に距離を空けて終端するように、測定体の薄い層が測定面のエリアに残っていてもよい。生成される温度波および/または熱波が少なくとも部分的に測定面に当たり、それを通して測定体内へとまたは検出デバイスへと方向付けられるように、励起ビームが照射される物質の体積が測定面に隣接し、それと接触するまたは別の適当な態様で結合されることが重要である。
【0068】
測定体の連続的なまたは大部分が連続的な開口部は、直線チャネルを形成してもよく、湾曲または屈曲を有するチャネルを形成してよく、この場合、励起ビームは、偏向素子または反射素子を用いてチャネルを通して導光されてよい。開口部は、測定体の被膜を通して連続していてよく、励起ビームが被膜を通して導光されるように被膜で終端していてもよい。
【0069】
励起ビームが測定体の少なくとも1つの特定の層を通過する場合に、測定体の材料が少なくとも部分的に励起ビームを吸収する場合、励起ビームは、測定体の温度増大を既に発生させている場合があるが、これは正確に算出可能である。励起光源の周期的動作は、測定体に熱波を生じさせ、これは場合によっては検出デバイスに到達し、それにより検出されることが可能である。この効果は、算出され、有効信号から減算されてよい。
【0070】
励起ビームが、測定体の外部境界に沿って分析対象の物質へと直接操舵され、測定体の隣の測定面の延長部において物質に入り込むことが規定されてもよい。検出デバイス、例えば干渉計の第1の光導波路構造はこのとき、そこで物質から出る熱波および/または圧力波が少なくとも部分的に測定体に入り第1の光導波路構造に到達するように、励起ビームが測定面の仮想延長部を通過するエリアに直接隣り合って測定体に設けられてよい。
【0071】
さらなる実施形態において、測定体が、平坦な物体として、特にプレートの形態の平行平面体として形成され、特に測定面に垂直な方向における測定体の厚さが、測定面内に延びる方向における測定体の最小の延長部の50%未満、特に25%未満、より特定的には10%未満であることが規定されてよい。
【0072】
そのような設計は、集積光学系にウェハなどの平坦な基板を用いることにより得られてよい。このとき、測定体の必要とされる厚さは、検出デバイスに必要とされるスペースにより制限される。
【0073】
さらなる実施形態は、測定体が、レーザ・デバイスにより測定面に照射される励起ビームを反射するためのミラー・デバイスを含む、またはそのようなミラー・デバイスを保持することを規定してよい。
【0074】
これは、レーザ・デバイスが、レーザ・デバイスにおける励起ビームが測定面に垂直に生成されないように位置合わせされる場合、例えばレーザ・デバイスが省スペース的に測定体の隣に設置されるまたはそれに角度を付けて向けられる場合に、特に重要である。
【0075】
励起ビームが、測定面に平行に、または測定面に対して30度未満、特に20度未満、より特定的には10度未満または5度未満の角度を付けて、測定体へと向けられ、励起ビームが測定面に向かって進路変更または偏向され、励起ビームが特に、測定面または測定体の連続的な開口部の領域における測定面の仮想的な延長部を通過することが規定されてもよい。
【0076】
この場合、励起ビームを生成するためのレーザ・デバイスは、特に省スペースに配設され、測定面に平行に、または測定面に対して上記の浅い角度のうちの1つの角度を付けて励起ビームを生成または分離するように位置合わせされてよい。
【0077】
加えて、固体状態の物体または材料の形態の少なくとも1つのヒートシンクが、測定体における測定面から見て検出デバイスの後方および/または隣に、特にそれと隣接しかつ熱的に接触して配設され、特に、ヒートシンクの物体または材料の比熱容量および/または熱伝導率は、検出デバイスおよび/もしくは光導波路構造および/もしくは光導波路構造の基板の材料、ならびに/または測定体が構成される他の材料の、比熱容量および/または熱伝導率よりも大きいことが規定されてよい。
【0078】
基本的には、励起ビームの変調周波数が高くても、断続的に照射される熱量またはそれにより発生させられる温度変化が過去の温度変化によって歪められることなく測定されることを可能とする熱エネルギー平衡または温度平衡が形成されるように、熱波により検出デバイスに導入される熱を可能な限り迅速に放散するために、測定体内または測定体上にヒートシンクを設けることが有利であり得る。
【0079】
いくつかの応用例において、特に干渉計式の応用例において、より特定的にはマッハ・ツェンダー干渉計において、一方の測定アームを温度変化または圧力波に暴露し、他方のアームすなわち基準アームを温度変化または圧力波から遮蔽することも有利である。この目的で、基準アームを測定アームから離隔する、および/または、検出デバイスの一部、特に干渉計の基準アームを熱波および/または圧力波の効果から少なくとも部分的に遮蔽する障壁を設けることも有用であり得る。そのような障壁は、例えば測定体のまたは測定体の基板の材料よりも低い熱伝導率を有する材料からなっていてよい。材料は、圧力波の機械的分離を提供するために、測定体のまたは測定体の基板の材料よりも高柔軟性または高弾性または容易に変形可能であってもよい。障壁は、例えばエッチングまたは材料除去プロセスによって、あるいは付加製造プロセスによって基板に導入されることが可能な気体空隙により形成されてもよい。
【0080】
マッハ・ツェンダー干渉計の基準アームを測定アームから離隔するために、測定アームおよび基準アームが基板の異なる平面内に配設され、基準アームの配置される平面が、測定アームの配設される平面よりも測定面からの距離が離れていることが規定されてもよい。
【0081】
温度および/または圧力の変化は、検出光が適当な条件下で共振して伝搬する光導波路共振リングを用いて検出されてもよい。温度および/または圧力の条件が変化する場合、共振が屈折率の変化により離調され、部分的または完全な打ち消しが生じる。そのような共振リングは、理想的にはマッハ・ツェンダー干渉計よりもさらにはるかに高い感度を有する。そのような共振リングは、マッハ・ツェンダー干渉計の一方のアーム、好ましくは測定アームに一体化されてもよい。
【0082】
本発明の実施形態において、検出デバイスの光導波路構造が、特に干渉計の異なるアーム上に配設された少なくとも2つの測定部分であって、測定部分を通過する検出光に位相シフトが生じ、続いて圧力および/または温度の変化に応じてさらなる部分において検出光に結果としての強度変化が生じるように、屈折率が特に圧力波および/または熱波の圧力および/または温度の変化に応じて変化する、少なくとも2つの測定部分を含み、2つの測定部分が、測定面から、特に励起ビームが貫通する測定面の領域から順次、特に互いに対して時間的にずれたまたは時間遅延のある時間間隔で、測定体を通して伝搬する圧力波および/または熱波により通過されるように測定体に配設されることが規定されてもよい。
【0083】
励起ビームが通過する測定面のエリアから測定体を通して伝搬する圧力波および/または熱波は、最初に測定部分の第1のものに到達し、進行の間にそこで時間的に屈折率を変化させる。この変更された屈折率が有効である時間間隔において、第2の測定部分を通過する検出光(検出光は両測定部分を並列に通過する)に対する第1の位相シフトが生成される。この位相シフトは、上述の検出光の強度測定により検出されることが可能である。波は次いで第2の測定部分に到達し、そこである時間間隔にわたって屈折率を変化させることによっても、そこでその効果を発現する。それら2つの時間間隔が重複する場合、位相シフトは、その重複の継続時間にわたって少なくとも部分的に無効化される。その後、位相シフトが第2の測定部分のみで発生する場合、検出光の強度変化の効果が再び生じる。この時間的プロファイルは評価デバイスにより記録されてよく、これから第1の測定部分および第2の測定部分における屈折率の変化が決定されてよい。決定された屈折率の変化は、温度および/または圧力の変化によるものとされてよく、これは分析対象の物質への励起ビームの吸収強度の尺度となる。この場合、それらの光導波路の長手軸を有する上記の測定部分は、有利には、測定体における圧力波および/または温度波の伝搬方向に対して横方向に、特に直角に、より特定的には励起ビームが通過する測定面のエリアから見たときに一方が他の後方になるように延在する。
【0084】
光導波路構造における検出光の強度変化を用いて測定部分における検出光の位相シフト変化の大きさを決定し、これから屈折率の変化を決定する評価デバイスが設けられることも有利である。屈折率のこの変化から、測定部分における圧力および/または温度の変化が、そしてこれから分析対象の物質への励起ビームの吸収強度が決定されることが可能である。
【0085】
本発明はまた、測定面を有し、温度波および/または圧力波を測定するための測定面のエリアにおいて物質と少なくとも部分的に結合され、特に接触させられる測定体を有し、以下、すなわち
- コヒーレント検出光のための光源と、
- 検出光のための光源に接続されることが可能でありまたは接続され、検出光を導光し、その屈折率が少なくとも部分的に温度および/または圧力に依存する第1の光導波路構造と、
- 光強度が、温度または圧力の変化に起因する第1の光導波路構造の少なくとも一部における検出光の位相シフトに依存する、少なくとも1つの部分であって、第1の光導波路構造は、干渉計デバイス、特に干渉計および/または光導波路共振リングもしくは他の光導波路共振素子を含む、少なくとも1つの部分と、
- 干渉計デバイス内または干渉計デバイスにおける光強度を検出するための測定デバイスと
を含む、測定体に少なくとも部分的に一体化されまたはそれに接続された検出デバイスを有する、例えば上述の種類のデバイスに用いられることが可能なセンサに関する。
【0086】
本発明に係る分析デバイスの温度センサの設計について本出願において説明される特徴の全て、特に、集積光学共振リングまたは干渉計の測定アームおよび基準アームの説明されている配置、設計、材料選定、生産タイプ、および形状の全てが、他の目的で分析デバイスとは無関係にセンサを実装するために用いられてもよい。
【0087】
このセンサによれば、温度変化または圧力波が測定されることが可能であり、これは屈折率変化を用いて検出されることが可能である。したがって、本センサは、上述の目的に加えて、振動測定、例えば地震測定または機械的インパルス測定に用いられてもよい。よって、本センサは、その短い応答時間に起因して、MEMSセンサなどの他のセンサがその不活発性(inertia)に起因して使用されることが不可能な測定に適している。
【0088】
上述の種類のデバイスに加えて、本発明はまた、変調励起ビームが、分析対象の物質に向かって、特に測定体を通るように方向付けられ、時間的な光強度特性または周期的な光強度変化が、検出デバイスにより検出されることが規定され、これらは、第1の光導波路構造における光強度変化を測定し、または第1の光導波路から分離された光の光強度を測定し、取得されたデータから分析対象の物質の吸収スペクトルを得ることにより、励起ビームの複数の波長について検出される、そのようなデバイスを動作させるための方法に関する。
【0089】
そのような方法において、測定が、励起ビームの異なる変調周波数について実行され、補正された吸収スペクトルが、得られた吸収スペクトルの組み合わせから決定されることが規定されてもよい。これは、検査対象となっている物質中の被分析物質の濃度の深さプロファイリングが決定されることを可能とし、または、特定の深さ範囲からの干渉効果が、数学的な組み合わせまたは相関を用いて低減または排除されることが可能である。
【0090】
一般的に、本発明はまた、特に上述の種類のデバイスを用いて物質を分析するための方法を含み、方法において、
- 励起伝導デバイスにより、少なくとも1つの励起波長を有する少なくとも1つの強度変調された電磁励起ビームが生成され、励起伝導デバイスが、物質の表面の下方に配置される物質の体積に少なくとも1つの電磁励起ビームを照射し、
- 第1の光導波路構造における光強度の形態の応答信号が検出デバイスにより検出され、
- 物質が、検出された応答信号に基づいて分析され、応答信号、特に励起ビームの異なる波長についての時間的な応答信号波形が決定され、励起ビームが高い強度を有する各変調フェーズの終了後の応答信号の減衰挙動から、励起ビームが吸収され熱波および/または圧力波が生成される、分析対象の物質の表面の下の深さプロファイルに関する情報が得られる。
- 励起伝導デバイスの異なる変調周波数を用いて、複数の応答信号波形が決定され、
- 異なる変調周波数における複数の応答信号波形が互いに組み合わされ、
- 物質の表面の下の深さ範囲に特有の情報がこれらから得られる
ことが規定されてもよい。
【0091】
特に圧力変化が検出される場合、検出デバイスは、励起ビームの吸収により分析対象の物質に生成され、既知の速度(ヒトの組織中では約1500m/s)で測定面および検出領域へと進行する音波の形態の応答信号を検出するために用いられてもよい。励起ビームのための変調デバイスに接続された評価デバイスを用いて、応答信号の測定の良好な時間的解像度に起因して励起ビームの変調と応答信号との間での位相シフトが測定されてよく、よって吸収が発生した組織中の深さが決定されてよい。信号は多くの場合異なる組織層からの異なる応答信号の重ね合わせであるため、信号は、物質の異なる深さに分布された複数の吸収部位およびそれらの関連付けられる吸収強度ならびに物質表面への進行時間を有するモデルを構築することによって解釈されてよく、このとき吸収強度は時間的な応答信号波形にフィッティングされ、それにより応答信号波形が再構築されることが可能である。これから、吸収強度と、したがって物質中の検出対象の成分の局所的濃度が決定されることが可能である。
【0092】
これに代えてまたは加えて、特に、より上部の組織層からの信号は汚損および死んだ皮膚細胞による汚染に起因する誤差の影響を特に受けやすいため、これらを打ち消すおよび排除するために、異なる測定が異なる変調周波数で実行されてもよく、異なる変調周波数における応答信号が組み合わされてよい。
【0093】
上記のデバイスは、有利には、
- 測定面に隣接しておよび/または直接隣り合って配設される少なくとも1つの他の検出デバイスであって、圧電信号を検出するための少なくとも2つの電極を有する接触デバイスを有し、前記電極は検出領域の異なる側に互いに対向して配置される、他の検出デバイスと組み合わされてもよい。検出領域において、特に圧電効果に起因して、温度および/または圧力の変化に応じてその電気的抵抗を変化させるまたは電気的信号を生成する材料が配設される。
【0094】
この追加的な検出デバイスは、例えば代替的な方式で温度または圧力を測定するために用いられてよく、この測定は、検出デバイスにより得られる測定を他の検出デバイスからの測定と相関付けるために、周囲温度または周囲圧力の基準測定として、またはさらに分析対象の物質から発せられる熱波および/または温度波を測定するために用いられてよい。
【0095】
以下、本発明が、図面の諸図に基づいてさらに詳細に例示および説明される。
【0096】
それらは、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【
図1】レーザ・デバイスおよび検出デバイスを有する測定体の概略的側面図。
【
図5】測定体上の第1の光導波路構造の別の実装の平面図。
【
図6a】干渉計デバイスを有する1つまたは複数の基板の異なる実施形態であり、明確性のために、測定体のハッチングが一部の図には示され、他の図では省略されている。
【
図6b】干渉計デバイスを有する1つまたは複数の基板の異なる実施形態であり、明確性のために、測定体のハッチングが一部の図には示され、他の図では省略されている。
【
図6c】干渉計デバイスを有する1つまたは複数の基板の異なる実施形態であり、明確性のために、測定体のハッチングが一部の図には示され、他の図では省略されている。
【
図6d】干渉計デバイスを有する1つまたは複数の基板の異なる実施形態であり、明確性のために、測定体のハッチングが一部の図には示され、他の図では省略されている。
【
図6e】干渉計デバイスを有する1つまたは複数の基板の異なる実施形態であり、明確性のために、測定体のハッチングが一部の図には示され、他の図では省略されている。
【
図6f】干渉計デバイスを有する1つまたは複数の基板の異なる実施形態であり、明確性のために、測定体のハッチングが一部の図には示され、他の図では省略されている。
【
図6g】干渉計デバイスを有する1つまたは複数の基板の異なる実施形態であり、明確性のために、測定体のハッチングが一部の図には示され、他の図では省略されている。
【
図6h】干渉計デバイスを有する1つまたは複数の基板の異なる実施形態であり、明確性のために、測定体のハッチングが一部の図には示され、他の図では省略されている。
【
図6i】干渉計デバイスを有する1つまたは複数の基板の異なる実施形態であり、明確性のために、測定体のハッチングが一部の図には示され、他の図では省略されている。
【
図6k】位相シフト/屈折率変化の時間的プロファイルが、圧力波および/または熱波による異なる測定部分の通過に応じて測定されることが可能な干渉計デバイスを有する実施形態。
【
図6l】圧力波および/または熱波の通過の間の測定部分における検出光の位相シフトの時間的波形またはプロファイル。
【
図6m】干渉計デバイスの位置を加えた、測定体の外部境界面を過ぎて物質内に至る励起ビームの経路。
【
図6n】分析対象の物質への結合のための音響結合素子を有する測定体。
【
図7】集積光導波路を有する別の基板を通る断面図。
【
図9】励起ビームのための連続的な開口部を有する基板の断面図。
【
図10】励起ビームのためのさらなる連続的な開口部を有する基板の断面図。
【
図11】励起ビームのための第2の光導波路構造を有する基板の断面図。
【
図12】励起ビームのための第2の光導波路構造のさらなる実装を伴う基板の断面図。
【
図13】測定結果のための処理デバイスおよび信号のための出力デバイスを有する物質を分析するためのデバイスの概略的全体図。
【
図14】励起光源および検出光源ならびに検出器が接続され、集積光学素子を有する別の基板が挿入されることが可能な基板の配置。
【
図15】励起光源および検出光源ならびに検出器が接続され、集積光学素子を有する別の基板が挿入されることが可能な基板の配置。
【
図16】励起光源および検出光源ならびに検出器が接続され、集積光学素子を有する別の基板が挿入されることが可能な基板の配置。
【
図17】第1の集積レンズを有し、測定面に置かれた指を有する測定体の断面。
【
図20】第1の集積レンズおよび励起ビームを有する測定体の断面。
【
図21】第2の集積レンズおよび励起ビームを有する測定体の断面。
【
図22】第3の集積レンズおよび励起ビームを有する測定体の断面。
【
図23】測定体と、レーザ光源または励起光源、特にレーザ・デバイスの形態の励起光源とを有するいくつかの配置であり、励起光ビームは、測定体の基板に一体化された光導波路を用いて測定デバイスにより測定面へと導光される。
【
図24】測定体と、レーザ光源または励起光源、特にレーザ・デバイスの形態の励起光源とを有するいくつかの配置であり、励起光ビームは、測定体の基板に一体化された光導波路を用いて測定デバイスにより測定面へと導光される。
【
図25】測定体と、レーザ光源または励起光源、特にレーザ・デバイスの形態の励起光源とを有するいくつかの配置であり、励起光ビームは、測定体の基板に一体化された光導波路を用いて測定デバイスにより測定面へと導光される。
【発明を実施するための形態】
【0098】
図1は測定体1の断面図を示し、その内部構造はこの図では詳細に議論されない。測定体1内において、第1の光導波路構造6が模式的に示されており、その内部にコヒーレント検出光が検出光源5によって照射される。測定デバイス7が、光導波路構造6に作用する圧力または温度に依存する、第1の光導波路構造6における光強度を検出するために用いられる。
【0099】
検出光源5は、レーザまたはレーザ・ダイオードとして設計されてよく、測定体1上に配設されまたは測定体1に固定されてよい。検出光源5は、光ファイバケーブルを用いて第1の光導波路構造6に接続されてもよい。加えて、検出光源5は、半導体素子として測定体1内で基板(ここでは示されていない)に一体化され、そこで第1の光導波路構造に接続されてよい。
【0100】
測定デバイス7は、カプラを用いて直接的に第1の光導波路構造6に接続されてもよく、集積光導波路または柔軟性光ファイバケーブル(ここでは示されていない)を用いてそれに接続されてもよい。しかしながら、測定デバイス7は、測定体に一体化され、半導体素子として測定体1の基板上に実装されてもよい。例えば、測定デバイス7は、感光性半導体素子、例えばフォトダイオードとして設計されてよい。
【0101】
上記の構成要素に加えて、測定の評価における他のセンサの時定数に応じて、より長い時間間隔、例えば、1秒の10分の1、1秒の半分、1秒または複数秒にわたって測定される平均温度を考慮に入れるために、測定体1の絶対温度を測定するための温度測定デバイスが設けられてよい。これは、例えばフォトダイオードまたは他の半導体光センサの温度依存性が補正されることを可能とする。これは、例えば、温度補正により向上されることが可能な、測定デバイス7により測定される光強度の評価に有用な場合がある。あるいは、加熱または冷却素子を含み、測定体1を一定の温度に維持する温度安定化デバイス29が設けられてよい。例えば、この温度は、例えば20℃に固定されることが可能な平均温度に対応していてもよく、その体組織または体液が測定対象とされ、よって約37℃または30℃(露出された皮膚表面)であり得る、患者の平均体温に対応していてもよい。
【0102】
図1はレーザ・デバイス4を示し、これは量子カスケード・レーザまたはレーザ・アレイとして実装されてよい。量子カスケード・レーザは、その波長に対して少なくとも部分的に調整可能であり、特に赤外域において、より特定的には中赤外域において調整可能であるように設計されてよい。レーザ・デバイス4がレーザ・アレイとして構成される場合、アレイの個々のレーザ素子が調整可能、調節可能または特定の波長に固定されてよい。個々のレーザ素子の波長は、例えば、分析対象の物質における検出対象の成分の吸収極大、すなわち例えばグルコースの吸収極大の波長に対応するように設定されてよい。ここで説明される血糖測定の例における励起ビームの波長は、好ましくは、励起ビームがグルコースまたは血糖によって著しく吸収されるように選定されてよい。以下のグルコースに好適な赤外波長(真空波長)は、グルコースまたは血糖を測定するのに特に適当であり、個々にまたは同時にまとめてまたは順次に、応答信号を測定するための固定波長として設定されてよい:8.1μm、8.3μm、8.5μm、8.8μm、9.2μm、9.4μmおよび9.7μm。加えて、グルコースによって吸収されないグルコース耐性波長が、存在する他の物質を特定し、測定に対するそれらの影響を除外するために用いられてよい。
【0103】
しかしながら、デバイスは、例えば他の生物学的物質または化学物質を検出および分析するために用いられることも可能であるため、ここではそれら検出対象の物質の吸収極大も適用可能である。レーザ・アレイの伝導素子の数は、10から20の数または10個から30個の素子の数またはさらには30個超の伝導素子の数であってよい。
【0104】
励起ビーム生成デバイスまたは励起ビーム伝導デバイスとも称され得るレーザ・デバイス4は、変調レーザビームを生成する変調デバイス8を有する。この場合、変調デバイス8は、例えばレーザ・デバイス4のコントローラ内に配設されてよい。例えば、変調周波数は、100Hzから数メガヘルツの間、またはさらには数百メガヘルツであってよい。重要な点は、第1の光導波路構造6が、適当な応答時間を有し、変調周波数に従って入射する強度変調された圧力波または熱波にも応答することができるという点である。これは、以下でさらに詳細に説明される干渉計検出デバイスを用いた場合に当てはまる。
【0105】
レーザ・デバイス4からの光は、励起ビーム10として、測定体1の下面として示されている測定面2を通して、Dと標示され、分析対象の物質3が測定面2と接触するエリアへと入射する。物質3への励起光ビーム10の吸収の後、温度波および/または圧力波21が、物質から測定体1へと導光され、第1の光導波路構造6に当たる。温度および/または圧力の変化は、そこで検出光の強度変化を生じさせ、これは測定デバイス7を用いて検出され、処理デバイス23へと伝えられる。処理デバイス23は、励起ビーム10の変調と同期して信号を増幅させるロックイン・アンプを備えてよい。
【0106】
任意選択で、測定体1は、分析対象の物質3が直接適用され得る、測定面2のエリアにおける被膜22を備えてよい。これは、測定体1に設けられる基板材料を保護する、または物質3の第1の光導波路構造6への機械的および/または熱的な結合を促すのに有用であり得る。被膜22の材料は、圧力波および熱波を良好に伝導するように設計されるべきである。これは、励起ビーム10を透過するように選定されてもよい。基本的には第1の光導波路構造6と分析対象の物質との間に、例えば第1の光導波路構造6の表面上に設けられてもよい被覆層22が、測定面2に適用される物質との、第1の光導波路構造6内での放射の直接的な相互作用、または少なくとも実際の光導波路構造6の外側におけるこの放射のエバネッセント部分の相互作用を防止するために用いられてもよく、これはそのような接触が第1の光導波路構造6における放射に対する遡及的効果を有し得るためである。
【0107】
測定体と物質との間に挿入された媒体を用いて測定体が物質内に生成された波を吸収する、分析対象の物質への測定体の音響結合が提供されてもよい。媒体は、流体、すなわち気体または液体の形態であってよく、それにより、例えば測定体における空洞または凹部の形態で、測定体と物質との間に距離が設けられてよい。このとき、空洞の開口部は、物質上に配置されてよく、それにより、波が空洞を通して測定体に入ることができる。空洞の壁、すなわち測定体の外面は、良好な音響結合、すなわちインピーダンス整合を生じさせる材料で被膜が施されてよい。そのような音響結合が、
図6nを用いて以下でより詳細に示され説明される。
【0108】
図2は、測定体1が被膜22で覆われた窪み24を形成し得る側面図を示す。窪み24は、分析対象の物質3がこのエリアにおいて測定面2に置かれることを可能とするために設けられる。これは、デバイスのユーザにとっての方向付けを提供する。加えて、窪みは、体の一部、例えば指腹が測定面2に置かれたときの機械的な安定性を提供する。
【0109】
図3は、代替的な設計として、窪み24が被膜22の厚さが低減されたエリアによってのみ形成されることを示す。例えば、測定体1内に設けられる基板1aは、加工されることなく平坦な平行平面体として用いられてよい。
【0110】
図4は、測定体1の一部であり得る基板1aの平面図を示す。基板1aは、例えばシリコンから、特に、厚さ1mm未満であり得るウェハとして、平坦な平行平面体として形成される。しかしながら、いくつかのウェハ層、または、1つまたは複数の凹部、特にエッチングされたエリアを有するより厚いウェハを含むサンドイッチ構造体が、基板として設けられてもよい。干渉計の形態の光導波路構造6が、基板1a上または基板1a内に適用される。これは、例えば、まずシリコンウェハがシリコン酸化物層で覆われ、シリコン光導波路がこれに適用されることにより実行されてよい。そして次に、これらがシリコン酸化物層で覆われてよい。
【0111】
次いで基板1aは、片側または両側の全体が、例えば同様にシリコンまたはさらにポリマーもしくはガラスからなり得る保護層または機能層で覆われてよい。
【0112】
示されている干渉計12は、マッハ・ツェンダー干渉計として実装され、測定アーム12aおよび基準アーム12bを有する。検出光源5によって生成された検出光は、第1の光導波路構造6の入力光導波路6aを通してビーム・スプリッタ6cへと経路制御され、そこで光が測定アームおよび基準アーム12a、12bをそれぞれ通過する2つの部分光ビームに分割される。基準アーム12bは、入来する温度波および/または圧力波の作用による基準アーム12bへのあらゆる影響を可能な限り除外または低減するために、測定アーム12aから少なくとも1mmまたは少なくとも2mmまたは少なくとも5mmまたは少なくとも8mmの最小距離を有してよい。このとき、測定体1は、分析対象の物質から発せられる温度波および/または圧力波が干渉計の測定アーム12aに主に到達し、そこで光導波路の屈折率を変更するように、励起光ビーム10に対して位置付けられる。例えば、干渉計の2つのアームは、測定面に平行な平面内にあってよく、測定面に垂直に向けられた平面にあってもよい。
【0113】
その結果、干渉計の異なるアームを進行する光ビーム間の位相シフトが生じ、これは、位相位置に依存して、光ビームが第2のカプラ6d内で結合されたときに検出光の打ち消しまたは部分的打ち消しにつながる。次いで、検出光の強度が、第1の光導波路構造6の出力光導波路6b内でまたはその端部においてまたは結合点において、測定デバイス7により検出される。例えば、検出光は、可視域またはさらに赤外域の波長を含んでよい。
【0114】
あるいは、干渉計に代えて、検出光における結合のための素子および分離素子を有するリング共振器またはプレート共振器などの光導波路共振素子が、圧力および/または温度の変化のためのセンサとして用いられてよい。
【0115】
図5は、光導波路共振リング13と組み合わされた干渉計アセンブリの変形例としての干渉計を示す。これは、干渉計の測定アームが2つの結合点13a、13bで共振リング13に結合されることによって実装される。共振リング13を干渉計の一方のアームに一体化することにより、装置のより著しく高い温度感度が実現されることが可能である。
【0116】
図6は、基板1aを有する測定体1を通る断面を示す。第1の光導波路構造の第1の光導波路15が、基板1a上に配設される。第1の光導波路15は、基板1a上に一体化されてよい。測定面2から見た光導波路15の後方に、ヒートシンク20が、それの上方で光導波路15に平行に延在し、測定体の材料に導入、例えば封入された物体の形態で設けられる。ヒートシンク20は、光導波路15の上に直接載っていてもよい。ヒートシンク20の材料は、光導波路15の材料よりもおよび/または基板1aの材料よりもおよび/または基板1aが覆われる材料よりも高い熱伝導率および/または高い比熱容量を有する。
【0117】
例えば、第1の光導波路15は、干渉計の測定アームを形成する。対応する基準アームは、第2の光導波路16として実装されるとともに、基板1aと途切れなく作製されまたはそれと結合されて共通の測定体1に封入され得るさらなる基板1b上に一体化される。測定面2、特に基板1aと、第2の光導波路16との間には熱障壁30が配設され、これは、少なくとも部分的に第2の光導波路16に平行に、これと測定面との間において延び、それを測定面2を通過する圧力波および/または温度波の作用から遮蔽する。熱障壁30に代えてまたは加えて、光導波路16は気体空隙によって測定面2のエリアから遮蔽されてよい。そのような気体空隙は、例えばエッチングまたは別の研磨プロセスにより基板1a内に導入されてよく、または、基板1aが測定体1と共にポッティングされる流延コンパウンド中に設けられてよい。熱障壁30は、圧力波に対する障壁としての物体の形態で実装され、この目的で、光導波路16を直接囲む測定体1の材料よりも高い可塑性または弾性を有してもよい。多くの場合、干渉計素子の小さいサイズに起因して、基板、例えば基板1aまたは基板1bにエッチングされたトレンチを用いて熱障壁を実装することが有用であろう。例えば、熱障壁は、測定体または基板1a、1bのポッティング材料よりも著しく低い圧力波または熱波の伝導性を有する。
【0118】
図6aから
図6gは干渉計デバイスの様々な実施形態を示し、その各々において、測定アームおよび基準アームは、屈折率の変化に関する基準アームへの温度波および/または圧力波の効果が測定アームへの効果よりも小さいように設計される。これは、場合によっては、基準アームを測定アームよりも測定面2からの距離が大きくなるように位置付けることにより実現される。場合によっては、基準アームと測定面2との間に障害物または障壁が設けられる。他の場合において、基準アームは基板から分離または離隔され、一方で測定アームは熱伝導結合および/または堅固な機械的結合で基板に接続される。
【0119】
図6aは、光導波路15aの形態の測定アームおよび光導波路16aの形態の基準アームを示す。ビーム・ディバイダまたはビーム・スプリッタが35と標示されており、一方で測定アームおよび基準アームのビームが再結合されるカプラが36と標示されている。基準アームは、長さLにわたって測定アームから距離Dを空けて測定体1の中央領域を通される。基準アームは、測定アームの、測定面2とは反対を向く側に配設され、したがって、量Dだけ測定アームよりも測定面2から離れている。
【0120】
図6bは、光導波路15bの形態の測定アームおよび光導波路16bの形態の基準アームを示す。ここで再び、以下の図におけるように、検出光を測定アーム15bおよび基準アーム16bへと分配するビーム・スプリッタが35と標示され、カプラが36と標示されている。スプリッタおよびカプラは、別個の光学素子として、または測定体1の基板に一体化された素子としてのいずれかで形成されてよい。
【0121】
基準アーム16bは、測定アーム15から少なくとも量Dの距離を空けて測定体1の中央領域を通される。
【0122】
測定アームと基準アームとの間には、これもここでは示されていない障壁が設けられてよく、これは、熱波および/または圧力波を基準アームに近づけないようにする。
【0123】
測定アームは、少なくとも部分的に環状に延在するおよび/または螺旋もしくは蛇行する形状を有するため、測定アームは、基準アームの長さよりも大きい長さを有してもよい。しかしながら、基準アームが少なくとも部分的に環状に延在するおよび/または螺旋もしくは蛇行する形状を有することが規定されてもよい。測定アームおよび/または基準アームの環、螺旋または蛇行部分は、もちろん測定面2に平行な平面内に延在してよく、測定面2に垂直な平面内に延在してもよい。
【0124】
図6cは、光導波路15cの形態の測定アームおよび光導波路16cの形態の基準アームを示す。測定アームは、固体材料37を用いて測定体1の基板の開口部に投入または接着される光導波路として延びる。材料37は、可能な限り短い遅延で熱波および/または圧力波を伝導するのに適当なものである。例えば、材料37は、樹脂またはポリマーであってよい。光導波路15cは、例えば光ファイバケーブルであってよい。基準アームを形成する光導波路16cは、堅固な結合なしで測定体1に沿って延在し、光ファイバケーブルとして実装されてよい。
【0125】
図6dは、光導波路15dの形態の測定アームおよび光導波路16dの形態の基準アームを示す。光導波路15dは、集積光導波路として測定体1の基板に一体化されてよい。光導波路16dは、材料38へと埋め込み部分内で測定体1上または測定体1内を延びてよく、材料38は、熱波およびまたは圧力波を測定体1または測定体1の基板の材料よりも小さく伝導するように構造化される。例えば、材料38は、シリコーンとして、一般にはエラストマーおよび/または発泡体として形成されてよい。
【0126】
図6eは、光導波路15eの形態の測定アームおよび光導波路16eの形態の基準アームを示す。両光導波路15e、16eは、特に基板に一体化された光導波路として測定体1内を延びるが、障壁層39により分離される。これは、熱波およびまたは圧力波を測定体1または測定体の基板の材料よりも小さく伝導する材料からなる。例えば、障壁層39は、シリコーンとして、一般にはエラストマーおよび/または発泡体として、または軟性例えば熱可塑性のプラスチックから形成されてよい。障壁層39は、少なくとも一部の部分において気体空隙として実装されてもよい。
【0127】
図6fは、光導波路15fの形態の測定アームおよび光導波路16fの形態の基準アームを示す。測定アームは、例えば測定体または測定体1の基板のスリット形状の開口部40と、測定面2との間に配設される。基準アームは、開口部40の、測定面2とは反対を向く側に配設される。開口部は、止まり穴として、例えば穿孔としてまたは複数の穿孔として実装されてよい。測定アームは、少なくとも一部の部分において開口部40の上方で環状におよび/または螺旋もしくは蛇行する形状で延在するため、測定アームは、基準アームの長さよりも大きい長さを有してもよい。しかしながら、図に示されているように、基準アームが少なくとも一部の部分において環状に延在するおよび/または螺旋もしくは蛇行する形状を有することが規定されてもよい。
【0128】
図6gは、光導波路15gの形態の測定アームおよび光導波路16gの形態の基準アームを示す。基準アームは、スリット形状の開口部41の、測定面2とは反対を向く側に配設され、図の平面に垂直に測定体1を通過している。開口部41は、1つまたは複数の穿孔として実装されてもよく、エッチング技術またはレーザ切断または他の研磨プロセスなどの、基板を形成する際に一般的に用いられる技法で導入されてもよい。そのような基板は、付加プロセス(3Dプリンティング)で形成されてもよい。測定アームは、少なくとも部分的に環状に延在するおよび/または螺旋もしくは蛇行する形状を有するため、測定アームは、基準アームの長さよりも大きい長さを有してもよい。しかしながら、図に示されているように、基準アームが少なくとも部分的に環状に延在するおよび/または螺旋もしくは蛇行する形状を有することが規定されてもよい。環、螺旋または蛇行は、各々が測定面2に平行な平面内に延在してよく、測定面2に垂直な平面内に延在してもよい。
【0129】
図6hは、2つの光導波路15h、16hを示し、それらの間において光波が光導波路共振リングの形態の共振素子17hを用いて結合されることが可能である。例えば光導波路16hまたは18hで分離される光波の強度の、光導波路15hに結合されるものに対する比によって測定される、光導波路15hに送られ、光導波路15hから光導波路16hにまたはさらなる光導波路共振リング19hを介して光導波路18hに移送/過結合される光波の強度は、光波の波長が共振素子または複数の共振素子の共振波長からどれだけ離れているかに依存する。圧力波および/または温度波は、屈折率の変動によってこの/これらの共振素子を離調させてよく、それにより、この/これらの共振素子は、効率的な温度センサおよび/または圧力センサに相当する。図に示されているように、感度を高めるべく、複数のそのような素子、例えば少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも5つの素子が直列に接続されてもよい。
【0130】
入力光導波路15iと出力光導波路16iとの間において、
図6iに示されているように、複数、例えば少なくとも2つ、2つよりも多く、3つよりも多くまたは5つよりも多くのそのような素子17i、19iの並列接続も想定可能である。これはまた、温度および/または圧力の測定の感度が制御されることを可能とする。
【0131】
光導波路共振素子を用いる場合、検出光の強度の時間的プロファイルが評価デバイスを用いて測定されてよく、これから圧力波および/または熱波の通過時における温度または圧力の時間的プロファイルまたは波形が測定されてよい。変調を用いる場合には周期的であり得る時間的プロファイルから、分析対象の物質への励起ビームの吸収強度が決定されてよく、スペクトルがこれから決定されてよい。例えば、検出光の強度の時間的プロファイルまたは波形は、非活性化された励起ビームによる強度からの活性化された変調励起ビームによる強度の振幅または偏差の平均値を評価するために用いられてよい。
【0132】
図6kは、
図6aと同様に、光導波路15aの形態の測定アームおよび光導波路16aの形態の基準アームを示す。ビーム・ディバイダまたはビーム・スプリッタが35と標示されており、一方で測定アームおよび基準アームのビームが再結合されるカプラが36と標示されている。基準アームは、長さLにわたって測定アームから大きさDの距離を空けて測定体1の中央領域を通される。基準アーム16aは、測定アーム15aの、測定面2とは反対を向く側に配設され、したがって、量Dだけ測定アームよりも測定面2から離れている。参照符号23は、カプラ36の後段の光強度を検出および評価し、それに検出光の位相シフトを、またしたがって分析対象の物質への励起ビームの吸収強度を割り当てる評価デバイスを指す。
【0133】
測定体の内部に、1つまたは複数のヒートシンクおよび/または1つまたは複数の熱障壁が配設されてよく、またはこれらのいずれもが配設されなくてよく、したがって測定体1は、均質でありヒートシンクまたは熱障壁がなくてもよい。
【0134】
物質から測定面2を通して測定体1へと伝搬する熱波および/または圧力波は、まず干渉計の第1の測定部分(測定アーム15a)に当たり、そこで検出光の位相シフトを発生させる。測定体における波の伝搬速度および距離Dから決定される時間tの後、干渉計の第2の測定アーム/基準アーム16aにおいて位相シフトが発生させられる。両方の位相シフトが、ある期間にわたって同時に持続する場合、これらの位相シフトは、打ち消し合い、検出光の強度に何らの変化も生じさせない。波が一方のアーム/測定部分15a、16aにおいてのみ作用する時間間隔の間、他方のアームにおける検出光により後続される第1のアームにおける検出光が先立つまたは遅れる。測定体における波の伝搬速度が既知なことから、この一連の事象の時間的プロファイルが予測可能である。評価デバイス23により検出される検出光の強度の変化の大きさは、熱波および/または圧力波の振幅の決定を可能とし、またしたがって分析対象の物質への励起光の吸収強度の決定を可能とする。
【0135】
図6lは、横軸の時間に対してプロットされた、縦軸の干渉計デバイスを通過した後の検出光の強度特性Iを示す。
【0136】
時間t1において、波は、測定アーム15a上で測定体に届き、そこで基準アーム16aを介して届く光に対する検出光の位相シフトを生じさせる。結果として、強度はI1からI2に低下する。時間t2において、波は、基準アーム16aに到達し、そこでまた同じ大きさおよび方向の位相シフトを生じさせる。測定アームに対する波の影響は依然として持続しているため、位相シフトは打ち消され合い、それにより、干渉計デバイスの異なるアームからの光成分の(部分的な)打ち消し合いは起こらない。検出光の強度は、t2の後に再び値I1に達する。次いで強度は、t3の後、このとき基準アーム16aにのみ位相シフトが存在するので減少し、t4の後、すなわち波が完全に干渉計デバイスを通過した後、強度I1が再び生じる。I1とI2との差は、波の振幅、およびしたがって物質への励起ビームの吸収強度を決定するために用いられてよい。
【0137】
図6mは、励起ビーム源4からの励起ビーム10が、そこで吸収されるために測定体1の境界面を過ぎて物質3に入り込む配置を示し、これは図案化された円により示されている。そこから熱波および/または圧力波が放出され、とりわけ測定体1内へと、そして干渉計デバイス12へと伝搬する。
【0138】
加えて、励起ビーム源4’の別の位置が示されており、そこから励起ビーム10’が測定体1を斜めに過ぎて物質3内へと照射され、測定体1の下で吸収される。この場合、波のさらに大きな割合が測定体1および干渉計デバイスに到達する。光導波路を用いた励起ビームの導光も想定可能である。別の材料で作製された物体(破線により示されている)が測定体1に取り付けられてよく、この物体は、例えば励起ビーム10を透過し、特に測定体1の材料よりも透過する。
【0139】
図6nは、測定体1が、直接の物理的接触のみならず、固体材料の介在層または流体層あるいは気体層などの媒体を介在させることによっても、測定面のエリアにおいて分析対象の物質と結合されることが可能であることを示す。
【0140】
図6nは、任意選択で測定面2上の隆起された縁部201によって囲まれてもよい、測定面2上の凹部200の特殊な場合を示す。空洞を作る別の方法は、測定面上に隆起された周囲縁部を単に設けることである。測定面2が分析対象の物質、例えば生物の体の一部と接触して配置される場合、物質と測定体との間に空洞が形成され、これが音響結合素子を形成する。圧力波および/または熱波は、物質から空洞に入り、気体媒体を通して測定体に入ってよく、そこで波は干渉計素子6によって検出されてよい。干渉計による測定方法の高い感度に起因して、したがって、波は、効果的に音響的に検出され、その強度が測定されることも可能である。
【0141】
励起ビームは、励起ビーム源4から空洞200を通して分析対象の物質に直接経路制御されてよい。この目的で、測定体は、励起ビームのための開口部を少なくとも部分的に含んでよく、または後者は光導波路を用いて測定体を通して導光されてよい。励起ビームは、少なくとも部分的に測定体1の材料を通して導光されてもよい。
【0142】
図7は、干渉計装置の光導波路15、16が、基板1aの、測定面2を向く側に配設される測定体1の変形例を示す。この側において、基板1aは、光導波路15、16を覆い保護する被膜42で覆われる。この配置により、干渉計装置の測定アームを表す光導波路15のうちの少なくとも1つが、物質3からの温度波および/または圧力波によって直接到達されることが可能である。基準アーム16は、示されていない手段によって圧力波および/または温度波の効果から遮蔽されるべきである。例えば、基準アーム16は、測定アームよりも圧力波および/または温度波の効果によって影響される度合いが著しく小さくなるように、測定アーム15から十分に離れて配置されてよい。
【0143】
図8は、基板に強固に接続された光ファイバケーブル15’、16’を有する干渉計配置が実現される変形例を示す。示されている例において、この接続は、接着剤14によって実装される。光導波路は、測定体/基板の溝に延在してよい。
【0144】
図9は、励起光ビーム10が直線状に通過し分析対象の物質3に入ることが可能な穿孔の形態の連続的な開口部18を有する測定体1を通る断面を示す。測定体1がその下側に被膜22を備える場合、被膜が励起ビーム10を透過するという条件で、
図1に示されているように、開口部18は被膜で終端してよい。しかしながら、開口部18は、被膜22を完全に貫通してもよい。
【0145】
例えば、レンズまたはコリメータ31の形態のビーム整形素子が開口部18に設けられてよい。
図9に示されている励起ビームのビーム導光が、上記で図に示され説明されているいずれかの種類の干渉計デバイス(
図9では示されていない)と組み合わされてよい。
【0146】
図10は、レーザ・デバイス4が、励起光ビーム10を測定面2に平行に測定体1に直接照射する配置を示す。測定体1の連続的な開口部18’が設けられ、これは測定面2に向かって直角に曲げられている。方向の変化のエリアには、例えばミラーの形態の反射素子32が設けられる。示されている配置において、励起光ビーム10は、直角に測定面2を通って分析対象の物質3に入ってよい。
図10に示されている励起ビームのビーム導光が、上記で図に示され説明されているいずれかの種類の干渉計デバイス(
図10では示されていない)と組み合わされてよい。
【0147】
図11は、第2の光導波路構造17が励起光ビーム10を導光するために設けられる、測定体1を通る断面を示す。これは、測定体1の基板に一体化される集積光導波路として設計されてよい。第2の光導波路構造17は、励起光ビーム10が測定面2を通して垂直に導光されるように位置合わせされる。しかしながら、第2の光導波路構造17の光導波路が、90°未満、例えば70°未満または50°未満の角度で測定面1に方向付けられることも想定可能である。レーザ・デバイス4は、直接にまたはビーム整形素子、例えばレンズ(
図11では示されていない)を介在させることにより、第2の光導波路構造17に結合されてよいが、柔軟性光ファイバケーブルがレーザ・デバイス4と第2の光導波路構造17との間で励起ビーム10を導光するために設けられてもよい。
図11に示されている励起ビームのビーム導光が、上記で図に示され説明されているいずれかの種類の干渉計デバイス(
図11では示されていない)と組み合わされてよい。
【0148】
測定面2に対向する第2の光導波路構造17の集積光導波路の端部には、ビーム整形素子、例えばレンズ(
図11では示されていない)が設けられてもよい。
【0149】
図12は、励起光ビーム10を導光する第2の光導波路構造17内のより複雑な形状の集積光導波路17aを示す。励起光ビーム10は、第2の光導波路構造17の集積光導波路17aに、例えば測定面2に平行に結合され、この集積光導波路17aにより、測定面2を通過する方向、特に直角にまたは90°未満、例えば70°未満もしくは50°未満の角度で通過する方向に向け直される。基板1aにおいて、変調デバイス8が第2の光導波路構造17の領域に一体化され、これは処理デバイス23を用いて励起光ビームの強度変調を行う。変調デバイス8は、例えば第2の光導波路構造17内または第2の光導波路構造17上に配設されたピエゾ素子によって、または第2の光導波路構造17の透過性を変調する加熱素子によって、または励起光ビーム10を偏向させるMEMSミラー素子によって、実装されてよい。
【0150】
励起ビーム10を導光する第2の光導波路構造17の集積光導波路17aは、測定面に平行に延在する部分と、測定面2に向かう方向、特に測定面2と直角に延在する部分とを有する。基板1aにそのような光導波路を形成することは、集積光学の分野からの手段を用いた実証済みの方式において可能である。
【0151】
図13は、物質を分析するためのデバイスにより得られた測定データの処理を模式的に示す。
図13の左側部分において、測定体1および励起ビームを生成するためのレーザ・デバイス4、ならびに測定デバイス7が示されている。測定デバイス7は、特にレーザ・デバイス4もまた、マイクロコントローラまたはマイクロコンピュータとして実装され得、少なくとも1つのプロセッサを含む処理デバイス23に接続される。処理デバイスにおいて、測定デバイス7により取得された可変光強度の測定データが、変調励起ビームのデータと、すなわちそれぞれの発せられた波長および変調の時間的波形と組み合わされ、または相関付けられる。3つの図表が記号的に示されており、そのうちの上の1つは時間に対してプロットされた変調レーザ・パルスを示し、一方で中段の図表は測定データの時間的波形を示す。熱波および/または圧力波が干渉計素子に届くたびに、例えば励起ビームを活性化/非活性化または変調することにより、素子は屈折率の変化によって離調され、または干渉計の異なる測定アームからの波の成分が打ち消され合う、もしくは部分的に打ち消され合う。これは、干渉計素子を通過した後の検出光の強度を変化させる。この時間的プロファイルまたは波形は、分析対象の物質への励起ビームの吸収強度を示すのに加えて、物質表面の下方の異なる深さからの信号の混合体として励起ビームの変調の期間ごとにデバイスに送られ、進行時間の差に起因して各レーザ・パルスの後に測定信号の特定の減衰特性を生じさせる信号の混合特性も反映する。異なる深さからの信号は、互いに分離される必要はないが、これは、本記載の他の箇所で説明されている異なる分析方法を用いて実行されてよい。
【0152】
第3の下の図表は、測定された光強度が一連のスペクトルにおいて励起光ビームの照射された波長または波数にわたってプロットされたスペクトルのプロットを示す。
【0153】
例えば、これらのデータは、体組織または体液中の特定の物質の濃度の測定から得られる、患者の生理学的値を得るために用いられてよい。これの例としては、体の一部分のグルコース濃度を測定する血中グルコース測定がある。
図13によれば、測定値または前処理された値が、通信デバイス25によって遠隔コンピュータまたは分散コンピュータ・システム(クラウド)を用いて比較されてよい。例えば、測定値を解釈するために基準値がクラウドまたは遠隔コンピュータから取り込まれてよい。基準値は、患者の識別情報および彼/彼女について個々に記憶および取得され得るデータに基づくものであってよい。この目的で、患者の識別情報は、処理デバイス23に入力されるか、別個の測定を用いて、例えば測定デバイスに一体化され得る指紋圧力センサを用いて決定されるかのいずれかでなければならない。
【0154】
クラウド内において、患者の位置における温度、気圧、または空気湿度などの環境条件を考慮することを含め、データを他の患者からの測定とまたは同じ患者からの以前の測定と比較することも可能である。これらの値を取得するためのセンサが、本発明に係る物質を分析するための装置/デバイスに一体化されてよい。
【0155】
処理結果として、処理デバイス23は、第1の出力デバイス26を用いて、最適、良好、適度、あまり良くない、懸念などの情報の形態、または色もしくは記号の形態の、例えば3つまたは5つのレベルの傾向情報を出力してよい。特定の値の表示を可能とする別の出力デバイス27において、測定値が画面上にまたはデジタル・ディスプレイに出力されてよい。加えて、測定値または測定値の傾向が、ソフトウェアモジュール28に出力されてよく、これは、例えば携帯電話などの別個のモバイル処理デバイスにおいて動作してもよい。このユニットにおいて、評価された測定結果は次いで、例えば摂取されるべき食事を調理するまたは利用可能な食料品および食品の量を選択するために用いられてよい。また、特定の量での何らかの食品の消費についての推奨がなされてよい。これは、例えば、データベースから取得され、特に電子的形態で伝送もされ得る調理の提案と関連付けられてよい。この調理指示は、自動食品調理デバイスに送られてもよい。
【0156】
一実施形態において、他の患者パラメータ(例えばインスリン補正係数)に依存するインスリン投与の提案、またはインスリン・ポンプの形態の投与デバイスへの自動的な信号伝送が、表示デバイス/ディスプレイ27またはこれと並行して信号デバイスを介して出力されてよい。
【0157】
処理デバイス23は、デバイスのハウジング33に一体化されてよく、例えばモバイル・コンピュータまたはモバイル無線デバイスにおいて別個に設けられてもよい。この場合に関して、例えば無線規格を用いて、ハウジング33に配設される構成要素間、特に測定デバイス7と処理デバイス23との間の通信インタフェースの提供がなされなくてはならない。ハウジング33は、装着可能なケースとして、例えばさらには腕時計のように人の手首に装着されることが可能(装着可能)なケースとして設計されてよい。さらなる実施形態において、レーザ・デバイスは、ハウジングの外側に配設され、測定のために結合されるように設計されてもよい。この結合は、例えば光ファイバケーブルを用いて、および/またはレーザ・デバイスを測定のために測定体に対してハウジングの基準面に適用することによってレーザ・デバイスの励起ビームを適当に位置合わせすることにより、実装されてよい。
【0158】
図14は、例えばレーザ・デバイス、特にレーザ・アレイの形態の励起光源4を保持する基板100の平面図を示す。加えて、基板100は、検出光源5と、例えば検出光の強度を測定するための放射感応性半導体構成要素の形態の測定デバイス7とを保持する。素子4、5、または7の各々は、基板100の半導体構造に完全にまたは部分的に一体化されてもよく、または例えば微小機械製造技術およびドーピングによってそれから製造されてもよい。基板は、基板に完全にまたは部分的に一体化されるか、または、例えば光導波路を十分に正確に位置付けるV字溝において、光ファイバケーブルの形態でそれに固定されるかのいずれかである光導波路101、102、103を含む。光導波路101は励起光/励起放射を導光し、一方で光導波路102、103は検出光/検出放射を導光する。
【0159】
図15において特に明確に見られることが可能なように、基板100は、導光される放射が別の基板1aの光導波路に直接結合され、次いで測定デバイス/検出器7の光導波路に向かってそれらから分離されることが可能なように、光導波路101、102、103の1つまたは複数が別の基板の対応する接続光導波路(示されていない)の真正面で終端するように別の基板1aがはめ込まれることが可能な、精密に微小機械的に適合された開口部105を有する。結合素子がこの目的で設けられてもよく、これは結合の効率を高める。
図16、および比較可能な
図12に示されているように、基板1aはこのとき、励起光を測定面に向かって導光する集積光導波路を含む。加えて、基板1aは、集積化された接続光導波路を有する集積干渉計素子を有する。測定面は、基板100、1aのいずれかの側に配置されてよい。測定面が
図15の下側に配置される場合、ウィンドウ106が基板100における連続的な開口部として開口部105内に設けられてよい。
【0160】
図17は、
図18~
図22と同様に、第1の光導波路装置6が検出デバイスの一部として埋め込まれる基板1aの断面図を示す。明確性のために、ハッチングされたエリアは切断された部分において省略されている。測定面2は、各図において基板1aの上側部分に配置される。例示の目的で、
図20と同様に
図17において、その物質が分析対象とされる測定対象物の例としてヒトの指107が示されている。指は、分析のために測定面2に置かれる。
【0161】
図17~
図22は各々、その材料が赤外領域または一般には励起ビームの波長域における励起ビーム10に対して透過可能または少なくとも部分的に透過可能である基板を示す。例えば、これは、赤外域についてはシリコン基板に当てはまる。したがって、励起ビームは、基板材料を通って、または少なくとも限定された層厚さを通って測定面へと、そしてこれを通って測定対象の物質へと方向付けられてよい。そのような場合、励起ビーム10のために基板に連続的な開口部を設ける必要はない。励起ビームは、第1の光導波路構造6を過ぎるまたは通るように方向付けられてよい。測定体において励起ビームによって進行される距離の一部が、開口部/空洞の内部にあってもよい。この目的で、測定体の少なくとも一部の部分に開口部が設けられてよい。例えば、このとき基板の薄い層が測定面のエリアに残っていてよい。しかしながら、測定体の部分において、材料挿入物が、基板の材料よりも励起ビームに対して透過性の高い材料で作製された光導波路の形態で設けられてよい。
【0162】
図17~
図22および
図23~
図25において、励起ビームユニットの導光のための様々な構成が示されている。明確性のために、検出デバイスは各場合において省略されている。もちろん、検出デバイスの説明されている設計の全てが、
図17~
図25に示されている励起ビーム導光の設計と組み合わせて実装されてよい。
【0163】
測定体または基板1aの、測定面2とは反対の側において、レンズ108、108’、108’’が、例えば研磨方法を用いて、特にエッチングにより、基板に一体化され、特に基板の材料によって形成され、基板の材料から取り出される。
【0164】
【0165】
第1のレンズ108は、標準的な屈折の屈折凸面収束レンズに対応し、第2のレンズ108’はフレネル形に研磨された(屈折)収束レンズ(キノフォーム・レンズ)に対応し、第3のレンズは、励起ビーム10を同心格子構造における回折によって合焦させる回折レンズに対応する。
【0166】
励起光源が基板1aを一直線に通るように放射することができるように、レンズの光軸は各々、測定面2上に垂直に位置付けられてよい。しかしながら、光軸は、励起光源を基板に角度を付けて潜在的に省スペースに位置付けることを可能とするために、測定面2の垂線に対して傾斜されていてもよい。
【0167】
図20、
図21および
図22は各々、励起ビーム10および分析対象の物質に合焦された合焦ビーム10aと共に、基板1a上のレンズ形状108、108’、108’’を示す。
【0168】
図17~
図22では、各場合において干渉計素子が測定面の近くで基板に設けられているが、これらの図において主な意図は、励起ビーム10のビーム導光を示すことである。
【0169】
図23は、励起ビーム10がレーザ装置3から、測定体1を層1’まで通過する光導波路126へと方向付けられる、断面におけるセンサ層1’を有する測定体1を示す。光導波路126は、測定面2に至るまで層1’を通して延びてもよく、層1’が励起ビーム8のためのスロットを有するか、または励起ビーム8が層1’の材料を通過することが規定されてもよい。また、示されている例示的実施形態で測定体1を形成する基板の一定の層厚さが、測定面の前方または層1’の前方に残り、励起ビーム10によって横断されてよい。例えば測定面2に直接隣り合うおよび/または層1’内における、測定面2の領域において、レンズ140が、励起ビーム10を検査対象の物質中の一点に合焦するために設けられてよい。光導波路126は、レーザ・デバイス4から測定面2まで直線状に延在し、層1’内または基板1内において、詳細には示されていない干渉計素子により形成される検出デバイスを通過する。例えばレーザ・デバイス4’が測定体の側方に位置付けられる場合、光導波路が、部分的にまたは完全に測定体1の表面に沿って延在してもよい(
図25参照)。
図23において、光導波路127は、まずレーザ・デバイス4’から測定体の表面または表面上におけるその長さの第1の部分上を延在し、次いで光導波路126と同様に、その長さの第2の部分にわたって測定体を通過するように続く。光導波路の方向変化の領域において、励起ビームは、例えばミラーで反射されてよく、または光導波路がそこで屈曲されていてよい。そのような光導波路126、127は、(例えばSOI-シリコン・オン・インシュレータ技術を用いた)製造技法によって測定体1の材料に一体化され、もしくは例えば接着接合によってそれに接続された光ファイバケーブルの形態であってよく、または、光導波路は、その長さの一部にわたって一体化され、その長さの別の部分にわたって光ファイバケーブルとして実装されてよい。
【0170】
しかしながら、
図24から見られることが可能なように、光導波路設計の2つの異なる変形例において、レーザ・デバイスが設けられる測定体1上の位置から測定面2に向かって励起ビーム10を導光する湾曲された光導波路133、134が設けられてもよい。光導波路133、134の経路が比較的自由に形成されることが可能であることは、励起ビームにより貫通される領域と検出領域との間において最小距離が維持されることを可能とする。励起ビーム10は、測定面2の面法線に対して0度から60度の間、特に0から45度の間の角度を付けて測定面2に当たり、それを通過してもよい。
【0171】
分析対象の物質への低い貫通深さに起因して、傾斜した照射方向に関わらず、励起ビーム10がそれと相互作用する物質の領域は、例えば干渉計素子の形態であり得る検出デバイスの直下に存在する。例えば、湾曲された光導波路133、134の少なくとも一部の部分が、光ファイバケーブルとして、それらが所定の位置に接着またはポッティングされる測定体1の穿孔または同様の凹部内に敷設されてよい。
【0172】
図25から見られることが可能なように、光導波路135、136、137、138が、例えば測定体1の1つ、2つまたは3つの異なる相互に隣接する面に沿った複数の方向および/または2つまたは3つの相互に垂直な方向に経路制御される励起ビーム10を導光するために設けられてもよい。例えば、そのような光導波路135、136、137、138は、
図23および
図24に示される光導波路のように、それぞれの測定体1に一体化されてよい。測定体の表面上において、これは、SOI技術で、または、測定体1の材料によっては関連する固体状態製造技術で、実装するのが特に簡単である。この目的で、シリコン酸化物層または他の層によって覆われ基板から分離されたシリコン基板に光導波路が組み込まれてよい。この目的のために、適当な凹部がまず基板にエッチングまたはスパッタリングされ、次いで被覆および光導波路の材料を適当に堆積させてよい。この場合、例えば、光導波路の被覆は、光導波路が測定体1から突出しないように、測定体の表面と同一平面に位置合わせされてよい。測定体の表面に沿った光導波路135、136、137、138の進路は、検出デバイスとの励起ビームのあらゆる相互作用を防止する。そして最後の光導波路138は、励起ビーム10が分析対象の物質3に入るはずである領域で終端する。光導波路138の端部において、励起ビームを物質3へと方向付ける素子、例えばミラーが設けられてよい。
【0173】
図の右下部分におけるエリア142において
図25に示されている詳細は、光導波路138が測定面2へと斜めにつながる測定体1の溝(点付きで示される)に配設されてもよいことを示し、それにより、光導波路の長手軸が測定面2を通って分析対象の物質3へと溝の底部141に平行に向けられる。
【0174】
本特許出願は、(冒頭で既に述べられているように)請求項および上述の例示的実施形態の対象に加えて、以下の態様に関する。これらの態様、またはその個々の特徴は、個々にまたはまとめてのいずれかで、請求項の特徴と組み合わされてよい。これらの態様はまた、単独で取り入れられるか、互いにまたは請求項の対象と組み合わされるかを問わず、独立した発明を構成する。本出願人は、今後においてこれらの発明を請求項の対象とする権利を保有する。これは、本出願の範囲内において、または本出願の優先権を主張する後続の部分出願または後続の出願の文脈において生じてよい。
【0175】
態様
1)
物体中の物質を分析するための方法であって、
- 物体の表面の第1の領域を通して1つまたは複数の特定の励起波長を有する励起光ビーム(励起ビーム)を発することと、
- 特に励起光源の電子的作動、励起光源として動作する励起レーザの共振器のための調整デバイスまたは可動ミラー・デバイス、制御可能回折デバイス、ステッパ・モータなどのモータにまたはMEMSに結合されたシャッタまたはミラー・デバイス、または伝導または反射に関して制御されることが可能なビーム経路における層による、機械的、電気的または光学的チョッパを用いた、特に逐次的な、1つまたは複数の周波数での励起光ビームの強度変調、および応答信号の時間分解検出と、
- 物体の外部に配設された検出デバイスを用いた、物体への励起光ビームの波長依存吸収の効果および検出デバイスへの温度波もしくは/または熱波の放出に起因する応答信号と
を含む、方法。
【0176】
検出デバイスは、例えば、特に測定面(分析対象の物質と接触する測定体の境界面に対応する)に隣接するまたは直接隣り合い、圧力または温度が変化した場合に、測定体を通過する検出光ビームにその屈折率を変化させることにより影響する検出領域を有する光媒体/測定体を含んでよい。特に、検出光の強度は、圧力および/または温度の変化によって影響されてよい。
【0177】
例えば、検出器/検出デバイスは、特に「シリコン・オン・インシュレータ」技術で基板上に一体化された光導波路を有してよい。例えば、シリコンが光導波路に用いられる。SiNの使用も可能であり、この場合、光導波路は、SiまたはSiNの屈折率と異なる屈折率を有するシリコン酸化物によって少なくとも部分的に覆われるべきである。
【0178】
変調は、一実施形態においては干渉により、または、特にこれがレーザ光デバイスを含む場合は励起伝導デバイスの放射の位相または偏光を操作することにより実行されてよい。変調は、測定体の一部または素子であり、伝導性または反射性または反射率がピエゾ素子上の電圧コントローラによって制御されることが可能な、能動的に動作されるピエゾ素子を制御することにより行われてもよい。応答信号は、例えば、反射された測定ビームの強度もしくは偏向角度または圧電効果によって動作する検出器の電圧信号であってよい。
【0179】
2)
励起光ビーム/励起ビームが、同時にまたは逐次的にまたはパルス状に、さらには交互に、異なる波長の光を発する、特にレーザ・アレイの形態の複数のエミッタまたはマルチ・エミッタにより生成されることを特徴とする、態様1に係る方法。
【0180】
3)
- 測定体の表面の少なくとも1つの領域(例えば測定面)が物体の表面の第1の領域と接触するように、光媒体/測定体と物体の物質表面との間の接触を生じさせる段階と、
- 励起波長を有する励起光ビームを、特に物質表面の第1の領域と接触する光媒体の表面の領域を通して、表面の第1の領域の下方の物質内に配置される体積へと発する段階と、
- 光学的方法を用いて測定体の表面の第1の領域における温度または温度変化および/または圧力変化を測定する段階と、
- 励起光ビームの波長に応じた検出された温度増大を用いて物質を分析する段階と
を含む、態様1または2のいずれかに係る方法。このプロセスは、異なる変調周波数について1つの測定の間に行われてよく、異なる変調周波数についての結果が組み合わされてよい。
【0181】
4)
検出光ビームが、励起光ビームを生じさせるのと同じ光源によって生成されることを特徴とする、態様1~3のいずれかに係る方法。
【0182】
5)
励起光ビームは、特に赤外スペクトル域における、強度変調された、特にパルス状の励起光ビームであることを特徴とし、変調速度は、特に1Hzから10kHzの間、好ましくは10Hzから3000Hzの間である、態様1または前出もしくは後出のその他のいずれかに係る方法。
【0183】
6)
励起光ビームの光は、複数の個々のレーザを有する一体化された構成、特にレーザ・アレイを用いて、同時にまたは逐次的にまたは部分的に同時にかつ部分的に逐次的に生成されることを特徴とする、態様1または前出もしくは後出のその他のいずれかに係る方法。
【0184】
7)
励起光ビームの異なる変調周波数において得られる応答信号から、応答信号の強度分布が、応答信号が生成される表面の下方の深さに応じて決定されることを特徴とする、態様1または前出もしくは後出のその他のいずれかに係る方法。
【0185】
8)
励起光ビームの1つのまたは異なる変調周波数における変調された励起光ビームの位相に関する検出光の強度特性によって測定される、応答信号、すなわち分析対象の物質における温度および/または圧力特性の位相位置から、応答信号の強度分布が、応答信号が生成される表面の下方の深さに応じて決定されることを特徴とする、態様1または前出もしくは後出のその他のいずれかに係る方法。
【0186】
9)
表面の下方の深さに応じて応答信号の強度分布を決定するべく、異なる変調周波数における測定結果が重み付けされ互いに組み合わされることを特徴とする、態様7または8に係る方法。
【0187】
10)
特定の深さまたは深さ範囲における特定の波長域の励起光ビームを吸収する物質の物質密度が、物体の表面の下方の深さにわたる強度分布から決定されることを特徴とする、態様7、8、または9に係る方法。
【0188】
11)
応答信号/複数の応答信号の検出の直前または直後またはその間に、少なくとも1つの生体測定、特に指紋の測定が、物質分析が行われる表面の第1の領域においてまたはそれに直接隣接して物体に対して実行され、物体、特に人が識別され、特に、関連付けられる基準値(較正値)が人の識別によって応答信号の検出に割り当てられることを特徴とする、態様1または前出もしくは後出のその他のいずれかに係る方法。
【0189】
生体測定は、励起光ビームのスペクトルにわたって走査したときの応答信号のスペクトルの測定を含んでもよい。スペクトルの評価により、物体内に存在する物質のプロファイルおよびその量または密度比が決定されてよく、これは、人の識別を可能とすることができる。
【0190】
12)
放射源の変調デバイス、特にその制御、干渉デバイス、位相または偏光変調デバイスおよび/またはビーム経路に配設された少なくとも1つの制御されるミラー、および/またはその透過性に関して制御されることが可能でありビーム経路に配設される層によって形成される、励起光ビームを変調するためのデバイスを有する、各々が励起波長を有する1つまたは複数の励起光ビームを物質におけるその表面の第1の領域の下方に配置された体積へと伝導するためのデバイスを有し、励起光の波長および励起光の強度変調に応じた時間依存の応答信号を検出するための検出デバイスを有し、検出された応答信号を用いて物質を分析するためのデバイスを有する、物質を分析するための装置。
【0191】
13)
異なる強度変調周波数に従って応答信号を別個に決定するためのデバイスを有し、および/または、励起光ビームの変調の位相に対するそれぞれの応答信号の位相オフセットに応じて、特に励起光ビームの変調周波数に応じて応答信号を決定するためのデバイスを有する、態様16に係る装置。
【0192】
14)
光媒体の表面(例えばいわゆる測定面)と物質表面の第1の領域とを接触させるための光媒体/測定体を有し、1つまたは複数の励起波長を有する励起光ビームを、特に物質表面と接触する光媒体の表面(測定面)の領域を通して、表面の第1の領域の下方の物質中の体積へと発するためのデバイスを有し、検出光ビームを利用する光学的方法を用いて、物質表面の第1の領域と接触する、(検出デバイスを用いて)測定面のすぐ近傍における測定体内の領域における温度および/または圧力の変化の形態の応答信号を測定するためのデバイスを有し、励起光ビームの波長および励起光ビームの強度変調、特に励起光ビームの変調周波数に応じた温度変化/圧力変化の形態の検出された応答信号を用いて物質を分析するためのデバイスを有する、12または13に定義される物質を分析するための装置。
【0193】
15)
励起光源および/または検出光源が、測定体に直接機械的に強固に接続されることを特徴とする、態様18に係る装置。
【0194】
励起光源および/または検出光源は各々、測定体内、測定体上または測定体の上に設けられ、それに一体化されることが可能な第1または第2の光導波路構造の光導波路に直接結合されてよい。励起光源および/または検出光源は、各場合において、光ファイバ光導波路を用いて上記の種類の第1または第2の光導波路構造に接続されてもよい。
【0195】
16)
測定体が、ビーム整形レンズを直接保持すること、および/または、ビーム整形レンズが測定体に一体化されることを特徴とする、態様18、19または20に係る装置。
【0196】
17)
装置が、人体に取り付けられることが可能な装着可能なハウジングを含むことを特徴とし、1つまたは複数の励起光ビームを発するためのデバイスおよび時間依存の応答信号を検出するための検出デバイスは、動作中、デバイスが体に装着されたときに、分析対象の物質が、ハウジングの、体とは反対を向く側で測定され、特に測定体の測定面が、体とは反対を向く側に配置されるように配設および構成される、態様12~16のいずれかに係る装置。
【0197】
18)
装置が、人の体に取り付けられることが可能な装着可能なハウジングを有し、デバイスのハウジングが、意図された装着位置において体とは反対を向く側において励起ビームを透過するウィンドウを有することを特徴とする、態様12~16のいずれかに係る装置。
【0198】
ウィンドウは、測定体の真正面に配置されてよい。ウィンドウはハウジングの単一の開口部であってよく、ウィンドウ面が測定面により形成され、または測定面が開口部内にある。測定面は、ウィンドウ開口部を閉じ、温度波および/または圧力波が外部から測定面に伝導されるように測定面に接続される層の後方にあってもよい。
【0199】
19)
少なくとも1つの励起波長を有する少なくとも1つの電磁励起ビーム、特に励起光ビームを生成するための励起伝導デバイスと、応答信号を検出するための検出デバイスと、検出された応答信号を用いて物質を分析するためのデバイスとを有する、物質を分析するための装置。
【0200】
20)
励起伝導デバイスがプローブ・レーザまたはLED、例えばNIR(近赤外)LEDを含むことを特徴とする、前出の態様12~19のいずれかに係る装置。
【0201】
21)
励起伝導デバイスが、励起ビームを生成するためのレーザを形成する追加的なポンプ・レーザよりも小さいビーム径を有するプローブ・レーザを有することを特徴とする、前出の態様12~20のいずれかに係る装置。
【0202】
22)
装置が、一実施形態においては、ベルト、ストラップまたはチェーンまたは留め金などの、ハウジングに接続された保持デバイスを用いて、人が体に常時装着可能であるように設計され、および/または、検出デバイスが、測定結果、時刻および/またはテキスト情報などの情報のための表示面としても機能する検出面を有することを特徴とする、前出の態様12~21のいずれかに係る装置。
【0203】
検出面は、測定面と同一であってよく、またはその延伸部/延長部を形成してよい。
【0204】
23)
装置が、物質の表面の前処理および清浄な表面の確実化、および/または、グルコース測定の場合の一実施形態において具体的には皮膚洗浄のための、検出面/測定面の領域に、好ましくは検出面/測定面の隣に剥離フィルムを有することを特徴とする、前出の態様22に係る装置。
【0205】
24)
検出デバイスは、人の特定の値/較正を取得するために指紋を読み取り、認識するように構成され、および/または、好ましくは測定の間の望まれない動きを検出および決定するために、指の位置を検出するためのデバイスを有することを特徴とする、前出の態様12~23に係る装置。
【0206】
25)
検出デバイスが、音響的に、および/または、デバイスの測定精度が許容するよりも大きな段階での測定値の結果表示と共に(例えば多色交通信号表示を用いて)、一実施形態においてはエラー指示(例えば「100mg/dlプラス/マイナス5mg/dl」)を含む、アナログ表示としての、好ましくは色分けにより実装される結果表示を有することを特徴とする、前出の態様12~24のいずれかに係る装置。これは、ユーザには、例えば彼らを不安にさせ得る小さな変動が知らされないことを意味する。
【0207】
26)
装置が、測定データを交換し、他のデバイスまたはクラウド・システムから較正もしくは識別データまたは他のデータを取得するためのデータ・インタフェース、例えば有線または無線インタフェース(赤外線、光または無線通信インタフェース)を含むことを特徴とし、装置は、好ましくは、データ伝送が暗号化される、特にユーザの指紋または他の生体データにより暗号化されることが可能であることを確実にするよう構成される、前出の態様12~25のいずれかに係る装置。
【0208】
27)
装置が、人になされるべきインスリン投与または消費されるべき量を含む物質/食料品の提案が装置により決定され得る(例えばインスリン補正係数)、および/または体重、体脂肪が測定され、および/または手入力されもしくは他デバイスから装置に同時に転送され得るように構成されることを特徴とする、前出の態様12~26に係る装置。
【0209】
28)
測定精度を高めるべく、装置が、一実施形態においては皮膚の皮膚温度、拡散率/伝導性/水分レベルを決定するためのセンサを用いて、さらなるパラメータを決定するように、または光の偏光(指表面の水/汗を除いて)を測定するように構成されることを特徴とする、前出の態様12~27のいずれかに係る装置。グルコース測定に影響し得る人の皮膚の表面の水および汗は、1640cm-1(6.1μm)および690cm-1(15μm)の水に特有の帯域での励起伝導デバイスを用いた励起放射によるテスト励起によって検出され、測定に対する後続の分析において考慮されてよい。あるいは、物質の電気伝導性が、水分レベルを決定するための複数の電極を用いて測定部位の近傍でまたは測定部位において直接測定されてよい。このとき、エラー・メッセージおよび乾燥の指示が発出されてもよく、または水分の存在が測定の後続の評価において考慮されてもよい。
【0210】
29)
装置が、ポンピングされたおよび/または測定するビームレーザのビーム経路に被覆または遮断デバイスを有することを特徴とする、前出の態様12~28のいずれかに係る装置。これは、人間の義務付けられている眼の安全性を確実にすることができる。
【0211】
30)
装置が、交換可能な検出面/測定面を有することを特徴とする、前出の態様12~29のいずれかに係る装置。
【0212】
31)
装置が、測定体として局所的に波形の結晶または平行な溝もしくは分散された窪みもしくは隆起を備えた結晶を有する、または測定体として粗くされていることを特徴とし、これが試料(例えば指)のより良好な調節を可能とする、前出の態様12~30のいずれかに係る装置。分析対象の物質の表面が置かれる測定点は、好ましくは、溝なしで滑らかに設計される。
【0213】
32)
装置が一点のみでなくグリッド状に測定することを特徴とする、前出の態様12~31のいずれかに係る装置。これは、ポンプまたはプローブ・レーザまたは検出ユニットを対象の皮膚表面に対して変位させること、または2つの測定の間での励起ビームの可変偏向のいずれかにより、実行されてよい。
【0214】
加えて、本発明の以下の態様も引用されるべきである。
【0215】
33)
少なくとも1つの励起波長を有する少なくとも1つの電磁励起ビーム、特に励起光ビームを生成するための励起伝導デバイス/レーザ・デバイスと、
応答信号を検出するための検出デバイスと、
検出された応答信号を用いて物質を分析するためのデバイスと
を有する、態様12~32のいずれかにも係る、物質を分析するための装置。
【0216】
時間依存の応答信号は、測定体における温度または圧力の増大に加えて同じものを検出する任意の測定変数、例えば温度または圧力依存の屈折率を有する材料の通過する検出光の強度変化の形態を取ってよい。
【0217】
34)
物質を分析するための方法であって、方法において、
励起伝導デバイス/レーザ・デバイスを用いて、レーザ光源の複数のレーザ・エミッタの少なくとも部分的に同時のまたは連続的な動作により、1つまたは複数の励起波長を有する少なくとも1つの電磁励起ビームが生成され、物質へと伝導され、
応答信号が検出デバイスにより検出され、
物質が検出された応答信号に基づいて分析される、方法。
【0218】
35)
励起伝導デバイスの異なる変調周波数を用いて、応答信号、特に時間的な応答信号波形が連続的に決定され、異なる変調周波数における複数の応答信号波形が互いに組み合わされ、これから物質の表面の下方の深さ範囲に特有の情報が得られることを特徴とする、態様34に係る方法。
【0219】
36)
異なる変調周波数における応答信号波形が、励起ビームの異なる波長について決定され、特に、これから物質の表面の下方の深さ範囲に特有の情報が得られることを特徴とする、態様35に係る方法。
【0220】
37)
同時に励起ビームの複数の変調周波数を用いた場合に、検出された応答信号が、分析方法、好ましくはフーリエ変換を用いて、その周波数に従って分離され、処理されるべき周波数に対応する1つのみの部分的信号が一度にフィルタリングされ、測定され、分析されることを特徴とする、態様36に係る方法。
【0221】
これにより、異なる変調周波数における複数の信号が、連続的に分析されてよく、信号についての深さ情報を得るため、または物質の表面から来る信号を排除するために、異なる変調周波数の結果が互いに組み合わされてよい。
【0222】
38)
物質において決定された物質の濃度に応じて、投与デバイスが別の物質を物質中へと、特に患者の体内へと放出するよう作動され、および/または音響的および/または光学的信号が発せられ、および/または信号が無線リンクを介して処理デバイスに発出され、および/または、1つまたは複数の食料品または食料品の組み合わせが、データベースを用いて測定された物質濃度に割り当てられ、栄養情報として、特に栄養的推奨として出力される、前出の態様34~37のいずれか1つに係る方法。
【0223】
そのような推奨に加えてまたはそれと組み合わせて、量の指示が食料品または食料品の組み合わせについて与えられてもよい。食料品の組み合わせは、調理された食品部分を意味するようにも意図される。
【0224】
任意の与えられている測定方法に関して、特に測定光ビームおよびその偏向の検出に関して態様において言及されている、励起ビーム、その光学的な導光および変調の全ての特徴および手段、ならびに機械的構造および調節可能性の特徴、ハウジングおよび外部デバイスとデータベースと接続されたデバイスとの通信の特徴が、本出願の特許請求項において特許請求されている、すなわち干渉計効果を用いて物質から測定体へと発せられる圧力波および/または熱波を応答信号として検出する検出方法に適用されてもよい。
【0225】
基本的には、励起ビームの周期的変調に応答して深さプロファイリングについて決定される応答信号の位相シフトの値が用いられてよい。(物質表面の加熱/冷却フェーズがそれらの特性に関してより精密に評価されるべきである)。
【0226】
説明されている装置は、人体に対する最良の考えられる無干渉測定を可能とするために、死んだ皮膚層の除去のために接着ストリップの供給体に、さらにはパッチまたは結合媒体の他の医薬的形態、特に光媒体に通常適用され得るゲルまたは熱伝導性ペーストに接続されてよい。光媒体は、残った部分の適切な取り付けおよび較正を前提として、置き換え可能であってよい。
【0227】
評価におけるデータ取得(DAQ)およびロックイン・アンプは、1つのデバイスに組み合わされてよく、全体の評価プロセスがデジタル化されてよい。ロックイン・アンプは、検出デバイスに接続され、励起ビームの変調に対して位相関係にある信号を選択する。この目的で、ロックイン・アンプは、例えば励起ビームを生成するレーザ・デバイスのための制御デバイスおよび/または励起ビームのための変調デバイスに接続される。
【0228】
測定は、それに対して移動される物質表面上の装置により実行されてもよく、それにより、グリッド測定の間、励起光源および/または測定光源が測定の間に皮膚の上をグリッド状に進行し、それにより皮膚の凹凸を補償または排除する。
【0229】
特許請求項に係る本発明の追加的な構成および説明が、以下の概念において提示されている。この概念の詳細が、出願された形態での特許請求項の実施形態と組み合わされてもよい。加えて、この概念は、単独で取り入れられるか、上記の態様とまたは請求項の対象と組み合わされるかを問わず、少なくとも1つの独立した発明を構成する。本出願人は、今後においてこの発明を請求項の対象とする権利を保有する。これは、本出願の範囲内において、または本出願の優先権を主張する後続のサブ出願または後継の出願の文脈において生じてよい。
【0230】
量子カスケード・レーザによる刺激によって皮膚中のグルコースを決定し、輻射熱に起因する熱波を測定することによる非侵襲血糖測定のための以下の概念も、本発明に含まれるものとし、請求項の対象と組み合わされてもよく、またはサブ出願において独立して追求されてもよい。
【0231】
皮膚の間質液(ISF)中のグルコースまたは任意の他の物質の濃度が決定されることを可能とする方法が説明される。ISF中のグルコースは、血中グルコースを表し、変化が生じると速やかにそれに追従する。方法は、以下の段階のうちの少なくとも個々の段階または群または全体の一連からなる。
【0232】
1.
皮膚の一点(この場合は物質の表面の第1の領域)が、ミラーまたは凹面ミラーで反射されてもよい量子カスケード・レーザの合焦されたビームで照射され、これは、放射がグルコース特異的に吸収される特定の赤外域にわたって漸増的または連続的に調整される。量子カスケード・レーザに代えて、単一の波長を放射する複数のレーザを有するレーザ・アレイが用いられてもよい。スペクトル域(または個々の波長、通常5以上の波長)は、グルコースが吸収痕跡(absorption fingerprint)、すなわち典型的かつ代表的な吸収線を有する約900から約1300cm-1の間に配置されてよい。
【0233】
2.
励起ビームが、連続モード(CWレーザ)で用いられ、または高いパルス繰り返し速度でパルス出力または変調される。加えて、励起ビームは、低い周波数、特に10から1000Hzの間の周波数範囲で変調される。低周波数変調は、異なる周期関数により、異なる実施形態においてはシヌソイド、方形波またはのこぎり波またはそれに類するものにより行われてよい。QCLの放出特性によれば、矩形が最も有利である。
【0234】
3.
皮膚の照射により、IR放射は皮膚中に約50~100μmの深さまで入り込み、波長に依存して、グルコース分子の固有振動を励起する。振動レベルv0からv1までのこれらの励起は、非常に短時間で基底状態に戻り、このステップの間に熱が放出される。
【0235】
4.
(3)による熱展開の結果として、吸収部位から等方的に伝搬する熱波が発達する。(2)で説明されている低周波数変調により決定される熱拡散長さに依存して、熱波は、変調周波数で周期的に皮膚の表面に到達する。
【0236】
5.
表面上への熱波の周期的な出現は、皮膚(試料物質の表面)の熱放射特性の周期的変調に対応する。皮膚は、ここでは近似的に、シュテファン-ボルツマンの法則による総放出量が表面温度の4乗に比例する黒体放射体として説明されてよい。本書類で説明されている測定技法によれば、測定の焦点が熱伝導の測定に置かれる。
【0237】
6.
本出願の特許請求項に係る検出デバイスが、光導波路デバイス、特に干渉計デバイスの屈折率に対する検出デバイスに到達する熱波および/または圧力波の効果を検出するのに用いられる。
【0238】
7.
応答信号の処理において、変調周波数が詳細に考慮され、その目的で、応答信号は、ロックイン・アンプにおいて処理されてよい。制御および処理デバイスを用いて励起信号と熱放射信号(応答信号)との間の位相オフセットを分析することにより、応答信号が主として受け取られた物質の表面の下方の深さを介して深さ情報が得られてよい。
【0239】
8.
深さ情報は、(2)で説明されているような励起ビームの異なる低周波数変調周波数を選択および分析し、異なる変調周波数についての結果を組み合わせる(異なる変調周波数についての結果に異なる重みが付けられてもよい)ことによって得られてもよい。微分法、各場合における少なくとも2つの応答信号からの商形成(例えば単一の波長について、次いで測定されたスペクトルを波長で通過する)または他の決定方法が、皮膚上層の吸収を補償するために用いられてよい。
【0240】
9.
励起波長に依存する、(6~8)に従って測定された熱信号から、グルコースが検出対象とされる一実施形態においては、最初に励起ビームのグルコースに非好適な(またはグルコースに好適なものを除いた)波長でバックグラウンドが決定され、次いでグルコースに好適な波長において(またはこれを含めて)バックグラウンド信号に対する差が決定される。これは結果として、(7)による選択された位相オフセットまたは(8)による異なる変調周波数またはその組み合わせによって決定される、皮膚層または複数の皮膚層におけるグルコース濃度をもたらす。
【0241】
本発明が好ましい例示的実施形態を用いてさらに詳細に例示および説明されたが、本発明は、開示されている例によって制限されず、他の変形例が本発明の保護範囲から逸脱することなく当業者によってそこから導き出されることが可能である。